───冒険の書149/辺境英雄エロマニアさん(再)───
【ケース411:中井出博光/ヒロミチュード・ラプサンスーチョン】 もぞ……もぞぞ…… 中井出「ん……む…………む?」 ふと目が覚めた。 自然に起きたってことは結構寝てたんだろうか……と思いつつ、 少し痛む体を起こそうとして───ソレに気づいた。 中井出「……こりゃあ」 ナギーである。 ナギーが、壁に寄りかかって寝ていた俺の足の間に座り、 この博光の胸板に頭を預けて穏やかな寝息を立てていた。 長老猫『目、覚めたニャ?』 中井出「おお猫、おはよう」 長老猫『今は夜だけどニャ。まあいいニャ、武器、出来てるニャ』 中井出「おおっ!それはありがたい!」 長老猫『静かにするニャ!起きるニャ!』 中井出「ぐおっ……」 コシャンッ♪という音とともに武器を返してもらいつつ、俺は押し黙った。 確かに張り切って楽しんじゃあいるが、ナギーはまだ子供だ。 こうしてぐっすり眠る機会があるなら、寝かせてやらないと可哀相だ。 中井出「………」 とか思いつつ、やっぱり武器が気になる男の浪漫。 俺は左手でナギーの頭を撫でつつ右手で武器を隣に置くと、その詳細を調べた。  ◆稀紅蒼剣ジークフリード+1000 ───きこうそうけんじーくふりーど  より深く、より美しい紅と蒼が彩りを見せる長大剣。  大事に大事に鍛えられたそれはもはや一種の神具であり、それだけの力を秘めている。  斬れば炎滅、振るえば切断、近距離遠距離ともに優れた性能を持っている。  3ケタを越えた剣はもはや斬れぬものは無いという伝承とともに存在する剣。  かつての頃、古の時代ではそう伝えられていたが、  その技術を発揮出来る者は既に居ないとされていた。  その意味では既に武器としては唯一無二の剣であり、  剣に込められていた力を最大にまで引き出されている事実も手伝って、  冒険者ならば一度は手にしてみたいものにまで至った。  様々な鍛ち師の熱意と想い、そして武器に対する愛情が込められている。  *潜在能力:双剣化、技術スキル効果UP、固有秘奥義解放  ◆追加技術スキル  風    :★★★★★☆/風属性ダメージが上昇 風刃スキルと合わせると強力  風刃   :★★★★★☆/風属性などの攻撃の際 鎌鼬を発現 ダメージを追加  ブラスト :★★★★★☆/特種能力のチャージ速度が上昇  レジスト :★★★★★☆/魔法防御の膜が武器にのみ発現する  全てためる:★★★★★☆/ためるの最終強化版 どんなものでもためることが可能  ベルセルク:★★★★★☆/いわゆる暴走 攻撃力が格段にUPする  火闇霊章 :★★★★★☆/攻撃時に爆発して剣戟速度を加速させる  闘争本能 :★★★★★☆/一切術やアイテムが使えず 退くことも出来ない  *補足───ブラストは特種能力のチャージ速度が上昇。        たとえば“ためる”などの能力や、詠唱中に魔力を蓄積させる速度など。        さらには霊章に込める属性蓄積速度も上昇。       *全てためるは“ためる”系統の最終強化版。        ためるシリーズの全てが込められており、        エキストラスキルである常にためるなども封入されている。        意識しなくても力が蓄積され、その速度も速い。        さらにどんな攻撃だろうが溜め攻撃が可能になり、        溜めればためるほど威力が増す。それにより変化する技も。       *ベルセルク、火闇霊章、闘争本能は狂いし者のスキル。        狂戦士状態のみ発動する。属性の解放とともに少しずつ侵食。        全属性を解放した際、完全に乗っ取られるだろうが、        一度思い切り暴れれば免疫が出来るので安心を。  ◆追加潜在スキル  鬼人化+2分:鬼人化時間が2分追加される。現在の継続時間は合計で3分。  ◆固有奥義  灼紅蒼藍剣───シャッコウソウランケン。          全ての想いを力に変える紅蓮蒼碧の最終奥義。          人や動物、亜人や精霊、あらゆる生き物の想いが剣に集う時、          大いなる力を放つと云われている。          大事に扱われてきた武具のみが発現させるといわれる真固有奥義の中、          最弱にして最強の力を持つとされている不思議な奥義。          発動させた時、紅と蒼が眩い力と化すらしいのだが、          それを証明出来る者は現代には存在していない。 ───……。 中井出「……ウウッ!《ゴ、ゴクッ!!》」 とうとう来た……+1000! 予想より遙かに速かったが、まさかこんなところで……! 中井出「ていうか猫よ……俺、そんなにまで金を持ってた覚えが無いんだが……」 長老猫『事後承諾というカタチになるニャ。ちょっと頼まれてほしいことがあって、     お題はそれをこなした成果で払ってほしいニャ』 中井出「な、なにぃ!?それじゃあ断れんではないか!卑怯だぞ猫てめぇ!!」 長老猫『まあまあいいから聞くニャ。実はボク、どうしても欲しい素材があるニャ。     それを旦那さんにとってきてもらいたいニャ』 中井出「素材って……ていうか猫よ、長老なお前までもが俺を旦那さんと……」 長老猫『ボクらにとってお客さんは神様ニャ。     そしてよく来てくれる人は旦那さんと呼ぶことにしているニャ』 中井出「え……女も?」 長老猫『さすがにそれはないニャ』 なんだか残念だった。 長老猫『それでその素材だけどニャ、カイザードラゴンの角なんだニャ』 中井出「ボクハコノアオイチキュウガダイスキデシタ……」 長老猫『ギニャッ!?なに首吊ろうとしてるニャ!?早まっちゃダメニャ!やめるニャ!』 中井出「無茶苦茶言うなてめぇええーーーーっ!!!     そんな!お前!ドラゴン倒して素材手に入れて来いってか!!     今までのどんなクエストよりも難しいぞコノヤローーーッ!!」 長老猫『少なかった技術スキルの星も全部成長させてしかも+1000ニャ!     当然の報酬だと思うニャ!それに別に急いだりはしてないニャ!     出来そうだったら取ってきてくれって言ってるニャ!     ただし他の誰かに狩られて手に入れられなかったなんて言ったらヒドイニャ』 中井出「それって物凄く理不尽なんじゃなかろうか」 長老猫『いいから取ってくるニャ!期限は無限にしてあげるから取ってくるニャ!』 中井出「その間、ここでの鍛冶は───」 長老猫『お金さえ持ってくればやってあげるニャ。     1000以上の鍛えとなるとボクくらいしか出来ないから、     ボクを頼るといいニャ。ただし合成とかなら他の猫でも出来るニャ。     ただしそこまでいくと、人間の技術じゃちょっと手に負えないニャ。     もうその武器、猫色に染まりきってるニャ。     人間が見たら驚きはするけど、鍛えることも合成することも出来ないニャ』 中井出「うおお……大丈夫か人間の未来……」 猫に負けてる……猫に負けてるぞ……。 長老猫『それじゃあくれぐれも頼むニャ。それと今日はもう外には出れないニャ。     朝を待ってから出ていくといいニャ』 中井出「外に出れない?ってそっか、     確か満潮とかの場合は入り口閉めるから出られないんだっけか」 長老猫『そうニャ。そこで寝るもよし、見学するもよしニャ。     ボクは久しぶりに腕を振るえたから疲れたニャ。自分の部屋に戻って眠るニャ』 中井出「え?ここって貴様の部屋じゃなかったのか?」 長老猫『猫にだって寝室くらいあるニャ』 中井出「あ……そういうこと」 納得いった。 そんなわけで歩いてゆく猫を見送りつつ、 結構騒いだいもかかわらず眠っているナギーを見下ろす。 なんだかんだで随分と懐いてくれたもんだ。 最初の頃なんかいがみ合うくらいの仲だったっていうのに。 中井出「…………寝るか」 起こすのも可哀相だ。 急ぐ旅かもしれないが、マイペースで進めればいいということで。 ───……。 ……。 さて───そんなわけで朝である。 中井出「………」 ナギー『………』 起きた先にすぐナギー。 なんだか俺の顔をじぃ〜〜〜っと見てきている。 中井出「……ナギー?」 ナギー『のぅヒロミツ?“お得でっせ”とはなんじゃ?』 中井出「……なにそれ」 で、起きた途端によく解らんことを訊かれた。 ハテ、何がお得だと? ナギー『ヒロミツが寝言で言ってたのじゃ。手を交互に前に突き出しながらお得でっせと』 中井出「………」 ヘンテコ具合全開で納得完了。 つまりアレだ、説明のしようがない。 だが出来るだけ解りづらく話して聞かせることにした。 ───……。 ナギー『むむ?つまり寝ている者の目に“ぺんらいと”というものを当てると、     嫌がりながらお得でっせと言って手を突き出してくるのじゃな?』 中井出「うむ」 ナギー『……よく解らんのじゃ』 中井出「俺もだ」 話してみたがやっぱり解らんかった。 中井出「さてと、それじゃあ出発するか」 ナギー『次は何処に行くのじゃ?』 中井出「フフフ、ちょっと無茶をしてみようと思っている」 ナギー『無茶?なんなのじゃ?』 中井出「カイザードラゴンに喧嘩売ってみようかと」 ナギー『お、おお!ついにドラゴンと戦うのじゃな!?     ……しかし何故カイザードラゴンなのじゃ?     弱い竜から行ったほうがいいと思うのじゃ』 中井出「強いヤツと先に戦った方が後が楽じゃないか。     なにより俺は最初に戦ったヤツが一番弱いヤツっていうパターンが大嫌いだ」 ナギー『そういえばそんなことを言っておったの』 中井出「それにカイザードラゴンは然の守護竜だ。     もし倒せたら、ナギーの力が解放される」 ナギー『ヒ、ヒロミツ……そこまで考えてくれっておったのじゃな……?』 中井出「うむ!それに依頼の件もあるのでな!     今戦って都合がいいのはカイザードラゴンを置いて他に無し!」 いったいどんなヤツなのやら。 やっぱり強いんだろうか、カイザーっていうくらいだから。 皇帝って意味だったっけか。 皇帝をドイツ語でカイザーって言うと思ったが……うむむ皇帝か。 竜の皇帝と原中の提督……俺の方、威厳が無いにも程がある。 中井出「うむよし、相手が皇帝ならばこちらも準備は万端にせねば」 まずはストックだな。 何を入れるか…………やっぱレイジングロア? 長期戦で行く気ならマグニファイなんだが、 一撃必殺の心意気で行くならストック全部にレイジングロアだよな。 中井出「……?まてよ?」 ナギー『どうしたのじゃ?』 中井出「うむ、実はな……ちと試してみたいことが出来たのだナギーよ。     そんなわけでここから出て、外に出たら試そう」 ナギー『解ったのじゃ。ロドリゲスが先の修行場で待っている筈なのじゃ』 中井出「よぅし!では行くぞナギー!果てない冒険の旅へ!」 ナギー『イェッサーなのじゃー!!』 こうして僕らの旅は始まった! さあ出掛けよう!極上の過酷指令が待つ旅路に! 【ケース412:中井出博光(再)/遅く起きた朝に】 そんなこんなで再開した僕とナギーの旅。 まず最初に立ちはだかった広大な海を前に俺は海を氷属性のキャリバーで凍らせ、 そこを渡って陸を目指した。 そうして陸に着いてから早速実行するのは───“全てためる”である。 さっきナギーに言った試してみたいこととはこれのことだ。 中井出「よっしゃあ!よぅ見とくんやでナギー!これが浪速の商人の生き様やぁ!!」 ナギー『?解ったのじゃー!』 思いっきり疑問符を飛ばしつつ、 しかしノリには付いてきてくれるナギーの気持ちがいっそありがたい。 中井出「一点集中!極光吼竜閃(レイジングロア)ァッ”!!!」 で、早速俺は双剣を取り出し長剣に変えると両手で持って空に向けて突き出し、 言葉とともにレイジングロアを発動! しかし放つことはせず、全てためるの力でムイムイと溜めてゆく! どれくらい溜めていられるんだろうか……などと思いつつ、 ごしゃーーと減ってゆくHPとTPを見やる。 するとそれらが1になった途端!  ギピンッ!《技の昇華!レイジングロアがジェノサイドブレイバーに───》 ギバァアガガガチュゥウウウウンッ!!! 中井出「うおぁあああーーーーーっ!!?」 ナギー『ふきゃあーーーーーっ!!!』 ルルカ『ゴェエエーーーーーッ!!!』 ジークフリードから、とんでもなく圧縮されたバカデカいレーザーが放たれた!! その衝撃に俺の足は地面に減り込み、 ナギーやロドリゲスも風圧で吹き飛ばされて転がっていた。 中井出「オッ……お、おぉおお………………!!」 足がとんでもなく痛い。 自分で放った力に耐え切れずに足が埋まるなんて、どういう威力だよ……。 ナビからの説明も中途半端に掻き消されちゃったし……。 いやしかし、ジェノサイドブレイバーか…… 空界風に言うと勇者殺しか英雄殺しってところだな。 中井出「よし、じゃあ次だ。ナギー、ロドリゲス、大丈夫か?」 ナギー『びっ…………びっくりしたのじゃ………!!』 ルルカ『ゴエエエ……!』 ナギー『ヒロミツ、おぬしは無事だったのかの?』 中井出「うむ!ちと足が埋まっちゃいるが」 でも大丈夫! 武器の試し斬りや試し撃ちを前にあーだこーだと考える男は居ねぇ! 中井出「次はこの最終奥義とやらを。えー…………?     生きとし生けるものや、この世に残る残留思念、     その全ての思いを力に変換出来る奥義……ふむふむ。     しかしその思いが無ければ全奥義中最弱を誇る……ウ、ウホォゥッ!     こりゃまたなんとも素晴らしい……ウ、ウホォゥッ!!」 ナビの解説を見ながら心擽られてゆく。 何故って、最終奥義のくせに最弱かもしれないってところがなんともおかしい。 中井出「発動条件は───長剣状態で発動をイメージするだけ?……簡単だなぁ」 厳しい条件一切無しだ。 発動させればあとは頭の中にやり方ってものが浮かぶらしい。 羅生門の時と同じだな。 よし。 中井出「ではいざ!───真の力を具現しろ!     紅蓮蒼碧の炎風剣!!秘奥義!“灼紅蒼藍剣(しゃっこうそうらんけ)ぇえええん”!!」 頭に浮かぶ言葉を唱え、剣を高速で振るってゆく。 一閃、ニ閃、次いで連ねること三閃。 その度に紅蓮蒼碧が織り成す炎風が大気を揺らした。 が─── 中井出「………」 ナギー『………』 ルルカ『……ゴエ?』 てんでダメである。 これならまだ炎と風の属性を上乗せして振るってた方が強い。 確かにこりゃ最弱にも最強になれそうだ……使い勝手がイマイチ解らない。 思いの力って……どんなの?どうやって集められるの? ……解らないから後回し!! 中井出「よぅし次!…………次ってベルセルクとかか」 完全に意識がコントロール無くすから結構怖いんだが。 攻撃力が格段に増してるのは確かなんだけど、自分で動けない分正直つまらん。 きっとブリーチの一護くんもそういう心境なんじゃないかなぁ。 自分の体が自分で動かせないってどうよ、ねぇ? 中井出「なんとかして操れないもんかな」 ナギー『なにがじゃ?』 中井出「ぬう……すまんナギーよ、ちょっと離れててはくれまいか。     ヘタすると暴走しかねんのだ」 ナギー『そ、そうなのかの?聞いてはおったがまさかこんな日が高いうちから……』 中井出「そうなんだ。日が高い……ちょっと待ちなさいナギー!なに!?なにそれ!!     日が高いとなにがあるの!?なにか勘違いしてない!?ねぇ!!」 ナギー『しっ……してないのじゃー!殊戸瀬が言っていたのじゃ!     ヒロミツは時折自制が利かなくなって暴走することがあると!!     そしてその溢れる若さに任せて超獣エロマニアンデビルに』 中井出「ならないよ!!もういいよそれは!!     僕が変貌するとどうして絶対エロマニアンデビルなの!?ならないよそんなの!!     大体超獣化する若さってなに!?     そんなの若さじゃないよ!なにかの危険科学反応だよ!!」 ナギー『でもヒロミツが今暴走すると言ったのじゃー!!     きっと口ではどう言えても今にエロマニアンデビルに変貌するのじゃー!!』 中井出「しないよ!しないったら!!ちょ、聞きなさいナギー!!     なんで好き好んでそんな情けない名前の超獣にならないといけないの!!     冗談じゃないよそんなの!     ていうかなんの疑問も抱かず僕がエロマニアンデビルになるって信じないでよ!!     そもそもエロマニアンデビルってどんな生き物!?」 ナギー『わしも見るのは初めてなのじゃ!』 中井出「ならないったら!!どうやっても見せようがないよ!!     そんな“なって当然”みたいに言われたって変貌なんかしないよ!!     いいよもう!今暴走するって言った理由見せるから!     ちょっとそこで見て───え?そんなこと言って真っ先に襲う気なんだ……?     襲わないよ!!どうしてそうヒネクレたこと言うの!     そりゃ襲うかもしれないけどそれは意味が───ウソじゃないよ!!     だから真っ先にウソって疑うのはやめてって言ってるでしょ!?     誰も油断させたところを襲うなんて言ってないでしょ!!     いいから聞───違うったら!僕は変態じゃないよ!!     仮に変態だとしても変態という名の紳士だよ!!     だからってエロマニアでもないったら!!ちょ、逃げるんじゃありません!!     説明してあげるから逃げ───な、なんで腕掴んだだけで悲鳴上げるの!?     べつに僕やましいことなんて考えてないよ!?いやちょっ───待ってよ!     今回ばっかりは僕なんにも悪いことしてないよ!?     そもそも今までだって全部誤解だよ!やめてよ!魔力溜めないでよ!     そんななんでもかんでも僕が悪いみたいにヴァーーーーーーーッ!!!」 ……その日。 足が地面に埋まったままナギーの腕を掴んだ僕は、 ナギーから逃げることも出来ずに星になったのだった。
【Side───殊戸瀬さん】 ギギィイイイイイイピピピピピピピピピピピピピンッ♪ 殊戸瀬「………」 夏子 「……?なに?今の音」 殊戸瀬「……提督さんからの血文字メール」 夏子 「うわひゃあ生々しい!!何通来てるの!?」 殊戸瀬「解らないけど、物凄い怨念と憎悪が全部のメールに綴られてる……」 夏子 「……またなにかやったの?」 殊戸瀬「ナギ娘にちょっとしたことを教えただけ……」 夏子 「ちょっとしたことって?」 殊戸瀬「提督さんは時々自制が聞かなくなって、     溢れる若さに任せて暴走することがあるとか、いろいろ」 夏子 「うわぁ……」 【SIde───End】
ややあって。 なんとかベルセルクを見せることで誤解を解いた俺は、 何度目かの安堵の溜め息を吐きつつ、ナギーと食事を摂っていた。 中井出「だからな?ナギー新兵よ……人を信じることはいいことだが、     少しも疑わないのは流石にキッツイと思うんだ……」 ナギー『う、うむ……そうじゃの、反省しておるのじゃ……』 中井出「さすがに誤解の度に生死の境を彷徨うのは勘弁だよもう……。     ただでさえ今のナギーは先代の宝玉でパワーアップしてんだから」 ナギー『うう……わ、解ったのじゃ!わしは少し人を疑うことを覚えるのじゃ!』 中井出「うむ!その意気だナギー!」 ナギー『まず手始めにヒロミツがエロマニアンデビルではないということを疑うのじゃ!』 中井出「そこは信じるところだよ!!     なんとしても信じるとこでしょ!?だめだよいきなりそんなの!     それ信じさせるために僕がどれだけの血を流したと思ってるの!?」 ナギー『うむ!さすがに冗談なのじゃ!』 勘弁してください。 しかしナギーがこんな性格になった主な原因は我ら原中なわけで。 ええい構わんその意気や良し!! 中井出「よ、よし。それではこれより我らは気を取り直したのちに     カイザードラゴンの待つトカホウテ山に───     行く前に、エィネをなんとかしないとな」 ナギー『そうじゃのう、あやつにもこの……なびねっくれす、じゃったか?     これを渡しておけばよかったものを』 中井出「猛省中である!というわけでひとまず猫の里付近に飛ぼうと思うのだが」 ナギー『解ったのじゃー!』 ルルカ『ゴェエエウウ!!』 さあ行こう! ……正直ドラゴンが何処に居るのかが解っている今、 彼女がどういった役割になってくれるのかは───…………謎じゃないなぁ。 ドラゴンの居場所は解ったものの、戒めの宝玉が何処にあるかまでは解らないし。 よし、そうと決まればGOだ! ───……。 ……。 ドドドドドドドドドドド……!! 忍者、人にして人に非ず。 忍者、常識を遥かに超え、天空を駆け、大海を渉り、日に百里の道を走るという。 ちなみに今現在走ってはいるが、俺は忍者ではない。 ザザァアッ!! 中井出「よっしゃ到着!」 ナギー『着いたのじゃー!』 ルルカ『ゴエー!』 空飛ぶのがなんとなく怖くなった俺は、ナギーを乗せたルルカとともに走ってきた。 そうして辿り着いたのが猫の里前の高い高い山なわけだが。 エィネは〜……居ないなぁ。 中井出「やっぱり猫の里か妖精の里に居るんだろうか」 ナギー『そればっかりは断言できないのじゃ』 ルルカ『ゴエ』 中井出「そだな。よし、それじゃあ片っ端から探してゆくぜ〜〜〜っ!!」 ナギー『わ、解ったのじゃ〜〜〜っ!!』 ルルカ『ゴ、ゴエエェ〜〜〜ゥウ!!』 間延びした言葉を叫ぶとともに、俺達は山を登り始める。 山っていっても切り立ちすぎて山というよりゃあ絶壁に近いんだが。 いっそ山の一部分でも破壊してくれようかとか思ったものの、さすがに猫に迷惑がかかる。 というわけで俺は根性大登山を、 ナギーはルルカに乗って空からという感じで山の攻略を始めるのだった。 ───……。 で─── 猫      『つい昨日、待ってても来ないから妖精の里に帰ると言ってたニャ』 中井出&ナギー『ゲェエエーーーーーーッ!!!』 山を登った苦労はまるで報われなかった。 …………。 お次は妖精の里へ向かうためにサンドランドノットマットのオアシスへ向かった。 あまりあそこらへんには行きたくないんだが、 さすがにほっぽりっぱなしで無視するわけにもいかんのだ。 中井出「ハイ到着!」 ナギー『ついたのじゃー!』 ルルカ『ゴエエ……』 あっちからこっちへ全力疾走してるためか、ルルカがかなり疲れてる。 そろそろ休ませないとダメだな……。 中井出「えーと……おー!ラウルー!」 ラウル『あん?おおエロマニアじゃねぇかー!!』 中井出「カァアアーーーーッ!!」 ラウル『《ボゴシャア!!》つぶつぶーーーーっ!!!』 出会い頭に大変失礼なことを言うハーネマンについつい拳を進呈してしまった。 しかしハーネマンはすぐさま起き上がるとこの博光の頬にバゴシャアと拳を決めて、 ニヤリと笑うといいパンチだったぜと言った。 案外青春男なのかもしれんと思った瞬間である。 ラウル『まだ生きてたか。元気そうでなによりだ我が同志。今日はどうした?』 中井出「ここにエィネという妖精が来なかっただろうか」 ラウル『妖精───ああ、前に一緒に来たアイツか。     アイツなら妙な魔法使いと一緒にどっかに行っちまったが』 中井出「妙な魔法使い?それって───」 ナギー『ふむ、与一かのぅ』 中井出「どんな服着てた?」 ラウル『真っ白い魔術胴衣だったな。左手に妙な……そうそう、     お前のその腕にある紋章みたいなのをつけてたぞ』 ナギー『与一じゃの』 中井出「そうみたいだな」 試しにtellを送ってみる。 と、確かに一緒に居るらしい穂岸とエィネ。 そんなエィネに、なんだかtell越しに散々と文句を言われたが…… すぐにでも迎えにいけなかった俺としては聞いているしかない。 今は火の加護を受け取って、次の場所を目指しているところらしい。 氷の加護はもう貰ったんだそうだ。 ……いつ寝てるんだ?あいつ。 中井出「じゃあすまん、もうしばらく預かっておいてくれ。     我らはこれよりカイザードラゴンに戦いを挑む者。     とばっちりで死んでしまってはレアズ将軍に申し訳が立たん」 声  『誰だよ!』 中井出「え?誰って……妖精王らしいぜ〜〜〜っ!」 声  『らしいぜって……会ったんじゃないのか?』 中井出「会った。名前も聞いた。そんでもって極上過酷指令“守護竜殺し”を依頼された」 声  『そこまで解ってるなら“らしい”どころじゃないだろ。     大丈夫なのか?この妖精連れてなくて』 中井出「キーとなる人物が居なくても攻略してみせる心意気!これぞ我らの進む道!!」 声  『……無茶だけはしないように』 中井出「オ?ウォッホッホッホ!相変わらず甘チャンよのう!     いずれこの博光と貴様は敵となるんだぜ〜〜っ!?そんな相手の心配をするなど!     ウォーーーッホッホッホッホ!!救えんガキだァーーーッ!     ていうかなにかあった?声がちょいと沈んでるぞ?」 声  『妙なところで鋭いんだか鋭くないんだか……。     まあいいや、告白して断った。それだけだ』 中井出「ほほう告白とな?それはあのちびっ子どもか?それともあの馬鹿か?」 声  『馬鹿のほうだ』 馬鹿で名前が通るのも不憫なもんだなぁ……。 でも馬鹿だし。 中井出「そういやいろんなヤツが女を作ってる中で、お前だけフリーだよな。     ああ、あの俊也ってヤツも……     あ、いや、なんだかんだで仲良さそうなやつが居たか。     そこで貴様に質問なんだが……なんだって一人身?結構好かれてるんだろ?」 声  『……、この状況が心地いいから、じゃ……だめか?』 中井出「心地いいとは?この状況とは?」 声  『友達関係ってことだよ。     誰かと一緒になったら誰かが居なくなる……そんなこと、考えたことないか?』 中井出「おおスケコマシか貴様。このクズが」 声  『そういうんじゃない!!こんな時にまで妙にふざけるなよ頼むから……』 中井出「いや……やはりそうそう暗い話をされるのもな。     だが聞こう。貴様の悩みを、この博光が」 ナギー『わしも聞くのじゃー!』 ルルカ『ゴエー!』 ラウル『お?なんだなんだ?俺にも聞かせろ』 中井出「やったな!大人気だ!」 声  『お前なぁあああ……!!』 ガタガタと声が震えているのを感じ取れた。 おお怒っとる、怒っとるよー。 声  『はぁ……解ったよ、懺悔みたいなものだから好きなだけ聞いていけ……』 中井出「よし解ったドンと来い!」 ナギー『くるのじゃー!』 声  『…………じゃ、言うけど。中井出、お前なら恋と友情、どっち取る?』 中井出「友情」 声  『……少しも迷わないんだな』 中井出「そりゃ確かに麻衣香っていう妻も居るけどな。どっちかって言われりゃ友情だ。     確かに麻衣香のことは好きだが、友情の先で結婚したって感もあるくらいだし。     お前はどうなんだ?そんなこと聞いてくるってことは、なにかあったんだろ?」 声  『………』 カリ、と頭を掻いたような音が聞こえた。 そののちに大きく息を吸うような音。そして─── 声  『気楽な友達で居たいからな。思ってもないことを言って追い返した。     いや、もちろんそれもあるんだけどな。     正直、いつまでも友達として取っ組み合いみたいなのが出来るって思ってたのに、     あいつが俺のこと大嫌いだとか好きだとか言ってきて混乱してたのかもしれない。     気づけばぜ〜〜んぶ突っぱねてた』 中井出「ほほう……確かに女との友情ってのは難しいかもな。     どっちかが好きになったりしたらもう友情じゃない」 声  『俺はさ、あいつと恋仲なんかになるよりも、     馬鹿な遣り取りでもギャーギャー言える間柄の方が心地いいって思ってる。     でも……断ったら泣いちゃったんだ、あいつ。     もうダメかなって思った。もうふざけあったりは出来ないんだろうなって』 中井出「ぬう……貴様はどうなんだ?えーと……観咲雪音っていったか。     あいつのこと、どう思ってる?」 声  『あくまであいつは友達だ。俺は友達としてのあいつなら蒼木くらいに大好きだ。     でも……な。やっぱりだめだ。女として見ることは絶対に無理だ』 中井出「そか。上手く行かないもんだな……。でもさ、そりゃ謝ったほうがいいぞ?     いくら断るためだとはいえ、思ってもないことを言って傷つけるのはこの博光、     おふざけ以外の時では認められん」 声  『ああ、解ってる。加護集めが終わったら、謝りにいくつもりだ』 中井出「ならよし!……ところで貴様、好きなヤツとかは?」 声  『俺が子供の頃に亡くなった。一度は別のヤツを好きになったんだけどな。     そいつと好き合ったのは別の時間軸であって、     この時間軸のそいつはそれを全然覚えてない。     だからな、未練だけど諦めることにした。     そいつは多分俺に好意を寄せてくれてて、だけど俺は応えることが出来ない。     俺が好きになったのはその時間軸のそいつであって、     この時間軸に居るそいつじゃないんだから』 中井出「……そか」 声  『恋愛感情って難しいよな。     友達でいたいって思ってても、そう上手くいってくれない。     だから俺は一旦距離を置くことにしたんだ。     俺の気持ちの整理は最初からついてるけど、観咲は違うだろうから。     頃合を見て謝りに行く。友達の関係に戻るには時間が必要だろうし、     もしかしたらもうああいう遣り取りはできないかもしれない。     でも俺は俺の意思で断ったし、それを後悔してたらキリがないって解ってる。     ……やっぱりさ、何かを守りたいと思っても、     自分を悪者にしてしか上手く助けられないんだよな、男ってやつは』 中井出「……お、俺達は忘れない……。穂岸……貴様のような男が居たことを……」 声  『これから死ぬみたいに言うな!!ていうかどうしてお前らはそうなんだ!     たった一言でシリアス空間が吹っ飛んだぞ!?』 中井出「まーまー、気持ちの整理がついてるならそう暗くなるなって。     お前さんがやさしいことはよ〜〜く解った。     それを相談する相手は確実に間違えてると思うけど」 声  『今実感してるところだよ……』 物凄い本音だった。 ヤツが本気だっていう事実がtell越しにひしひしと届いてきやがるぜ……!! 中井出「いいんじゃないか?     俺は貴様がよかれと思って実行したことならば叱咤激励一切せん。     本気の物事を無責任に応援するのって後味悪いって思い知ってるからな。     そんなわけで俺が言えるのは一つ」 声  『……なんだ?』 中井出「加護、早く集めて謝ってやるのだ。恐らく観咲とやらも、     こんなカタチで関係が壊れることなど望んじゃいなかった筈だ。     もちろん筈だ。何故なら俺はヤツではないから心なぞ解らん」 声  『……絶対にからかわれると思ったが』 中井出「お?所望か?だったらとっておきの逆鱗スペルをそっと囁いて」 声  『すなっ!!いい!今の言葉だけで十分だ!!』 中井出「そ、そうか?それは残念だ」 tell越しに、だはぁ〜〜……と漏れる溜め息が生々しかった。 中井出「あ、そだ。最後に一つ」 声  『ん……なんだ?』 中井出「悪人でもないやつが悪人ヅラしたって周りが違和感覚えるだけだからさ。     あんまり無理して悪役買ってでないこと。多分周りのやつら全員気づいてるぞ?     それが貴様の無理だってことも、     貴様が愛より友情を選びたかっただけってことも」 声  『…………ああ。解ってる』 中井出「そいじゃーなー。俺はこれからエンペラー吉田と戦わなくてはならんので」 声  『吉田!?お、おいちょっと待て!それってどういう───』 ブツッ……。 中井出「ふう、これで今頃ヤツは意味不明な心をボディの中で燻らせるに違いない」 ナギー『もうよいのか?』 中井出「よいぜ〜〜〜っ!エィネは穂岸が連れてってるらしいし、     加護探索ってだけならこっちよりよっぽど危険がないだろ。     戒めの宝玉は、ドラゴンを倒してからじっくり探せばいいわけだし」 ナギー『そうじゃの』 ラウル『お前らドラゴンと戦う気か?正気じゃねぇぞ』 中井出「頼まれなきゃするもんかぁーーーーっ!!     こちとらもう引き下がれねぇところまで来とんのじゃーーーーっ!!」 ラウル『うおっ……そ、そうなのか?』 中井出「かかか考えてもみよ!この博光がドラゴン退治だよ!?     なんて無茶な極上過酷指令!そりゃ俺に死ねってことなの!?そうなの!?     フリーズドラゴンにさえ凍らされたのちにゴバシャアとひと砕きだよ!?     なのに竜の皇帝と戦おうとするなんて無謀極まり無し!!     でも僕はゆくのです。何故ならそれがゲームというものであり、     我ら原中はゲームやマンガにはたくさんのことを学ばせてもらってきた。     その恩返しをするならば、この世界を味わいつくすほかあるまい!」 ラウル『ゲーム?なんのことだよ』 ナギー『ヒロミツにしてみればドラゴンと戦うことなど     お遊びゲーム感覚程度じゃと言っているのじゃー!!』 ラウル『オホッ、大きく出たじゃねぇか!』 中井出「エ?いや違……」 ラウル『さすが我が同志エロマニアだぜ!伊達に辺境の英雄と謳われてねぇな!!』 中井出「謳われたくないよそんなの!!ちょ、やめて!エロマニアじゃないよ!     こっちは怖くていっぱいいっぱいなんだよ!?───謙遜じゃないよ!     今まで人間として生きてきた男が     そんな急にドラゴンと戦う勇気が持てるわけないでしょ!?     ミストドラゴンの時は仲間が居たからだよ!……ウソじゃないよ!違うよもう!!     普通のモンスターとならそりゃ戦えるよ!でもドラゴンは各が違うでしょ!?     いやちょ、ラウル!?なに手下のモンスターどもを促してるの!?     やめてよ!エロマニアコールなんて猛者どものだけで十分……やめなさいナギー!     キミまでなにやってるの!エロマニアじゃないったら!!     ……え?だったらエロマニアンデビル?違うって言ってるでしょ!?     なんでそこでそのこと持ち出すの!冗談だって言ってたのに!     そこの手目小野若蔵も!声が小さいぞとか言って手下を囃し立てないでよ!     違う!僕はエロマニアでも変態でもないよ!───だからデビルでもないってば!     いいからやめ───やめてぇええーーーーーーっ!!!」 今回は吹き飛ぶことなどなかった。 けど、心優しい同志やその手下からのエロマニアコールを聞いているうちに、 僕のつぶらな瞳からは涙がとめどなく溢れた。 しかもどう勘違いしやがったのかそれを感激の涙と受け取ったモンスターどもは、 手拍子までしてエロマニアコールを始める始末。 ……俺は泣いた。 本来栄誉ある英雄の称号とともに叫ばれる絶望の称号を耳に、大地に膝をついて泣いた。 Next Menu back