───冒険の書155/武器を愛する人は心強き人───
【ケース420:中井出博光(超再)/彼の者は常に独り、筏の上で波に酔う】 でてーんてーんて・てーでげでって〜ん♪ で・て・てけてて〜〜〜〜ん♪でげで〜〜〜んでってっでげて〜〜〜〜ん♪ デンテンテケンテテンッ♪ワシャーーーン!! 中井出「うぐー……」 ボロ雑巾のように転がっていると、 ふと聞こえるビッグイベント攻略、またはレアドロップ時の音楽。 ただ今は敵対心が消えてくれたお蔭で回復していってる自然治癒の力がありがたい。 いや……ほんと無茶した。 今までにないくらい無茶した。 きっと初めてシュバルドラインと戦った晦もこんな心境だったに違いない。  ぺぺらぺっぺぺ〜♪コシャンッ♪《レベルが2785にレベルアップした!》 中井出「うおっ!?」 しかしこんな驚愕は無かったと思う。 レベルアップの数が半端じゃないこと半端じゃないこと。 中井出「……え?ちょっと待て何レベル上がった!?」 レベルアップと同時に完全回復した体を起こしてナビを見る。 少なくとも700は上がってるよな……。 あ、あー……でも戦覇王の祝福は発動しなかったみたいだ。 散々ボッコボコだったしな……そりゃ戦闘評価も経験値倍化も少ないだろうね。 覇王の加護で普通に経験値3倍程度……なのにこの有様である。 そりゃあさっきまでのレベルなら到底敵わない敵だったわけだけどさ。 もしノーダメージで勝ててたなら、どうなってたんだろうか。 戦覇王の祝福が最高経験値8倍だから、その3倍で……24倍!? おぉお……もしそうなってたら俺のレベルはどうなってたんだろうか……。 ちょっと見てみたかった気もする。 中井出「しっかし……おぉ〜〜〜ぅぉ」 荒れるに荒れた大地を見渡して呟く。 我ながらよく勝てたもんだ。 えー……?マグニファイ使ってオーガインパクトとか思い切り利用して、 ジェノサイドブレイバー6回重ねがけを一気に使用とかして…… ドラゴンキラーも入ってたわけだから……少なくともまともにダメージ与えるには、 4000レベルは無きゃダメだったってことだよな。 いや……なんかもう……ほんとよく勝てたな……。 元素の宝玉とパンドラポットが無かったら絶対勝てなかった……ほんと絶対。 中井出「それと……」 狂いし者。 この存在があったからこそ、生きていられる。 そりゃ、死ねば神父送りなのは当然なんだけどさ。 しかし狂いし者とはよく言ったもので……あれって思い切りアレだろ? ゲームだからって彼が中に入り込むのは正直複雑なのですが、 そこんところどうなんだろうかゲームマスター。 狂戦士っていったらガッツとかかなーとか思ってたのに。 声  「……お疲れさん」 中井出「オヒャーーーウァッ!!」 ズバームと、聞こえた声に跳ね上がった。 だだだ誰!?僕に声をかけるキミは誰!?───と、振り向いてみれば晦一等兵。 中井出「貴様……何故ここに」 悠介 「そりゃな、あれだけ巨大なお前を見れば様子を見たくもなるだろ……     ちょっと遅かったみたいだけど」 中井出「遅くて正解かも……。あんなに暴れる超巨大生命体の傍で傍観でもしてたら、     絶対に踏まれるか下敷きになるかしてたぞ」 悠介 「想像に容易いな、それ」 ハフゥ、とひとまず安堵の溜め息なのか心の溜め息なのか解らない息を吐く。 悠介 「っと、そうだ。ドリアードとその他は?」 中井出「多分もう随分先の方に逃げたと思う。     時間稼ぎに〜って立ち向かったんだけどなぁ。まさか勝てるとは」 悠介 「でも、負けてやるつもりはなかったんだろ?」 中井出「もちろんだ!     いや、最初は負けてもいいからとにかく時間稼ぎをってモンだったんだけど」 言いつつ、チラリと晦を見る。 悠介 「?」 晦はよく解ってなさそうな顔できょとんとする。 ……まぁ、感謝はいつかに取っておこう。 今言うのはちと恥ずかしい。 中井出「やっぱ人間、何がきっかけで覚悟が決まるのかなんて解ったもんじゃないな」 悠介 「俺の場合、感情が浮上してからはそれを思い知ってばっかりだが」 中井出「見てて解る」 それにしても……あ〜、体が自由に動くのってやっぱり素晴らしい。 腕が消し飛んだ時はどうなるかと思ったよ。 ストームブリンガーの実践なんてもの、彰利にやってみておいてよかった。 じゃなきゃ、あんな咄嗟に閃きゃしない。 こういうのを死力を尽くしたっていうのかどうかは解らないけど、なんだか満足だ。 根性論で敵を倒せるわけがないけど、あの時ああしていたら、 あの時あと一歩の思い切りがあったらって思うことってきっとある。 それを俺は、出し切ることが出来たんだと思う。 ……まあ、大半は狂いし者のお蔭なわけだけど。 運を実力のうちに数えているようじゃ、この先大変なんだろうなぁ……。 フフフ、だが見よ!超・辛勝だったけど倒した! 根源精霊の守護竜じゃなく、高位精霊の守護竜から倒してみせた!! これで、  “私を倒したからといっていい気になるな、私は守護竜の中でも一番弱い竜……” とか言われることなんて無いのだ!! それだけでも僕は満足だ!! 悠介 「まあ、ひとまずは落着したようでよかったよ。     ところで中井出、ちょっと訊いていいか?」 中井出「お?おお、この博光に何用か」 ハワー、と一人で喜んでいるところに晦一等兵が声をかけてきた。 俺はなんだか少しだけ恥ずかしくなって、照れながら我に返る。 悠介 「ちょっと今金に困っててな」 中井出「金ならやらん」 悠介 「じゃなくて。何か金稼ぎに丁度いいものってないか?」 中井出「そんなの俺こそが聞きたい」 一応さっきの戦いで金はかなり手に入った。 何故竜が金を?っていうのはゲーム世界の永遠の謎だろう。 しかしながら“銭スキル”のお蔭で、俺の懐がかなり暖かくなったのは確かである。 悠介 「そか……困ったな」 中井出「どうかしたのか?金は貸せんが相談にだけなら乗ろう」 悠介 「妙なところでしっかりしてるというか……     とにかく金なら借りないから安心してくれ」 中井出「うむ」 ……そうして晦は語った。 なんでも精霊との契約の指輪を精製するために、結構な金が必要なんだとか。 アクアマリンはもう精製してあるらしいのだが、 外道・モミンゲリオンが無茶をしてしまったため、ウンディーネは契約を断固拒否。 貴様とだけは絶対嫌だ的なことを言われ、戻って来たらしい。 中井出「この世界でもやっぱ精霊全員と契約するのか?」 悠介 「最初はそうじゃなきゃダメなんだろうかって思ったんだけどな。     実際、ウンディーネと契約した途端に俺の力の一部が解放された。     でもそれは加護だけでもいいらしいんだ。そこのところはナビで調べてみた」 中井出「なるほどなるほど。じゃあなにも晦が精霊全員と契約する必要は無いと」 悠介 「ああ、そういうことになる」 中井出「じゃあアレだ、その……宝石だっけか?それ、上のやつらに売ったらどうだ?」 悠介 「上のやつら───ああ、あいつらか」 中井出「晦はもう現実世界で空界の全精霊と契約してるわけだろ?     面白味を追求するなら、     猛者どもやブリタニアの連中も契約ってのはやってみたい筈だ」 悠介 「……なるほど。確かにそうかもしれない。     っと、お前はどうだ?なにか欲しい属性の宝石はあるか?     ……ていうかこれしかないな。受け取ってくれ」 コシャンッ♪《琥珀色の稀宝石を受け取った!》 ていうか無理矢理渡されたんだが。 中井出「これは?」 悠介 「然の宝石だ。どのみちドリアードはお前以外とは契約しない気がする」 中井出「あ……なるほど。でも俺剣士だぞ?あ、いや、拳も使うからむしろ戦士か。     精霊と契約してもなにがあるわけでもなさそうだが───」 悠介 「そうでもないだろ。     精霊と契約するってことは、それだけでもなにかしらの力がついてくる。     もちろんペナルティがある可能性もあるわけだが───」 中井出「こ、怖いこと言うなよぅ!!」 悠介 「はは、まあここはゲームの中だからな。     空界の精霊みたいに諸力が汲々されるとか、そういうややこしいのは無い筈だ」 中井出「ぬう……」 言われてみれば、木村夏子二等がナギーやシードと契約した時、 それっぽいことは起こらなかった筈。 ……ていうか指輪無くても契約出来るのに、意味あるのかこの指輪。 悠介 「ちなみに。指輪無しでも契約は出来るが、     指輪が無い状態での契約は契約者に負担がかかる。     その点、指輪があるとそれ自体が拠代みたいな役目をして、     召喚維持にもTPを使用したりすることがない」 中井出「あ……なるほど」 そういうことか。 ていうかまるで俺がそれらの質問をぶつけるのが予測出来ていたみたいな物言いである。 伊達に我らの付き合いと我らに振り回された時間は長くないということか、 中井出「オーケー理解した。じゃあ俺そろそろ《ガシィ!》オワッ!?」 悠介 「待たれよ」 チャオ、と去ろうとしたところを肩を掴まれる。 何事?と向き直ってみれば─── 悠介 「宝石の代金がまだだ」 中井出「…………言い出したのは僕だったね……うん……」 言いだしっぺが払わないわけにもいかんので、俺は代金を払うことにした。 当然それはカイザードラゴンを倒したことで手に入れた金である。 悠介 「相場いくらくらいだと思う?」 中井出「闇市とかなら高額で取り引きしてそうだけどな……解らんなぁ」 悠介 「だよな」 中井出「とりあえず手持ちは50000$だ」 悠介 「そか。指輪の精製が丁度10000だったから10000でいい」 中井出「むごっ!?案外容赦ないなお前……」 それでもコシャンッと金を渡す。 そうしてから宝石をシゲシゲと見つめ……まあ、 とりあえずはバックパックに仕舞オワッ!? 中井出「バックパックの中が凄いことに!」 悠介 「?どうしオワッ!?」 疑問符を浮かべながら覗き込んだ晦までもが驚いた! そう……何故って、我がバックパックの中が竜素材に溢れていたからである!! 中井出「うーお……どれくらいあるんだよこれ……」 悠介 「これ、全部あの竜の素材か……?凄い量だな……。     これならいい防具も作れそうじゃないか?     いい加減そんな村人チックなモノじゃなくて───」 中井出「防具?なにを言っているのだ?」 悠介 「いや……なにって」 中井出「馬鹿野郎!!男なら防具なぞよりウェポンズ!!     何より武器!何より破壊力!俺はヤツとの戦いで知ったね!     俺にはまだまだ破壊力が足りないと!     だから武器を!より一層の武器を求める!防具がなんだ!     俺は村人でも勇者になれるという伝説をこの装備で実話にするんだ!」 悠介 「勇者って……お前魔王じゃねぇか」 中井出「魔王だって人の子なんだよ!勇者に憧れたっていいじゃないか!!」 悠介 「やったな、自殺すればお前は魔王を倒した勇者だ」 中井出「そういう意味で言ったんじゃないよ!!しないよ自殺なんて!ごめんだよ!!」 悠介 「解った解った。じゃあこの話はここで終わりだ。     これからお前はどうするんだ?」 中井出「どうするって……」 ナギー達を追う? いやその前に……なにか忘れてるような。 中井出「───そうだしまった!     竜との戦いで余裕が完全に無くなってて当初の目的忘れてた!」 悠介 「お、おお?どうした?」 中井出「俺、戒めの宝玉を探しに来てたの。     だから竜なんぞよりもまずそれを破壊しなきゃいけなかった」 悠介 「あー……なるほど」 中井出「そんなわけだから晦一等兵!……手伝ってくれ!」 悠介 「何か対価が無ければ嫌だな」 中井出「オッ……いいねぇその返事!     以前の貴様だったらホイホイ無償で動いていたところだ!     でもあまり深く堕ちないように。貴様の良さはお人よしなところにある」 悠介 「ひどい言われようだ……」 中井出「しかし対価ね……なにか欲しい情報とかあるか?」 悠介 「ん……神、死神、竜、精霊の力を手に入れるにはどうしたらいいのか、だな。     精霊の力は多分ジハードが守ってる創造の宝玉を手に入れることだ。     けど神と死神と竜はな……」 中井出「竜───おお」 ポムと手を叩く。 そうだよそう、身近に居たじゃないか、竜の力を手に入れた猫が。 中井出「神と死神は解らんが、竜なら知ってるぞ」 悠介 「そうなのか?教えてくれると助かる」 中井出「OK交渉成立だ!報酬は宝玉捜してからで」 悠介 「……ほんとに知ってるんだろうな」 中井出「い、いきなり疑わないでよ!知ってるよ!     知りもしないで探させるだけ探させるような外道なんてしないよ!!     いくら原中の提督でもそこまでクズじゃないよ!     僕はクズじゃないよ……たとえクズだとしても、クズという名の紳士だよ!!」 悠介 「その法則だとどの道呼び名がクズになるんだが」 中井出「なにか問題あるか?言われ慣れてるだろ」 悠介 「当然のように言われてもな……」 もちろん言われ慣れてようが、言われれば悲しいんだが。 でも深く悲しまないのが原ソウル。 何故ってその方が楽しめるから。 なんでも言い合える仲間を探すのが第一歩だ。案外世界が広がるゼ? ともあれ俺は晦と、 カイザードラゴンが消えた先を見てだんまりしてるディルゼイルをおともに、 宝玉探しを開始したのだった。 ───……。 ……。 ───ややあって。  ファァアアアゴォオオオオオッ!!! 中井出「UREEEYYYYY!!!!!」 ソレは、崩れたトカホウテ山の遙か上空に存在していた。 というより、そこに聖域らしきものがあって、そこに。 封印されていたらしく、妙な布が雁字搦めになって纏わりついていた。 “この封印は特種なものがなければ取れません”という注意書きを無視し、 実力行使でブチブチと封印を引きちぎった俺は、 晦から送られてくる呆れの視線を欲しいままにしつつ、 光を溢れさせる宝玉を見てはUREYと叫んだわけである。 中井出「これが然の戒めの宝玉か……」 今なお光を放つ宝玉を手に取ってみる。 すると……なんだか自然とお友達になれたような、そんな気分になった。 悠介 「特殊なものじゃなければ取れないって書いてあるのに引きちぎるか?普通」 と、ここでとうとう晦が視線だけじゃなく言葉を投げかけてきた。 中井出「だが見るのだ晦一等兵。宝玉はこうして僕の手の中にあるじゃないか。     封印されてるってナビに出てきたのに、手で引きちぎれるのが悪い」 悠介 「普通封印されてるって文字が出てきたら引きちぎろうなんて思わないだろ!」 中井出「フフフ、そういった常識を打ち破るのが我らの仕事。     今頃ゲームマスターどもも慌てておるわ。     この博光をただで躍らすことが出来ると思うたら大間違いよ」 悠介 「……つくづく製作してる精霊たちに同情する」 たはー……と溜め息を吐く晦一等兵。 まあそれはそれとして、目的のものは手に入れたのだ。 これを破壊するかどうかは俺に委ねられる……んだっけ? でも破壊しなけりゃジュノーン弱まらないっていうしな。 破壊すればナギーもパワーアップするんだろうし……うむ。 中井出「じゃあ破壊しよう!」 悠介 「いきなりだな」 中井出「それが俺の目的だから当然だ!」 恐らく破壊するのは簡単だ。 何故って、内側から漏れる凄まじい力の波動で、今にも宝玉が破裂しそうなのだ。 だからあとはちょいと外から衝撃を加えてやればいい。 中井出「さあ、晦一等兵」 悠介 「へ?《がっしぃ!》お、おい……?」 傍観していた晦一等兵の肩に手を置き引き寄せる。 右手では宝玉を空に翳し、左手では肩を組むようにして晦を。 中井出「さあ」 悠介 「……?」 促すと、応えるように肩を組む晦一等兵。 そして僕は唱えるのだ。 今回もっともお世話になったあの能力を発動させるために。 中井出「パルプンティエイイェイイェ!!」 悠介 「へ───?」 ジャラララララララ───ジャンッ!!《博打No26!超弱体化!》 中井出「あれ?《シュボォオオンッ!!》ギャアーーーーーッ!!!」 自爆が発動することを望んでいたんだが、発動したのは超弱体化。 で、気づけばなんだか暑苦しく視界も狭く……な、なんだこりゃ……。 悠介 「………」 中井出『晦一等兵!?俺どうなってんの!?』 悠介 「……とりあえず……着ぐるみ被ってるな」 中井出『着ぐるみ!?うお取れねぇこれ!!呪われてる!?     なんやねんなこれ!……うおっ!?なんか知らんけど口調が勝手にエセ関西弁に!     しかもなんやこれ!レベルが−50!?     弱体化にも程があるやろ!堪忍してぇなホンマ!いやぁあああああっ!!     この関西弁ウゼェエエーーーーッ!!なんだか知らないけどウゼェーーーッ!!』 悠介 「すまん……姿見てるだけでもなんだか知らないが殺意が出てくるほどウゼェ……」 中井出『なんで!?オワッ!?     クラスがペシュメルガじゃなくてゴーファになってゴーファ!?     いやちょっ……なんだか物凄く嫌なんですけど!?うわぁ取れねぇこれ!!     つーか暑ッツ!!夏にこれ暑いよちょっと!しかもこんな大空で!!』 悠介 「……うん?ああ、ゴーファっていうのはな」 中井出『いや晦クン!?ディルゼイルとほのぼの話してないで助けてほしいんだけど!?     ていうかこれどうやって降りれと!?     来る時はフロートとジークリンデで飛んで来たけど、     ゴーファになってからスキルも属性もなんも発動しないんだけど!?     どないなっとんねん!勘弁したってやぁーホンマーーーッ!!     うおぉおおおおウゼェエーーーーーーーーッ!!!!』 もう泣きたかった。  ◆ゴーファ───ごーふぁ  ゴーファとはゴーファーのことであり、“くまのプ○さん”で登場。  それとは別の場所で擬人化漫画があるが、そこにおわすデカくてウザいのがゴーファ。  インチキ関西弁を喋る身長190cmの着ぐるみモンスターで、  無意味にテンション高くて森のみんなにうざったがられている。  着ぐるみのために表情も大して変わらないし、  もちろん着ぐるみだからDIO様に鼻を毟り取られても平気。無免許。  人気投票第一回では第50位であったため、−50レベルなのだと考えられる。  *神冥書房刊:『無免許運転者及び吸血鬼捕り物帳』より 中井出『……なんやもうええわ……一定時間経過するか死ぬかしたら直るそうやさかいな。     このまま落ちて粉微塵になるのもええんちゃうかなぁ!ヒャハハハハ!!     ほならパーーッといこかパーーッと!なぁ!?えぇ!?ヒャハハハハ!!     ほれどないしたんや笑うとこやでここヒャハハハハ!!』 悠介 (テンションうぜぇ……) 中井出『ほないこか!グシャーと潰れれば少しはマシにギャアーーーーッ!!!     あ、あっ……危ねぇえーーーーーーっ!!     洗脳されるところだったよ!!なんだよこの着ぐるみ!     ルーレットの中にスカはそりゃあるだろうけどスカにもほどがある!!     段々なにもかもがどうでもよくなってくる!』 悠介 「とりあえずさっさと死んでしまえ。金なら預かっとくから」 中井出『そ、そうする……』 コシャンッ♪《晦悠介に金を渡した!》 コシャンッ♪《然の戒めの宝玉を渡した!》 中井出『そんじゃあ……俺、このモンスターと決着つけてくる』 悠介 「ああ……行ってこい。正直今のお前見てると、鼻毟り取ったあと捨てたくなる」 中井出『………』 ニコリと笑い……まあ暑苦しい着ぐるみの所為で中身は見せられないが笑い、 遙かに高いこの聖域から飛び出した。 さあ死のう。 命は粗末にしないと決めた俺だけど、こんな姿ならどうでもいいやもう。 こうして俺はドグシャアーと山の岩場に激突し、あっさり昇天。 教会……ではなく、無事だったらしい神父によってトカホウテの洞窟で蘇った。 ああ、ゴーファじゃなくなっていた事実には諸手を上げて喜んださ。 人の決意をいきなり破壊させるだなんて、どれほど嫌な生命体なんだゴーファ……。 ───……。 ……。 あれから晦を迎えに聖域に飛び、 金と宝玉を返してもらい、一緒にグレイトキャッツガーデンを目指した。 といってもタッグフォーメーションA状態で俺が駆け、 さっさと走るという目指し方だったわけだが。 ディルゼイルは俺がタワーブリッジをする晦の腹部にしがみついて同行。 メキメキと鳴る骨の音が小気味よく耳に届くたび、晦がなにやら唸っていたが無視。 ノースノーランドから船を出してもらい、 途中から小船でグレイトキャッツガーデンを目指す。 どうやらセイレーンの件はしっかり解決していたらしく、潔く船を出してくれた。 と、そんなわけで─── ナギー 『し、沈むのじゃーーーっ!!』 アイルー『が、頑張るニャ!沈んだら魚の餌ニャ!』 ルルカ 『ゴェエエーーーーッ!!!』 筏で海を渡ろうとしていたらしいが、角の重さで沈もうとしている三人(?)を発見。 ちゃんとここを目指して急いでいてくれたらしい。 悠介 「あれか」 中井出「あれだ」 デスゲイズに襲われる可能性があるから空飛ぶわけにもいかない。 だから俺と晦は小船を進ませ、ナギーたちのもとへ急いだ。 中井出「おーい、ナギ〜〜〜っ」 ナギー『む……?お、おお!?おぉおおっ!!ヒロミツー!!無事じゃったのかー!?』 中井出「ぶ、無事だったぜ〜〜〜〜っ!!」 ナギー『時間を稼いでから逃げてきてのじゃな!?よく生きて戻ったのじゃー!!』 中井出「ノー違う!これを見よ!!」 ナギーの言葉に対して、どうだー!と戒めの宝玉を見せる! すると、ドッギャァ〜〜〜〜ンッ!とショックを受けるナギー! ナギー『な、ななななんじゃとーーーーっ!!?     もしや倒してきたのかヒロミツーーーーッ!!!』 そして絶叫。 ……と、そうこうしているうちにゴボゴボとナギーたちが乗った筏が沈んでゆく。 中井出「ぬう!これはいかん!」 俺はすぐさま立ち上がると、あと少しだった距離を跳躍で殺した。 そして角を受け取るやフロートを発動。 角の重さを殺し、筏を海面へ浮上させた。 アイルー『ギ、ギニャニャ……!』 ルルカ 『ゴエエ……!』 ナギー 『助かったのじゃ……!』 浮いてきた筏は随分とボロボロだ。 多分、相当急いで作ったんだろう。 中井出「………」 真相はどうあれ、嬉しい話じゃないか。 きっと、早く届けて戻ってきたかったに違いない。 そんなことを思いながら、 俺は角を片手で持ちつつ……くしゃっとナギーの頭を撫でたのだった。 ───……。 ゴコッ……ドシャアッ!! 長老猫『ゴニャーーーッ!!?』 そうして……グレイトキャッツガーデンに辿り着いた俺達は、 奥の方へと角を運び、長老猫の前にドッカァと置いてみせた。 その衝撃に少し浮いた猫がまた面白い。 長老猫『す、すごいニャ!     頼んで一日経たずに持ってきてくれるなんて思わなかったニャ!』 中井出「正直俺も思わなかった!」 猫は随分と興奮したように素材を調べてゆく。 取れたてホヤホヤに近いものだ、悪いものじゃない筈。 長老猫『見事な切り口ニャ……!端のほうがちょっとささくれ立ってるけど、     それ以外は一気に斬ってあるお蔭で断面が綺麗ニャ……これはいいものニャ!』 グラッツェ大好評だ! 中井出「ところでこの角って普通に考えていくらくらいで取り引きされるものなんだ?」 長老猫『───《ピタッ》』 ふと気になったことを訊いてみた。 するとピタリと止まる猫。 長老猫 『ニャニャ……旦那さん、とっても鋭いこと言うニャ……』 中井出 「?」 アイルー『旦那さん、いわゆる守護竜と呼ばれる竜種は世界に一体しか居ないニャ。      だからその竜の生物素材は、およそ金額がつけられないほど高価なのニャ』 中井出 「な、なにぃ!?そうなのか!?」 ジニー 『そう習ったニャ』 アイルー『守護竜は死ぬと転生するニャ。だから世界にたった一体だけの存在なのニャ。      でも転生するから何度だって狩れるかって言ったら、そうでもないニャ。      この角を手に入れた旦那さんなら解ると思うけど、守護竜はとても強いニャ。      そうホイホイと倒して剥ぎ取れるほど生易しくないんだニャ』 中井出 「……それはよく解るかも」 出来ればもうカイザードラゴンとは戦いたくないし。 悠介 「転生した守護竜が成長する前に倒すっていうのはダメなのか?」 長老猫『守護竜は成長しきった時、体質が大きく変異するニャ。     その時の素材じゃないと、まるっきり役に立たないのニャ』 悠介 「……なるほど」 中井出「あれ?じゃあデスゲイズに食われた……かどうかは解らないけど、     無の宝玉の守護竜は転生しないのか?     デスゲイズはどう見ても竜って感じじゃないし」 長老猫『食べられたというより取り込まれてしまったんだニャ。     だからデスゲイズを倒すまで転生することなんて出来ないニャ』 悠介 「あー……そう来たか」 中井出「取り込まれたのはバハムート?」 長老猫『その通りニャ。ボクは確かに見たニャ。     あのバハムートを吸収するなんて、ほんとバケモノニャ』 中井出「えーと……あのそのつまり、えーー……なんだ、おーーー…………     バハムートってカイザードラゴンよりも……」 長老猫『強いニャ』 やっぱりぃいいいいーーーーーっ!!! 悠介 「まあ……あれだ。皇帝より強いヤツなんて腐るほど居るってことだな」 中井出「そりゃ解るけどな……」 王より優れたものが居てこその国というか種族というか。 それ考えると、晦は本当にその気になれば最強の王になれたわけだよな。 時々、どうしてこいつはフツ〜〜に暮らしてるんだろうかとか思ってしまうことがある。 その気になれば贅沢な暮らしなんて思うままだろうに、とか。 でもまあ……やっぱ結局アレなわけだ。 王宮暮らしとか王として過ごすとか、そんなのは人にとっちゃ荷物でしかないわけだ。 元々が奔放に生きることを主としたようなヤツだ。 今更そういう生き方なんて出来ないだろう。 中井出(まあそれはそれとして) 思うに、グレイドラゴンはどうかは解らんが…… 少なくとも他の高位精霊の戒めの宝玉を守ってる守護竜は、 確実にカイザードラゴンより強いんだろうなぁ。 中井出「ところでものは相談なんだが猫よ。     カイザードラゴンから手に入れた素材がい〜〜っぱいあるのだ。これで───」 長老猫『防具でも作るニャ?旦那さんにはこれで大きな借りが出来たニャ。     旦那さんだけ特別に半額で仕事を請け負うからなんでも言ってほしいニャ』 中井出「防具?なにを言っているのだ?」 長老猫『ニャニャ?なにって……』 中井出「俺は武器を強化してくれと言っているのだよ猫よ。     より強くより美しいウェポンが欲しいのだよ猫よ」 長老猫『ゴニャ……!旦那さんの武器に対する情熱はハンパじゃないニャ……!     でも残念だけどその剣はそれ以上成長しようがないニャ』 中井出「なっ───なんだってぇーーーーっ!!?」 長老猫『鍛えて+を増やすことや、合成でスキル系統を増やすことは出来るニャ。     でも素材を加えて鍛えたところで、その武器はそれ以上変化しないニャ』 中井出「あ……な、なんだ……そういうことか」 それならなんとなく理解してたことだ。 いくらいろんな素材を足しても、もうジークフリードから変わらなかったこれだ。 それは受け入れてるし、むしろ名前が変わってしまうのは嫌だと思ってたくらいだ。 俺はこのジークフリードとジークムントとジークリンデが大好きだ。 だから武器の形態と名前はこれでいい。 ……んだが……となると、この素材はどうしたもんか。 中井出「お……そうだ。それじゃあ猫よ、この素材で新しい武器は作れまいか。     その武器がなにかしらのスキルを持ってるなら、それを合成させれば素晴らしい」 長老猫『むむむ……13の猫技のひとつ!“キャット・アイ”!!!』  ギシャァアアンッ!!! 中井出 「おおっ!?」 ナギー 『猫の目が光ったのじゃ!』 アイルー『僕ら猫には鑑定眼というものがあるニャ。      素材を見て、これがあればどんなものが作れるのか。ソレが瞬時に解るニャ。      古びた棒を見て、それが稀蒼刀だって気づけたのもそういうことニャ』 中井出 「な、なるほど……」 長老猫 『───この素材でペイルカイザーっていう竜殺しの剣が作れるニャ!      でも旦那さんの武器にはもうドラゴンキラーは付加されてるから意味ないニャ』 中井出 「うお……そっか」 長老猫 『旦那さんは武器しか鍛える気が無いニャ?』 中井出 「当然だ!なにを隠そう!俺は武器強化の達人だ!!(自分で鍛つのではなく)」 長老猫 『ムー……解ったニャ。それならそのグローブと具足を貸すニャ』 中井出 「オ?このマイトグローブとイブシ銀メタルグリーヴをか?」 長老猫 『そうニャ。あと剣も貸すニャ。もう少し鍛えてあげるニャ。      まさかこんなに立派な角を取ってきてくれるとは思わなかったニャ。      今の強化分だけでこれ全部を受け取るのは忍びないからニャ』 中井出 「おお、それは助かる……」 魅力的な提案だ。 俺は早速武具を取り外して、ついでに然の宝石も猫に渡すと、 代用のブーツを受け取ってそれを履く。 しかしそこで、ふと体が揺れた。 と同時に眠気が津波のように押し寄せてくる。 中井出「ぬ、ぬう……どうしたことだこれは……!立っていられない……!     頭痛がする……は、吐き気もだ……!この博光が……!」 長老猫『ただ疲れてるだけニャ。今日はここで休んでいくといいニャ』 中井出「う、うむ……そうさせてもらう。正直ワシもう幻海……」 フラリと揺れた体を壁に預けると、そのままズリズリと壁伝いに倒れてゆく。 なにしろあんなやつと戦ったのだ。 緊張からくる精神の疲労は普通の戦闘の倍以上はあっただろう。 立ってるのも辛いくらいだ。疲労の限界というか、眠気が限界だ。 このまま起きてたらゲームシステムに則られて天に召されそうだ。 ナギー『大丈夫なのかヒロミツ!しっかりするのじゃー!』 中井出「寝れば大丈夫……多分……」 ナギー『そ、そうなのかの?解ったのじゃ。ならばわしも寝るのじゃ。     あまり眠くはないがの、ヒロミツが眠るのなら暇なのじゃ』 悠介 「そんな判断基準でいいのか?ああ、まあいいか。     猫、竜の力を得る方法を知りたい。中井出がお前なら知ってるって言ってた」 長老猫『……解ったニャ。でもまずお客さんの人となりを知ってからニャ。     力を求める人全てにホイホイ力の在り処を教えるわけにはいかないニャ』 悠介 「ああ、解ってる」 やがて瞼が閉じようとしていると、そんな会話が聞こえてきた。 ともあれこれでミッションコンプリート。 少し休もう……と、目を閉じようとすると、ナギーが俺の足の間にポフンと座る。 そうして俺の胸に頭を預けてくる自然の精霊に少し苦笑しながら、 俺はゆっくりと眠りについた。 Next Menu back