───お仲間さんいらっしゃい/暴露なる映像をキミに───
【ケース30:弦月彰利(再)/山本“ジジイ”重國(“KID”ではない)】 さて、そげなわけで───仕事をしている人も無理矢理中断させ、 蒼空院邸に集まってもらってしばらく。 彰利 「ようこそ我が大聖堂へ、お嬢様がた」 中井出「お嬢様がた以外にも居るだろうが」 彰利 「ィヤッハッハッハ、まあよ、まあああああよ。いいでないの。     さて、そげなわけでようこそ皆様。     今日はステキな上映会に来てくださってありがとう。     今回の上映会の司会進行役はご存知、笑顔がステキな色男、弦月彰利と。     オムライス食う時は必ずケチャップでLOVEって書いてる     中井出博光提督でお送りいたします」  ざわ……! 中井出「いや書いてない!!書いて無いよ!?俺!!」 蒲田 「提督……なんてメルヘンチックな趣味を……」 中井出「メルヘン言うなおぞましい!!」 麻衣香「メルヘンって普通、良いほうの言葉なのにね……」 真穂 「メルヘン妖精の所為で随分と嫌な方向に傾いちゃったね……」 麻衣香「でも意外……。わたしの知らない場所でそんなことしてたんだ、博ちゃん」 中井出「してないしてない!!マジでしてないっ!!」 岡田 「隠れた愛か……家庭は円満だな」 夏子 「さすが提督……」 彰利 「ちなみに事故に遭った時もケチャップでLOVEと書くつもりらしいです」 中井出「どんなダイイングメッセージだよ!つーか犯人誰!?犯人LOVE!?誰!?     つーかその流れだと俺、ケチャップ常備してなきゃいけねぇじゃねぇか!!」 彰利 「ライフスタイルらしい」 中井出「怖ぇよ!!なんで常にケチャップ持ち歩かなきゃならねぇんだよ俺!!」 清水 「男だ……」 丘野 「男でござるな……」 殊戸瀬「ウエストポーチ……」 中井出「ウエストポーチ!?」 なんだかよく解らん方向に流れていってる。 集まってくれた人々は『またか』って顔で笑ってるから別にいいけど。 原中も随分と悟られたものよのぅ。 彰利 「とまあ話はこれくらいにして───」 岡田 「よっ!男!」 夏子 「男!」 藍田 「ニクイよ!このっ!男!!」 中井出「いや、本気で書いてないんだが……はは、なんか照れるな……。     そろそろ男って言うのやめないか?」 殊戸瀬「ウエストポーチ!」 中井出「なんでいきなり生き物ですら無いものになるんだよ!!」 丘野 「ウエストポーチ!?提督はウエストポーチだったでござるか!?」 中井出「んなわけあるかっ!!やめろ!ウエストポーチとか言うな!!」 彰利 「エッロマッニア!エッロマッニア!!」 中井出「だからってなんでもいいわけじゃねぇえええっ!!!     つーか彰利てめぇ!!話はこれくらいにしてとか今言ってただろうが!!」 総員 『エッロマッニア!エッロマッニア!!』 中井出「ここぞとばかりに嫌な声援送るなよ!大体俺はエロマニアでもなんでもねぇ!     しかもなんでまた幕ノ内一歩に送る声援みたいなんだよ!!」 中井出が混乱し始めた。 いやぁ、ほんと皆様提督思いです。 こうして提督の緊張をほぐそうとしているのですから。 彰利 「えー、というわけで。皆様に集まっていただいたのは他でもござんせん。     今日からこのクラスに───あ、そうか。えっと、パーシモン」 柿崎 「人を指差しながらパーシモン言うな!!」 彰利 「ままま、キミってば我らの教師なんだから、ここでしっかりしなきゃダメでしょ。     つーわけで転入生が居るからきっちり進行よろしゅう」 柿崎 「……?」 つーか俺らも、蒼空院邸の庭でなぁ〜にやっとんのでしょうなぁ。 まあ楽しいからいいけど。 つくづく原中です、俺も。 柿崎 「あー、それでは」 柾樹 「柿ー!」 豆村 「いいぞー!柿ー!」 柿崎 「まだ何もやってないだろうが!!」 刹那 「だったらなにかかませー!」 彰利 「……キミ、生徒に相当ナメられとんのね」 柿崎 「仮学校設立させといて真っ先にナメてかかったお前にだけは言われたくない……」 それもそうかも。 柿崎 「ああいい。とにかく、転入生を紹介する」 総員 『ハワァアーーーーーッ!!!!』 原中生『………』 喜ぶ皆さん。 物怖じする原中生。 珍しく立場が逆であり、実情を知るからこその態度である。 が、どうせすぐ慣れるでしょう。原中だし。 柿崎 「……で。その転入生ってのは?」 彰利 「彼」 スピム、と指を指す。 するとそこに立っている伝説の黒竜王。 ざわ……と一部の皆様がざわめくが、 実情を知らぬ人々は『あいつかぁ』とかほのぼのと言っている。 刹那 「なぁビーン。なんか固まってるけどあいつのこと知ってるのか?」 豆村 「知ってるもなにも……」 柾樹 「?」 まあ、説明しようとしても難しいもんでしょうな。 彰利 「さあゼット。自己紹介自己紹介」 ゼット「ぐ……、……ゼット=ミルハザードだ」 凍弥 「ほうゼット。ゼッ……ゼット?」 鷹志 「あ〜……なんだ。なんか物凄く嫌な映像を思い出させる名前というか……」 来流美「ミルハザード、って言ったわよね?えーと、ご職業はなにを?」 凍弥 「見合いの席で緊張する馬鹿かお前は」 来流美「うーさい」 ゼット「職業……クラスのことか?“破壊者(ブレイカー)
”だ」 鷹志 「く、くらす?なに?」 彰利 「クラス。まあ階級みたい……というか二つ名みたいなもんですわ。     悠介が“創造者(クリエイター)”で、俺が“黒い秩序”(ブラックオーダー)って感じで」 鷹志 「あ、そ、そか。で……破壊者な彼はもしや……」 彰利 「ん。十八年前、悠介がやっつけた伝説の黒竜王」 総員 『ほぎゃぁああああーーーーーーっ!!!!』 それはとっても素直な反応でした。 皆様は散り散りにとんずらし、 事情を知らない子供たちは連れ攫われながらも困惑するばかり。 柾樹 「ちょ……叔父さん?由未絵さん?母さんまで……」 悠季美「お父さんにお母さん、どうしたの?」 凍弥 「提督!ああ、原中ではない俺だが今は提督と呼ばせてもらおう!!     これは一体どういうことか!!彼奴めを仲間に引き入れるとは一体!?」 中井出「うむ閏璃新兵よ!いい質問だ!!     彼、ゼット=ミルハザードはこれより我らの仲間となる!!     我々は既に彰利一等兵より伝達を受け、大まかな事情は知っている!!     だが細々とした物事は知らぬが故、今日これより───     原中名物“徐鵜獲威嘩遺(じょうえいかい)”を開始したいと思う!!」 遥一郎「上映会って……あの記憶を映像に映すやつか?」 中井出「うむ!その通りだ穂岸新兵!     その映像を以って、全てを説明してもらおうという所存!!     なお今回の映像はゼット氏と対面した者全てから抽出した!!」 彰利 「なんと!?貴様いつの間に!!」 中井出「フッ……長きに渡り空界に住んでたこの俺が、     なんの進展も無しに日々を過ごすと思うたか……!」 俺は原中の中井出提督だぞ、と胸を張る中井出。 彰利 「……すまん、正直なんの進展も無しに、     日々をオムライスにケチャップでLOVEって書いて過ごしているのかと……」 中井出「進展したしそもそも書いてねぇ!!     つーか寂しすぎるだろその生活!     俺の十八年、ケチャップでLOVE書くだけの人生か!?」 凍弥 「寂しい人生送ってたんだな、提督……」 中井出「へ?あ───や、ち、違う!     今のはべつに俺の生活を話してたんじゃなくて喩えとしてだなっ……」 中村 「提督……苦労してんだな……」 岡田 「提督……これ、少ないけど取っておいてくれ……」 中井出「提督、とか言いながら哀れみを込めた目で金渡すなよ!     しかも一円!?なにこの慕われざま!!」 丘野 「麗しき友情でござるな、提督殿。     今度、食に招かれた際には拙者もLOVEと書いてみるでござる」 中井出「やかましい!!」 ともあれ、上映開始。 上映するにもやっぱり暗いほうがいいとのことで、ゼノが鎌を始解で解放。 景色を闇で包み、準備が整った。 中井出「んじゃ、まずはやっぱ彰利と晦の過去からだな。いいか?」 彰利 「もう散々見せたっしょ。俺ゃ構わんよ。悠介も構わんだろ」 中井出「……つーか起きないな、晦」 彰利 「一発で起きる秘密の呪文があるけど。どうする?」 中井出「───それは俺も知ってるけど、死にたくないからやめておく」 丘野 「では、及ばずながら拙者が」 中井出「なにっ!?貴様がすると申すか丘野!!」 丘野 「はっ……これも忍の悲しき務め───止めてくださるな提督殿!!」 中井出「なんという心意気よ……!うむ、骨は拾ってくれようぞ!」 丘野 「御意に───」 ノリノリ丘野くんが走る。 そして素早くみずきの背後に回ると、その背中に手を付き─── 丘野 『起きろモミアゲ〜』 豆村 「うぃいっ!!?」 なんとも聞き分けのつかない、 みずきが喋ったとしか思えない声で腹話術をしてみせたのだ。 そしてそれが終わると身を屈め、颯爽とこちらへ戻ってくる。 その直後───バゴチャアッ!! 豆村 「はぶぅい!!?」 本当に覚醒した悠介にみずきが殴られ空を飛んだ。 OHジーザス……。 丘野 「提督……起きましてござる」 中井出「うむ、よくやってくれた」 彰利 「みずきは泡吹いてるけどね……」 知らんかった。 丘野って声真似上手かったのか。 悠介 「ったく……最悪の目覚めだ……」 彰利 「やは、親友」 悠介 「ん、よ。ところでこれはなんの騒ぎだ?」 彰利 「いやいやまあまあ。それより体調はもうええんか?」 悠介 「ああ。不思議となんの疲れも消費も無いというか……     俺、全力出して力を使い切ったよな?なのにそれが全部満たされてる」 彰利 「………」 すげぇよこの親友。 やっぱ人は自然にゃ敵わないってことかね。 彰利 「あー、悠介?出来ればオイラの力も分析して治してくれんかね?     力が枯渇状態だから何も出来やしねぇ」 悠介 「ロビンへの変身くらいは出来るだろ」 彰利 「こがあな大衆の面前でやったら俺もう立ち直れませんよ!!」 悠介 「まあ、確かに」 なんでもない普通の笑顔を向けながら、悠介が理力を展開させる。 ……その笑顔が、ただ“普通”だった。 今までみたいにどこか押し込めたような雰囲気は無く、どこまでも自然な笑顔。 そんな笑顔を見たからだろうか。 ああ、もう吹っ切ったんだな、って思えた。 悠介 「───よし、終了」 彰利 「速ッ!!しかも本気で治ってるし……」 ……あの。俺の力ってそがあに単純ですか? 悠介 「分析するっていうよりは死神の力を満たす理力を発動させただけだよ。     死神の力を回復させてやれば鎌の力も回復するし、     鎌が回復すれば黒も回復するだろ。分析する必要なんてない」 彰利 「あ……ナルホロ」 考えましたな……。 中井出「まあそんなわけだ晦一等兵」 悠介 「おお提督貴様いつの間に。そしてなにがそんわけなんだがまるで解らないんだが」 中井出「まあまあ。我らの歴史を暴露しよう、ってことになったんだよ。     だからゼットを仲間内に引き入れるついでに映像でも、とな」 悠介 「ゼットを?ああ、賛成だ」 彰利 「早いスね」 悠介 「今のゼットならなんの問題も無いだろ。俺はいいと思うぞ。なぁ、ゼット」 ゼット「うん?……ああ。俺は元々、こうしてセシルと一緒に居られればそれでよかった。     以前は荒れた感情に飲まれていたが、今はそんなことはない。     酷く落ち着いている。お前らの期待には沿えるだろうよ」 彰利 「そかそか。でもね、言っとくけどみさおさんは悠介の娘だからね?     結婚したいとかほざくならまずそこんとこなんとかせんと」 みさお「あ、ああああ彰衛門さんっ!?なななにを勝手なこと言ってるんですか!!     そ、そんな結婚だなんて!!」 彰利 「せんの?」 みさお「うぐっ……あ、あの、その……」 彰利 「ゲヘヘヘヘ、旦那、どうやら麗しのセシル嬢は脈ありのようだぜ?     ここで男らしくズバッとキメてみたらどうですかね?」 悠介 「いや、ゲヘヘヘヘってお前」 ゼット「ん?……待て。     それは俺がセシルとくっついたら晦が俺の父親になると、そういうことか?」 彰利 「押忍。見出しは───『衝撃事実!彼の義父はライバル!?』あたりで」 ゼット「………」 彰利 「さあ!義父(とう)さんと呼んでみてくれ!!」 ゼット「ぐっ……ぐ、ぐくう……!!」 彰利 「オラどうしたてめぇーーーっ!!     貴様それでも三千年ごしの愛を貫いた伝説の黒竜王かぁーーーっ!!」 みさお「言葉の中にここぞとばかりの恨み辛みを感じますね」 悠介 「こいつ、大物ぶってる割には小さなことに拘るから」 ほっといてつかぁさい。 彰利 「それともなにかぁ〜〜?まさかアンタァ〜〜〜、     口先だけでみさおをたぶらかしてたんじゃああるめぇなぁああ〜〜〜」 みさお「うわ、顔が物凄くむかつきますね」 悠介 「それより既に映像が放映されてるんだが、見なくていいのか?」 みさお「いいですよ。わたしは父さまのことはよく知ってますから」 悠介 「そか」 彰利 「ほれ言え、言ってスッキリしちまえって。     どうせいつかは通る道なんじゃろ?え?」 ゼット「ぐ……ぐぐぐ……!!」 彰利 「ほれ、ほぉおおれぇえええ……ン?どうしたネ?ン?     言わんの?キミの愛ってそがあなもん?俺の愛は広いぜ?     なにせ連日引っ張りだこにされて大岡越前に泣いてる感じよ?     みんな俺を愛してくれてるし俺もみんなを愛してます。     でも毎日がとても痛いです。もうね、みんなね、手加減してくれないの。     みんな納得した上で僕と結婚してくれたのにね?みんな嫉妬深くてね?     手を抓られることなんて茶飯事ですよ?想像できます?     卍解状態での抓りって地獄の痛みなんですよ?でも僕愛してる」 みさお「その割には涙が止まってませんけど」 彰利 「うーさい!俺、幸せ!お前、それ、解らない!」 中井出「そんなバイオレンスな幸せは正直どうかと思うが」 丘野 「つーかなんでカタコトでござるか?     ───もしや忍術!?敵の忍術でござるか!?」 彰利 「違いますよ失礼な!つーかいつまで忍者の真似してんの丘野くん!!」 丘野 「今日一日は続けようとか思ってるでござる」 彰利 「そうかえ。そんじゃあ話が逸れたと夢想して一息ついてるそこゆくゼット。     答えを今すぐ聞かせぇかぁ」 ゼット「ぐっ……!!」 なにやら逃げようとしてゼットの手をズバムと掴む。 いけませんねぇ、愛から逃げようなどと。 彰利 「質問。キミはみさおさん───セシル嬢のことが好きかね?」 ゼット「っ……三千年だぞ……!訊くまでもないだろう……!!」 彰利 「ふむ。じゃあそれは彼女といつまでも一緒に居たいと思うほどかね?」 ゼット「当たり前だ……!」 彰利 「よし!ならば覚悟を持ちなされ!     真に好きなら悠介を父親と見ることさえ出来る筈!!     解るかね!?キミは今試されているのだ!キミの生き様は“強くなる過程”!     その生涯を進み、ここまで強くなったキミだからこそ!     今は実力ではなく“心”を強くするのです!     で、みさおさんに告白して悠介に娘さんを俺にくださいと!」 ゼット「言えるか!!」 彰利 「お?なにノン?お前もしかして腰抜けノン?     あれだけ強いくせに心はとっても雑魚だノン?ン?ンン〜〜〜?」 ゼット「ご……ごごごごご……!!!」 ゼットの顔に顔を近づけつつ、その頬をペチペチと叩く。 するとゼットくんのコメカミにムキムキと怒りの血管が。 中井出「……彰利ってさ、人を怒らせるのだけはとことん上手いよな」 みさお「“だけ”って部分に激しく賛同します」 中井出「ところでさ、今……丁度彰利がゼノとの戦いに敗れて     一回目の無限地獄を開始したところなんだが───」 みさお「早いですね」 中井出「ん。“映像を見る”って意識を利用して、頭の中に直接叩き込んでるからさ。     普通の地界人の脳内が読み込める一定の速度で映像を流してる。     だから画面自体には実際なにも映ってない。     けど、画面を見た人の脳には叩き込まれる。そういう仕組み」 みさお「……随分上達したんですね」 中井出「そりゃお前、十八年だし。まあそんなわけで、     案外脳ってのは機能が高いからこれくらいの速さくらいどうってことないわけ。     ほんとはもっと早くできるんだけど、個人差ってのもあるだろうから」 なるホロ。 などとゼットを焚きつけつつ納得。 彰利 「つまり、映像が終わってみりゃあ彼ら彼女らは、     それだけ随分と長い映像を見ていた、と勘違いするわけかね?」 中井出「そだな。実際お前がやった上映会も似たようなものだろ?」 彰利 「まぁよ。けどそれをキミがやってのけるとはねぇ……さすがだ提督。     伊達にエロビデオが目的で千年の寿命を受け入れてねぇ」 中井出「それはもう忘れろ」 彰利 「さすがだ提督。伊達にオムライスにケチャップでLOVEって書いてねぇ」 中井出「書いてねぇっての!!」 彰利 「すまん、オムレツだったのか」 中井出「書いてねぇって言ってるんだよ!!」 彰利 「だったらキミはなににLOVEって書いてるというのかね!!」 中井出「捏造ごとで逆ギレすんな馬鹿野郎!!」 彰利 「グ、グウムッ」 怒られてしまった……。 中井出「んで?ゼットのほうはどうなったんだ?」 彰利 「いやよぉ、実はよぉ、聞いてくれよぉ。ったくまいったもんだぜあのチキン」 ゼット「誰がチキンだ!!」 彰利 「お?なにノン?なんか文句があるのかノン?     たったひとりも愛せない三千年の愛戦士になにか言われる筋合いなんてないノン」 中井出「……お前、これで五人だっけか」 彰利 「YESノン」 ゼット「なっ……お前には情緒というものが無いのか!!」 彰利 「ちなみに先ほど、伝説の黒竜王が意外にシャイだということが解りまして」 ゼット「ぐあぁああやめろ貴様!!それは何かの間違いだ!!」 彰利 「もしかして竜人ってシャイボーイにしかなれないのかねぇ?ィヤッハッハッハ」  ドボォン!! 彰利 「へぶぅい!!」 中井出「うおっ!?ナルトが飛んできた!!」 問答無用で腹を殴られました。 それとともに腹の中のものが飛び出した所為で中井出が大層驚いておりました。 中井出「……なぁ彰利?     どうしてお茶会でケーキと紅茶飲んでただけなのにナルトが飛び出すんだ?」 彰利 「おががががが……!!ヤ、ヤザワクンに訊いてください……!!」 うおお効いたァ……!!さすがだぜ黒竜王ナックル……!! なんつーの?こう……どっしりとした歯応え───じゃなくてダメージが……。 つーかもう俺が殴られることを誰も心配してないのが凄ぇ。 過去の積み重ねって案外怖いです。 彰利 「ゲフッ……!け、けどねぇゼットや……?     チキンって言われて告白もしねぇんじゃあ、こりゃあアンタ、チキンだぜ……?     実際、キミとみさおさんは好き合ってるじゃねぇの……。     だというのにキミは告白をせん。なにがキミを踏み止まらせてるのかね……?」 中井出「そりゃお前、黒竜王としてのプライドとかじゃないか?     考えてもみろよ、黒竜王だぞ黒竜王。それが人に告白する姿って……」 彰利 「………」 …………。 彰利&中井出『はぁ……』 ゼット   「……おい。なんだその溜め息は」 彰利    「あ、いや……なんだ。わ、悪かったな、ゼット。        そうだよな、無理はいけないよな……」 中井出   「いや、ほんと気にしないでくれ。        彰利一等兵が暴走するのはいつものことだし……」 彰利    「そ、そうそう。べつにキミが竜王状態で爪の先で器用にお花を摘んで、        それを片手にみさおに告白してる姿なんて想像してなぶしゅっ!!        ぶふっ!!ぶっ……ぶくくっ……!!!」 ゼット   「……死への扉を見掛けるのは一度だけでは足りないか……?」 彰利    「ヒィッ!!こ、殺しはいかんよ殺しは!!        大体キミがいつまで経っても告白せんから        こげなことになってるんじゃない!!あなたっていつもそう!!        態度だけはデカイくせにいつだって《ドボォン!!》げぶぉはぁっ!!」 中井出   「うわ痛ッ!!今思いっきり鳩尾入ったぞ!?」 丘野    「吐く!?吐くでござるか彰利殿!!        ならばこのエチケット袋を使うでござる!!」 中井出   「おお、用意周到だな丘野ニ等兵」 丘野    「フフフ、拙者、妻が用意周到なもので」 彰利    「おげっ……おげげっ……うげぇえ……」 今のは効きました、マジで。 一瞬お花畑の向こうで動物と戯れる綺麗なねーちゃんの幻が見えたくらいだ。 でもエチケット袋はいりません。 なんか市販のホットドッグに付属してるケチャップでLOVEとか書いてあるし。 丘野 「おお、気づいたでござるか彰利殿。     実は先ほど櫻子殿にケチャップを譲って頂き、早速書いてみたでござるよ」 中井出「丘野二等兵……貴様どうあっても     俺をケチャップLOVEマニアだと信じ込みたいらしいな……」 丘野 「拙者、提督殿を信じてるでござる」 中井出「いや、それ全然信じてないから。解ってる?」 提督と忍者の話を聞き流しながら、とりあえずはお腹に黒を込めて回復。 やっぱね、常日頃から黒状態じゃなくちゃヤバイよほんと。 ゼットくんが仲間に入るなら余計に。 彰利 「はふぅ……落ち着いた。さて提督、今映像どのあたり?」 チラリと画面を見てみるも、全然見てなかった俺が見ても最初っから始まるだけでした。 ただ皆様が泣いたり笑ったりしてるのを見ると、少々羨ましい気も。 中井出「今丁度、未来からお前が帰ってきてるところだな。     日余二等兵に盛大にフラレとる」 彰利 「グ……グウウ〜〜〜ッ!!」 なんてもの見せてんでしょうねこの人……。 でもいいです、どうせもう俺に曝せるような恥なぞ残っちゃいないでしょう。 こうなりゃロビン変身シーンだってしっかり見てもらおうじゃねぇかチクショウ。 ヤケクソになった男は強ェエぜ!?死んだもんじゃねぇや!! 彰利 「んじゃあその調子で頼ンます。で、ゼットや?もう告白できたかね?」 ゼット「出来るかっ!!」 彰利 「ぬう……マジでシャイだな黒竜この野郎……。     だったらホレ、悠介を親だと思わなくていいからみさおさんに告白だけでも」 ゼット「っ……!!」 彰利 「ホレ!告白するッス!なにやってるッスグズが!!     そんなことで三千年越しの恋が叶うと思ってるッス!?     ホント力ばっかり強くて脳みそクソタコッスねぇ〜〜……。     なにッス?キミそこまで腰抜けッス?」 ゼット「オッ……オオォオオオッ……!!!」 みさお「うわ……ゼ、ゼットくん落ち着いて!?     なんか怒りのあまりに顔色が変色してるよ!?」 悠介 「さすがだ佐古田……。口調を真似ただけでも物凄い破壊力だ」 彰利 「真似してみて少々寒気しましたもの」 悠介 「お前は常日頃から、相手を逆上させる時は似たようなこと言ってるだろうが」 彰利 「そうだっけ?」 よう解らんけど。 彰利 「まあいいコテ、ここはちと席を外してやろうじゃないかネ。     悠介、ちと向こうでのんびり話でもしようや」 悠介 「そうだな。提督、お前はどうする?」 中井出「……なんか晦に提督って呼ばれるとくすぐったいな。まあいいけど。     俺はここで映像の管理でもしてるよ。話があるならじっくりして来ていいぞ〜」 悠介 「そか。じゃ、行くか」 彰利 「オウヨ」 中井出たちがパーティーから抜けた!! ……いや、人数から言うと抜けたのは俺達のほうなんだろうけど。 つーかなに考えてんでしょうね、俺。 悠介 「何処で話す?」 彰利 「悠介の部屋行くか」 悠介 「解った。レタスくらいはご馳走するよ」 彰利 「御意」 瞬時にお腹が目覚めました。 ケーキとか紅茶を飲みはしたが、レタスは別腹です。 【ケース31:晦悠介/変愛スクランブルエッグマックマフィンランドルフィンキック】 ───……ガタン。 悠介 「まあ、相変わらず無駄なものは置いてない部屋だけど、適当にくつろいでくれ」 彰利 「ウィ」 彰利を連れ、自室に入った。 洋館内だというのに完全に和室になっているそこは、 ある意味で自分の趣味に染まった場所だった。 備え付けの(というか俺が備えた)急須とポットでお茶を淹れ、 彰利に渡すと俺も一息をつく。 もちろん座る場所は椅子などではなく畳みの上に座布団を敷いて、その上に。 小さな卓袱台もあるので、中々趣のある部屋になっている。と思う。 彰利 「いやぁ〜〜……なんつーか洋館の中とは思えんね」 悠介 「俺も時々『これでよかったんだろうか……』って思う時があるけどな。     ようは慣れだな。やっぱり俺には洋館洋室は合わない。落ち着かないんだよ」 彰利 「なるほど」 『その割には工房は思いっきり中世時代の外国部屋だねぇ』と続ける彰利に、 『ほっとけ』と返す。 お茶を啜ってから熱い息を吐くと、 聴覚が外で映像を見ている人々の歓声やら悲鳴やら、よく解らん絶叫やらを拾う。 あっちはあっちで楽しくやってるみたいだ。 まあ一度見たことのある知り合い仲のやつらは映像を見ないで、 映像を見ている自分の子供や知り合いの子供の様子を見て楽しんでたようだけど。 彰利 「んー、なんつーか疲れたぁ」 悠介 「……そうだな。ちょっと疲れた。     まさか申し合わせて集まった夏休み中にゼットまで集うなんて」 彰利 「べつに呼んでませんっての。ねぇ?」 悠介 「ははっ、まあいいんじゃないか?     なんだかんだで果たせなかった最初の目的、果たせたんだから」 彰利 「最初の目的?ナニソレ」 悠介 「俺が最初、ゼットに立ち向かおうとしたのは『ゼットを救うため』だろ?     それが果たせたって意味だよ。倒すしかなかったあの時とは後味が全然違うよ」 彰利 「あ……あーあーあー、そういやそがあな無茶なことをほざいとったねキミ」 悠介 「ほざくって、オマエな……」 そりゃあ自分でも無茶な話だったってのは理解出来てるけど。 それでも良かった。 目的を達成できたことがじゃなくて、 不幸ばかりだったゼットがちゃんと幸せになれる基軸を築くことが出来たことが。 彰利 「嬉しそうやね」 悠介 「ん?嬉しいだろ。幸せになれるヤツが増えれば」 彰利 「そらそうかもしれんけどね。     俺としては死闘繰り広げたばっかの相手の幸せなんざ願えねぇよ?」 悠介 「ん……そっか。じゃあ俺が異常なだけかもな」 彰利 「んむ、そりゃ認める。なんたって俺みたいなヤツと親友やってるし」 ……彰利よ。それは胸張って言うような言葉じゃないと思うぞ。 悠介 「まあ正直、俺が異常かどうかなんてどうでもいいんだ。     実際、かつての自分が懐かしいって思うくらいに変わってるんだし」 彰利 「おお、吹っ切れたねマジで。なんつーか感情そのまま表に出してるって感じ」 悠介 「実感はあまり無いんだけどな。多分実際そうなんだと思う。     感情がどうとかとは関係無いが、     いろいろなものに支えられてるって実感だけはひしひしと感じてるよ」 彰利 「そら良かった。やはり人間、笑いたい時には笑わなくては」 悠介 「?前からでも俺は笑いたい時には笑ったぞ?」 彰利 「あーそうだったねぇ、主に俺の珍体を見た時とか」 悠介 「腐るなよ。ほら、お茶飲め」 彰利 「ごっつぁんです」 ウルフマンの真似をしてから注がれたお茶を飲む彰利。 相変わらず、こいつの行動原理はよく解らない。 けど、解らないからこそ飽きないってのは確かにあった。 彰利 「しっかし俺達の付き合いも長いよねィェ〜。     普通、いくら親友がどうとか言ったって、     家族とかが出来るとどんどんと疎遠になったりするもんだけどねぇ」 悠介 「簡単に切れるような腐れ縁だったらとっくに切れてるだろ。     それこそ、無限地獄の中でお前が諦めるなりなんだりしてして」 彰利 「ふむ、確かに。けど俺は諦めんかったね!だって───……あー……」 悠介 「彰利?」 彰利 「そうだよなぁ、結局はいっちゃん最初に互いに認め合ったからこそ     見捨てられないって思ったんだよなぁ。今さらなに言ってんだろ俺。     誰と結婚しようがどんなことを決行しようと思おうが、     お前と一緒じゃないと心から楽しめて無いんだわ俺」 悠介 「………」 困ったような照れたような笑みがそこにあった。 かつて、とても冷たい作り笑いをしていた少年は今、 心底感情から湧き出た表情で照れていて─── それを見たら、確かに俺達は支え合うことでここまで来れたんだなって実感できた。 彰利 「くぁ……ぁ〜あ……っと……。     なんかいろいろあって安心したら眠くなってきたわい……。     映像のほうはまだ時間かかるだろうし、俺ちと寝るわ」 悠介 「ああ、そうしろ。俺は庭のほうに戻ってるから」 彰利 「おー……」 既に間延びした眠たげな声の親友に軽く手を挙げて返すと、俺は静かに部屋を出た。 ……さて。 外が異様に騒がしいが、いったい何事───? ───……。 ……。 民  『キャアアアーーーッ!!!!きゃああああーーーっ!!!     キャーーーッ!!?キャーーーッ!!!』 そんなこんなで庭まで戻って来た俺。 そこに居る人々は映像を見ながら真っ赤になるわ悲鳴上げるわ、 さらには女衆が男衆の目を隠すわで…… 豆村 「ああっ!やめろ!離すんだ姉さん!これじゃあ見れない!!」 聖  「だ、だめっ!だめだめだめだめだめっ!!まだみずきには早いよっ!!」 紗弥香「柾樹ちゃん見ちゃだめ!!目、閉じて!!」 柾樹 「ぎゃああああああ!!!閉じる!閉じるから離して!     ていうか紗弥香さん!目!目に指が食い込んでる!     これ目隠しじゃなくて目潰しだってギャアアアアアアア!!!!     刹那!刹那助けて!潰れる!目がっ!!     料理などを運ぶ際に日々鍛えられたこの力……既に女のものじゃない!!」 刹那 「おー、頑張れー」 みさお「刹那っ!お前もさっさと目を閉じろ!!」 刹那 「ンなこと言ったって。見てなきゃ映像先に進まないじゃん」 豆村 「おおその通り!だから姉さん!さっさと終わらせるためにも離すんだ!!」 聖  「そういう問題じゃないのっ!!」 ……よく解らない。 解らないが、嫌な予感がまるで消えない。 悠介 「……提督。これはいったいなんの騒ぎだ?」 中井出「え……いやー……それはちょっと俺の口からは……」 殊戸瀬「映像の中に不適切な18禁映像が混ざってたのよ」 悠介 「18禁?なんだそれ」 殊戸瀬「保身のために聞かないほうがいいと思うけど。聞きたい?晦」 悠介 「そりゃ気にならないって言ったら嘘だしな……     ってそこ、なんで逃げる準備してる」 中井出「い、いや、俺は別に逃げるだなんてそんな」 殊戸瀬「えぇとね。ほら、この映像って晦、弦月くん、     他ゼット=ミルハザードと戦った者の記憶を元に展開されてるじゃない」 悠介 「ああ」 頷きつつ、提督の襟首をさりげなく掴んでおく。 殊戸瀬「つまり早い話が思いっきりダイレクト。     そりゃあ細かな食事とかトイレの事情とかは度外されてるわけだけどね。     その中にしっかりとあったわけよ。晦とルナさん、弦月くんと妻三人の情───」 マゴロシャァアアアアアアアアアアンッ!!!!! 中井出「ほぶぼぎゃぁあああああああーーーーーーっ!!!!」 中井出が俺の拳で空を飛んだ。 そしてゴシャ〜〜ンと大地に沈む。 中井出「うぶっ……うげっ……げげ……」 悠介 「ふぅううう〜〜……よし中井出……いっぺん死んでみるか」 中井出「ゲッ……ちょ、ちょっと待てぇえええーーーーーーっ!!!     これマジで予想外だったんだよ!ちゃんと調整したと思ったのに入ってて……!」 悠介 「よし、遺言は確かに聞き届けたぞ……」 中井出「なっ───ちょ、待て!!マジで───ヒィ!なんか黄昏が広がっていってる!」 殊戸瀬「あー、ちょっと待って晦。今は提督を始末するより記憶操作のほうが先でしょ」 悠介 「───む」 確かに。 今は提督に構ってる暇は無い。 一刻も早く─── 丘野 「どんな心境でござるか深冬殿!自分が産まれるための過程をその目で見るのは!」 深冬 「や、や……やぅぅ……!」(しゅぅううう……) 丘野 「おお!顔から湯気が出るほど恥ずかしいでござるか!     今の気持ちを是非とも聞かせてほしいでござる!」 清水 「是非聞いてみたい!さあさあさあさあさあ!!」 深冬 「う、うぅううう……!!」 ───まず深冬を助けよう。 俺は腰を落として構えると神速で拳を突き出し、空拳を放った───!!  ───ドッパァアアンッ!!! 清水 「へぶぅえぇえっ!!?」 ドゴロシャドカーーン!! 丘野 「おおっ!?清水殿が何もないところで突然一回転して倒れたでござる!!     もしや忍術!?今のは忍術でござるか清水ど───」  ドパァアアンッ!!!! 丘野 「のぉおおおおっ!!!?」 ドゴシャアッ!! ……清水、丘野、転倒。 それを確認すると休む間もなく首飾りを錫杖に変えて振り回し、 虚空に浮かぶ画面の在り方を書き換えた。 そのすぐ後にその場に居る全員の記憶をいじり、その……情事、の部分を乖離する。 当然そうすると記憶に空白が出来てしまうため、 そこに超絶ミラクルダンディー・コックリーニョさんの記憶を埋め込んだ。 それで一息。 すると─── 総員 『ほぎゃああああああーーーーーーーーっ!!!!!     なんかゴリモリマッチョなアメリカ人男性が頭の中に渦巻いてるぅっ!!!!』 その場で18禁シーンを見た人々は絶叫。 もちろんきちんと呪いも付加させておいたので、 彼ら彼女らの夢の中にもいつかコックリーニョさんが訪れることだろう。 ……まあそれはそれとして。 豆村 「……あれ?なんか今、俺とてもステキなものを見てた筈なのに。     なんで筋肉ゴリモリのアメリカ人男性ばっかり思い返されるんだ?」 柾樹 「ううっ……!世界が……世界が赤いよママン……!!」 紗弥香「ご、ごめんね柾樹ちゃん!ごめんね!     あうぅ……わ、わたし、なんで目隠しなんてしてたんだろぅ……?」 刹那 「で……えーと。みさおさん?なんで俺、みさおさんに刀向けられてんのかな」 みさお「あぇっ!?え、えと……?父さまっ!?」 悠介 「む。さすがにみさおは解ったか。悪いなみんな、     さっきの映像内に不適切な映像が入ってたから記憶をいじらせてもらった。     頭の中に突然住み着いたアメリカ人男性は     超絶ミラクルダンディー・コックリーニョさんといって、     記憶を無断で消してしまったせめてものお詫びというか穴埋めだ」 総員 『全然お詫びになってませんよこれ!!』 声を揃えて言われてしまった。 豆村 「あ、あの、悠介さん?消された記憶ってどんなもんだったんです?     一応勝手に消されたわけだから、知る権利くらいあってもいいかと……」 悠介 「………」 柾樹 「……?あの、悠介さん。もしかして照れてます?」 悠介 「恥ずかしがってるんだよっ……!!いいから忘れろっ!記憶のことは忘れろっ!」 豆村 「フフフ、忘れてほしくば俺に卍解を」 悠介 「断る」 豆村 「即答!?じゃー俺も忘れな〜いぞっと」 悠介 「べつに許可取らなくてもさっさと記憶を消すことくらい出来るが」 豆村 「ごめんなさい」 素直に謝られた。 が、いきなり人を脅迫してくるとは…… さすがは彰利の息子だって納得していいんだろうか。 なんにせよ最悪だ。 記憶をいじったとはいえ、他人に自分の情事を見られるのはとんでもなく恥ずかしい。 悠介 「提督よ……とりあえず貴様には相応の恥ずかしさを受け入れてもらうぞ……」 中井出「いやほんと待て!俺はちゃんと注意して映像を上映したって!」 悠介 「原中の盛栄達よ!提督への処罰はなにがいい!」 藍田 「押忍!とりあえず提督の情事も流すべきであります!!」 麻衣香「それだとわたしがただのとばっちり受けることになるんだけど……」 藍田 「ぬ、そらそうだ」 丘野 「ではメルヘンに差し出して一度襲われたのちに救出するのはどうでござろうか」 中井出「あれだけ派手に転倒したなら気絶しとけヒヨッ子!!」 丘野 「拙者は忍ゆえ、受身くらいはとれるでござる」 藍田 「じゃあとりあえず提督も拒まなかったってことでメルヘンに差し出す方面で……」 中井出「いやじゃぁあああああああっ!!!!     あんなヤツと結ばれるなんてイヤァアアアアッ!!!」 清水 「じゃあ方向性を変えよう。     コックリーニョさんの夢を最後まで見せるってのはどうだ?」 中井出「ヒヨッ子貴様俺に掘られろってのか!?」 中井出は必死だ。 中井出「ノー!ノゥノゥノゥノーーーゥ!!偶然の事故に対しての罰が重すぎる!!     冤罪を求める!!俺は無実だ!!」 悠介 「じゃあ多数決で。提督は無実だと思う者」 総員 『死刑!!』 中井出「えぇっ!?あ、あれ!?ここ多数決の場だよね!?     な、ななななんでいきなり決も取らずに死刑なの!?ねぇ!!」 女衆 『黙れクズが!!』 男衆 『死ね!!』 中井出「ちったぁ同情しようとか思わないのかてめぇらぁあああっ!!」 藍田 「原中だし」 中井出「物凄い説得力だ……」 彼は涙ながらに納得したという。 まあ長い間提督やってりゃあ原中の奔放さなど一番知ってるだろう。 中井出「とにかく聞いてくれ!俺はちゃんと設定したんだって!     俺が情事を映像に映して見せるようなヤツだと思うか!?」 総員 『エロビデオ目的で魔導回路手に入れたエロマニアだしなぁ……』 中井出「うぐっ……ぐっ……!!ふぐぅううう……っ!!」 彼はマジで泣いたという。 悠介 「はいそこまで」 藍田 「む?晦?」 悠介 「居るんだろ、ベリー。あんまり悪ふざけがすぎると俺も怒るぞ」 何処にともなく声を放つ。 すると─── 声  「あっはっはぁ、やー、バレてた?」 聞き覚えのある声が、蒼空院邸の屋根から聞こえてきた。 見上げてみればきっちりとそこに居るベリーことヤムベリング=ホトマシー。 ご丁寧に『とーぅ!』とか言って飛び降り、スタムと綺麗に着地して、  ワシャアンッ!!! ベリー「ぴうっ!!?」 後を追うように降ってきたタライに頭を打たれてグシャアと倒れた。 丘野 「こ、これはタライ落とし……!?敵の巧妙な罠でござるな!?」 藍田 「つーかこの人いつの間にこんな面白い人になったんだ?」 悠介 「いや、とりあえず罰として     タライの一撃でも見舞ってやろうと創造したんだけどな。     まさか飛び降りるとは思ってなかった。     “ベリーの頭上に落ちるタライが出ます”って弾けさせた途端に飛んだもんだから     屋根から地上までの落下重力は十分だ。あれは誰だって痛い」 丘野 「現に一撃で昏倒してるでござるからな……。     ベリー殿、拙者飲み物を持っているでござる。     頭が揺れる時はとりあえず落ち着くために水分を取るでござるよ」 言いつつ、丘野くんが竹筒をベリーに渡す。 ベリーは頭を押さえながらもそれを受け取ると栓を抜き、んくんくと一気に飲み─── 悠介 「気が利くんだな。ところでなんなんだ?あの飲み物」 丘野 「プロテインでござる」 ゲボハァッ!!───吐いた。 丘野 「ああっ!?なにをするでござるか!!きちんと飲むでござる!!」 ベリー「飲めるかぁっ!!───ぶっへ!げほぉっ!!     かっ……な、なんてもの飲ませんの!!     こんな不味いもの産まれてこのカタ飲んだこと無いわよ!!」 丘野 「精神を鍛えるためには已む無しでござる」 ベリー「だったら残り全部一気飲みしてみせなさいよぅ」 丘野 「拙者は既に妻を持つ者故、女人との関節接吻など冗談ではござらんこのクズが」 ベリー「うわ、なんかさりげなくヒドイこと言ってるこの忍者。     ちょっと悠介ー?なんなのこの忍者。躾がなってないわよぅ」 悠介 「そんなことはどうでもいいんだ。それよりお前はなにしに来たんだ」 ベリー「ああほら、悠介たちさっき空界に来てたでしょ?     気配をいっぱい感じたから今が前に言ってた集まりの時なのかなー、って」 悠介 「遊びに来たなら遊びに来たと最初から言え……」 ベリー「あははー、じゃあうん、遊びに来たー」 にこー、と無邪気に笑う赤い魔女。 微かに香る魔法薬の匂いから察するに、ついさっきまで薬品調合でもやっていたようだ。 丘野 「それでは皆の者!張り切って提督を罰するでござる!!」 藍田 「おうさ!」 清水 「力仕事なら任せろ!!」 中井出「ま、待てぇえっ!!無実だっ!!俺じゃねぇええーーーーっ!!!」 中井出、縄でぐるぐる巻きにされるの図。 そんな景色を横目に俺はベリーに向き直って話を戻す。 悠介 「で。話は元に戻るが───     映像にアレを混ぜたのはお前か?お前だな?お前なんだな?」 ベリー「そんな捲くし立てなくても。うんわたし」 中井出「そ、そらみろーーっ!!俺は無実だったじゃないかーーーっ!!     つーかなんで俺簀巻きにされて運ばれようとしてんの!?     いやっ……そっちは屋敷で───イヤァアアアアアッ!!!     メルヘンはイヤァアアアアアアッ!!!!たすけてぇええええええっ!!!!」 悠介 「あー……盛栄達。     どうやら犯人はベリーだったようだから、提督を離してやってくれ」 丘野 「大丈夫でござるか提督殿!疑いが晴れてよかったでござるよ!     拙者、提督を信じてたでござる!!」 藍田 「もちろん俺も信じてたさ!!」 清水 「俺もだ!」 岡田 「わいも!」 殊戸瀬「あたいも!」 田辺 「おいどんも!」 灯村 「それがしも!」 島田 「やきいも!」 中井出「てめぇらぁあああああああっ!!!!!」 総員 『友情だ……』 悠介 「いや、中井出血の涙出してるから」 誤解が解けた途端にドゴシャアと芝生に投げ捨てられ、縄を解かれる提督。 何気に投げ捨てられた時に腹を打ったようで、『うぶぅぇっ!』と唸ってた。 というか普通に下ろす気は……無かったんだろうなぁ、原中だし。 中井出「ったく……頼むぞほんと……。     言っておくけど映像系の能力には相当自信があるんだぞ?俺……」 総員 『よっ!エロマニア!!』 中井出「やかましい!!」 ベリー「自信があってもハッキングされて操作されちゃうようじゃあまだまだ。     精進めされい精進。あはははははーっと」 中井出「ハッキングがどうとかより     基本魔導力が圧倒的に違うんだから対抗出来るわけないだろ……」 ベリー「んー……それもそっか。イデミツは魔導力少ないものねー」 中井出「イデミツ言うな、ベリッ子」 悠介 「イデミツ?」 ベリー「中井出博光だからイデミツ。略称って大体頭文字から取るから逆に攻めてみたの」 総員 『意味ねぇ!!』 中井出「よく言った!!」 ベリー「うーさい」 ……まあ、なにはともあれ。 悠介 「解った、べつに来るものを拒むような祭りはやってないからゆっくりしてけ。     けど───お前だけか?リヴァイアとかイセリアはどうした?」 ベリー「イセリアなら今ツンツン頭の家に居るけど。     リヴァイアとかは相変わらず王様やってるわ」 悠介 「そっか……リアナとリオナはどうしてる?」 ベリー「リアナはあれから騎士団長になって、国のために頑張ってるわ。     リオナは……魔法剣完成させてからは自分の研究に没頭してるわね。     新しい魔術を開発しようと躍起になってるわ」 悠介 「そか」 元気ならそれでいい。 で─── 悠介 「……ところでいいか?イセリアはなんだって彰利の屋敷に?」 ベリー「棒人間に用があるとかでちょっとね。気配辿ったらあそこに着いたみたい」 いつの間に出てきた、ってツッコミたかったが─── まあ騒ぎもあったし、彰利は寝てるだろうからな。 ベリー「ところで今なにやってるの?なんとなくでさっきは遊んでみたけど───」 悠介 「……映像見てりゃあ解る。俺もなんか疲れたから寝てくる」 ベリー「ん、そう?じゃ、おやすみー」 丘野 「悠介殿にコックリーニョの加護があらんことを……」 悠介 「寝る前に最も不吉な言葉を贈るなたわけっ!!」 ともあれ、俺は自室に戻ることにした。 イセリアもしばらくしたら戻ってくるだろうし、それまではゆっくり寝るとしよう。 Next Menu back