───祝おう友よ!/庄司OH!───
【ケース365:中井出博光(再々)/心にいつでも童心を】 彰利がトラックに撥ねられること数分。 用意された将棋盤を前に奮闘すること僅か数分で敗北を喫した俺は、 少し悲しみを味わいつつ階下へ。 櫻子さんにここでパーティーをさせてもらいたい旨を話すと、 下準備はゆっくりとだが固まっていった。 何故って、“まあそうなのっ?だったらわたしも頑張らなくっちゃねぇ”と ウキウキヴォイスで返事された日には、 拒否されるどころか祝いのための品が増えるというものだ。 中井出「しかし……」 しかしどうだろう。 猛者どもが居ないだけで、あまりに静かなこの空間は。 外を見てみれば日差しに揺られながら煌くマナと癒しの大樹に、 澄みに澄みまくったこの体の芯からを癒さんとする空気。 思わずとも大樹の下に寝転がって眠りたいくらいである。 そんなことを頭が勝手にフィーバーさせている現状なのだが、 大変残念なことに俺はまだ眠るわけにはいかないのである。 何故ってそれは─── 中井出「……お嬢が失踪した……」 いや、正しくは屋敷の中を探検しだしたらしいのだが。 そういえば俺も何度かお邪魔しているこの屋敷だが、 実のところその全貌を案外知らなかったりする。 こういうのをいい機会というのなら、俺も探検してみるのもいいのかもしれない。 しかし、広いには広いが驚くほどは広くないこの屋敷。 何処を探せば誰が居るのかなんて大体見当がつきそうなもんだが─── はてさて、お嬢は何処にいるのかね。 なんて、心にもないことを思いつつ、俺は歩き出したとさ。 ───……。 ……。 攫った筈の女を放置して逃げられる、なんてのは、 犯罪者からしてみれば馬鹿で阿呆で愚者でたわけ以外のなにものでもないわけだが。 実際そういう事態になってみると、あまり笑えないものである。 べつに彼女を利用して大金せしめようとかイケナイことをしようなどといった、 自分の仁義に反発した犯罪に手を染める気などさらさら無いわけだが。 それでも連れ去ってきたのに自分からあっさりと目を離すってのも案外馬鹿なもので、 その所為で逃げられたとあっては、あんまりに自分が情けなさすぎるだろ。 そういった様々な葛藤や言い訳を胸に俺は歩いているわけだが、 敢えて久義さんの部屋を避けているあたり、俺はお嬢を探す気など最初から無いのだろう。 結局のところ、情けないなら情けないでそれでもいいわけだ、俺は。 そんなの気にしてたら面白いものなんて探求できないんだからな。 中井出「さて、そんなわけで……」 普段滅多に使われない遊戯室へとやってくる。 鬱陶しいくらいの光が無いカジノ、といったところだろうか。 無駄にスロットやビリヤード、アメリカンルーレットやポーカーなどの台が揃ってる。 久義さんの趣味らしいが、チェス以外にこんなものまで揃えているとは。 金持ちって恐ろしい。 けど不思議と金持ちを前にしての嫌悪感が沸かないのは、 あの人達の人の良さの表れなんだろう。 中井出「ベットプリーズ」 何気なく言葉を発して、ルーレットを回して球を放り投げてみる。 カラカラ、と音を立てて回転するそれはやがてゆっくりと速度を落とし、 俺が予想したものとはまったく違った色と数字に落ち着いた。 やっぱ俺、あまり運がいい方では無いらしい。 ヒロラインで引きの良さを全部使ってちまってるんだろうな。 はぁ、と溜め息を吐いて次の部屋を目指して歩き出した。 放置されている理由が解ったわ。一人でやるゲームはつまらないな、確かに。 …………。 それから空き部屋などの適当な部屋が続く。 子宝に恵まれなかった老夫婦が住むにはあまりに広い屋敷がそこにあったのを再確認した。 中井出(そりゃ、誰かが来る度に燥ぐわけだ……) 頭をコリコリと掻きながら歩く。 食堂や厨房、風呂……そこらは流石に見たことがあったが、 ワイン蔵を発見したときは本気でたまげた。 しかも相当数のワインが寝かされていたのだ。 蔵の中もしっとりとした場所で、日差しが当たるような場所でもない。 ワインの知識なんて全く無いが、それでも久義さんのことだ、半端はしてないだろう。 中井出「……ふぅむ、やっぱりか」 そうして部屋を虱潰しのように巡ると一息。 これで予想は的中したわけである。 お嬢は久義さんの部屋で久義さんと一緒に話でもしてるかチェスでもしてるんだろう。 それが確認できただけでも十分だな。 と、踵を返して晦の部屋に戻ろうとした時である。 ふと鼻腔を擽るいい香りが何処からか溢れ出してガシャーーーン!! 声  「オワァーーーーッ!!」 ……ふと、窓が割れる音と絶叫、少し遅れてドグシャアという音が響いた。 何事だ?と考えるよりも先に香りの正体が解った俺は、 ただ晦の部屋の方向へと十字を切ったのだった。 イチゴタルト……だったな、この香りは。 ───……。 タルトの香りに釣られた精霊達に導かれ、 庭に落下した晦がブスッとした顔で部屋に戻ってきたのはほんの数分前だった。 で、今現在はなにをしているのかといえば─── 中井出「カードドロー!アックスレイダーを守備表示にしてターンエンド!」 悠介 「カードドロー!ビッグシールドガードナー守備表示!     さらにこのカードを伏せてターンエンド!」 十数年前に創造したというディエルディスクを使って、リアルカードバトルをしていた。 もちろん遊戯王の。 蒲田くんがやりたいと言ってたから用意しておいてもらったブツである。 だから蒲田くんの名前からとって、現在これを“庄司OH!”と名付けている。 YU-GI-OH!じゃないのであしからず。 ちなみに蒲田くんは蒲田庄司という名前です。 中井出「コココ……!マジックカードかトラップカードか……!     どちらにしても姑息姑息…………っ!姑息千万…………っ!     真っ向から立ち向かえぬからとカードを伏せるなど…………っ!」 悠介 「人の生贄召喚高ランクモンスターを     真っ先に万能地雷グレイモヤで破壊したヤツの言う言葉かそれが!!」 中井出「やかましい!カードドロー!アックスレイダーを守備表示!     さらに鎖付きブーメランを使用!これにより戦士族の攻撃力がアップ!!」 悠介 「お前のデッキにはアックスレイダーしか居ないのかよ!!」 中井出「やかましい!さあ引くがいい!     残念だがまだビッグシールドガードナーを倒せるほどの力はない!     だが次だ!次にこちらの魔物を一体でも倒せなければどうなるか───!」 悠介 「くっ……!カードドロー!…………っ……クリボーを守備表示……!     リバースカードを置いて……ターン終了……!」 中井出「ワハハハハハ!!その程度か!ではいくぞ!カードドロー!     …………ククク……!これはいい物を引いたぞ」 悠介 「いちいち悪役っぽく喋るなよ……」 中井出「まずアックスレイダーを攻撃表示に設置!」 悠介 「またアックスレイダーかよ!!」 中井出「さらに……トラップカード!最終突撃命令!!     これで貴様の場のカードは全て攻撃表示となる!」 悠介 「なっ───!!」 中井出「さらにこれは永続トラップカード!発動条件など無く、     表にしてフィールドに設置している限り貴様は攻撃表示から逃れることは出来ん!     だがそのリバースカードで全て破壊される可能性があるからな……クク。     ここはターンエンドだ。さあ、引くがいい」 悠介 「あのなぁああ……!───カードドロー!!……よし!     場のモンスター、ビッグシールドガードナーとクリボーを生贄に!     暗黒騎士ガイアを召喚する!!さらにリバースカードオープン!!     死者蘇生!墓地に眠るカースオブドラゴンを蘇生!さらに魔法カード融合を発動!     暗黒騎士ガイアとカースオブドラゴンを融合させ、竜騎士ガイアとする!!」 ガカァアアンッ!! 眩い光とともに目の前に竜騎士ガイアが出現する! 見事なコンボ……だが! 中井出「フフフ……足掻きはそれで終わったか?ならば……神を見せてやる」 悠介 「なにっ!?ちょ、ちょっと待て!人が頑張ってここまで持ち直したってのに!」 中井出「場に居るアックスレイダー三体を生贄に!今!ここに神の降臨を告げる!     出でよ!オシリスの天空竜!!」 ドゴォッ!バリバリバリバリギシャァアォオオンッ!!! 悠介 「こっ……これがっ……神……!」 晦の部屋に雷鳴が轟き、暗転とともに現れるは神、オシリスの天空竜。 何故こんなカードを持ってるのかって?それはこれがゲームだからさ。 中井出「こちらのカードは3枚……オシリスの攻撃力は3000となる。     覚悟はいいか?さあいけオシリス!!サンダーフォース!!」 悠介 「くっ……リバースカードオープン!」 中井出「ワハハハハ!!無駄だ!     どんなトラップを用意しようが神には効かぬ!くたばれぇええっ!!」 バゴシャォオオンッ!!! 悠介 「ぐぅううっ……!!」 中井出「ククク……竜騎士ガイア撃破───なにっ!?     ど、どういうことだ!何故竜騎士ガイアが消え、暗黒騎士ガイアが……!?」 悠介 「……これだ。これを使った」 中井出「なっ───それは!」 最初置かれたっきり全然使われなかったカード……まさか!融合解除!? 中井出「おのれ!苦し紛れに融合を解除することで、モンスター全滅を免れおったか!!     だが……カースオブドラゴン撃破!     貴様のライフポイントも残り僅か……さあ、どう出る?」 ちなみにこのゲーム、しっかりと敵を破壊された時に物凄い突風が吹いたりする。 なにもここまで真似せんでもと思うけど、慣れると案外面白い。 悠介 「カ、カードドロー……砦を守る翼竜を……」 中井出「ククク……!相手が場にモンスターを置いたことでオシリスの特種能力発動!     “召雷弾”!!場に出たモンスターに2000のダメージを与える!!」 バヂィッ───ドゴォオオオンッ!!! 悠介 「ぐあぁああっ!!」 中井出「ワハハハハハ!!砦を守る翼竜、撃破!」 悠介 「かっ……!くっそ!どうしろっていうんだよこれ!!     だったらマジックカードだ!強化カードでガイアの攻撃力を上げる!     ターンエンド!」 中井出「ククク……俺のターン……。     カードドロー、これでカードが4枚になり、オシリスの攻撃力も4000となる」 悠介 「なっ……ちょ、ちょっと待てぇえーーーーーっ!!!」 中井出「超伝導波!サンダーフォース!!」 ガカァアッ───ドゴォオオオオンッ!!! 悠介 「ぐあはぁあああああっ!!」【LP:0】 サンダーフォースをくらった晦が豪快に吹っ飛び、 そのすぐ傍に“LP:0”の文字が出現する。 こんなところまで再現してあるのはむしろ素晴らしいことなのかもしれん。 中井出「コココ……!ゲームでこの博光に勝とうなど!一週間早いわ!」 悠介 「一週間なのかよ……」 中井出「いや、やりこむ人って怖いからさ。     初心者でも一週間あればプロを抜くことだってあると聞く」 その気になれば一日でも可能な人も居るだろうし。 中井出「さて……暇だな」 悠介 「そうだな」 倒れた晦に手を掴んで引き起こす。 にしてもこれからどうするかだ。 プレゼントを買わなきゃいけないのもそうなんだが、っていいか。 中井出「じゃあ、買いに行くか」 悠介 「いきなりだな。買いに行くって……ああ、プレゼントか」 中井出「そうそう。結局買ってないしさ」 悠介 「俺も出来れば今は屋敷から離れたいかもしれない。     体の中で精霊たちが暴れ出そうとしてるし」 中井出「そ、そか」 げに恐ろしきは櫻子さんのタルトよ。 でも普通に食べても美味しいからな、アレ。 さっきはてんで食えなかったわけだけど。 中井出「では行くとするか〜〜〜っ」 悠介 「お前ってさ、キン肉マンの真似しないと行動できないのか?」 中井出「いや、これはある意味自然に身についたものだから今更やめろと言われてもな」 悠介 「いや、やめろって言ってるわけじゃないけどな」 彰利 「ところで悠介はプレゼントはもう買ったん?」 悠介 「まだだが。お前ってつくづく不死身な」 彰利 「任せろ」 中井出「それが返事として妥当なのかはこの際捨てておこう」 置いてても仕方ないし。 ともあれ俺達は行動を開始し、再び殊戸瀬エレクトロニクスへと向かうのだった。 ここで敢えて転移をしないのになにか意味があるのかといえば、 案外理由なんてなかったりする。 …………。 そんなわけで殊戸瀬エレクトロニクスの何号店かである。 もちろん猛者どもが未だに居る店なんだが。 いろんなところでギャースカ騒ぎが聞こえてるあたり、間違えようもない。 彰利 「どうだった?」 中井出「売り切れだそうだ」 悠介 「うーお……ほんとに売れるんだな、あんなもんが……」 中井出「だからなんとしても手に入れねばならん」 彰利 「フフフ、キミもどうやら本気らしいな」 中井出「セオリーで行き過ぎるのもどうかと思うが、あれじゃなければダメなのだ」 彰利 「うーむ、実は俺もそれしかないとは思っていたが。     まさか悠介までもがそれを探しているとは」 悠介 「他になにを贈ればいいのかが解らないんだよ。     こういう時、日頃の人付き合いの無さを痛感する」 人付き合いはあっても、プレゼントすることがまず無かったって言うべきだと思うが。 実際晦は知り合いが随分居る。 例を挙げれば、天地空間あらゆる世界に知り合いが居ると言っても過言じゃないのだ。 特に空界関連の知り合いとは結構付き合いが深いものだと俺は思う。 何故って、一緒になって何かに立ち向かったりした仲なのだ。 そういった忘れようにも忘れられない出来事を共有した仲間とは、 しばらく離れていようが関係は深いものだろう。 彰利 「たはー、実は俺もそこんところは苦手だったりする。     俺も妻達にゃあ案外結婚記念日のプレゼンツを渡してる身なんだがね。     毎度毎度失敗続き。ど〜して上手くいかんかねぇ」 中井出「ちなみに。なに贈ったんだ?」 彰利 「一回目の記念日には皆様に俺様特製のレタスパン」 中井出「……次は?」 彰利 「二回目の記念日には皆様に俺様特製のレタスの置物」 中井出「……次は?」 彰利 「三回目の記念日には皆様に俺様特製の銀のレタスの彫像」 中井出「つ……次は?」 彰利 「四って数字が好きだから、皆様に俺様特製の黒水晶をプレゼントした。     これは結構喜ばれた方かね」 中井出「へえ……で、次は?」 彰利 「金属とか鉱石っぽいのが喜ばれるのかな〜って、     鉄塊をプレゼントしたら半殺しにされた」 中井出「間違ってないかもしれんがそれで相手が喜ぶと思った貴様の思考がまず解らん」 彰利 「でね?いい加減全員同じのなのはどうなの?って春菜が言うもんだからさ。     その次の歳の記念日には別々のものあげたわけよ」 悠介 「へえ……で?なにを?」 彰利 「春菜には肩たたき券、粉雪にはマッサージ券、     夜華さんにはネックハンギングツリー券」 中井出「で、半殺しの目に遭ったと」 彰利 「オッ……よく解ったね。キミすげぇよ」 解らいでか。 悠介 「肩叩き、マッサージときてどうしてネックハンギングツリー……」 彰利 「ちょっとしたジョークだったんだけどね……。     “ねっくはんぎんぐつりーとはなんだ”とか訊いてくるもんだから教えたら、     それはもうこれでもかってくらいズバズバに斬られました」 中井出「篠瀬さんに同情するな……」 彰利 「そんな出来事を教訓に翌年の記念日には豪華なプレゼントを贈りましたよ?」 悠介 「なんだ?」 彰利 「なにやら皆さん怒りやすすぎるからさ、過去に遡ってまで手に入れた伝説のブツ、     “カルボーン”を贈呈しました」 中井出「なァァァつかしィイーーーーーーッ!!!」 悠介 「おっ……お前アレ手に入れてきたのか!?」 彰利 「ウン。当時の金が無ければ買えないものだったから、     ちょいとバイトまでして買ってきたよ。     したっけもうかつて無いほどにボッコボコ。     今やあれほど貴重なものなど無いというのに……」 なにが悪かったんでしょうね?と続ける彰利を前に、俺と晦は唖然とする他なかった。 こいつの無駄なところで発揮される行動力の末には、 本当に無駄なことしか起こらないのだと確認できた瞬間だ。 彰利 「まあそげなようなことが去年まで続きまして。     だから今年は絶対にギャフンと言わせるようなモノを贈ってやろうと思ってます」 中井出「ちなみに予定は?」 彰利 「粉雪にはお義父さまお義母さまとともにゆく温泉巡りの旅を。     春菜には空界一周旅行の旅を。前に行きたいって言ってたから。     で、夜華さんには…………」 中井出「篠瀬さんには……?」 彰利 「ちょっと勇気を出して、ヴラヂャアでも。     ホラ、いつまでもサラシできつく締めておくわけにもいかんだろうし、ね?」 中井出「彰利……いいヤツだったな……」 悠介 「ああ……あいつは今も俺達の胸の中で生きている……」 ふと目を閉じると記憶の中のあいつが、いつでも俺達に向かって親指を立てていた。 彰利 「あ、あれ……?死ぬの確定っすか……?」 中井出「彰利……お前そりゃ死ぬよ……」 彰利 「常識問題なん!?」 悠介 「死なないと思ってるのはお前くらいだ……」 彰利 「そこまでっすか!?あ……ハハハァ〜〜〜ン?     もしやてめぇら、この俺がサイズ間違えて買っちまって、     夜華さんに怒られることを想像してるんじゃねぇだろうな〜〜っ。     残念だがこの俺は妻達のスリーサイズは熟知してるぜ〜〜〜っ!     だから夜華さんの胸のサイズも間違えようがねぇ〜〜〜っ!!」 中井出「それ以前に篠瀬さんにブラプレゼントするって時点で死ぬ」 悠介 「さらに言えば逆に“何故大きさを知っているんだ”とか叫ばれて、     それはもうこれでもかってくらいに殺されると思うが」 彰利 「ギャアもう!じゃあどうしろってのよ!!     立派な大人のおなごなのに     ヴラヂャアのひとつも持ってないなんてカワイソウでしょ!?」 なによりもまずブラジャーから離れるべきだと思うが。 中井出「どうしてブラを持ってない女性がカワイソウなのが確定してるのか解らんが、     無難に別のものをプレゼントするべきだろ。大体お前、     ルァンヂュェルィ〜コーナーに単身で乗り込んでブラを買う勇気あるのか?」 彰利 「アッ……アアーーーーッ!!!」 なかったらしい。 というか買うところまでは考えてなかったのだろう。 プレゼントすることしか考えてないやつが陥りそうな落とし穴だ。 まあ、篠瀬さんにブラをプレゼントしようとした彰利の勇気は国宝級レベルだが。 もし実行でもしようものなら、それはもう大判小判じゃなくてもザックザクだっただろう。 彰利 「プレゼントって難しいのぅ……喜ばれるプレゼントを渡してるヤツって凄いね」 中井出「俺としては斬られようが殴られようが半殺しにされようが、     意地でも新しく別のプレゼントを買ってあげようともしない     お前のほうがよっぽど凄いように思えるが」 悠介 「同感だ」 彰利 「お馬鹿ねィェ〜。相手に気に入られなかろうが、     渡したプレゼントに心を込めてるのは事実なんだ。     それなのに別のモンを渡したら、     最初に渡したプレゼントに篭った思いが無駄になるってもんでしょ」 悠介 「ただの嫌がらせじゃなかったんだな」 彰利 「ウ、ウン、モチロンダヨ?」 悠介 「…………お前なぁ」 彰利 「う、うるせー!じゃあ無職の旦那にどんなプレゼント望むのかねキミ!!」 そういう時こそ仕事しろと言ってやりたい。 過去に飛んでカルボーンを買う時だけどうして率先してバイトしたんだろうかこいつは。 悠介 「一つ訊かせてくれ。お前の行動原動力ってなんなんだ?」 彰利 「全ては楽しみのため!!イコール原ソウル!!」 悠介 「普通に妻のためとか思わないのかお前は」 彰利 「キミにだけは言われたくない」 悠介 「ルナのことを言ってるなら耳が痛いな……」 中井出「プレゼントとかしたことあったか?」 悠介 「あるにはあるんだが……本気で喜んでくれてるのかどうか」 彰利 「なに渡しても喜ばれそうやね。羨ましいわい」 中井出「そうなのか?」 悠介 「なに渡しても喜ばれるから本当に喜んでくれてるかどうか解らないんだって」 彰利 「逆に喜ばれなさそうなものを渡してみるとかはどうかね?」 中井出「ニンニクとか?」 悠介 「それだけはダメだ。あいつ、怒ると物凄くしつこいから」 中井出「いや、そこを敢えて」 悠介 「お前が責任取ってくれるんならやるが」 責任って……殺されろと? たとえば彼女にニンニクを渡しましょう。 すると彼女はキャーと言って逃げるでしょう。 しかしその後にじっくり聞かされるのです。 それが結婚記念日のプレゼントだと。 するとどうでしょう、彼女はこの世さえ破壊せんほどに激怒し、 おそらく封天眩き円月の極致を実行。 そんな彼女の暴走を俺が責任以って抑える……? ダメだ……自分が殺されるイメージしか出来やしない。 イメージです。間合いに入るや否や、どんなタックルを試みようが───────── たちどころに撃ち落とされる!! ……あれはボクシングではなかった。まさしく全局面的!! などとバキの猪狩の真似してる場合ではなく。 中井出「辞退します」 悠介 「賢明だ」 彰利 「ふゥむ……」 なんだかんだと話をしながらも歩いていたが、目的のものはやっぱり見つからない。 だったらと、俺達は別の店へと─── 声  「あっ!あいつだあの男ッッ!!」 彰利 「ム?」 行こうとしたまさにその時、何処からか人の声。 しかもそれがまた聞き覚えのある声で─── 支配人「あいつがお嬢様を連れ去ったんだ!」 助  「オォゥケェイ……」 角  「ヘイボーイ、オ嬢サマヲ何処ヘヤッタ」 振り向いてみれば、屈強ボディの男が二人に支配人さんが一人。 ああ、そういえば俺、お嬢を誘拐したんだっけ。 しかもそれなのに誘拐現場に戻ってる。 悠介 「知り合いか?」 彰利 「知らんよ?」 中井出「お、俺も知らねぇぜ〜〜〜っ」 悠介 「どう聞いても知ってますって言ってるようにしか聞こえないんだが」 中井出「あ、やっぱり?ならばやっぱここはもっと盛り上げるべきだろう」 近づいてくるマッスルボディを見て、まずニヤリと笑う。 実際、ヒロラインで精神を鍛えてからというもの、結構無茶が出来るようになったと思う。 前までは、やりたくても出来なかった無茶が数多く存在したのが現実だったが─── 今ならばかなりの無茶が出来ると信じてる! 中井出「お嬢は預かっている!もしヘタなことをすれば……どうなるか解っているな!?」 支配人「なっ……卑怯だぞ貴様!」 彰利 「ワァ、こりゃまた随分と美味しんぼの副部長似の男……。     しかもこっちの男二人は“はねるのトビラ”の回転SUSHIに出てくる、     椅子を大回転させる男達に似てるし……こっちの方がマッスルだけど」 そもそも助さん角さんなのに外国人ってのはどういう冗談なんだろうか。 お嬢の趣味か? 悠介 「なんだお前、誘拐したのか?」 中井出「もちろんだ!」 悠介 「胸張って言われてもな……一緒に茶を飲んでたあの女か?」 中井出「そうそう。丘ブベボの娘さん」 彰利 「また懐かしい名前を……。     そういや初心者修練場で遊んでからどれくらい経つかねぇ」 中井出「我らも強くなったもんだ……」 悠介 「ていうか完全にあの男たちのこと無視してるな」 彰利 「や、キミが話を振ってくるから」 悠介 「ちょっと待て、俺はちゃんと話をしてただろ。     あの女を誘拐したのかどうかって」 彰利 「なにぃ!?す、すると……!」 中井出「フフフ……そう、俺だ。俺こそが真犯人だ!」 彰利 「ち、ちくしょう騙しやがったなこのブタ野郎!!信じてたのに!!」 中井出「お前に信じてるとか言われてもイマイチ信憑性が無いんだよな……」 悠介 「気持ちは解る」 彰利 「うわひっでぇ!!」 支配人「お、おいっ!キサマらふざけるな!要求はなんだ!なにが目的だッ!!」 三人 『あ、スマン、存在忘れてた』 支配人「ギ、ギィイイイイイイイイッ!!!!」 支配人が怒りだした! 支配人はやる気だ! 中井出「一応無事だとだけ言っておこう!だが少しでも妙な真似をすれば、     お嬢が大変な目に遭うことを努々忘れぬことだな!」 彰利 「なにするん?」 中井出「くすぐる」 悠介 「地味だな……」 だがッ!だからこそ効くッッ!! 地味なものほど人にとっちゃあ拷問になると思うんだ、俺は。 中井出「おっと、こんなところでこんなことをしている場合じゃない。次行こう」 彰利 「ありゃ?身代金の要求とかせんの?」 中井出(ホレ、俺達だけならまだしも、匿ってる場所が蒼空院邸だろ?     俺ゃ櫻子さんと久義さんにだけは迷惑はかけたくないと思ってるから、     どっかから情報が漏れたりして目をつけられるのは避けたい) 彰利 (オッ……なるほど、そりゃ同感) 俺ゃあの二人がかなり好きだ。 だから迷惑をかける行動は極力避けたい。 窓とか散々割ったりしてるが、あれは直せるヤツが居るからだし。 それにむしろ騒がしいのは櫻子さんも望むところのようだった。 でもさすがに犯罪はマズイと思うのですよ。 悠介    (その言い方からすると、        身代金要求あたりはやりたかったように聞こえるんだが) 中井出&彰利『当たり前だ!!見縊るな!!』 悠介    「……お前らってほんと、全力で正直な……」 心底呆れる晦が居た。 だが我ら原中、どんな時でも楽しみたいという心は忘れない方向で生きている。 まあこんな行動も、身元不明な今の状態だからこそ出来ることなんだけどさ。 彰利 「ほいじゃあ行こうか」 中井出「何処に売ってるかね」 悠介 「見当もつかんが……     既に男たちを完全に無視した喋り方なお前らには流石の言葉を贈っとく」 彰利 「やんもうダーリンたら。気にしたってしゃあないでしょ?     だからとっとと行こう」 支配人「お、おいっ!お嬢様は何処にッ……いったい何処に居るんだッッ!!     本当に無事なんだろうな!下劣な真似なんてしていないだろうなっ!」 彰利 「コココ……!我らも随分最低男と見られたものよ……!」 中井出「カカカ……!いや……いや……誤解千万……!     我らをそんな下等人類と一緒にするなど…………!」 悠介 「誘拐してる時点で相当に最低の類に入ると思うんだが……」 彰利 「このクズが!」 中井出「いきなりかよ!ってとにかく行こう!ここですることなんざ既にねぇ〜〜っ!」 彰利 「ああそりゃ同感。中井出いじりくらいしか現在出来ることがない」 中井出「なにそれどういう遊び!?」 悠介 「それじゃ、悪いな。俺達はこれで失礼させてもらう」 支配人「なっ……ま、待て!待てぇえええっ!!」 ギャースカと喚く支配人をほっぽって、とりあえず移動を開始した。 その際、助さん角さんが立ちふさがったが───脅しをかけると素直に従う。 案外あんな小娘の下で働くのを心の底では嫌がってるんじゃないかと思ったが、 そうでもないらしかった。 あの支配人なんて思いっきり自分の昇進しか目になかったように見えたのに。 Next Menu back