───冒険の書156/属性決定祭り・氷像付き───
【ケース421:晦悠介/猫野郎どもの歌】 ガンギンゴンガンギンゴンッ!ガンギンゴンガンギンゴンッ!! 猫1 『ゴニャーーォオ!』 猫2 『ゴニャーーオォオ!!』 猫3 『ゴニャー!!』 悠介 「………」 猫たちが中井出の武器を鍛ってゆく。 弾ける火花は花火が如く、散っては消え散っては消えを繰り返す。 ディル『ふむ……しかし退屈なものだな。この間に猫から話を聞いたらどうだ、王』 悠介 「それが原因で中井出の武器が上手く仕上がらなかったら気分が悪いだろ」 ディル『うん?……ふっ、ふ───はっはっはっはっは!!     そうかそうか!いや、やはり甘いが王はそうでなくては王ではないな!     はっはっはっはっは!!』 悠介 「どうしてそこで笑うんだよ……」 正直、竜族に笑われるのってものすごく複雑なんだけどな。 悠介  「ところで……お前がアイルーで、お前が……」 アイルー『アイルーはボクニャ。長老だニャ』 悠介  「っと、そうか。で、お前がジョニー……」 ジョニー『ジョニーはボクだニャ』 悠介  「そ、そっか。じゃあお前がジニーか」 ジニー 『そうだニャ』 ……ややこしい。 もっと体毛とかが特徴的だったらよかったんだが。 アイルー『話があるなら聞くニャ。話してる程度でボクらの腕は落ちたりしないニャ』 悠介  「……そうか?じゃあ……早速で悪いんだが」 アイルー『竜の力のことニャ?      でもそれはお客さんの人となりを知ってからだって言ったニャ。      それにアレは猛毒ニャ。人が触れたら死んでしまうニャ』 猛毒……やっぱり千年の寿命はあるのか。 それだけじゃないだろうけど、まずはそれを手に入れる必要がありそうだ。 悠介  「解った、どうすればいい?」 アイルー『なにか誠意を見せてほしいニャ。聞けばジョニーが随分乱暴されたらしいニャ。      それを払拭できるくらいのなにかがいいニャ』 悠介  「なにかって言われてもな。漠然としすぎてて困る」 アイルー『そうニャ?だったら……お客さんを連れてきてほしいニャ。      久しぶりに腕を振るうとやっぱり面白いものニャ。      旦那さんの武器はとても鍛え甲斐があるニャ。      でも鍛えるのが武器だけっていうのはちょっと寂しいニャ。      だからなにか別のものを鍛えたいニャ』 悠介  「別のもの……武器以外ならなんでもいいのか?」 アイルー『ドンと来いニャ!10人くらい連れて来てくれたら認めてあげるニャ!』 10人か……ちょっと多いな。 てっとり早いのは上の連中を連れてくることなんだが……上に行く手段が今の俺には無い。 妖精が居ればゲートを通って浮遊島には行けるわけだが。 悠介 「おーい中井出ー?     そういえばお前、以前妖精連れてたよなー?……って、寝てるか」 中井出「う……ぐぐ……お得でっせ……」 悠介 「なにがだよ」 ズルズルと倒れ、いつしか寝転がりながら寝ていた中井出。 その上に乗ったドリアードがむにゃむにゃと体を動かすたびに中井出は苦しそうに、 両手を交互に突き出してお得でっせと唸っていた。 どんな夢見てるんだろうな、いったい。 悠介 「仕方ないな……彰利あたりにtell送って連れていってもらうか」 彰利なら闇の宝石を欲しがるだろうし、悪い話じゃないと思う。 というわけで早速tellを送る。 声  『ほいよー、こちらお口のラバーズ・ロッテリア!』 悠介 「彰利か?俺だけど」 声  『俺俺詐欺かてめぇ!!何処のどいつだこの野郎!!』 悠介 「お前相手に名前名乗るのがヘンに感じただけだよ!声で察しろたわけ!!」 声  『グ、グーヴ……悠介だよね?キミ記憶喪失だったんじゃないの?』 悠介 「いろいろあって戻った。で、ちょっと迎えに来て欲しいんだ。     もしくは数人連れてこっちに来てくれるとありがたい」 声  『おっほっほ、まず用件を言ってもらわんと。     主語の無い会話は無駄なだけだぁよ?』 悠介 「それ、お前だけには言われたくないな」 でも確かに要点は言ってなかった。 悠介 「闇の稀宝石があるんだ。これを加工すれば闇の精霊と契約出来るってやつ」 声  『OK何処居る今!』 悠介 「いいからちょっと聞け。一応全属性の宝石があるんだ。     だからそれが欲しいヤツを厳選したい。俺は雷でいくつもりだ。     で、お前が闇。然は中井出に渡した……というか売ったからそれは度外する」 声  『ほうほう……じゃあ風は夜華さんね?……っと、藍田が火が欲しいとよ』 悠介 「火?地じゃなくていいのか?」 声  『オウヨ。今の藍田、熱があればあるほど強いヤツになってるから。     っと、あとは……おーいじっちゃーん!てめぇ誰と契約したいー!?     ……、……OK!マイケルジジーソンはホギッちゃんと契約するとよ』 悠介 「マイケルジジーソン?……誰だよ」 声  『マクスウェル!』 悠介 「………」 しばらく会わなくても彰利は彰利だった。 そうだよなぁ、こいつはそうそう変わるわけがない。 声  『……で、……、が、……でがしょ?……ふむふむ。悠介ー?』 悠介 「ん?どした?」 声  『実力と経験重視で行くけどさ。ゼノが死の力が欲しいとよ』 悠介 「へえ……こういうのに率先して名乗り出るなんて珍しいな」 声  『オウヨ。なんでも僕をブチノメすためなら手段なぞ選ばんとかなんとか……』 なるほど、理解出来た。 声  『で、シュバちゃんが地だって』 悠介 「シュバルドラインもか」 声  『こやつはなんとなくっぽいけどね。あと何が残っとる?』 悠介 「水、光、氷、時、無だな」 声  『ほうかほうか。おーい!誰か精霊と契約してぇヤツ居るー!?』 声  『なにぃ精霊だと!?……興味あるがやめとく』 声  『だったら驚くんじゃありません!!』 口調がオカンになってるぞ、彰利。 声  『あと水と光と氷と時と無が残ってるってよー。木村っちあたり、どう?』 声  『んーん、わたし、ついに完成したハイパーパパトスカーニの育成で忙しいから』 声  『むお?おーおーおー!     あの錬金の時間にサーヴァントとか全部融合させて誕生させた骨ね!?     マント姿に剣を持つステキな骨だったねぇ確か』 声  『さっきエクスプロード放てるようになったの』 声  『どんな骨なのそれ!!』 悠介 「ツッコミはいいから早くしろー」 声  『解っとらぁな!待っといで!聖!キミはどうかね!?……え?ダメ?     じゃあ椛!……え?ダメ?グムムー……じゃあ小僧!!     貴様このまま夜華さんに差をつけられっぱなしでいいのかね!?     おおそうだ!貴様確か光技身刀流って流派だったっしょ!だから光の精霊いけ!』 声  『ちょ、ちょっと待てよ彰衛門!そんな一方的に───!』 声  『なんだ鮠鷹、もうわたしとは競う気にもなれないか。     剣聖と謳われた貴様も随分と地に落ちた。精進の心を無くしてしまったようだな』 声  『あ、あのなぁっ……!〜〜……解ったよ!』 声  『よっしゃ、小僧が光受け取るって』 悠介 「あんまり無理矢理は勘弁してくれ……」 言ってはみるが、彰利はまぁよまぁよと言うだけである。 この野郎……絶対に周りの反応見て楽しんでやがる。 声  『ほいじゃあ次は氷!氷っつーと……凍える?よし貴様ゴー!!』 声  『おお、ご指名だぞ凍弥』 声  『おお、ご指名だぞ柿崎』 声  『思いっきり指差されてるくせに俺に振るなよ!!』 声  『そう言われてもなぁ……自慢じゃないが俺に戦闘の才は無いぞ?     むしろ来流美の方が強いくらいだ』 声  『アンタが不真面目すぎるのよ』 声  『ぬう……氷ってルナっちじゃダメ?この閏年野郎、欲しくねぇって』 悠介 「ルナか……」 声  『ンーでもって、時はみさおで無がゼット。そうすりゃあとは水だけだ』 悠介 「ゼットか……あいつが精霊と契約する姿なんて想像出来ないんだが」 声  『しかも無っつーたら神父だもんねぇ』 そら想像出来んわ、と彰利が続ける。 そもそも本当にあの神父と契約が出来るんだろうか。 かなり不安である。 声  『つーかさ、その……宝石だっけ?それってほんに無の宝石もあるん?』 悠介 「……いや、そう言われてみると、     マジマジと調べちゃいないから断言は出来ないんだが……あ」 声  『オウ?どぎゃんしたとね』 悠介 「あ……いや。無の宝石は無いな。代わりに───」 声  『代わりに?』 悠介 「……月の稀宝石がある」 声  『月?月っつーと……おーいジジー!ジジーソン!     ちょっと訊きたいことがあるんじゃけんどー!?     この世界に月の精霊っておるんーーーっ!?』 …………。 声  『……、なるほど。悠介ー?』 悠介 「ああ、聞いてる」 声  『月の精霊は居たそうだけど、ずっと昔に死んじまったんだとさ。     なんでも当時、この世界で重力が乱れる大事件が起きたとかでさ。     それを月の力で調和するために命懸けの能力の発動をした所為でポックリ。     今はその力だけがこのフェイトー山に残されてて、     継承するに相応しい者を待ってるんだとさ』 悠介 「月の精霊か……戒めの宝玉っていうのは?」 声  『……、……、……無いらしい。     力を封印される前に死んじまったから、封印自体されなかったんだとさ』 悠介 「なるほど……」 声  『ほんじゃ、月の力の継承はルナっちってことでOK?     月の精霊の名前、思いっきりルナだったんだとさ』 悠介 「そか。ああ、それでいいと思う」 ルナか……ヘソ曲げてなければいいが。 かなり不安だ。 声   『ほいじゃああとは水と氷か』 声   『アチキがいただくッス!』 声×沢山『大却下!!』 声   『ひでぇッス!!』 声   『ほいじゃあやっぱりテキトーに……水ってことで水穂ちゃん!』 声   『ひえっ!?い、いやですよぅ!!』 声   『わーお即答……したら水穂ちゃんといえばセレっち!』 声   『別に構いませんよ』 声   『あらそうお!?つーわけで水はセレっちに決定』 悠介  「適当すぎやしないかオイ……」 声   『まあよまあよ!でさ、氷の方はオイラにちと考えアリ。だから後回しでいいわ。      そんでどうすりゃいいんだっけ?キミンとこ行きゃあええの?』 悠介  「ああ。今現在地のマップ送るから待ってくれ。……と」 ピピッ♪《メールを送りました》 声   『……オウ、こげなところに。OK、すぐ行くわ』 悠介  「ああ、それとさっき名前が出たヤツ、金忘れないように」 声×沢山『金取んの!?』 悠介  「金が無いと指輪として精製してもらえないんだ、仕方ないだろ」 声   『セレっち、まだ金とか無いけど』 悠介  「貸してやってくれ。出世払いってことで」 声   『OK!そういうことならすぐ行くぜ〜〜〜っ!!』 ブツッ! 言うや否や、彰利はさっさとtellを切ってしまった。 あいつがすぐって言うからには、本当にすぐ来るんだろうな……。 ……でもなにか引っかかることがあるような。 そういえば中井出のヤツ、 どうして空飛べるのにここまで小船で来ようと思ったんだろうか……。 などと考えつつ、それからしばらくしたのちに ドンドガドガドガドゴォンバゴォンドゴォンッ!!! ほぎゃぁああああああああああああーーーーーーー………… 悠介 「?」 外から聞こえた絶叫に、俺はただただ首を傾げるのだった。 【ケース422:晦悠介(再)/夏のマボロシ、氷のキミ】 ゾルゾルゾル…… 彰利 「ギギギーーーッ!!《カッ!》」 それからさらにしばらく経ったのち、彰利がさっき挙げたやつらを連れて、 このグレイトキャッツガーデン……だったか?に訪れた。 何故顔を光らせているのかは謎だ。 彰利  「やあ、まいったよ。      なんだかさ、空飛んでここに向かってたらデスゲイズに襲われてね?      出会い頭にメテオ食らって一瞬にして全滅よ」 アイルー『気を付けないとダメニャ。デスゲイズは空を飛ぶ者を狙ってくるニャ』 彰利  「……あの、マイフレンド?そういうことはちゃんと言ってくれなきゃ……」 悠介  「いやちょっと待て、そんなの初耳だぞ俺は」 アイルー『そうニャ?船と筏で来たからてっきり知ってるのかと思ったニャ』 彰利  「金返せ親友この野郎!!」 藍田  「貴様の所為で金が半分になってしまったじゃないか!!」 彰利  「このクズが!!」 夜華  「待て彰衛門、悠介殿は知らなかったと言っているだろう。それをだな……」 彰利  「あらなに夜華さん悠介の肩持つの!?オイラより悠介を取るの!?」 夜華  「なわっ……い、いやっ……いや違うぞ!?      わ、わたしはそんなつもりで言ったんじゃ───!」 ライン 「またか……貴様ら大概にしろ」 ゼノ  「弦月彰利、話が進まん。からかうのも大概にしろ」 彰利  「馬鹿野郎!夜華さんの慌てた顔を見るのは俺の生き甲斐だ!      つーかもう不安そうにオイラを見る夜華さんが可愛ゆぅて可愛ゆぅて!!」 セレス 「……悠介さん、話進ませてください」 凍弥  「いつものことですから……」 悠介  「了解……」 セレスと凍弥がムハァと溜め息を吐く中、 俺は地上での出来事や精霊のことに関してを出来るだけ簡潔に説明した。 すると、解ったのか解らなかったのか、うーむと考え始める面々。 藍田 「つまり……精霊と契約すると、その属性がかなり強化されるってことだよな?」 悠介 「ああ」 彰利 「それがリスク無しなら最高じゃね。なにかリスクある?」 悠介 「対象となる属性に弱くなることくらいだ。火なら水に、水なら雷に弱くなる」 彰利 「ア〜〜〜……そりゃ結構イタイやね。今の段階なら弱点属性なんて無いわけだし」 藍田 「そだな〜〜〜……だが頂く。精霊と契約なんて、一生に一度あるかどうか」 彰利 「オイラはもうシェイドと一度契約したことあったけどね。     考えてみりゃそのあとに交換として、スッピーに闇の力とか貰ったんだっけ。     なぁ〜つかすぃ〜〜〜っ!!……というわけでオイラも頂く」 夜華 「わたしも頂きます。どれほど精霊の期待に応えられるか解りませんが」 藍田と彰利と篠瀬が、俺の手から宝石を取っていく。 金は……さすがに死んだ所為もあってから羽振りはよくないので、 出世払いにしてほしいそうだ。 セレス「さすがにここまで来ていらないというのもなんですね」 凍弥 「俺も頂きます。いい刺激になると思うんで」 ゼノ 「断る理由がない」 ライン「今のままでは己の力を信じきれないのでな。頂くぞ」 悠介 「………」 そうして、気づいてみれば全員が全員、宝石を手に取っていた。 藍田   「ほっへ〜〜っ……こりゃ綺麗だなぁ」 彰利   「クォックォックォッ……!闇の精霊……どうこき使ってくれようか……!」 凍弥   「これを、指輪に精製してもらえばいいんですよね?」 悠介   「ああ。そこの猫に頼めば有料でやってくれる」 彰利   「うおっ!セコいな猫!」 アイルー 『お客さん商売をナメてるニャ。       セコいとか言う言葉は流れというのを知らない世間知らずの言葉ニャ。       お客さんホントに冒険者ニャ?冒険者とは思えない発言ニャ』 彰利   「グ、グーヴ……そりゃここ最近は修行場にこもりっきりだけどね……。       ちなみに精製はおいくらで?」 アイルー 『10000$ニャ』 彰利&藍田『高ッ!!』 藍田   「お、おいおいキャット……冗談キツイぜ……」 彰利   「もっとさぁ、ホラ……まからないの?」 アイルー 『まからないニャ。お金が無いなら何かを売ってから……ムムッ!?       13の猫技のひとつ!“キャット・ノーズ”!!』 ススンッ!スンスンスンッ!! 突如叫んだかと思うと、猫が鼻をスンスンと嗅ぎ出した!! すると─── アイルー『お客さんいいの持ってるニャ!それをくれれば考えなくもないニャ!』 彰利  「それって……よもや貴様!      この完成したばかりのダークマテリアではあるまいな!」 アイルー『それニャ!』 彰利  「ぃやだぁ」 アイルー『健に似てるニャ……!じゃ、じゃあお金があるニャ?』 彰利  「グ、グムーーー……いいだろう!払ってやらぁ!なにせ俺は男じゃけぇのう!」 藍田  「俺もだ!」 悠介  「とか言いつつ、寝てる中井出の懐を探るのはやめような?」 彰利  「大丈夫!僕らの提督ならきっと許してくれるさ!!      許してくれなかったら実力行使で……クォックォックォッ……!      なにせ我らは既に、修行で1000レベルを超えた身!      いくら中井出が頑張ってようが、      成長した我らにかかればオワァアーーーーーーッ!!!」 藍田  「ど、どうした一等兵ギャアーーーーーッ!!!」 悠介  「?どうした?」 あまりに自分勝手な言い分をしていた彰利が、藍田と一緒に騒ぎ出す。 なにが原因なのかはいまいち解らなかったが─── 彰利 「に、にせっ……2785レベル!?」 藍田 「どういう冒険すりゃこんなレベルになるんだよ!!」 悠介 「冒険もなにも。守護竜であるカイザードラゴン、一人で倒してたぞ?」 彰利 「なんですってぇえーーーーーーっ!!?」 藍田 「カイザードラゴンっていったら高位精霊の守護竜だろ!?     弱いヤツからいかずにいきなり強ぇえヤツから!?     す、すげぇやさっすが天下の中井出さんだ!!」 悠介 「ハッキリ言うと、この世界での中井出は俺達より遙か上に居るぞ」 彰利 「グ、グムムー」 藍田 「ジョワジョワジョワ、それでこそ魔王って感じだぜ〜〜〜っ!!     いつか戦うのが楽しみってもんだ〜〜〜っ!」 彰利 「おお、戦う気満々!?」 藍田 「その方が面白そうだし。猛者全員で謀反起こしてみるっていうのも刺激的だ」 彰利 「そういや、死んで教会に送られた時に妙な違和感感じたやね。     なんだか町の皆様方が殺気立っててさ。悠介知ってる?」 悠介 「殺気立ってた?……いや、殺気立ってたってだけ言われてもな」 彰利 「いや、それがさ。巨大な魔王が世界を滅ぼそうとしてるとかなんとか。     聞いた時、なにがなんだかって思ったんだけど……     なんでも王国級のウォンテッド扱いされてるらしいぜ?その魔王」 悠介 「………」 巨大な魔王って……中井出だよなぁ。 もしかしなくても巨大化してるところを見られたのか? 悠介 「その噂を広めたのって誰か解るか?」 彰利 「西の大陸に居たヤツらしいけど」 ……なるほど、そういうことか。 中井出も苦労しそうだな。 ていうかエトノワールの王もおかしいとか思わなかったんだろうか。 何度か中井出とは会ったことがあると思うんだが。 ウォズトロヤ攻略作戦の本拠になったのがセントールとエトノワールなら、 それは間違いない筈だ。 それともその時、中井出はエトノワールではなくセントールに居て、 エトノワール王とは一度も会ってなかった、ということか……? 悠介 「中井出ってエトノワール王と会ったことあるか?」 藍田 「あるぞ?レイナートだよな?     ウォズトロヤ攻略の際、褒美として宝貰ったから間違いねぇぜ」 じゃあ……知っててウォンテッドにしたってことか。 藍田 「なんでまたそんなことを?」 悠介 「ああ……その巨大な魔王っていうのが中井出のことだからだ」 彰利 「な、なんだってぇえーーーーーっ!!?」 藍田 「ンな馬鹿な!だってレイナートのヤツ、提督をスカウトまでしたほどだぞ!?     我が国に入らないかーって!それなのに───」 ゼノ 「フン?悪となればたとえ相手がどうであれ悪と断ずる。     それが人間というものだろう」 藍田 「な、なんということ……!そうなのか……?」 彰利 「間違いじゃないねぇ。ホレ、実際悠介が空界で王様やってた頃、     小さな誤解であっさり国に裏切られてたっしょ」 藍田 「あ……そういや……」 悠介 「経緯はどうあれ、中井出は真実魔王になったってことだ」 彰利 「ほほう……つまりもうどの町にも入れねぇってことじゃね?」 悠介 「あー…………そうなるな」 藍田 「修羅の道を歩むか……ジョワジョワ〜〜〜ッ!さすが提督だぜ〜〜〜っ!!」 彰利 「パゴアパゴア!これから中井出がどう進んでいくのか楽しみだぜ〜〜〜っ!!」 二人はかなり楽しそうだが、中井出にしてみれば迷惑な話である。 けど町には入れない、か……アイテムとかはどうするんだろうか。 やっぱり猫から買うのか? と、思っていた時である。 ジャジャーーンッ!! アイルー『出来たニャ!』 ギシャーン!と光る剣を掲げ、汗を拭うように手を動かしてフゥと息をつく猫。 どうやら剣の強化が完成したらしい。 その横ではジョニーとジニーもマイトグローブと イブシ銀なんたらグリーヴを手に喜んでいた。 彰利  「その剣くれ!」 アイルー『あげるわけないニャ!』 藍田  「じゃあ売れ!」 アイルー『買うなら何十億はくだらないニャ。おたく、買えるニャ?』 藍田  「おっ……!?む、無理!無理無理無理!!」 アイルー『だったら他人の武器とボクらを侮辱するようなこと言うなニャ!      ボクが武器を横流しするとでも思ったニャ!?』 彰利  「お、おお……怒ってる……物凄く怒ってるぞ……」 藍田  「こいつぁ〜予想外だ……まさに……予想GUYデェス」 凍弥  「なんでもかんでも無遠慮すぎるんだよ彰衛門は……」 彰利  「えぇ!?俺だけなの!?」 藍田  「このクズが!!」 彰利  「キミにだけは言われたくない」 悠介  「お前らなぁ……話を進めようとか思わないのか?」 藍田  「おおそうだった。じゃあ10000$な。これで指輪を仕立ててくれ」 彰利  「なにぃ!?じゃあオイラも!」 夜華  「お、おい彰衛門。      その“いちまんどる”というのはどのくらいの数のことを言うんだ?」 悠介  「篠瀬、ドルじゃなくてドーラだ」 彰利  「クォックォックォッ、そんなの知らん。      この世界じゃ“ドル”じゃなくて“ドーラ”って言うらしいけどね、      オイラ達ン中じゃあ既にドルで通っとんのよ」 ほうっておくととことんまでに捻れていくやつらだった。 素直にゲームバランスに従う気はサラサラ無いらしい。 つくづく奔放な奴らだよなぁこいつら……。 ともあれ、金を持ってないやつは持ってるヤツから借りることで、 猫に指輪の精製を頼んでいた。 当然俺も雷の宝石を差し出すと、彰利から金を借りて注文する。 ……ちなみに水の指輪はもうセレスに渡した。 契約自体に嫌悪感を抱いているかもしれないが、 そこのところはセレスに頑張ってもらうしかない。 つくづく申し訳ないことをした。 彰利  「どのくらいで出来るん?」 アイルー『すぐニャ!ボクにかかれば契約の指輪の精製なんてあっという間ニャ!』 彰利  「ホホホ、ほうかほうか。だったらオイラは中井出のフェイスに悪戯書きでも」 藍田  「ジョワジョワジョワ、乗ったぜ〜〜〜っ!」 悠介  「なんの迷いもなく乗るなよ……」 溜め息を吐いても止まらないのは目に見えてるが、 それでも止めるだけ無駄だと解っていた俺はあえて止めないことにした。 強く生きてくれ、中井出よ。 ───……。 ……。 それからしばらくして……注文した全ての指輪が完成する頃には、 この場にみさおやゼット、そしてルナも到着していた。 彰利がtellを入れておいたんだそうだ。 ……もちろん俺への嫌がらせらしい。 実に彰利だ。 穂岸も呼んだらしいが、結構遠くに居たらしく、時間がかかるそうだ。 ルナ 「…………《じーーーー》」 悠介 「………」 で、俺は滅茶苦茶睨まれているわけだ。 つくづく思うが、どうして俺はこういう状況に追い込まれやすいんだろうか。 好きになる相手を間違えた、とかも含まれてると思うが、 今更他の誰かを好きになるなんてことは出来ない。 というかそもそもそんなつもりはさらさらないわけであり…… ああ……こんな風に思考に逃避するのもいい加減疲れたぞ……。 悠介 「まずはすまん《がぶりゃあ!!》いってぇええーーーーーーーーっ!!!!」 ペコリと頭を下げた途端に首筋に噛み付かれた。 相当怒っているとやる、迷惑行為の一である。 しかしこれ以前にもルナには散々とひどい思いをさせているため、 俺は抵抗できないわけで。 でも物凄く痛いのは確かなので、やめてくれとは言ってみるものの、聞いちゃくれない。 聞いてくれた試しも無い。 中井出「う、ぐぐ……?なんだぁ……?もう朝かぁ……?」 ナギー『むぐ……?何を言っておるのじゃ……朝なわけがなかろ……』 彰利 「ゲッ!やべぇ起きた!」 藍田 「こりゃいかん!とんずらぁあーーーーーっ!!!」 中井出「む……ハッ!?おのれ貴様らまさかっ!!」 彰利 「そう!そのまさかよっ!!」 藍田 「人が寝ていて、目覚めたら我らが居る……悪戯書きでしょう!!」 中井出「提督としてナイスだと言っておくが人としてはこの野郎と言っておく!」 ナギー『ぷはははははは!!ヒロミツ、ひどい顔なのじゃーーーっ!!』 中井出「えぇっ!?そこでキミが笑うの!?ちょっ……どんな顔してんの僕!」 中井出が起きだしただけで、周りの騒がしさが倍増した。 そんな中で俺は首を噛まれ、篠瀬は凍弥と話し合いをし、 ゼノはシュバルドラインと話し合い、セレスは俺とルナを見て、またですかと呆れていた。 みさおとゼットは猫と交渉中である。 ちなみに月の稀宝石は既に猫に渡し、契約の指輪ムーンストーンとして精製されている。 それに際して彰利や藍田が“大出費だちょ〜……”とか言っていたが、 それは出世払いでしか返しようがなかった。 ゼット「晦悠介。俺に無の精霊と契約させるつもりだったらしいな」 悠介 「ゼ、ゼットかいててててて!!」 ゼット「どういうつもりか知らんが、     敵に塩を送るほどの余裕が貴様には出来たということか?     ……まあいい。少なくとも今の貴様の目は嫌いではない」 悠介 「噛まれて痛がってる目を嫌いじゃないなんて言われても嬉しかないわ!!     いい加減離せルナ!いたっ───突き破る突き破る!それ以上はマズイ!!     こういうことするのは自分のレベルと俺のレベル考えてからにしろ!」 普段は猫みたいに掴み所がないくせに、 拗ねるとどうしてこうまで手がつけられなくなるのか。 ルナは俺が体を振るったところで決して離れようとはせず、 首筋にかぶりついたまま自分も揺らされるままに右へ左へと揺れていた。 悠介 「いてぇえーーーーーーっ!!!」 もちろん揺れれば噛みつきの痛みも増すわけで。 我ながら馬鹿なことをしたと猛省した。 ……当然のことながら、ルナにはその反省は届かなかった。 ───……。 そんなこんなで悶着の末に指輪は完成し─── その頃には穂岸も混ざった精霊契約予定者がここに集った。 彰利 「サンハイ!」 ライン「地」 セレス「水」 藍田 「火!」 夜華 「風」 悠介 「雷」 凍弥 「光」 彰利 「ヤミー!《ボゴシャア!!》ホシモス!!」 遥一郎「元」 中井出「然!」 みさお「時」 ゼノ 「死」 ルナ 「月」 ゼット「無……の予定らしいがな」 確認のためにと彰利が提案した呼び合いはこんなもの。 途中で彰利が中井出と藍田に殴られていたが、気にしないことにする。 彰利 「なんつーか……テンション低いよみんな。     もっと声を張り上げて言いましょうよ。つーかなんで俺殴られたの?」 中井出「魂吸も出来ない死神が軽々しくヤミーを語るなクズが」 藍田 「そうだこのタコ」 彰利 「ヤミーって言っただけで物凄い言われようだ……」 よく解らんがそういうことらしい。 悠介 「それで彰利、氷の指輪はどうするんだ?」 彰利 「うっふっふ、それももう手は打ってあるぜ?     この世界のみのマボロシですがね、氷といえば彼女です。     ご紹介しましょう───昏黄悠黄奈さんです!」 ジャジャーーン!! 彰利が効果音まで鳴らして通路の先を促した! ……しかし誰も居ない。 彰利 「アレ?」 悠介 「彰利……悠黄奈って」 彰利 「おお?ウムス、スッピーに頼んで     この世界のみのマボロシNPCとして復活を求めたんですよ。     そしたら“別に構わんがな”って。     ヘンだねぇ、呼んだら現れる手筈になっとった筈なのに」 中井出「そりゃあれか?ナビネックレスをつければまた───」 彰利 「あ、そりゃ無理。世の中そう上手くはいきません。     もう居ないヤツをホイホイ生き返らすのはもうルール違反だ。     それはもうやらないって僕ら誓い合ったでしょ?」 藍田 「誓い合ったっけ」 中井出「覚えがないなぁ」 彰利 「少なくとも僕らは誓い合ったんだよ!     そしてそれはノストラダムスの陰謀に他ならないんだ!!」 中井出「なっ……」 藍田 「なんだってぇえーーーーーっ!!?」 悠介 「いいから話進めろ」 三人 『御意』 何故か返事は御意だった。 彰利 「ようするによ?現実世界での死者蘇生はもういい加減にやめなはれって感じで、     ならばこの無限復活空間ヒロラインならば許されるのでは?     と交渉してみたところ、それならば構わんがなと言われたわけですよ」 中井出「ヘー……で、その悠黄奈さんは?」 彰利 「え、えーと……それがどうも居ないみたいでして」 藍田 「なにやってんだ一等兵てめぇ!企画通りの仕事さえ出来ねぇのかクズが!!」 中井出「見損なったぞ彰利一等兵!よもや期待させるだけさせといて出さないとは!!」 藍田 「このウエストポーチめが!!」 彰利 「ウエストポーチ!?ま、待ってください提督!     自分はっ……自分はきちんと計画通りの遂行を!     手違いがあるとするのならそれはゲームマスターの方にこそあります!!」 中井出「異端だ!!」 藍田 「ああそうだ異端だ!!」 彰利 「聞いてください!私は確かにこの耳で構わんという言葉を!!」 中井出「キミに必要なのは研究資金ではなく……耳鼻科と精神安定剤だよ」 藍田 「うっはっはっはっは!!」 彰利 「……皆さんにお配りしました資料をご覧ください。2ページ目に私の論旨の」 中井出「もう結構だ弦月くん」 彰利 「まだ何も説明していない!!」 悠介 「説明していないじゃない!!脱線するのも大概にしとけ!!」 三人 『ソ、ソーリー』 どうしてこうポンポンと脱線するんだよこいつらは……。 ツッコミ入れなきゃまともに話も進められないのが物凄く悲しいぞ……? 彰利 「でもね?ほんと居る筈なのよ?     セルシウスと人格融合させて向かわせるって聞いたから間違いないよ?」 中井出「けどさ、悠黄奈さんっていったら実際、     現実世界のセルシウスってことになるんだろ?     あの……なんつったか?幻獣のババアの所為で蝕まれた精霊と同化して、     そんで精霊になったわけだから……     つまりはそのセルシウスが降りるってことだろ?」 悠介 「あ、いや。確かに同化はしたんだ。けど、精霊の意識もやっぱりあったからな。     どっちかっていうとホムンクルスであった悠黄奈の魂の方が、     精霊の魂を支える形になったんだ。     だからどっちかで言えば現実世界のセルシウスは精霊側の意思が強い」 彰利 「そう。即ちこの世界に下ろした悠黄奈さんはそれこそ真実悠黄奈さん。     混じりっ気無しのこの美味さを醸し出す、純度100%悠黄奈さんさ!     ……でも何度も言うようだけど、現実世界に連れていくことは出来んぜ?     そりゃオイラも悠黄奈さんのことは大変惜しく思うけどね、綺麗なのに可愛いし。     じゃけんどそういうところはハッキリさせとかんと───ってあの夜華さん?     なして無言で刀抜こうとしてるの?」 夜華 「うん?───あ、いやっ!な、なんでもないぞ!?」 彰利 「?」 中井出(嫉妬だ……) 藍田 (静かなる嫉妬だ……) 中井出(きっと自分も綺麗とか可愛いとか言われたいに違いない……) 藍田 (あの篠瀬さんが……?さすがにそれはないんじゃないか?) 中井出(い、いや……間違いない。そしてそれを影で掌握しているのがノストラダムス!) 藍田 (な、なんだってーーーっ!!?) なにやらボソボソと話し始める中井出と藍田。 なにを考えてるのかはなんとなく解るが……口にしたら斬られると解っているんだろう。 深くはツッコもうとはしなかった。 みさお「あの。猫のテッドさんが向こうで女の人を見たって言ってますけど」 彰利 「なにぃ!?悠黄奈さんに違いねぇ!」 中井出「よぅし!ならばこれより悠黄奈さん捕獲大作戦を開始するものとする!     総員!準備が整い次第状況開始!!」 ザザァッ!! 彰利&藍田&ナギー『Sir(サー)!!YesSir(イェッサー)!!』 デンテテケテテンテテンテテンテテケテテッテーーン♪ デンテテケテテンテテンテテンテテンテテーーーン♪ デンテテケテテンテテンテテンテテケテテッテーーン♪ デンテテケテデンテテケテテーーンテテーーーン♪ 中井出「GO!!ゴッゴッGO!!」 彰利 「うおおおお!テリー教官に続け!!」 藍田 「遅れるな!見失ったらはぐれるぞ!!」 ナギー『解ったのじゃー!!』 バタバタバタバタバタ……!! 中井出、彰利、藍田、ドリアードの四名…… 彰利が月奏力で奏でるウォートラントルーパーズの音楽にいざなわれ、 通路の奥に消えていった。 悠介 「無駄に元気有り余ってるなぁ……」 凍弥 「悠介さんは?探しにいかないんですか?」 悠介 「俺はこいつがこれだからな……」 ひょいと、背中に抱きついたまま離れないルナを指差す。 困ったもので、さっきからこの状態のままである。 噛みつきはやめてくれたものの、これじゃあ上手く行動出来ない。 みさお「それはそれとして、無の稀宝石は何処にあるんでしょうね」 悠介 「親の苦労をあっさり流すなよ……。まあいいけどな。     無の稀宝石とか、精霊関連のことならマクスウェルに訊くのが一番だと思う。     さすがに俺は知らないな」 みさお「そうですか……ところであの、父さま」 悠介 「うん?どうした?みさお」 みさお「こう言うのもなんですが……よかったです、父さまが記憶を取り戻してくれて。     記憶を無くした父さまに会ったわけではありませんが、     やっぱりなにをするにしても父さまには父さまとして挑んでもらいたいですから。     記憶を消して一から、なんて……そんなの父さまじゃあありませんから」 悠介 「……そか」 ありがとな、と言うと、俺はみさおを頭をごしごしと撫でた。 照れくささからか少し強めに撫でてしまったが、 それでもみさおは気持ちよさそうにしていた。 悠介 「……まあ、そういうことだから。やっぱり俺は俺として先を目指すよ。     お前の意見はちゃんと受け取っていく。その上で、世界なんて守らない、     だけど守りたいって思うものだけ守る俺になっていく」 ゼット「フン、言うだけなら安いがな。だがなかなかどうして。     やはり今の貴様は好ましい。以前のような腑抜けの顔ではないだけマシだ。     せいぜい強くなれ。その時、貴様を叩きのめしてやるのが今から楽しみだ」 悠介 「ああ、受けて立つぞ?俺の中にはもう、きちんとした一本の芯が立ってる。     まっすぐに先を見据えて、そこまで一直線に突き進んで───     その道の途中にお前が居るなら容赦なく叩きのめしてやるさ」 ゼット「……そうか。クッハッハッハッハ……!!いいぞ、その目だ……。     以前の貴様にあって今の貴様に無かったものがそれだ……!     視界が広がった貴様は一点を見れなくなっていた……。     それ故に全てにおいて中途半端な貴様に成り下がっていた……。     以前の貴様は目的を貫かんと一点のみを見据えていたというのにだ。     それ故に貴様の目は濁り、今の貴様は好かなかったが……クッハッハッハッハ!!     愉快だ、実に愉快だ……!!今から楽しみだぞ晦悠介!     せいぜい足掻いてみろ!未来の貴様がどう出ようが、     世界がどう曲ろうがこの俺には関係がない!     俺は強くなる貴様をより強くなった俺の手で潰すことが生き甲斐なのだからな!」 みさお「……ゼットくん」 ゼット「っ───!!い、……いや、待てセシル。これは事実俺の生き甲斐だ!意地だ!     こればかりはお前になんと言われようが曲げる気はない!!     より強きを求め、より強き者と戦い勝つことを望む男でなにが悪か!!     なにも世界を滅ぼそうなどと考えているわけでも     力での支配を考えているわけでもない!」 悠介 「お前も苦労してるんだなぁ」 ゼット「黙れ!!」 泣く子も死を覚悟するって言われた伝説の黒竜王も、こうなると迫力がない。 でも実際はこんなもんなんだろう。 好きで黒竜王になったわけでもない。 平和に生きられたなら、 きっとこんな風にして平和に悶着していられる関係で居られたのだ。  ダララララララララ……ジャジャンッ!! と、そんなことを考えていると、突然鳴り出すドラムロールみたいな音。 どうせ彰利が鳴らしているんだろうが─── 彰利 「レディーースウェーーーンドゥ!───レディース!」 悠介 「女より男の方が多い状況でそれを言うか」 彰利 「ハイそこうるせぇーーーーっ!!えー、そげなわけで今度こそ!!     昏黄悠黄奈さんの!登場でェーーーッス!!」 ジャジャンッ!! 悠黄奈「〜〜〜〜……」 中井出「ささ、ここでズバーと前に出て………………アレ?ちょ、悠黄奈さん!?     なに背中にへばりついてるの離れなさい!!いや押さないで!!     ここキミが登場する場面であって僕が登場する場面じゃないんだよ!?     いやちょ……ナギー!ナギー!?この人剥がし───違うよ!!     真似して背中にへばりつけなんて言ってないよ!藍田二等、なんか言ってやって!     え?そんなこと言って、背中にあたる弾力楽しんでんだろ?───違うよ!!     そんなの楽しんでないよ!!ちがっ───なんでそこでエロマニアが出るの!     エロじゃないよ!楽しんでもないよ!     え……えぇっ!?それも違うよ絶望なんてしてないよ!!     楽しんでないからってなんで絶望しなきゃならないの!違うよ!そうじゃないよ!     ていうかなんであっという間に僕がいじられる状況が出来上がってるの!?     今の主役悠黄奈さんでしょ!?     ちょ、なに人のこと押して自分は通路に隠れてるの出てきなさい!!     みんなも何か言───違うよ!!     背中から弾力がなくなったのが悲しいから言ってるんじゃないよ!!     なんで僕=そういうことでしか考えられないの!やめてよ!     僕は変態じゃないよ……仮に変態だとしても変態という名の紳士───あ、あれ?     ちょっと悠黄奈さん?どうして僕に向けて手ェ翳すの?     え?その氷狼何処から出てきたの!?や、やめてよ!変態じゃないったら!     そんな目で見ていたなんてって言われたってどんな目だか僕もう解らないよ!!     全部誤解だよ!誤解だからやめ……ヴァーーーーーーッ!!!」 ……その日、狭い通路の途中に中井出の氷像が完成した。 実に理不尽である。 Next Menu back