───冒険の書159/タマの鈴───
【ケース429:弦月彰利/ナノフラグメント】 ビュゴォオオオオオオ…………!! 彰利 「ギギギーーーッ!!《カッ!》」 やあ僕彰利。 今日はここ、風の谷のナウ鹿からお送りするよ? ナウいぜ!鹿! 夜華 「ここを訪れるのも久しいな……しかしどうするんだ彰衛門。     この谷は相当に入り組んでいて、風の精霊が居る場所まで行くのは───」 彰利 「飛んでいけばOK!!ヌゥウウウン!!《ゾリュゥン!!》」 気合を込めると我が背中に闇の翼!OHステッキン!! 彰利 『さあ……行くぜ?』 夜華 「貴様は本当に非常識な男だな……」 彰利 『惚れンなよ?』 夜華 「…………もう、手遅れだ」 頬を赤らめ、そっぽ向きつつオイラに捕まる夜華さん。 次いで小僧にもホレと手を差し伸べるが─── 凍弥 「……お前らってさ、いっつもそんな恥ずかしい遣り取りしてるのか?」 彰利 『すげぇだろ』 凍弥 「素直に凄い」 夜華 「なっ、うあっ……ち、違うぞ!?今回はたまたまであってだな……!!」 彰利 『なんと!?夜華さんたらオイラとは話したくもないと申すか!!』 夜華 「ば、馬鹿っ!そんなわけがあるかっ!     あ、い、いや……そうじゃない、そういう問題じゃなくてだな……」 凍弥 「……ようするに篠瀬の慌てる顔が見たいんだよな、彰衛門は」 彰利 『あたりめェだろ?今やオイラにだけ向けてくれる顔《ギュリィッ!》あたっ!?』 夜華 「……彰衛門貴様……またわたしをからかったのか……!?」 彰利 『イエス!何故ならば!     好きなおなごの顔ならばいろんな表情や反応を見たくなるというもの!     他のやつのことは知らんが少なくともオイラはそう!     そして夜華さんは真っ赤になった時が一番カワイイと思うのですよ』 凍弥 「ああ、それは解るかも」 彰利 『なんだとてめぇ!貴様なんぞに夜華さんはやらんぞ!!』 凍弥 「どっ……同意しただけだって!怒鳴るなよ!」 夜華 「そうだ彰衛門。それに……心配する必要はない。     わたしは、その……もう貴様以外の男に見向きをする気など無いのだから」 彰利 『ま゜っ……!』 凍弥 「……篠瀬よぅ……」 夜華 「な、なんだ?わたしはなにかおかしなことを言ったか?」 がばしぃっ!! 夜華 「うわっ!?あ、彰衛門!?」 彰利 『ギャアもう夜華さんかわいぃいーーーーーーっ!!!!     うおぉおーーーーーっ!!ラァアアブリィイーーーーッ!!!!     ラッ、ラッ……ラブリィッ……!!うおぉぉーーーーーっラァアブリィイイッ!!     ちゅぅううーーーーーーっ!!!!』 夜華 「《ゴリゴリスリスリマッチュモッチュ!!》うわわわわぁぁあーーーーーっ!!」 抱き締めた夜華さんを頬擦りしたり撫で回したりぶっちゅしまくったり、 心の高ぶりが促すままに()でまくる!! 凍弥 「彰衛門と篠瀬の関係も随分変わったんだな……。     顔を合わせれば言い合いばっかりしてた頃が懐かしい気分だ」 夜華 「と、時が経てば人など《もちゅっ!》ぷあっ!?ひ、人など変わるものだろう!     大体変わったと言えば鮠鷹!貴様のほうこそ《もちゅっ!》ぷあっ!?     こ、こらっ!喋り途中に口を塞《もちゅっ!》ぷあっ!?     こら貴様!遊んでいるだろう!いいか彰衛門!     接吻というのは《もちゅっ!》ぷあっ!?こ、こらやめろ!!     鮠鷹が見てるんだぞ!そ、それは嫌なわけではないが《もちゅっ!》ぷあっ!     だ、だから喋っている最中はやめろと《もちゅっ!》ぷあっ!!」 凍弥 「……遊ばれてるなぁ」 夜華 「わたしじゃない!こいつが勝手に《もちゅっ!》ぷあっ……!!     こらぁっ!だからさっきからやめろと……!!     というか貴様もまじまじと見てるんじゃない!!少しは気を使え!!」 凍弥 「そう言われてもな……あーだこーだ言う割りに、お前嬉しそうだしな」 夜華 「うっ……うぅううう嬉しくなどない!ないったらない!!     わわわわたしは武士だぞ!?それが《もちゅっ!》ぷあっ!?     や、やめろと言っているのに《もちゅっ!ちぅう〜〜……》むぐぐぐぐっ!!?     ぷあっ!!や、やめ……やめてくれ……!!頼むからやめてくれ……!!     はずっ……恥ずかしくて死にそうだ……!!」 そう言う夜華さんは、それはもうこれでもかってくらい真っ赤だった。 人って恥ずかしさでここまで赤くなれるんだなぁ……。 とまあそんなわけで真っ赤になって俯いてしまった潤み目の夜華さんを、 背中から抱き締めてまず浮遊。 そんでもって小僧には我が足首に掴まってもらい、ワサワサと飛翔する。 彰利 『さぁ〜て、風小僧はどこかのうぉ〜』 凍弥 「気配とかで解らないのか?」 彰利 『生憎この世界じゃこう……ねぇ?ピピピ電波が降りてこないのよ』 凍弥 「そうなのか」 ほんに不便なものです。 しかしこうしてガーゴイル飛びしてると、心が落ち着くのはどうしてなのだろう。 理由は解らんが、とってもステキな気分だ。 彰利 『ねぇ夜華さん?位置的にどこらへんにおったか解る?』 夜華 「う……そ、そうだな……もっと降下してもいい。     それから、もっと先のところに居た筈だ」 彰利 『オゥケイ』 エセギャージン風に返し、奥へと進んでゆく。 遙か下の方には川が流れておるよ。 これぞ大渓谷って感じじゃね。 彰利 『FUUUUM……?』 夜華 「あ……待て彰衛門、見つけた」 彰利 『え?なにを?』 夜華 「なにをって……精霊に決まっているだろう」 彰利 『お、おお、精霊ね、精霊……覚えとる、覚えとるよー』 凍弥 「篠瀬抱き締めるのに夢中になって忘れてたんだろ」 彰利 『否定はしてやらねぇぜ?』 凍弥 「いや……俺が惜しんでるように言われてもな……」 なんてことを言いつつ、夜華さんが促す方向へと飛翔を進める。 と───おった。確かにおったわ、風小僧が。 彰利 『おーい風小僧〜〜っ』 シルフ『あん?なんだよお前ら、なんか用か?』 彰利 『契約(やら)ないか?』 シルフ『やらないかって、なにをだよ』 彰利 『………』 通じなかったらしい。 そりゃそうか。 彰利 『あー、ここにおわす……     というかオイラが愛情たっぷりに抱き締めてるこの夜華さんが、     貴様と契約をしたいと仰っておるのだ。     そこの者、麿の顔に免じて契約するでおじゃる』 シルフ『契約だってぇ?へへん、嫌だね。誰がそんな面倒くさい───』 彰利 『代折羅不動心眼流(ばさらふどうしんがんりゅう)奥義!瞳術レーザー!!』 ツピシュどっがぁあああああんっ!!! シルフ『ぎゃあああああーーーーーーーーっ!!!!!』 態度の悪いシルフに対して目からレーザーを発射して攻撃! シルフは大ダメージを負った!!(主に精神的に) シルフ『うぐっ……め、目からレーザー……!?』 彰利 『契約するね?』 シルフ『だ、だぁ〜〜れがっ!!冗談じゃないね!お断りだねっ!解ったらさっさと』 彰利 『……《キュイィイイ……バチッ、ビヂヂッ……!》…………』 シルフ『……わ、解った、契約するからそのレーザーもうやめろ……』 彰利 『イエーーーッ!瞳術イエーーーッ!!』 凍弥 「燥いでるとこ悪いけどさ……彰衛門、これって脅迫じゃ……」 彰利 『THE・説得!!』 凍弥 「いや、どう見たって」 彰利 『THE・説得!!』 凍弥 「……わ、解ったよ……皆まで言わないから……」 グオッフォフォ、精霊恐るるに足らず。 以前なら中々苦労させられたがネ、もう相手じゃないのだヨ。 ……でも、なんつったっけ? 封印だかなんだか知らんけど、それを解いたらどれくらい強くなるんかね。 シルフ『で?誰が契約したいんだよ……お前かお前は勘弁だぞ』 彰利 『キョホホ……本人を目の前に言ってくれるじゃねぇか。だが俺じゃあねぇぜ?     さっきも言った通り、夜華さんが契約したいというのだ』 シルフ『だから、そのヤカサンとかいうヤツが誰なのか知らないから言ってるんだろ。     少しは考えてからモノ言えよ』 彰利 『小僧……《キュィイイ……!》どうやらヘル見たいらしいな……』 シルフ『な、なんだよ!本当のこと言っただけだろ!?』 彰利 『ぬう……まあよいわ。ささ、夜華さんGO』 夜華 「あ、ああ」 輝かせていた瞳を正常に戻し、夜華さんを促す。 夜華さんはゴソソとバックパックから指環を取り出すと、これをどうすればいいんだ? とオイラに訊いてきました。 ……そんなのオイラ知らない。 確かにシェイドとは契約したことあるけど、全部向こう任せだったし。 なんて思ってると風小僧はシュミミミ〜〜ンと夜華さんが持つ指輪の中に消えてしまった。 ……ようするに指輪を精霊に当てればよかったと? 夜華 「……これでもう済んだのか?」 彰利 『どげな感じ?』 夜華 「ろぐ、とか言ったか?それに文字がたくさん出てきている」 彰利 『OKそれなら完了だ!(多分)』 凍弥 「物凄く不安な言い方だな……また来る、なんてことになるのは嫌じゃないか?」 彰利 『生憎このワシは……強ぇえのよ』 凍弥 「答えになってない」 彰利 『オウヨ』 凍弥 「や、だから……」 彰利 『えーがらえーがら!次行きますよ!?小僧が光でオイラが闇!ゴー!』 ワサァッ!ワッサワサァアア……!! 彰利 『フブレカカカカカッカッカッカッカ……!!』 背中に生えた翼でワッサワッサと飛び、 アニメデスノートのリュークの笑い真似(みたいなもの)をしつつ次の場所を目指した。 ───……。 ……。 シュゴォオオオオオッ!! 彰利 『“人生”(ラヴィ)!!《パパァアアアッ!!》』 結局移動も飛翔で済ませようとする。 が、飛翔って結構TPを使うのでございます。 彰利 『ウムムム〜〜〜ッ、走ったほうが飛ぶより速い気がするが、     そうなると一人遅いヤツが居るのが困るぜ〜〜〜っ!!!』 凍弥 「仕方ないだろ!俺は彰衛門たちに比べてあとからこの世界に入ったんだから!」 彰利 『キョホホ、そげなことは言い訳にすぎねぇぜ〜〜〜っ!!     修行場では実力のみ!やる気があればレベルアップなど容易い筈だ!』 凍弥 「その割には彰衛門は伸び悩んでるそうじゃないか」 彰利 『おおそれよ。九頭竜の九頭目が全然出現しねぇのよ。     レベルばっか上がるわりにそっち側はまるでダメ。     どうすりゃいいのか解らんから結局レベル上げするしかねぇわけでねぇ。     つくづくなんでも悠介に任せっぱなしだったんだなぁって反省しとるわい』 昔っからもっと、 他人から与えられる力じゃなくて自分の力を鍛えることに集中するタイプだったら、 こんな風に悩むこともなかったのではなかろうかと思うわけだ。 や、ほんと過去って大事。 彰利 『まあともかく闇の精霊と契約したら、オイラはまた修行に励むさ』 凍弥 「そっか。じゃあ俺もその修行に───」 夜華 「駄目だ」 凍弥 「うおっ?し、篠瀬?」 夜華 「鮠鷹、貴様は楓さまと学ぶのだ。邪───彰衛門の手を煩わせるな」 凍弥 「……お前今、邪魔するなって言いそうにならなかったか?」 夜華 「そんなことはないっ!」 凍弥 「そうか?明らかにわたしと彰衛門の時間を邪魔するなーとか言いたげだけどな」 夜華 「そんなことはないと言っているだろうっ!このっ!」 凍弥 「《ドゲシッ!》いてっ!や、やめろこらっ!     こっちはさっきからずっと足首掴んでぶらさがってるんだぞ!?     いくら疲れないからっていい加減手も疲れてくるんだ!蹴るな!!」 夜華 「許さんぞ貴様!貴様はいつもわたしから大事なものを奪ってゆく!     刀の技術の位も楓さまの隣も!次は彰衛門か!?     ええい貴様はいつもいつもそうやってぇええ……!!」 凍弥 「《ギリギリギリギリ……!!》いててていたぁーーったたたたぁーーーっ!!!     やめろってばかっ!!指の皮が剥げるだろ!?     彰衛門もなにか言ってやってくれよ!!」 彰利 『自分の気持ちに素直な夜華さん……最高じゃね?     思わずコロリとオトされてしまいそうじゃわい』 凍弥 「俺は今地面に落とされそうだよ!!」 ゾリゾリと手を踏みつけられている小僧がギャースカ叫ぶ。 しかしだねぇ……こんな素直な夜華さんなんて滅多に見れないからね。 ワシャ止めんよ? はぁ〜、しかし夜華さんの抱き心地のなんとステキなことよ。 思わず、猛者どもに見られたら チュー魔人扱いされてしまいそうなくらいぶっちゅしたくなる。 彰利 『……オウ?』 と、そげなアッタケェ思考を展開しながら飛んでたオイラだったのですが。 ふと平原の一角に巨大な穴と……僕らの中井出提督を発見。 なにやらドリアード小娘と一緒になって奇妙なダンスを踊ってる。 中井出「いつまでもォ〜〜〜〜あ〜〜つ〜〜い〜〜鼓〜動ォ〜〜〜ッ!!     ン涙の意〜〜味〜〜を〜〜わァ〜〜すれない〜〜〜っ!!」 しかも歌ってるのが何故かジャスティス学園のOPだし。 彰利 『ヨ〜〜ホ〜〜イ、中井出〜〜〜っ!!!』 中井出「死ねぇええーーーーーーっ!!!!」 三人 『えぇえーーーーーーーっ!!!?』 やあ、とばかり声をかけた途端! 中井出が俺達を見上げ、デケェ剣を前に突き出した!!  ギガァアッチュゥウウウウウンッ!!! そしてそこから放たれるのは巨大かつ高威力そうな、竜のレーザーめいた光!! 彰利 『ウギャアちょっと待てぇえーーーーーーっ!!!』 夜華 「彰衛門!上昇だ!!」 凍弥 「うわ馬鹿っ!!そんなことしたらぶらさがり状態の俺が燃え尽きるだろが!!     下降だ下降!!」 夜華 「なにを言う!彰衛門の安全が第一だ!貴様なぞ知ったことか!!!」 凍弥 「言うようになったなぁって言いたいところだけど言いすぎだぁあっ!!」 夜華 「黙れ黙れ!わたしにはもう彰衛門しか居ないんだ!!     その安全を第一に考えてなにが悪い!!」 凍弥 「だからって俺を始末する方向で物事考えるなぁあーーーーーーっ!!!!」 彰利 『よっしゃ任せとき!“空間翔転移”!!』 ブブー!《TPが足りません!》 彰利 『あれぇえーーーーーーっ!!!』 凍弥 「うわダメだ!彰衛門上昇!俺飛び降りるから!」 彰利 『よし解った!夜華さん!小僧を蹴落とせ!!』 夜華 「よし任せろ!!」 凍弥 「降りるって言ってるんだからわざわざ蹴落とそうとするなよ!!」 言うより早く小僧は我が足を離し、オイラは全力で上昇!! と、そうしてレーザーをなんとか躱した時点でTP枯渇。 オイラと夜華さんは地面に向けて落ちてデザイア。 でも大丈夫!何故ならドグシャア!! 凍弥 「ぐぶえっ!!!」 小僧クッションがあるから!! 彰利 「小僧……俺はお前の男意気にホレたぜ……。     まさか身を呈して我らを救ってくれるとは……!」 夜華 「蹴落とそうとまでしたわたしまで救ってくれるとは……。     さっきは言いすぎた、すまない……」 凍弥 「おまえらなぁあ……!!」 オイラはもちろん適当言ってるだけなんだが、どうやら夜華さんの謝罪はマジなご様子。 ぬう、いつもの夜華さんに戻ってしまった。 またぶっちゅしまくれば脳内にお花が咲き乱れるでしょうか。 と……そうは思ったけど、敵さん(魔王様)は待ってはくれそうになかった。 中井出「グブブブブ……!この魔王博光に自ら声をかけるとは愚かなりクラウザー……!」 そう言ってズチャリと僕らの前に立つ中井出。 ……HPが1で今すぐにでも死にそうなのは、さっきのレーザー撃った所為なんだろうね。 ところが彼はニコリと笑うと何かを発動。 中井出「大丈夫!今日の俺はなんだかツイてる!     俺はそれを証明するためにこの世界に降り立った………………っ!」 訳が解らんのですが…… 何故か無頼伝涯の真似をする提督にはなにや解らぬ迫力があったのだ……! やがて───ジャンッ!という音とともに、 中井出「……なぁ一等兵……俺の青春って何処にあるのかな……」 とても悲しそうな、影が差した絶望的な顔でそう言って、 僕らに向けて一歩を踏み出したのだった。 中井出「さっきはすまなかった一等兵……謝罪の印に握手(アクセス)を……」 で、差し出したのは右手。 オイラはなんとまあ珍しいと、思わずキュムとアクセスした───途端!! 中井出「ツカマエタ」 まるでマッディボムのようにそう言い放つと、なんと中井出の体から眩い閃光が!! 彰利 「ウオッ!?ちょ、なにこれギャアーーーーーーッ!!!」 手を振り払おうにもメキメキと音を立てるくらいに手を握られてて離れない!! こんニャロSTRマックスで握って───マ゙ーーーーーーッ!!!
【Side───晦悠介】 ドォッゴォオオーーーーン……!! 悠介 「だぁうわっ!?」 悠黄奈「ひゃあっ!?」 セレス「ひゃっ!?」 そしてまた響き渡る爆裂音。 さらには振り向いてみれば見える、天を衝く中井出花火。 悠介 「あいつ……ほんと何やってるんだ……?」 悠黄奈「賑やかそうですね……行ってみませんか?」 悠介 「胃がいくつあっても足りないだろうからやめとけ」 セレス「そう感じるのは悠介さんだけかもしれませんよ?」 悠介 「それはそれでとても嫌だな……」 気にならないって言えばウソになるんだが……本当になにやってるんだか。 【Side───End】
シュウウウ……ゴコッ……パラパラ…… 彰利 「カカカカカカ……!!」 物凄い衝撃を受けた。 よもや中井出が自爆能力を持っておったとは……! ていうか近づいて来てそうそう自爆するヤツを初めて見た気がする。 彰利 「うおぉお……すげぇ、クレーターが出来とるよ……」 HP1の状態でこんなんじゃあ、HPマックス状態だとどれくらいの規模になるんだか。 彰利 「グムー……中井出は……居ないねぇ。もしや塵と化した?」 と、見渡してみるとドリアードに回復してもらい、逃走し始める中井出の姿が!! 彰利 「なにぃ中井出この野郎!散々なことしといて敵前逃亡か!?」 中井出「楽しみたかっただけさ!そして俺はもう楽しんだ!」 サラバダーと叫びつつ手を振る彼は、 まるで明日また会う約束もせずに元気に去ってゆく悪ガキ友人のようだった。 彰利 「っとしもうた!夜華さん!?小僧!?」 吹き飛んだ大地を見渡しては、夜華さんと小僧を探すが─── 彰利 「───!おったわ!」 爆発に吹き飛ばされたんだろう、 相当離れた場所で立ち上がろうとする夜華さんと小僧を発見した。 ええいなんという迂闊ザマショウ、 相手は既に魔王でしかも中井出だというのに油断するとは。 ヤツが突然アクセスなんて求めれば、 まず何か企んでることなんて解りそうなものだろうに。 彰利 「中井出か……」 このヒロラインで随分と強くなったけど、根本はやっぱり変わってない。 こっちを敵として見なすんじゃなくて、遊び相手として見ておった。 でもそこに甘さがあるかといったら、 なにせ全力で楽しみを探求してるもんだから、どっちかっていうと容赦無しなほうだ。 遊び相手とかいってもこっちを見下すわけでもない。 そらそうだぁね。べつに怨敵ってわけでもないんだし。 対戦ゲームで究極に意地を張って、負けてなるものかって頑張ってる熱血男って感じかね。 ああそうそう、一言で言うとサバイバルゲームで残り一人になっても諦めない男? キョホホ、現在一人の中井出には丁度いい表現じゃね。 彰利 「夜華さん?小僧?起きれ〜?     中井出はもう去ったからHPも回復───してねぇ!」 何事!?と辺りを見渡してみる!───と、木の影からこちらを覗く人影が!! ……ていうか中井出だった。 彰利 「去るんだったらとっとと去りなさいてめぇ!!なにしとんのそげなとこで!!」 中井出「一言で言うなら修行を続けるガンバルマンを影でそっと見守るマネージャー!!     しかし俺は草葉の陰から見守ろう!こんにちわ、中井出博光です」 彰利 「知っとるよ名前くらい!!つーか草葉の陰なら死んでおるわ!!」 中井出「いや……なんかもう散々死んでるからどうでもいいかなぁって。     もちろん意味は知ってたから大丈夫!」 話つつも敵対心を解かないもんだから一向に回復しない我らのHP。 これはアレだろうか、なにかの新しいプレイだろうか。 彰利 「中井出よ……オイラたちこれから精霊と契約しに行かなきゃならんのよ。     そのためにはキミが邪魔だ」 中井出「随分ストレートだなオイ!もうちょっとオブ……オブ……レジテントオブサン!」 彰利 「オブラート?」 中井出「そう!そのでんぷん!それに包み込んで話そうとか思わないのか!?」 彰利 「猛者相手にそげなことをする意味が何処にある!!」 中井出「何処にもないわ!」 オブラートに包むという言葉を言ってみたかっただけみたいです。 彰利 「そんでキミ……こげなところでなにしとったの?待ち伏せ?」 中井出「うむ!神殺しである!!……いやごめん未遂だった」 彰利 「おお、なんぞかゴッドでも殺そうとしたん?」 中井出「うむ!グングニルの槍と斬鉄剣が欲しかったんで主神殺しを少々!!」 彰利 「よっ……よりにもよって主神殺し!!」 すげぇや!さっすが天下の中井出さんだ! と思わず言いそうになってしまった。 しかもその手に持ってる槍を調べてみたところ、確かに神槍グングニルとか書いてある。 どうやらマジで勝ったらしい。 中井出「で、丁度スレイプニルの素材とオーディンの素材が     バックパックに収納されてるのを確認して喜んでた時に貴様が来たというわけで」 彰利 「あの……それがなしてオイラ達目掛けてレーザー放つ理由に?」 中井出「緩い顔で飛んでたから修正?」 彰利 「疑問系で言われてもねぇ……」 そりゃ確かに夜華さん抱き締めてて夢心地だったけど。 彰利 「そんでさ。いい加減敵対心解きません?」 中井出「ぃやだぁ」 彰利 「(健に似てる……!)───じゃなくて!なんだとてめぇ提督この野郎!」 中井出「ククク、そう急くな……解いてやってもいいぞ……?ただし条件がある!!」 彰利 「なにぃ!?おのれなんと卑怯な!見損なったぜ提督!     よもや猛者の頂点に立つ男が他人の苦しみを条件になにかを得ようとは!     …………あ、い、いや、卑怯でもないかなぁ……     誰だろうが平気で突き落とすのが猛者だし……。     しかし今はなんとなく卑怯だと言っておこう!何が望みかね!」 中井出「町に入って回復アイテム買ってきてくれないかなぁ……」 彰利 「………」 僕、魔王だから町に入れてもらえなくて……と泣きそうな顔で言う彼は、 どこまでいっても中井出だったという。 ───……。 ……。 で。 中井出「謝謝!謝謝黒い人!!」 頼まれたアイテムを買ってくると、心からの感謝の言葉を送られた。 大丈夫なんだろうか、こんな彼が魔王で。 彰利 「しかしキミねぇ、魔王なら魔王らしく町を襲って金品奪うとかせんの?     誰かに頼んでアイテム買ってきてもらう魔王なんて初めて見たよあたしゃあ」 中井出「だからいいんじゃないか……!!」 彰利 「いや……なんつぅか……中井出だねぇキミ……」 中井出「ぬ?俺が俺であることになにか不都合があるか彰利一等兵」 彰利 「んにゃ……ただねぇ、買い物してきてほしいなら、     もっと違う呼び止め方があったんじゃないかねぇと。     危うく死ぬところだったよこっちは」 中井出「当たり前だ!殺す気で撃ったのだから!!」 彰利 「てめぇそここそオブラートに包むべきとこだろうがこのクズが!!」 死んでたらどうするつもりだったのやら。 ……金奪ってホクホク笑顔になるんだろうなぁ。 さすが我らの提督……実にクズである。 ナギー『しかしおぬしも律儀よの。頼まれたからといって、わざわざ買ってくるなど』 彰利 「キョホホ……人質を取られちゃあ仕方あンめぇよ。     コヨーテは群れをつくらんが家族は死んでも守るものじゃけぇのう」 ナギー『敵対がどうと言うより、     アイテムを使い回復すればよかったじゃろうと言っておるのじゃ』 彰利 「ア」 なんたること……もしかしてオイラ、自分が思うよりずっと慌ててた? だってねぇ、夜華さんが怪我したままなのは嫌だし、 小僧だって……俺にとっちゃ息子みたいなもんだ。 小僧の前世の頃、あげにちっこい頃からいろいろ教えてきたのだ。 俺ン中じゃあオメェ……あれだ、もう息子みたいなもんじゃぜ? それとは別に、小僧になにかあったら椛が怖そうだし。 いやほんと……つくづく娘には甘いねぇ俺。 息子には厳しいのに。 ナギー『ほれ、もういいじゃろヒロミツ、早く行くのじゃ。     グレートキャッツガーデンに戻るのであろ?』 中井出「うむ!それでは彰利一等兵!スパッタカミーノ!!」 彰利 「スパッタカミーノ!!」 アイテム一式をゴソゴソとバックパックに詰め込んだ中井出が、槍を片手に去ってゆく。 結局なにがしたかったのやら……こっちは随分なとばっちりを受けた気がする。 つーかあの槍、バックパックに入らんのかね。 ナギー『のうヒロミツ?すぱ……?とはなんじゃ?』 中井出「黒い兄弟の合言葉だ。ほんとは違うが合言葉だ。黒の騎士団なんて目じゃねぇ」 ナギー『別れの言葉かなにかなのか?』 中井出「いや……どっちかっていうと挨拶のほうじゃないかなぁ……。     こんにちわとか、そっちの方だと思う」 ポツポツと喋りつつ、黒ルルカに乗ったドリアードと一緒に去ってゆく。 なんてマイペースなヤツデショ。 まあいいコテ、オイラはオイラでこっちの心配を……アレ? と、夜華さんと小僧に向き直った途端だった。 なんと中井出たちが全力疾走で逃走! その原因は……HPが全然回復していないことにあるのだ! 彰利 「中井出ぇええーーーーっ!!てめぇえーーーーーーっ!!!」 言ってはみるが中井出は既に遙か遠く───って速ェエーーーッ!! しかし敵対心だけは消してねぇ!や、野郎……なんてわんぱくな敵対心を持ってやがる! 声  「どれだけ離れていようと───僕はキミ達のことをいつも思っているよ!!     だから遠く離れていても僕らは一緒だ!!」 彰利 「一緒じゃなくていいから今すぐ敵対心解きなさいこの野郎!!     ちょ───待ちなさいっつーとるのに!!」 言ったところで無駄でした。 ごしゃーと走りながらヒャヒャヒャヒャヒャと笑う中井出が去ると、 その場にはHPが自然回復しない我らだけが残された。 ……でもやっぱり範囲というものがあるらしく、しばらくすると回復が始まった。 彼が変わってないっていうのを訂正しましょう……。 散々騒いだのち、 散々騒ぎながら去ってゆく僕らの提督は、台風のような野郎になっておりました。 そう思うと、俺も最近落ち着いてきたのかなぁとか思うわけですよ。 【ケース430:中井出博光/ドンヴラ】 中井出「そ〜ら〜を自由に〜♪と〜びた〜いな〜♪」 飛べたらとても楽だと思うのだ、僕的には。 だってわざわざ筏で海渡る必要無くなるし。 ……さて、また訪れました猫の楽園、グレートキャッツガーデン。 まんまと彰利一等兵をからかうことに成功した俺は、 目当てのものも手に入れたということで懲りずに来場。 主神様殺害容疑で手に入れた金をもとに、武器を鍛えてもらおうって魂胆さ。 中井出「猫〜……?猫居る〜……?」 ナギー『ここにおらなんだら何処に居るというのじゃ』 中井出「それもそうだね」 ニコリと笑って先へ進む。 そろそろ陽が沈むって頃のこの場は結構暗い。 このグレートキャッツガーデン自体に明かりはあるものの、まだ点けていないようなのだ。 だから俺は霊章に火属性を込めると、コシュッと指を弾けさせ……い、いいもん! パチンて鳴らなくたって火ぐらいつくもん!! ともかく、指の先で揺れるそれを明かり代わりに歩いた。 なんのことはない、空界におわすカルナくんの真似である。 一度やってみたかったんだよな、“着火”(イグニス)。 ナギー『面白い使い方をするの』 中井出「うむ。これは我が知り合いである七草霞流那という者の技法だ。     当時火が使えなかったこの博光は、     指鳴らしで火を着ける彼を羨ましく思ったものさ」 ナギー『でも火が小さいのじゃ。明かりとしては不十分な気もするがの。     火ではなく光を使えばいいのじゃ』 中井出「いやあの……俺ただやってみたかっただけだから、そこで正論を言われると……」 ちょっぴりショックだった。 ……。 そんな遣り取りをしながら一番奥まで進むと、そこでは…… 長老猫『ニャニャ?これは旦那さん、また来たニャ?』 長老猫が爪とぎをしていた。 専用の木があるらしく、それでザ〜〜ッシュザ〜〜〜ッシュと。 まるで伸びをするようにするその構えは……妙にヘンテコであった。 中井出「うむ猫よ。すまんがまたステキ素材が手に入ったのだ。     見るだけ見てはくれまいか。一応金もあるから」 長老猫『お任せニャ!旦那さんは半額で請け負うニャ!!』 ゴニャッニャアウッ!と腕を上げ、エイオーする猫。 実に元気である。 しかし…… 中井出「ありゃ?他の猫どもは?」 長老猫『大多数の新米猫たちが実習の時を迎えたニャ。     だからみんなで外に出ての練習中ニャ。だからここにはボク一人ニャ』 一匹って呼ぶべきじゃなかろうか。 ああいやそんなことは置いておこう。 そんなことより武器だ。 俺は手に持った槍をズオオと猫の前に置き、 さらにバックパックの中をゴソゴソと漁り始めた。 ナギー『いつ見てもカオスな荷物じゃの……整頓しろと言っておるのに』 中井出「ボタン一つで整頓できると思ったら大間違いだちくしょう……」 ていうかカオス扱いされた。 そんなにひどいだろうか、俺の荷物は。 中井出「これとこれとこれとこれ……あとこれだな。おお、忘れちゃいけない血染めの刃」 ガタゴシャと取り出しては置いていく。 そんな様に猫はポカンとし、この短時間でいったいなにしてきたニャ、と問いかけてきた。 中井出「冒険さ!」 ナギー『冒険なのじゃ!』 ルルカ『ゴエゴエ!!』 長老猫『まあ……いいけどニャ』 長老猫はピスピスと鼻を鳴らし、目も光らせてそれぞれの素材に意識を集中させる。 と─── 長老猫『この刃と槍は武器に合成できるニャ。     こびりついた血は剥がすとして……ニャニャッ?』 中井出「ウヌ?どうした猫よ」 長老猫『この血…………』 血染めの刃を手に持つと、ギラッ!ギラリ!と目を光らせる! どうやら隅々まで調べまくっているらしい。 しかしその度に目が光る猫も実に面白い。 傍から見てると異常空間以外のなにものでもないなぁ。 長老猫『これはとても珍しいものニャ……この血、とても強い魔力を秘めてるニャ』 中井出「魔力?」 長老猫『そうニャ。多分、何かしらの生き物を斬りつけた時、付着したものニャ』 中井出「しかし猫よ、俺は戦士だぞ?魔力がどうと言われてもな」 長老猫『“そういう種類”の魔力じゃないニャ。     これは飲んだり加工したりして初めて扱える類の魔力ニャ。     こっちの鎧の欠片も……ムムム、いい仕事してるニャ。     これも加工すればとてもいいモノが作れるニャ。     ……旦那さん!旦那さんの装備品、全部ボクに預けるニャ!!』 中井出「なにぃ!?……そ、それは服もか!?」 長老猫『服もニャ!!』 中井出「こ、この博光にファンタジーでパンツ一枚になれと言うのか貴様!     …………面白そうだ!是非やろう!!」 そんなわけで双剣を霊章から出し、 グローブと具足を取り、丁寧にそこらにあった台に置いてゆく。 そして我が手がスカーフを取り村人の服を取り、 やがてシャツに至ろうとしたまさにその時! ナギー『D・V・D!!D・V・D!!』 いたいけな少女が解き放った言葉の意味を受け取ると、 僕はかつてない速度で、笑顔のままに殊戸瀬二等に怨念メールを送るのだった。
【Side───その頃の殊戸瀬さん】 ギギィイイイイイイピピピピピピンッ!!! 殊戸瀬「………」 夏子 「うわっ!またメール!?今度はなに!?」 殊戸瀬「全部提督さんから……」 夏子 「今度はなにやったの……?」 殊戸瀬「……“姉DVD”って知ってる?」 夏子 「そりゃまあ……猛者ですから」(理由になってない) 殊戸瀬「ナギ娘にね。     提督がシャツを脱ごうとした時に言ってあげると喜ぶって言っておいた」 夏子 「うわあ……」 【Side───End】
中井出「……というわけでナギー退場」 ナギー『何故なのじゃ!?シャツを脱ぐ時にこう言うと喜ぶと殊戸瀬が言ってたのじゃ!』 中井出「喜ばないよ!!いいから退場!!ナギーも俺のボディなぞ見たくないだろ!?」 ナギー『わしはべつに気にしないのじゃ』 中井出「しなさい!ていうかして!お願い!!     子供の前でストリップショーなんてどこの変態だよもう!!」 ナギー『ヒロミツはエロマニヨン人の最後の生き残りなのじゃろ?     今更恥ずかしがることはないのじゃ』 中井出「ちょっ……なに邪気の無い顔でそんなこと蒸し返してるの!!     そんな種族居ないって散々説明したでしょ!?     僕は変態でもエロマニヨン人でもエロマニアでもないよ!!」 ナギー『な、ならばエロマニアンデビル』 中井出「じゃないよ!!いいからもう向こう行っててったらナギー!     必要だから脱ぐのにそんな風に誤解されたら僕本当に変態だよ!!」 ナギー『むー……解ったのじゃ。ではわしはここを探検してくるのじゃ。     ヒロミツ、終わったらちゃんと呼ぶのじゃぞ?     置いていったりしたらヒドイのじゃ』 中井出「契約の指輪の力で契約者のもとに転移、とか……出来ないのか?」 ナギー『………………わ、忘れておったわけじゃないぞ?』 出来るらしい。そして忘れていたらしい。 ナギー『な、なんなのじゃヒロミツ!その顔は!     忘れてなどおらんのじゃ!覚えておったのじゃ!     ただ普通に置いていかれるのは嫌じゃという話をじゃな!』 中井出「うむうむ……ちょっとミスしちゃっただけなんだよね……。     ド忘れしちゃっただけなんだよね……解ってる、うむ解ってるぞナギーよ……」 ナギー『忘れておらぬと言っておろうに!!     と、とにかく!置いていったら承知せんのじゃー!!』 そう言い放って、ナギーはぱたぱた来た道を戻っていった。 長老猫『とても元気ニャ』 中井出「まったくだ」 長老猫『ドリアードはとても物静かな精霊って聞いてたニャ。あれはウソニャ?』 中井出「まあ……最初に会った頃からは考えられないくらいには元気だな」 最初はただの偉そうな小娘だったのになあ。 こうまで染まってくれると、連れ出した甲斐があったってものさ。 一度関所に戻った時は、 どうにもその頃のことを思い出したのか、堅苦しい雰囲気が戻る時もあったけど。 ともあれ、そんなことを考えながらもクロスアウト完了。 パンツ一丁になった俺は、 ヴィクターのようにケツをキュッと締めて紳士な笑顔でそれらを猫に渡した。 ちなみに俺はトランクス派である。 長老猫『それもニャ』 中井出「…………」 ビシィと器用に指差してくれちゃった先には僕のファイナル防衛ライン。 これを奪われると俺のDマグナムが解放されてしまうんだが…… 中井出「さすがにこれは嫌なんだが……」 長老猫『ムム、無いと困るニャ。これから作るものにはそれが必要ニャ』 中井出「ぐっ……そ……そうなのか……」 なんとかまからないのか、と訊いてみても無駄だった。 仕方ない……覚悟決めろよ、俺……。 中井出「ていうかさ、風呂に入るわけでもないのに     ファンタジーで全裸になる俺ってなんだろうなぁ……」 長老猫『知らないニャ』 ああそうだろうよ。 とりあえずこれで前を隠すニャと言われて渡された布切れで隠しつつ、 ヌギヌギと艶かしくザ・ラストサムライを解放してゆく。 そうしてそれを渡すと、俺は産まれたままの姿になった。 おお神よ……これはどんな羞恥プレイだこの野郎……!! 長老猫『それじゃあちょっと待ってるニャ。大急ぎで仕上げてくるニャ』 中井出「ほんとお願いします……」 もう敬語だった。 ……。 そうしてトカカカカ……と工房に潜り込んでいった猫を見送ったのち、 俺は新たな最終防衛ラインな布を手に、ボーとしていた。 これ……ナギーが戻ってきたら大変なことに……ならないか? でもなぁ、妙に誤解されそうなんだよなぁ、あいつ殊戸瀬にいろいろ吹聴されてるから。 中井出「……よし」 ならば、と。 俺は布を器用に結わいたのちにアレをアアしてアレでこうして───ジャキィン!! 中井出「魂のッ!!叫びッッ!!」 ふんどしとして身に着けた!! 丁度赤だったのが幸いだ。 やはりふんどしは赤だろうよ。 フオオ……なにやら知らんが俺の中で熱きソウルが燃え盛るのを感じるゼ……!! でもやっぱりナギーの前に出るのはよしといた方がいいね、絶対。 一度誤解すると、それを解くのに物凄く時間を要するから。 さて……じゃあ俺はこれからどうするべきか……。 中井出「ふんどしっつったら……アレしかねぇだろ?」 行動するって思った時にはもう行動は終わっているのだ。 俺は既に駆け、長い長い猫の洞窟を出口に向かって一直線に駆けたのだった。 あ、でも途中でとあるブツを見つけたのでそれも持って。 ───……。 ……。 ……で。 長老猫『ゴニャ〜〜ォオ!旦那さん出来たニャーーーッ!!……ってここにも居ないニャ。     何処行ったニャ旦那さん……ニャニャ?』 ドォッパァアーーーーン!!!! 中井出「大漁ォオオーーーーーーーッ!!!」 長老猫『ギニャーーーッ!!?』 そう、ふんどしっていったらこれ! 俺は海に潜り、猫の洞窟の途中で見つけた網を使って漁をしていたのだ!! ワハハハハ!!やっぱ熱き思いは広い海にぶつけるに限るのう!! 中井出「どうだ猫よ!魚がいっぱい獲れたぜ〜〜〜っ!!」 長老猫『いっぱいって……獲りすぎニャ!     これだけの量を片手で引っ張るなんて、旦那さんどんな力持ちニャ!?』 ンゴゴゴゴゴと引っ張る網の中にはこれでもかっていうくらいの量の魚ども。 中にはモンスターとかも混ざってるが、まあ気にしない。 本来ならここで、 でっかく“大漁”と書かれたデカい旗でも振り回したい気分なんだが…… 生憎とそんなものは無いわけで。 俺はペチャペチャと濡れた足で歩きながら、網を岩場に括りつけた。 中井出「いやぁ〜、やっぱ疲れないってお得だな〜。どんだけ泳いでも平気平気」 長老猫『ニャニャ?よく解らないけど武具が出来てるニャ。     剣の方は合成させただけだから威力は上がってないけど、     篭手と具足と他の防具の方にはちょっと自信ありだニャ』 中井出「なにぃ、武器を第一には出来なかったのか……」 長老猫『さすがにあれだけの武器を鍛え続けるのは難しいニャ。     +1200は相当大変なものニャ。     人間の勇者だってそんなもの持ってなかったニャ』 中井出「そりゃ……」 結構なことで。 と、ドッスィーのままで口にした。 言うまでもないがドッスィーってのはふんどし着用の益荒男(ますらお)のことだ。 ちなみにますらおってのは“丈夫”とも書くらしい。 一説によると、どれだけ怪我をしてもまるで怯まぬ様からそう書かれ、 故に痛くても平然として振舞う際には“大丈夫”と書くらしい。 語源は“ますらお”の上を行く“大ますらお”という意味であり……ああもちろん嘘だ。 中井出「まあなんだ、そろそろ武器を鍛えるのも限界ってことか?」 長老猫『そんなことないニャ。鍛えるだけならまだまだ伸びるニャ。     でもそれをするにはもっと特別な材料も必要になってくるニャ。     ところで旦那さんはマテリアは持ってないニャ?』 中井出「マテリア?いや……それがあれば強化出来るのか?」 長老猫『強化というよりは、スロットに嵌め込んで武器をパワーアップさせるニャ。     この剣は今、長剣時は14個、双剣時には7個ずつ嵌める場所があるニャ』 中井出「ほほう……ちなみにマテリアにはどんなものがあるんだ?やっぱ属性だけか?」 長老猫『それもあるニャ。あとはパワーマテリアとかマジックマテリアニャ。     ガード系のマテリアもあるニャ。ともかくいろいろニャ』 中井出「それはどうやって手に入れるんだ?お前が売ってたりは……」 長老猫『作るしかないと思うニャ。錬金術で作れるって聞いたことがあるニャ』 中井出「ぐおお……」 作れというのか。 面白そうだが俺はそれより冒険を楽しみたいんだが……。 ……そういやそれっぽいヒロミ通信が届いてたような気がしたな。 あとでもう一度目ェ通しておこう。 ───……。 ……。 ジャジャンッ!! 中井出「我が魂……静沈せり」 そんなわけで着替えた。 ……んだが、なにか変わったようには見えないんだが……。 村人の服、だよな?これ。 篭手と具足は明らかに変わってるんだが…… 中井出「猫よ、これの一体何処がどう変わったと?」 長老猫『その服自体が“鎧”になったニャ』 中井出「……おいおい猫ぉ……馬鹿も休み休み言え」 長老猫『し、失礼ニャ!ちゃんと鎧ニャ!少し力を入れて殴ってみれば解るニャ!』 中井出「そ、そうか?よし、そいやぁっ!《ガイィンッ!!》いってぇえーーーっ!!!」 鎧だった。 というか……物凄く硬かった。 中井出「どっ……どうなってんのこれ!マジック!?」 長老猫『フフフ、それこそボクの腕の見せ所だったんだニャ。擬法鎧(ぎほうがい)ブリュンヒルデ。     神の鎧の欠片とスレイプニルの素材で作った意志ある鎧ニャ。     どうしてそんなカタチなのかというと、この鎧は持ち主が望むカタチや、     鎧自体が望むカタチに自在に変化するんだニャ。     もちろん鎧としての防御力も相当に高いニャ。     こんなカタチになっても防御力は落ちないから、     好きなカタチのまま旅を続けられるニャ。凄いニャ』 中井出「ほほう……確かにそれは凄いな」 長老猫『で、次の説明ニャ。篭手は邪竜装(じゃりゅうそう)ファフニールだニャ。     剣にこびりついてた血をグローブと一緒に加工して作ったニャ。     炎の威力が格段に増して、爆発もより激しくなったニャ。オススメ品ニャ』 中井出「おお……」 既につけている篭手……というかグローブを振るってみる。 が、てんで重くない。 拳を握っても邪魔に感じることもないステキなフィット感だ。 いい仕事してる。 長老猫『次ニャ。具足は、これも神の鎧のカケラとスレイプニル素材を足して、     イブシ銀を昇華させることで作ったものニャ。     雷神装ドンナーというものニャ。ドンナーは知ってるニャ?』 中井出「あーうーいやそのう…………確か雷神トールの別名だったっけか」 長老猫『そうニャ。つまりそれだけの雷能力を秘めたものになっているニャ。     取り扱いには気をつけるニャ』 中井出「大丈夫!何を隠そう、俺は武装管理の達人だぁあッ!!」 長老猫『そういうことを自信満々に言う人が一番怖いニャ』 もっともです。 長老猫『それじゃあ最後ニャ。最後は───』 中井出「もちろんこれだ!」 ズシャンとジークフリートを振り上げる。 おお美しい……いつ見ても、なんてお前は美しいんだ……イッツビュ〜テフォウ……! ……などとウォートラントルーパーズのハーネマン教官の真似をしている場合ではなく。 早速調べるを発動。 ザァッ見てゆくが───+や説明書きはやはり変わっていない。 しかしながら問題は追加されたスキルである。  ◆追加技術スキル  バルムンク   :★★★★★☆/基本攻撃力UP+全ての敵に対して有利に戦える  戦乙女の加護  :★★★★★☆/基本防御力UP+全ての属性攻撃に対して小耐性  邪竜の血殻   :★★★★★☆/防御力大幅UP しかし背中への攻撃が弱点に  邪竜の血液   :★★★★★☆/全ての生き物の言葉を理解できる  メガボマー   :★★★★★☆/火属性攻撃で大爆発を起こす ボマーの昇華スキル  サンダーフォース:★★★★★☆/雷属性攻撃で高圧雷撃を追撃  ◆追加秘奥義  グングニル :剣の先から超高圧縮光属性レーザーを放つ。         無消費なのに高威力な、持ち主にやさしい神槍の一撃。         ただし反動が物凄いので気をつけましょう。戦闘中一度のみ  斬鉄剣グラム:圧倒的ザコを一層する無情の剣閃。         ザコではない敵には普通にダメージを与えるカタチとなる。         屠竜の加護か、竜族には特にダメージ大。戦闘中一度のみ。 ……。 中井出「嗚呼……」 なんていうか……毎度毎度嬉しいなぁ、武器が強くなるのを見る瞬間は……。 と、頬を揺るませていると、ジャンジャンジャカンチャチャンッ!! と、急に奇妙な音楽が!! ピピンッ♪《ニーベルンゲンのアーティファクトを揃えました!》 そして奇妙なメッセージが!! アーティファクト?なんのこっちゃ……。 コシャンッ♪《タマの鈴が贈られます》 中井出「おわったた!?」 突然ポンッと目の前に出現した鈴を慌てて手に取る。 ハテ……タマの鈴?  ◆タマの鈴───たまのすず  愛くるしい猫、タマの鈴。どこのお宅のタマの鈴かは解らないが、  FF6にてコロシアムに現れるジークフリードが賞品として持っている。  ジークフリード、ジークムント、ジークリンデ、ブリュンヒルデ、ファフニール、  ニーヴェルンゲン、バルムンク、グラム、グングニルなどのものを揃えると貰える鈴。  持っているだけではあまり役に立たないが、  猫にとっては犬でいう犬笛のようなものに近い音色を発する。  もし比較的近くに万屋猫が居る場合は、これで呼び出すことも可能だろう。  ただし現れる猫は様々であり、欲しいものを売っていないかもしれませんが、  そんな時、猫に文句を言うのは可哀相なのでやめましょう。  *潜在能力:ショップキャットを呼ぶ 中井出「おぉおおおっ!!!」 詳細を見た俺は素直に感激! これだよ!こういうのが欲しかったんだよ俺は!! おおありがとうジークフリード!! まさかこんな鈴が特典として付いてくるとは!! 中井出「………」 長老猫『ニャ?なにニャ?』 と、ふと見下ろした長老猫。 どんな風に効果があるのか試したくなるのは原中として当然というわけで…… チリンチリ〜ン♪ 長老猫『ゴニャァア〜〜〜ォオ!!』 と、タマの鈴を振るって音を出してみると、 毛繕いのためか少し離れていた長老猫が、両手を挙げてトカカカカと走ってきた。 そして俺の目の前に止まると、ゴニャッニャアオと頭を下げる。 長老猫『お客様は神様ニャ〜♪───ハッ!?なにやってるニャボク!!』 そして正気に戻る猫。 長老猫『な、なんだかその鈴の音を聞いたら、     何をどう思うよりも先に商魂がくすぐられたニャ……!!』 中井出「な、なるほど……」 そういう原理なのか……。 これはいいものを貰った!! これで町に入らずともアイテムが買える! ありがとう北欧神話!ありがとうFF6! 僕はこれからももっと頑張っていけそうです! 中井出「ナギー!?ナギーやぁーーっ!!     旅に出よう旅に!僕らの旅は始まったばかりだぁーーーっ!!     おお猫、ありがとう!足りんかもしれんがこれは代金だ!」 長老猫『ニャニャ、十分だニャ。旦那さんのは半額ニャ。     それじゃあ旦那さん、またご贔屓にニャ〜〜ッ!!』 中井出「おぉーーーっ!!いろいろ助かったぁーーーっ!!」 猫に手を振ると、俺は曲がりくねった通路をズドドドと走り回りナギー探索を開始。 そして発見するや、満潮になる前に洞窟を出て海を渡り、 新たなる冒険の旅に出たのであった。 Next Menu back