───冒険の書158/VS主神オーディン───
【ケース428:中井出博光/シャンドラの火を灯せ!凡人の誓い!】 ───ギピンッ!《マグニファイをセットしました。空きストックは2個です》 中井出「よし!」 ストック準備完了! 許されるならあと二つにもマグニファイをセットしたいが…… そう何十分も放置してくれるほど心やさしい主神じゃない気がする。 だがアイテムもナギーに買ってきてもらって準備完了! もちろんアレも準備完了! さあ……どっからでも───! オーディン『ヌゥウォオオオオオッ!!!』 中井出  「来たァアアーーーーーーッ!!!!」 持ち主だからだろうか。 あっさりと予想通りに俺の居場所へ至り、 声を高く張り上げるとともに俺のところに向かってくる! しかしそもそも距離が大分あったためか、ここに辿り着くまでの時間は自由に出来た。 ───ここは癒しの関所からかなり離れた平原。 ある種の実験だったが、やっぱり迷わずここに来たってことは、 俺の居場所を特定出来るっていうこと。 それじゃあ安心してグングニルを持ったままに出来ないし、 なにより俺は槍もそうだがあの斬鉄剣が欲しい!! だから挑む!死のうが構わん!ナギーに説得してもらって、神父なら連れてきてある! 中井出「わぁーーれこそは原中が提督!中井出博光である!     髪の色、黒!瞳の色、ブラウン!職業、魔王!特技───…うおお思いつかん!     え、えーと……思考映像化?ええいそんなものはどうでもよいわぁーーーっ!!     ともかく貴殿にバトルを申し込む!そして外道の限りを尽くしてでも勝つ!」 両手の霊章から双剣を出現させ、強く振るうとともに高らかに叫ぶ! しかしながら生態は気になるもの。 だからオーディンがこちらに辿り着く前に、眼鏡をクイッと上げる動作をしつつ、 中井出「“インスペクトアイ”!!《テコーン♪》」 調べるを発動。 すると明かされるオーディンの生態!! 中井出「ふむむ……!?光属性での攻撃は回復、     他属性は50%の確率で無効化───なんだってぇーーーっ!?」 じゃあ属性攻撃まったくダメじゃないか!! 中井出「お、おのれ主神!!卑劣だとは思わんのか!!     こちとら苦労してバリアブレイクっていうステキスキルを手に入れたってのに!」 ナギー『ヒロミツ!それは今のおぬしが言っても説得力がないのじゃ!』 中井出「当たり前だ!見縊るな!!」 ナギー『どういう返事なのじゃ!?』 卑劣上等!でも相手にやられると辛いのがジャイアニズム。 でもスレイプニルはまた別のようで、属性への耐性はゼロだ。 まず狙うなら、あいつってことになるなぁグオッフォフォ。 ともかくナギーとロドリゲスと神父を少し離れた場所にある森に避難させ、 俺は剣を手に走り出した。 え?今なら強いヤツと戦うのはワクワクするかって? するわけないでしょそんなの!怖いよほんと! だが欲しいものは手に入れたい!それを手に入れるためならば! 過程や!方法など!どうでもいいのだァーーーーッ!! ……しかし!だがしかしだ!! 中井出「やっぱでけぇええーーーーーーーっ!!!」 そう、デカいのだ! カイザードラゴンほどではないにしろ、巨人くらいデカいのだ! しかもスレイプニルに跨った状態だから余計にデカい!! ならまずはどうするか!? ───スレイプニルをなんとかするしかあるまいよ!! もしものために仕掛けておいたアレを発動する時が早くも来たようだぜ〜〜〜っ!! 中井出「紅蓮に地!蒼碧に雷!連ねて一つの力と成す!“地雷震”!!」 地と雷を剣に込め、一つの力に変換! そうして振り上げた剣を大地に突き刺すと、 剣に込められた雷が大地を走ると同時にドッゴォオオオンッ!!! オーディン『ヌゥウウ!!?』 強烈な地震を引き起こし、仕掛けていたトラップを発動させる! 深く掘り、薄く膜を張るように仕掛けておいた特大落とし穴だ。 当然空ではなく地面を駆けていたスレイプニルはバランスを崩し、 穴の口に足首を強打したのちに落下! オーディンはその反動でスレイプニルから振り落とされるが、見事に着地してみせた。 中井出「ぬおっ!?」 なんということ……! オーディンも落とす予定だったのに……! だがまずオーディンが体勢を立て直しているうちに───!! 中井出「マグニファイ&STRマックス!“メテオレイン”!!」 穴に落下したスレイプニル目掛けて全力メテオレイン!! もちろん一発で終わるなんて思ってないからミニ黄竜斬光剣も放ちまくり、 トドメに自ら落とし穴に急激に落下しての─── 中井出「“黄竜剣”!!くぅううたばれぇえええーーーーーーーっ!!!!」 容赦無用の黄竜剣!! ギシャゴバァアアォオオオオオンッ!!! スレイプニル『クキィイイヒヒヒヒィイイイン…………!!!』 防御を捨てた全力攻撃で……とりあえずスレイプニルは殲滅! それを確認するやステータスを元に戻してから落とし穴から飛び出る。 機動力の幅はこれで殺せた筈……そして確信。 こいつはカイザードラゴンより強くはない。 そりゃそうだ、それだけ強かったらゲームバランスに亀裂が走る。 カイザードラゴンがグングニルや斬鉄剣であっさりやられるようなら、 俺の苦労って物凄く報われないし。 けど……これで状況はリセット。 間違い無く一対一の状況を作り出せた俺は、 マグニファイの加護に包まれたままオーディンを見据える。 オーディン『………』 対する騎馬を無くした主神は、斬鉄剣をギリ……と強く握ると、俺を見据える。 双方ともに盾は無い。 あるのは己が信じる武器のみ───!! 中井出  「………」 オーディン『………』 はぁ、と息が漏れた。 無鉄砲にこんな状況作り出してしまったが、勝算なんてものは何ひとつとしてない。 いっつも無鉄砲に動いては、楽しむためのみに事態を悪化させ、 辛酸を舐めるハメになるんだが……だがもはや後悔の一片たりともあろうものか。 起こした物事には責任を以って向き合おう。 それが僕らが決めた原中魂。 ……もっとも逃げる時は逃げるけど。 そんな考えが、あるものをチラリと見た途端に浮上した。 中井出「………」 この世の生物全てを斬滅すると謳われる、 魔剣とも聖剣とも、バルムンクともグラムとも言われている伝説の刃。 鉄さえ容易く斬り裂くその名、斬鉄剣。 どれほどの威力なのかは正直解らないが─── 奪うと決めたからにはもう略奪は始まっているのだ。 言葉ではなく心で理解しろ。 ブン盗るって思った時には博光!既に行動は終わっているんだぜ!! 中井出  「臆さぬならば!かかってこい!!」 オーディン『───!』 その言葉が引き金となった。 俺の身長の2、3倍はあろうかという巨漢は片手に持った剣をさらに握り固めると、 地面を蹴り砕くように疾駆を開始。 対する俺も地面を蹴り、マグニファイが消えてしまう前に全力でぶつかり合う!  ドガァアアッギシィイイインッ!!! オーディン『フンンヌゥウウウウッ!!!』 中井出  「ふぅうううおぉおおおおっ!!!!」 ゴルフボールを鋭く打つかのように振るわれた、 救い上げる剣の軌道へと自分の剣を重ねる。 その威力と風圧に吹き飛ばされそうになるのをなんとか堪えるが───こりゃあ……! オーディン『ぬぅんっ!!』 ヴオドゴォンッ!! 中井出「ぐぅえっ!?」 片手で振るう相手に対し、俺は両手で押さえていた。 そこを突かれ、振るわれた巨大な足が俺を蹴り飛ばす。 しかもそうやって吹き飛ぶ俺を追い、再度疾駆する姿はまるで─── 中井出「こんのっ───」 剣に風の属性を込め、飛ぶ方向とは逆に吹き荒ばせる。 そうすることで急ブレーキ代わりにし、 それだけでは止めずさらに一気に噴出させた風でオーディンへ向けて飛翔する! 中井出「“バリアチェンジ”!!」 そうすることで体が完全に風に乗ったところで属性変換をし、剣に炎を宿す。 そして、変わらず俺へと突撃してくる巨漢へ向けて───!! 中井出「“緋凰絶炎衝ォオオッ”!!」 一気に飛翔し突き、滑るように着地すると同時に折り返しで疾駆! 振り上げるように剣を斬り払い、その足を斬りつけるとともに、 中井出「焼き尽くせェエエエーーーーーッ!!!」  ドンガガガガガガォオオンッ!!!! 疾駆した軌道を追う炎がオーディンの体を焼き、爆裂させる! ───しかし。 オーディン『ヌゥウウウンッ!!』 ヴオッ───ゾゴォッファァアアアアアンッ!!!! 中井出「オ、ア───!?」 振り回した剣を地面に突き立てると、その風圧で炎の全てが消滅。 さらに焼けていたと思っていた体はどこも焼けてなどおらず─── 中井出「は……はは……!やっぱ……50%の確率で無効化ってのは……!」 設定ミスでも冗談でもなかったってことだ。 オーディン『なんという児戯、なんという幼い戦術……。       全てにおいて粗が目立ち、先を考えぬ無鉄砲な戦い方。       力のみでこのオーディンに挑もうとは。       汝の無謀なる豪気、ほとほとに絵空なる幻想。       今すぐ神槍を返却するがいい。汝では我には勝てぬ』 中井出  「フフフ……粗が目立つ……無鉄砲……全て正論だ。───だが断る。       この博光、やってもいないことを無理と言われて納得出来る男ではないわ!       ようやくまともに喋ったと思えば、言いたいことはそれだけか日向くんめ!       貴様がどう言おうが槍は返さんし貴様になど負けん!!」 オーディン『ほう……それは我に対する挑戦と受け取るべきか。       槍を奪い、騎馬を殺めるだけの大罪だけでは足りぬというのだな?       ならば受けてみるか、我がバルムンクの一撃』 ザァッ……ギチチチチチイィイイ……!!! 俺の言葉に無表情で返し、足を大きくずらすと、 剣を持った右腕を出来得る限り逸らし、低い体勢のままに俺を睨むオーディン。 放たれるのは恐らく一撃必殺の奥義。 鉄であろうが竜であろうが斬り裂く一撃だ。 あれが真にバルムンクやグラムと呼ばれるものならば、 確実にそれだけの威力は持っている。 ……そうだ。 ボスランクの敵はシステム上一撃で斬ることは許されない。 けど、それが俺みたいな冒険者相手ならば─── 中井出「……、……」 ゴクリ、と喉が鳴った。 この体躯にしてこの緊張感、この威圧感───それはやはり、 まるでゼプシオンと対峙したあの時に酷似している。 あれから俺も少しは自分に自信が持てるくらい強くなったつもりだ。 けれどこんな、神話に登場するような英雄を前に踏ん反り返っていられるほど、 自分に自信があるわけじゃない。 でも……俺の中にあるのは相手に勝つとか負けるとかじゃない。 いつだって自分の中にある恐怖に打ち勝てるかどうかなんだ。 だって、自分さえ(ぎょ)することの出来ない者が、 誰かに勝つなんてことが出来るわけがないのだから。 だから俺はいつでも、いつまでだって無鉄砲な俺でいい。 相手に勝つより自分に勝っていないと、俺は俺でいられなくなる気がするから。 オーディン『いくぞ───!!』 中井出  「応ッ!!」 ドゴォン!と大地が炸裂する。 しかし音が鳴った場所には既にオーディンの足など存在しておらず、 遙か先───俺の目の前までその巨体は迫っていた。 オーディン『奥義!“斬鉄剣”!!』 振るわれる、十分な軌道を持った剣。 目一杯に捻られていた状態から振るわれるそれは、 まるで強力なバネ仕掛けで一気に閉ざされるトラップの口のようだ。 だがそんなイメージとは遙かに掛け離れた威力があるであろうソレは、 確かに俺目掛けて襲い掛かってきた! 中井出「鉄を斬ろうがどうしようが、真正面から受け止めてくれるわぁあーーーーっ!!」 対する俺は、恐らく全てを斬り滅ぼすであろう一撃必殺へと駆ける! そしてそれを、同じく振るうジークフリードにて───受け止める!!  ザガァッフィズバシャシャシャァアッ!!!! 中井出  「くぅうあぁあああぁあああっ!!!」 オーディン『───!?馬鹿な!!』 斬鉄剣は止めた───が、そこから放たれた剣風は大気さえ捻り斬り、 受け止めた先に居た俺の体を鎌鼬でも発生させたかのように斬り刻む……!! だが圧する力だけは緩めず、左から込められる力を体全体で受け止めるように力を込める! オーディン『面白い───!我が必殺を受け止めるか!!       だが知るがいい旅人よ!それが勝利に繋がるかなど、それこそ幻想よ!!』 中井出  「───!」 オーディンから圧せられる剣の力が緩む───と同時に、 俺から見て右側からオーディンの左拳が振るわれる! 中井出「そんなこと───言われるまでもねぇえっ!!!」 ドッガァアアッ!!! オーディン『───!ヌ……!?』 その拳を右腕一本で受け止め、 バルムンクは地面に刺し、左手に持った重力マックス状態のジークフリードで押さえる! オーディン『こやつ……!』 中井出  「神さんよ……!あんまり人間って存在を……!ナメないでほしいね……!」 言うや、跳躍と同時に左手で押さえているジークフリードの重力を解除。 オーディンの斬り払おうとする力を利用し、 それを軸に大地に突き立てていた剣を掘り起こすようにして抜き、  ゾプシャアッ!! オーディン『ぬぅっ!?』 その腕を斬りつける! と、そこで一回目のマグニファイの効果が切れた。 だが構わずストックを解除し、二回目のマグニファイを発動させる。 そうして、腕を斬られ、血が出ても剣を離そうともしない主神を見上げる。 オーディン『……なるほど。       型はまるで素人のものだが───それを補うだけの自由度のある剣だ。       予測不能とはこういうことを言うのだろう───』 中井出  「“解除”(レリーズ)!ミニ黄竜斬光剣!!」 オーディン『なぁっ!?貴様、まだ我が話して───ぬぉおおおおおっ!!!!』  ザンガガガガガガフィィイインッ!!!! オーディン『ぐぅぉおおおおおっ!!!』 べらべら御託を並べるオーディンに向けて、双剣化させた剣から剣閃を放ちまくる! そしてその属性が付加されていない剣圧は、 確かにオーディンにダメージを与え、消えてゆく。 オーディン『ぐ、ぬぅうう……貴様ァア……!』 中井出  「先に言ったぞ!外道の限りを尽くしてでも勝つって!       それに喋るか喋らないかなんてのは当人の勝手だ!       それを本気で卑怯と謳うなら───戦なんてやめちまえ!!」 キィンッギシャゴバァアォオオオオンッ!!!! オーディン『ッ───!ぐはぁあああああっ!!!!』 ミニ黄竜斬光剣に怯んだオーディン目掛けて爆ぜるように跳躍した俺は、 双剣を長剣に変えると両手で掴み、 既に発動している鬼靭モードの加護に包まれる剣を一回転させ、全力で黄竜剣を放つ! 咄嗟に篭手でガードされたが、その篭手ごと破壊するように、 振り切ったジークフリードはオーディンの巨体を吹き飛ばした!! 中井出「正義だの道徳だの礼儀だの───技術だの型だの戦術だの!!     そんなものは押し付けるものでも押し付けられるものでもない筈だ!!     そんなものは持っていたいヤツだけが持ってやがれ!     俺は───そんな常識をブチ壊して自由を楽しむために冒険してるんだよ!!」 さらにその体を追い、ステータス移動をしながら大地を蹴り弾いて追ってゆく。 そして立ち直ったその時にこそ追撃をと思ったのだが、 オーディンは体を捻ると同時に斬鉄剣を振るうと、 そこから大気さえ斬り裂くような剣閃を放ってきたのだ───!! 中井出「くぅわっ!?《ザブシャアッ!!》いがっ───!?」 咄嗟に跳躍して躱した───が、遅れた足にそれは直撃し、 斬り飛ばされるなんてことはなかったが、鋭く斬られた足首からは鮮血が噴き出した。 中井出「《ダンッ!》ぐっ……!」 当然そんな足では満足に着地することも出来るわけがない。 俺は地面に無様に倒れ伏すと、 片膝を着くようにして起き上がりながらオーディンを睨んだ。 オーディン『人の思想か……フフ。       では問うが、汝は己の思いを押し付けたことがないと言うのか?』 中井出  「もちろんあるとも!!」 オーディン『なにぃ!?貴様!言っていることがまるで滅茶苦茶だぞ!!』 中井出  「押し付けられるままに従うだけが人生じゃないって言ってんだ!!       嫌なら断ればいい!抗えばいい!       そして俺はてめぇみたいな頭でっかちに負けるのだけは御免だ!!       だから俺は全力で断って、抗って、       人だ人だと見下す野郎の度肝全てをブチ抜いてやる!」 オーディン『……言うだけならタダということか』 中井出  「その通りだ!!」 オーディン『……おかしな男だ。否定しようともしないとは』 中井出  「言うだけならタダなのは当たり前だ。金懸けたいだなんて思わないのも当然。       自分の理想に金額つけるなんて馬鹿なこと、誰がするもんかよ!!」 言葉とともにグミを飲み下し、足を回復させて構える。 そんな俺を見て、オーディンは無表情のままに剣を構える。 オーディン『……問おう。汝は何を求め戦う』 中井出  「……この世の楽しさを求めるがため」 オーディン『それを求めるは何ゆえか』 中井出  「楽しさを求める人の心に理由なんて必要ない」 オーディン『……少しはマシな答えを期待したがな』 中井出  「冗談はよしてもらおう。他人である以上、       他人から送られる言葉がマシであるか否かなんて絶対じゃない。       貴様はこの博光の考えを幻想と謳うが、俺はそうあってほしいって願ってる。       そんなやつらの考えが今更マシだなんて思えるもんか」 オーディン『フフ、なるほど。そう頭が悪いわけでもないらしい』 中井出  「し、失礼な!!ちょ、キミどういう目で僕を見てたの今すぐ言いなさい!!」 オーディン『汝の理想は確かに汝の理想にこそ相応しい。       ならば来い。己が理想に対する思いがどれほどのものか証明してみせよ』 中井出  「断る」 オーディン『なに!?な、何故だ!!』 中井出  「何故!?何故って……知らん!何故だか知らんが断る!!       ていうかなんで貴様に証明せにゃならん!俺は嫌だぜ!!」 オーディン『それが我が槍を盗っておいて言う言葉か!!』 中井出  「当たり前だ!見縊るな!!」 オーディン『ぬぐぉおおおお……!!!《ブチブチブチブチ……!!》』 前略おふくろさま。 あの世でいかがお過ごしでしょうか……あなたの息子の博光は元気です。 ええ、冷静で無表情だった主神様を 血管ムキムキにして怒らせることが出来るくらい元気です。 オーディン『もういい……汝には少々キツイ灸が必要のようだ……!』 中井出  「お灸が必要なのは貴様の腰とかじゃないのか?」 オーディン『貴様ほとほと礼儀を知らんヤツだな!!』 中井出  「ワー、怒った怒ったオーコッター、小さい小さい人間小さーい」 オーディン『き、きぃいさまァアーーーッ!!!《ブチチチチチィ!!!》』 オーディンが声を張り上げて怒鳴ると同時に、人を逆上させるダンスを踊った! 人じゃなく主神だから不安だったけど、オーディンは見事逆上した!  ピピンッ♪《オーディンの集中力が散漫した!!》 ……自分でやっといてなんだけど、不憫だなぁと思ったりした。 しかしこの博光、もはやこいつと戦うことになんの恐怖も無し!! そりゃ斬鉄剣は怖いが……それでもやっぱり、 結果がどうだろうが最後まで戦うって決めた時には行動は終わってるんだ!! オーディン『これほどの侮辱を受けたことなど露にも無し!もはや許せぬ!!』 中井出  「俺も貴様が、支給される弁当の割り箸が       ささくれ立っている時の心境くらいに許せん!刺さると痛ェんだよあれ!!」 オーディン『なにを訳の解らぬことを!』 中井出  「訳など要らん!ただの逆恨みだ!」  バギャァンッ!! 言うや、振るわれた巨剣を巨剣で斬り弾く。 相手の集中力を欠かせてからの戦いは、 相手の攻撃を単調にさせるとかよく言われてるもんだが…… 確かに単調的にはなっているものの、 怒りで攻撃力が上がってる気がするのは僕だけでしょうか。 中井出  「せぃっ!!」 オーディン『フン!!』 弾くとともに体を滑り込ませ、オーディンの足に向けて剣を振るう! だがそれは軽く予測されていたらしく、オーディンは狙われていた足を後ろへずらすと、 その反動を使って身を捻り、重心のかかった一撃を俺の頭上へ落とす!!  ガガァッギィンッ!! 中井出  「っ!!“解除”(レリーズ)!!」 オーディン『ぬぅ!!』 しかしそれを振り上げた剣で弾き、すぐに長剣を双剣化。 ひとつひとつでも巨大な剣を片手ずつに持つと、すぐに疾駆して双剣を振るってゆく。 込める属性はなにもない。 ただ純粋に力のみで、主神相手に立ち回ってゆく。 しかし、こんな時にこそ無属性の宝玉があれば、 剣に無属性を込めて精霊斬が出来るのにと思う。 何もつけてなければ確かに武器は無属性だが、 だからといって精霊斬が出来るというわけではない。 あれはともかく“剣に満たした属性”を剣閃として放つものだ。 だからそもそも、無であろうが“属性”を持っていなければ話にもならない。 中井出「だぁああありゃぁあああああっ!!!!」 それでもこの剣は振るえる。 剣閃だけが全てでもなく、 そんなものを使えるようになる以前はこの身この剣のみで戦ってきた。 その頃から無茶苦茶な戦い方は変わってないが、 ここまで来るために胸に刻んだ覚悟は以前の比じゃないって解ってるから。  ガンガンガンガンガガンガンッ!! オーディン『ぬぐっ───おぉおおおっ!!』 跳ばずとも飛ばずとも、手が届く足を集中的に斬ってゆく。 当然具足や腿当てはあるが、それでも斬り連ね、 斬るというよりは叩く感じにヘコませてゆく。  ヒュオガギィンッ!!───ヴオバッシャァッ!!! オーディン『ぐぉおっ……!!小癪!!』 だが当然やられっぱなしなわけではない。 しかしそうやって振り下ろされた剣も、 全力で振るう双剣で以って弾き、さらにさらにと斬り連ねてゆく。 そうしてへしゃげた鎧の奥に見えた足を斬り、少しずつだが確実にダメージを与えてゆく。 そうだ……戦いの定石も立ち振る舞いも、戦術も立ち回り方も俺は知らない。 だから俺なりに思いつく方法で立ち向かっていくしかないんだ。 全部ゲームやマンガから取り入れたような知識だが、されどゲームやマンガ! この世界が真実ゲームの世界だというのなら、役に立たない筈がないのだ! 中井出「おぉおおらぁあああっ!!!」  バギャァッフィィインッ!! オーディン『なっ───!?』 足を斬りつけられ、怯んだオーディンの左足に、長剣化させた剣をブチ当てる!! すると斬られた足を庇い重心を分けていたその足は軽く地面から離れ、一時のみ宙に浮く。 中井出「せぃやぁあっ!!!」 そうして、本能かもう一本の足から浮いた足に重心をずらした右足にダメ押しのもう一撃!  バギィンッ!───どっしゃぁああああん!!! オーディン『ぐ、ぬう……!!』 両足を浮かせてやるとオーディンはその場に倒れ、しかし当然すぐさま立とうとする。 だが俺は起き上がろうとしたオーディンの顔目掛けて双剣化させた剣を投げつけ、 咄嗟に伏せるようにしてそれを躱すオーディンは再び寝転がるような体勢になった。 ───それこそが狙いだ。 オーディン『武器を捨てるだと《ガシィッ!》……っ!?』 遠くへ飛んでゆく双剣を見て、理解不能といった感じに戸惑ったオーディンの足を掴む。 体全体で、抱き締めるように。 オーディンはすぐに俺へと攻撃を落とそうとしたが…… そんなこと───させるかぁああああっ!!! 中井出  「ストレングスマックス!!クゥウウォオオオオオオオオッ!!!!」 オーディン『───!?なに!?』 掴んだ足を、その巨体ごと一気に振り回す! 単純に考え、既に竜さえ振り回せる力は巨体を容易く宙に浮かせ、 俺を軸に鋭い回転を実行させるに至った! オーディン『馬鹿な……!この我がこうも容易く振り回され───!?』 中井出  「だぁあああありゃぁあああああっ!!!!」 そして回転速度が最高値に達した時点でオーディンを空にブン投げる!! 遠心力で一時的に抵抗を御されたオーディンは事実この一時のみ無抵抗となる……計算! 中井出「エネルギー!全開!!」 すぐさまに手に双剣を転移させ長剣化! 移動用のみに光の属性を込めると、地面を蹴り弾いて飛翔する!! オーディンに向かって今出せる最高の速度を出し、やがて追いつく頃に───!! 中井出「“黄竜剣”!!」 フィンッギシャゴバァアォオオオオオンッ!!!! オーディン『ぐぅぉおおおおおおっ!!!!』 二度目のマグニファイが消える瞬間、 一気に振るう長剣が鋭い金色の波動となって爆散する!!  ドンガガガシャガシャァッ!ドゴッ!バゴォッ!! オーディン『《ザァッ!!》……!ありえぬ……!!まさか我が鎧を……!!』 その一撃はオーディンの鎧を悉く砕くのみに終わったが……大事な一撃になってくれた。 高い地響きとともに落下する鎧は既に主神を守らない。 改めて調べてみれば、それが秘密だったのか、 オーディンの身からは属性に対する耐性のほとんど消えていた。 唯一、光を除いては。 大地を滑るように着地したオーディンは鎧を砕かれた事実に驚愕するが、 それが隙なら幾度も突こう!卑怯者と笑わば笑え!! 中井出「紅蓮に元素!蒼碧に雷!ブッ潰れろ!“ギガブレイク”!!」 ヂガァガガガギバッシャァアアアアッ!!! オーディン『ぬぐぅあぁあああっ!!!!』 双剣化させ、長剣化させ、これでもかと封入した雷でオーディンの体を斬り刻む!! 高鳴る雷鳴の音に皮膚の焼ける音が重なり、 それが止む頃にはオーディンの体には深い傷跡が出来ていた! オーディン『ぐっ……!なるほど……!       今までその手段を選ばぬ方法で生きてきたというわけか……!だが!!』 フオバゴォッチドッガァァアッ!!! 中井出「ぐあっはぁっ!!?」 上半身を斬るために跳躍していた俺の体は、 攻撃の後の隙を突かれ、地面に殴り落とされた。 そう……そんなことは言われるまでもなく解ってる。 “だが”の先に続く言葉は、俺にとって最大の弱点だろう。 オーディン『粗削りすぎる!我流すぎる!全てにおいて一歩が足りぬ!!       攻撃も全て大振り!攻撃の後に隙が目立ち!こうして追撃を躱しきれぬ!!       これを脆弱と言わずなんと言うか!       経験はあるというのにその経験自体がまるで伽藍の洞!!       所詮当てられなければ決して勝てぬ戦いの中で、       汝の攻撃はまるで役に立たぬ!!』 中井出  「……、げほっ……!!」 VITにろくに振り分けていなかったため、叩き落しだけで痛いダメージを負った。 それでもHPはまだまだあるし、立ち上がる気力だって十分にあった。 中井出「こ、のヒゲが……!だから何度も言ってるだろうが……!     俺はそんな常識を破るために楽しみながら冒険してるんだよ……!     粗削りすぎるのも我流すぎるのも全部承知で楽しんでんだ……!     それをポッと出のヒゲにあーだこーだ言われて、     ハイそーですかって直すほど単純じゃない……!」 グミをポーションで流し込み、口を拭いながら剣を手に取った。 立ち上がる意志は真っ直ぐに、確かな覚悟を持って。 中井出「学生だって風使いにも魔王にも勇者にも救世主(メシア)にもなれる!     村人だって勇者になれる!ザコだって力を手にすりゃ魔王にもなれる!!     マンガの話だゲームの話だって馬鹿にするならしやがれ!     俺はそういうことをしてみたくて日々を楽しんでんだ!!     そもそもこうしてファンタジーがあること自体がネジを外す一端だってのに、     それをわざわざそのままの形で受け取るなど真実アホゥ!!     やれることはする!出来ないと心底理解したことは諦める!!     だが貴様にだけは負けん!絶対に負けん!これはもはや意地だ!!     無茶だろうが苦茶だろうがやってみなきゃ解んねぇだろうがぁーーーーーっ!!」 雷を解き放ち、今はなんの属性も込められていないジークフリードを、 オーディンに向けて突き出す。 そうだ、絶対に負けん! たとえ何度コロがされようが蘇り、絶対にこの超常識神の主神様をブチノメしてやる!! オーディン『……フフ。確かにな。こうして我に戦いを挑む時点で既に常識外れだ。       そもそも神の槍を盗むその根性の太さからして』 中井出  「死ねえぇえーーーーーーっ!!!!!」 オーディン『なっ!?貴様また───!!』 フィンガィンギィンギャリンギャリィイインッ!!! オーディン『ぐぬっ……!貴様、つくづく……!!』 中井出  「解ってないようだから言ってくれるわ!!       この博光!剣術なぞ学ぼうと思えば学べる状況にある!!       マクスウェルの所へ行き、学べばそれで済むこと!!だが知れ主神よ!!       RPGの主人公は教えの先で強くなるか!?否ァ!断じて否ァ!!       今のゲームがどうだかは知らんが少なくとも       ファミコンやスーファミ時代の主人公たちはレベルアップのみで強者となる!       鍛錬!?剣術の型!?馬鹿も休み休みお言い!!       この博光、たとえそんなものが無くともこの世界を味わい尽くしてくれる!       たとえ鍛錬不足や未熟が原因で朽ち果てようとこの博光は本望よ!!」 オーディン『っ……!?貴様、そこまで───!!』 中井出  「武器と防具とレベル!これが全てだR!P!G!!それが証明できるなら、       俺は雑と言われようが未熟と言われようが一向に構わん!!」 振るわれる剣を弾き、振るう剣が弾かれる。 それでも一歩も引かず、隙あらば前へ前へと詰め寄ってゆく。 避けられるものは避け、弾けるものは弾き、隙を作ってゆく! そしてここぞという隙を見つけた時、一気に潜り込んで斬りつける!! 中井出「おぉおおおおおっ!!!!」 ヒュフォンゾフィィンッ!!!! オーディン『ぬぐっ!がぁあああっ!!!!』 ドボォンッ!!! 中井出「げはっ!!」 斬りつけ、だがその間隙に蹴り飛ばされる。 それも吹き飛ばすためではなく浮き上がらせるための蹴りであり、 事実浮き上がった俺を、続く斬撃が襲う!! 中井出「くあ《ガギドッガァアンッ!!》づはっ……!!」 たとえジークフリードでガードできたとしても、 振り落とされる勢いを殺し切れるわけもない。 俺の体はまるで弾丸のように地面に叩きつけられ、瞬間、息を殺される。 オーディンも既に微塵の油断も無しといったところなのか─── それだけでは終わらず、ニ閃三閃と剣を連ねてくる。 中井出「〜〜〜っ!!!」  ドガァンッ!シュファゴギィンッ!! 息が止まってようと構わない。 倒れた反動だけを利用して体を曲げ、 地面を斬るほどの一閃を躱し、続くニ閃目を立ち上がってすぐに斬り弾く! 中井出  「はっ……!ぜぇえやぁああああっ!!!!」 オーディン『ヌゥウウウォオオオオッ!!!』 ヴフォフォンガギザフィガギャパギャギャリィンッ!! ザフィンギンガンギガガガガフィィンッ!!! ───回転を増してゆく弧と弧。 散る速度を加速させる火花は花火が如く、 まるで暴風のように繰り出される斬鉄剣の剣風によってさらに彩を高める。 弾いては斬り、斬られては弾き、斬り返す。 もはや防御など捨てたかのように、俺と主神は斬り結び続ける。 危険になればアイテムを使い、誤って腕が飛ばされようが幾度も挑んでゆく。 切れた腕がグミ食ったくらいで回復する様は異様でしかないけれど、 それでも今は回復してくれる状況が嬉しかった。 中井出「ッ……ツガァアアアッ!!!」  バギャァアッフィィイインッ!!! オーディン『ヌッ───ぐお……!!』 そして、もはや何合目に至るのか。 渾身を持って斬り弾いた反動にオーディンが怯む頃にはアイテムも底をつき、 双方ともにこれでもかってくらいに裂傷を負っていた。 中井出「……、……」 荒い息を吐く。 けど、剣を握る力だけは緩めない。 ……最初は、人型であるだけ竜族よりは苦労はしない筈だと思ってた。 もちろん油断なんてものが出来るほど自分が強いだなんて思っちゃいない俺は、 最初から出来得る限りのことをやってきた。 けど……攻撃は通るのに倒せないこいつのHPは竜族のソレの比じゃあなかった。 流石に主神というだけはあるのだ。 中井出(でも……だからこそ) だからこそ、悪戦苦闘のし甲斐があるのだ。 俺に技術なんてものはない。 あるのは悪知恵と、乱暴に振り回すだけの我流だけだ。 でもそんな戦い方でも先を見させてくれる武器が俺の手にはあった。 中井出「……、はぁ……」 息を整えて、最後の覚悟をする。 どの道こっちは長く保ちそうにない。 攻撃が通るだけカイザードラゴンよりマシだが、あの武器と体力はちょっと反則だ。 相変わらず勝算のない戦いばっかりしてるが、勝算なんてなくてもいい。 俺には博打めいた戦い方が似合ってる。 最初から勝てるって解ってる戦いなんてつまらない。 だから、どの道このまま行くと死ぬっていうなら、やっぱりこれしかないのだ。 中井出「いざ唱えん───パルプンテ!!」 パンドラポットを発動───ランダムルーレット開始!! オーディン『ヌ───!?』 俺が何かを仕掛けると思ったんだろう。 オーディンは疲れた様子から一転、剣を構え、鋭い目つきで俺を射抜いた。  ジャンッ!《博打No14!みんなの歌!》 シャランラァ〜〜〜ッ♪……ピピンッ♪《中井出の攻撃力がUP!》 中井出「おおっ!?」 攻撃力UP能力!?───と喜ぶのも束の間。 ピピンッ♪《オーディンの攻撃力が上がった!!》 中井出「おいぃいいーーーーーっ!!!」 なんとオーディンの攻撃力までもがUP! どうやら敵味方関係なく無差別に攻撃力をUPさせる能力らしい……。 ああもうほんとつくづく俺にやさしくないなあもう!! オーディン『なにをしたかったのか知らぬが……       今更フェアプレイを謳いたいわけでもあるまい』 中井出  「当たり前だ!そんな精神はとっくの昔にドブ川に捨てたわ!!」 すかさずもう一度、もう一度と発動させてゆく! すると─── ジャンッ!《博打No5!マイティガード!》 ジャンッ!《博打No4!マイティストライク!》 ピピンッ♪《防御力、魔法防御力、属性防御力がUP!テクニカルガード発動!》 ピピンッ♪《攻撃力、魔法攻撃力、属性攻撃力がUP!クリティカルブレード発動!》 中井出「───!よし!」 俺にやさしい能力が連続で発動! そして調子に乗ってさらに発動させた時───!!  ジャンッ!《博打No23!自爆!》 中井出「いやぁあああーーーーーーっ!!!!」 俺の世界は激しい光とともに崩壊したのだった。
【Side───晦悠介】 ドォオッゴォオオーーーーーン………!!! 悠介 「うぉわっ!?」 他の連中の様子を見にいこうと走っていた時だった。 ずっと遠くの方で巨大な火柱が立ち上り、空に浮かぶ雲さえ焼き払いながら消えてゆく。 あれは…… 悠介 「今度はなにやってんだあいつ……」 誰が疑うこともなく中井出だろう。 悠黄奈「あれがなんだか解るんですか?」 悠介 「あー……中井出花火?」 セレス「中井出というと、あのエロマニアとして有名な彼ですか?     魔王がどうのと言って消えた……」 悠介 「そう、そいつだ」 また竜とでも戦ってるんだろうか。 とりあえず俺から言えることは……一つだな 頑張れ、と。 【Side───End】
中井出「カカカカ……!!」 大打撃。 巨大なクレーターの中心で虫の息を吐く俺は、HP1の状態で転がっていた。 ああもう、アイテムがもう無い時に限ってこんな……!! だがもはや恐れることなし! 俺は懲りずにパンドラポットを発動させ、 自爆によって負傷した主神にではなく脳内神に祈った! すると───  ジャンッ!!《博打No24!リミットグローヴ!》 中井出「へ?リミッ……?」 見慣れない能力が発動。 けどどうせ俺にやさしくない能力だろう───なんて苦笑したが、今回ばかりは違った。 ピピンッ♪《リミットブレイク!HP1の状態時のみ攻撃力が大幅増加!!》 中井出「───!おぉおおっ!!」 次いで表示されるログの文字に俺は心を躍らせた。 ……どうせHPは1だ。 背水だってジェノサイドハートだって鬼靭モードだって、 力になる能力の悉くは発動してる。 そこに来てこの能力……そう、どうせHPは1だ。 恐れるものなんて何も無い───ヤケクソ全力投球だ!! 中井出「これで最後……すう……はあ……ストック解除!マグニファイ!!」 呼吸を整えたのち、最後のストックを解放してマグニファイを発動させる。 中井出「三分でケリをつける!“エンペラータイム”!!」  ゴコォッキィインッ!!! さらにすかさずエンペラータイムを発動。 そう、どうせHPが1ならどんな無謀な賭けだってやってみせよう。 そうやってコロがされるなら本望であり、勝てるならそれで良し!! 中井出  「だぁああありゃぁああああっ!!!!」 オーディン『───!!』 双剣化させた剣を大きく振るい、それを受け止めようと振るわれる剣に合わせる! するとギシャゴバガンガガガガフィィインッ!!!! オーディン『なっ───ぐおぉおおおおっ!!!!』 中井出  「うぅうおぉおおおおおおっ!!!」 振るってゆく斬撃全てから黄竜の光が弾け、爆散してゆく。 マグニファイ中のみ全ての力を解放する奇跡を生む能力、エンペラータイム。 その奇跡を以って、オーディンの言う未熟で粗削りな攻撃で、 それを言った本人を幾度となく圧してゆく!!  ギシャガガガガォオオオン!!! オーディン『くお───!!』 一方六閃から放たれる合計十二閃の黄竜剣は振るう度に巨体を吹き飛ばし、 確実にオーディンの腕を痺れさせながら防御を崩してゆく!! やがて─── オーディン『こやつ───!何処にこれほどの力を───ぐ、ぐおっ───!?』 ギシャアアガバババゾバァォンッ!!!! オーディン『ぐわぁああああーーーーーっ!!!!!』 受け切れなくなったオーディンは黄竜の力に剣を弾かれ、 そのがら空きの体にとうとう鋭い斬撃を受けることとなる。 だが、まだ終わりじゃない! 塵になるまで一片の油断もあっちゃならない!! 詰める時は最後まで詰める!それが、俺が唯一心に決めている“戦法”って言えるものだ! 現に───ズザァッ!! オーディン『ヌ───ガァアアアアアッ!!!!』 倒れると思ったオーディンは踏みとどまり、仰け反った分だけを助走分にし、 俺へと斬鉄剣を振るってきたのだ!! 俺はやっぱりまた空中で身動きも取れずに、攻撃の反動に体を持っていかれていた。 当然避けようもない───けどそれは常識の範疇でならの話!! 中井出「フロート全開!!」 ブワァッ!! オーディン『───!な……!!?』 浮遊を全力で発動させ、ギリギリのところで躱してみせた。 空中では身動きとれないなんて、そんなことは過去の話だ。 それを可能にさせるだけの力がこの剣には宿ってる!  ゾガァフィバガガガガォオオンッ!!! 中井出「ッ……!!」 だが───斬鉄剣が振るわれた先は、 まるで見えない何かに抉られるように地面が消し飛んだ。 事実放たれた必殺の斬撃は“見えない剣閃”であり、 大地さえ両断してみせるほどの力を持っていたのだ。 俺はその威力に今こそ戦慄を覚えた。 けど……これで最後だ!! 中井出「光が主属性なら闇はよっぽど効くだろうなっ……!!くらいやがれ!!」 フロートを解除した俺は一端風を巻き起こし、オーディンに向けて一気に飛翔! そうしてから双剣に闇と元素を連ね、長剣化させて両手で強く握り締める!! オーディン『甘し!一撃目を避けてみせたからといって次弾が無いとでも思ったか!!』 しかしその過程。 あとはオーディン目掛けて渾身の一撃を決めるだけでいいという時─── オーディンは素早く戻した剣を構え、俺目掛けて振るってきたのだ。 恐らくさっき放った斬鉄剣は囮。 必殺の一撃を囮に使うなんてと思ったが───それが“戦術”ってものなのだ。 俺はもう渾身の一撃への体勢に入ってしまっている。 これを弾く余裕も速度も無い。 甘んじて受けるしか無いのだ。 オーディン『終わりだ、人間!!』 よくやったと褒めてやろうとそいつは謳った。 確かにこれを振り切られれば、俺は避けようがないだろう。 ───けど。 それはこの一撃に全てを込めたオーディンだって同じことなのだ。 中井出  「残念だったな主神様よ……この賭け、俺の勝ちだ!!」 オーディン『なに……?』 ゾガァッギギャリリリリィイインッ!!!! オーディンの剣が俺の脇腹へと接触する! が───火花を散らすだけで、それは全く俺へダメージを徹さなかった!! オーディン『な───!?剣が徹らな───』 中井出  「ブッ潰れろォオオッ!!闇竜剣(えんりゅうけん)”!!!ギバァアシャシャシャゴッパァアアンッ!!!! オーディン『───!ガ───……!!』 闇の闘気を纏った黄竜剣を傷に重ねられるよう振り切った。 弾ける黄竜の闘気は闇に染まり、 オーディンが居ただけで神々しささえ齎していた場の空気を一気に闇色に染め上げる。 だがまだだ、と……着地と同時に構え、オーディンを見据えた。 が───  ズ……ドガァッ!!───ドザァアッ……!! 中井出「え……?」 深い傷にさらに深いダメージを受けたオーディンは、 その場に膝を付き、血を吐いてとうとう倒れ伏したのだ。 そして……傷口から少しずつ塵となってゆく。 中井出  「………」 オーディン『……、まさか……この、我が……、……!!』 中井出  「お前は強かったよ……けど、間違った強さだった」 オーディン『…………フフ……人間が我に強さを唱えるか……。       ああ……だが我は負けたのだな…………       汝がそれを唱える道理はとうに完成していたというわけか……』 ゴボッ、と血を吐くオーディンは間も無く完全に消えるだろう。 まだ時間はある筈なのに、マグニファイの効果もエンペラータイムの効果も切れている。 つまり……決着はついたのだ。 オーディン『……最後に聞かせてもらおうか……。終わりの刹那……何故我の剣は……』 中井出  「こっちにはな、皇帝竜の逆鱗っていう最終防衛システムがあったんだよ。       物理攻撃ならなんでも無効化にしちまうとんでもない能力が。       これの所為で俺がどれだけカイザードラゴン相手に地獄を見たか……」 オーディン『……く、くははははっ……なるほど……。       これはお笑いだ……ふはははははっ……!!』 中井出  「あれ?俺なんかギャグ言った?」 オーディン『ふっ……くくく……!いや……我は汝に詫びなければならないようだ……。       汝の経験が伽藍洞だと言ったこと、心から謝罪する』 中井出  「……?そりゃどういう風の吹き回しでだ?」 オーディン『汝の経験は汝に積み重なっているのではなく、       その武器にこそ積み重なっている……それが解ったのだ。       そんなことはよほどに武器を好んでいなければ出来ることではない……』 ……そりゃそうだ、ファンタジーっていったらまず武器だろう。 棍棒でドラゴンが倒せますか? …………これでやってみたいって思うのが原中のヘンテコたる所以かもしれん。 オーディン『……いい土産話が出来た。我はしばらく眠るとしよう。       苦労して打ちのめしてくれたようだがな、我に死は無い』 中井出  「なにぃ!?じゃあ飛んでいく塵にレイジングロア撃ってみていい?       塵が完全に消滅すれば復活できないかも……」 オーディン『やめんか!!』 中井出  「ヒィッ!ソ、ソーリー」 怒られた拍子につい謝ってしまった。 つくづく格好つかん俺である。 そうこうしてる間にオーディンは完全に塵となり─── 俺は、陽の光を浴びながら輝き消えてゆく塵を見送って、 終わった戦いに安堵しながら尻餅をついたのだった。 デッテーケデーテーテ・テーン♪ コシャンッ♪《血染めの刃を手に入れた!!》 コシャンッ♪《神の鎧の欠片を手に入れた!!》 ぺぺらぺっぺぺー♪《レベルが3023にレベルアップした!》 ……手に入ったものや上がったレベルに喜びつつ。 ていうか何故血染め?形は思いっきり人間用サイズの斬鉄剣なのに……。 なんてことを、パタパタと走ってきたナギーに手を振りつつ思っていた。 ……ああ、まったく……我を貫くのも命懸けだ……。 Next Menu back