───冒険の書173/真面目に生きちゃ馬鹿を見る───
【ケース450:晦悠介/遺跡の広間で人間な化け物を見た。2点●】 ゴォオオオオ……!! 真っ二つになった守護竜……だと思うものが砂の地面に落ちる。 その風圧が俺と彰利の頬と髪を撫でるように吹き抜ける中───俺達は硬直していた。  ……ちょっと待て、いくらなんでも強すぎだろ……! そんな思いを込めてである。 悠介 「なぁ親友よー……」 彰利 「なんだい親友よー……」 悠介 「お前さ、本気で“アレ”と戦う気かー……?」 彰利 「アー……イヤー……ソレ小僧ニモ言ワレタンダケドサー……」 ちょっと見ないうちに中井出は人の身でありながらバケモノ級の強さになっていた。 しかも今の戦いでまた大きくレベルアップをしたらしく、HPもTPも全て回復。 さらに凶悪な強さを得て、こちらへ向けてサワヤカスマイルを投げかけていた。 ……どうして欲しいんだお前は。 いや……忌々しいことに戦いになったらまず勝てやしないんだが。 あの巨大な竜を斬撃だけで浮かし続けてしかも真っ二つだ……。 しかも霊章に収納した剣からは雷の反応。 ……ということはだ。 地属性であるアースドラゴンを、耐性が強い雷属性で薙ぎ倒したってことだ。 爆発とかもしてたが、 あれは恐らく雷が発生しすぎてスパークめいた爆発を起こしていたんだろう。 そういえば闇属性のボスも闇属性奥義でコロがしてたっけなぁ……。 何処まで常識破りに挑戦すれば気が済むんだろうか、こいつは。 彰利 「ぬ、ぬう……ちょほいと中井出さん家の提督さん?今しまった武器見せて?」 中井出「なにその中井出さん家の提督さんって!───え!?俺提督って名前なの!?」 彰利 「まあまあいいから見せろコラ。興味深いじゃねぇかコノヤロー」 中井出「あ、いや……まあ見せるくらいならいいけどさ……」 言いつつ、ゾリュンと霊章から取り出した双剣を長剣に変え、 バゴッシャァアアアッ!!!と彰利に渡す中井出。 悠介 「…………見事に潰れたな」 彰利 「重ッ……!!重ォオオオオオオオオッ!!!     なにこの大剣重過ぎる!!てめぇこんなの平気な顔で振り回してんの!?」 中井出「あ、スマン。それ、俺しか扱えない仕様になってるらしいから」 彰利 「なにぃ!?けしからん!ならばアタイがこれを無理矢理にでも振るってみせれば、     一つの設定に勝てるってことよね!?     フゥウウンヌォオオオオ……!!!《メキメキメキメキ…………!!》」 悠介 「おっ……おおっ?」 彰利 「とっ……ところですばらしい剣だな……!!     あの……ッ……鍛えあげた、フリッ……ィザのカラダ……をッ……!     いっ……い、いともぉっ……カンッ……タンに……切り裂くとは……!!」 悠介 「いや、なんかもういっぱいいっぱいにしか見えないから剣置いてもう喋るな」 彰利 「だが失敗だったな……!フリーザに勝てたのはこの剣があったから……!     つまり……これを俺に渡した貴様は……俺には勝てぬということだ!!」 おおっ!渾身を込めた彰利が剣を一気に持ち上げ、 中井出目掛けて豪快に振り下ろゾヒュンッ!! 彰利 「………………アレ?」 振り下ろした筈の剣は、中井出が振り上げた腕の霊章にあっさりと溶け込んでいった。 で、振り下ろしたままの格好の彰利を、ニコリとサワヤカスマイルで見つめる中井出。 彰利 「……もう一回見せて?」 そしてそんな彼に平然と無茶な願いを言う彰利。 返事がNOだったのは言うまでもないだろう。 まあそんな当然のことはほっとくとして。 悠介 「中井出、ちょっといいか?」 中井出「だめだ」 悠介 「お前には情ってものがないのか!!」 中井出「いや、やっぱり一回は言ってみたいし。……なんだ?なにか用なのか?」 悠介 「あー……ああいや……今物凄く、     お前と彰利が同じ原中生だったってこと実感してる……」 彰利 「そりゃ当然でしょうに。そィでなに?中井出にバトルでも仕掛けんの?」 悠介 「機会があったらな……じゃなくて。     中井出、お前ここに来る前に宝箱とか結構開けたよな?」 中井出「もちろんだ!隠し扉もスイッチも全て探し当てて探索した!!     ククク……!製作者どもめ、あんなチンケな仕掛けで     この博光を出し抜けると思ったら大間違いよグオッフォフォ……!!」 彰利 「……なんか今、中井出を相手にいろいろな隠しトビラとかを製作してた精霊や     イセリッ子の苦労にかなり同情したかも……」 ゲームとかの知識が無いヤツが適当に隠し扉とかを設置したところで、 中井出には簡単に見つかってしまうらしい。 いや、中井出にじゃなくても見つかるだろう、主に原中生に。 やつらのゲームに対するやり込み度は尋常じゃない。 恐らくこの世界でもそのやり込み度を存分に発揮して、 各部屋ひとつひとつや広さも計算に入れて漁ってるんだろう。 と、それは置いといてと。 悠介 「中井出、財宝の中で一つだけ欲しいものがある。それを譲ってくれないか?」 中井出「欲しいもの?……物体によるが」 彰利 「おおアレじゃね?えーとだね中井出よ。悠介は月の欠片ってのを集めてるのさ。     早い話がそれを集めれば悠介は力を取り戻せるってモンで、     じゃけんど現実世界でスッピーに預けてる力とは別のもので……アレ?     ああまあいいや、ともかく集めると力が溢れるとのことなのさ!」 中井出「なるほどなるほど、それが無きゃ始まらんわけだ」 彰利 「クォックォックォッ、その通りじゃよ。だから大人しゅうよこさんかィ」 中井出「……ちなみにそれは、俺が手に入れてもなにか効果があったりとかは?」 悠介 「いや、そういうのは無い筈だ。どこぞの収集家が珍しがって欲しがるくらいだろ」 中井出「───ああ!この前盗んだ古文書のことか!     で……アレがこの遺跡の財宝の中にあるのか?」 疑問符を浮かべる中井出。 どうやら一から説明した方が早そうだ……。 そんなわけで、俺は彰利とともに中井出に現在俺が置かれている状況を説明した。 ……当然というべきか、彰利が話を捻じ曲げまくったことは言うまでもないが。 ───……。 ……。 彰利 「カカカカカカ……!!」 あんまりにしつこく話を捻じ曲げようとした彰利を中井出とともにまずボコり、 そうしてから説明すること数分。 中井出は再びなるほどなるほどと頷くと、別に構わんよと頷いてくれた。 てっきりまた金でも請求されるのかと思ったが……どうやら地竜素材を手に入れ、 その上財宝まで手に入るという状況が彼を満たしていたらしい。 彰利 「《シャキィンッ!》ちなみに中井出よ。キミ今レベルいくつ?」 中井出「回復早いなオイ。っと、レベルは……4769」 彰利 「ウワー…………」 悠介 「マテ、お前この前まで3千いくつかじゃなかったか?」 中井出「襲い掛かる貴様ら倒したし氷雪竜倒したしガーディアンコロがしまくったし、     土泳竜コロがしたし。特に貴様らと土泳竜とガーディアンは     狂いし者の力を借りなかったお蔭か、取得経験値の倍率がかなりデカかったから」 彰利 「アー……そういやそげなこと言ってたっけ……。確か最高で経験値8倍だっけ?」 中井出「そうそう、戦覇王の祝福と覇王の加護の相乗効果。     お蔭でこの博光もこの世界ですくすくと成長しておるわ」 悠介 「……うん?」 ふと、なにか違和感を感じた。 詳しく言えば違和感というよりはなにか引っかかるものがあるというか…… 悠介 「中井出、お前……どっかのお姫さまみたいなヤツ、連れてなかったか?」 中井出「おおヤツか。ヤツならば今頃、ウェランシェールの宿で爆睡しておるわ。     あんまりにギャーギャーと怯えるものだから、     ナギーとシードに睡眠魔法をかけてもらってきた」 悠介 「そ、そうなのか……」 彰利 「なにぃ……中井出なら絶対にここまで連れてくると思ったのに」 中井出「や、俺もそうしようと思ったんだけどさ。さすがに死んじまっては責任が取れん」 あ……なるほど。 やっぱりなんだかんだで中井出は誰かを死なせてしまうことを恐れている。 当然といえば当然なんだろうけど、 それでも力に溺れずにそういう気配りが出来るこいつを、俺は素直に凄いと思えた。 自分の力に過信を持ってるヤツは、 絶対に死なせないとか無責任なことを言って死なせてしまうんだろうからな。 常識破りを志すこいつがそれをしなかったことが、俺は嬉しいと感じた。 彰利 「お姫さまって……やっぱりエトノワールの?」 中井出「そういうことである!エトノワールの未来はこの魔王博光が握っておるのだ!!     だから貴様らがどれだけ武力行使をしようが     こちらには人質が居るということを忘れるなグオッフォフォ……!!」 悠介 「あのなぁ……」 実にクズである。 感心した心がどっかへ旅立とうとしているくらいだ。 彰利 「クォックォックォッ……!べつにそんな姫のことなんざアタイは知らんぜ……?     何故ならば我らは魔王退治のためだけに雇われたのだからな……!     だから貴様をコロがせば賞金たんまり、姫の身柄のことなどどうとでもなるわ!」 そしてこっちもクズだった。 実に先行き不安になる状況がここに終結していた。 中井出「グオッフォフォフォフォフォ……!!聞いたぞ……!確かに聞いた……!!     ナギー!シード!!」 ナギー『解ったのじゃ!』 シード『はい!父上!』 彰利 「ヌッ!?なにをするつもりだ貴様らーーーっ!!」 悠介 「無理に状況を盛り上げようとするな……こっちが疲れる……」 彰利 「ギャアもうノリの悪い!!今更なにが起こったってどうってことねーでしょ!?     例えばチビッ子どもの力で姫さんが見えないだけで、     実はここに居ましたとかそげなことが無い限り───」 姫  「《シュゥウウウ……》………」 彰利 「ウギャアホントに居たァアアーーーーーーッ!!!」 手で顔を覆うような状況がここにあった。 漫画的表現でよくある、あっちゃあ……って感じの状況だ。 どうやら本当にドリアードと魔王の子の能力で姿が見えなくなっていただけらしく、 姫さんは彰利を睨みながらふるふると震えていた。 中井出「グフフフフ……!愚かなり彰利一等兵……!!     この博光がなんの罠も無しに貴様らをスマイルで迎えると思うたか……!!     常に相手の裏の裏のさらに裏を突くと見せかけて奇妙な正攻法を執る……!!     それが原中クオリティ……!常識だけでは語れん我らの非常識よ……!」 彰利 「グ、グォオオオ……!!     やられた……!まんまと……!このアタイともあろう者が……!!」 悠介 「……あのな、彰利。悔しがってるところ悪いんだが、     悔しがる前に姫さんへのフォローとか、そういうのはないのか?」 彰利 「なにぃ!?悠介から女性に対してフォローだのの言葉が!?     ててて店長ォオオオオッ!!店長を呼べェエエエエエッ!!!     じゃなくて医者!医者だぁーーっ!!     悠介が!あの鈍感魔人の悠介がイカレちまったぁーーーーっ!!」 悠介 「……なぁ、ここ、殴るところだよな?」 中井出「もちろんだ!!」 中井出の言葉を満足げに受け取ると、 俺は叫び続ける彰利目掛けて固めた拳を無遠慮に振るっていた。 ───……。 で…… 彰利 「あの……ハイ……騒いで申し訳ありませんでした……。     ていうかキミいつからそこに居たの……?」 と、顔がボッコボコな彰利が姫さんに言う。 ちなみに俺も結構ボコボコだったりする。 言うまでもなく反撃を受けたからだ。 中井出「戦いの最中はナギーとシードにかくまってもらってたんだ。     いや……実際俺も目に見えないからどうしていいのか本気で困ってたんだけど」 それ普通に危ないだろ、おい……。 ナギー『わしとシードで片手ずつを握っておったのじゃ。     あの高さから落ちれば死んでしまうからの。     さすがにアースドラゴンが壁に激突したときはヒヤっとしたのじゃ』 シード『僕はその後のグングニルと空からのレーザーに肝を冷やしましたが……』 悠介 「……話だけ聞いてると、お前って体“だけ”は人間なんだなって実感沸くよ」 中井出「それって強さはバケモノって受け取るべきなの!?」 ナギー『そうなのじゃ!ヒロミツは強いのじゃー!』 シード『そうだ!なにせ僕の父上だからな!     きっと僕には出来ない様々なことを平気でやってのけるんだ!!』 彰利 「おお!ならば水ン中で1時間生息してられたりするのかね!?」 ナギー『楽勝なのじゃ!』 中井出「えぇっ!?」 彰利 「竜に食われてもピンピンしてるのかね!?」 シード『それは先ほど証明された!     父上はアースドラゴンに食われても平気で帰還なされたんだ!!』 中井出「平気じゃないよ!!ギリギリだったよ!HP3だったよ!ちょ───聞いてよ!!     そんなんじゃないんだってば!     それ以上話大きくしてバケモノチックな風聞増やさないでよ!!     いくら魔王でもそんなあることないこと言われて嬉しがったり───え?     その姫さんもいかがわしいことするために連れてきてるんだろ?違うよ!!     だからどうしてそっち側に話持っていくの!!違うよそんなんじゃないよ!!     姫さんも!そこで震えながら後退りなんかしたら真実みたいに見えるでしょ!?     やめてよ!僕は変態じゃないよ!変態だとしても変態という名の紳士だよ!!     いいからまず僕の話を───だから違うよ!     話を聞けとか言っといてなんでエロ話しなきゃなんないの!!     そんななんでもかんでもエロ関係に結び付けないでよ!     僕はエロマニアなんかじゃないよ!一旦話戻そうよ!     どうしてこっち方面に話を───え?だったら何処まで平気なのか試す……?     ちょ、やめてよ!なに結託してそんな危険なこと始めようとしてるの!!     シード!?ナギー!?なんで彰利に力送ってるの!?やめようよそんな冗談!     彰利も!どうしてアルファレイドの構えなんか取ってんの!?     待ってよ!僕ただ話がしたかっただけでヴァーーーーーッ!!!!」 ……その日。 一番頑張ったであろう一人の人間が、理不尽な波動に飲まれて壁画と化した。 ───……。 シュゥウウウ……ブスブスブス…… 中井出   「ほんとろくでもねぇよなてめぇら……」 彰利    「直撃くらって生きてる方がびっくりだよ!なんなのキミ!!」 中井出   「全力で撃っといて逆ギレすんなコノヤロー!!        こちとらもう少しステータス移動が遅れてたら危なかったっつーの!!」 悠介    「まあ……なんだ。お前もいろいろ誤解からくる苦労で大変なんだな」 中井出&彰利『とりあえずお前にだけは言われたくない』 悠介    「やかましい!!」 苦労って言葉が出ただけで俺の方に話を持ってこられる現状をどうしてくれようか。 いったいどうしてこうなったのかなんて、考えるだけで頭痛がするからしないが。 ともかく未だにホコホコと煙を出している中井出との会話は続く。 結局のところ、まだ欠片のことでの話が済んでいないのだ。 了承を得たからといって、 彰利がそこらの財宝をかっぱらう可能性だってあるわけだしな……。 中井出「さてと……じゃあ財宝でも探しますか」 ナギー『宝玉を捜すのではないのかの?』 中井出「大丈夫!きっと財宝の中に混ざってるに違いない!     だから探しまくるのだ!あ、そこのお兄さん方が財宝盗んだら僕に言うんだよ?」 彰利 「何気なく注意しとんのね……盗む気満々だったけど」 中井出「グオッフォフォ……!     生憎この世界は弱い者が肉で強い者がそれを食うと書いて弱肉強食……!     ていうかさ、散々痛い目見たのにほかのヤツに財宝とられるのって、     ノートリアスモンスターを散々待ってたのに     ポッと出のプレイヤーに奪われることくらいムカツくと思うんだ。     待ってる間、ザコを狩っては無駄にダメージばっかり喰って。     しかも遅すぎるヒーリングしてる最中に奪われたりしたらもう目も当てられん」 彰利 「ぬう……その理屈は腸が煮えくり返るほど解るので、     今回のところはやめときましょう……。     あ、でも要らんものがあったら遠慮なくよこせ!!」 中井出「頼む雰囲気だったのが命令口調になってるぞてめぇ!!     ええい貴様にくれてやるものなどなにも無いわ外道一等兵め!!」 彰利 「貴様に外道とか言われたくないわ外道の長にして提督め!!」 中井出「おー!?やるかコノヤロー!!」 彰利 「おおやったろうじゃねぇかコノヤロー!!レタス早食いで勝負だぁあああっ!!」 中井出「望むところだ漢じゃわしゃぁああーーーーーっ!!!」 彰利がズオオォとバックパックから取り出したレタス(この世界でもレタス)を、 ふたりでガリボリシャクシャクと食べ始める。 いや……ていうかな、お前ら……。 自分がかつて居た中学の部を外道呼ばわりしてもなにも思わんのか……? とか思っていると、中井出が急にバブロシャアアアとレタスを吐き出した。 彰利 「あっ!て、てめぇ!!麗しのレタス様を吐き出すとは何事!?」 ……ちなみに。 その飛んでいった、噛み砕かれたレタスの中に……なんというか、 ウネウネと動くナマモノを発見。 胴体部分が少しヘコんでいるところを見ると、思い切り噛んで味わってしまったらしい。 当の中井出は全力で地獄を見たようなフェイスをしながらオヴェエエエエと嘔吐していた。 彰利 「すげぇ……さすが無農薬栽培だぜ……大地の恵がいっぱいだ……。     大地パワーで中井出のヤロウも一撃だぜ……!」 中井出「あの……大地のパワーじゃなくて一匹の虫にやられたんだけど……」 彰利 「俺が今絵を描くとするならば……お題は“博光のゲボェ”かな」 中井出「描かなくていいよそんなお題の絵画!!そんなの残されたら永久に恥だよ!!     まだ知ったことのない恥まで知っちゃうよ!いらないよそんなの!!」 ていうかゲボェってなんだ。 彰利 「ちなみにゲボェってのは弁天堂Owee(オヴェエ)のゲームで、     その名も信長のゲボェだ。他にもバキボキメモリアルなどがあるが……」 悠介 「あーはいはい、それはもういいからさっさと先に進むぞ。話がちっとも進まん」 彰利 「おおそうね。ホレ中井出も、盛大に嘔吐してないでとっとと歩きなさい」 中井出「誰の所為だと思ってんだコノヤロォオオ……!!」 言いつつも立ち上がり、香り高く湿った砂地をあとにした俺達は、 中井出が先頭を歩く中で壁の前まで進んできた。 悠介 「……行き止まりみたいだが」 中井出「フフフ……甘し。ボスが居るところに隠し通路アリ!!     ていうかこの部屋以外の場所、     もう散々探したから財宝があるとしたらこの奥しか考えられんのだよ晦一等兵」 彰利 「……ね?探索するだけ無駄だったっしょ?」 悠介 「ああ……よーく解った。     ちなみに言っちゃなんだが、謎解きが上手そうには見えないんだが……     開かなかった扉とかなかったのか?」 中井出「そんなもんは拳で破壊して通った」 彰利 「………」 悠介 「………」 無茶な行動の中で彰利が沈黙するのを、なんというか初めて見た気がした。 すまない……本当にすまない、いろいろ仕掛けを考えてくれた精霊たち……。 こいつにはあまりにも常識が通用しなさすぎる……。 そうだよなぁ……中井出だもんなぁ……。 中井出「ああ、ちなみに言うとゲームの謎解きなら得意だぞ?     ゲームでならどんなジャンルだろうと何者にも負けない自信がある!」 悠介 「……本当なのか?」 彰利 「パイロットウィングスでなら勝てるけどね。     ゲームでならマジで強いよ中井出。まあ大体自分でヘマして失敗するけど。     唯一の特技じゃないかね、もしや」 悠介 「いや……ゲームが得意かどうかは練習の積み重ねだろ。     ようするにそれだけやってるってことだ」 彰利 「じゃあつまり、中井出にはなんの才能もないってことでいいんかね」 悠介 「まあ……そうなるのか?」 中井出「うるさいよ!!どうせ俺なんかどんな気脈解放されても     チャクラも才能も開花しなかったクソミソ野郎だよ!!     気にしてるんだから言わないでよもう!!」 悠介 「あーそこ、ヤケッパチにならない。     ……なんか無かったのか?頭が良くなったとか」 中井出「あの……それは暗に俺の脳内を心配してのことですか?」 悠介 「ぐっ……い、いや、そういうわけじゃないんだが……」 それは本当に本当だ。 たまたま思いついたことがそれだったってだけの話なんだが…… 中井出「まあいいや、無かったぞ、なにも。な〜んも無かった。     才能が無いにもほどがあるぞって言われたくらいになにも……」 彰利 「まさしくその通りだな……鋭いとこ突きやがるぜソイツ……」 中井出「本人の目の前で“確かに”って頷くほうがよっぽど突いてるよ!!     突きまくられすぎてズタズタだよ!!血塗れなんだよコノヤローーーッ!!」 ナギー『安心するのじゃヒロミツ、才能が無くてもヒロミツはヒロミツなのじゃ』 シード『才能などあとからついてくるものです。     努力でそんなものは越えていけると思いますよ』 中井出「おお……ナギー……シード……!」 彰利 「それでも貴様に才能が無いことは変わらないけどな」 中井出「人が感動してるのに水差すなよ!!」 彰利 「断る!何故ならそっちの方が面白いからだ!!」 中井出「ぎっ……ぎぃいいいいいいい…………!!!」 さて……中井出が血管ムキムキで怒っているのはスルーするとしてもだ。 悠介 「才能が無いって言われたのによく何もせず戻ってきたな。     お前なら意地でもなにかを習得するまで動かなそうなのに」 中井出「いや、奥義の習得なら武器から得たからそれで納得できたわけで。……あ。     そうだそうだ、一つ気になることがあったんだ。     そこの長老ってさ、なんていうのか……眼力みたいなのがあってさ」 彰利 「超〜〜〜眼〜〜〜力〜〜〜ィイ!!《バゴシャア!!》ふもっふ!」 悠介 「それで?」 中井出「全身の気脈を解放して、チャクラも解放してもらって、全部失敗で……     で、かなり落ち込んだんだけどさ。     そんな俺を最後にもう一度眼力で通して見て……武器くれた」 悠介 「………」 おかしな話だ。 才能が無いのが解ってて、わざわざ武器をくれるだろうか。 もちろん哀れんでのことなら有り得るだろうが……そんな、 奥義を授けようって人がそんな哀れみを齎してくれるだろうか。 ……なにか、あったんじゃないだろうか。 足でも腕でもない、中井出にしかないような“秘術”めいたものが。 それを才能の一言で片付けるのは簡単だが、 それはこの世界を精一杯楽しんでいる中井出に対して失礼だ。 才能なんてものは使いこなせてこそだろう。 それこそ、血の滲むような努力をした先に、才能ってのは開花するものだ。 もし中井出がなにかしらの才能を開花、 または才能の芽があることを見られていたのだとしたら、 武器を授かったこと自体に意味があるんだと思う。 じゃあその意味ってのはなんだ? ………………解らないな。 悠介 (こればっかりは中井出自身が開花させるしかなさそうだな……) あくまで予想だ……中井出にそういった能力があるのかなんて、実際のところ解らない。 けど、もしそれが開花した時……それは必ず中井出の力になるだろう。 中井出「で、それがどうかしたのか?」 悠介 「うん?ああいや、     もしかしたら何か一つくらい才能を見つけてくれたのかもなって」 中井出「……だといいな……マジで……」 彰利 「重ッ!空気重ッ!!ところで悠介、悠黄奈さんって重い?」 悠介 「そういうことを訊くのはやめろばか」 彰利 「ほいじゃあそこな姫っち!アタイが背負ってやるからこっち来ォ!!」 姫  「〜〜〜っ……」 姫さん、彰利の言葉にビクリとしつつも…… 中井出の様子を見ながら、つつつと歩いてきた。 ……姫さんよ、魔王って呼称だけで逃げたくなる気持ちはまあ解らないでもないが、 そいつが魔王に最も近い男だっていうことを…………知らない方が身の為かもしれない。 けど一言心の中で言っておこう。 魔王から逃げられたつもりかもしれないが、ある意味そいつは魔王よりも性質が悪いぞ。 姫  「あなた……お父様のところから来た兵士なのでしょう?     い、今すぐ私をここから連れ出しなさい!」 彰利 「だめだ」 姫  「あなたには情というものがないのですか!?」 彰利 「貴様にかける情はない」 実にクズだった。 普通ここでそうは言わないだろ……。 ああいや、それが普通じゃないからやってみせたってのは、 原ソウルを考えれば解りそうなものなんだが…… 彰利 「アタイはよォオオ、貴様をおぶってやるって言ったんだぜェエエエ?     連れ出すなんてそんなことしてやるわけねぇだろうがよォオオオ!!」 姫  「な、ならばこれでどうです!?     連れ出してくれたならお父様に報奨金を出してくれるよう頼んであげます!!」 中井出「よし乗った!!」 悠介 「お前が乗ってどうする!!連れ去った張本人だろお前!」 中井出「何を言っているのだ晦一等兵!だから面白いんじゃないか……!!」 彰利 「いいやダメだね!     この小娘はアタイが連れてゆく!丁度金欲しいと思ってたのよ!」 姫  「あ、あくまで頼むだけです!ダメだったら───」 彰利 「貴様を人質にきっちりとせしめてやるわグオッフォフォ……!!」 中井出「頼むのではない……命令しているのだよグオッフォフォ……!!」 悠介 「………」 なんかもういろいろクズだった……。 頼む……誰かこいつら止めてくれ……。 Next Menu back