───冒険の書165/VS氷雪竜───
【ケース440:中井出博光(再)/ガスパラージュの声が聞こえる】 シャランッ…… 藍田 「オッ……!?」 それは……どれほど走り回った頃だっただろう。 もういい加減地図を見た方がいいに違いないと本能が叫ぶのを原ソウルで押し込める中、 無視して走り回っていた俺達は……いつしか風も雪も吹かない場所に辿り着いていた。 藍田 「な、なんだこりゃ!吹雪なんて吹いてないのにさっきよりよっぽど寒ぃぞ!?」 辿り着いたのは一面綺麗な銀世界。 音がまったくといっていいほど存在しない空間であり、 以前迷い込んだままの静けさと美しさをそのまま残していた。 そう、ここは─── 中井出「藍田二等!上だ!」 藍田 「イェッサー!っておわぁあーーーーっ!!」 プラチナル平原。 フリーズドラゴンが生息する領域であり、 ノースノーランド地方に降る雪とは完全に乖離された氷雪竜の領域。 セルシウスの力が及ばないそこは、恐らく…… 見上げた先に居たフリーズドラゴンの力で自在に雪も風も吹く場所だ。 藍田 「ドドドドラゴン!ドラゴンだぜ提督!うおおでっけぇええーーーーっ!!     ミストドラゴンなんて相手じゃねぇよ!」 中井出「うむ!強さも比較にならんので心してかかれ!遠慮は無用!最初から全力でだ!」 藍田 「サーイェッサー!!ふぅううぉおおりゃぁああああーーーっ!!!」 藍田が脚に力を込める! しょっぱなから烈風脚でいくつもりだ!───だがしかし!! 藍田 「《スボォンッ!!》オワッ!?な、なんだこりゃ!」 蹴り弾いた筈の地面に飲まれ、跳躍は出来なかった。 この地面……いや雪か。 普通に立ってる分なら埋もれたりしないが、どうやら強い衝撃を受けると崩れるらしい。 恐らく地盤である雪が藍田二等の烈風脚に耐えられなかったんだろう。 ならばどうするか?諦めるか?───実に否である。 藍田 「地盤が雪なら溶かせばいい!!武装錬金!!」 胸に手を当て、叫ぶと同時に藍田二等のジェットブーツ(というらしい)に、 さらに黒い武装がなされてゆく!! ブーツの上からさらに脚甲って具合悪くないか?と思うものの、 全然そんなことはないそうだ。 藍田 「バトルグリーヴの武装錬金!ダークネスランペルージュ!!     そぉおおりゃぁああっ!!」 さらに武装がなされると、藍田は軽い跳躍とともに脚甲に熱を込める。 やがて足場である雪へと己の体重を込めて 藍田 「“悪魔風脚(ディアブルジャンブ)一級挽き肉(プルミエールアッシ)”!!」 蹴りの弾幕を放つ!! ジュワヒュボボボボボボボボボンッ!!!───ダンッ! 藍田 「よっしゃあこれで足場がって深ッッ!!」 雪を灼熱の蹴りで溶かした藍田二等! だがしかし!地面はあまりにも下にあった! ていうかどういう雪の高さだよここ! 中井出「ならば次は俺がいこう!我が左手に大地!我が右手に炎!───合体!!     “ヴォルカニックシェイカァーーーーーッ”!!!」 両手に込めた属性を、手をガッシィと合わせることで融合! さらにその状態のまま身を屈め、思いっきり大地へとメテオスマッシュ!! すると雪の大地が波立ち、同時に溶け、ついには蒸発する!! 藍田 「うおっ……!?すっ……すっげぇええーーーーっ!!     て、提督てめぇいつの間にこれほどまでの強さを……!!」 中井出「うむ!貴様らが天で修行する中で、     この博光はそれはもう嫌というほど死ぬ思いで強くなってきたのだ!!     才能はなくともレベルなら無駄にある!それがこの俺中井出博光である!!     さあ───臆さぬならば!かかってこい!!」 完全に乾ききった大地の上に立ち、両手に双剣をジャキィンと出して構える。 その視線の先にはようやく大地に降り立ったフリーズドラゴンが。 藍田 「ぬおっ!あいつ計り知れない強さだってよ提督!どうする提督ヤバイぞ提督!!」 中井出「ええい気持ちは解るが狼狽えるでないわ藍田二等!!     大丈夫だ!根拠はまるで無いがなんとかなると信じたい!!」 藍田 「大丈夫って言葉は断言したのにどうして続く言葉が不安全開なんだよ!!」 中井出「さあ来るぞ!そんなことは後回しにして構えるのだ藍田二等!」 藍田 「だぁああくっそぉおおっ!!かかってこいオラァ!!」 ギシャァアアンと叫ぶフリーズドラゴンを見据え、藍田が構える。 装備した具足は既に物凄い熱を放っており、 雪が溶けた大地を今もジリジリと焦がしている。 藍田 「ヒュウッ───“1”!」 と思うや、見ていた具足が視界から消える。 烈風脚だ───最初から全力でかかるとは藍田二等め、やる気満々じゃないか。 藍田 「“2、3───4”!!!」 ダダダダンッ!!と勢いよく加速する藍田の姿はまさに烈風! かなり距離があったっていうのに一呼吸で詰め、最後のひと蹴りで地面を離れると、 まるで真横に飛ぶ流星のようにフリーズドラゴンへとぶつかってゆく!! 藍田 「“羊肉(ムートン)ショット”!!!」 ジュガァアッパァアアアアアンッ!!!!! フリーズドラゴン『キギャァアアアォオオオオッ!!!』 放たれた流星蹴りはフリーズドラゴンの腹部へ直撃!! 激痛のためか放たれた咆哮は耳を劈き、 だが藍田は怯むことなく連撃を重ねバゴォンッ!! 藍田 「ギャアーーーーッ!!!」 叩き落された。 藍田 「じょじょじょ冗談だろ!?効いてないのかよ!!」 しかしすぐさま起き上がると疾風の如くを使ってまでここに戻ってきた! おお、助かるためなら奥義も使うこのしぶとさ、まさに国宝級。 中井出「藍田二等よ……貴様はどうやら天での修行に励むあまり、     地上の厳しさを忘れてしまっていたらしいな……。     宝玉を守護する守護竜がそんじょそこらの竜族と同じ強さなわけがあるまい!!」 藍田 「しかしでありますな提督!     弱点属性で攻撃したってのにただ咆哮されるだけって物凄くショックであります!     こんな筈ではなかったのに!奥義烈風脚も覚えてさあいざってところでコレ!?     あんまりであります!サー!!」 中井出「奥義覚えた者がどんな逆境も越えられると思うなーーーっ!!     漫画などの世界がどうかしているのだ!確かに今我らはゲームの世界にいる!     だがその中で奥義を覚えたからといって次に戦う相手に簡単に勝てるほど、     この世界は漫画寄りではないのだ藍田二等!!理解したか!?」 藍田 「サッ……サーイェッサー!!ならばいったいどうするでありますか!?」 中井出「どうってお前……効くまでやるしかないだろ」 藍田 「うーおー……策もなんにもないところがなんて原中チックなんだちくしょう……。     しかし大変解りやすいであります提督!」 中井出「うむよし!ならば小難しい作戦など無しにして全力でぶつかるものとする!!     覚悟はいいかぁっ!?」 藍田 「荊棘を踏んだぞぉっ!!」 やっぱり我らの戦い方といったらヤケクソまがいのぶっつけバトル!! あとのことなど気にしません!達人方にはそれが解らんのです! 藍田 「九頭竜闘気は無くなったが、この藍田亮!速度に関してなら自信あり!!     ジェットブーツ&エルメスの靴のヘイスト能力と、     さらに烈風脚と疾風の如くとAGIが弾き出す限界ブッチギリの速度!     そこから放たれる蹴りに今全てを込めて!!」 中井出「よし行け藍田二等!その隙に俺はやりたいことをする!!     カモンパンドラの奇跡!!パルプンテェエエーーーーーーイ!!!」 藍田 「ひ、人が全力出そうってのによりにもよってそれかぁああーーーーーっ!!!」 大丈夫だ藍田二等よ! なんだか今の俺には心に光が差し満ちている! こんな清々しい気分は久しぶりだ!だから大丈夫!! ダララララララ……ジャンッ!!《博打No10!バーチャルシフト!!》 中井出「おぉっ!?」 藍田 「な、なんだぁっ!?なにした提督!景色が急に───」 蹴りを放とうとしていた藍田が大驚愕! それもそうだろう、なにせ景色がメコモコグニャゴニャと変貌してゆくのだ! そう、それはまるでサガフロンティアのVSジェノサイドハート戦のように……!! ってそうか、バーチャルシフト!これって思いっきり場を変換させるアレか!! とか思ってるうちにシフトは終わり、景色は───なんとマグマ燃ゆる熱風地帯に!! フリーズドラゴン『ギアァアォオオオオオオオゥウウウッ!!!!』 その場のあまりの熱さにフリーズドラゴンが叫び、怯みだす! 中井出&藍田『うあぁあぢゃぢゃぢゃぢゃあああーーーーっ!!!!』 そして僕らも熱かった!! 暑いじゃ足りない!とっても熱い!! 藍田 「ててて提督てめぇええええーーーーーーーっ!!!!!     なんだってこんな迷惑な能力発動させたんだよ今すぐ戻せぇえーーーーっ!!!」 中井出「そうしたいのは山々なんだが今はなんだかとっても嫌な予感がするから断る!!」 藍田 「なっ……いいからやれって!パルプンテだろ!?     熱くてこれじゃあ戦いにならねぇでありますサー!!     そりゃフリーズドラゴンのHPも、     なにもしなくてもジリジリ減っていってて便利っていや便利だけどさ!     これじゃこっちもまいっちまうだろうが!!」 中井出「ダメだ!なんだか嫌な予感がするのだ!!今だけは!今だけはやっちゃならん!     この能力基本的に俺に優しくないんだから連発は危険なんだよ!!」 藍田 「だったら能力なんか使わずに普通に戦えコノヤロー!!」 中井出「馬鹿野郎!いつダイナマイトを引き当てるか!     そのスリルが面白いんじゃないかッツ……!!」 藍田 「無意味に柴田亜美マンガの真似してんじゃねぇえっ!!     だがその意見には賛同であります!サー!!だからGO!!」 中井出「お前ってとことん怖いもの無しな」 藍田 「え?ダイナマイトっつったってそうそう悪いもんじゃないんだろ?」 中井出「………」 知らないって平和だなぁって本気で思った瞬間だった。 ならばいこう!今更なにを恐れることがあろうか!! 中井出「パァアアルプンテェエエエーーーーーイ!!!」 心に覚悟をドカンと持ち、武器を仕舞った俺は高らかに叫んだ! さあなんでも来い!なんでも受け止めてやる!この手に掴んだ藍田二等を巻き込んで!! 藍田 「え?あ、あれ?提督?なんで俺の手掴んでんの?なんで?え?あれちょっと!?」 中井出「安心しろ……俺ひとり地獄へはいかん」 藍田 「なんでここでベジータの真似なんだよ!待てちょっと待て!!     それってそんなにヤバイ能力なのか!?」 中井出「ヤバイヤバくないに関わらず、とりあえず俺には滅法やさしくない」 藍田 「………………うおお離せぇええええええっ!!!」 ポク、ポク、ポク、チーン、と。 俺が言った言葉の意味を受け取った藍田は全力を以って手を外しにかかる! しかしこの博光! 天で修行した者とやらに力負けするほどハッピーな生き様さらしちゃいねぇ!! 中井出「爆肉鋼体!はぉおおおおお……!!!」 藍田 「《メキメキメキメキ》いででいでいでいででだだぁああーーーーーっ!!!     待て待て骨ッ!折れッ!!いたっ!いっだぁああーーーーーーーっ!!!」 STRマックスで完全に藍田を掌握!! やがて鳴り響くドラムロールがジャンッ!という音を弾き出さんとするであろう頃!! ジャンッ!!《博打No29!ハイペリオン!!》 中井出「ウオッ!?」 突如背中にズッシリとした重み! 急に舞い降りたそれにSTRマックス状態の俺は耐え切れず、 つい跪くように屈んでしまった───次の瞬間!!! ドゴォォオオッチュゥウウウウウウウンッ!!!! 中井出「うおお!?」 藍田 「ななななんじゃこりゃぁあああーーーーーっ!!!」 我が背中かた何かが大空へと羽ばたいた!! ていうか飛んでいった! 慌てて見上げたそれは───なんと火を噴きながら飛んでゆく……ミサイル!! なんかどっかで見たことあるミサイル!! 藍田 「あ、あれってアレだよな……バーチャロンの……」 中井出「だ……よな。ってことは……」 マキィーン♪と熱気溢るる天へと消えた超巨大核ミサイル“ハイペリオン”。 すげぇ……パンドラポットってこんなステキ能力まであったのか……。 でも……多分爆風には俺への攻撃判定もあるんだろうなぁ……。 きっといつか戻ってくるだろう。 そして戻って来たその時こそ、凄まじい爆発を巻き起こすに違いない。 なにせ核ミサイルだ、ヘタすりゃ即死かもしれん。 ならば─── 中井出「この状況を全力で楽しむぞ藍田二等!」 藍田 「きっとそう言ってくれると信じておりましたサー!!」 ミサイルが落ちてくるまでの時間なぞ知らん! むしろ知らないほうがまだソワソワドキドキして面白い! 中井出&藍田『臆さぬならば!かかってこい!!』 やっぱりヤケクソバトルモード。 いつだって我ら原中はいっぱいいっぱいに戦いましょう! だってオラたちは……人間なんだから!! 藍田 「しかし提督!熱くてかなわんであります!どうにかなりませんかサー!!」 中井出「無理」 藍田 「ゲゲェあっさり無理宣言しやがった!このクズが!!」 中井出「だからこの能力は基本的に俺にやさしくねぇって言ってるだろうがクズが!!     適当にホイホイ発動させたらやさしい能力が出ると思ったら大間違いなんだよ!」 早くも仲間割れムードのように叫び合う我ら。 しかしどれだけ罵倒し合っても、 それが楽しむためのエッセンスなのだから僕らはまるで後悔しない。 フリーズドラゴン『ルゴォオゥシャアアアアッ!!!』 藍田      「うおっと!?《シュガァッフィィイインッ!!!》ギャーーーッ!!」 中井出     「あ、藍田二等ォオーーーーーッ!!!」 しまった!馬鹿なことやってるうちに藍田二等がアイスブレスをまともにくらった!! そして見事に氷像となる藍田二等……!! でもなんだかこのフィールドならすぐに溶けそうなのでほうっておくことにした。 中井出「さぁこいぃ!!」 ジャキィンと再び出現させた双剣を構える。 もはや恐怖は……ありまくる。だが押し込める! 竜族との戦いで最初から恐怖しないってのはよほどの異常者である! しかも相手の出方が未知数ならば尚更。 俺の場合は戦いながら相手を知って、 それからがむしゃらにならなきゃ大体恐怖は薄れてくれやしない。 だからいつでもまっすぐGO!! フリーズドラゴン『クゥウオオオオオオオオオッ!!!!』 中井出     「ふぅううおおおおおおっ!!!!」 互いに叫び合い、いざ、とぶつかり合う。 敵さんの方にそのつもりがあったかどうかは解らないが、 その巨体から繰り出されるぶちかましを双剣でドッガァアと受け止め、 まるで鍔競り合いをするかのように押し合い、 中井出「ぐ、ぬぅううあぁあああああっ!!!」 ゴォッ───パギャァアアアンッ!!! 渾身を以って弾き返す!! そして驚愕に染まるフリーズドラゴンが体勢を立て直す前に、 炎と元素を込め、長剣化させたこの剣で! 中井出「業魔ァッ!灰燼剣!!」 全力を以って破壊にかかる!! フリーズドラゴン『───!ぬるいわ───!!!!』 中井出     「いっ───!?」 思い切り相手に集中したからだろうか。 聞こえたフリーズドラゴンの声に一瞬意識が驚愕した。 それが隙になったのだろう。 踏み出す一歩が完全に遅れ、フリーズドラゴンに体勢を立て直す機会を与えてしまった。  ヒュゴシュガァッフィゾガガガガァアアッ!!! 中井出「く、あぁああっ!!!」 灼熱の炎を纏った剣は吐き出された超圧縮アイスレーザーで圧され、 それを切り裂いた先で、剣をフリーズドラゴンに受け止められた時には、 既に灼熱の勢いは完全に殺されていた。 中井出(くはっ……なんつぅ温度のブレス吐きやがるんだこいつ……!!) 失敗した。 やっぱり武器の合成くらいは済ませておくべきだった。 いきなり行き当たりバッタリで挑むあたり、 自分がとことん原中の猛者であることを自覚してしまう。 フリーズドラゴン『ルゴォオウシャァアアアアッ!!!!』 中井出     「───!くあ《ゾブシャアッ!!》いっ……がぁああああっ!!!!」 勢いを殺され、氷の鱗の一つさえ砕けなかった剣。 そして、攻撃の勢いで体勢を完全に崩していた俺は、 為すすべ無く左腕をフリーズドラゴンに噛まれた。 腕の脇を、どころじゃない。 肩から先を飲み込まれるような勢いで、だ。 当然鮮血が噴き出し、今尚メキメキと噛み千切らんと圧するその威力は悪夢的だ。 激痛で意識が飛んでしまいそうになるくらいだ。 だが───いっぺん知ってみろドラゴンさんよ! 死中に……活ありだ!! 中井出「ミストルテイン解放!!ブッ飛べカラミティイイーーーーーッ!!!!」 キュゥイキシャバボォッガァアアアアンッ!!!! フリーズドラゴン『ギァアアアォオオオオンッ!!!!』 長剣を霊章に仕舞うや、食われた腕からミストルテインを出し、 渾身を込めた砲術王スキルをブッ放す!! 竜撃砲と呼ばれるそれは腕から出すよりも射出するものから発射した方が強い。 だからミストルテインを“矢”のタイプとして出現させて、 大砲として火属性の塊を射出した。 フリーズドラゴンの口の中で放たれたメガボマーを大量含んだその大砲は、 確かな破壊力を以ってフリーズドラゴンをこれでもかというほどフッ飛ばした。 中井出「ぐ、あ……!いっつ……!!」 だがこっちもただでは済まない。 あんな至近距離で、しかも加減無しでブッ放したもんだから、 骨は軋むわ口内での爆発に巻き込まれるわでズタズタだ。 中井出「、かぐっ……!」 俺はすかさずグミを飲み噛むと傷を癒し、剣を出現させて構えた。 相変わらず油断なんかしてるつもりはないが、 それでも自分が想定している攻撃の上をいかれると反応が鈍る。 そのあたり、いつまで経っても“俺自身”はそう成長してないんだなって呆れる。 中井出「エネルギー!全開!!」 けどそれでいい。 ヘタに悟ってたらこの世界は楽しめやしない。 だったら未熟でもいいから全力でこの世界の壁にぶちかましを決めて、 そこいらにある常識の全てを破壊しつくしてやる! 中井出「ジュースティングッ!スラッシャァアアーーーッ!!!」 紅蓮に炎、蒼碧に光を込めて長剣化させた俺は、 光の速度を利用して一気に地面を蹴り弾く。 カイザードラゴンに勝てたからって自惚れたりはしない。 相手は竜族だ、人間なんかよりよっぽど強いのは当たり前って考える。 だから全力でぶつかって、勝てるなら良し、負けるなら何度だってつけねらう!! フリーズドラゴン『ギシャァアォオオウウッ!!!ギシャァアアッフィィイイインッ!!! 中井出「───!うおやべっ!!」 突っ込んだまではよかった。 だが口内を爆発され、 怯んでいたフリーズドラゴンは俺が攻撃体勢に入った途端に持ち直し、 俺目掛けて再びフリーズレーザーを放ってきた!! このままじゃ以前の時や藍田と同じ結果に───! えーとえーとってそうだこれだ!! 中井出「フロート全開!!《シュゴォッフィィンッ!!!》ッ……いがぁああああっ!!」 上半身はなんとか躱した。 だが遅れた下半身……膝から下が、完全に氷結された。 しかもその凍らされた場所から、 血液までもがどんどん凍り付いてゆくような感覚さえする。 凍った部分が冷たすぎるのだ。 流れる血液が冷たい。 芯から凍らされるのって、多分こんな感じだ……! 中井出「っ……くそっ!ドンナー!!」 キィン!ヂガガギバッシャァアアアアンッ!!! 咄嗟に脚甲に雷を弾かせるように意志を送って氷を破壊する。 くそっ……こんなもん、まともにくらったら一発で終わりじゃねぇか! そう思っていた時だ。 フリーズドラゴン『クァアアォオオオオッ!!!!』 フロートで空中に浮いている俺めがけ、 再びレーザーを溜めているフリーズドラゴンが居た。 どうやらとことん詰めていくのが趣味らしい……! ゆっくりと解氷している時間すら満足にありゃしない。 中井出「紅蓮に炎!蒼碧に水!貫け!“スチームレイザァーーーーーッ”!!!!」 だから俺はレーザーが放たれる前に、剣を双剣化させて再び属性を装填し直す。 炎と水なんて相性が悪いんじゃないかと思うだろうが、 放たれる灼熱の蒸気剣閃はそこいらの氷なんて溶かしてゆく!! 中井出     「おぉおおおおらぁああああっ!!!!」 フリーズドラゴン『ルガァアアォオオオッ!!!』 キュバァッシュジュワシャシャシャァアアアアアアッ!!!! やがて放たれたレーザーに向かって放った剣閃は、 場を支配する熱気さえ凍てつかせるレーザーを切り裂いてゆく。 地の理ってやつだ。 この場に満ちた炎の属性が、火属性自体を強化させている。 だったら一気に決めるべきだ。 この場がいつまで続くのかなんて解らない。 藍田だってまだ回復してない状態だ。 だったら……いや。 そんな打算なんて考えるよりまず動け! 中井出「ストック解除!レェエエイジングッ───ロアァーーーーーーッ!!!」 前方に突き出すようにジークフリードを構える。 解除したストックが解放するのは破壊の極光であり、 放たれるレーザーの全てを破壊出来なかったスチームレイザーをさらに押すように、 大口を開いてレーザーを放っているフリーズドラゴンへと襲い掛かる!!  ギガァアガガガチュゥウウウウンッ!!!! フリーズドラゴン『…………!!ギアァアォオオオンッ!!!』 高鳴る轟音。 一つの脅威であったフリーズレーザーなどものともせず飲み込んでなお、 勢いの一つも死なないそれを見たフリーズドラゴンは咆哮した。 けどこれで終わるなんて思っちゃいない。 中井出「エネルギー……全開!全開!全開!全開!全開!最大出力(マキシマム)!!」 満ちてゆく属性を元素と光として受け入れ、長剣に込めたながらさらに溜めてゆく。 “全て溜める”のスキルを最大に生かし、  スガァガガギバガシャァォオオンッ!!!! やがて轟音を立てて爆裂する景色を前に大地に降り立つと、 一気に弾けるように疾駆する!! 巻き起こる爆煙を裂くように走り、 剣から溢れる元素の光を軌道に残して煙の先へと───!! 中井出「クライシスハート全開!!光属性最大奥義!“ビッグバンブレイク”!!」 元素を掛け合わせた光と闇には、光に神威、闇に殺戮の奥義がある。 武器がまるで語りかけてくるようにその在り方を俺に伝え、 俺はその通りに力を解放した。 その力を以って、煙の先に見える巨大な影目掛けて───一気に振るう!! 中井出「おぉおおおりゃぁああああああっ!!!!」 フィンドガァアフィバガガガォオオンッ!!! 振るった剣が対象に衝突するや、元素の光が大爆発を起こす!! 視界を焼くほどの閃光は爆煙さえ吹き飛ばし、 熱に満ちたこの世界を一時のみ光の世界へと変えた。 その閃光はまさしくビッグバン。 元素の光の名に相応しいそれは、 たった一撃で広範囲の景色を削り取りながらバカでかい半球を作り破壊してゆく。 もちろんそれは、それをまともに喰らったフリーズドラゴンだって例外じゃない筈だった。 中井出(───!?なんだよ、これ……!!) 溢れる光の中、おそらく俺には攻撃判定が現れない眩しさの中で、 俺は微動だにしないフリーズドラゴンの姿を見た。 まるで完全なる氷像にでもなったかのようなソレは、 光の爆発をものともしないかのように佇んでいた。 傷さえついていないそれは、恐らくレイジングロアの一撃さえ耐えてみせた証。  ビギッ……ガッシャァアアアンッ!!! フリーズドラゴン『グォオオオオオオウゥウッ!!!』 やがて光が消滅するのと同時に、フリーズドラゴンの氷結が砕ける。 ダメージは……忌々しいが、無さそうだ。 だが今のガードには相当力を使うのか、フリーズドラゴンは目に見えて疲弊していた。 フリーズドラゴン『ゴルルルルル……!!』 しかし相手はさすがドラゴンってところだ……疲れたところで、 それが弱点になるかといったらまるでそんなことはない。 恐らくどれだけ疲れようが、戦いが終わるまで休むつもりなんてないんだろう。 中井出「耐久力と持久力勝負か……だったら───俺はどちらででも勝負せん!!」 するというなら運で勝負! だから叫ぼうパルプンテ!! 中井出「ランダムルーレット───スタート!!」 ダララララララ……ジャンッ!!《博打スキルNo27!シャドウフレア!》 中井出「おおっ!?なんだかとってもステキな予感!」 フレアってあのフレアだろ!? おお素晴らしい!……けどフレアってどっから? 中井出「《キュオオオ……!》あ、あれ?あれちょっと!?口が光ってヒィイイイ!!!     まさかまさか口から!?ままま待って!!待って待ってぇええええっ!!!!」 ギガァッチュボンガガガガガォオオンッ!!!! 中井出     「ギャアアアアアアッ!!!!」 フリーズドラゴン『グシャァアアォオオオオッ!!!!』 我が口から物凄い威力の黒い極光レーザーが放たれ、フリーズドラゴンを襲う!! おおまさにギガフレア!でも俺の口が焼けるというか破壊されるというか! 召喚獣バハムートがモロかったら多分こんな感じなんだろうって理解できちまった!! 中井出「いてぇええ……いてぇえええ……!!いてぇよぉおお……!!」 地味に痛すぎた。 攻撃を受けて苦しむより地味に痛い。 ジワジワとくるというか、口内炎が口全体を襲ったような感覚というか。 グミ食いたいのに痛くて食えねぇ。 ならばハイポーションを一気に流す! 中井出「チェストォ!!《ガボガボガボガボズキィーーーン!!》ギャアーーーーッ!!」 回復するもの飲んだのに痛いって物凄く切ないものですね! だが回復!そしてやっぱりこの能力って基本的に俺にやさしくねぇ!! といった感じで涙目になりつつフリーズドラゴンを睨むと、 そこにはなんだかシャドウフレアをまともにくらったらしいフリーズドラゴンの姿が。 ───オーケーブラザー今しかねぇ!! 中井出     「我が長剣に闇火よ宿れ!塵も残さん!───いくぞ!浄破滅焼闇!!」 フリーズドラゴン『クガァアアアアォオオッ!!!《ガギィッフィィインッ!!》』 踏み込み、闇の炎を剣に宿して振るおうとした時、 フリーズドラゴンが再び氷の膜を張る!───これを待っていた! 中井出「ぜぃやぁっ!!」 ひとまずは闇の炎を振り切る! だが当然というべきか、レイジングロアでさえ破壊できなかったそれは、 闇の炎くらいでは傷ひとつつかなかった。 そんなことは解ってる───だが次だ! 中井出「砕けろォオオオッ!!!“神威クラァアアアーーーーーーッシュ”!!!!」 紅蓮蒼碧の巨大剣を構えつつ、大地を蹴り弾いて己が身を弾丸とする!! 生命力を糧に極限の一歩を弾きだすそれは烈風脚を一時のみ超越し、 その身自身を武器とする超諸刃奥義!!  ズガァアガガガギヂヂヂヂヂィイイッ!!! 武器ごとぶつかってゆく。 火花さえ散るその勢いで圧し、しかし氷雪竜は微動だにもせず膜を張ったままで耐え忍ぶ。 かっ……なんて硬さっ……!!───だが甘しぃいい……!! 俺の目的はこの先にこそ存在する! 中井出「ブリュンヒルデ!」 神威クラッシュの攻撃判定が消えると同時にブリュンヒルデに意志を通し、 即座にヤマアラシを発射する! 前方にではなく上空に。 全ては時間稼ぎと、この膜をずっと展開させたままにするためだ。 あとは───! 中井出「元素の闇よ……我が剣に宿れ!     エネルギー全開!全開!全開!全開!全開!最大出力(マキシマム)!!」 ズガガガガガガガとヤマアラシの剣が絶氷の膜を弾く中、 元素の闇の力を剣に込め、溜めて溜めて溜めまくる!! 溜め続ける中でHPがどんどんと減っていき、やがて1になる。 だが構わず限界の先の限界まで溜め、力のみを解放する───!! その過程───腕に存在する霊章が肩までを一気に染め上げ、両腕から闇の炎が吹き出る。 それでも構わず溜め続け、元素の炎が極光に至ったその時!  ブヅンッ─── 何かが切れる音とともに俺の意識が内側に埋没し、 体の所有権が狂いし者に移る。 その様子に何かを感じ取ったのだろうか。 フリーズドラゴンは膜を張ったまま躍動し、 だが降り注ぐ剣の雨を前に膜を張り続ける他余技を許されなかった。 狂いし者『一発で沈めてやるよォ……!!』 メキメキと力が込められる、炎が燃えさかる腕。 限界まで捻られた体は恐らく、放たれる一撃が全力であることを意味する。 そして……“彼”が一発で沈めると言うのなら、まさに一発で終わるのだろう。 それを信じさせる力が、確かに彼にはあったのだ。 狂いし者    『覚悟は出来たかぁ……!?』 フリーズドラゴン『───!クアァアアアォオオオオオッ!!!』 ガギィンガギィンガギィンガギィンガギィィイイイン!!!! ───感じたものは恐怖だったのか。 フリーズドラゴンは悲鳴に近い咆哮を放つや、 氷の膜を二重三重では足りないと言わんばかりに次々と張っていった。 だが───!! 狂いし者『“ワールドデストロイヤァアーーーーーッ”!!!』 ゴォギバァッシャォオオオオオンッ!!! ガバシャシャシャシャシャシャガッシャァアアアアアンッ!!!! フリーズドラゴン『クギャァアアアアァァァ!!!ゴガドッガァアォオオオオンッ!!!! ドガァッ!ドガァッ!バッガァアアアアンッ!!! ゴコォオ……ォォ……ン……!! ……全てが吹き飛んだ。 これでもかというほど溜められた力はその名の通り世界さえ破壊せんほどの威力であり、 バーチャルシフトによって作られていた灼熱の仮想世界も、 絶氷の膜という、完全防御の壁も、その先に居たフリーズドラゴンも、 悉くを吹き飛ばし、破壊してみせた。 フリーズドラゴン『ギ……ガ、……』 爆発した闇の力を膜越しとはいえまともに受けたフリーズドラゴンは虫の息だ。 一気に吹き飛ばされ、地面に何度も激突しながらようやく止まったその命は、 軽く斬れば尽きてしまうほどに弱っていザゴォンッ!! フリーズドラゴン『グギャァアアォオオオ…………!!』 ───……いや。 確認するまでもなく、既に投擲されていた剣がフリーズドラゴンにトドメを刺していた。 狂いし者『弱者などいらぬわ』 よほどの力で投げたんだろう。 フリーズドラゴンの頭部をあっさり破壊してみせたジークフリードは氷雪竜を霧散させ、 ただ静かに俺達に勝利を齎した。 そして敵が居なくなると狂いし者はさっさと引っ込みズキィーーーン!! 中井出「ぎゃあああーーーーーーーーっ!!!!」 恒例の筋肉痛だけが俺に残されました。 ていうか……今更だけど、 藍田二等がワールドデストロイヤーに巻き込まれて消滅してる……。 あ、でも戻って来たみたいだ。 ペペラペッペペー、とレベルアップ音が鳴る中、 すっかり干上がったプラチナル平原へと走ってくる藍田二等を確認。 藍田 「おーい提督ー!なんつーか気づいたら神父の説教聞いてたんだけど、     いったいなにがあったのか説明しろコノヤロー!!」 中井出「ちょ、ちょっと待つのだ藍田二等……!体が……!体が痛くて……!」 藍田 「?……ドン系の呪文でも使ったのか?」 中井出「何処のザーマスだよ俺!!とにかく今動ける状態じゃないんだよ!!     自然回復もしないし、くそうこれだから狂いし者の力に頼るのは……!」 藍田 「?よく解らんがまあ一応倒したんだよな?なんだかレベル上がってたし」 中井出「う、うむ……全てが終わったのだ……全て……が……───…………」 藍田 「…………うん?どした?提督」 中井出「あ、い、いや……あの藍田二等?今すぐこの博光を抱えて疾走してはくれまいか」 藍田 「何故でありますか!?サー!」 中井出「何故ってそりゃお前───…………すまんもう手遅れ」 藍田 「へ?あ───……アァアアーーーーーーッ!!!」 我が視線を辿って空を見上げた藍田くん。 見上げた空には雲などではなく、綺麗な蒼空。 そして、その広い世界から僕らに降り注ぐ唯一の…………ハイペリオンミサイル。 藍田 「だぁああああ完全に忘れてたぁああああああっ!!!!     れれれ烈風脚《ガシィッ!!》オワッ!?ちょ、待て提督シャレにならん!!     離せ!離せぇえええーーーーーーーーっ!!!!」 中井出「安心しろ……俺ひとり地獄へは行かん……」 藍田 「行ってくれぇえええーーーーーーっ!!!!ギャアーーーーーッ!!!」 あっさりと俺を見捨てて逃げようとした藍田二等の腕をがっしりキャッチ。 やがて僕らは互いの足をこれでもかっていうほど引っ張り合い───  ギシャバボゴォオゴゴゴドガァアアンッ!!! 中井出&藍田『ほぎゃぁああああああああ!!!!』 …………地図からプラチナル平原を消滅させ、その歴史とともに僕らも消滅した。 Next Menu back