───冒険の書135/もしキミがクマドリと疑うのなら───
【ケース385:藍田亮/ビエネッタがすぐ近くのローソンに売っていた。○9点。】 カチャカチャカチャ…… 藍田 「っと……お、おーい夏子〜、発破飴の作り方ってどうだったっけ〜?」 夏子 「ニトロペーストとネネオ寒天でしょ」 藍田 「……寒天で飴作るのってどうなんだろうな」 さて……ただ今我らの一番の時間。 これを前にワクワクしないヤツは居ないと思えるくらいの時間、錬金タイムである。 空界の勉強をするのならと、マクスウェルが特別授業として用意してくれたこの時間…… 実は我ら原中や名誉ブリタニア人の中で一番人気のある時間だったりする。 岡田 「グラウベヒキガエルの在庫、まだあったかー?」 清水 「あと4匹〜」 岡田 「そっかー。今週中に補給しないといかんな〜」 材料は全部自分で取りにいく。 グラウベフェイトー山は現れるモンスターも強いが、 その代わりに錬金素材も結構いいのがあったりする。 修行の一環も兼ねて錬金が出来るなら大助かりってもんだ。 ちなみに……レベルが高いからって理由で突貫させた柾樹坊主が キングコモドオオトカゲに食われたのは記憶に新しい。 どんなイベントがあったのかは知らんが、 どういうわけか柾樹坊主は俺達と一緒にこの修行場に飛ばされてたってわけだ。 で、今は俺達と違って基礎を叩き込まれてるとこ。 無駄にレベルがあるわりにてんで技術が無いから、かなり厳しくしごかれてる。 御手洗「ところで凍弥、キミは何を作ってるんだい?」 閏璃 「排撃ダイヤル」 柿崎 「いきなりウソつくなよ……」 鷹志 「こいつ、支左見谷へのプレゼントに属性の結晶石の錬成にチャレンジしてるんだ」 閏璃 「あっさりバラされるとありがたみってもんが無くなるんだが……。     ああ、ちなみに鷹志は輝くトーテムポールを作ってるらしいぞ。     彫った口からパープルコーヒーが無限に出てくるらしい」 鷹志 「怖ぇえよ!!作るかそんなもん!!」 閏璃 「ところで干し首ってどうやって作るんだっけ」 殊戸瀬「まず頭蓋から綺麗に剥がした皮を熱湯で茹でて乾かす。     そうすると皮が縮まるから適当な綿を詰めて口を糸で縫い合わせて完成」 総員 『なんで知ってんの!?』 殊戸瀬「適当に言っただけだから」 島田 (殊戸瀬だから無駄に当たってそうで怖いんだよな……) 閏璃 (よし柿崎、お前の生皮をくれ) 柿崎 (あげられるかっ!!) そんないつも通りの騒ぎをしながら、我ら原中と名誉ブリタニア人は錬金を続けてゆく。 もちろん授業内容……こういう実験的なものじゃなくて筆記方面な? そっちの方では、空界の勉強の中に錬金もある。 魔術や魔導術、式や魔導錬金や錬金術やらいろいろある中で、 俺達が心ときめかせたのはやっぱり錬金。 いやほら……やっぱりさ、晦がいろいろなの作ってるのみたら、 惹かれないわけがないわけだよ。 さすがに俺達がマテリアを精製したりするのは無理があるが、 それでも自分の手でこういうことが出来るのって、冒険とはまた違った興奮があるわけだ。  トプンッ……シャァアアヒィイイインッ!! 彰利 「シャーヒーン!?」 材料を入れたフラスコが奇妙な音を出して輝きだした。 それに対して脇から見ていた弦月がかなり興味津々に食い入る。 藍田 「そういや弦月はなに作ってんだ?」 彰利 「俺?俺は核鉄。錬金術の粋を凝らして作るっていったらやっぱこれっしょ」 藍田 「おお、それは面白そうだ」 岡田 「面白そうとな?フフフ、それを聞いたら黙ってられん」 蒲田 「お?なんだなんだ?」 島田 「俺にも聞かせろー」 飯田 「俺も混ぜろ〜!」 永田 「なにやら楽しいことをやる様子……俺も混ぜろ!」 田辺 「なにかやるのか?」 彰利 「うおう……田圃ファミリーがぞろぞろと……」 面白そうという言葉にあっさりと釣られた田圃ファミリーと、その周りに集まる猛者連中。 こうして俺達の核鉄作りは幕を開けたのだった。 というより、核鉄作ってみねー?と彰利が言ったら、全員あっさりノってきただけ。 なんで?なんて言ったのは名誉ブリタニア人の数名くらいである。 なんでもなにもない、そこに面白さへの追求があるから我らは動く。 それが我らの原ソウル。疑問だけでは語れない。 ───……。 ……。 錬金術の粋を集めて精製された……超常の合金、“核鉄”。 人の闘争本能によって作動するそれは、 持つ者が秘めたる力を形に変え、唯一無二の武器を創造する。 それが───武装錬金である。 彰利 「材料ってまずなにを用意すりゃいいんかね」 総員 『解らずにやってたのかよ!!』 彰利 「解ってりゃ苦労しねーっつーの!!と、とにかくじゃよ!?     まずはやっぱマテリアを作らにゃいかんと思うのですよ!」 藍田 「……それって精霊の加護無しに作れるのか?」 彰利 「じゃーじょーぶじゃーじょーぶ。     ようするに精霊石と属性の加護があればいいんじゃよ。     精霊石は……博打になるけど精霊の宝玉で。     マテリアはオイラがなんとかしましょう。     これでも空界でいろいろやってた時、闇の精霊石くらいは作れたから、     頑張りゃなんとかなるっしょ」 麻衣香「つまりダークマテリアしか作れそうにないってこと?」 彰利 「だってオイラが持ってるのって闇の宝玉だけだし、     そもそも闇系のもの以外はとんと苦手だし。     こういうのは属性の加護を持ってるヤツがやるのが一番だろ」 加護……加護か。 藍田 「一応俺達、然と氷の加護くらいなら持ってるけど。     宝玉は闇に変えてもらったから闇の宝玉になってるけど」 彰利 「おや?宝玉って変えてもらえるん?」 藍田 「ああ。マクスウェルに頼むと変えてもらえる」 彰利 「おー、そういやそんなメールが届いたような届いてないような……まあいいコテ。     じゃ、手探りでやってみますかい。つーかキミが闇でいくとは」 藍田 「装備が装備だったから闇にしてもらったんだけど……     こりゃ変えたほうがいいかなぁ。誰かさんに奪われちまったし」 彰利 「ホホ、まあまあよいじゃあねぇの。その代わり、核鉄は必ず作ると約束するから。     よぅし野郎どもぉーーーっ!!これから本格的に核鉄作りを始めるぞーーっ!!」 清水 「仕切ってんじゃねぇ一等兵風情が!」 岡田 「我らに命令していいのは提督だけだ!」 田辺 「このクズが!!」 彰利 「ごっ……号令かけただけでなんて言われよう!!     だってしゃーねーべよ!ここに中井出居ないんだから!」 藍田 「黙れクズが!」 総員 『死ね!!』 彰利 「ギャアもう!それはいいからさっさと」 総員 『黙れクズが黙れクズが黙れクズが!!』 彰利 「ギ、ギィイイイイーーーーーーーッ!!!!」 遥一郎「お前らってほんと、お互いに容赦ないよな……」 名誉ブリタニア人が呆れる中で、我らはそれはもう周りのことなぞ気にせず騒いだ。 だってな、周りのことなんかいちいち気にしてたら楽しめるものも楽しめないし。 ───……。 ……。 カラーーーン……カラーーーン…… 藍田 「っと……次はどんな授業とってたっけ……」 丘野 「拙者は戦術学でござる」 麻衣香「わたしはマナ力学中級」 夏子 「わたしは精霊学」 殊戸瀬「調合学」 彰利 「ちなみに俺はホギーと理力学だ」 遥一郎「……なんでか付き纏われてる」 ノア 「マスター、わたしも───」 来流美「あんたはこっち。まだ基礎力学もパスしてないじゃない」 ノア 「う、うぐぐ……!」 雪音 「難しすぎるのが悪いんだよぅ!もっと楽な試験ぷりーず!」 閏璃 「貴様の脳じゃ絶対無理だな……」 雪音 「むぐっ……しょ、勝負だー!!」 みんな、錬金の時間以外は勉強だの休憩だのを積極的に行っている。 することといえばそれくらいなんだから仕方ないとはいえ、 それでも俺達は全力で楽しんでいた。 でも……やっぱ提督が居ないと寂しいんだよなぁ……。 今頃何処でなにやってんだか。
【Side───その頃の提督】 中井出&ナギー『成敗!!』 どーーーーん!! 数時間かけてベアどもを退治した俺とナギーは、二人一緒に奇妙なポーズをとっていた。 いや〜いやいやいや、ほんとまいった。 このベアども、次から次へと仲間を呼ぶ呼ぶ。 いつまで続くんだってくらい戦った……というか、 多分ここの島に居るベア全部コロがしたと思う。 さっき解ったことだけど、ここ……孤島だったのだ。 でも結構広く、地図で見ると別の島に繋がっているように見える場所もあるので、 孤島には見えなかったのだ。 しかし最後のベアをフェニックスドライバーで仕留めるために高く飛んだ時、 ここが孤島であることを確認した。 ああ、もちろんベアはミンチになってるが。 中井出「しかし剥ぎ取っても剥ぎ取っても熊の爪しか手に入らないのはどういうことか」 何処を剥ぎ取ってもそれしか出ないのはゲームのおかしなところだと思う。 中井出「よぅし、じゃあレベルも2007になったところで、そろそろ動くか」 ナギー『れべるというのがまだよく解っておらんのじゃが、     それは高ければ高いほどいいのであろ?     魔物を倒して上がるなら、もっと戦ったほうがよいのではないかの』 中井出「いいや否だナギーよ!レベル上げだけしていてもつまらん!     というかむしろ延々と出てこなけりゃこんなレベルにならなかった!!     もっともっと冒険を!     というかむしろレベルが上がりすぎる状況に不安を感じたりもするわけで。     俺としては自分よりも武器を強化したいというか」 ファンタジーは男のロマン。されど、そこに武器がなければ半減ロマン。 だから男は武器に生き武器に死ぬ。 ただ冒険だけしていてもつまらんのだ! そこに武器という最高のスパイスと、 敵という生涯が付き纏わねばそれはもう冒険じゃあ……ねぇぜ!! 中井出「そんなわけで戦いが終了したわけだが……エィネはいったい何処に」 デテーンテーンテッテーデゲデッテーン♪ デテテケテテーン♪デゲテーン・デッテッテケテ〜〜ン♪ デンテンテテンテテンッ♪モシャーーーン!! 中井出「……お?」 ふと聞こえた音楽にハタと停止。 この音楽ってば……レアドロップとか強敵を倒した時に鳴る音楽だよな? それがまた、モンスターハンター2のクエストクリア音楽に似てること似てること。 ナギー『なんなのじゃ?』 中井出「さあ……レアドロップでもしたのかな」 そういえばさっき戦ってたベアの中に、 一匹だけヘンテコな色でかなりデカいベアが居たが…… もしかしてノートリアスモンスター!? こうしちゃおれん!いったいなにが───あ。 中井出「………」 バックパックの中に見慣れない物体。 というより……具足? いやいや悩むよりもまず調べるだ。  ◆イブシ銀メタルグリーヴ───いぶしぎんめたるぐりーゔ  いぶし銀なイカス靴。メタルグリーンの色彩が美しいレアアイテムのひとつ。  雷を帯びており、攻撃と同時に発雷する属性武具の一つ。  装備するとなんとなくベテランになれた気になれる。  ちなみにいぶし銀とは、“華やかさに欠けるが実力はある”的なことを意味している。  何故雷属性がついているのかは謎とされている、古の時代の技術で作られた具足。  側面に“燻 銀次郎”と彫られている理由は解明されていない。  *潜在能力:雷撃、攻撃時TP微回復、燻流空武術・稲妻反転蹴り 中井出「イ……イブシ銀!!なんてイカス!」 手に入れたブツはとてもステキなものでした。 ていうか……謎とされているもなにも、燻 銀次郎って書いてあるんじゃ解るって。 懐かしいなぁ……イブシ。 ナギー『それがどうしたのじゃ?ヒロミツ』 中井出「う、うむ……これはな。燻 銀次郎という者が装備していたとされる具足だ。     いや多分装備してない。それっぽく作られただけだと思う。     で、これをこうして履いて……と。あとは高くジャァーーーンプッ!!!」 グッ───ドシュゥウウンッ!!! ナギー『おおっ!?』 フロートの力を合わせて力強く大地から離れる俺。 そうして大体の高さまで来ると足に力を込め、構える。 中井出「稲妻反転蹴りィイイーーーーッ!!!」 稲妻、と叫んだ途端に具足から物凄い量の雷が放たれ、我が体を包み込む! だが俺にダメージは全く無く、そのまま大地へ向けて雷を帯びた体ごと落下! 大地に蹴りを叩き込むと、体に帯びていた雷を周囲に───ビヂヂィッ!! ナギー『ふぎゃわわゎわーーーーっ!!!』 ───……バラ撒いた。 中井出「ナ、ナギー!?ナギー!!」 しまった……そういや稲妻反転蹴りってそういう技だった。 蹴りだけが攻撃じゃなかったんだよな……いや忘れてた。 そんな反省点を張り巡らせつつ、慌ててナギーのところへ駆け寄った。 散らばる雷に見事にシビれさせられたナギーは髪の毛をボサボサにしながらノビている。 そういやSTRも戦闘状態のままだったからかなり強かったと思う。 しまった……やっちまった……。 【Side───End】
───……結局、選択していた空界学を学びつつ、俺は頭を働かせていた。 学生の時分は勉強は嫌いの部類に入っていた俺だが、 興味があるものを前にしてみれば、頭ってのはこれで案外働いてくれるらしい。 ザウス『このように、空界には黄竜王シュバルドライン、蒼竜王マグナス、     緑竜王グルグリーズ、赤竜王ドラグネイル、の四頭で四方を縄張りとし、     中心に紫竜王カルドグラスを置いて世界の均衡を保っているザウルス。     カルドグラスは元々は狭界に居た竜王であり、     他四頭と違い皇竜王から産まれた存在じゃないザウルス。     この異端種としてベオアゼルという暴竜が居たザウルスが───』 地界の情報に比べて、空界の情報は聞いてて飽きない。 やっぱファンタジーだからだろうか。 もっと知りたいとか思ってしまう。 ザウス『ベオアゼルは他の竜族と違い、     理性や知識といったものが少ない竜だったザウルス。     気性が荒く、自らの子でさえ食べてしまうような共食い万歳の竜だったザウルス』 藍田 「質問。晦が空界に降りた時、そんな竜居なかった筈だけど───」 ザウス『晦?誰それザウルス』 藍田 「…………ここに書いてあるモミアゲのこと」 ザウス『だったらそう言うザウルス!紛らわしいザウルス!!』 藤堂 「てめぇだってザウルスザウルスうるせぇよ!!どんな語尾だよ!!」 ザウス『うるせぇザウルス!!人の口癖に文句つけんなクズがザウルス!!     ……ベオアゼルは辺境の洞窟に住んでいたザウルス。     言い方から解るように、もう絶滅してるザウルスよ。     竜というよりは幻獣の類に近いものがあったザウルスね。     多分ヤムベリングあたりが召喚したものだったに違いないザウルス』 藤堂 「迷惑な話だなぁ……」 ザウス『次にメルヘンの成体についてザウルスが……     これは元々神界に住まう異端の妖精だったザウルス』 藍田 「うあー、空界のことは知りたいけどメルヘンはなぁ……」 ザウス『俺っちもあまり話したくないザウルス……飛ばすザウルス?』 藍田 「是非」 とまあこんな感じで…… マクスウェルが教えるもの以外は、 マクスウェルが使役する謎の生命体、ザウスが教えてくれる。 もちろん一匹だけではなく、いろんな場所でいろんなことを教えてくれている。 ザウス『それじゃあ次は歴史ザウルス。時はアルマデル暦の初期。     といってもそれなりに経っている時ザウルスが、     そもそも空界は空界と狭界とで───』 空界の歴史は長い。 少なくとも2000年以上も前から様々な歴史があって、 その大半に実は晦たちが関わっている。 ザウス『このようにモミアゲがゼプシオンの腕を吹き飛ばしたことにより、     ゼプシオンは戦力外になるザウルスが、     ゼプシオンはリビングアーマーとなることで───』 ゼットやセシルのことについてだってそうだし、 ノヴァルシオの巨人の里のことだってそう。 オリハルコン強奪で消滅した巨人の里のことや、 晦によって両腕を破壊されたゼプシオンがリビングアーマーに堕ちることもそう。 そんな様々な歴史の果てに“今”がある。 考えてみればすごいことだ。 ザウス『空界の竜族の中で一番の年長、ドラグネイルは竜王の中ではほぼ最強ザウルス。     しかしそんなドラグネイルも一番に力尽き───     その力をヤムベリングが吸収することで、当時の赤竜王となったザウルス。     赤竜珠もこの時取ったザウルスね。今は落ち着いているほうザウルスが、     これでも彼女は魔女と呼ばれ、人々からむしろ怖がられていたザウルス』 藍田 「あー、そうだったよなー。     晦や弦月なんて、出会い頭に研究材料にされてたからなぁ」 藤堂 「そんでもって晦の怒りに触れてメガフレアだったし」 そう考えてみれば……晦と接触したヤツは、 なんだかんだで心を入れ替えてるやつが大半なんだよな。 それはそれだけ晦が真正面からぶつかってた証拠なんだろうな。 感情がなくたって出来ることはちゃんとあったんだ。 それが今に繋がってるなら、俺はそれを凄いと言える。 藤堂 「何度見ても、改めて学んでも……晦ってすげぇよなぁ……」 藍田 「ほんとだよ……」 特にディルゼイルと主従関係……というよりは、 パートナーのような存在になってからは勢いがある。 その中でも一番ドタバタしたのは蒼竜王マグナスとの決戦の時だろうか。 ザウス『現在の至高魔導術師にはリオナが、騎士団長にはリアナが就いているザウルス。     この二人は今尚健在であり実力者でもあるザウルス。     リオナは趣味で錬金をやっているらしいザウルスが───』 なんだかんだで晦とディルゼイルとパートナーとしてはベストだと思う。 むしろ晦ってあのまま黄竜王やっててもよかったんじゃないかな。 ディルゼイルって、 やっぱりシュバルドラインに就くより晦と一緒に居たほうがしっくりくる。 ザウス『聞いてるザウルス?』 藍田 「おー、聞いてる聞いてる」 藤堂 「聞いておるよー」 返事は適当だけどちゃんと聞いてる。 俺達は空界のことを、まるでおさらいするかのように頭に入れていく。 晦の記憶を見て大抵のことは知っているとはいえ、 ザウスが話すことには知らないようなことも混ざっていることがあったりして、 聞いてみると納得出来ることも少なくなかった。 それが我らの興味の対象となって、学ぶことの面白さを教えてくれたのだった。 ───……。 ……。 カラーーーン……カラーーーン…… ドドドドドドドドドドドドド!!!! 藍田 「指を無くすくらいの覚悟があるって言ったよなぁ〜……金持ちの坊ちゃんよッ!」 彰利 「試してやるっ!!《ビッシィ!》」 そんなわけでチャイム……ではなく、 鐘の音が響くと同時に学科室を飛び出て錬金学科室へ全力ダッシュ。 途中で合流した弦月とともに、 我先にとオーガストリートを走るスピードワゴンのように駆けていた。 その際、弦月が何処から取り出したのか解らない帽子を ギュララララと回転させつつ遊んでたのは面白い芸当の一つとして俺の中で生きるだろう。 走りながらよくあんなことが出来るもんだ。 彰利 「よっしゃあ!核鉄作り再ッ開ッ!!」 藍田 「うしゃー!」 彰利 「むしゃー!」 勉強はもちろん真面目に。 しかし時間が空けば核鉄作り。 そんな時間割の中を、 丘野 「おおっ!もう始めていたでざるか!」 清水 「俺もやるぜ〜〜〜〜っ!!!」 次から次へと集まってくる猛者連中とともに、全力で遊びつくしていた。 やっぱいいよな……こうやって、みんなで一つのことに取り組んでる瞬間って。 奇妙な一体感があって、 そんな一体感をいつまでも味わっていたいからこそ俺達は原中をやってるんだと思う。 原中をやってるってヘンテコな言い方だけど、 今の俺達にしてみれば俺達は原中っていう一つの軍団の一員だから。 学校名だろうがってツッコミは勘弁な。 【ケース386:弦月彰利/ブラックアルケミスト】 コポコポコポコポ……チャカチャカチャ……チャ、チャチャ……チュボンッ…… 清水 「おぉっほっほっほ!いやぁ〜!一度やってみたかったんだよこれ!」 少し離れた場所で、ブックオフのヘビーユーザーと同じ名前の清水くんが、 フラスコから煙をチュボンと出して笑ってた。 確かに、一度はやってみたいモノである。 なにを混ぜたのかは知らんけど、見事だった。 彰利 「ん〜っと……材料は闇の結晶と精霊石と……     うおー、まだ足りない材料がいっぱいだな……。     あ、夜華さんお帰り。ホエグロヒキガエル取れた?」 夜華 「ああ、頼まれた量を狩ってきた。これでいいんだろう?」 彰利 「オーケーオーケー!あんがと夜華さん!」 夜華 「気にするな。わたしがやりたくてやったことだ」 言って、満足そうにうんうんと頷く夜華さん。 なんていうか夜華さんって、オイラの手伝いというか、 オイラが喜ぶようなことをするのが大好きみたいに感じるんですよね。 だからお礼といってはなんですが、って感じで夜華さんをチョイチョイと手招いた。 夜華 「?」 すると、最初から結構近くに居た夜華さんが一歩を縮める。 そこをすかさずがばしと抱き締め、 夜華 「なぅわっ!?」 仰天して暴れ出そうとする夜華さんの頭を優しくやさし〜く撫でた。 すると、暴れ出そうとした体が治まる。というか硬直する。 夜華 「あ、あああああきえっ……!?」 普段気が強いのに、こういう時は隙だらけなのがもうかわゆぅてかわゆぅて。 だからオイラもその激動に追い駆られて、がばーっと押し倒し……たりはしない。 だって体は男でも心は漢なつもりです。 もう戻れない位置には居るけど、それでも自称くらいは持たせてほしい。 と、そこまで考えてから夜華さんをそっと解放。 真っ赤な顔して落ち着きがない夜華さんは視線をあちらこちらに逸らしまくり、 オイラと目を合わせようとしない。 だがそれも可愛さのうちなのでOK。 真正面からこんなこと言うと刺されるから言わんけど。 彰利 「いつもあんがとねぇ夜華さん」 だからその代わりに感謝を言葉にした。 するとやっぱりさらに顔を赤くして、 しかし慌てたりせずに目を閉じながら口を開く夜華さん。 夜華 「い、言ったろう。わたしがやりたくてやっていることだ。     わわ、わたしはこれでも尽くすほうだぞ。     夫を支えるのはその、つつ妻の、務めというかだな……     い、いやっ、義務感でやっているんじゃないんだぞっ?     わたしはお前の役に立ちたくてっ……!」 彰利 「…………〜〜〜ギャアもう我慢出来ねぇ!!」 夜華 「《がばしぃっ!》うわぁっ!?あぁああ彰衛門!?」 彰利 「可愛ィイーーーッ!!!夜華さん可愛ィイーーーッ!!ラブリィイーーーッ!!」 プールで夜華さんの呟きを聞いてからというもの、 オイラもう夜華さんが可愛くて仕方ありません。 その上こげな献身的なことを言われちゃあおめぇ……あれだ。 我慢出来るわけなかろォモン? 思わず抱き締めて、抱き締めたまま頭撫でて、 我が裡なる胎動をそのままぶつけるようにそのまま回転して振り回したりした。 しかし夜華さんは顔を真っ赤にして、我が男気あふるるボディに腕を回そうとはしない。 何故?と思うも、その腕は我が脇側でふるふる触れていたりするのだ。 そう、あたかも泣きすがる女性の背中に腕を回そうにも回せない男子学生のように。 ……男女の立場がまるで逆ですな。 さすが夜華さん。 と、奇妙に納得したところで振り回していた夜華さんを解放。 行き場の無くなった両腕を慌てて引っ込めてさらに真っ赤になって俯く夜華さん…… おお、ビュリフォー。 彰利 「グゥ〜〜〜ム……」 しかし改めて考えてみる。 妻五人なんて状況になって、みんな平等に愛してるとか粉雪が好きだとか叫んだりしたが。 こうしてしみじみ思うと、俺ってやっぱ夜華さんが一番好きなんかね。 いやいや、南無の感情はこの際無視するとしてもだよ? もちろん感情ってのはそんな単純じゃないから、結構影響あるとは思うけどさ。 でもやっぱり……ねぇ?意外と一番付き合い長いかもしれんし。 こうして見詰め合ってる……というか夜華さん真っ赤になって俯いて、 手をもじもじさせてるから見詰め合ってるわけじゃないんだけど。 こうして一方的にジッと見てると…………背中にひしひしと殺気が。 もっ……モテる男は辛ェYO!! ていうか……ああ……死ぬ……死ぬな……こりゃ……。 ならばせめて先手だ。鴨川会長の教えが如く、先手先手じゃ! 彰利 「みょ、妙な行動を起こすのはやめてもらおうか!?ここは学び舎ぞ!?」 真穂 「だったら授業中にいちゃいちゃしない!!」 彰利 「ア、アレーーーッ!!?」 なんと珍しい! 春菜や粉雪じゃなくて真っ先に真穂さんが来るなんて!! ───だがならば我に策アリ! ギシャアと輝かせた瞳を合図に、オイラは真穂さんをガバシィと抱き締めた!! 真穂 「うひゃわぁあーーーーーっ!!?」 彰利 「おうおう寂しかったのね……     だったら僕が暖めて、キミの心の冷たい氷を溶かしてあげるよ」 総員 『クッサぁーーーーっ!!ギャオォーーーッ!!』 彰利 「ほっ……ほっときんさい!いいじゃん別に!一度言ってみたかったんだよ!!」 抱き締めつつ向き直り、騒ぎ立てる猛者どもに一喝。 で、改めて真穂さんを見てみると……うわー、目ェ回してる。 学生の時分は告白されることがしょっちゅうだったけど、 やっぱりこういう風に抱き締められるのには慣れてないんでしょうなぁ。 というかかなり真っ赤になりつつ、だけど慌てた様子を無くし…… いつしか真穂さんは、顔は赤いままに瞳を潤ませながら、 オイラの胸に体を寄せてきました。 そう、まるでオイラの鼓動を確かめるように、両手を添えて。 彰利 「……真穂さん、今どんな感じ?」 真穂 「………《カァアア……》」 でもそんな時のおなごの心境なんてオイラが知る筈もなく、 話し掛けたら真穂さんはさらに真っ赤になって、 口をつぐむようにきゅっと唇を引き締めたままに顔を俯かせ、 添えていた手で我が服をきゅっと握り締めてきました。 ぬう……俺にはそのトキメキハートを教えたくねーって意味かこの野郎。 でも実際こういう時のおなごの気持ちって気になるよね?よね? とか思う夏の日、僕は真穂さん越しの視界に、 尻尾を振る猫のような瞳で僕を見つめる仁美さんを発見。 さらにその後ろには作業に夢中で我が状態に気づいていなかったが、 たった今気づいたらしい春菜が。 さらに我が横では寂しそうに、 しかし僕と目が合うと慌てて怒ったような顔を作る夜華さんが。 彰利 「ア、ワワ……」 でも粉雪だけは僕に目もくれません。 何故?僕らの間にいったいなにが? オイラはなにか粉雪を傷つけるようなことをしてしまったとでも……いうのだろうか……。 などと“ほん呪”の真似してる場合じゃないね、うん。 彰利 「ふ、ふふ……ふはははは!そうか!我を殴るか!いいだろう来るがいい!     その愛、その激動、立てば“芍薬”(しゃくやく)
(すわ)れば“牡丹”(ぼたん)!     歩く姿は“百合の花”とうたわれたこの弦月彰利がぁっ!     あ、すぅべてぇ!あっ、すぅううべてぇえ!よよいぃ!!     受け止めてぇ、あ、くれぇえ〜〜よぉ〜〜ぅぞぉ〜〜〜っ!!     よよいぃ!あ、よよぉいぃ!!」 なんだかシャレにならない尋常ならざる力の波動を放ってたので、 オイラは茶を濁すようにCP9のクマドリの真似をした。 クマドリの“よよい”って言葉って、アニメでのみ映える言葉だと思う。 ……でもかえって火に油を注ぐ結果にしかならなかったようです。 彰利 「ちょ、ちょっと待って!何故!?何故オイラが囲まれなきゃならんの!?     オイラ夫として間違ったことしてないよね!?     おかしなところがあるとしたらクマドリの真似したことくらいだよね!?     ───え!?じゃあオイラクマドリの真似しただけで殴られンの!?     冤罪を申し求───……あ……も、問答無用ッスか……」 どうやらオイラはクマドリの真似をしたというだけでボコリーナになるらしい。 聞いてアロエリーナ、ちょっといいにくいんだけど、聞いてアロエリーナ。 妻達が怖いの……。 聞いてくれてありがとうアロエリーナ……。  ドゴゴシャバキベキガンゴンガン!! 彰利 「よよギャアーーーーーーーッ!!!」 最後にヤケクソになってクマドリの真似をした途端にボッコボコにされました。 なんだか最近こんなんばっか……オイラ泣きたい。 ───……。 ……。 彰利 「生命〜〜〜帰還〜〜〜っ!!」 ゴワゴワ……モゴシュンッ!! 彰利 「あ、消化ぁ〜〜っ!!吸〜〜〜収〜〜〜ッ!!!!」 だがXメンはくじけない!! 散々ボコられたオイラだったが、すぐさまに月生力でHPを回復させると、 ボコボコだった顔や痣だらけになった体を修復!! 彰利 「残念だったのぅつわァものォよぉ〜〜〜よよいぃっ!!     生憎だがぁ、これしきの攻撃ではぁ!     我は、あ、我はぁ!ビクともせぬぅわぁ〜〜〜〜っ!!     よよいぃっ!!あ、よよ《バゴシャア!》オブボッ!!」 で、治った途端に言葉の最中で殴られた。 どうして絶対にみんな“よよい”の途中で殴ってくるのか謎だった。 ───……。 彰利 「生命〜〜〜帰還〜〜〜っ!!」 ゴワゴワ……モゴシュンッ!! 彰利 「あ、消化ぁ〜〜っ!!吸〜〜〜収〜〜〜ッ!!!!」 けれど復活する我がクマドリソウル。 彰利 「よよぉおいいぃ!!我にこの生命帰還があぁる限りぃい〜〜っ!!     あ、よよぃい!!貴様らのぉ!あ、貴様らごとぉきの攻撃などぉお〜〜っ!!     よよぃい!!とるにぃ!あ、とぉ〜〜るにぃ!足らん攻撃よぉ〜〜〜っ!!     よよいぃっ!!あ、よよ《ボゴシャア!》オベッシュ!!」 そして再びボコボコ……。 あの……何故か少しずつ猛者連中が混ざってきてるのは……気の所為じゃないよね……? ───……。 彰利 「生命〜〜〜帰還〜〜〜っ!!」 ゴワゴワ……モゴシュンッ!! 彰利 「あ、消化ぁ〜〜っ!!吸〜〜〜収〜〜〜ッ!!!!」 だがこのクマドリに生命帰還がある限り! どんな敵にも屈服することなく耐え抜いてみせる!! 彰利 「よよいぃっ!!《バゴシャア!》ペサァーーーーッ!!!」 回復して“よよい”言った途端に、頬を抉るような拳が進呈されました。 で、あとはボッコボコ。 僕を囲む猛者の数がどんどん増えていってる……。 確実に増えてる……絶対に増えてるよこれ……。 ───……。 彰利 「生命〜〜〜帰還〜〜〜っ!!」 ゴワゴワ……モゴシュンッ!! 彰利 「あ、消化ぁ〜〜っ!!吸〜〜〜収〜〜〜ッ!!!!」 だがXマンはくじけない!! 再び回復を果たしたこのクマドリは歌舞伎役者がよくするポーズ、 片手を突き出して首をくるりと捻り回転させるポーズをとりながら─── 彰利 「《バゴシャア!!》ギャーーーイ!!!」 問答無用で殴られました。 ていうかなんでみんな俺が“よよい”って言うまで待ってるの!? このクマドリ、それが一番謎だよちくしょい!! なんて思ってても結局はボッコボコだった。 ───……。 彰利 「生命〜〜〜帰還〜〜〜っ!!」 ゴワゴワ……モゴシュンッ!! 彰利 「あ、消化ぁ〜〜っ!!吸〜〜〜収〜〜〜ッ!!!!」 しかしXマンはくじけない!! なにやらいつの間にか名誉ブリタニア人まで混ざってる状況の中、 回復を果たしたこのクマドリは再び“よよい”のポーズを取る!! 彰利 「………」 総員 『………』 でもポーズだけじゃ襲い掛かってこない。 あの……やっぱ狙ってる?もしかしなくても狙ってる? 彰利 「よよいぃっ!!《バゴシャア!》メギャーーーーリ!!!」 やっぱ狙われてました。 そして俺は焦らしたこともあってか興奮気味の総員によって囲まれ、 これでもかってくらいにボコボコにされた。 ───……。 彰利 「あの……もうほんと勘弁してください……。     ここまでメタクソに殴られるとさすがにワシもう幻海っていうか……。     みんな戦闘体勢解いてくれないからTPももうそろそろ危険だし……。     だから出来ればよぉよぉいぃっ!!《バゴルシャア!》オヴェール!!」 同情を誘い、隙をついてよよいを言った途端に殴られた。 名誉ブリタニア人は騙せても、どうやら猛者どもを騙すことは出来なかったようで……。 みんな……クマドリになにか恨みでもあったんカナ……。 そんなことを思いつつ、 僕はやがて加減を違えた触覚馬鹿女の鈍器な一撃によって、塵と化しました。 Next Menu back