───冒険の書136/初心者修練場バトル(超再)───
【ケース387:晦悠介/頑張ってみようと思った。●2点。】 ザンザンザンザンザンザンッ!!! 悠介 「たぁっ!ふぅ!せいっ!はぁっ!つっ!たぁーーーっ!!!」 フエールワカメという敵をこれでもかというくらいに斬ってゆく。 しかし恐ろしいほどの再生能力と繁殖能力が、戦闘終了に至らしめない。 悠介 「だぁーーーっ!!どれだけ増えれば気が済むんだよ!!」 現在のレベルは20。 初心者修練場だけで経験値を溜め、地味にレベルを上げた結果がこれなんだが─── 20になった途端に敵が一気に強くなった。 というか、こいつが現れて以降、まだ一匹も倒せていなかったりするわけだが。 体自体はモロい敵なんだけど、増殖能力と再生能力が半端じゃない。 ディル『王、これ以上は無理だ!撤退するか先へ進むか選択しろ!』 悠介 「解ってる!」 足にからまってくるワカメをロングソードで切り裂き、それと同時に走り出す。 あとから付いてくるディルゼイルとともにワカメの間を駆け抜け、 ひとまずは戦闘を脱出するが─── 悠介 「うおっ!?ワカメなのに速いぞあいつら!」 ディル『つくづく奇妙な空間だ……』 さすがにどうするか考えないと危険だ。 そもそも俺がここにずっと入り浸ってるのは、 なにもレベル上げが目的だったわけじゃない。 欲しいものがあるから戦ってたんだが、全然手に入らなくて困っていたりする。 持ってる敵自体はわんさか居るんだが、入手確率が1%じゃな……。 悠介 「ええぃくそっ!」 ふと目に入ったその敵……ウエキングを切り刻み、塵とする。 と───デンテンテテンテテンッ!という音楽とともに、バックパックが輝き出す。 悠介 「…………おい」 普通なら喜ぶべきなんだろうが─── こんな、どうせ手に入らないだろうと思ってた瞬間に手に入ると物凄く複雑なんだが……。 いや、どうせ目的のものじゃないさ。 とか思いつつ、走るのだけはやめずにバックパックを覗いてみる。 と─── 悠介 「───!よっしゃぁああああっ!!!」 ディル『む……?どうした、王』 悠介 「目的のものが手に入った!逃げるぞディル!」 ディル『む……承知!』 欲しいものが手に入ればもうここに用は無い! というより一刻も早くあのワカメどもから逃げ出したい! 悠介 「なあディルっ、俺達の他に誰かの気配、感じるかっ?」 走りながらの所為か、言葉が弾むように出る。 そんな中でディルに話し掛け、気配云々を訊ねてみる。 なにせ、時分にはそれを感じる力が無いのだから仕方ない。 ディル『ああ、居るな。ともに入ってきた者全員がまだ居るようだ』 悠介 「そうなのか?なにやってんだあいつら……」 まさか出口が解らないとか……は、ないよな、さすがに。 そんなことを思っていると前方に人影。 誰か、と思うよりも先に声をかけられた。 若葉 「おにいさま〜〜〜っ!」 手を振ってかけてくる姿───若葉だ。 その後ろには木葉と水穂と……ゼノとシュバルドラインも居る。 丁度良かった、このまま一緒に外に─── 若葉 「逃げてくださいぃいいいいっ!!!」 ギガノ『ブルァアアアアアッ!!!』 悠介 「おぉおおおーーーーーーーーーっ!!!!?」 ザザザザザァッ!! 視線の先にある光景に思わず足を止めた。 ていうか止めなくちゃ死ぬだろおい!! 若葉 「おにいさまっ!助けてくださいっ!」 悠介 「無茶言うなぁあーーーーっ!!って若葉っ!こっちはダメだ!ワカメが居る!!」 木葉 「お兄様……こんな時にサザエさんネタなんて馬鹿にしてやがるんですか」 悠介 「冗談でこんなこと言えるかっ!ていうかそのワカメじゃない!!     ああもういいとにかく走れっ!こっちだ!!」 後ろを向けばすぐワカメ。 かといって真っ直ぐ進めばギガノタウロス。 となれば横しか逃げ道はない。 ギガノ『ルゴォアアッ!!?』 突然方向転換した俺達に戸惑いを見せ、 自分も一端足を止めて方向を変えようとするギガノタウロス。 しかしその足が、丁度俺を捉えようとしたワカメに捕まれる。 ギガノ『ゴアッ!!?』 ワカメ『《メヂュルメヂュル……》』 次の瞬間にはもうスタンピードカーニバル。 己を包もうとする見境無しのワカメ相手に、ギガノタウロスは斧を振るう振るう振るう!! 図らずして起こった最大の逃走時間───だが、俺もやっぱり冒険者なわけで。 こういう状況を見てしまうと、多少なりとも欲が出てしまう。 ライン「王?よもやヤツとやる気か?」 悠介 「いや……さすがに勝つのは無理だろ。     だからせめてあの斧だけでも奪えないだろうかと」 ゼノ 「ふむ……中々に小賢しいな。さすが弦月彰利の親友だ」 悠介 「それって褒め言葉か?」 とか思ってるうちに、とうとうギガノタウロスがワカメ地獄に飲み込まれる! するとそこで奇妙な現象が起こった!  ドッコンッ……!! ギガノ『グォオオーーーーーッ!!!!』  ドッコンッ……!! メガ 『………!!』 ワカメが光を放つたびに、ギガノタウロスがレベルダウンしてゆくのだ。 ギガノタウロスだったのがメガタウロスに、 メガタウロスだったのがミル・ミノタウロスに、といった感じに。 ともなれば強さも落ちていってるのだろう。 このまま放っておくと消滅するか、ただのタウロスにされるだけだ。 それはさすがに惜しい。 悠介 「よし……成功するかは解らないが───」 先ほど手に入れたレアアイテム───変化の指輪を装着する。 そして手頃な石を手に取り唱える。 悠介 「“石をランスに変える力”!!」 ゴキィイインッ!!! すると鋭い音とともに、なんの変哲もない石が石槍へと変化する。 やっぱりいろいろ規制があるんだろうが、今は鋭い投擲武器があればそれでいい。 悠介 「───いけっ!!」 そして投げる。 完全に雁字搦めになり、動けないでいるミル・ミノタウロス───その手に向けて。 もちろん手っ取り早く斧を手に入れようとする小賢しい手段だが─── それを自分への攻撃と感知したのか、ワカメの触手が動き、それを弾く。 さすがにそう上手くはいかないか……と思った次の瞬間だった。 悠介 「あ」 ゴギンッ、という音とともに、槍が斧のある一部分を貫いた。 貫いたというよりは押し出したといった感じだ。 なにせ、衝突した槍自体は強度に負けて粉々になってしまったのだから。 しかし斧から押し出されたソレ───戦斧石は、 赤い輝きを見せながら脱出路とは反対側へと飛んでいってしまった。 悠介 「………」 い……いくか? 既にあっちはワカメだらけ……恐らく行ったらただでは済まない。 だがこれはチャンスだ。 このファンタジーという世界に舞い降りた好機。 それに、やっぱり戦斧石は身近に感じるなにかがある。 ……よし行こう! 悠介 「ディル!」 ディル『解っている!』 なにを言うまでもなく、俺がこう出ることを理解していたんだろう。 ディルゼイルは口から炎のブレスを吐くと、 一部のワカメを燃やして進む道を作ってくれた。 悠介 「レーザーはまだ吐けないのか?」 ディル『贅沢を言っている場合か!再生が始まる前に駆けろ!』 悠介 「解ってる!」 ワカメ相手に必死になる時がくるなんて思わなかった。 ともあれ俺は燃えるワカメの脇を通り、 森の暗がりの中に落ちてなお紅蓮に輝く宝石へと駆けた。 だがそこに通りすがったリス型モンスターのチッチが…… あろうことか戦斧石を持ち、走り出したのだ。 悠介 「なっ!?ちょ、ちょっと待てぇえーーーーーっ!!!」 慌てて追う───が、AGLに全てを託しても届かない。 くそ、このままじゃ……! 悠介 「……そうだ!“石を根に変える力”!!」 走りながら拾った石を輝かせ、地面に叩きつける。 さらにそれにイメージを加えるようにして解き放ち、 地面を這う根をチッチの前方で……爆発させる!  ゴバァンッ!! チッチ『ギチュゥウーーーーッ!!』 悠介 「ディル!───あ」 前方に突然飛び出てきた樹の根に驚いたチッチ。 そこに、俺が声を掛けるより先にファイアブレスを解き放っていたディル。 それは見事にチッチを焼き尽くし、 炎の中でも変色も変形もしない戦斧石を地面に落とさせた。 悠介 「サンキュ、ディル」 ディル『以前にも言っただろう。私が王ならそうする、王が私ならばそうする。     そう思った行動をとっただけだ、感謝なぞ要らん』 悠介 「ははっ……まったく、お前は……」 ディルの反応に苦笑しながら戦斧石を拾う。 と、たったそれだけで、俺の中に熱いなにかが広がった気がした。 悠介 「……ん」 妙にしっくりくる。 まるでその赤さが、自分の血となり巡ってゆくような感じ。 俺はそれをたっぷり感じたあと、奪われないようにバックパックに戦斧石を仕舞った。 ……そうだ、こんなところで懐かしんでる暇はないんだ。 悠介 「───よし!」 ディル『応!』 何かを言うより先にディルが反応。 俺達はほぼ同時に疾駆と飛翔をし、うねるワカメの大群へと突貫した。 ディルが炎で道を作り、捕らえようと伸びてくるワカメを俺が斬り裂く。 申し合わせたわけでもないのに、次にどう動くかが手に取るように予測できる。 ディル『王!右だ!』 悠介 「ああ!」 視界の外から迫るワカメを斬る。 悠介 「ディル!上!」 ディル『応ッ!!』 その拍子に見えた襲撃をディルに報せ、焼き払ってもらう。 そうして、およそ一人では通過など不可能であろうワカメ地獄を潜り抜け、 やがて───出口の門へと辿り着くと、それを蹴り飛ばすように開けて脱出を完了させた。 ……。 悠介 「はぁっ……はぁ……!」 ディル『むう……!飛翔するだけで疲れるなど……!』 やがて辿り着いた広間で、俺とディルは足と飛翼を休める。 それはまあ……しょうがない。 普通に走るだけや飛ぶだけなら疲れたりなんかしないが、 そこに“逃げる”っていう行動が付くだけで疲れるのがこの世界、ヒロラインだ。 悠介 「はぁ……はっ、はははっ……」 乱暴に開けたものの、勝手に閉まってゆく木製の扉を見て笑った。 こんなに慌ただしい気分になったのなんてどれくらいぶりだろうか。 強くなっていく過程で、こんな冒険心……というか、 童心めいたものをいつの間にか無くしていた自分が逆に恥ずかしく思う。 そうだ……感情。 生きていくための感情くらいしかなかった俺でも、童心だけはちゃんとあったんだ。 それを埋めていってしまうなんて馬鹿な行動だって今更ながらに理解した。 悠介 「はぁ〜あ……」 いい気分だった。 たったあれだけの距離を走っただけでも出てくる汗に懐かしささえ出てくる今を、 俺はそう嫌ったり面倒だと思ったりなんか、どうやら全然していないらしい。 むしろ心地いいくらいだった。 悠介 「………」 俺の隣で翼を休めているちっこい飛竜を見る。 ディル『……?どうした王』 悠介 「ははっ、いや……」 その格好がなんとなくおかしくて笑った。 ……そうだな、強くなることだけが目的じゃない。 今って時間を楽しみながら強くなりたい。  守りたいものを守るために─── その理想は俺が俺である限り完全には捨てられないだろう。 それでも考える方向を変えることは出来ると思う。 全部を守ろうなんて思わない。 でもせめて、手の届く位置……親友くらいは─── そう思った俺こそが、俺自身の始まりだったんだから。 悠介 「……はぁ。よし、それじゃあ……行くか」 ディル『応』 バサッと飛翼をはためかせ、ディルゼイルが宙に浮く。 と、そのまま俺の肩へとズシリと舞い降りる。 悠介 「…………地味に重いな」 ディル『一度やってみたかっただけだ』 悠介 「……小さな状態で召喚した時、何度かやったと思うが」 ディル『些事だな、気にするな王よ』 悠介 「…………お前ってさ、妙なところでオチャメだよな」 ディル『茶目の意味など知らぬ』 まあ……それでいいと思う。 実際、かなり小さかったディル。 今も肩に乗るくらい訳ないくらいに小さいし、 10レベルからは大きさが変わらなくなっていた。 ナビメールで解ったことだが、バージョンアップにおいて10レベル以上の飛竜は、 アビリティとして“最小化と最大化”が付加されるらしい。 つまりこれは小さな状態であり、 最大化を行使すればそのレベルに応じての大きさに至ると。 そういうことなんだそうだ。 ちなみに今の大きさは手乗り文鳥……いや、インコかオウムくらいの大きさだ。 それもちっこいタイプの。 ちなみに竜の声が聞こえるのは俺やゼットやシュバルドラインくらいらしく、 仮に竜騎士にジョブチェンジしても、声を理解するまでには至れないんだそうだ。 受付 「ようこそ転職の場へ。私はグーゼ。ここの案内をする者です」 思考をめぐらせながらも受付の前に立つと、勝手に話を進め始める受付。 その名もグーゼ。 受付 「……ああ、あなたですか。管理者から話は聞いています。     ではこの月の欠片を持ってあちらのゲートへどうぞ」 コシャンッ♪《月の欠片を受け取った!》 悠介 「……月の欠片?」 ……なんだこれ。 いや、解らない時は調べるだな。  ◆月の欠片───つきのかけら  月から降り注ぐ月特有の成分を秘めた石の欠片。  成長が認められた時に誰かがくれる、創造のリミッターを少しだけ外してくれる石。  集めることにより真価を発揮。  器と一緒に貰え、器と欠片を持っていても器分、つまり一個分のスペースしか取らない。  器に欠片を嵌めこんでいき、完全になると何かが起こるらしい。 悠介 「………」 創造のリミッター……ねぇ。 それってどういうことだろうか……と思いつつ、一緒に貰った器に欠片を嵌め込んでみる。 と─── ピピンッ♪《石などの軽いものを創造出来るようになった!》 悠介 「………」 なるほど。 少しずつだけど、創造出来るものの幅が広がっていくわけだ。 受付 「そちらの飛竜にはこれを」 コシャンッ♪《ブレスLv.2を受け取った!》 ピピンッ♪《ソニックブレスを覚えた!》 ディル『む……』 悠介 「へえ……」 受付 「このように、あなたとその飛竜は各地に散らばる月の欠片や     ブレスアイテムを手に入れることで強くなっていけます。     しかしそのアイテムが何処にあるのかは解りません。     自分たちで旅をして手に入れるほかないでしょう。     誰かが持っていたりするかもしれません。     そんな時は、イベントをこなして手に入れるなりしてください」 悠介 「……つまりどうあっても“冒険しろこの野郎”って言いたいのか」 受付 「なおあなたの神、死神、精霊、竜などといった力もどこかに眠っています。     ただし今回、あなたはそれを受け取る際、人間のままで受け取ることになります」 悠介 「なぁっ!?」 受付 「受け取ったとしても神魔状態や神魔霊竜人になれるわけではありません。     “力の真価”のみが人間であるあなたの力自体に変換されます」 悠介 「それってつまり……」 受付 「はい。あなたは“人間のまま”強くなってください。そうすることで、     光の武具や黄昏に頼らなくても力を自在に引き出せるようになります。     そう、あなたの真価は“創造者”。神でも死神でもありません。     あなたはただ創造者として強くあるべきです。     ちなみに皇竜剣……ラグナロクもこの世界の何処かにあります。     是非全ての力をその身に宿し、真の“創造者”(クリエイター)
として立ち上がったください」 悠介 「………」 人間として、創造者としてか……。 うん、よっぽど困難な道のりのほうが、むしろやってやるって思える。 受付 「なお、神と死神の能力は、     先に奇跡の魔法を手に入れなければ力に変換できません。     どちらかを先に取ることは出来ても、     それぞれを取り込むとなると奇跡の魔法が必要になります」 悠介 「そこのところは現実と同じなのな……」 受付 「式や魔術などは、     何処かにある千年の寿命を手に入れなくては覚えることもできません。     様々な要素は各地に───     そう、各地に散らばっているので、頑張って集めてください」 悠介 「………」 そりゃな、冒険をするのは好きだぞ? しかしこんな風にあからさまに言われると流石に…… 受付 「では最後です。これを受け取ってください」 コシャンッ♪《法鍵の書物(ゲートブック)を手に入れた!》 悠介 「……これは?」 受付 「ゲートブック。あなたが力を取り戻すために必要なものが書かれています。     いわゆるコレクター図鑑のようなもので、     全部集めなければ空欄が開いていたりするので、     全部集めた気になっても取っていないものがあるかもしれない、     などという惨事を引き起こさないためにも時々チェックしてください。     あなた専用のナビの追加システムですので、     ナビに読み込ませれば荷物にならないでしょう」 悠介 「そか」 言いつつナビに当ててみる。 と、《ナビが更新されました》という文字とともに本が消える。 受付 「では、随分回り道的な説明になりましたがもう一度。あちらのゲートへどうぞ」 悠介 「………」 促されるままにゲートへと向かう。 さて……いったい何処に飛ばされるのやら……。 いや待て、なんだあそこに居る物体は。 悠介 「………」 若葉 「……、あ、おにいさま」 先に行ったと思っていた若葉たちだった。 それがどうして広間の隅でゴソゴソとなにかをしていたのか…… 悠介 「なにか気になることでもあったのか?」 若葉 「いえ、ささやかなイベントがあったんです」 悠介 「イベント?」 セレス「ええまあ」 悠介 「あれ?セレス……お前今まで何処に……」 セレス「ですから、イベントです。あなたがたより先にここには入っていたんですが、     少しこのイベントに難儀させられていて」 イベント……オンラインゲームとかで言う小さなクエストみたいなものか。 俺は、セレスに少し避けてもらい、その問題のクエストとやら覗かせてもらった。 すると…… 悠介 「ぐあ……」 ジグソーパズル少年とやらが居た。 ジグソーパズルを得意とする少年らしく、 少年が組み立てる速度に勝てたら賞品をあげる、という内容のクエスト。 ゼノ 「ぬ……ぬぬぬぬぅ……!!」 少年 「はい時間切れ」 ゼノ 「ぐおぉおああーーーーーーっ!!!」 で、今までやっていたらしいゼノがあっさりリタイア。 それより先に敗れ去っていたらしいシュバルドラインとともに、がっくりと項垂れていた。 若葉 「おにいさまもやりますか?」 悠介 「う……い、いや、俺はジグソーパズルは……」 苦手なのだ。 こんなものを組み立てられるヤツの気がしれないと思うほどに。 悠介 「悪い……冒険が俺を呼んでるんだ……」 セレス「悪い、というよりは一刻も早く立ち去りたいって顔してますが」 悠介 「そ、そんなことはないぞ?」 大体こんな超がつくほどの序盤だ、いいアイテムなんて早々無いだろう。 そう結論づけた俺はその場を離れ、やがて向かうべきゲートへ…… 水穂 「そういえば賞品はなんでしたっけ?」 少年 「月の欠片だぞー」 悠介 「……《ビッタァ!》」 動かしていた足が止まる。 ……マテ、これはいったいどういう状況なんだ? 遊ばれてる……遊ばれているのか俺は……。 少年 「ここには一度しかこれないから、これを逃すともう手に入らないぞー」 しかも絶妙なタイミングでそんなことを言ってきやがる始末。 ……ええい、いっそアイスソードを奪還するが如く襲い掛かってくれようか。 水穂 「……?あれ?お兄さん?忘れものですか?」 悠介 「あー……いや、まあその……事情が変わったんだ……」 いっそ泣きたい気持ちになるのはどうしてだろうなぁ……。 ───……。 ……。 で…… 少年 「時間切れだー」 悠介 「もう一回だ!」 若葉 「おにいさま……全然出来てませんよ」 悠介 「言うなっ!解ってる!」 やってはみたものの、やっぱり異常なくらいに苦手なわけだ。 思考を組み立てて弾き出す創造者がこんなザマかというほどに苦手なわけだ。  トストス、トトストストス…… 厚紙で出来たパズルを嵌めてゆく。 四隅を固めるのは当然として、ここからが問題というか…… これはどこだこれは……えー……あー……なんだ、おーー………… 少年 「時間切れだー」 悠介 「ぐぁああああああっ!!!」 木葉 「またしても全然出来てません……」 悠介 「言うな……頼むから言わないでくれ……。     苦手なんだよ……ジグソーはこれでもかってくらい苦手なんだよ……」 セレス「そういえば、空界の雷の聖堂の仕掛けの時も全然出来ずに……」 悠介 「そんな昔のことは忘れたな」 セレス「本人が忘れても周りが覚えているものですよ、そういうのは」 悠介 「言うな……」 こうして俺はジグソーに時間を費やすだけ費やし……結局なんとかクリアし、 月の欠片を手に入れた頃には、トライ回数は78回にも及んでいた。 これから先、どんな試練が待ち受けててもいいから…… ジグソーだけは勘弁してほしいと本気で願った夏の日の出来事だった。 Next Menu back