───冒険の書174/遺跡と愛すべき馬鹿野郎───
【ケース451:晦悠介(再)/勇気と無謀は紙一重】 そんなこんなで隠し扉を開き、奥へと進むこと数分。 やがて辿り着いた場所には……これでもかというくらいの宝が。 彰利 「ウ、ウホォウッ!!すげぇ!     いろいろ表現とかあるだろうけど宝の山って初めて見た!!」 彰利が興奮するのも解る。 まさに“財宝”だ。 ごっそりと置かれた宝は見る者の目を嫌でも釘付けにさせた。 そして我慢できないといった感じに彰利は手を伸ばしバシィッ!! 彰利 「ギャッ!!」 中井出「高松組のやつは出て行け!!これは僕ら大友組のものだ!!」 あっさりとその手を中井出に叩かれ、漂流教室の子供のような顔で痛がっていた。 彰利 「な、なんだって!こんなにあるんだからちょっとくらいいいじゃないか!!」 中井出「フン!だめだ!これは僕が先に見つけたのだ!!」 彰利 「ズルイぞ!先頭がキミだったのだからキミが見つけるのは当然じゃないか!!」 中井出「とにかくこれは僕ら大友組のものだ!     取ったりしたら殺してでもブンどってやるからな!フン!」 彰利 「ウウッ……!こんなにあるのに取れないなんてあんまりすぎる!!」 悠介 「はーいはいはい、漂流教室の真似はもういいから……。     中井出、月の欠片を探してみていいか?」 中井出「ああ、俺にはどれがそうなのかよく解らないから」 彰利 「ムヒョヒョヒョヒョ、じゃ、じゃあアタイも《ベシィッ!!》ギャッ!!」 中井出「そんなこと言って財宝を奪おうって気だな!!」 彰利 「てめぇが言えたぎり(・・)かぁあーーーーっ!!!」 中井出「えぇっ!?なんでここで逆ギレされてんの俺!!」 彰利 「それだけあるのだから僕らにもよこせ!!」 中井出「ダメだ!秘仙丹は秘密の丸薬なんだ!!」 彰利 「誰も秘仙丹なんか欲しがってませんよ失礼な!!     俺もたまに使うけど他人に使われると訳解りませんよそれ!!」 中井出「どちらにしろ渡さんという意味だ!     少なくともタカ&トシの“欧米か!”よりも解りやすいわ!!」 彰利 「ああアレね……俺、あれの何処が面白いのかまるで解らなくてさ……」 中井出「前後が繋がってないっつーか……え?意味通ってるの?あれ」 彰利 「うどんを食いたい!」 中井出「欧米か!」 彰利 「九州行きたい!」 中井出「欧米か!」 彰利 「くたばれこのクズ!」 中井出「なんだとてめぇ!!」 彰利 「これ!そこでも欧米かって言わなきゃダメでしょ!?」 中井出「いやもう訳解らないよそれ!!     くたばれこのクズとか言われて欧米かで返せないよ!!どんな馬鹿なのそれ!!」 悠介 「……おーい……勝手に探すからなー……?」 これ以上付き合ってたら干からびそうだ……さっさと探さないとな……。 そうして俺は宝の山を掻き分けるようにして月の欠片を探し始めた。 中には豪華そうな剣や、魔力を帯びた防具、宝石なんてものもかなりあった。 しかし目的を履き違えるつもりはない。 俺はあくまで月の欠片を探し、一個、二個……三個………… 合計六個の月の欠片を探し当てることに成功した。 ……その間中、中井出と彰利が泥沼コントを続けていたことは言うまでもないだろう。 ドリアードと魔王の子は報復絶倒、姫さんでさえ涙を流しながら笑っていた。 ……なぁ、この状況の中でなにか間違ってる感じる俺は異常なのか? ああいい……気にしない方向で行こう……。 悠介 「中井出、こっちの回収は終わったぞ」 中井出「お?もういいのか?」 ナギー『もっと見たいのじゃー!』 シード『父上、僕もこれほど笑ったのは初めてです……。出来ればもう少し……』 中井出「だめだ」 ナギー『あっさり断ったのじゃーーーっ!!』 シード『ち、父上っ……!』 中井出「実はもうネタ切れなのだ……。これでは貴様らを楽しませることなど永劫出来ん」 ナギー『ネタとはなんじゃ?』 悠介 「人を楽しませるための思考……だな。     楽しませるにしてもいろいろ用意が必要だろ」 ナギー『おおそうか!ならば大丈夫なのじゃ!ヒロミツは考えなしでも面白いのじゃ!!』 中井出「それってどういう意味!?ねぇ!それってどういう意味!?」 悠介 「ほらほら、いいからさっさと財宝回収しちまってくれ。     彰利がさっきからソワソワしてて不気味だ」 彰利 「キミはもうちょっとソフトな言い方出来ないのかねこの親友に!!」 悠介 「不気味だ」 彰利 「そりゃソフトじゃなくてストレートって言うんですよ!!」 悠介 「あー解った、解ったから。中井出、頼む」 中井出「う、うむ……少々後ろ髪が鷲掴まれる心境だが、財宝を回収しよう……」 ドリアードをちらちら見つつ、中井出は片っ端から財宝をバックパックに詰めてゆく。 入りきらなくなったらドリアードと魔王の子のバックパックに詰め込んでだ。 そうした中で何個か見つかった月の欠片も譲り受け、ここで見つかった欠片は全部で12。 ここだけで随分集まったが……器に嵌めこめるスペースはまだまだある。 それでも創造の幅も大分広がった。 それだけでよしとしようか。 中井出「おっ……地の戒めの宝玉発見〜〜っ!!」 彰利 「おおっ?それが噂の宝玉かね?ちょ、ちょっと見せれ!」 中井出「断る《ゴパシャア!!》」 彰利 「アーーーーーッ!!!」 無情!子供のように宝玉を手にした中井出のもとに小走りした彰利! だがその目の前で宝玉は無惨にも砕かれた!! 彰利 「な、なにするんだよぅ!ちょっとくらい見せてくれてもいいじゃんかよぅ!!」 中井出「ああ……俺もそうは思ったんだがな……だが断る。     この博光のもっとも好きなことの一つは。     キャイキャイ燥ぐ者の目の前でそれを砕くことだ」 彰利 「どこのジャイアンだよてめェエエエエ!!!」 騒いでる中、砕かれた宝玉は塵になって虚空に舞い、やがて見えなくなる。 地の戒めか……確か地はシュバルドラインだったよな。 今頃あいつにも専用武器が舞い降りてるんだろうか。 中井出「……お?晦〜、ちょっといいか〜?」 悠介 「んあ?どした〜?」 ふと、彰利と騒ぎながらも更なる隠し部屋を探していたらしい中井出が、 さらに奥の部屋を発見して俺を呼ぶ。 なんだ、と思うより先に呼ばれるまま進んでみると─── そこには、見たこともないような光が存在していた。 中井出「なんだと思う?これ」 彰利 「単純にただの電灯……なわけないか。光しかないみたいだし」 ナギー『む、むうこれは……』 中井出「し、知っているのか雷電……」 ナギー『う、うむこれぞ耳に聞く伝説の輝き……奇跡の魔法なのじゃ……!!』 彰利 「な、なにーーーっ!!」 中井出「き、奇跡の魔法だとーーーっ!!?」 ナギー『そ、そうなのじゃ……!相応しい者が手にすれば、     大いなる奇跡を齎すとされる光なのじゃ……!     太古にのみ存在したまやかしだとばかり思っておったのじゃが、     よもやドワーフ族のもとに残っておったとはの……!!』 悠介 「…………」 一度、二度、喉が鳴った。 そうだ……初心者修練場で聞いたじゃないか。 この世界には神、死神、精霊、竜人などの、“俺の力”が眠ってるって。 俺はオズに力の変換をしてもらう中で、すっかりそのことを忘れていた。 けどそれは力を変換してもらっただけで、 集めるべき“力自体”がまだ揃ってなかったのだ。 つまり……今から手に入れてゆく力全てが、 受け取ると同時に“神の力”として俺の中に蓄積されてゆくということ。 本来なら人の状態で受け取る筈だったこの力……でも俺にもう迷いはない。 神として生きていくって決心したし、今更人であろうとも思わない。 ……そうだ、何かを為すために力が必要なのだとしたら人じゃなくても構わない。 そう思った覚悟は、今も俺の中に───!! 彰利 「……?悠介……?」 ザッ、と一歩を踏み出していた。 無意識にではなく、きちんとした俺の意思として。 いつか後悔することがあるかもしれない。 でも、あとのことで悔やむよりも俺は今を精一杯生きていたい。 だから……と。 後悔を背負おうとするのではなく、希望を受け取るつもりで、光に手を伸ばし───  キィイイイ…………スフィィイイイン……!! 光を抱き締め、受け入れていた。 悠介 「………」 ふと、抱き締める際に閉じていた瞳を開く。 と、そこは光も届かない暗闇になっていて、そんな場所に俺達は残されていた。 悠介 「……なにも見えないな」 声  「キミがなんの準備もなく光を受け入れるからっしょ?     まあアタイは何もかも見えておるがね」 声  「ブラックオーダーってこんな時にも便利なのな。えーと確かこのあたりに……」 ガコッ!ゴコンッ!ガチャガチャ……でってーけてーん!! 声  「おおあったあったグオッフォフォ……!!」 声  「なに!?───キャアなにそれ!アタイにも見せて見せて!!」 声  「どうせこんなこったろうと思って、     光が無くなる前に部屋の隅々に目を通しておいたのさ……!     普通のやつなら間違い無く奇跡の魔法の光にのみ目が奪われるだろうがな……!     だがこの博光は生憎と普通ではねぇのよ……!     製作者どもの驚きが目に浮かぶようだわ……!     暗くなってからじゃ探しようがないもんなぁ……     だがこの博光をこの程度でたばかれると思ったら大間違いよ」 悠介 「いや、いろいろ言ってるみたいだが何も見えないからカッコつかないぞ」 声  「光の台座の後ろ側に一つだけ色違いの床があったんだよ。     それを押したら宝箱っぽいのが飛び出してきてさ。     で、今それを回収して……     なんだろな、この手触り《ザクッ!》ギャアーーーーーーッ!!!!」 悠介 「うおゎっ!?」 声  『ヒロミツ!?どうしたのじゃヒロミツ!!』 声  「刺さった刺さった刺さったァーーーーッ!!なに!?なんなのコレ!!」 声  「ア〜……こりゃ腕輪じゃね。トゲトゲの装飾付きだ。名称は奇跡の腕輪。     現在の職業の固有能力をUPさせてくれる……らしい」 声  「おおっ!なんと興味深い!」 声  「ただし装備できるのは創造者のみ」 声  「ボクハコノアオイチキュウガダイスキデシタ……」 総員 『早まるなぁあああーーーーーっ!!!!』 声  「なにやってんのキミ!腕輪一つ装備できないだけで自殺しようとするなんて!!」 声  「う、うるせーーーっ!!     心の底から喜んだ途端に絶望に投げ捨てられた俺の気持ち、誰が知る!!     ちくしょう悔しいメチャクチャ悔しい!!でも使えないならあげるよモミくん」 悠介 「さりげなく中傷を混ぜるなよ……潔いのは素直に褒めるけど」 コシャンッ♪《奇跡の腕輪を手に入れた!!》 ピピンッ♪《創造能力がUP!技術スキル“賢者の瞳”が開花!》 ピピンッ♪《変化の指輪がパワーアップ!高度物質変換が可能になった!!》 声  「お?なになにイカ子さん!なんなの今の音!」 悠介 「誰がイカ子さんだ!いいから一旦外に出《ドゴォオンッ!!》うわっ!?」 出よう、と言おうとしたその時。 突然遺跡内で地震が起こり、俺達の足場を揺らした。 これは───!? 声  『こ、これは……!』 声  「し、知っているのか雷電……」 声  『う、うむ……考えてもみるのじゃ。これだけの砂、これだけのボロボロな遺跡。     こんな条件下にあって、何故この遺跡が押し潰されなかったのかを……。     それは恐らく、ここが奇跡の魔法自身によって支えられていたからなのじゃ……。     そして今、それが奪われた───と来れば』 声  「…………エート」 声  「崩れるってことか……!」 声  「中井出てめぇ!なにそんなに嬉しそうな声出してんのキミ!」 声  「バカモーーーン!ダンジョンの奥底で遺跡崩壊だぞ!?     こんな状況、普通に生きてちゃ絶対に味わえん!!     タイムリミットまでに外に出られるか……!?その緊張がたまらんのだ!!」 声  「お、おおお!そうか!言われてみればそうだった!     このいつ崩れるか解らない危機……!この緊張感がたまらねェYO!!」 悠介 「言ってる場合か!!ドリアード!ここが崩れるまでどれくらいだ!?」 声  『ナギーと呼ぶのじゃ!───恐らく多くても5分も保たんのじゃ!!』 悠介 「だったらここでのんびり会話してる場合かぁあああーーーーーーっ!!!!」 俺の叫びとともに、全員が走り出す。 狭い出入り口を我先にと潜り抜けては、崩れかけの場所から漏れる砂に驚愕しつつだ。 中井出「ぬおっ……これほどまでに砂が入ってきてるってことは……!」 そんな中、中井出が一目散に宝物庫から走り、大空洞に出る。 が───そこは既に砂の山だった。 中井出「やっぱりぃいいーーーーーっ!!!     サテライトレーザーで空いた巨大穴から砂がたっぷり落ちてきてるーーーっ!!」 ナギー『どうするのじゃ!?ここから5分で出口まで、走って間に合うのかの!?』 中井出「出来ないではない……やるからにはやるのが原ソウル!!     総員に告ぐ!これより我らは全力を以って出口へ向かうものとする!!     たとえ途中で犠牲者が出ようとも無視して駆け続けよ!」 総員 『サーイェッサー!!』 中井出「たとえそれが無情だとしても今だけは飲み込もう!涙を知り、屍を越えていけ!」 総員 『サーイェッサー!!』 中井出「うむよし!ではこれより絶命寸前!遺跡脱出絵巻を開始する!     命を賭して逃げおおせよ!イェア・ゲッドラァック!ライク・ファイクミー!!」 ザザァッ!! 総員 『Sir(サー)!!YesSir(イェッサー)!!』 中井出の声に、一部を除いた全員が声高らかに叫ぶ。 なんだかんだでこの号令は気合が入る─── やれぬというならやってやるって気になってくる!! 中井出「ではGO!ゴッゴッゴォーーーーッ!!!」 総員 『オォオオオオオオーーーーーーッ!!!』 やがて全員が思い思いに駆け出す!! 振り向きもせず、だが背負うものはきちんと背負って!! 彰利は姫さんを、俺は悠黄奈を、中井出はドリアードと魔王の子を!! 迂回して空から舞い落ちる砂を避け、大空洞から出てもなお駆け続ける!! 彰利 「うおおどっちから来たっけ!?つーか転移!───ギャア能力が使えねぇ!!!」 中井出「バカモーーーン!!!     そんなものが出来るならとっくに天井破壊して逃げおおせておるわ!!     製作者は我らの焦る姿を見て楽しんでいるのだ!     なにせカイザードラゴンから逃げる時もそうだった!!」 彰利 「そうなの!?それってキミが製作者側の裏をとりまくってるから、     その腹癒せってことはないよね!?」 中井出「…………《……ツツ……》」 彰利 「おいこらてめぇなに目ェ逸らしてんのアタイの目を見なさい!!」 中井出「やかましい!原中生として相手の裏を突いて何が悪か!!」 悠介 「その前提自体が捻じ曲がってるってことにまず気づけよお前は!!」 中井出「断る!!」 悠介 「断るなぁああーーーーーっ!!!!」 長い道をがむしゃらに走る! 焦っているためか何処をどう行けば外なのかさえ忘れている! だから走るしかなかった───まさにその時だ!! ナギー『ヒロミツ!もう残り2分もないのじゃ!』 シード『父上!あそこ───壁が崩れて奥に行き道が!!』 中井出「───!!」 悠介 「───……お、おい中井出?まさか行かないよな?     今回はさすがにマズイぞいろいろと!     能力使えない状況で砂に埋もれたら絶命必至だぞ!?」 中井出「晦一等兵……学びなさい。男には……やらねばならんことがあるのだ……!」 バッ─── 悠介 「とわっ!?」 なんと、中井出はドリアードと魔王の子をそれぞれ俺と彰利に向かって放ると、 サワヤカな笑顔で親指を立てたのち───崩れゆく遺跡の奥へと駆けていった!! 悠介 「ばっ……馬鹿野郎ォオオオーーーーーーーーッ!!!」 彰利 「ッチィ……!!悠介!ここもヤバイ!急ぐぞ!!」 悠介 「くっ……!」 ナギー『ヒロミツ!?ヒロミツー!!』 シード『離せ!僕はどんなことになろうと父上と一緒に───!!』 彰利 「ええい聞き分けなさい!     中井出が俺達に貴様らを託した意味───それを知るのだ!!!」 シード『……!だがっ……ぐっ……父上ぇええーーーーーーっ!!!』 死のうが自業自得の状況なのに、なんなんだこの感動的離別シーンは。 なんて考えてる時間はない───急がないと本当にヤバイ!! そう思った時、ふと見覚えのある変わった壁像を見つけた! 悠介 「───!あの壁の像は……!彰利!こっちだ!!」 彰利 「お?お、おおっ!!」 目印があるなら話は早い……! 一刻も早くここから出る! 中井出が俺達に子供たちを預けたのは、せめてこいつらの無事だけでもと願ったからだ! その思いを胸に、俺は彰利とともに背負うものを背負い、全力で駆けた───!! 【ケース452:中井出博光/ヒロミチュード・アンリミテッドアドベンチャー】 ゴコォッ……!パラパラパラ…… 中井出「ウオオオオオ!!!崩れた部屋の先にすぐに宝があると思えばァアアアッ!!!」 訪れた部屋にはまだまだ先があった……人はこれを無情と言う。 だがここまで来て引き下がれるか! よう見とくんやで製作者の精霊ども……!これが浪速の商人の生き様やぁあああっ!!! 中井出「スゥッ───“1”!“2”!!“3”!!“4”!!」 呼吸が整う度に烈風脚を発動させ、先へ先へと突き進み続ける! 死んでたまるかよりもお宝は何処を優先に! 烈風脚が4までいけば光属性を全開にし、速度をアップさせてさらに駆ける!! どうやら部屋の先からは能力制限が為されていないらしく、属性行使もお手の物だった。 中井出「ぬぅううおおおおおおおおっ!!!!」 ごんごしゃごしゃごしゃごこここどしゃああああああんっ!!!! 中井出「ヒィイイイイイイイイッ!!!!」 後方でなにやら崩れる音!!怖ェエエ!!超怖ェエエ!!! ごめんなさいやっぱり死にたくないです! だが宝を諦めるつもりも無い!! なにより既に帰る道さえありゃしない!! 今の音はきっとそれを僕に伝えるための音さ!! ほら……その証拠に後ろを振り向けば……───どんどん崩れてきている遺跡の姿が!! 中井出「ぎゃああああああああ!!見るんじゃなかったぁああああああっ!!!!」 既に俺のほぼ後ろを追うようにゴシャゴシャと崩れてゆく遺跡! ていうか俺が走る衝撃で崩れていっている模様!! だが飛んでたんじゃ烈風脚も使えないし、 いずれここが崩れるんだとしたら速い方がいいに決まっておるわ!! 中井出「タキ!ガラハッド!俺に力を貸してくれぇえええっ!!」 走る───走る走る走る走る!! そろそろ俺が走ったかどうかも関係なしに崩れかけている遺跡の中を走る走る!! ていうか階段が見えてきたんですけど!?しかも下りの!! さらに下に行けと!?俺に死ねと言いますか!? オーケーいいだろう上等だ!! 普通ならばどんな手を使っても引き返すところだろうがこの博光! そんなことは意地でもしてやらん!! 地獄の底まで突っ走ってくれるわぁあああーーーーーーーっ!!!  ダカカカカカカカカカカゴンゴシャゴシャゴシャメキャキャキャキャァアアアアッ!!! 中井出「ぬぉおおわぁあああああああっ!!!!」 ほぼ転がるような勢いで走り続ける!! なんかこんな状況金色のガッシュあたりでなかったっけ!? ああもうそんなこと考えてる暇はない! もうすぐ後ろで土砂崩れめいたものが起きている!! ちくしょう!これで宝が無かったら怒るよ俺!! ていうか─── 中井出「長ェエエエエエエエエエーーーーーーッ!!!!!     何処まで続いてんだよこの階段!!果てが無いにもほどがあるぞ!?」 でも───なんていったか。 ともかく壁の横が光を放ち、明かり代わりになっているので足元は全然見える。 ほんとなんていったか……確か……露明石、っていったか? 空界にも存在するドワーフの洞窟にあった光る石だ。 ───って待て?こんなものがここにあるってことは─── 中井出「───!出口!じゃない、階段の終わり!!」 烈風脚を使ってまでドカンドカンと降りていった先に眩い光! 俺はそこに転がり込むようにズシャシャアアアと格好よく滑り込む……ことが出来ず、 ズベッシャアアアア!!と無様に転がり滑った。 中井出「ちぇるしぃいいいいーーーーーーーっ!!!」 顔面で、である。 しかしそんなことはどうでもよく、 俺はすぐに起き上がるとそこがどんな場所なのかを知るために辺りを見渡した。 するとそこは─── 中井出「鉱脈……!?しかもここに落ちてるこれって……」 見覚えがある。 晦の記憶の中で、一度だけ目にした超常の合金───……オリハルコン!! しかもこんなに!?  ゴコォオンッ……!! 中井出「おわっ……!?っと、そうだった……!     悠長なことやってる場合じゃなかった……!」 俺はオリハルコンを掴めるだけ掴み……バックパックはもういっぱいだから、 ブリュンヒルデに意志を通して村人の服をポケットいっぱいの服へと変形。 詰め込めるだけ詰め込み、さらに鉱脈を見て───驚愕。 中井出「うわっ……これ鉱脈は鉱脈でも……」 鉱脈には違いない。 けどそれよりも、その中心側にあるモノに俺は目を奪われた。 中井出「氷付けの……ドワーフ……!?」 そう、ドワーフだ。 あの独特の体格は間違いない……しかも一人や二人ではなく、 かなりの数のドワーフが氷付けになっていた。 けど、なんだってこんな……! 中井出「よっ───せい!!《ガギィインッ!!》づっ……!?」 試しに剣で斬ってみるも、ビクともしない。 それは透粒剣でも同じことだった。 つまりこれは……漫画などでいう魔法氷結結界、とかいうやつだろうか。  どっがぁあああああんっ!!! 中井出「だわぁああっ!!ちょっ……ヤバッ!マジでヤバッ!!」 奥の方に行き道はある───恐らく地上かどっかに続いてるんだろう。 けど、こんなの見せられたら急ぎたくても急げやしない!! どどどどうする!?こんなデカい氷結石……!! 破壊も出来なけりゃ、あの通路の狭さじゃ持っていくことだって─── 中井出「漢は度胸!!」 無理だと思うから無理! やれぬというならやってみせようホトトギス!! 中井出「まず……ストックにレイジングロアを封入……!     HPTPの回復を待ったのちに───天井目掛けてストック解放!!     レェエエエイジングッ……!!ロアァアアアアアアアアアアッ!!!!!」 ギガァアッチュドッガァアアアアンッ!!!! 天井を、鉱石ごと吹き飛ばしてバカデカい風穴を空ける!! 見上げれば天から降り注ぐ光───OK!道は出来た! あとは───かなり危険だが鉱脈の周りを破壊して、氷結石だけを掘り起こす!! その途中で潰れたらアウトだが───その時のことなんてその時に考える!! 今は破壊のみに意識を集中!! 中井出「“解除”(レリーズ)!!ぬぅうううぉおおおおおおおおっ!!!」 長剣から双剣に変え、ジークムントとジークリンデを思う様に振るってゆく!! 標的はもちろん鉱脈!マトックというかピッケルでもそうそう崩れないソレを、 我が渾身を持ってバガボガと穿ってゆく!! だがその衝撃が遺跡の倒壊を速めているのも事実……ヤバイ!もう本当にヤバイ!! 中井出「マグニファイ!!うおぉおおおおおおっ!!!!」 こうなりゃ後先なんて考えない! 敵が居るわけでもないのにマグニファイを発動させた俺は、 六閃化も解放して鉱脈を破壊し続ける!! その際、珍しい鉱石が掘れたら懐に仕舞うのも忘れずに。 やがて転がってきた階段が轟音を立ててブッ潰れて塞がったまさにその時!! 中井出「───!よっしゃあああああああっ!!!」 氷結石の解放は完了した! つーかデカッ!!ギリギリレイジングロアで穿った穴を通るか通らないかくらいじゃん!! だが構わん!男なら───やってやれだ!!! 中井出「フンッ!!ぬっ……ぐ、ぐぉおお……ぉおおおおおおおおっ!!!!」 ゴコッ……ンゴゴゴゴゴゴゴ……!!! クソ重いドワーフ入りの氷を、STRマックスを以って持ち上げる!! かっ……どんな呪いなのか知らないけど竜族よりよっぽど重いぞこれ……!!! だが構わん!!マグニファイ中の俺ならばまだ持ち上げられる重力だ!! あとはこれをあの風穴に向けて……!!バゴォオオンッ!! 中井出「お、わっ───!?」 ギリ、と構えたまさにその時だ。 足元が崩れ、風穴横の天井が崩れた。 いよいよもってヤバイ……このままだと俺も化石になりそうだ……。 中井出「このっ───う、おぉおおおおおおおおおおおりゃぁあああああああっ!!!!」 今ここに、我が全力を! 俺は両手いっぱいでも掴みきれない氷を風穴目掛けて放り投げ、 しかし風穴自体にも届かないそれに向けて、 中井出「とっとと昇天しやがれぇええええっ!!!グングニル!!」 じれったい怒りも込めて、長剣化させたジークフリードからグングニルを発射!! それは轟音を立てて、 落下してくる筈だった氷をドワーフごと光が差し込む地上へと押し上げてゆく!! ……まあその、風穴の大きさが足りなかった所為で 穴自体を破壊しながら押し上げるカタチになったんだけど。 それでも氷は風穴を抜け、……重力に逆らえずに落下。 妙に回転したために横倒し状態で風穴を塞ぎ、僕に降り注ぐ陽光をシャットアウトした。 中井出「………」 そして崩れゆく鉱脈。 中井出「や、やべぇ!!」 早く脱出しなければ───と思いつつも、向こうの行き道が気になる仕方の無い僕。 でも……解るだろ?危険があるって解ってても男には残らなきゃいけない理由があるのさ。 そう……FF6のシャドウが魔大陸でそうしたように。 中井出「ゴー!!」 そして僕は無謀にも駆けた。 すぐに風穴昇って氷どけて地上に出ときゃあよかったのに、俺は駆けたんだ。 すると…… 中井出「ギャアーーーーーッ!!」 既にその先は天井の落盤で塞がっていた。 これはいけないと振り返って戻ってみれば、風穴も既に潰れていた。 中井出「………」 ……え?死ぬ? いやいやいやいや!!そんなことになるわけにはいかん! バックパックに仕舞ってならまだしも、ブリュンヒルデに鉱石を入れた状態で死んでみろ! なにも残らずに神父のありがたい説教だけ聞く破目になるぞ!?そんなの冗談じゃない! ならばどうするか!?レイジングロアでまた天井を破壊するか!? ……否!もうHP回復を待っている余裕すらない!! レイジングロアを撃ってすぐに飛翔しても、 落ちてくる瓦礫にコツンと当たればHP1の俺、死亡! ならばどうするか!?───これっきゃない!! 中井出「ぬぅううううおぉおおおおおおっ!!!!」 バァッガァアアアアアアアアンッ!!!! 中井出「死ぃいいんでたまるかぁああああっ!!!」 落盤した道を破壊して通る!! どうせ崩れてんだ、いまさらどう崩れようが関係ないだろ!! だから通る!止められるものならこの博光の猛攻───止めてみよ!! 中井出「バリアチェンジ!モード:火!!俺のメガボマーが火を噴くぜぇええええっ!!」 双剣に火属性を満たし、粉塵も使って道を破壊しながら突き進む!! ブッチ、俺決めたよ!これからは北斗の犬……じゃなくて人間削岩機と呼んでくれ!! ボンガガガガガガバゴォッ!! 中井出「───ッシャァッ!!」 瓦礫を破壊し、通り抜けた道をひたすらに走る!! 道は───長ッ!!またしても長ッ!! だが生き残れる可能性があるならそれに賭けるのが北斗神拳!! 既にこの博光には死ねない理由があるのだ!!……オリハルコン無駄にしたくないし。 とにかく走った! 走って走って、道が完全に洞窟みたいな場所になっても一本道なそこを走り─── 中井出「……あれぇっ!?」 行き止まりに辿り着く。 しかし道は行き止まりでも、その地面には水があった。 というかこれ……海水? 確かドラゴンボールでこれっぽい場所を見た気が───って! だから考えてる暇なんか無いんだって! 俺は鉱石や合金が落ちてしまわないようにブリュンヒルデを再び変換。 そして覚悟を決め、双剣をしまって海水の中に飛び込んだのだった。 ───……。 ……。 そして早くも後悔。 中井出(重ッ……!鉱石重ッ……!!) ブリュンヒルデ内の鉱石が重すぎて思うように泳げやしない!! だが捨てる気はさらさら無し!! こんなことばっかしてるヤツが、大体映画とかでシメに死んだりするんだが…… だがそんな常識に立ち向かってこそ原ソウル!! 中井出(我が右手に水の力……!我が左手に風の力……!合体!!     無剣流“義聖拳”!!ウォーターサイクロン!!) 合体させた属性を手の平から発射!! それは上手く回転し、 まるでモーターボートのスクリューのように俺の体を───……物凄い速さで進ませた!! 中井出(ゴボバッ!?ちょ、速ッ───!!) ゴボシャシャシャシャシャシャアアアアアアアッ!!!!! 中井出(ヒッ……ヒィイイイイイイッ!!!) 速い!物凄く速い!! 都合としては確かにそっちのほうがいいんだが、 これを放つために今の俺、後ろ向きなわけで……!! 中井出(障害物とかあったら《ゴキィッ!!》ホゴォッ!!?     おっ……おぉおぉおおおお〜〜〜〜っ…………!!!) 水中路の天井から飛び出る鍾乳石みたいなものに頭をぶつけて悶絶。 だが無情にも体は物凄い速さで進み、当てもなく俺を押し上げてゆく!! そう……今気づいたが、どうやらこの水中路、斜め上向きになって続いているらしい。 何処に続いてるかなんて解らないが、 ともかくここから出られるならもう何処でもいいよ俺!!  ……なんて、この時の俺は思ってたわけで。 ゴバシャシャシャシャシャシャドッパァアアアアアンッ!!! 中井出「ぶはっ───ふわっ!?」 痛みの所為でそろそろ酸素がやばかったところへ、突然の酸素。 どうやら俺は海上に投げ出されたらしく、 俺は吹っ飛びながらも酸素を思う存分吸って─── …………ようやく、空飛ぶ俺に差し掛かり続けている影の正体に、気づいた。 デスゲイズ『クァアウァアアアアゥウウウッ!!!!』 中井出  「───!う、あっ……うわぁああああああっ!!!!!」 俺を見下ろす、髑髏めいたバケモノ。 心からの悲鳴を吐いた俺は上手く行動する気にすら至れず、恐怖に支配された。 だがそのデスゲイズの後方───つまり見上げる天が煌いた時、 俺の中で回避の意志が産まれてくれた。 中井出「───くっ……あぁああああっ!!!」 出会ってまずすることが開幕メテオ。 そんなことだけは一応理解していた。 だから俺は出現させたジークリンデから全力で風を発生させ、すぐさまに着水。 水中の深くを移動し、メテオをくらわないようにして───呼吸が続く限りに逃げ続けた。 ───……。 ……。 ばしゃっ……ざばっ……! 中井出「か、はっ……はぁっ……!はぁっ……!!」 そうして……なんとか逃げおおせた俺は、 そこが何処かも解らない陸の隅で荒く息を吐いていた。 はぁ、くそ……!そうだよな……デスゲイズはただ、 グレイトキャッツガーデン上空に出やすいってだけで、 必ずあそこに居るってわけじゃない……。 空を飛ぶって行為自体があいつを招くとするなら、 注意してしすぎるってことはなかった筈だ。 ……だとしても…… 中井出「はっ……はぁああっ…………あ〜〜…………!死ぬほどびっくりした……!!」 勘弁してほしい……あんなのはとんだ不意打ちだ。 でもなんとか助かった……それだけは素直に喜ぶことだろう。 中井出「さてと……現在地は………………うお、結構離れてるな……」 砂漠の地下空洞からは随分離れていた。 島ひとつ分くらい平気で離れてる。 となると…………あのドワーフの氷が落ちてる場所があの島あたりか……。 行って回収しないとな。 そう思いつつ、しかし飛ぼうとはせず歩きで島渡りを目指した。 飛ぶのは危険だ……そして今死んだら俺は一生後悔する。 だから石橋は叩いて叩いて叩き潰して、 その上をさらに匍匐前進する心構えで努めなければ。 中井出「はぁ……空飛ぶのが怖くなっちまったよもう……」 そんなわけで俺は、泳ぎたくもない海を泳いで渡ったり、 越したくもない山々を登ってはドワーフアイスがある場所を求め、 彷徨いだしたのだった……。 あ〜……どっかの店でおでんでも食いたい気分だよ、ちくしょう……。 Next Menu back