───冒険の書157/主様が怒った日───
【ケース423:中井出博光/トラットリア・ドラえもん】 そうして……俺が溶ける頃には話は終了していた。 そこにあるのは話題豊富に話し合う人達と、置いてけぼりをくらった俺との深い溝だった。 そして俺に伝えられた唯一は、俺がどっかの町で魔王扱いされているという噂のみ。 神よ……俺にどうしろと。 まあとりあえずはマグニファイをストックに封入、と。 これ案外忘れがちだからな……気づいた時にはやっておかなければ。 今回は全部マグニファイでいいな。10分経ったら入れていこう。 と、そうやってストックをいじっていると、猫がテシテシと歩いてきた。 長老猫『大丈夫ニャ?旦那さん』 中井出「おお猫よ……大丈夫だとも」 寂しさ以外は。 と、遠い目をしていると、スチャッと差し出される武具。 どれも強化を頼んでおいたものだ。 そういえばまず指輪を受け取って問答してた所為で、大事な武具を受け取ってなかった。  コシャンッ♪《強化武具を受け取った!》  コシャンッ♪《代用武具を返した!》 武具を受け取った俺は早速それを装備すると、 代用として受け取っていたブーツなどを返して一息ついた。 おお、やっぱり自分の武具は心地がいい。 どうしてだろうね?同じ武具でもやっぱり代用とかだとモヤモヤする。 中井出「ぬ?」 しかし受け取った武具…… マイトグローブとイブシ銀メタルグリーヴにはべつに+はついてない。 代わりに名前がグレイトフルマイトに変わってたり、 イブシ銀ハイメタルグリーヴになってたりと、強化はされているようだった。 長老猫『防御力よりも属性の力に拘ってみたニャ。     カイザードラゴンの鱗にはバリアチェンジっていう属性変換能力があったから、     それを利用して底上げ出来る属性のものを貼り付けて強化したニャ』 中井出「おお、なるほど」 グレイトフルマイトをギュリィと握り締めてみる。 と、なんと炎が出るじゃないか。 もちろん持ち主にはなんの危害もないらしい。 これは……これはいいものだ! 続いてイブシ銀だが、これもまた雷の伝導が物凄くよくなっていた。 振るう足に雷の軌跡が流れるのがたまらない。 もちろん常時垂れ流し状態というわけでもないらしく、 出したいと思わなければ発雷しない様子。 これもまた素晴らしい。 中井出「……ゴ、ゴクッ!」 と来れば、あとはジークフリード。 チャキリと手にしたそれがキラリと輝くと、俺の心はまるで踊るようだった。  ◆稀紅蒼剣ジークフリード+1200  もはや疑ることなく地上最強の一本に数えられる武具の一つ。  最高の猫鍛冶屋と最高の弟子との間に完成した至高の一品。  これ以上強化成長することはないが、その可能性は無限に彩られている。  皇帝竜の素材をふんだんに埋め込み研磨し、強化出来る部分を強化し尽くした。  新たに加えた部分を集中研磨したため、一気に+の数が増え、より巨大になった。  もはや一般の鍛冶屋では鍛えることさえ適わない究極。  鍛えるには皇帝竜の角を加工して造った特製の道具を必要とし、それでなければ無理。  さらにそれを扱えるだけの技量と知識が無ければ、欠けさせることさえ出来ない。  *潜在能力:双剣化、技術スキル効果UP、固有秘奥義解放  ◆追加技術スキル  バリアブレイク:★★★★★☆/全属性ダメージが上昇  斬空剣    :★★★★★☆/空中に居る敵に大ダメージ  皇帝竜の逆鱗 :★★★★★☆/瀕死になると一定時間物理攻撃無効化  *補足:バリアブレイクは全属性強化とあるが、      全属性が使えるようになるわけじゃない。      つまり時の属性が強化されているといっても時属性の攻撃が無ければ無意味。     *斬空剣は空に居る敵───つまり、最初から浮いてようが浮かせようが、      ともかく空中に居る敵ならば大ダメージを与えることが出来る。     *皇帝竜の逆鱗は瀕死にならなければ効果が出ない。      物理攻撃以外は徹してしまうので、なかなか使い勝手が難しい。      が、それが物理攻撃ならばどんなダメージを負おうが生きていられる。      効果時間は約1分。基本的に戦闘中一回しか発動しないが、      HPを完全回復してから瀕死になると発動する。  ◆追加マグニファイスキル  エンペラータイム:絶対時間 制限がある技やスキルや能力を解放する。  *補足:エンペラータイムはマグニファイ中のみ、全ての制限を解放する究極潜在能力。      ただし効果が切れるとHPTPが1になり、衰弱状態になる。 ───……。 中井出「………」 早速調べるを実行してみたが、くそう、どうしてこう期待を裏切らないんだこの武器は。 やっぱり武器はいいなぁ、素材の全てを武器に託してよかった……!ほんとよかった……! 長老猫『気に入ってもらえたニャ?』 中井出「おおっ……おおっ……!!」 夢中になって頭を縦に振った。 なんてもんを……なんてもんを鍛えてくれるんやアイルーはん……!! 早速試し斬りを───といきたいところだが、さすがにここで暴れるわけにもいかない。 それに…… ナギー『?どうしたのじゃヒロミツ』 然の戒めの宝玉もまだそのままだしな。 中井出「よしナギー!この指輪の名の下に!貴様と契約を交わしたい!OK!?」 ナギー『OKなのじゃー!!』 即答だった。 いいのか、仮にも高位精霊との契約がこんなに簡単で。 しかしそう思っているうちに……なんとナギーは既に行動を起こしていたのだ!  シャラァアアン……ピピンッ♪《ドリアードと契約を交わした!》  ピピンッ♪《使用属性に“然”が追加された!》  ピピンッ♪《加護の昇華!然の属性が強化され、戦闘中HP回復速度が上昇!》 おおっ!?なんだかゾゾゾとログが埋められてゆく!! ナギー『どうなのじゃ?』 中井出「なんだかステキな感じだ!ていうか契約しても外に出てられるんだな」 ナギー『召喚される者として契約するのではないからの。     指輪の契約は“ともに在る者”としての契約を指すのじゃ』 中井出「エレメンタルジェレイドのリアクトみたいなもんか。     よし、というわけでここにおわしますは然の戒めの宝玉」 ナギー『どうするのか決まったのかの?』 中井出「持って力にするよりもナギーの力を解放してやったほうがよさそうだ。     だから壊す。それはもう狂おしいほどに壊す」 ナギー『そうじゃな。持っていればかなりの力が降りるが、     それはわしと契約したヒロミツには関係のないことなのじゃ。     わしの力はヒロミツに流れる。     つまり、それを壊して溢れた力は自然とヒロミツに流れるのじゃ』 中井出「そか」 そんなわけで───右手に掴んだ宝玉。 これを斬るわけでもなく叩きつけるわけでもなく、握力で破壊する。 中井出「はぉおおおお……!!《モキモキモキモキモキ……!!》」 震えるぞハート!燃える尽きるほどヒート!! 俺の右腕がまるでジョナサン=ジョースターの腕のように膨れ上がる!! 見よこの筋肉!美しい!……いや冗談です、そんなに筋肉ないです。 でもゴワシャアアンッ!! 中井出「《ゾヴシャア!!》オギャアーーーーーーーッ!!!!」 突如として割れた宝玉は、その破片で俺の手の平をこれでもかというくらい切り刻んだ。 大激痛。 これは痛い。 しかし戦闘しているわけでもないので、 破片はさっさと傷の外に弾かれると地面に落ち、傷は完治。 うーん、いつ見ても不気味だ。 ピピンッ♪《然の精霊の力が解放!!然の属性が強化!!》 ピピンッ♪《加護の昇華!然の加護がさらに強化され、全回復速度UP!》 オゴォ〜ン……《しかし属性が馴染むまでは然の能力が弱体化!》 中井出「ぬおっ!?」 いいことづくめじゃないか!と思った矢先にこれである。 宝玉として持ってないなら大丈夫かなぁと期待したんだが…… そう上手くはいかないらしい。 苦労して解放したっていうのになんたる仕打ち。 泣くぞちくしょう。 ナギー『力が溢れるようなのじゃ……!     これもヒロミツが命懸けで宝玉を手に入れてくれたお蔭なのじゃー!』 中井出「フフフ、この博光はな、ナギーよ。貴様のために戦ったんじゃないさ。     己が好奇心のため……ただそれだけのために戦ったのさ」 ナギー『それでもよいのじゃ。結果的に自然の力は解放されたのじゃからの』 中井出「そか」 ナギー『そこでなのじゃが……ヒロミツ?ひとつお願いがあるのじゃ』 中井出「おお、なんだ?なんでも言ってみるといい。聞くだけならタダだ」 ナギー『つまり面倒ごとなら叶える気はないということじゃな……』 中井出「貴様が我らの言葉を理解出来るくらいに成長してくれて嬉しいぞ、俺は」 ナギー『むー……。お願いというのは他でもない、然の関所のことなのじゃがな』 中井出「おお、あそこがどうした?」 ナギー『力が戻った今、一度あそこに戻って     フェルダールの自然の力を強めてやらねばならんのじゃ。     この世界がジュノーンの瘴気の所為で歪んでいっているのは知っておるじゃろ?』 中井出「おお……」 そういえばレアズ将軍からそんなことを聞いた気がする。 ナギー『じゃからの、それを食い止めるためにも一度あそこに戻り、     自然の力の底上げをしなければならんのじゃ』 中井出「そうか。そういうことならもちろんOKだナギー新兵!     あそこまでの転移は可能だな!?」 ナギー『任せるのじゃ!ロドリゲスも準備はよいか!?』 ルルカ『ゴエッ!』 中井出「うむよしOKだ!というわけで猫よ!」 長老猫『なにニャ?』 中井出「この大木を使ってなにか作ってくれまいか。     作ってもらってるうちにナギーの用事を済ませてくるから」 言いつつ、バックパックからズチャアア……!とトカホウテ謹製の妨害大木を取り出す。 長老猫『ニャニャ?これは……随分と硬い木だニャ。     材質といい強度といい……こんなもの何処で手に入れたニャ?』 中井出「すまん、もう入手不可能の伝説の木だ」 トカホウテ山が壊れちまったからなぁ……さすがにもう飛んでこないだろう。 長老猫『こんな木初めて見るニャ。     このボクでも知らない素材があるなんて……長生きはするものニャ。     13の猫技のひとつ!“キャット・アイ”!!《ギシャーーーン!!》』 猫の目が光る! ───…………が、解析不可能! 長老猫の眼力を以ってしても、分析することが出来なかった!! 長老猫 『ニャニャッ!?すごいニャ!これはあまりに未知な木材ニャ!!』 アイルー『師匠でも見切れない素材があるなんて驚きニャ!      旦那さん、これはきっといいものニャ!!』 そりゃそうだろ……ヘタな竜鱗よりもよっぽど硬いと思うぞ。 なにせ妨害素材だからな。 ぶつかるだけでプレイヤーを無力化させるようなヤツだ。 いいものじゃないわけがない。 長老猫『ニャ……ニャニャニャ……ニャア!《ゴギィンッ!!》ギニャーーーッ!!』 猫が皇帝竜の角を加工して作った鎚で殴った! が、まるで金属でも殴ったかのような音とともに弾かれた!! 長老猫『ど、どうなってるニャ!?木材の音じゃないニャ!!』 中井出「俺としては木材に金槌降ろす貴様にこそツッコんでやりたいが」 長老猫『職人はまず目と金槌で語るものニャ!     口ばかりが達者な職人にろくなやつは居ないと大工の茂吉さんも言ってたニャ!』 誰だ。 長老猫 『でもまいったニャ……      この金槌でヘコミもしないっていうことはよっぽどの素材ニャ。      ボクの腕でも加工出来るかどうか……』 アイルー『火で燃やしながら加工するのはどうニャ?』 長老猫 『多分無駄だと思うニャ』 言いつつ炎を用意する猫。 やる気は十分らしい。……のだが。 ゴォオオオオッ!! 長老猫『どうニャ?』 中井出「焦げ目ひとつついとらん」 長老猫『ギニャッ!?どういう木ニャ!?』 旅人を妨害するためにある木です。 恐らく既に、この世に唯一の伝説の木だ。 長老猫『も、申し訳ないニャ旦那さん……これはボクらの手には余るものニャ……』 中井出「………」 すげぇ……伝説の猫職人にまいったを言わせたぞこの妨害木材……。 中井出「ぬうそうか……仕方ない」 どうしたもんかなぁこれ……。 捨てるか?でも世界にひとつの伝説の妨害木材だしなぁ……。 …………。 中井出「あ」 いいこと思いついた。 これはきっと役に立つ。 いや、立たせてみせよう! 中井出「では癒しの関所へGO!!あ、皆さん僕は旅に出ます」 みさお「どうしてこんな時だけ礼儀正しいんですか」 中井出「どうせ僕魔王だもん!凍らされて話に置いてけぼりくらう魔王だもん!     だからこれからは魔王らしいこといっぱいして貴様らを困らせてやる!!     つまりこれは貴様らに送る最後の礼儀正しささ!いつでも来るがいいさ!     俺は魔王として、魔王に楯突く勇者どもを悉く滅してやる!」 悠介 「おお、やる気だな?」 彰利 「キョホホ……この我らと一人で戦う気か」 藍田 「いくら貴様のレベルが高かろうが提督、俺達全員を相手にするのは荷が重いぜ?」 中井出「えぇっ!?僕独りなの!?なにためらいも無く謀反状況で話進めてんの!     全員僕の敵!?いつの間に!?───ええいこうなったらどんとこいだ!     次に会った時は敵……!敵だ……!出会った時にはもう……始まってるぜ?」 彰利 「望むところだ……フフフ、その時こそ貴様の栄華が潰える時よ」 ゼット「魔王か。まあなんでもいいがな。強者であるならば俺は構わない」 中井出「OKだゼットよ。次会う時はお互いベストを尽くそう」 ナギー『もうよいかの?』 ルルカ『ゴエ』 中井出「OKだナギー、やってくれ」 ナギー『解ったのじゃ。───、……』 シュキィンッ!! ナギーが目を閉じて念じると、俺とナギーとロドリゲスを囲むように魔法陣が現れる。 転移魔法陣だろう。 やがてそれが高速回転を始め、俺とナギーとロドリゲスの体が浮き上がる頃─── 彰利 「提督……今までありがとう。楽しかったぜ」 藍田 「提督……女房思いのいいやつだった……」 中井出「死んだみたいに言うなよぅ!!うわぁあああん覚えてろてめぇらぁああっ!!」 大変失礼な言葉を贈られながら、俺は然の関所まで飛んだのだった。 【ケース424:弦月彰利/エポック】 マチュゥウウウウン……! 中井出が消え去ってゆくのを見届けたのち、妙な音とともに消えてゆく魔法陣。 それが消えるのを見てから、俺は改めて向き直った。 彰利 「そィで……これから契約しにいくわけだけど」 悠介 「ルナはグラウベフェイトー山に行けばいいだけだよな」 ルナ 「………」 悠介 「ていうかいい加減離れてくれ」 彰利 「はいはいルナっち?     話進まんからキミはとっととフェイトー山に行く。異翔転移」 キュイイイィイ───シュバァンッ!! 問答無用でルナっちをグラウベフェイトー山の修行場へ飛ばした。 ハフー、まったく世話の焼ける。 悠介 「異翔転移も出来るのか」 彰利 「オウヨ、これのためにま〜た月操力の鍛錬までしたよ。     いやもう懐かしくて懐かしくて。でも間違い無く死神としての力は上がったぜ?」 悠介 「そっか」 彰利 「クォックォックォッ……これで闇の精霊の力を得ればさらにステキに……!     今から楽しみYO!!……けど悠黄奈さんは氷の精霊自体なんだよね?」 悠黄奈「あ……はい。そうやって降ろされましたから、それは間違いないです。     でもわたしと誰かが契約出来るかといったらそうでもないようでして、     いわば氷の指輪はわたしの力を向上させるための     ブースターのような役割を果たしてくれるようです」 彰利 「ほほう、なるほど」 そりゃまた便利ですな。 オイラこれも闇の精霊と契約したりすると、ブースターみたいになってくれんのかね。 凍弥 「あの、話中断させて悪いけど、光の精霊って何処に……」 彰利 「OH?……そういや何処だっけ」 藍田 「光の塔だな。マーキングしたマップ送るからちょっと待て」 凍弥 「…………、なるほど、ここか」 セレス「水の精霊というのは?」 悠介 「セレスは始めたばかりだからな……ウォーテールって知ってるか?」 セレス「はい、マップでなら」 悠介 「だったらそこのすぐ近くにあると思うぞ?……そう、そこだ」 ゼノ 「ふむ。ならば死の精霊は何処だ」 ライン「地の精霊は何処だ」 悠介 「い、いや、ちょっと待て、順番に説明するから───ていうか藍田に聞け!     藍田の方が中井出といろいろ回ってた筈だから詳しい筈だ!」 みさお「そう言われることを見越していたみたいで、     光の塔のことを教えると早々に逃げ出しましたが」 悠介 「なっ……説明くらいしていけぇええっ!!」 悠介絶叫伝説。 しかし悲しいかな、恐らく藍田には届かんかっただろう。 ……つーか藍田の野郎、どうやって海渡る気なんかな。 やっぱ烈海王みたいに海の上走るんかね。 夜華 「わたしは風の精霊だな。位置は解っている」 彰利 「オイラももちろん解ってるぜ」 みさお「時は……時の大地でしたよね?」 悠介 「ああ。ここからなら近いな」 彰利 「何人かに分かれていくかね?オイラは夜華さんと小僧とで行くわ」 みさお「それならわたしはゼットくんと」 悠介 「俺はセレスと悠黄奈とで行こう」 藍田 「やあ、それで僕はなにをすればいいんだい?」 彰利 「説明の必要が無いと解った途端に戻ってきやがったこのクズめが!!     貴様バツとしてシュバちゃんとゼノよろしくね!?」 藍田 「うおおなんだか俺だけ雄度満載だ!どんなバツだよそれ!賑やか度ゼロじゃん!」 遥一郎「俺はマクスウェルだから、上か」 彰利 「オウヨ。んだばこんなもんかね?」 悠介 「だな」 オイラの言葉に全員がウムスと頷く。 OK、みんなやる気だ。 彰利 「ほいじゃあ精霊契約作戦を始めっとすっかぁ。     んじゃ夜華さん、小僧、行きますよ」 夜華 「ああ」 凍弥 「浮いてるなぁ……この中で俺一番弱いぞ……」 彰利 「そら、潜り抜けてきた死線の数が違うしのう」 夜華 「仕事にかまけて鍛錬を怠るからそんなことになるのだ。     いざという時に楓さまを守れなかったらどうする気だ」 凍弥 「そう言ってくれるな篠瀬……俺にだっていろいろあるのだ……」 彰利 「小僧、口調口調」 凍弥 「うぐっ……篠瀬と話すとつい……」 彰利 「ま〜だ直っとらんかったのかねそのクセ……」 案外しつこいやつである。 ともあれオイラたちはまず風の精霊を味方につけるため、 ゲイルヴァレイを目指して歩き出したのでした。 ……船が無かったから、泳いで。 【ケース425:藍田亮/精霊契約祭り・ノーム編】 ドゴォンッ!!……シュゥウウウ……!! 藍田 「というわけで、ここが地の精霊が住まう聖堂である!」 ゼノ 「………」《む〜〜〜〜ん》 ライン「………」《む〜〜〜〜ん》 藍田 「何か喋ってよォオ!!!」 天空に住まう原中の猛者ども……お元気ですか?藍田亮です。 今俺はゼノとシュバルドラインを連れて、ノームの洞窟に来ています。 でもさ、この二人の喋らねーこと喋らねーこと。 なんだか俺ばっかりがピチクパーチク喋ってるみたいで結構イタイ。 察しのいいお方ならばお解りだろうが、 こうなることが予想出来てたから、さっさと終わらせようと全速力でここまで来たわけだ。 で……ノームはっと…… ノーム『なんだの〜〜ん?騒々しいんだの〜〜〜ん!     ……のん?なんだのん?またキミのん?宝玉なら一個しかあげないのん』 藍田 「いや、それには及ばんのだが。契約してくれないか?」 ノーム『契約?契約って精霊の契約のん?』 藍田 「そう!」 ノーム『いやだのん。僕は静かに暮らすのが好きで』 ドゴォンッ!! ノーム『の、のん……!?』 藍田 「ごちゃごちゃ言ってねぇで契約しろって言ってんだよォオオ……!!     俺は早くこの無言空間から脱出してぇんだよ……解るだろォオ……?」 ごちゃごちゃと拒否空間を展開するノームの目の前で思い切り地面を踏み砕いてみせた。 ノーム『わ、解ったのん……!だから蹴るのはもうやめてほしいのん……!』 藍田 「そうそう、人間素直が一番だよ?拒否ばっかしてても碌なことねぇんだから」 まるでどっかの悪徳セールスだなぁなどと思いつつ、 シュバルドラインを促して契約を完了させる。 精霊自体はもう弱い部類に入ってるから、このまま突き進めればいいんだが…… 藍田 「じゃあ次は火の精霊を……」 ゼノ 「………」《む〜〜〜〜ん》 ライン「………」《む〜〜〜〜ん》 藍田 「何か喋ってよォオ!!!」 もう泣きたかった。 【ケース425:晦悠介/精霊契約祭り・ヴォルト編】 タンッタンッタンッタンッタンッ─── セレス「随分と登るんですね」 悠介 「ああ。無駄に高いのがこのテインジングマウンテンの嫌なところだ」 悠黄奈「本当に無駄に高いんですね……」 暗雲の下に聳え立つ雷の精霊が住まう山、テインジングマウンテン。 またここに来ることになるとは思ってなかったが、 二回目ともなれば何処をどう進めばいいかも解るってもので。 俺達はスルスルと登るべき場所を登っていっていた。 ……まあ、宝箱ももう無いしな。 以前はシコルスキーばりのロッククライミングで登ったが、 今回は正規ルートを駆けている。 もしかしたらバージョンアップで宝箱が増えているかもしれないが、 確認するよりもとっととイベントを終わらせる方を優先する。 悠黄奈「………」 チラリと横をフェンリルに乗って走る悠黄奈を見る。 セルシウスに悠黄奈の記憶をあてがって降ろしたって割には、 精霊っぽさのかけらもなく、髪は黒で肌も人の色をした彼女。 セルシウスと同化した手前、もう一度俺達の前に現れるのは恥ずかしかったらしく、 馴染むまで苦労したが───それでも最後には笑っていた。 それでも第一歩のきっかけになったのは中井出だ。 あいつが氷結化されるっていう事態が話し合う場を設けさせたといっても過言じゃない。 ……結果的にのけ者にされた感を出だしてイジケてしまったが。 悠黄奈「?どうしました?顔になにかついていますか?」 悠介 「いいや」 セレス「浮気ですか?」 悠介 「するかっ!」 じっと見ていたのを気づかれたようで茶化された。 浮気なんてことが出来るほどの威勢なんて俺にはないし、する気もない。 ていうかただ見てただけでどうしてそんなこと言われにゃならん。 セレス「でもこうして悠介さんと行動するのも随分と久しぶりですね」 悠介 「そうだな……家を出てからトントだ」 悠黄奈「出たっきりだったんですか?」 悠介 「ああ。戻る理由も無かったしな」 あれから解ったことだが、 悠黄奈の記憶はセルシウスと同化する以前のものだったってこと。 つまりあのコテージでの記憶が最後ってことになるわけだが─── だからそれ以降のことは知らず、 自分がどうして現界してるのかも知らなかったんだそうだ。 そういうフォローくらいしような、ノート。 そんなわけで中井出が氷付けになってた最中にした話っていうのはそういった経緯だ。 あれからどれくらいの時が流れた、だとかこんなわけでここに居るんだ、とか。 悠介 「……っと」 そんなわけで、早くも頂上である。 相変わらずそこにある魔法陣と、でも入り込む必要もなく出現しているヴォルト。 いきなり攻撃してきやしないかと軽く警戒しながらも、俺はヴォルトに近づいた。 悠介 「ヴォルト、俺と《バヂヂィイッ!!》うおぉっ!!?」 …………。 ピピンッ♪《雷の精霊との契約が完了した!雷の宝玉を得た!雷の加護を得た!!》 悠介 「…………オイ」 こちとら戦う気で来たんだが? 悠介 「………」 なんていうか、ニーディアとの契約のことを思い出すような瞬間だった。 悠介 「……降りるか」 セレス「そう……ですね……」 悠黄奈「なんだかものすごくあっさりです……」 悠介 「言うな……」 かつての空界じゃ、いろいろと苦労して契約していったっていうのに……。 もしかして他の精霊もこんな感じなんだろうか。 そんなことを考えて、ちょっと心配になった。 ───……。 ……。 そんなわけで水の地下神殿。 悠介 「俺はここから先には行かない方が良さそうだ」 悠黄奈「そうなんですか?」 悠介 「ああ。だからセレス、悠黄奈と行ってきてくれ」 セレス「はあ……解りました」 疑問符を浮かべながら、コケの生えた神殿へと歩いてゆく二人を見送る。 俺が行ったら機嫌を損ねるのは目に見えてるからな……。 ……などと待つこと数分。 セレス「契約終了しました」 悠介 「………」 やっぱり速かった。 なぁノート……あれは俺のみに架せられた試練だったんだろうか……。 一部を除いて、出会う精霊大抵と戦ってた自分が馬鹿みたいじゃないか……。 【ケース426:藍田亮/精霊契約祭り・襲撃編】 それは……ザム〜とノームの洞窟から出た時のことだった。 中井出「アイム魔王!!」 藍田 「なにぃ!?」 出たところになんと提督! そしてその後ろには黒ルルカ───ロドリゲスに乗ったナギーが! 中井出「グブブブブ……!精霊との契約をするならば絶対に来ると思っていた……!     こちらの用事はもう終了……!     終わってすぐにAGIマックスで走り回れば、     寄り道しようとこんな場所……あっという間よ!!」 藍田 「ぬう!何用だ提督!いやさ魔王!こんな場所にわざわざ来るなど!」 中井出「何用?決まっている!───貴様らをコロがして金を巻き上げる!おお魔王然!」 藍田 「そりゃ魔王じゃなくてカツアゲする不良って言うんだよ!!」 中井出「やかましい!もはや完全に魔王扱いされて町にも入れない俺は、     アイテム売って金にすることすら出来ねぇんだよ!!     だったらどうするか!?冒険者を襲うしかねぇだろ!!」 藍田 「しかしサー!いやさ魔王!猫に売ればいいだろうが!」 中井出「手に入れる度にわざわざあそこまで行けというのか貴様!!     少しはこっちの身にもなってみろちくしょう!!     試しに町に入りまくって、だけど追い返されまくって、     入れたのがサンドランドノットマットだけで、     しかも巨大英雄エロマニアとして奉られてた俺の気持ちが貴様に解るかぁあ!!」 うおっ!?血の涙!? 中井出「怒りだ!もう怒りしかない!!邪悪は人の意思ではなく心の一部!     この力を正しく扱うコトなど以って不可能!!     故に俺は魔王となってこの世界を変えてやる!     え?どう変えるのかって?……とりあえずなるようになれ!     なによりもまず魔王だからと差別されない世界作りをしたい!」 藍田 「うおお滅茶苦茶だこの魔王!なのにその滅茶苦茶っぷりに奇妙な魅力が!!」 中井出「ちなみにこっちのコレはエグゼクティブプロデューサーのナギー」 ナギー『先ほども会ったが、こうして話すのは久しいのぅ藍田』 藍田 「ナギ助がプロデューサーなのか!?」 中井出「いや全然。言ってみたかったことを言ってみただけだ!!     さあ来るがいい勇者よ!どうせ俺は魔王だよ!」 藍田 「提督てめぇ!ただイジケてるだけだろ!!」 中井出「イジケてなんかない!俺はいつでも全力投球!」 微妙に話が噛み合ってない気がするんだが……。 中井出「というわけで藍田ニ等兵!貴様の金!この博光が半分頂戴する!!」 藍田 「じょ、冗談じゃあねぇぜ!この金溜めるのにどれだけ俺が苦労したか!!     フェイトー山でモンスター倒してチマチマ稼ぐのって大変なんだぞ提督!!」 中井出「どぅあぁあーーーーまらっしゃぁああーーーーーい!!!     僕はもういい子じゃいられないんだ!!     でも多分貴様の金を巻き上げれば気が済むと思う!     火でも死でもなく、まず地に来たことを後悔するがいい!!」 藍田 「こ、この最低野郎!!こうなったら実力で突破してやる!!武装錬金!!」 ゴワシャァアンッ!! 胸に手を当てて武装解放! すると肌が灼銅、髪が蛍火色に変わってゆく! 藍田 『“黒戦撃足装(バトルグリーヴ)”の武装錬金!“暴走せし闇紅の具足(ダークネス・ランペルージュ)”!!』 中井出「それが今の貴様の武器か藍田二等!ならばこちらも全力で───出し抜く!!」 藍田 『なにぃ!?』 中井出「アレルギー!全開!!」 藍田 『アレルギー!?』 提督が出現させ、長剣化させた巨大剣が毒々しいオーラを宿す! それを見ていったい何事かと思った───まさに次の瞬間!! 中井出「“ビースティングスラッシャァアーーーーーーーッ”!!!!」 打突の状態で剣を固定した提督が一気に飛翔してきたのだ! その速さといったら馬鹿げたもので、 それは既にかつて我らと冒険をした提督のものでは無くなっていた!! 藍田 『ぬっ……ぬぁあああああっ!!!《ゾシィッ!》いづっ!?』 なんとか避けた───が、腕を掠めた。 と思うや突如体を襲う状態異常の嵐!嵐!!嵐!!! 毒に侵されるわ痺れるわ、眠くなるわで散々である。 おまけにニコリと笑うと俺の前でパルプンテと叫ぶと、 なんとその口から───! 藍田 『おぉおおおーーーーーぅえっふえぇええええっ!!!ゴォウェッ!!!!     くっせゴェエエエエエッ!!!おぇえっ!!!ぶぅうえぇええっ!!!』 モハァーーーと臭い息を吐いてきたのだ! しかもその臭さが尋常ではない! 涙と咳と嘔吐感が次々と襲い掛かってくるくらい臭い!! しかも提督は俺がそうやって苦しんでいる隙に───!! 中井出「うげぇえええっ!!おぉぅううええええええっ!!!げぇっふぇ!!     おげぇえええええっ!!うぅううえぇえっ!!」 ……吐いていた。 藍田 『提督てめぇ!自分さえ臭いようなオォオオオゥヴェェエエエッ!!!!     げっほ!うぇえええええ!!げぇええ……《キラキラ……》』 中井出「爆弾投げが欲しかったのにオエェエエエエエッ!!!!げぇえっへえぇえっ!!     う、おぐぇえええ……!!《ゴバシュッ!キラキラ……》」 それに対してツッコミを入れようとするも、そうやって息をするだけでも吐くくらい臭い。 俺と提督はまずその場から逃げるように走り出し、 風に身を委ねるようにして動き回ってまず臭いを消した。 藍田 『なんなんだよありゃあ!危うく臭さで死ぬとこだったわ提督てめぇ!!     あまりの臭さに痺れも忘れて走ってたわ!!』 中井出「なんなのかってそんなもん俺の方こそ聞きたいわ!!     俺だってこんな能力欲しくなかったよ!!」 藍田 『ヘンテコな冒険してんだなぁ……さすが提督』 中井出「褒めてないよね!?それ褒めてないよねぇ!?     おのれこの博光もう辛抱たまらん!!いくぞぉ藍田二等!!」 藍田 『来い提督!天界での修行で強くなったオラの力、オメェに見せてやっぞ!     もはや貴様のコテコテの我流剣術なぞ、基礎を完全に固めた俺には通用せん!』 中井出「ふははははは!!そうか!原中ともあろう者が型に嵌まったか!     ならばこの勝負!どう足掻こうが貴様の負けだ!!」 藍田 『なにぃ!?』 中井出「だが3分……3分間生きていられればうぬの勝ちだ。     見事3分生き残ってみせるなら、うぬは確実に勝利することになるだろう」 藍田 『3分……?おのれ回りくどい!なにが言いたい提督!』 中井出「全てのものには型に嵌まったもの以外に奇跡があると言っているのだよ藍田二等!     さあいくぞ!マグニファイ!!」 ジョガァッキィンッ!!《中井出の武器の力が解放された!》 藍田 『3分って……なんだ、マグニファイのことか?2分からまた伸びたんだな』 中井出「そして───エンペラータイム」 ゴコォッキィイインッ!!! 藍田 『エンペラータイム……?よく解らんが、     貴様の黄竜剣もミニエクスカリバーも、全部避けちまえば怖くはねぇ!     俺が気をつければいいのはたったの10秒間だ!』 中井出「藍田二等……その油断こそが、貴様がこの魔王に勝てぬ真の理由よ。     常識に囚われてしまった愚か者め、ここで一度己の愚かさに嘆くがよいわ」 藍田 『ジョワジョワジョワ!愚かさに嘆くのは貴様の方だぜ提督!     そうやって喋ってる間に───ホレ!もう10秒だ!     もはやミニエクスカリバーは放てん!次はなんだ!?黄竜剣か!?     残念だがな提督!貴様の戦い方なぞもう見切って───……な、なに……!?     馬鹿な!こ、こんな───まさかぁあーーーーーーっ!!!!』 ギシャゴバドンガガガガガォオオンッ!!!! ───…… 【ケース427:中井出博光/中井出博光……人間ですよ。ちょっと職業が魔王ですがね】 ザァアアアッ…… 中井出「成敗!!」 塵になって神父のもとへと送られていった三名を見送った。 藍田がやられるのを見て、 面白いと言って強襲してきたゼノさんとシュバルドラインをも塵と化し、 本当に3分経つ前に倒せてよかったと心の底から安堵。 中井出「エンペラータイム……とんでもない能力だけど、ペナルティが痛すぎるよなぁ」 能力は、力の究極解放。 制限のある能力…… たとえばマグニファイ中一回しか放てない黄竜剣をマグニファイ中のみ無限に放てるとか、 ミニ黄竜斬光剣を無限に放てるとか……とにかく持っている能力の限界を解除する。 つまり羅生門も撃ち放題だし、やろうと思えば双剣状態でも黄竜剣が使える。 その代わり、3分……つまりマグニファイの効果時間が尽きるとHPTPともに1になり、 衰弱状態でしばらく動けなくなる。 エンペラータイム中はストックの使用が出来なくなるっていう限定条件があったりと、 そこのところはストック解除マグニファイで延長させないようにと仕組まれている。 衰弱化しない条件はただ“勝つこと”。 勝利すれば安心なわけだ。 ……ちなみにエンペラータイムを使うか田舎……ではなく否かは任意であり、 使用しない限りはストック解除でもなんでも可能。 でもマグニファイの時間内でしか効果が無く、 たとえば残り10秒の時に使ったりしたら 10秒で効果が切れてHPTP1で衰弱状態に移行。 使用には十分な注意が必要です。 とにかく大勢との戦いの時に使っちゃいけない能力ダントツナンバーワンだね。 逃げ回られたら終わりだ。 ……それと明らかに強すぎる相手はダメです。死にます。 べつに無敵状態になれるわけじゃないからね……。 中井出「ひぃふぅみぃ……ホッホォ〜〜〜ッ、持っとるのォォォォ!!」 ともあれ俺は金を得た! 藍田二等のヤツめ、地味にこんなに溜め込んでおったわ……! さようなら善良だった僕。 そしてようこそ、邪悪色に染まった魔王の世界。 中井出「魔王になったらまずなにをするか……よく考えたもんだなぁ」 ああ懐かしい。 ではまず何をするか。 ナギー『魔王とは何をするものなのじゃろうな』 中井出「それ、自然の精霊であるキミに訊かれると物凄く複雑」 でもナギーに言わせれば、 自然さえ故意に破壊しないのなら何をしても構わんのじゃーとのこと。 まったく、強い子になったもんだ。 中井出「だが一つだけ言えることがある。今のこの博光のような力の使い方をしないこと。     これでは魔王ではなくただのカツアゲ人だ。     まあそれも魔王っぽくなくてステキなんだが」 自分で言うのもなんだが、自分らしくなかった気がする。 だから気をつけよう。 中井出「さてナギーよ。これからの行動についてだが───」 ナギー『おお、どうするのじゃ?』 中井出「………」 ナギー『?』 少し前のことを思い返してみる。 すると、町という町へと走りまわるきっかけとなったことが思い返された。 癒しの大樹がある関所に行った俺達は、早速関所に入り─── 森人にあっさりと“おのれ魔王め!”と言われて追い出された。 ナギーはあっさり迎えられ、その力を以って自然の力の底上げをして、 止められようが無視して出てきたのだが……僕は結構ショックだったりしたのです。 で、何気なく近場の町でアイテムでも買おうかってことで、 町に入ってみれば魔王だ〜と叫ばれる始末。 なにがなんだか解らないうちに追い出され、 まさか本当に完全魔王扱いなのだろうかといろいろな町に回ってみたが…… 結果、迎えてくれたのはサンドランドノットマットのみ。 しかも中井出博光としてでなくエロマニアさんとして迎えられた。 怒りだ!もう怒りしかない!!とヴィクターの真似をしたくもなる。 だから少しヤケになってしまった。今は後悔してる。 でも軍資金は必要なので返しません。 中井出「けどまいったなぁ。     アイテム買うのも猫、アイテム売るのも猫じゃあちょっと面倒だ」 ナギー『いきなりなんじゃ?』 中井出「いや、これからの話」 他の守護竜がどれほど強いのかは解らんが、 そこらのザコモンスターより弱いってのは無いと思うのだ。 ザコモン以上カイザー未満は当然か。 どちらにせよ、気を引き締めていかねば〜〜〜っ! 中井出「ていうかさ、妖精の世界を救うべく戦いに出たのに、     その妖精が隣に居ないでナギーが隣に居るって変な話だよね」 ナギー『ヒ、ヒロミツはわしのことなぞ要らんと申すのか!?』 中井出「や、そういうことを言っているのではなく」 ガーンと一人でショックを受けているナギーの頭を撫でる。 妖精を救うクエストなのに、妖精が居ないのがヘンだなぁと思ってみただけなんだが。 それもこれもバージョンアップの所為だったんだが、 せっかく穂岸と合流したのにエィネを連れてこなかった俺が言えたもんじゃないよね。 中井出「よし、じゃあ次は……アースドラゴンいってみるか!」 ナギー『おお!またドラゴンなのじゃな!?』 中井出「うむ!そして地属性はあまり使わないような気がするので地!!     つまり自動的に火と風のどちらかが最後からニ、三番目になる!」 ナギー『む?じゃあ最後はなんなのじゃ?』 中井出「元素」 ナギー『何故じゃ?』 中井出「よく考えるのだナギーよ……我が宝玉は元素。     その能力が解放された時、この博光が持つ属性の全ては機能しなくなるのだ。     そんな状態で他のドラゴンと戦うなど……そりゃ無理ってもんだ」 ナギー『おお、なるほどの』 中井出「だからラスト三つは……風、火、元って感じになると思う。     もちろん俺じゃなくて他の誰かが倒すこともあるんだろうけど……」 誰かやってくれるだろうか。 …………やってくれないだろうなぁ。 中井出「まあ、ともかく頑張っていこうと思うわけだよナギー新兵」 ナギー『なるほどのぅ……ところでヒロミツ?さっきの大木はどうするのじゃ?     埋めて自然に帰すのかの?』 中井出「フフ……いいや、もっと素晴らしいことに使うのさ。     ロドリゲスにしがみついているといい。貴様に素晴らしいものを見せてやる。     ……出来たらの話だけど」 ナギー『素晴らしいもの?……解らんのじゃ』 中井出「楽しみとはな、誰かに言われて知るものじゃないのだよワトソンくん」 そんなわけで……居た! 俺は手頃なザコモンスター一体を見つけると、すぐさま斬鉄剣を発動!! すると暗雲からゴファアアと出てくる日向くん似の主神様! その手には───YES!グングニル!! オーディン 『………!』 スレイプニル『ルォオオゥヒヒィイイインッ!!!!』 スレイプニルが前足四本を高く上げ、一気に降ろす! その反動を以って、いつかしたように投擲されるグングニル!! オーケーブラザー今しかねぇ!! 中井出「おぉおおおりゃぁあああああっ!!!!」 物凄い速度で放たれる紅蓮の槍!! その軌道上に飛び込み、咄嗟に取り出だしましたるは───あの大木!! 中井出「ストレングス───全開!!主神槍大木落としィイイイーーーーーーッ!!!!」 ドガァアアッキィイイイイインッ!!! ズガァアアガガガガガォオオオオオンッ!!!! 中井出「《メキィイッ!!》ぐぅうううっ!!?」 グングニルを大木で受け止めた───が! なんと伝説の大木が悲鳴を上げ始めた!! 馬鹿な!インチキするプレイヤーを叩き落すためにだけに精製された、 強度も用途も適当なこの伝説の大木が───く、崩れてゆく!! 中井出「く、おぉおおおっ!!が、頑張れ木!負けるな木!!     俺も絶対に───負けん!!マグニファイ!!《ジャキィンッ!!》」 押し負ける力をマグニファイで倍化!! しっかりと大地に足を付き、崩れてゆく大木を抱き締めながら、 グングニルの勢いを少しずつ、だが確実に抑えてゆく!! オーディン『……!?』 あ、今偶然チラリと見たけど、 オーディンが“呼んどいていったいなにをしてるんだ”って顔で俺を見た。 中井出「なにをするって……!?こんなことするからには───     やることなんて一つに決まってんだろうがよぉおおおーーーーっ!!!」 ガギィイイイイギギギギギッ───パガシャァアアンッ!!! 中井出「───ッ……!!」 壊れた……僕らの夢を乗せた伝説の大木が……!! だが……ああ、だが……!! 今ここに、同じく勢いを無くした主神の槍が……!!  ガッシィッ!! 中井出「よしナギー逃げるぞ走れロドリゲスいいから速く!!」 ナギー『な、なに!?もしやヒロミツ!おぬし───』 中井出「はっはっは!喋ると舌噛むぞぉーーーーっ!!」 ルルカ『ゴェエエエーーーーーーッ!!!!』 逃走開始! 俺は勢いが消え、落下しようとしていたグングニルを手に取ると大激走開始!! なんだか状況が理解出来ず、 ポツンとスレイプニルに跨ったまま固まっているオーディンを置いて逃げ出した!! ナギー『おぬし最初からこれが目的じゃったのか!?』 中井出「それは違うぞナギー!最初はあの大木で武器が作れればよかったんだ!     だが作れないとくれば───盾に使うしかないだろう?」 ナギー『し、しかしの!主神からモノを盗むとは───!』 中井出「ナギーよ……我らの鉄の掟とはなんだ?」 ナギー『常に常識に挑戦状を叩きつけることなのじゃ!!』 中井出「その通り!!相手が主神だろうがやりたいことはやる!!     それが僕らの原ソウル!!解るかナギー!これはゲームなのだ!!     命というチップを賭けた主神との戦い!!決着は奪い切れるか殺されるか!!     魂を賭けようと言われればグッドと言いたくなるような状況ではないか!!     そして理解しろナギー!ゲームの世界に階級なぞ関係無い!!     ゲームという戦場では皆平等……死ぬ時は死ぬし生きる時は生きる……。     ここは俺達が後人生を賭け、死力を尽くしている……言うなら戦場だ……。     戦場で主神だから主神だから…………と遠慮する馬鹿が何処に居る…………?     居たら物笑いの種にされるだけだろう…………。     戦場では騙し打ち不意打ちが日常…………。     皆……なんとか相手の寝首を掻こうと……     後ろに回ろうと……策を巡らしている……それが真剣勝負というものだ…………。     俺は今、ただ……オーディンという一人の男に賭けを挑んだ…………!     それだけ……ただそれだけだ…………!散れっ……………………!!」 ナギー『む……そ、そういうものかの。     しかし相手が主神でも容赦しないとはの、さすがはヒロミツなのじゃ』 中井出「よせやい、褒めたってなにも来たァーーーーッ!!!」 返事と同時に少し横を向くと、視界の隅に動く影! そう、それこそまさに僕らの主神オーーディーーーン!! ありえん!なんとありえん速さか!! 足がいっぱい生えた馬はやっぱり速いもんなのか!? どう見たって走りづらそうに見えるんだけどなあ!! そうこう思ってる間にもう追いつかれそうだった。 ええい仕方ない!今はまずナギーの転移で逃走を謀ろう! 全てはそこからだ!なんだか逃げても追ってきそうだし! 中井出「ナギー!転移ゴー!」 ナギー『わ、解ったのじゃー!!』 言った途端にナギーが詠唱を開始! すると我らの体の周りにやはりまた魔法陣が現れ、僕らを浮かしてゆく! オーディン『ヌゥウウウオォオオオオッ!!!』 中井出  「お前は速かったよ……でも、間違った速さだった」 やがて我らが消えた時、オーディンはもう間近まで迫っていたが…… 結局攻撃をくらうこともなく、転移は完了したのだった。 Next Menu back