───冒険の書153/VS皇帝竜(中編)───
【ケース418:中井出博光(再)/ヒロミチュード・ザ・グレイトバトル(再)】 ナギー『ヒ、ヒロミツ、もうやめるのじゃ!あれには勝てぬ!』 中井出「大丈夫!何を隠そう、俺はヤケクソの達人だぁああっ!!」 再び死亡して駆け上がる中、とうとう声をかけてきたナギーの頭を撫でて全力ダッシュ! 登って登って登り続け、またまた頂上に辿り着くと再びパンドラ! なんかもう俺に対して残虐な能力しかないような気もしてきたけど、これに賭ける! 何故なら俺にはもう、こいつにまともなダメージを与える手段が属性変換しかない! けど、それも大したダメージは与えられないのだ! だったらこれに賭けるしかない! 自爆のナンバーが23……ってことは少なくとも23までは数があるってこと! その中にどれか一つでも俺にやさしい能力があれば───!! 中井出「さあ叫ぼう!パルプンテ!!」 カイザードラゴンは、また貴様かって顔でいい加減うんざりしてるようだ。 だがそれがどうしたぁ! 今度こそ度肝抜かれろこの野郎! ジャンッ!《博打No12!催眠フラッシュ!!》 中井出「おおっ!?」 突き上げていた手から綺麗な光が放たれ、それが空中でバァアアッ!と弾けるように瞬く! すると───なんとカイザードラゴンが眠気に襲われたかのようにフラリと! OKブラザー今しかねぇ!ようやく!ようやく俺にやさしい能力……が…………あ、あら? 中井出「ねっ……眠っ……ふぐおっ!?」 ちょっと待て!俺まで眠くなってきたぞこれ!! なっ……なんの意味があるんだこりゃぁああーーーーーーっ!!! またも!またも俺にやさしくない! 中井出「うおお根性じゃあーーーーっ!!!男じゃわしゃああーーーーーっ!!!」 ゾブシャア!! 中井出「キヒィイイーーーーーーッ」!!!! もうこうなりゃ形振り構わず! 眠気でボケ始めてた頭で足に剣を刺し、意識をハッキリさせる! ていうか自分に一撃当てれば目は覚めたようで、今は酷くスッキリしてる。 ……デコピン程度にしとけばよかった……足に剣まで刺して……アホか俺……。 自分のとった行動にしこたまヘコんだ。 中井出「だがまだだ!今の貴様ならフラフラしているから角が狙いやすい!     つーかこれ眠くなるだけ!?眠らないのかよ!     ギィイイイなにもかも中途半端だなぁもう!!」 なんだかこの能力に起死回生の大技があるのか、本気の本気で疑わしくなってきた。 いや、勝手に信じてるのは俺だけなんだけどさ。 中井出「さあ高鳴れドラゴンキラー!ていうかドラゴンキラーの技術スキルがあるのに、     普通に攻撃したんじゃ傷つかない竜族って尋常じゃないよね、ほんと……」 でも駆ける! 鱗の色は今は真っ白……いや、光っているってことは光! ということは闇で攻撃すればOK! まずマグニファイで鬼人化を発動、ステータスを二倍にしたのにちSTRをマックス。 そして長剣にした剣に闇を滲ませ、さらにレイジングロアを溜めて……! やがてそれがジェノサイドブレイバーになる瞬間! 中井出「ブッ飛べカラミティイイーーーーーッ!!!」 今出せる全力を以って角へと攻撃!! ヂガァアガガガギファファフィィンッ!!! カイザードラゴン『グオォオアァアォオオンッ!!!』 中井出     「くぅううぉおおおおおおっ!!!」 斬れろ!斬れろ!斬れろ!斬れろ! このっ……斬ィイイれやがれぇええええええっ!!!! ヂヂヂィイイキキキヤォオオオオオゥウンッ!!!! 火花が散る。 目を焼くくらいの闇の光を発しながら、ヂリヂリと。 だがそれでも剣はあとほんのちょっとをほんの少しずつしか進まず、 こんなヤツにほんとにレベルを上げただけで勝てるのか!?と疑い始めた頃!  バッガァアアアアンッ!!! 中井出「!!」 火花が止んで、圧っしていた筈の剣が空を切る。 そして───俺の視界には……!! 中井出「オッ……うおぉおおおおおーーーーーーーっ!!!」 宙を舞う角が!! カイザードラゴン『クゥウォオオオァアアアッ!!!!』 中井出     「うぐっ───!?」 喜んでばかりもいられない。 眠りにつこうとしていたところを邪魔され、 あまつさえ竜族の誇りたる角まで折られたのだ。 カイザードラゴンの怒りは───先ほどのまでのソレとまるで比にもならなかった。 中井出「やっ……やべ……っ」 ヒククッと口の端が引き攣るのを感じた。 だから俺は慌てて角を手に取───ってデカッ!! 斬るのに夢中で気づかなかったけどデカッ!! こんなのバックパックに入るのか!? い、いや!大丈夫!!なにを隠そう俺は収納の達人だ!! 収納とかそんな次元を超えた大きさだけどなんとかなる!! 何故ならば! ここを登る時にこれと似たような大きさの大木をバックパックに収納したのだから! だから根性で詰め込んで───……、こ、このっ!入れっつの! …………ゲゲェ入らない!! と、この時思い返されるのがあの懐かしき思い出! 飛竜の巣に入り込み、卵をバックパックに入れようとしたあの瞬間! ───まさかこれも!? カイザードラゴン『グバァアアシャァアアアッ!!!』 中井出     「ほっ……ほ、ほほほっ……ほぎゃあああーーーーっ!!!」 ダイキョーフ!! 怒りに怒ったカイザードラゴンは物凄い咆哮で大気を震わせるや、 鱗の色を再び変化させてゆく! バリアチェンジ……じゃないよこれ!!明らかに怒りで鱗の色が変色してる!! ギピンッ!《潜在スキル“怒り”が発動!肉質が硬質化!一定時間物理攻撃無効化!》 中井出「えぇええーーーーーーっ!!?」 さらに恐怖!! こ、これは……っ!これは、もう……!! 中井出「うおぉおーーーっ!!とんずらぁあーーーーーっ!!!!」 逃げるしかない! 俺は大きくて仕方ない角をグイィと持ち上げると、一目散に来た道へと舞い戻った!! カイザードラゴン『グギャァアアォオオオンッ!!!』 俺は走った! 怒りの咆哮を背に浴びながら、走り続けた───!! ───……。 ……。 ズダダダダ───ダンッ!! ナギー『おおヒロミツ!無事じゃったのか!』 中井出「ににに逃げるぞナギー!!いいから!速く!!」 ナギー『む?な、なにを急いで速いのじゃーーーっ!!     こ、これヒロミツ!わしを置いていくでないーーーっ!!』 中井出「ばばば馬鹿!もう馬鹿ナギー!上!上!速く!」 ナギー『上?うえふぎゃわぁあああーーーーーーっ!!!!』 見上げるナギー!するとそこには山を削り、 飛んでくる大木や落石を無視しながら追ってくるカイザードラゴンが!! こんなところさっさと飛び降りればいいんだが、 飛んでくる大木や落石が邪魔で出来やしない! くっそこの角さえ収納できればぁああっ!! おのれここまで考えてのゲームバランスかゲームマスターめ!! どうやらこの博光、まんまと手の平で踊らされていたようだわ!! 中井出「ナギー!背中に掴まれ!急ぐぞぉおーーーーっ!!」 ナギー『わわわ解ったのじゃーーーっ!!』 ガシィとナギーが背に捕まる! それを感じ取ると再びAGIとSTRにステータスを振り分けなおして走る!! で、でもね!これね!凄い大変! だ、だってさ、ほら、さぁ!! 敵から逃げるのってほらっ……!体力、使うしさぁっ!! 追われる恐怖と敵の強さからくる恐怖といつ攻撃されるか解らない恐怖とか、 とにかくいろいろ混ざって呼吸も詰まる一方だ!! 中井出「ハガーーー!!ハガーーハハハ!!はがっ……はぁーー!はぁーーっ!!」 だが逃げねば死ぬ! 今回ばかりは無惨にネチネチと殺されるに違いない! だから走った! たとえ肺が張り裂けても構うかってくらいに走った!! 時には飛び降り時には転がり! だがナギーと角だけは絶対に置いていかない意気込みで!! 神父 「おお迷える子羊よ、どうしました?もしやお布施を」 中井出「やらないよ!!それはいいから逃げろぉおおーーーっ!!」 ダンッ!とショートカットするように落下してきた俺は、 そこに居た神父にそう言うとさらに駆けた! 少し広めの場所なら大木も落石もなく飛び降りてショートカットが可能だ───! あいつはドガンドガンと山を破壊しながら降りてきている─── だったら今のうちに距離を取ればなんとか逃げられる! カイザードラゴン『ギヴァアアシャァアアアッ!!!!』 中井出&ナギー 『キャッ……キャーーーーッ!!!』 でも怖いものは怖いのだ。 足が震えてしまうのは仕方ないこと。 だが今は走らなければならん!! 心の巴里に命の息吹を!シャンドラの火を灯せ!! 中井出「うおぉおおおおーーーーーーっ!!!!」 走る走る走る! 上を向いてる暇があったら下を見る! なんだか人生にあてがうと寂しい気もするが今は死活問題!! ナギー『神父を置いてきてしまったのじゃ!よいのか!?』 中井出「あいつがあんなので死ぬんだったら俺今まで苦労してないよ!!」 叫びながらショートカット出来るところはショートカットしていく! ああまったくもう!登る時はあんなに大変だったのに、降りるとなるとなんて速い!! カイザードラゴン『グゥウォオオオオオゥウウッ!!!ドンガガガガガガォオオオオンッ!!!! 中井出「ヒ、ヒィイーーーーッ!!!」 カイザードラゴンが山を崩す速度が上がった!! レーザー撃ってこないだけ嬉しいが、 どうせこれは逃げるプレイヤーを見てゲームマスターが楽しむためだろこの野郎! おかしいと思ったんだこの山! 大木が飛んでくるわ落石があるわ、妙に高いわドラゴンは強いわ!! 最初からこうやって逃げイベントを用意してたに違いねぇ!! くそぅ俺になんの恨みが!?もしかして俺で遊んでる!? おのれだったら俺も全身全霊を駆けて逃げてやろうじゃねぇか!! 遊びと楽しみにおいてならこの博光!負けるわけにはいかねぇ!! ───……。 ……。 ドガガガガガガガガガガ!!! カイザードラゴン『グォゥシャァアアアアッ!!!!』 中井出     「ぎゃあああああーーーーーっ!!!ぎゃあああーーーーーーっ!!!」 甘かった!速すぎる!! もうすぐ上まで迫ってきてるカイザードラゴンが俺へ向けて鋭い牙を落としてくる!! ナギー『速くするのじゃヒロミツーーーーッ!!』 中井出「むむむ無茶言うなぁーーーっ!!」 この重い角を持ち上げる分のSTRと走るためのAGI! この絶妙なバランスを保った状態でこれ以上速くなんて走れるもんか!! マグニファイはここに来るまでに使っちまったし、 だっていうのにここまで追いつかれてんだ! これ以上俺にどうしろっていうの!! 逃げる速度と追いつく速度があまりに絶妙すぎて、 なんだか俺専用に作られたイベントみたいですっげぇ嫌だこれ!! やっぱり俺って面白がられてる!? でも気を抜くと食われそうでもう全力!ほんと全力!! 息だってとっくに切れてるのに、絶叫あげてる体に鞭打って走ってる! ナギー『ふぎゃああーーーっ!!来るのじゃ来るのじゃ来るのじゃああーーーーっ!!!』 中井出「おわわわわわわわぁあああーーーーーーっ!!!」 来る!もうここに届く! 何か無いか何か!この状況を打開する何か! ────────────はうあ!! 中井出「そうだナギー!俺のバックパックからアレを出してくれ!」 ナギー『アレ!?アレとはなんじゃ!?もう少し詳しゅうに説明出来ぬのかっ!!』 中井出「アレだよアレ!少し細長くて先端が丸くて脇に二本の棒が出てる───」 ナギー『ムーー……!これヒロミツ!少しは整理をしておくのじゃ!!』 中井出「い、今はそんなこと言ってる場合じゃないでしょ!?いいから探して!」 ナギー『むむむ……あ、あったのじゃーーっ!!』 中井出「よし!今すぐそれをカイザードラゴンの目に向けて投げろ!早く!」 ナギー『わ、解ったのじゃ!!ちぇやぁあーーーーーっ!!!』 ヒュオッ─── 走りながらの横目に、とある物体が飛翔する。 それは今まさに俺達を噛み殺さんと迫ったカイザードラゴンの目に飛び─── ドォッガァアアアアアアアアンッ!!! カイザードラゴン『グォルギャァアアアアアッ!!!!』 ナギー     『ひうぅっ!?な、なんなのじゃーーーっ!!』 中井出     「よっしゃナイスコントロール!!」 見事に目にぶつかると、大爆発を起こした!! 目を焼かれたドラゴンは思い切り仰け反ると、 山を破壊するのも忘れてその場に倒れ伏した! ───よし!これで少しは時間が稼げる!!今のうちに逃げられるところまで逃げる!! ナギー『ヒロミツ!あれはなんなのじゃ!?』 中井出「アレだよお前……ジャスタウェイに決まってんだろ」 ナギー『ジャスタウェイ!?名前なぞどうでもよいのじゃ!!     ジャスタウェイとは何かと訊いておるのじゃ!!』 中井出「ジャスタウェイはジャスタウェイ以外のなにものでもない!     それ以上でもそれ以下でもない!解ったらただ逃げることだけを考えろ!!」 つーかありがとう殊戸瀬二等! 記念にあの時一個だけ盗……もらっといてよかった!! ていうかナギーさん?あなた僕らと一緒にあの時あの場所に居たでしょ? アイルー『ゴニャニャーーッ!!な、なにニャ!?』 ルルカ 『ゴエゴエーーーッ!!』 と、ナギーと叫び合いつつ一気に飛び降りた先にさっきの横穴と、 その前で騒ぐ猫とロドリゲスが! 中井出 「ヘイジョニー!いますぐこの山下りるぞ!」 アイルー『任せろニャ……《テコーン♪》』 ジョニーと呼んだ途端、ニヒルな笑みで親指立てた!! しかもチラリと覗かせた歯が輝いた!! やっぱりこいつがジョニーでいいみたいだ! アイルー『旦那さんどうしてボクの名前知ってるニャ!?』 中井出 「グレイトキャッツガーデンに行ったからだよ!!」 アイルー『それなにニャ!グレートキャッツガーデン!?聞いたこともないニャ!!』 中井出 「やっぱりあの名前適当なのかよ!!解ってたけどまた理解した気分だよ!!」 ババッとロドリゲスの背に乗るアイルーとナギー! そして俺とともに走り出すロドリゲスとで、やっぱり叫びながら下を目指す! 中井出 「アレだアレ!海のド真ん中にある猫の修行場!      長老猫が居るあそこだ!そこでお前の弟と師匠に会ってきたんだよ!      じゃなきゃこんな命懸けの角取りイベントやるもんかぁあーーーっ!!!」 アイルー『師匠と弟に会ってきたニャ!?ど、どうだったニャ!?元気だったニャ!?』 中井出 「少なくとも今の俺達よりはよっぽど平和で壮健だチクショーーーーォオオ!!」 ともかく走る!飛び降りる!そしてまた走る! いい加減喉が焼けるように痛いが走る! 足がガクガクいってるが走る!! くそういつもは疲れないのに逃げるって時だけどうしてこんなに!! ナギー『ヒロミツ!そろそろ巨人の里方面と     サンドランドノットマット方面との分かれ道なのじゃ!どっちに行くのじゃ!?』 中井出「えぇっ!?どっちって───」 逃げることしか考えてないよ俺! でも空飛んで逃げても追いつかれるし走っても追いつかれる! だが出来るだけ遠くに逃げるなら、砂漠よりも土や草原の方がまだいい!! 中井出「巨人の里方面だ!!いくぞぉロドリゲス!!」 ルルカ『ゴエッ!!』 今まで散々休んでいたお蔭だろう。 この俺に任せておけってくらいの敬礼をして、ロドリゲスは加速した! そして俺達はこのトカホウテ山の風を抜けると、 巨人の里方面への道を全速力で走るのだッッ!! 飛ばせ飛ばせぇえっ!!目一杯飛ばせェエエーーーーーーッ!!! 声  『グバァアシャァアアアアアッ!!!!ゴッファァアアーーーーーッ!!!!! 中井出&ナギー『キャーーーッ!!?』 あとは一直線に坂道を下るだけって時である! 山を覆っていた風が咆哮で掻き消され、 風の壁によって見えなくなっていたカイザードラゴンが今まさに姿を現す! ていうか見つかった! 今ギラリと目が合った!! 中井出「う、おっ……おわぁあああーーーーーっ!!!」 ルルカ『ゴエェエエアァアアーーーーーーーッ!!!!』 俺、絶叫。 ルルカも絶叫。 動物としての本能だろう、 あいつとはまともにやり合っちゃいけないと思ったらしいルルカは、 まるで潜在能力でも発揮したかのようにさらに速度を向上させる! 一方のカイザードラゴンは、 ヴァサァッ、ヴァサァッと巨大な飛翼をはためかせると宙に浮き、 やっぱり逃がしてはくれないのか俺達のあとを追ってきた! 中井出「ホギャワァアーーーーーーッ!!!     来た来た来た来た来た来たァアアーーーーーーーッ!!!」 ルルカ『ゴエェエエーーーーーーーーッ!!!』 もうパニック状態である。 だが走った!命を粗末には出来ないと、ひたすら走った! さっき散々粗末にしたけど走った!! 俺もう生きて帰れるなら何処で安息を約束されてもいいよ! 神よぉおーーーーっ!!俺をスラムに帰してくれぇええーーーーーーーっ!!!! ───……。 ……。 さぁそんなわけでやってまいりました巨人の里付近!! 空から舞い降りるレーザーやブレスを無様に躱し、 しかしなんとか生きている───こんにちわ、中井出博光です!! さて、何故俺が一直線に巨人の里に来たのか解りますか!? そして俺は誰に話し掛けてるんでしょう!もちろん俺の脳内博光3564号だ! で、俺がここまで来た理由だが! 中井出「ナギー!ロドリゲス!ジョニー!この角を持って巨人の里に逃げ込め!」 ナギー『なんじゃと!?ヒロミツ、おぬしはどうするのじゃ!!』 中井出「ここで時間稼ぎをする!その間に巨人の里に紛れ込んで、隙があったら逃げ出せ!     そんでもってそれを絶対に長老猫に届けるのだ!!」 ナギー『じゃ、じゃがのヒロミツ!』 中井出「ナギー新兵!これは命令である!!」 ナギー『!さ、サーイェッサー!!』 中井出「必ずその角を長老猫に届けるのだ!!     我ら原中は何より友情!なにより義を重んじる!!     まるっきり足りない金額で、     この武器をここまで仕立て上げてくれたあの長老猫の恩義に報いるため!     その角は何が何でも届けなければならんのだ!!大丈夫!貴様なら出来る!!」 ナギー『じゃ、じゃがヒロミツは───』 中井出「なんとかなるといいね!!」 ナギー『もっ……物凄く他人事なのじゃーーーーーっ!!!』 中井出「ええい!いいから受け取れ!さあ!」 ズッシィイッ!!《皇帝竜の鋭角を渡した!!》 ナギー『ふぐぅううっ!!お、重いのじゃぁあああああっ……!!!』 ルルカ『ゴゴェエエ……!!』 中井出「STRマックスで持ち上げてろ!重さまではフォロー出来ん!!」 そう言って、俺はその場に立ち止まる! 中井出「振り返るなよロドリゲス!必ずそれを送り届けろ!!」 ルルカ『───!ゴエェエーーーーッ!!』 ナギー『うっ……ぐっ……こ、これ!止めるのじゃロドリゲス!     ヒロミツ一人では勝てぬ!ヒロミツ!わしは承諾などしておらんのじゃ!!     ヒロミツ!ヒロミツーーーーーッ!!!』 ……叫ぶ声に、俺も振り返らなかった。 ありがとよぅ、ロドリゲス。 走れ、そのまま行ってくれ───。 カイザードラゴン『グゥウウルォオオオオオオッ!!!』 中井出     「フ、フフフ……!生憎だがここから先は行かせねぇぜ……!」 ていうかこのドラゴンさん、ハナっから俺しか見てねぇや。 せっかく感動の場面を展開したってのに、 元よりの狙いが俺だけだったって……悲しいなぁ。 たまにはビシッとカッコつけさせてくれ、頼むから。 ゴォッ───ドッゴォオオオンッ!!! カイザードラゴン『ルォオオオゥルルルルル………!!』 中井出     「ぬおお……!!」 飛翔をやめたカイザードラゴンが大地に降り、 己が体重のみで地震を起こしつつ喉を唸らせる。 ……地震は嫌いだ、嫌なことを思い出させる……。 中井出「っ……今はそんなこと考えてる場合じゃないよな!よし!」 10分はまだ経ってないからマグニファイは無理! 精霊斬は出来るけど、カイザードラゴン相手だとダメージカス程度だからダメ!! 義聖剣ももちろん同じ! ならば───攻撃を避け続けて時間稼ぎ! でもこのドラゴンの尾撃、とんでもなく速いし───ぐおおどうすりゃいいんだ!! とりあえず立ちはだかってみたけど、勝算がまるで無い!! 中井出「だが!俺にはこの、困った時のパンドラポットがある!     なんかもう出来れば使いたくなかったんだけど!!だが発動!」 他に方法が無いのだ! だったらこれに賭けるしかない! ───ジャンッ!《博打No11!フォースフィールド!》 中井出「おおっ!?」 なんだか良さそうな名前!? と思ったら俺とカイザードラゴンの間を中心に、 円形の光がブワァアアアアアッと広がってゆく! 中井出「うおっ、まぶしっ」 やがてキィンッと高い音と立てて光が弾けると、 ギピンッ!《属性無効化効果!場の光属性効果が破壊されてゆく!!》 そんなナビメッセージとともに、カイザードラゴンの鱗の色が消えてゆく……!! 中井出「オッ───OKブラザー今しかねぇ!!」 疾駆する。 剣を構え、走る時はAGI、斬る時はSTRと、ステータスを切り替えて───! 中井出「だぁあありゃぁあああっ!!」 一気に───斬る!!  ザフィィインッ!!! カイザードラゴン『グォオオオゥウウウウッ!!!』 そして鱗に通る太刀筋───! い……いける!これすげぇ! このフォースフィールドだけは状況を打破してくれた! 今なら一気にいける気がする! 中井出「───詰める!」 迷う暇など一切無し! 振るった剣を戻すその勢いで再び振るい、  ゾガバギィインッ!! 今斬った場所をもう一度斬り払う! カイザードラゴン『クギャァアォオオオッ!!!』 中井出     「もういっぱァーーーーつ!!」 さらに、さらにと連ねる! 尾撃が飛んでくればそれを剣で弾き、勢い余って吹き飛ばされながらも食らいつく! 足の震えはもう無い───だが油断だけはしちゃならない! 忘れるな博光よ……死中に活があるように、活中にも死があることを! ギピンッ!───ガギィンッ!! 中井出「いっ───」 ……そしてそれは、誰かが思うよりもよっぽど速く舞い降りるということを。 《バリアチェンジ!カイザードラゴンの属性が変化する!》 中井出「〜〜っ……効果抑えられるのは一個の属性だけなのか!?」 再び変色してゆく鱗。 そして、やっぱりそうそう完璧な能力などないゲーム世界にちょっぴり絶望。 構えた剣ごと爪で吹き飛ばされ、俺は地面を転がった。 中井出「がはぁああああっ!!!」 たったそれだけで物凄いダメージだ。 すぐに立つことが出来ずに、のろのろと立ち上がったが─── 目の前にはもうとても大きい竜の皇帝が居た。 中井出「っ…………、……いてぇ……」 そんな言葉しか口から漏れなかった。 もうダメだ。 足掻いてみたけど、どうやらここまで。 今までが上手く行き過ぎていたのだ。 人間の限界……いや、今よりまだまだ強くなることは出来るだろう。 でもやっぱり限界はある。 強くなりたいのなら人間をやめろ、と神父は言った。 それはその通りだ。 速く強くなりたいなら、あいつらみたいに人をやめればいい。 でも……  ───お前みたいな人間が居てくれて、本当によかった─── ……、……そんなこと、もったいなくて出来やしない───!! 誰がやめてやるもんか! 俺は人間・中井出博光として! 今も、今までも、そしてこれからも歩いていくって決めたんだ! そうだ、人間の限界がこんなところじゃないって理解が出来てるなら─── その限界に至るまで、俺は足掻いていられる筈だ! 今までが上手く行き過ぎてた……?当然だ、だって、ずっと足掻き続けていたんだから! 諦めるな馬鹿野郎!諦めたらそこで───終わりなんだから! 中井出「いいのを出せよ……───!!     俺はこんなところで心を折るわけには───いかないんだぁあああっ!!」 あらん限りの魂で叫び、パンドラポットを発動させる。 結局運任せ的な行動になるが───……よく言うだろ? ジャンッ!《博打No2!巨大化!》 ───運も実力のうち、って───!
【Side───晦悠介(再々)】 ドゴォオオオオーーーーーーン……!! 悠介 「どわっと!?な、なんだ!?また中井出オワァーーーッ!!」 轟音が聞こえた故に振り向いた。 すると───今度天を衝かんとしたのは火柱でも爆煙でもなく───……中井出だった。 悠介 「なっ……な、ななな……なんだありゃあぁあーーーーーっ!!!!」 巨人の倍……いや、それ以上か!? ともかくそんな大きさの中井出が、これまた超巨大な双剣を手に、 ここからでも見えるくらい大きなドラゴンを前に立っていた! いや、そりゃ気になったから向かってはいたが……場所移したのか? トカホウテだったよな?あっちは確か───巨人の里!? あ、い、いや!とにかく行って見なけりゃなにも解りそうもない……!
【Side───サンドランドノットマットの人々】 ゴゴゴゴゴゴゴゴ…………!! 男1 「お、おいっ!なんだありゃあ!!」 男2 「あん?なんだよオワァアーーーーッ!!?」 男3 「きょ、巨人だ!とんでもない巨人が───い、いや!あれは───!」 男4 「鳥だ!」 男5 「飛空艇だ!」 男6 「い、いや!エロマニアさんだ!!!」 男1 「う、うおおおデッケェエーーーーッ!!!」 男3 「まさか巨大化まで出来るとは……!!」 男4 「すげぇや!さっすが天下のエロマニアさんだ!!     きっと巨大化して悪と戦っているに違いねぇや!!」 男5 「ありがとうエロマニアさん!アンタ俺達の希望の光だよ!!」 男2 「誰と戦ってるのか解らねぇけど───やっちまぇええーーーーっ!!」
【Side───他の町の人々】 ンゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!! 少女 「ねぇママ……アレ……」 女性1「おお……!なんと恐ろしい……!あれはいったい……!?」 男性1「オッ……俺はあいつを見たことがあるぞ!西の大陸に現れた魔王だぁっ!!」 男性2「な、なんだってぇっ!?魔王!?」 男性1「あいつが現れてから俺達が住んでいた町は島ごと沈んだんだ……!     きっとあいつが西の大陸を沈めたんだ!     そして今もこの大地を破壊しようと巨大化を……!!」 老人 「ひいいい!恐ろしや……!魔王じゃ……!魔王の降臨じゃあーーーーっ!!」 女性2「王国に連絡をして対策を立ててもらいましょう!?     このままじゃわたしたちの町が崩壊してしまうわ!」 男性2「そ、そうだ!それがいい!人相書きもして、エトノワールに送るんだ!!」 男性1「今に見ていろ魔王め!貴様の思い通りになどさせんからなぁあっ!!!」 【Side───End】
体が巨大化した───それも、この巨大なドラゴンよりも一回り大きく! ……ていうか大きすぎ!なにこれ!!巨大化って……巨大化しすぎだよちょっと!! どうなってんの!?と、ナビを通してスキル詳細を見てみる。と─── 博打No02:巨大化(巨大化する。たまに超巨大化もする) ……巨大化する。たまに“超巨大化”もする。 “超巨大化”。 中井出『こんな時にばっかその“たまに”がどうして発動すんのさぁーーーーっ!!!     《キィイーーーン!!》うおおうるせぇ!自分の声がうるせぇ!!』 つくづく僕にやさしくないねこれ!!───だが!これなら大きさでは負けてない! 通常サイズなら小さな一撃でも同じサイズになった今なら…… それは確かな大きな一撃になる筈!! そう!それは小さな波では壁は崩れないけど、大きな津波なら災害にもなるという法則!! 声が大きくてブレて聞こえようがどうしようが、これは確かな力になる! 中井出     『いくぞカイザードラゴン!これなら条件は多分一緒だぁっ!!』 カイザードラゴン『グッ……ルォオオオオオオオッ!!!』 今やカイザードラゴンの咆哮も普通の大きさとして聞こえる。 突然巨大化した俺を前に、やはり戸惑うそいつ。 だがそれが隙ならばいくらでも突こう! 中井出『臆さぬならば───かかってこい!!』 さあ行こう!勝てるかどうかなんて知ったこっちゃない! 今はただ!この巨大化した体を思う存分扱って、この状況を楽しみ尽くす!! Next Menu back