───冒険の書147/メテオディザスター───
【ケース406:中井出博光(再々)/アクシビターメモリーズ】 メチャリメチャリ……ぞぶ、ぞぶり…… 中井出「“人生”(ラヴィ)!!」 ヌシに食われて胃袋劇場……こんにちは、中井出博光です。 今日はここ、ヌシの胃袋の中からお知らせします。 若者よ……人生、感じてるか? 中井出  「いや〜セイレーンさん、とても素晴らしい景色ですね。       思わず溶けてしまいそうです」 セイレーン『悪夢よ……悪夢だわ……』 中井出  「はい、セイレーンさんもあまりの景色の素晴らしさに頭を抱えております。       いやぁ、あれだけ大きなヌシだったのが頷けるほどの巨大な胃袋です。       ホホジロザメくらい、軽くひと飲みですよ。こりゃデカい。       ところで俺、忘れ物したから帰らなきゃならんのだが。帰っていい?」 セイレーン『帰るってどうやって!』 中井出  「ええいわざわざ怒鳴るなバカモーーーン!!       帰るって言ったら普通に帰るに決まってるだろう!!」 もちろん尖骨は欲しいからコロがして脱出するわけだけど。 中井出「我が右手に火の力!我が左手に風の力!連ねて一つの力と成す!     くらえ極限流超必殺奥義!“覇王翔吼拳”!!」 キュィイイドゴォッシュゥウウウンッ!!! ベボォッチャアァアアンッ!!! セイレーン『キャーーーッ!!?』 中井出  「ウオッ!?」 胃袋の内側に覇王翔吼拳を当てた───が、なんと弾力で掻き消しやがった! ……ってしまった、ステータスが穂岸を殴った時のままだ。 これじゃあいくら力込めても大したダメージは望めない。 そんなわけで体に属性が満ちるまで待ってから再び義聖拳。 今度は光と元素を合わせたもので、男なら多分一度はやってみたいと思うもの。 中井出「かぁ〜〜……めぇ〜〜……はぁ〜〜〜……めぇええ〜〜…………!!!     波ァアアーーーーーーーーーッ!!!!ドンチュゥウウウウウンッ!!!! 突き出した両手から光の波動が放たれる!───ていうか出た!出たよ!! 全国の僕らと同年代の諸君……俺……!俺……っ!俺やったよ! ついにかめはめ波を出せたんだ!! などと感動したが、光属性に耐性でも持ってるのか、胃袋は中々破けない。 中井出「パ、パワーが足りねぇ……!パワーをくれ……!誰でもいい……!     こいつを倒せるパワーを……!パワーをッ───くれぇえーーーーっ!!」 力を込める!さらにさらにと! すると少しずつだが胃袋を押し破ろうと光が胃袋を押してゆく! だが反発する力も強く、気を抜くと逆に押し返されてしまう! いいだろう胃袋!これはいわば俺の初かめはめ波への意地と、貴様の強度を賭けた戦い! 剣で突き破れば一発だろうが、俺はこれで突き破ってやる! 中井出「波ァーーーーーーーッ!!!!」 しかし放ち続けていると、どんどんと力が抜けてゆく! 拳に満ちた属性全てを放ち終えると今度はTPが消費されてゆく。 つまり今、俺のTPが尽きることが俺の敗北条件ということだ───! ていうか何故俺はこんなところでこんなことをやってるんだろうかな。 セイレーンも一刻も早く外に出たいみたいで、俺に期待の眼差しを送る始末だし。 中井出(だがしかしパワーが……!パワーが足りない……!) パワーが欲しい……せめてかめはめ波でこの胃袋を破ってやれるパワーが……! と、そんな時である! 力みすぎて弾けた僕の脳内映像が、僕に妙な幻覚を見せたのだ! 声  (博光……!博光……!) そして僕を呼ぶ声。 だ、誰!?ぼんやりと見える影の正体は……僕の名前を呼ぶのは誰!? この脳内景色から静かに僕に近づいてくる塵のようなものはなんなの!? い、いや!これはまるでキン肉マンがピンチの時に ネプチューンマンが飛ばした奇跡の灰のよう……! す、するともしやアタル兄さん!? 彼が俺の脳内から発生し、キン肉マンの時のようにアドバイスを!? 声  (わたしだ!) 中井出(アタル兄───ゲエ!サンシャイン!!) 現れた影と声の正体はなんとサンシャイン! 奇跡の灰だと思っていたソレは、サンシャインの砂だったのだ! つーか“わたしだ!”じゃないでしょなんで居るのキミ! サンシャイン(博光よ。郷に入りては郷に従えという言葉もある。        確かにここまで来て剣で攻略するのは邪道かもしれん。        しかしあらゆる状況において最善の方法を選べることも、        これからの戦いを攻略するために必要な道なのかもしれん。解るな博光) 中井出   「ちょっ……なに得意そうな顔で説明してんの!?        僕キミなんて呼んでない!呼んでないよ!?        人がピンチの時になに笑ってるの!グオッフォフォじゃないよ!        ていうかなんで僕の名前知ってるの!?僕の脳内が作り出したから!?        え、えぇ!?帰っちゃうの!?なにしに来たのキミ!        力もなにもくれないの!?いやちょ、待って!待ってぇえええっ!!!」 止める間も無く───というか、普通にさっさとサンシャインは消え去った。 結局なにしに現れたのかは解らなかったが、 ハッと正気に戻った時にはTPはカラになっていた。 中井出  「………」 セイレーン『………』 さて……どうして俺は、敵であるセイレーンと一緒に状況に悩まされてるんだろう。 しかしながらTPもさっさと回復してくれたので、出るというなら出られる。 中井出  「えっと……じゃあ、出ようか……」 セイレーン『気休めはよして……あなたさっき、全力でやっても無理だったじゃない……』 中井出  「フフフ、様々な物には耐性というものがあるのだ……。       そしてこの魔物は恐らく波動系……魔法系に強いと見た」 セイレーン『……?じゃあ……武器で攻撃すればいいっていうこと……?       でもあなた武器なんて持っていないじゃない……』 中井出  「この俺の、全身こそが武器よ!」 今の俺ならば、通行人と肩がぶつかっただけで麻痺させることが出来る自信がある! そういった意味ではウソではない筈。 ……この世界の通行人にやったら、まず間違い無く襲い掛かられると思うけどさ。 中井出「というわけで《ジャキィンッ!!》僕、ここからもう一度羽ばたく」 双剣を取り出すとセイレーンに向き直り、ニコリと笑った。 そう……泥舟丸で航海の終着に至ることは出来なかった。 ならば、せめて用事を済ませた後に真・泥舟丸を作って航海する! 用事ってのは他でもない、ロドリゲスの回収と運送屋さんの救出、 それから死の加護と無の加護を得ることさ! 加護の方は目の前で穂岸が受け取っているにも関わらず、 いつの間にか“穂岸の用事”として受け取ってた所為で、貰うの忘れてたし。 死の精霊とはまだ会ってないから……会ってみるのも一つの楽しみだったりする。 そんなわけで俺はジークンムントとジークリンデを合わせるとジークフリードにして、 ギリチチチィと身を捻るようにして─── 中井出「ブッ飛べカラミティイーーーーーーッ!!!」 胃袋の壁目掛けて一気に振った!! すると驚くほどあっさりとズバァムと斬れる胃袋!そしてその先の内臓やらなにやら! もちろんその後は突如訪れた激痛にヌシが暴れ始めたらしく、 まだ胃の中に居る俺達は地震を味わっていた。 ていうか胃への刺激で胃液が出てきて、 しかもその胃液が斬痕から流れ出して余計に激痛味わってるらしい。 ……大丈夫か、こいつ。(頭が) などとあっけらかんと見てはいるものの、 実際人間もこんな風になる病気とかもあるんだろうね。 だがこの博光、生憎と溶かされて栄養にされる趣味はない! 中井出  「さあ行こうバンシーよ!」 セイレーン『セイレーンよ!』 中井出  「すまん素で間違えた!!」 ムキーと怒るセイレーン! しかしそんな彼女の手……ではなく腰を左手で抱えると、 右手に持つジークフリードに光の属性をありったけ込めて解放!! もちろんフロートスキルも全開体勢にし、 中井出「エネルギー───全ッ開ッ!!     “ジュースティングッ……スラッシャァアーーーーーッ!!”」 属性を弾けさせるとともに解放。 力強く胃袋の床を蹴ると、斬り開けた胃袋の穴へと飛翔した。 剣を突きの状態で固定し、まるで剣先を削岩機にでも見立てるかの如く進み、 内臓や血管などのあらゆる障害物を穿滅しつつ、 皮膚を割り海を貫き、やがて蒼空の下へと飛び出した───……!! セイレーン『すっ……すごいっ……!こんな……!?』 中井出  「フフッ……冒険に明け暮れる日々の中……       空がこんなにも蒼いことを忘れていた……」 もちろんウソだ。 ───……。 ……。 ややあって───俺はプカーと浮いてきたヌシの体に降り立つと、 早速剥ぎ取りを開始した。 残念ながら尖骨のレアドロップはなかった。 だから剥ぐしかなかったのだ。 手に入ったのは───巨大両性生物の厚皮というものだけ。 一回剥いだら消えやがったのだ。 ええいあれだけデカいくせになんと軟弱ザボシャアン!! 中井出「ブエッヘェエーーーイ!!ヌシの上に居たの忘れてたぁあーーーっ!!」 そりゃ消えれば落下します。 ええもうほんと悲しいくらいに格好悪い。 だがこれがこの博光の生き様よ。 ……あまり誇れたもんじゃないけど。 中井出  「じゃあ俺はこれで。用事を済ませたらまたここ通るけど───       沈めたら今度こそ沈めるぞコノヤロー」 セイレーン『もう懲りたからもうしないわよ……       またあなたみたいな人間に会ったりなんかしたら、       それこそ冗談じゃないわ……』 どうやらかなり嫌われたらしい。 そりゃそうか、沈める者だった筈が沈められて、 しかもバケモノの胃袋に道連れにしたんだもんなぁ。 セイレーン『……それでもバケモノの胃袋の中から助けてくれたことは感謝しておくわ。       いいこと?これはわたしが       お礼を言っておかないと後味が悪いと思ったから言っただけで、       別にそれ以外に深い意味なんて無いんだから。       まったく、どうせ一人でさっさと逃げ出すつもりなんだなんて       思っていたところに手を差し伸べるなんて……』 中井出  「じゃーなー!もう悪さするでねぇだぞぉーーーーっ!!」 セイレーン『へ……?な、ちょっ───人の話くらい聞きなさいばかぁーーーーっ!!』 フロートと風で空を飛んでゆく中、別れを告げるために見下ろした先で、 セイレーンが両拳を突き上げるようにしてなにかを叫んでいた。 おお、去る者を全力で送り出してくれるなんて、なかなかいいところがあるじゃないか。 そんな彼女にハタハタと手を振りつつ、 俺はノースノーランドへの道を戻ってゆくのだった。 【ケース407:中井出博光(超再)/ルシアン染め(ラシュアンではない)】 そうしてノースノーランドにやってきた俺は─── 中井出「…………!《ガチガチガチガタガタガタガタ……!!》」 あまりの寒さに震えていた。 考えてもみよう。 さっき俺はヌシに飲み込まれ、胃袋に納められつつ海に沈んだ。 で、そこはジュースティングで脱出したが……それ以前に海に濡れていたのだ。 もちろん濡れた体をほうっておいてくれるほど、寒さというのは薄情じゃない。 その冷たさを余すことなく発揮し、やさしく僕を包み込んで寒いよ!! 包まなくていいよ!寒いよ! 暖は!?暖かい場所は何処!?服と体乾かさないと風邪引く以前に凍死しちゃうよ! と、涙さえ凍ってしまいそうな状況の中で見つけたのは喫茶店のような店。 レストランに近いんだけど、何処か落ち着いた雰囲気のある場所だった。 ……そうだ、ここにきっと死の精霊が居るに違いない。 ということでなんだか動きが鈍くなりつつも必死に歩き…… とうとう暖かな店内へと我が身を滑り込ませたのだった。  カランカラーン♪ マスター「ヘイらっしゃい!」 マシーン『魚屋かよ』 入った先に待っていたのは確かな暖かさと威勢のいいマスター、 そしてツッコミマシーンだった。 どうしてそんなものがあるのかは解らんが、きっと趣味なんだろう。 中井出 「マスター、うまティーひとつ」 マスター「あいよ」 店の中は結構賑わっていた。 座る場所があるかが少々不安だったものの……見事的中。 こんな時は普通、都合よく場所が空いてるもんなんだが、全然ちぃとも存在しない。 だからこそ“少々不安だったものの……”とか思考してみたっていうのに。 しかしどうやらそう落胆することもないらしい。 うろうろと彷徨っていると、奥の方に誰も相席していない場所があった。 そこにはうまティーを飲みつつご機嫌な男が一人。 中井出「失礼、ここ……よろしいかな?」 もちろん俺は出来る限りの紳士を気取って椅子に軽く手をかけた。 途端に周りが“ざわ……!”とどよめくが、細かいことは気にしません。 男  「あー、あー、いいところに来たねぇおにーさん。ま、ま、座ってきなさい」 しかし周りの反応とはまるで違うような陽気な男は、俺はすぐ近くに居るっていうのに、 ちょいちょいと手招きをしたのちに椅子に座るように促す。 さて……周りの反応はもちろん気になるわけだが、 ここ以外には既に座るところが無かったりする。 ならば当然ここに座るしかないわけだが……はてさて。 そうして迷う暇もなくさっさと運ばれてくるうまティーを前に、 結局俺には“座る”という選択肢しか舞い降りなかったわけだ。 ……なにがそうさせてるのかは知らんが、 イベントの一種として受け取って然るべきなんだろう。 そんな答えに落ち着いた思考の中、とりあえず溜め息を吐きながら椅子を引き、着席。 するとどれだけ奔放なのか威勢がいいのか、 男はわざわざ向かい合う場所に居る俺の隣にまでゴガガガと椅子を移動させると、 ワッハハと笑いながら俺の肩に腕を回してきた。 明らかに若々しい容姿だっていうのに、このオヤジっぽさはいったいなんなんだろうなぁ。 男  「いやぁ〜、友よ!この素晴らしき出会いに乾杯!」 中井出「ぬお貴様!さては酔ってるな!?」 男  「酔ってて悪いか?」 中井出「とりあえずうまティーで酔える貴様に乾杯」 男  「おお乾杯だ!」 一人でも賑やかな男とカツーンとグラスを合わせて笑う。 恐ろしき男よ……普通の者ならば“酔っているな”と訊かれれば、 “酔ってない”と言うというのに。 僕は彼のそんな素直さに心打たれました。 男  「ところでお前さん、こんな寒い場所になんだって半分凍りながら来てんだい?     もしかしてうまティー欲しさに三千里か?」 中井出「うまティーの美味さは世界に誇っても構わんくらいだからな。     けど残念ながら真実はそうじゃないんだぜ」 男  「というと?」 中井出「実は俺はここに死の精霊を探しに来たんだ」 男  「ああ、それ俺だ。なんだ、お前冒険者か」 中井出「…………JALOの電話番号ってどんなのだっけ」 男  「なんだそりゃ。ジャロ?まあいいや、いいから付き合ってけって」 中井出「思わず訴えたくなるくらいの反・死の精霊っぽいヤツだな」 男  「よく言われる」 言われてるらしい。 会ったばっかりの俺でさえそりゃそうだと納得出来るくらいだ、当然だろう。 男  「そういやさっきも加護が欲しいなんて言うヤツが来たな。     ありゃお前さんの仲間か?」 中井出「ああ、そう───……」 男  「うまティー飲んで舌火傷してピーピー騒いでた子供を引き連れてたが」 中井出「全然知らない人です」 ナギーだな、うんナギーだ。 どうせ“火傷などしてないのじゃ”とか涙目で言ってたに違いない。 中井出「そんなわけで加護をくれると大変ありがたい」 男  「随分と正直なヤツだな。いいぞ、ほれ」 ドンチュゥーーーン!! ピピンッ♪《死の加護を受け取った!》 ピピンッ♪《即死系統の魔法や特種攻撃に耐性がついた!》 中井出 「ウホッ!?なんとあっさり……!」 男   「じゃあ飲もう!ああ、俺はケイオスだ。よろしく」 中井出 「俺は中井出博光という名の旅人だ」 ケイオス「そうかそうか」 中井出 「ところで貴様、声がダブって聞こえないけどなんでだ?」 ケイオス「そんなのコントロールしてるに決まってるだろ。      ホレ、こうやって喉を突付いていじくって───と。どうだ?』 中井出 「お、変わった変わった」 ケイオス『だろ?いやぁ、この声のままうろついてると、      結構〜人間たちにヘンな目で見られてな。      だからちょちょいとブレる声帯を殺して歩いてるってわけさ』 こんなところばっかりは死の力に感謝だな、なんて死の精霊っぽくないことを言ってる。 産まれる方向間違えたんだろうなぁこの精霊。 ケイオス『でも雰囲気でなんとなく解るんだろうな、み〜んな俺のこと避けて通りやがる。      俺はただ楽しく過ごしたいだけなんだけどな。      だって損だろ?せっかく存在してるのに、      誰も居ない、面白味もない聖堂でボ〜ッとしてるなんて』 中井出 「だからこんなところにまで来てうまティーを飲んでると」 ケイオス『いや、うまティーを見つけたのは偶然だ。       俺はこう見えてブラブラと旅をする精霊でな。      聖堂を持っちゃいるが、それは人の死がある場所、なんていう冷たい場所だ。      つまり墓とかそういうところだな。      ん〜な場所に居たもんだから娯楽も知れないまま今まで過ごしてたってわけだ』 中井出 「楽しいものを探すきっかけになったなにかがあったのか?」 ケイオス『おおあったあった。      結構前になるんだが、他の精霊どもがヘンテコな野郎どもと会ったとかでな。      散々からかわれたとか馬鹿にされたとか言うじゃないか。      なんつったか?はら、ハラ……ああまあいいや、      解らないことうだうだ考えるのは好きじゃないし、      その所為で話が進まないのはもっと嫌だ。      まあそんなわけでそいつら探して旅してるうちにここに辿り着いたわけよ。      丁度ここに来る前にセルシウスに会ったんだけどな、いや笑った笑った。      いつの間にか物凄い建築物っぽい場所になっててよ。      セルシウスのヤツ俺が会いに行くや否や、      ギャーギャー喚いて一人じゃ隠しきれない雪像必死になって隠してさ』 中井出 「………」 ワンチャイ様だ……間違い無い、ワンチャイ様だ……。 いやほんと……悪いことしたなぁ……。 セルシウスの真っ赤な顔が思い浮かぶようだよ……。 ていうかまだワンチャイ様の雪像残ってたんだ……。 雪は変わらず降ってるっていうのに、もしかしてセルシウスが残してくれてたとか? はっはっは、なんだかんだで喜んでくれてたってことで、いいか。 ケイオス『ま、とにかく精霊どもの聖堂を練り歩いてりゃあいつか会うだろってことで、      俺はこうして旅してるってわけさ。      あぁそうだ、六人組の賑やかなやつららしいんだが、知らないか?』 中井出 「………」 自分で自分を認めるのって癪だと思わないか? ということで、よし教えよう。 中井出 「我はその男を知っているッ!      いや、その六人組の者どもと、そいつらが暴れた話を知っているッ!!」 ケイオス『おおっ、ほんとか!?どんなやつらだ!?      ああいやそれをここで聞くのはつまらないな、      それでそいつら今何処に居るんだ?』 中井出 「風の噂だが、大半が空の果てに居るとか。      元素の精霊に会いにいったって聞いたぞ」 ケイオス『おお、マクスウェルまでからかいに行ったのか。そいつは面白いなっ。      よしよし、それじゃあ俺もそろそろこことオサラバするかな。      あぁマスター、うまティー50杯分持ち帰りでー』 マスター「はいよー」 席を立ちながらの言葉に、内心“50!?”と驚いたが……好きなればこそってやつだな。 うん、うまティーは美味いからなぁ。 ケイオス『んじゃ、俺は旅に出るわ。あぁ、なんだったら一緒にどうだ?      お前とはなんとなく気が合いそうな気がする』 中井出 「断る」 ケイオス『たっはっはっは!そうそう、その遠慮の無さがいいわなぁ!      ま、縁があったらまた会おうや。      人間のフリして振る舞ってる時はケイオス=ブリジストで通ってる。      名前を知ってるのと知らないのとじゃあ、      めぐり合わせの縁ってのにも差があるらしいからな。      で、お前は中井出博光っていったよな。オーケー覚えた。      もしどっかで“エロマニア”って呼ばれてるヤツと会ったら教えてくれ』 死んでもごめんである。 心の中でそう呟くと、俺の返事も待たずにケイオスは去っていった。 しっかりとお持ち帰り用のうまティーを手にして。 中井出「………」 俺もうまティーをぐいっと飲むと、すっかり乾いた服や体とともに歩き出す。 もちろん金はちゃんと払って。 さて……次は無の加護だな。 さっきのことは忘れよう。 僕はエロマニアなんかじゃない……エロマニアなんかじゃないんだ……。 ───……。 ……。 そんなわけでやってきたのが教会。 一応暖房もあるそこは、扉さえ閉めれば中々に暖かい場所だった。 神父 「迷える子羊よ、ようこそ礼拝堂へ」 中井出「やあ神父。加護をよこせ」 神父 「…………随分と直球なる迷える子羊よ、ようこそ」 言う割りに溜め息も動揺も無しに俺を見据える神父。 普段の暴力性も、もっと抑えてくれたなら素晴らしいヤツかもしれないのに。 叩いただけでもこちらをコロがすまで襲い掛かってくるのはなんとかならんだろうか。 神父 「欲しいのならさっきのヤツと同時に貰えばよかったものを」 中井出「忘れてた!」 神父 「随分と正直なヤツだ。だが手間賃としてお布施をよこしなさい」 中井出「な、なんて強欲な!な、なんぼ?」 神父 「神は貴方の全財産を所望です」 中井出「崇めるなよそんな荒神!!」 神父 「しのごの言わずに出しなさい!さあ!さすれば楽園への扉が開かれます!」 中井出「出さないよ!そんなことして開くのはヘルゲートかアビスゲートくらいだよ!!     もういいから加護ちょうだいよ!うまティーあげるから!」 神父 「む。まあいいだろう。加護を授けよう」 中井出「ええっ!?俺の全財産ってうまティーと等価なの!?」 ていうかこの神父、コロコロと口調が変わりすぎだ。 神父モードだと丁寧さを含んだ口調で、精霊モードだととにかく偉そうだ。 でも一応加護がもらえたから深くはツッコまないようにしておこう。 こいつなら没収とか平気でやりそうだし。 ……なんて神父なんだ、ほんと……。 ピピンッ♪《無の加護を受け取った!》 ピピンッ♪《無属性の弱い攻撃なら一定の確率で無効化できるようになった!》 中井出「……ありゃ?俺のは一定の確率なのか……」 そういや穂岸の方は加護の強化がどうとかって……それでか。 しかし加護は無いよりはマシなので、喜んでいただいておくことにする。 押忍、ごっつぁんです。 神父 「さて、他に用は───」 中井出「一つ訊きたいんだけどさ。もし守護竜を倒して力を解放できたとして、     貴様の宝玉とかもらえたりしない?」 神父 「貴様がより強くなり、     様々な属性に対して抗体が出来ていれば或いは可能かもしれん。     だが基本として今の貴様では確実に不可能だ」 中井出「ええっ!?なんで!?」 神父 「貴様にはそれだけの才が無い。人としての限界というものがある。     それを超越出来るだけの能力が貴様にはない。それが貴様の限界だ」 中井出「う、むうう……!」 それはそうかもしれない。 ここまで強くなれるだけでも十分すぎるくらいだ。 そうだよな、まだ上だって目指せるし、高位精霊の宝玉がなくても─── 神父 「どうしても人間の殻を砕きたいなら人をやめろ。     それが嫌ならそれ相応の何かを身に付けることだ。     どの道今の貴様では我々の力を完全に操ることは出来ない」 中井出「い、言いやがったな神父め!     だったらもし俺がそんな力を手に入れることが出来たら───!」 神父 「約束してやってもいい。貴様のその宝玉に高位精霊の属性を封入し、     力を引き出せるだけ引き出してやろう」 中井出「よっしゃあ確かに聞いたぞ!聞いたからな!     テープレコーダ−が無いのが悔やまれるけど!」 神父 「せいぜい励め。貴様では無理だろうがな」 中井出「ていうか今更だけどなんで呼び方が貴様になってるの!?     あんまりに当然のように言うから気づかなかったよ!     そして我ら原中は無理なんて言葉に振り回されん!経験主義者だからな!」 やらせてもらうぜ遠慮なく! 見てろ───いや見えないか。 覚えてろ!?いつか絶対にギャフーリと言わせてやる! ……言いそうにないなぁ。 そんなわけで、ギャフン以外のどんな言葉を言わせてやろうかと考えながら、 俺は教会をあとにしたのだった。 さあ、あとは運送屋だ。あれ?配達屋だったっけ。まあいいやどっちでも。 ───……。 ……。 ───そんなわけで…… 中井出「…………」 フィールドである。 ちなみに雪は荒れ狂うばかりで、先の方があまりよく見えなかったりする。 これもこの付近ならではの天候なのか、 はたまたケイオスに恥ずかしいところを見られたセルシウスの怒りなのか。 それは気にしない方向で行こう。 どの道進むしかないのだ。 そんなわけでこの寒い中、 律儀に待っててくれていたロドリゲスとともに、吹雪の中を歩いてゆく。 中井出「お前って忠犬……犬?忠鳥だよなぁ」 ルルカ『ゴエ?』 白い吐息とともに呟いた言葉に首を傾げた。 平気で忘れ去られて、思い出されたら出されたで乗り物にされてるし。 すっかりナギー専用の乗り物になっている。 ああ、ちなみに俺は乗ってない。 一緒になって歩いてる。 中井出「この中を配達だもんなぁ……そりゃ進めなくもなるよ」 ルルカ『ゴエゴエ』 中井出「……思ったんだけどさ、お前って俺達の言葉、解るのか?」 ルルカ『ゴエ』 中井出「そうかそうか、残念だが俺は解らん」 ルルカ『ゴエ……』 中井出「そう残念がる必要はないと思うが……。むしろ今大事なのは、     この吹雪がセルシウスの恥ずかしさから来るモノだとしたら、     その原因が俺達にあったってことくらいなのさ」 ルルカ『ゴエ?』 中井出「いやほら考えてもみろって。ワンチャイ様の像を見られたり、     巨大なニセインカ帝国を見られたからセルシウスは恥ずかしかったわけだろ?     で、やり場の無い恥じらいと怒りのぶつけどころがこの吹雪であって、     その吹雪で配達屋は進めなくなった……ほら、なぁ?」 ルルカ『ゴゴエ、ゴエエ……』 中井出「うう、ありがとうなぁ、そう言ってもらえると俺も救われるよ……」 ルルカ『ゴエ?ゴゴエゴエ?』 中井出「いや、適当に返しただけで、言葉が解らんことに変わりはない」 ルルカ『ゴエェエエゥウ!!』 中井出「うおっ!?怒った!?」 そんなやりとりをしつつ進む。 出てくる前に配達屋のルートを聞いておいたから、 マップを見ながら先の町の方に歩いてれば見つかる筈だが─── ルルカ『───、ゴエッ、ゴエウ』 中井出「おおっ?どうしたロドリゲス」 ルルカ『ゴゴエ、ゴエエゥ』 中井出「ぬ……?」 ロドリゲスが先の方にあるこんもりした小さな雪山を促す。 って……え?もしかしてアレ!? 中井出「い、いかん!凍死してしまっているかもしれん!迅速に掘り起こすぞ!」 ルルカ『ゴエッ!』 慌てて駆けて、雪の山を崩してゆく! するとその中には───……台車のようなものをひっくり返し、 雪を防いでいたらしい二人の女性が。 女1 「だ、誰……?」 中井出「訊かれたのならば応えよう!遠き者は耳に聞け!近き者は目にも見よ!     我こそは!原沢南中学校が提督!中井出博光であるーーーーーっ!!!」 女2 「な、なかい……?もしかして救助隊かなにかですか……?」 中井出「残念だが救助“隊”ではない!救助には来たが隊ではないわ!     というわけで立ち上がれ!このままノースノーランドへ案内しよう!」 女2 「ま、待ってください……!ソニアが足を怪我してしまっていて……!」 中井出「ソニア?」 ソニア「わたしのこと……」 何処か居心地悪そうにして手を挙げる女1。 確認を取ったところ、1がソニア、2がリリアというらしい。 ……それがまた、どっかの双子の剣士と魔導術師に物凄〜く似ていたりする。 中井出「そうか。じゃあ……ロドリゲス、いいか?」 ルルカ『ゴエッ!《ビッシィ!》』 訊ねると敬礼で返してくれる不思議生物。 そんなロドリゲスの背中に姉妹を乗せると、 俺は荷物と台車を起こして、それを引いて歩き出す。 リリア「あ、無理です!それはとても重いもので、一人では───」 中井出「《ズゴゴゴゴ……!!》え?なに?」 リリア「え……あ……な、なんでもないです……」 STRをマックスにして歩いてゆく。 いやぁ、ステータス移動のなんとありがたいこと。 こんな重い積荷を引いてても軽々楽々進めるよ。 中井出「あっとそうだそうだ。貴様足怪我してるって言ってたな。     どれ、ちょっと試してみたいことがあるから見せてみてくれ」 ソニア「っ……触るな!」 中井出「おおっ!?」 リリア「あっ、いけません!ソニアは男性恐怖症で───!」 中井出「ええっ!?そうなの!?」 男性恐怖症が町に配達!?すげぇ根性だ!商魂ってやつ!? 中井出「キョホホ……そういうことなら触らんでおこう。     だが解るな?わしなら出来るんだぜ?」 リリア「あの……なにがですか?」 中井出「なんだろ……」 ノリで言っただけだから知らない。 しかしこうも拒絶されると案外寂しいもんだ。 ただ無剣流の水属性キャリバーで回復したら、 ベホイミっぽく出来るかなとか思っただけなのに。 中井出「ムー」 しかし人の持病みたいなものにまで深く入り込むつもりはない。 我らは食べ物にも涙にも手を出すが、人にとって重い存在にはなりたくない。 相手が許可するところまでしか入りはせん。 状況によっては入るけど。 中井出「………」 コリ……と頬を掻きつつ、台車を押して進んだ。 現れた敵は左手から解き放つ無剣流風キャリバー、大豪院流真空殲風衝で破壊して進んだ。 ……うん、段々コツってもんが掴めてきた。 キャリバーも剣を使うか手でやるかでかなり効果が変わって面白い。 そんな風に楽しんでいる俺を見て二人はかなり驚いてたけど、 自分が魔王だということは伏せておいた。 話した方が面白そうだとは思ったものの、 届ければ報酬が出るのならここで悶着を起こすのは好ましくないのだ。 なにせ俺には愛剣を+1000にする野望があるのだ、僅かなところでも躓けない。 …………。 ややあってノースノーランドに到着。 そのまま先ほどのオヤッサンのところにまで台車を運ぶと、 店の中から窓越しに我らの姿を見たらしいオヤッサンがバタバタと出てきた。 主人     「オッ、オッ、オッ……!         なんだいなんだい、ニーチャンほんとに行ってくれたんかい!」 中井出    「金くれ」 ソニア&リリア『うわぁ直球!!』 主人     「いやいや、依頼したのは俺っちだ。当然の要求だぜ。ほいよ」 コシャンッ♪《10000$を受け取った!》 中井出「おおありがとう」 主人 「いやいや構わねぇよ。そんでよ、もうひとつ頼みがあるんだが───     エトノワールから来る筈の姫さんがまだ来ねぇんだ。     もしかしたらモンスターにでも襲われてるのか、     こいつらみてぇに進めなくなってるのかもしれねぇ。     探して連れてきてくれねぇか?」 中井出「あ、ダメダメ、そろそろ行かんとナギーにコロがされ───」 主人 「追加報酬で20000$払う」 中井出「任せてくれ!何を隠そう、俺は送迎の達人だぁっ!!」 もう引けなかった。 ───……。 ……。 ドドドドドドドドドドドドド───ダンッ!! 中井出「稲妻反転蹴りィイーーーーーッ!!!!ヂガガギバァッシャァアアアアンッ!!!! モンスターども『ギャアアアーーーーーッ!!!』 護衛兵    「ぬっ……!?」 そうして全力疾走で姫さん探して右から左へ東から西へ……。 早速見つけた高級馬車を囲む敵を稲妻反転蹴りで黙らせると、 中井出「この馬車はエトノワールの姫さんが乗る馬車で間違いないか!?」 護衛兵「姫の御前なるぞ無礼な!何者だ!名を名乗れ!!」 中井出「質問に質問で返すなぁーーーーっ!!!質問しているのは私だぁーーーっ!!     あ、でも姫の御前らしいから質問の答えにはなったか。やあ僕博光!」 護衛兵「なにぃ!?怪しいヤツめ!」 中井出「それって名前が怪しいってこと!?どっちが無礼だよ!!     ええいこちとら時間が無いんだ黙ってろい!バッスー・ピンコオ拳!!」 護衛兵「《ドボォッホォオオン!!》ぐえぇえっはぁああっ!!!」 護衛兵の鎧の腹部に徹し掌底を炸裂させる! すると鎧にはなんの外傷もないのに、ズルリと気絶する護衛兵。 ……ていうか兵士一人だけか?随分と手ぬるい護衛だなぁ……。 おっとそんなことを考えている時間はねぇぜ!! うむと頷くと馬車の扉を開いてその中に兵士を便利に収納! きちんと姫さんの存在も確認したのち、弱っている馬を担いで俺が馬車を引く! ステータス振り分けはSTRとAGI! 特急便にてお届けします!チェェエストォオーーーーーッ!!! ───……。 ザザザザザザァアアーーーーーザザザァッ!!! 中井出  「ヘイお待ち!!」 主人&姉妹『速ッ!!』 ルルカ  『ゴエッ!』 そうして辿り着いたノースノーランドではオヤッサンと姉妹とルルカが待っていた。 それを確認したのちに馬を水のキャリバーで癒し、 地面に降ろすと報酬をしっかり受け取ってミッションコンプリィーーーーッ!! 中井出「よし行くぞロドリゲス!この海を渡って時の大地へ!」 ルルカ『ゴエエッ!!』 主人 「な、なにっ?おいおい待てニーチャン!海はダメだ、船は出ねぇぞ!?」 中井出「かまわーーーん!!自力で向かう!!」 ルルカ『ゴゴエゴエゴエ!!』 俺とロドリゲスは我先にと駆け出した! しかし港に辿り着いたあたりで一気に跳躍! ガッシィイン!とドッキングを果たすと、ルルカに乗って大空へと羽ばたいた! さあ、待っていろナギー!今会いに行くからなー! 【ケース408:中井出博光(阿修羅再)/災厄、降臨】 さてそんなわけで、急がなければいけないこともあって筏を無視して空を飛んだ俺達。 途中、セイレーンにも会ったが物凄く嫌そうな顔をされたことを伝えておこう。 結果がどうあれ、思い返してみればろくな目には遭わなかったわけだし。 もはや船を沈める気も無いようで、岩場に座って退屈そうに頬杖ついていた。 そんな彼女の上空を通り過ぎる、ロドリゲスに乗った俺。 空飛ぶルルカに乗るのは初めてだが……なかなかどうして、気持ちがいいもんだ。 中井出「自分で空飛ぶのもいいけど、何かに乗って風を受けながら進むのもいいなぁ」 それがディルゼイルじゃないなら余計に。 あの飛竜はゆっくり進むってことを知らないから。 中井出「お。時の大地が見えてきたな。筏もちゃんと浜辺に置いてあるみたいだし───」 サンサンと照りつける太陽が俺とロドリゲスの影を海面や砂に映す。 そんな何気ないことが面白かったりするから、人っていうのは案外単純なのかもしれない。 そうやって空中から影で遊んでいると、その影が雲の隠される。 随分と分厚い雲のようで、 まるで俺達が浮いているその場所だけ暗闇に覆われたみたいな─── 中井出「───、」 ルルカ『ゴ、ゴエエ……!』 ───いや。 これは…… 中井出「逃げろロドリゲス!」 来る時は流れるように訪れた影が、いつまで経っても離れない。 しかも雲と思えるほどの巨大な影を地面に映すものだ─── その大きさは恐らく、影の比じゃない───! ルルカ『ゴェエエエッ!!』 俺は吐き気がするくらいのドス黒い恐怖を感じて、 ほぼ反射的にロドリゲスを時の神殿がある方へと押すように蹴り飛ばした。 そうしてからその反動で上空へと振り返ると─── 中井出「───!う、あっ……!」 バケモノどころじゃない。 恐らく今会っちゃいけないとんでもないヤツに遭遇した。 でも叫ぶより先に調べるを発動させてしまった俺は、 やはりその事実を真実として受け入れる他なかった。  ───デスゲイズ 今の自分では相手の退屈凌ぎにもならない───!! その結果が全てだ。 凶々しい顔が俺に向けられた時点で、恐らく俺の一手先の末路は決まっていた。 デスゲイズ『クォオオゥアァアアゥウウッ!!!!』 ブヂィッ!! 中井出「ぎっ……あぁあああああああっ!!!!」 耳を劈くどころか、鼓膜が一瞬にして崩壊を選ぶほどの巨大な咆哮。 竜のそれとは明らかに違うそれは、まるで何億もの死した魂たちが連なり、 一斉に哭いたかのような凶々しさと音量を放った。 しかしただ哭いただけではなかった。 あまりの出来事にフロートを使うという選択肢すら浮かばなかった俺の視界の先─── 今だ太陽が眩しい蒼空の果てから、巨大な隕石が降ってきたのだ……!! 中井出(メテオ───!?防御を───) ……いや。 防御なんてものが通用する魔力量じゃないっていうのはとっくに気づいてた。 油断がどうとか……覚悟がどうとかで勝てるほど甘い相手なんかじゃない。 明らかな各の違いがそこにあって、俺は次々と降り注ぐ隕石によって海に叩きつけられ、 それでもなお放たれ続けるメテオの前に───  ズガガォン!ドガンドガンドガンドガァアンッ!! 中井出「───、……」 なにも出来ないままに、意識を失ったのだった。 Next Menu back