───冒険の書171/ドワーフの遺跡にて───
【ケース447:晦悠介(再々)/HEART OF SWORDより瑠璃色な】 悠介 「………でだ」 彰利 「オウヨ」 ウェランシェールの村に存在する小さな教会から出てきた俺達は、 夏の日差しに当てられながら空を仰いだ。 ……雲ひとつない空がそこにある。 べつに何かが飛んでるとか踊ってるとかそんなことは全然無いんだが……さて。 悠介 「今なら神状態の俺を嫌がってたお前の気持ちが解る」 彰利 「おお、現在進行形で嫌がってるとも」 悠介 「俺もお前の傍が正直辛い」 落ち着いたのちに届けられたナビメールによれば、 俺の属性は限りなく光に近いものになっていた。 つまり彰利とは正反対。 彰利が“闇、影、黒”なら俺は“雷、光、白”である。 ついた二つ名がホーリーオーダーなんだから笑えない。 ついさっきそれをメールで確認し、 その場に居た彰利にゲオルグと呼ばれて殴ったばかりだ。 ああ、ゲオルグってのはロマンシングサガ2のホーリーオーダー代表の男の名だ。 世界創造……つまり黄昏も鎌の力ではなく、純粋に創造として確立。 神術など何一つ使えない代わりに、創造のみに特化している存在……それが俺だ。 全ての回路が神側に落ち着いたために魔導も魔法も、諸力行使も出来やしない。 だけど力が無いわけじゃないため、 精霊を存在させる糧は俺の内側に存在しているらしい。 それが無かったら癒しとマナの大樹に頼りっきりになっちまう。 さすがにそれは俺が自分を許せないので却下。 自分を信頼して契約してくれた精霊たちや、 この世界で育ってくれている癒しとマナの大樹に申し訳ない。 彰利 「しかし耐えられんほどではないし、じきに慣れるデショ。     もっとも、慣れなかったとしても離れる気などねェがね、クォックォックォッ」 悠介 「……じゃ、変わらずよろしくってことでいいか、死神代表」 彰利 「オウヨもちろんだ、異端の神」 けれどまあ、結局は中身が変わらない限りはそうそう絆が壊れることなど無いわけで。 一緒に居て気持ち悪くなるとか、そんなことは二の次なのだ。 伊達に長い付き合いはしちゃいない。 俺達は自分がどういう存在で、どれほど反発する存在同士だとしても結局は親友なのだ。 悠介 「しかしお前が死神王で俺は異端の神か」 彰利 「しゃあねぇデショ。キミ、神のくせに神術も使えないんだし」 悠介 「習得する気も起きなかったな。     俺は創造と自分自身が鍛えた身体能力があればそれでいい。     創造神ってのはそういうもんだろ」 彰利 「ナルホロ」 悠介 「その分、全てが創造の理力に変換させられたから、     “創造”だけに関してはそうそう負けないぞ。     ……まあ、それもこれからの頑張り次第だが」 彰利 「あ、やっぱ全部の力が手に入ったわけじゃないのね?」 悠介 「ああ。力の大本は今もノートの中だ。今の俺はレベルが上がろうが努力しようが、     その全てが創造側に回される。身体能力はもちろん上がるけどな」 彰利 「白化は?アタイが黒でキミが白。光に溶け込むこととか出来るん?」 悠介 「出来る、と思う。雷化は平気で出来そうだが」 彰利 「ア〜……やっぱキミってば雷と相性いいワケね」 ナルホロナルホロと彰利が頷く。 能力に関してはヤケに飲み込みが早いのはこいつの取り得だろうか。 普段もこうして物分りが早ければ苦労はしないんだが。 彰利 「よっしゃ状況整理終了。これからどうするよホワイティン」 悠介 「ホワイティン言うな!!……とりあえず遺跡に戻るべきだろ。ルナたちが心配だ」 彰利 「まあそうくるわな。じゃ、戻るか」 悠介 「ああ」 互いに互いを苦手になりつつも並んで歩くんだから、まったくやれやれ、って感じだ。 さて……これからどうなっていくんだろうな、俺達は。 なんて考えてみても、どれだけの困難や出来事があろうが、 俺達は俺達で未来の先で笑っていると信じてる。 そんな俺だからこそ、こいつも懲りずに一緒に居てくれるのだ。 それだけでも、 今までひたすらに走ってきたこれまでの道は無駄なんかじゃなかったって、笑顔で誇れる。 ……まあ、そんな感謝もこいつには教えてなんかやらないんだが。 彰利 「そういや黄昏ってどうなるんかな」 悠介 「今はまだ使えないな。力量不足だ。     言ってみれば現実世界の俺が完全に変化したわけであって、     ゲームの中の俺はなんら変わってないってことだよ」 彰利 「あ、そういうこと?“なんら”ってのは語弊があるけど」 悠介 「語弊とは違う気もするが……確かに能力も気配も変わったな」 そういう意味では俺は大きく変わったんだろう。 魔法も魔導も苦労して身につけたものだが、いまさらだ。 俺は神になるって決めたし、決めたなら貫き通したい。 彰利 「俺は黒化でいろいろ出来るようになったけど───白化ねぇ。     どげなことが出来るようになるのやら」 悠介 「光っていったらどんなものを連想する?」 彰利 「む?そりゃあ……やっぱ速度的なもの?」 悠介 「……だよな」 俺もイメージしたのはそういうものだ。 ……ったのだが。 ピピンッ♪《メールが届きました》 悠介 「ん……お?」 彰利 「キャアなに!?メール!?     愛しいあの空き缶からラ《ボゴォ!》ヴォオッファア!!!」 悠介 「妙な邪推はするなたわけ!……普通のナビメールだ。ヒロミ通信の号外だよ」 彰利 「なにぃ……つまらんね」 悠介 「おのれは人へのメールをなんだと……」 はぁ、と溜め息が自然に出てしまう。 ああだがいい、そんなものはもうとっくの昔に慣れたことだ。 俺は溢れる溜め息を惜しげもなくゴファアアアと吐き出すと、 ゆっくりとメールに視線を落とすのだった。  ◆ヒロミ通信No.1192296号  晦悠介の能力について。  ホーリーオーダーになったあなたは雷化、光化、白化や、  それに通じる能力が使用可能になります。  弦月彰利が黒化、闇化、影化が可能であり鎌の解放が可能なのと同様、  あなたは雷化、光化、白化、創造が可能ということになります。  ただし弦月が強い光属性に弱いように、あなたは強い闇属性に弱くなります。  白化の主な能力は高速移動、光の屈折による迷彩、その他様々なものです。  雷化はいまさら言うまでもないでしょう。  というわけであとのことは自分で理解していってください。 …………。 マテ、これで終わりか? ほぼ俺任せじゃないか。 そう思いつついろいろ確かめても、やっぱりこれしか書いてないヒロミ通信。 いっそナビでも壊してくれようかと思ったくらいに適当だ。 悠介 「彰利。お前は黒化とかでどんな能力得てる?」 彰利 「取り込んだモノは大体、“影”の能力でコピー可能。     物理攻撃とか属性を含まない攻撃は体を“闇”にして回避可能。     黒は……まあ言うまでもなくオーダーね?我が力の真でござい。     俺の場合、闇も影も総じて黒って言ってるけどさ」 悠介 「そか」 しかし白化ね……ホーリーなら聖化とか言うんだろうが、 聖なるとかそんなイメージじゃないよな、俺は。 だったらホワイトオーダーでもいいんじゃないだろうか。 名前の語呂がいいのは認めるが、 そんなものはロマサガ2っていう前例があったからそう感じるだけだ。 ようは慣れだな。 というわけでホワイトオーダー。許可申請、と。 …………………………。 ピピンッ♪《許可が通りました。呼称は本人に任せるものとし、随時変更可能です》 悠介 「よし。じゃあホワイトオーダー、と」 そう唱えると、ステータスの名前の上部に称号の項目が現れて、 “雷世眩き白光の秩序”(らいせいまばゆきびゃっこうのちつじょ)と書いてインフィニティ・ホワイト・オーダーの文字が。 無限の白い秩序ってところか?いや、あまり深く考えないようにしよう。 どうせ称号だ。 悠介 「……これはこれでよしだが。なぁ彰利」 彰利 「ムヒョ?なんぞね」 悠介 「お前のラインゲートは冥界を引っ張りだしてきてるんだよな?」 彰利 「お?おーおー、ウィザマスウィザマス。世界創造とかとは違うのよ?     だからね、正直キミの創造の理力ってマジでスゴイと感心中」 悠介 「いや、それは関係ないからどうでもいいんだが」 彰利 「褒めてんだから喜びなさいよもう!!」 褒められても喜ぶのは苦手である。 だからそんなものは適当に流す。 悠介 「ルナのカルミネルゼファーも、     俺の“創造”を魂結糸を通して使ってるようなものだしな。     事実上ではルナもお前も創造じゃないってことだよな。……で、思ったんだが」 彰利 「ウィ?」 悠介 「名前はどうなるんだろうな。ほら、俺の世界創造にはいろいろあっただろ?     まず純粋な創造のワールドオブノスタルジア。     次に鎌の能力側のラグナロク。で、精霊側のスピリッツオブラインゲート」 彰利 「オ……そういやどうなるんだろ」 悠介 「……勝手に決めろってことか?」 彰利 「そうでないの?もしくは適当に名前をつけろ〜、とか。     “ゴッドモミアゲフェスティバル”とか“シャインモミアゲワールド”とか、     “スピリッツオブモミアゲート”とか、     “サンダージョワジョワールド”とか《バゴシャア!》ブボルメ!!」 悠介 「意地でもモミアゲを混ぜようとするのはやめろっ!!どんな嫌がらせだよ!!」 彰利 「嫌がらせとはコレ心外!!俺はいつでも本気だ!!」 悠介 「なおさらに性質が悪いわ!それが嫌がらせだって言ってるんだ馬鹿者!!     ……だいたい、なんなんだ?そのサンダージョワジョワールドってのは」 彰利 「か、雷の化身だから、サンダーをもじって……」 悠介 「………」 彰利 「あ、や、ま、待った!拳固めつつサワヤカスムァ〜ィルで近寄ってこないで!!     無実だ!冤罪だ!俺は訊かれたから答えただけでギャアーーーーーーッ!!!!」 殴った。 もう、これでもかってくらい殴った。 ああまったく、こいつと対面しつつここまで殴るのもどれくらいぶりかってくらい殴った。 ───……。 ……。 で…… 悠介 「無駄な体力使った……」 彰利 「オオまったく……」 二人して自然治癒に感謝しながら、俺達は神殿の暗がりを歩いていた。 さすがに今の彰利は殴られっぱなしではなく、きっちり反撃をしてきたのだ。 だから俺もそれに答えて全力でナックル合戦をし……今に至るわけだ。 悠介 「レベルはお前の方が上なんだから手加減くらいしてみせろってんだよ……」 彰利 「手加減ってなんだぁ……?」 無意味にブロリーの真似をする彰利はともかくとして。 やってきたのはさっきの石版と壁画の場所。 ルナたちは……居ない。 あのあとコロがされたのか、 それとも中井出と一緒に先に進んだのか、はたまた逃げ出したのか。 どちらにしろ先に進むしかなさそうだ。 悠介 「っと、そうだ彰利。     お前ってブラックオーダー以外の能力を受け取ることって出来るのか?」 彰利 「あっはっはっはっは!無理!     さっきアタイんところにもメールが来て黒と死神系の能力以外全部変換された!」 悠介 「それって月操力もか?」 彰利 「アイドゥ。キミも月蝕出来ねぇっしょ?」 悠介 「そりゃそうだが……」 じゃあつまりなにか? 俺達は既に月の家系とかじゃなく、普通に神と死神になったってことか? しかも白と黒の能力を持った異端側の存在として。 彰利 「まあアタイはそれでもいいけどね。月操力には随分助けられたけど、     鎌の力がありゃ十分すぎるし。時間移動も十分出来るし癒しも可能!     OHステキ!……思い出は俺が忘れなきゃそれでいいのさ。     周りのやつらにゃ悪いけど、     俺としてはこれで完全にあのクズどもとの縁が完全に切れたって思えるから」 悠介 「そか」 そういう考え方もあるのか。 そう考えれば俺も……朧月の力が無くなったのは胸に痛みが走るものがあるけど、 思い出は……ああそうだ、忘れなければいいのだから。 彰利 「そんなわけで、僕らはこれから時を越えて戦わなければならんのだ」 悠介 「ちょっとマテ。どうしてお前はそう訳の解らんことをポンポンと口に出す」 彰利 「なんだったっけ?タイトル忘れたけど昔そういうアニメがあったのよ。     なんつったかな……まあいいや、OPテーマでそういうの歌ってた。     み〜え〜ない翼は〜ば〜たか〜せて、キ〜ミ〜をあ〜い〜しつ〜づ〜けぇよ〜、     ひ〜か〜りと影はせ〜な〜か合ァわせっ、     と〜き〜を越〜え〜てた〜た〜かァう、インマイジャ〜〜スティ〜〜ス♪と。     間違ってるかもしれんがそこは割愛」 悠介 「……そういえばずっと前にお前にそんな音楽無理矢理聞かされた記憶がある」 彰利 「でしょでしょ!?あの歌、最初の流れとかが結構好きでさぁグオッフォフォ!!」 悠介 「好きだって唱えるならせめてそのサンシャイン笑いをやめろ」 どうしてこいつはこう怪しい笑いばっか好きになるだろう。 親友としてこいつの未来が……ああいや、 もう心配するまでもないところにまで至っちまってるんだっけ……。 彰利 「……あの、悠介?なんでそんな悲しげな目でアタイを見るの?     ……ハッ!?もしや惚れた!?」 悠介 「ああ!惚れたから殴らせろ一方的に!!」 彰利 「ゲゲェ破れかぶれになりやがったこの野郎!     そう言われて微妙に焦る姿が大好きだったのに!!     ちくしょうそんな刺々しいキミが大好きだぁあーーーっ!!」 だから自分も殴ると言わんばかりに大きく振り被る彰利! こうなったらもう熱い漢のぶつかり合いは止まらなかった。 ───……。 ……。 で…… 悠介 「無駄な時間を使った……」 彰利 「オオまったく……」 再び顔面をボッコボコに腫らした俺達は自然治癒に感謝しながら奥へと進んでいた。 悠介 「しかし、居ないな」 彰利 「だねぇ」 先に進んでみてもルナたちは居ない。 いっそのことtellでも飛ばそうかとも思ったが……まあ、な。 感情が安定を見せ始めてからこいつと二人ってのは初めてだ。 自分にどんな変化があるのかも知りたいと思ったし、tellはやめておこう。 無理に合流する必要もないわけだし。 ……ルナあたりに、あとで噛みつかれそうだな。 それはほったらかしにした罰として甘んじて受けるつもりだ。 彰利は……先のことを想像してちょっと震えてる。 篠瀬に散々斬りつけられるだろう未来を想像してるに違いない。 ともあれ───ガシィッ!! 彰利 「ウオッ!?なにしやがるこのブタ野郎!」 先を歩く彰利の肩を掴み、踏みとどまらせる。 その際、何故か漫☆画太郎氏の漫画、“たのしい遠足”の真似をしたことは無視しよう。 悠介 「空界文字だ。その先に行くと問答無用でどっかに飛ばされるらしい」 彰利 「なにぃ!?どっかって何処!?もしや夜華さんとかってそこに居たり!?」 悠介 「ん……ちょっと待て」 つ……と石版をなぞるように見る。 どうしてここだけ空界文字なのかは解らないが、それでも読めるならありがたい。 悠介 「……、ランダム転移装置らしい。     踏み込んだら最後、何処か別の場所に飛ばされる」 彰利 「ぬお、マジですか?」 悠介 「石版の文字を信じるならな。とりあえずこの短時間の中で飛んだ数が、     丁度俺とお前を抜いたパーティーの数らしんだが」 彰利 「………………笑えませんなぁ」 何処に飛ばされたのかも解らないのではさすがに笑えない。 しかしパーティー分となると、恐らく中井出たちは飛ばされてないんだろう。 ……いや、中井出と戦って勝てないと踏んだあいつらが、 逃げた拍子に飛んだって考えもあるか。 本当に強くなったもんだよな、中井出のヤツ。 あれでただの人間だっていうんだからなにかがウソだ。
【Side───飛ばされた人々】 キィンッ!! 凍弥 「おぉおっ!!?」 ハッと気づけばそこは遺跡ではなく───…………大空だった。 凍弥 「えっ!?うわっ!ちょ、ちょっと待てぇええーーーーーーっ!!!」 叫んでみてももう遅い。 落下速度は速いってのになにかを為そうとするにはあまりにも遅すぎた。 やがて俺は大いなる大地にゴチャッと小気味のいい音を立てて───ブワッ!! 凍弥 「う、わっ……うわわっ!?」 地面スレスレ、鼻の先がチョンと野に咲く花に付いたくらいにギリギリのところ。 そんな位置で、俺の体は急に落下を止めた。 何事かと慌てながらも辺りを見渡してみれば─── 遥一郎「……驚いたな。お前に落下の趣味があったなんて」 凍弥 「あるかそんなのっ!───っておっさん!?」 遥一郎「おっさんはやめろって言ってるのに……」 妖精 「お知り合いの方ですか?」 ……おっさん、もとい与一が居た。 で、その傍らでは妖精がふよふよと浮いている。 ……実にファンタジーな光景だった。 凍弥 「えーと……なぁ与一……ここ何処?」 遥一郎「地図から見てずっと南西にある平原だな。モトノフフ大渓谷の近くだ」 凍弥 「モトノフフって……守護竜が居るっていう?」 遥一郎「ああそうだな。エィネと……この妖精の名前だが、     エィネと一緒に戒めの宝玉っていうのを探す旅をしてる」 凍弥 「へえ……けどそれってあの提督さんが頼まれてたんじゃなかったのか?」 遥一郎「宝玉を探すだけならエィネが居れば誰でも出来るらしい。     だからこうして探してるわけだ。しかし……はぁ、一人旅っていいなぁ……」 凍弥 「いや、そんな遠い目されてもな……。なぁ与一、一緒に行っていいか?」 遥一郎「ん?それは構わないぞ?俺としては観咲たちが居なければ文句はない」 凍弥 「………」 よっぽど苦労かけられてたんだな……あの与一がこうもキッパリ言うなんて。 でも触れたらいけないような雰囲気を放っていたから触れないようにしておく。 賢い生き方ってのはこういうことを言うんだと信じておこう、一方的に。 遥一郎「ところで……こっちのもう一人はどうする?」 凍弥 「もう一人って……うわっ!?篠瀬!?」 夜華 「きゅぅううう……」 どうやら高所からの落下で気絶したらしい。 高所恐怖症なのは相変わらずなのか……? どちらにしろこのままってわけにもいかないだろ……と、視線を投げてみると、 はぁ、と小さく息をついて頷く与一が居た。
───キィンッ!! ルナ 「………」 セレス「………」 ……。 セレス「転移装置……ですか」 ルナ 「………」 セレス「………」 ルナ 「………」 セレス「どうしてよりにもよって、と言うべきですか?」 ルナ 「言うべきね。どうしてよりにもよってネッキーと同じ場所に飛ばされるのよ……」 セレス「その言葉、そっくりそのままあなたにお見舞いしてあげます。     わたしだってあなたと一緒など。冗談じゃありませんね」 ルナ 「………」 セレス「………」 ルナ 「はぁ……早く悠介と合流しよ……」 セレス「ちょっと待ちなさい能天気死神」 ルナ 「なによ腐れ吸血鬼」 セレス「少しは状況判断というものを実行しなさい。     合流するといって、地図も開かず何処に向かおうとしてるんですか」 ルナ 「知らないわよ。北に行けばいいんでしょ?」 セレス「…………はぁ。本当に、どうして悠介さんはこんな馬鹿で愚かな死神と……。     いいですか?第一にそっちは北ではありませんし、     やたらと突き進んだって目的地につけるわけがありません」 ルナ 「うるさいなぁ……そんな風にネチネチ言うからネクラだって言うんじゃない」 セレス「《ブチッ……》ふっ……ふ、ふふふふ……。     あなたこそ悠介さんを追い掛け回してばかりで、     自分ではなにも出来ない赤ちゃん死神じゃないですか……」 ルナ 「《ピクッ……》むっ……!」 セレス「気に障りましたか?けれどウソを言った覚えは微塵にもありませんよ」 ルナ 「……わたしも」 セレス「そうですか……だったら互いに互いを確認する必要がありそうですね……!」 ルナ 「望むところよネクラ吸血鬼……!」 【Side───End】
…………。 彰利 「しかしまあなんだネ?この遺跡って何処まで長いんだろね」 悠介 「予測でしか言えない上に信憑性なんて出せない質問を投げかけるなよ……。     遺跡ってくらいだから階層もあるんじゃないか?さすがに地下への階層だろうが」 彰利 「そうナリか?ほいじゃあ───っと、悠介悠介、なにアレ」 悠介 「うん?……おお」 彰利が促す視線の先……妙にデカイ物体があるのを確認。 なんだ?と言うよりも先に理解が先に来るなんて久しぶりな気がする。 悠介 「スライムだな」 彰利 「うん、スライムだねぇ」 そう、スライムだ。 ただし滅茶苦茶デカい。 で、もう一つ付け加えれば……なんでかそのスライムの体内(?)に悠黄奈が居る。 気絶してるな……飲み込まれたのか? 彰利 「これはいかんすぐ救出だ!ゴー!悠介ゴー!!」 悠介 「言う前に自分で動けよっ!ったく───!」 言いつつすぐさま体勢を低くし、地面を蹴り弾いて一気に疾駆する。 地面を滑るように間合いを詰め、背中に背負う大剣を一閃させる!!  ヒュフォブバッチャアッ!! Gスライム『ピギギーーーィイ!!』 うお喋った!?───構うか! 一瞬の怯みもなんのその、俺は次々と閃きを連ね、 悠黄奈のみを残すようにスライムをバシャバシャと切り裂いてゆく。 彰利 「おお速ェエ速ェエ!!やっぱキミ剣術とかベラボーに上手いじゃん!!」 悠介 「感心してないで手伝えぇええええっ!!!」 スライムを散々切り裂き、 残り僅かというところでスライムに手を突っ込んで悠黄奈の腕を取る。 そして思い切り引っ張り悠黄奈を救出───した途端!! Gスライム『グヴォヴォシャァアアアアッ!!!』 悠介   「───!?なっ……」 残り僅かだったスライムが絶叫し、散らばったスライムのカケラと融合を始めたのだ。 しかもそのカタチは───さっきまで内包していた悠黄奈と同じ姿……! 彰利 「ゲゲェ化けやがった!!もしや取り込んだものをコピーするスライム!?     ちくしょう負けっか!悠介悠介、悠黄奈さんをアタイにプリーズ!     取り込んでコピーして対抗してやる!!」 悠介 「やめい!!ヘンなことばっかりに対抗意識燃やすなたわけ!!」 気絶したままの悠黄奈を左腕で抱いたまま、タンタンッとスライムから距離を取る。 右手の大剣は構えたままに、相手の動きに注意しながらだ。 彰利 「キャア悠介カッコイー!女抱きながらバックステップなんて、     アタイ漫画の中でしか見たことねィェーーーッ!!!」 悠介 「やかましい!!戦わないならせめて黙ってろ!!」 彰利 「OK!じゃあアレ見せてアレ!イミテーションサーパッシング!!     悠黄奈さんならアタイが預かっとくから!!」 悠介 「何処まで傍観者気取れば気が済むんだてめぇえええーーーーーっ!!!」 とか言ってる間にゾリュンと影が蠢き、 悠黄奈を飲み込むと彰利の影から悠黄奈が引きずり出される。 ……本当にもう無茶苦茶だ、あいつの能力。 悠介 「ったく……!!“我が意志は擬似をも越える”(イミテーション・サーパッシング)……!!」 それでも動きやすくなったのは事実であり、 俺はあいつならなにを任せても期待を裏切らないと信じている。 だから全力でツブシにかかる。 手加減なんて知らない───最初から全力だ!! 悠介 「“四空、誓約ヨリ矛盾ヲ分カツ(人技、疾空にして蒼雷)───閃空 飛翔ニ堕ツル万物(閃技 飛翼にして刃)”!!」 手にある大剣をまずは投擲。 タイミングも投げ方も散々練習した───今更失敗など有り得てはならない。 その意志に呼応するが如く大剣は飛翔し、 悠黄奈をコピーしたスライムが構えた槍をガギンと弾く。 よくコピーしてる……しっかりとアブソリュートまで行使するソイツは、 氷の槍で上手く大剣を弾いたが、しかしその反動と隙はやはり存在する。 そうなると先読みしていた俺は既に疾駆しており、 間合いに入るや全力を以って双刃を振るう───!! 悠介 「“疾空 交差セシ白銀ノ閃(疾技 交わりにて無二を砕く)”!!」 ヒュオゴバァッシャァアアアンッ!!! 偽悠黄奈『キギッ……!!』 目の前で交差させ、一気に振り下ろす腕が剣を引き、 交差する軌跡がスライムの氷の槍を破壊する。 だがすぐさま氷が再構築され、俺目掛けて振るわれようとする───が。 悠介 「“烈空 無斬ガ故ニ砕ヲ齎ス(烈技 無刃にして連壊)”!!」 返す下方からの交差が再び構築された氷の槍を破壊。 その威力、速度、反動により、 まるでバンザイをするかのように腕を持っていかれたスライム。 そして───それこそを最大の隙とし、 最大の力とともに全力の一撃を叩き込むこれこそ─── 悠介 「“───終空 是即チ歴戦ニテ敗北ヲ知ラズ(終技 我が生涯は刹那にして無限)”」 フィンッ……ズババシャァアアアアッ!!! 偽悠黄奈『キギャァアアアアアアッ!!!!』 ……我が前世が至りし奥義の果てである。 擦れ違い様に叩き込んだ一撃はスライムの急所を的確に撃ち抜き、 反撃を許さないままに塵へと変えた。 彰利 「オッ……オッホ……おーおーおー!!いいねぇやっぱいいねぇそれ!!     アタイ悠介の技の中でもやっぱこれが一番好きだよステキだよ!!     えと、なんつったっけ?誓約より矛盾を分かつ?     意味教えれー!そういやアタイ、今の技の名前の意味知らないわYO!!」 悠介 「…………」 で……終わってみればやたらとギャースカ騒ぐ親友が俺を迎えてくれた。 悠黄奈は……大丈夫だ、やっぱり気絶しているだけらしい。 悠介 「お前なぁ……もうちょっと大人しく出来ないのか?」 彰利 「出来ぬ!だから教えて?」 悠介 「………」 溜め息が漏れた。 そう、盛大にだ。 ───……。 ……。 彰利 「えーと?つまり奥義には四つの業があって?」 悠介 「ああ。それぞれ最後に至るまで、     追い詰めて隙を発生させるのがこの奥義の狙いどころだ」 彰利 「まず1、飛翔ニ堕ツル万物(ひしょうにおつるばんぶつ)で剣を投げて、     避けるか弾くかさせて敵の隙を作る。     で、2。交差セシ白銀ノ閃(こうさせしはくぎんのひらめき)で相手の武器を強く弾き、一旦怯ませる、と。     次に3、無斬ガ故ニ砕ヲ齎ス(むざんがゆえにさいをもたらす)で痺れた腕をさらに狙い、     武器を弾いて相手を完全に無防備にする、と。     トドメの4、隙だらけの相手に究極の一撃を叩き込む。     それが是即チ歴戦ニテ敗北ヲ知ラズ(これすなわちれきせんにてはいぼくをしらず)……か。     なして3って無斬なの?思いっきし斬っとるじゃん」 悠介 「この奥義は元々朋燐のものだろ?当然当時は刀術だったし、     振り下ろしたのちに刀を振り戻したら峰打ち状態になるだろ?     それで相手の武器を弾いて隙を作る。相手の武器を破壊するくらいの勢いでだ。     だから、“無斬ガ故ニ砕ヲ齎ス”(斬らない代わりに砕きをもたらす)なんだ」 彰利 「あ、あ〜、そういうことだったの……」 チ、カキンと剣を鞘に納めつつ言う。 彰利は納得したのかどうなのか、難しい顔でウヌウ……と唸っていた。 だが立ち止まる気はないらしく、俺が歩くとウンウン唸りながらもついてくる。 ちなみに……悠黄奈は俺の背中だ。 起こそうかとも思ったんだが起きそうになかったからさっさと背負った次第だが…… 彰利 「…………《パアア……!!》」 何故かそんな俺を極上ガイアスマイルで見つめる馬鹿者が。 悩みはもう解決したのか?オイ。 そんな、つつき甲斐がありそうな腫れ物を見つけたような目で人を見るのはやめろ。 彰利 「YOYO悠介ェ〜〜〜ィェ!!     どう!?どげな感じ!?元自分を背負うのってどんな感じ!?」 悠介 「………」 アホだ。 心の中でどれだけ願おうが、こいつに届くわけがなかった……ほんとアホだな俺。 いらん時ばっかり人の心を読むようなことばっかりしやがってこのボケ者は……。 悠介 「べつに、普通だ」 彰利 「ドゥフフフフ嘘おっしゃい。     ルナっちとはまた違った感触だなぁとか考えてるんだろこのエロ猿っ!」 悠介 「興味が無い」 彰利 「うおお!?言い切りやがった!!」 悠介 「あのなぁ……お前がそんな愉快な脳味噌してるから、     いっつもいっつも周りのやつらが巻き込まれたりだな……」 彰利 「主にキミね」 悠介 「解ってるなら改めようとか少しは思ってくれ頼むから!!」 彰利 「断る!!」 悠介 「ぐああああこのミソッカスがぁああーーーーーっ!!!!」 彰利 「お?なんだ?やンのかコラ《バゴシャア!!》ブボルメ!!」 ボクシングポーズでシュッシュッと拳を前に突き出していた彰利の顔面を無遠慮に殴った。 すると鼻をスンと鳴らして“やるじゃない”と言い、 おぎゃあああああと白面の者のような絶叫を上げつつ襲い掛かってくる彰利。 そんな時にふと、 叫び声の時点からして既に人間やめてるな……と、静かに思う俺であった……。 まあ、事実やめてはいるんだが。 【ケース448:中井出博光/グランツーフォルテッシモ】 ドゴォオオオオン……バッゴォオオオオオン…… 中井出「…………?」 遙か後方から炸裂音。 何事かと振り向いてみても、この暗がりじゃあ解るものも解らない。 また彰利たちか? ……でも空き缶さんたちはよく解らんトラップでどっかに消えちゃったしな。 じゃあ……彰利と晦だけで来たか? どちらにしてもわざわざ来た道戻って戦うのもナンだし……真っ直ぐゴー!! 中井出「しかし無駄に広いなここ」 シード『ドワーフの遺跡というのですからそれなりには広いでしょう』 中井出「そういうもんなのか?」 ナギー『そうなのじゃ。ドワーフ族は昔、物凄く栄えていた種族なのじゃ。     大地に人が住み、地下にドワーフが住む……それが当然だったのじゃ』 シード『ですから地面の下はドワーフの住処、     という考え方までが確立されつつあったと聞きます』 中井出「へ〜〜〜ぇええ……それで、そのドワーフはどうなったんだ?」 ナギー『一部を除いて死亡したのじゃ。』 中井出「しっ……死亡!?なんでまた……!」 ナギー『ひと昔前にの、巨大な地震があったそうなのじゃ。     その頃はまだわしが二代目ドリアードになる前の話で、     わしも詳しくは知らぬのじゃが……』 中井出「前世代の出来事か……」 思い出したのはガイアフォレスティア。 前世代の時代から次元の狭間めいた場になってしまった一つの世界だ。 あんなものや、ドワーフがほぼ壊滅状態になっちまうような出来事があった前世代の頃…… いったいこの世界でなにが起こってたんだろうな……どっちだろうが俺は楽しみ尽くすが。 中井出「文献とかないのか?ってそうだ、ここ丁度ドワーフの遺跡なんだし、     ちょっとは詳しいこととか書いてないかな」 ナギー『探してみなければ解らんがの。事実この遺跡にはドワーフはおらんのじゃ、     そんな状態で崩壊後の情報が存在しているとは思えんぞ?』 ぬう……それもそうだ。 シード『あ……父上。巨大な地震の話なら僕が知っています。     マクスウェルの書斎で読んだ本に記されていたことが関係しているかと……』 中井出「おおでかしたシード!で!?その内容とは!?」 知りたがり屋は早死にするらしい。 だが知りたいと思った時に知ろうとしなければ、 解らないままで終わる確率はとても高いと思うのだ。 こんなに何かを知りたがるなんてどれくらいぶりだろうか。 勉強とかはどうでもいいけどさ、 ほら、やっぱファンタジーの世界のことは知っておきたいじゃないか。 シード『かつて存在した災厄……それを封印した際に起きたのがその地震なのです。     あまりに巨大だったそれは歩くだけで世界を破壊するほどの力を持ち、     通った道には何も残らないとさえ言われるほどの巨竜……     サウザンドドラゴンをご存知ですよね?それが地震の正体です』 中井出「サウザンドなにぃいいーーーーーーっ!!?」 ナギー『ひゃうあっ!?ななななんなのじゃヒロミツ!急に奇声を上げおって!!』 中井出「上げずにいられるかぁ!     サウザンドドラゴンって宝玉持ってるドラゴンじゃねぇか!     然までの守護竜倒すと封印が解けるっていうあの……!!」 シード『はい、そのサウザンドドラゴンです。     かつての勇者が命からがら討伐し、封印したとされる……』 中井出「質問である!!何故その千年竜は守護竜をブチノメすと復活するのか!!」 シード『それぞれの竜の転生の力を少しずつ吸収し、封印を破ろうとしているからです』 中井出「次!!そいつはどれほどデカいのか!!」 シード『前世代ほどではないと言われています。     何故なら古の勇者が様々な種族の者と結託し、     その巨体を小さくしたとされているからです』 中井出「……でもまだ全然デカいと」 シード『……はい』 想像したくないな……。 しかもそこまで行ったら俺、ほとんどの属性使えなくなってるわけだよね? ………………ぐおおお!! 自分がブチャアとコロがされてる場面しか思い浮かばないのはどうしてですか神様ァア!! だがだからといって向き合わないわけにもいかんのだ。 …………いかないんだよなぁ……うう……。 いやいや!弱音厳禁!! 大丈夫!なにを隠そう!俺はファンタジーライフの達人だぁあああ!! 中井出「さてシードよ……それでその千年竜は、     封印する時には大地震でも起こす習性を持ってるのか?」 シード『地震はサウザンドドラゴンが最後の力を振り絞り、抵抗した結果だったそうです。     物凄い咆哮と力の波が大地に流れて、     その結果───空洞として残ってた地下の大半は壊滅。     強固な作りだったこの遺跡と僅かな場所のみが無事で、     ドワーフの大半は死んでしまったそうです』 中井出「うお……」 そ、そんなに物凄い力を持ってるのか……。 聞かなきゃよかったかも……。 というより、やっぱりソレとも俺が戦わなきゃダメ? ……だよなぁ、やっぱり……。 じゃなきゃ戒めの宝玉破壊しても、世界がメチャクチャになっちまう……。 ああお先真っ暗闇夜のイカスミ状態だ……。 だがこの博光には夢がある。 この世界を楽しみ尽くし、その上で全てを攻略してやるという夢がある。 きょっ……巨竜がナンボのもんじゃい! く、くくく来るなら来い!出来れば来ないで!! と心の中でざわめきまくったところで…… 結局はまず地の守護竜をなんとかしなければならないわけで。 はぁ……俺の明日はどっちだよ……。 と小さくぼやきつつ、散々突き進んだ先の思い扉をゴンゴゴゴゴゴゴ……と開けた。 ───途端。 ???『ルガァアァォアァォオオオンンッ!!!』 中井出「へ……?おわほぎゃああああああああっ!!!!」 扉の先の巨大聖堂のような場所に居た巨大な竜を前に絶叫!! またか!?またこのパターンなのかよ!オォオオイィッ!!! 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