───冒険の書166/日常と超常の狭間で───
【ケース441:中井出博光(再々)/ジ・アドレナリンズ……ネーミングは最悪だ】 シャラァン♪ 神父 「おお旅人よ!死んでしまうとは情けない!!」 中井出「ランダムルーレット発動!《ダラララララ……ジャンッ!》───臭い息!!」 藍田 「うおいきなりか!?ちょっと待て吐くなら俺が逃げてから」 モゴシャアァアアアアアッ!!!! 藍田 「ヴォアくっせぇええーーーーーーーーっ!!!」 神父 「オヴェェエエエーーーーーッ!!!くさっ!!くっさぁあーーーーーっ!!!」 中井出「おおやったぞ藍田二等ォオオオエエエエエッ!!     ついに神父に一泡ゴエッ!くっさぁあーーーーーーっ!!!!」 あまりの臭さに三人揃って転がり回った。 中井出「ヴゲェエエエ……!!も、物凄い臭さだ……!!」 藍田 「ていうか前より臭くなってねぇかオイ……!!」 中井出「予想だが……オヴェッ……!レベルに相乗して臭さが上がるんじゃ……!!」 藍田 「ウヴァア……!!」 嘔吐感と悲しみが襲う中、答えに至った僕らは…… 同じく涙目状態になった神父にボコボコにされた。 ───……。 ……。 神父 「おお旅人……オヴェッ……旅人よ……!死んでしまうとは情けない……!」 中井出「うるせータコ!     涙目で吐きそうな顔してるお前に情けないとか言われたくねーよこのクズが!!」 藍田 「神父てめぇ!このクズが!!」 神父 「毎度不意打ちで攻撃を仕掛けてくる貴様らにそんなことを言われる筋合いはない」 中井出「だったら情けないとか言うなぁあああっ!!     こっちだって必死こいて戦ってんだよコノヤロー!!     ていうかしまったナギーを宿屋に預けたままだ!!」 藍田 「そうだった!そんなわけだからこれ以上貴様なァァアんぞに構ってる暇はねぇ!」 中井出「さらばだ嘔吐神父!達者で暮らせ!!」 神父 「貴様らぁあああ……!!《ブチブチブチ……!!》」 悔しいが実力ではまだ至らない。 そもそも本気で戦ってないんだが、しかしまだ上だと理解出来るので言葉で罵倒しておく。 攻撃さえ加えなければ襲い掛かってこないことなど調査済みさ! そんなこともあってか、血管ムキムキで僕らを睨む神父に手を振り、 僕らはツヤツヤ笑顔でこの場を去ったのだった。 さらば神父、フォーエバー。
【Side───藍田くん】 そんなこんなで……無事氷雪竜を倒した俺達は、 ノースノーランドの教会からのんびりと出て、その空の青さに驚いた。 あれほど吹雪いていたのがウソのように綺麗な空は、 それこそこの場の名物が雪であることなどウソであるかのように晴れ渡り…… その下で雪かきをする村人たちの表情に、以前とは違う喜びをもたらしていた。 村人 「あっ!魔王だ!くらぇええ!ヘアァアッ!!」 中井出「《ドボス!!》ギャアーーーーッ!!」 そんな中でスカーフを顔に巻くのを忘れていた提督が雪球を投げられるのでさえ、 なんだか微笑ましい風景に見えてくるのだから不思議だ。 子供1「くらえまおー!」 子供2「いのぶたひねぶた!」 中井出「オアーーーーッ!!!《ボスボスドスボスドゴベキャオスドス!!》」 たとえ投げられている雪球に石が混ざってても、 相手が提督だとなんでこんなに微笑ましく思えるのかは永遠の謎だろう。 まあ提督も子供や村人相手にそうムキになったりは─── 中井出「いい度胸だ小僧ども……!     魔王に喧嘩を売るとどうなるか今すぐ思い知らせてくれる……!!」 ……すっかりマジモードだった。 さすが提督、実にクズだ。 藍田 「お……おいおい提督?村人相手に本気になってどうするよ」 中井出「大丈夫!なにを隠そう、俺は雪合戦の達人だぁああ!!」 藍田 「答えになってねぇって!!」 中井出「貴様こそバカヤロウ!!相手が村人だから本気を出さない!?子供だから!?     そんなことはこの博光にとっては些事以下のこと!     相手が女子供だろうが伯爵夫人だろうが容赦せん!それが原中クオリティ!     喧嘩を売るなら大統領すらブチノメそう!!」 藍田 「オーケー最高だそれでこそ提督!!だが俺は村人側に回ろう!     何故ならばその方が面白そうだからだ!!」 中井出「さっ……最高だって言った途端に裏切りやがったこのクズが!!     だがその意気や良し!!パッチョンパッチョン撃ってこいやぁ!!」 言葉と同時に“散ッ!”と弾ける。 村人が一定の距離を保ちつつ提督を囲む中俺もそれに混ざり、 その場で雪球を作っては一斉に投げてゆく!! 中井出「《ボスボスボスボス!!》オアーーーーッ!!!」 さすがの提督もこの数に一斉に投げられては、 まず何処に攻撃を仕掛けるべきか悩むところだろう! 事実その通りのようで、提督からの反撃はまだない! ───筈だったんだが。 中井出「…………《ニ……ニコッ》」 擬音でどもるという上級テクニックを見せる中、 提督がその手に持って見せたそれは───氷の戒めの宝玉!? そう理解した途端に提督はそれをゴワッシャと破壊してみせ、氷の力を解放! するとなんだか提督がパワーアップしたような感じがした───まさにその時! 中井出「どうせすぐにパワーダウンするだろうからせめてこの一時のみに奇跡を!!     人間ピッチングマシィイーーーーーン!!!!」 ガゴォン!と無剣の状態で出現させたミストルテインが砲台の形を象る! そしてそこから放たれるソレは───……雪球だった。 中井出「トルネードバス!!」 ボチュチュチュチュチュチュチュチュ!!! ズドドドドドドドドドドドドドドド!!!! 村人 『ギャアーーーーーーッ!!!!!』 藍田 「ああっ!村人たちが!!」 中井出「ふはははははは!!さァアけべ叫べヒィーーーホホホホホ!!!」 左腕の砲台から雪球を放ちまくる提督は、 まるでガトリングを打ち続ける狂者のようだった! ていうか攻撃方法地味なのに威力が結構あるぞこれ! くらった村人が悉く一撃でダウンしてる!! ───とか言ってる間に俺以外が全員始末されていた。 ……速ぇえよオイ……。 しかし提督の属性も不安定状態に移行してしまったらしく、 提督から氷属性の反応が消える。 中井出「ぬ、ぬう……!一番の楽しみを残して力が消えてしまったか……!     逃げ惑う藍田二等のあとを追うように球を打ちまくるのが楽しみだったのに……」 藍田 「つくづく提督だなてめぇ!!少しは相手の迷惑も考えろや!!」 中井出「フフフ、迷惑部であるこの博光には迷惑という言葉はむしろ褒め言葉よ。     そして我らの迷惑は人を選ぶ。時には誰でも巻き込むけど多分選ぶ」 藍田 「フ、フフフ……しかしどうする提督。氷の属性は不安定モードに移行したんだろ?     生憎だがこの俺には烈風脚という最大の移動技がある。     生半可な雪球攻撃は届きはしねぇぜ?」 中井出「ならば試してみるか?我が渾身の雪球……《メキメキメキ……!!》」 藍田 「ちょっと待てェエエエ!!!     提督てめぇそれ握りすぎて水晶みたいになってるだろうがァアアア!!」 中井出「大丈夫!以前もやった!」 藍田 「そういう問題じゃねぇよ!     絶対前にここに来た時の雪水晶より密度高ェぞそれェエエ!!!     氷結晶として売り出して金が取れるほど綺麗だよ!!     当たったら骨折れるよ!骨髄も流れ出して死滅するよ!!     俺の骨髄移植で助かるかもしれない人達が絶望するよ!!     それ以前に体に風穴開くってのォオオオッ!!!」 中井出「大丈夫!なにを隠そう、俺は精密射撃の達人だぁあああっ!!」 藍田 「風穴開ける気満々かよ!!アンタそれもう雪合戦じゃねぇよ!!     ただの銃撃戦だよ!!血生臭くて情け容赦ない戦争だよ!!」 中井出「大丈夫だ!合戦とはかくあるべしと篠瀬さんも言っていた!!」 藍田 「くそう妙にハイになりやがって!いいだろう!     この藍田亮、原中生としてその挑戦しかと受け取った!」 言葉と同時に屈み、雪を掬って全力を以って固める! 悔しいことだが今の俺のレベルを倍にしたって提督にゃあ追いつかねぇ。 だったらSTRマックス状態で生成した雪球くらいじゃなけりゃ討伐は出来ねぇと思う。 ならばどうするか───もちろん全力で遊びつくす! 中井出「オォラ死ねェエエーーーーーーーッ!!!!」 藍田 「うぃ!?《ヒュゴバゴォォオッ!!》ヒィイイイッ!!!」 なんて覚悟を極めてるうちに提督が全力で投げた雪球が俺頬を掠め、 家の壁をズゴドドドドドドと破壊してスッ飛んでゆく! なっ……なんつう貫通力……!! 藍田 「ゆ、ゆゆゆ雪合戦じゃねぇ!!雪合戦じゃねぇよこれ!!」 中井出「当然だ!これはもはや聖戦!俺達のジハード!ならばこそ戦おう!     遊びは我らにとって既に戦い!全力でやるべきもの!遊びに全てをかけろ!」 藍田 「OK上等だくらえ我が渾身のスノーボール!!そぉおおおい!!」 中井出「《ヒュゴドボォッ!!》おぶおぉおおおおっ!!!」 STRマックスで投げつけた雪球が提督の腹部にドボォとヒット!! 提督はゴプシャアと胃液を撒き散らしつつ怯む───OK! 俺は手早く次弾を製作!提督へと向き直ってウオッ!? 中井出「ブ……ブリュンヒルデ……除雪機モード……!!」 むっ……向き直った先でなんだか提督の服が大変なことに!! モゴモゴと変形してゆく服はなにやらゴツイものへと変貌を遂げ、 大砲のようなものに……!? 藍田 「ちょっと待てなんだそりゃぁあーーーーっ!!」 中井出「……除雪機?」 藍田 「大砲の何処が除雪機だよ!     サ、サー!一旦落ち着くことをオススメするであります!」 中井出「ぃやだぁ」 藍田 「健に似てバゴシュゥウン!!》ぎゃあああああああああっ!!!!」 まるで波動砲のように放たれた雪の弾丸を辛うじて躱した───んだが。 振り向いてみれば……ヒ、ヒイ!一撃で町の形が変わっちまった! これ既に雪の一撃じゃねぇって!! 藍田 「ま、待て待て!さすがに町を破壊するのは───」 中井出「アイム魔王!!」 藍田 「そうだったぁーーーーーっ!!!」 彼は既に魔王たる自分を認めちまってるらしかった。 なんて傍迷惑な……いや、これはこれで面白いっていえば面白いんだけどさ。 中井出「コココ……!     俺は既にサンドランドノットマット以外の者たちに嫌われている……!     今更何処でどう暴れようがもう関係ねぇ!魔王!魔王だ!ウハハハハ魔王魔王!     この世界で俺を受け入れてくれるのはもはや猫とサンドランドノットマットのみ!     だからなんでもやりましょう!!そして藍田二等よ!     原中のことだからやつらはきっと魔王な俺を全員で討伐しに来るだろう。     俺には解る。ていうか解らいでか。だから選ぶがいいここからの道!     俺とともに来るか猛者どもとともに来るか!」 藍田 「猛者どもとともに!」 中井出「そうだと思ったよちくしょおおおおっ!!!」 そんなことは当たり前なのだ。 何故ならば!より強敵である者と戦った方が面白いからだ! しかもその相手が提督とくりゃあ、そりゃあ……なぁ?戦うしかないだろ。 中井出「うむ!ならばこれより貴様と俺は敵同士!     次会う時はお互いベストと外道の限りを尽くすとしようぞ!」 藍田 「望むところであります!サー!」 中井出「……ていうかさ、なんか時々物凄く泣きたくなる時あるんだけど……。     俺、ただ普通……じゃなかったかもしれんが冒険を楽しんでただけだよね……?     それが何故こんなことに……」 藍田 「それは提督が魔王になってしまったからであります!サー!」 中井出「いやいやいや!それって西の大陸でのことだろ!?     なんだってここでまで魔王扱いされねばらん!     ていうかみんな間違ってる!魔王であれば滅ぼさねばならんなんて、     何処まで常識に囚われりゃあ気が済むのか!     ……まあもっともここまで来りゃ征服くらいグオッフォフォ」 藍田 「そういうところが魔王向きだと思うんだよな、提督って」 中井出「うわー、すげぇ迷惑な話。     まあいいや、そんじゃあこの戦いの決着はいつかに預けよう。     とりあえず俺は守護竜退治しなきゃならんから。     いや、正直に言えばフリーズドラゴンの時みたいに     地面溶かしたら宝玉が落ちてましたとかだったらまだいいんだが」 藍田 「ああ、それでいつの間にやら持ってたのか。知らぬ間に手に入ったのかと思った」 中井出「だったらどれだけ楽なことか……!!」 藍田 「イ、イエッサ……心中大変お察しします……」 そういや戒めの宝玉って守護竜が持ってるわけじゃないとか聞いたっけ……。 大体は守護竜の近くにあって、 基本的にはそれを破壊するのが目的であって竜退治が目的じゃないそうなんだが…… それを提督にやらせるあたり、現実世界の精霊たちは何を考えてるのか。 ……楽しんでるだけなんだろうな、多分。 藍田 「そんじゃあ……提督はこれからどうするんだ?」 中井出「立ち去る貴様の背中に波動砲を……いやいやなんでもないよ?」 藍田 「随分あっさりバトルを預けると思ったらやっぱりかてめぇ!!」 中井出「バレてしまっては仕方が無い死ねぇええっ!!!」 藍田 「うおちょっと待《ドガァォン!!》ギャアアアアアア!!!」 【Side───End】
…………。 中井出「やっちまったぜ……」 雪大砲で藍田二等を滅ぼした俺は、無駄にゴクリと喉を鳴らしていた。 滅ぼしたっていっても吹き飛んでいってしまっただけで、生きてると思う。 だって金の半分奪えてないし。 中井出「さてと」 だったらまあそれはそれで良し。 とりあえずはちょっと崩壊してしまったノースノーランドをほっぽって、 さっさと別のところへ移動しよう。 さすがに修理費とかは出せないからなぁ。 何故なら我が金は回復アイテムと武器のためにあるといっても過言ではないからだ。 無駄に使うわけにはいかん。 とまあそれはそれとして、まずするべきことっていったらなんだろうかと考えてみる。 ………………ナギーだな、うん。 宿に居る筈だから迎えにいこう。 ───……。 ……。 カランカラン…… 中井出「ち〜〜〜っす」 そうして訪れたのは宿屋“アイワズスノウ”である。 ドアを開けた先からフワリと体を包む暖かさが有りがたい。 さて、ナギーは何処かな、と…… 中井出「………?」 暖炉をチラリと見てみたがロドリゲスの姿がない。 ナギーの姿もないし……借りた部屋の中だろうか。 小さく首を傾げながらも、俺は藍田二等がチェックインした部屋の番号を思い出しつつ、 階段を上がっていった。 ───……。 で…… シード『───!父上!?』 中井出「ぬお!?」 部屋を開けた先に居たのはロドリゲスではなくシード。 何故?ホワイ?と思いつつ視線を巡らせてみると、寝たままだったらしいナギーを発見。 しかしロドリゲスが居ない。 …………もしや食材と間違われて主人に食われたか? いやいや、ヤツはああ見えてミルルルカ。 そんじょそこらの旅人にもそうそう負けない猛者だ。 じゃあ……? シード『───……、ああ、あのルルカのことでしょうか父上。     あのルルカでしたら藍田が借りるといって乗っていきましたが』 中井出「なにぃ!?」 ちくしょうやられた!おのれ藍田二等め! よもや吹き飛ばされたと見せかけておいてこんな逃走経路を用意しておくとは!! 中井出「バッ……バカモ〜〜〜ン!!」 シード『はっ……!?し、失礼しました父上!     あ、い、いえ……なにか至らない点でも……?』 中井出「藍田二等は既にこの博光と敵対関係にあるのだ!だというのに……まあいいや」 奪われてしまったものをどーのこーの言っても仕方が無い。 ここは潔く諦めるとしよう。 中井出「いや、なんでもない。ところでシード、貴様はいったい何故にここに?」 シード『は、それなんですが───』 中井出「う、うむ……」 やがてシードは語りだした。 今、この世界がどんな意志によって動き出そうとしているのかを───!! シード『僕らがマクスウェルのもとで修行をしていたのはもちろん知っていたと思います。     しかしマクスウェルが穂岸という人間と契約し、     その人間が下界に下りることで修行の鞭を持つものが居なくなりました。     教えるにしてもザウスだけでは……ああ、     ザウスというのはマクスウェルの助手のようなものなのですが、     そいつだけでは些か限界があります。     司令塔が下界に下りているのでは知識が回らないのです』 中井出「ふむふむ」 シード『そうなっては修行にならないという答えに至った連中は、     “ならばどうするか”という疑問に至りました。そして───』 中井出「至ったのが魔王退治、と……」 シード『そ、その通りです……何故解ったのですか?』 中井出「解らいでか!!やつらの行動パターンくらいこの博光!     提督としての経験だけでも簡単に予想出来るわ!」 シード『そ、そうなのですか……!さすが父上だ……!』 中井出「いや……なんかもう褒められてる気がしないよこれ……」 そんなわけで結局予想は大当たりしたわけである。 うう、なんて面白いことをしやがる猛者どもめ……。 俺が猛者どもだったら絶対にやっていたことであろうだけに、ツッコむことも出来ん。 中井出「それでシードよ。貴様はこの我らの旅に同行するというのか?」 シード『は、はい!出来る限りの修行はしてきました!少しはお力になれると思います!』 中井出「うむ!ならばよし!未熟であることなど気にすることなど一切無し!     未熟はスパイス!冒険を楽しむためのスパイスだと知れ!!     というわけでシードよ!貴様のこの旅への参加を俺は受け入れよう!」 シード『はっ!ありがたき幸せ!』 ザザッ!とわざわざ跪くシード。 悪いヤツじゃないんだが、問題があるとすればこの恐ろしいまでの真面目っぷりだろうか。 まあ少しずつ原中色に染めていくのも面白そうではあるわけだけど。 中井出(しっかし……) 全員が敵か……面白そうなんだけど、まいったなぁ……。 そりゃ全員相手でも暴れてみせる意気はあるよ?あるけどさ。 全員で一斉に来られて、しかも背中が弱点であることを知られたら……ううむ、コトだ。 だが反面、その日が来るのが楽しみでしょうがない自分が居たりする。 何故って?ヤバそうになったら 狂いし者に全て任せるのも面白いかもしれない……とか考えてるからである。 ああ、実に楽しみだ。 その頃までにはパンドラポットも全部解放させておきたいものである。 何故って、みんな巻き込んで自爆するのがとてもとても面白そうだからだ。 その時俺がどんなことをしているのかはまあ解らんが…… ぬお、そういえばまず属性をなんとかしとかなきゃいけないよな。 属性が安定してないと、全力で遊びつくすのは難しいかもしれん。 なにせ相手が猛者ども全員やらだ。 ……まだまだやることがいろいろありそうだ。 困ったなぁほんと。 中井出「よし!ではシードよ!まずは最初のミッションを通達する!!」 シード『はい!父上!』 中井出「ちィイイイがァアアアう!!!     俺がこのように上官口調で語り始めた時の返事は“サーイェッサー”だ!!     すわっ!復唱!!」 シード『サッ……サーイェッサー!!』 中井出「うむよし!ではこれよりミッション内容を通達する!!     我らはこれよりナギーを起こし、遙か北にある砂漠の地下にある空洞を目指す!     そこでアースドラゴンと戦い、地の戒めの宝玉を解放するのだ!!     もし守護竜を倒さずに宝玉が見つかった場合、竜はもう無視して構わん!!     覚えたか!?聞き漏らした場合は直ちに挙手をせよ!!」 シード『ノォサー!!』 中井出「うむ!ではこれよりナギーを起こし、旅を開始するものとする!     イェア・ゲッドラァック!!ライク・ファイクミー!!」 ザザァッ!! シード『Sir(サー)!!YesSir(イェッサー)!!』 高らかに返事をされたならさあ行こう! まずはナギーを叩き起こす───と、その前に。 中井出「シードよ、ナギー覚醒絵巻は貴様に託す。俺はちとやってみたことがある故」 シード『サーイェッサー!!』 我が言葉にさらにザザッと敬礼をするシードに頷いてみせると、 俺は懐から鈴を取り出してチリンチリ〜ンと鳴らした。 すると…………………………………………トカカカカカカ…………ガチャアッ! アイルー『ニャニャッ!お客様は神様ニャ〜ッ!───ハッ!?旦那さん!?』 中井出 「オーケージョニー!」 タマの鈴で猫を召喚!やってきたのはなんとジョニー! おお……一番安心出来る猫が来てくれて本当によかった。 これで修行中の猫とかが来たらいったいどうなっていたことか。 アイルー『なにか商魂擽られる音色に誘われてやってきたら目の前に旦那さんニャ?      まあいいニャ、なにか入用ですかニャ?』 中井出 「うむ!実はちと合成してもらいたい武器があるのだが」 アイルー『ゴニャッ、お任せニャ!旦那さんには日頃贔屓にしてもらってるニャ!      今やアイルーの中で旦那さんを知らない猫は居ないくらいニャ!      ボクらに出来る限りの仕事はもちろんさせてもらうニャ!』 ゴニャア〜〜〜ォオと元気に鳴き、ペコリとお辞儀をする二足歩行の猫。 ああ……やっぱアイルーはいいなぁ、見てるだけでも和むよ。 と、ボケっとしている場合ではなく。 中井出 「これとこれとこれなんだが……出来るだろうか」 ゴパッとバックパックを開くと、 合成してもらいたい武器を近くにあったベッドの上に並べてゆく。 するとジョニーはベッドの上によじ登って……鑑定眼をギシャアと光らせる。 ……まあ、いいか。認識はジョニーでゴーだ。 ジョニー『ムムム、旦那さん、またいいモノ手に入れたニャ。      旦那さんが依頼する仕事はいつも腕が鳴るから嬉しいニャ』 中井出 「なんとかなりそうか?」 ジョニー『フフフニャ。旦那さん、師匠にいろいろ仕事をしてもらった所為で、      弟子であるボクを低く見てしまうのは仕方のないことかもしれないニャ。      でもボクらの技術はそんなに低くないニャ。      皇帝竜の角から作った工具を持ってるのは師匠だけじゃないニャ、      だからボクにも鍛つことや合成することくらい出来るニャ』 中井出 「おお……さすがジョニー」 ジョニー『センスが違うのニャ、センスが』 ジョニーがギルティギアのジョニーの真似をしてチチチ、と器用に指を振る。 なんだか妙にカッコイイぞジョニー。 ジョニー『それじゃあ早速作業を開始するニャ。      この部屋を使わせてもらって構わないニャ?』 中井出 「もちろんだ、余すことなく大胆に、しかし時にやさしく繊細に扱ってくれ」 ジョニー『よく解らないけどノリだけで解ったと言っておくニャ!』 ゴニャッニャア!と勢いよくエイオーするジョニー。 だがまあ作業に移られる前にやっておかなきゃいけないことはあるわけで。 中井出 「すまん、その前にちと適当な素材を売りたいんだが」 ジョニー『お任せニャ!……ていうか相変わらずお金の無い旅してるニャ?』 中井出 「当然だ!何故なら俺は己よりも武器のために金を費やす男!!」 何故言うなら唱えよう!武器と旅こそファンタジー! だから俺は武器に全てを注ごう。 それが俺の中のファンタジー。 中井出 「というわけでなにやら武器素材に使えそうなもの以外を売りたいんだが」 ジョニー『ゴニャニャ……かなりゴッチャリしてるニャ。      ……ゴニャ?氷雪竜素材があるニャ。      これを使えば武器の氷属性強化か防具の氷属性耐性強化が出来るニャ』 中井出 「防御など知らん。武器を強くしてくれ」 ジョニー『そう言ってくれると思ってたニャ』 中井出 「そ、そうか?」 なんだか既に“俺”という存在が猫社会に固定化されつつある気がした。 まあ……俺も猫にはかなりお世話になってるし、 仕方ないといえば仕方ないのかもしれない。 もう魔王だのなんだのって言って差別してこないだけ蝶サイコーということで納得しよう。 そんなわけで俺は猫に武器や素材を渡し、 使い道が無いものを売り払うことで武器強化への道をもう一歩踏み出したのであった。 【ケース442:晦悠介/遠い道を歩く時、歌を歌えば近い】 シャアアア……ピピンッ♪《悠黄奈の精霊の力が解放された!》 悠黄奈「はわっ!?」 それは肩慣らしと言っていいものなのだろうか。 ともかく適当な敵と戦い、勘を取り戻そうとしていたある時。 突然悠黄奈を襲った事態は彼女を大変驚かせバゴシャア!! 悠黄奈「ふきゃあっ!!」 悠黄奈はスチールゴーレムの手痛いストレートナックルをまともにくらっていた。 セレス「ぐくっ……!悠介さん!?このゴーレム硬すぎませんか!?」 悠介 「努力と根性と腹筋でなんとかしろ!」 セレス「平然と無茶を言わないでください!」 ルナ 「ネッキーったらまだまだ弱いのね。修行してきたんじゃなかったの?」 セレス「勘違いが無いように言っておきますけどね……!     修行を終えたんじゃなくて修行中だったんです!!     基本を覚えて精霊と契約しただけで強敵と戦えるわけがないでしょう!」 悠介 「いや、基本も全く無しで半端じゃなく強くなってる猛者が一人居るが」 セレス「ああいえ……彼はまぁ別に考えるとして」 言われてるぞ、中井出。 悠介   「とっ───せいっ!!」 Sゴーレム『《ギャリィン!!》ゴォオオオオム!!!』 ともあれ、悠黄奈が混乱しているうちはこいつは俺が引きつけておこう。 既に自分の相手は塵にしたから、そう手間じゃない。 ……セレスはルナと大絶賛口論中だし。 ああまったく、ほんとこいつらいつまで経っても変わらねぇ……。 悠黄奈「あ、あ……なにか出てきました……これは……武器ですか?」 ピピンッ♪《悠黄奈は精霊宝具“氷結槍剣アブソリュート”を手に入れた!》 と、そんなメッセージとともに悠黄奈の両手に氷の篭手の腕輪のようなものが出現する。 その右手には既に氷の剣が握られており、言葉通りに眺めては……なんだかホウケていた。 悠介 「たわけっ!集中!」 悠黄奈「あ、は、はいっ!頑張ります!」 何故だか知らんが何処かぬけてるような気がしてならない。 そしてそのことを俺自身は強くツッコめないのは、 彼女が俺の分身のような存在だからだろうか。 悠黄奈「───、いきます!“戦闘開始”(セット)!!」 ナビから武器の説明を受けていたんだろうか。 それとも調べるを使ってどういったものなのかを調べていたのか。 ともあれ悠黄奈は剣を手に踏み込むと、それを流れるような自然な動きで振るい、 スチールゴーレムの関節部分へと一気に一閃させる!  フィンギャシャアッフィィンッ!!! Sゴーレム『グゴォオオオオゥウッ!!!』 一呼吸で幾閃を放つその動きは───かつての俺の太刀筋そのもの。 空界でがむしゃらに修行していた頃のままの剣技がそこにあり、 悠黄奈「“伎装槍術”(レンジ/スラスト)!」 形を弓ではなく槍に変えることが出来るらしい氷の剣を両手で構え、 両腕を落とされ隙だらけのスチールゴーレム目掛けて一気に連ねる!! 悠黄奈「(シッ)!!」 ヒュボガガガガガガガガガンッ!! 一呼吸の間に九閃を放つその速度はまさにあの頃を思い出させる技法。 そういえば自分はこんな風にして、自分の力を高めていっていた頃があったのだと。 そんなことを思い出させる身の振るい様だった。 そして、九閃を放ったのちには大抵、俺はこうやって身を振るうのだ。 槍を剣に変え、怯む相手目掛けて渾身を込めた一撃を───!! 悠介&悠黄奈『はぁあああっ───!!』 剣はほぼ同時に弧を描いた。 俺がそうすることをなんとなく予想していたのか、 悠黄奈が左から、俺が右から剣を振るい、 連突に怯むスチールゴーレム目掛けて二つの渾身の軌跡がスチールゴーレムへ襲い掛かり、  ゾガァッフィゴバシャァンッ!!! Sゴーレム『グゴォオオオッ!!!』 その巨体を、塵に変えてみせた。 悠黄奈「はふ……勝てました」 役目を終えたためか、カシャンと音を立てて砕ける氷剣。 どうやら闘争本能かなにかに呼応して形作るようで、 そんなものが必要じゃない状況では武器にはならないらしい。 そんなことをいちいち観察してしまうのは、もうクセみたいなもんだろうか。 俺も随分戦いとかの色に染まってしまってるなと、溜め息を吐きながら頭を掻いた。 悠介 「まあ、あんまり動きを固定化しないようにな」 だからだろうか。 他のやつらにあまりそっち側に傾かないようにって思いが、つい口に出た。 すると─── 悠黄奈「このパターンを開発したのはあなたですけど」 悠介 「う……まあその、それはそうだが」 手痛い仕返しをくらった気分だった。 仕方ないだろ、あの頃はあの頃で一生懸命だったんだ。 そうせざるをえない状況があった、のは……まあ確かなんだが、 自分で望んでそうあったのも確かであったと今では思える。 なんだかんだで、自分はファンタジーってやつに憑かれるように楽しんでたんだろうな。 その頃の自分に不満はあるかと聞かれれば、 不思議なもので、あれだけいろいろなことがあって悩んでいたりもしたっていうのに、 今ではそう悪くはなかったって笑むことさえ出来るのだから、 人生ってやつはこれで“不思議”で出来ていたりするのかもしれない。 最近は、なんだかそんなことを考えることが出来るくらいまで、 感情ってやつに余裕が出来てきた気さえする。 ……ああ、逸れたな。話を戻そうか。 悠介 「けど、剣槍か。扱いやすいか?」 悠黄奈「ええ、それは。わたしの動きに合うように作られているみたいで、     すごく手に馴染むっていうんでしょうか。扱いづらいということはないです」 悠介 「そか」 それを聞いてひとまずは安心した。 これでしっくり来ないとか言われた日には、 いったいどんな武器を見繕ってやろうかと思っていたところだ。 しかし精霊の力が解放されたってことは……誰かが───いや違うな。 十中八九中井出が守護竜を倒したか宝玉だけかっぱらったかして、 戒めを解放したんだろうな。 ともあれ、これで解放されたのは……あ〜……2つだったか? その一方はカイザードラゴンなんていうとんでもない相手だったんだが、 勝ってしまうんだから、これで人のファンタジーに対する心ってのは侮れやしない。 さらに言えばあの原中が長たる中井出だ、その心は通常の三倍以上はあるだろう。 今は何処でなにをしているのか解らないが、それでもやっぱり思うわけだ。 属性を解放したのはあいつなんだろうなぁと。 そもそも頼まれて普通にクエストこなしているのがあいつくらいしか居ないのだから。 ご苦労さま、とは言ってやれないが……まあ、頑張れとは言えると思うわけだ。 その時点でなにがどう動くかは、 あいつがそれを面白いと受け取るか面白くないと受け取るかで決まるわけだし。 悠黄奈「それで、これからどうするんでしたっけ」 悠介 「とりあえずあのたわけどもを止める」 悠黄奈「……骨が折れそうですね……状況的にも、身体的にも」 二人してチラリと見たルナとセレスは取っ組み合いの喧嘩をしていた。 まるでヒステリーを起こした女どもの戦いだ。 意味的には間違っちゃいないのかもしれないが、 いい加減大人になってくれって思うのは間違った考えなんだろうか。 ああ、まあ今は思考に逃避するのはやめておこうか。 どのみちあのたわけどもを止めないと、 先には……まあ進めるが、あとでギャーギャーやかましいのは目に見えてる。 はぁ……ほんと、晦家に居るときはいっつもこんな感じだったんだよな、そういえばさ。 懐かしい気分もそりゃあるが、それよりもなんだろうなぁ…… この胃に穴が空きそうなくらいのぐったりしていて陰鬱な気分は。 悠介 (けどまあ) 悪く無いって思えるなら、いずれは超常も日常になっていくんだろうか。 そんなことを思いながらまずは溜め息を吐いて、歩いてゆく。 まずはどうしてくれようか。 なんて思ってみても、 握った拳は何に使うためのものだい?って訊かれたら、きっと俺はこう答えるのだろう。 今も昔も変わらず、この手は馬鹿者どもを止めるためにあるんだと。 Next Menu back