───冒険の書175/ドワーフと猫とゾンビと僕───
【ケース453:中井出博光(再)/明日はどっちだの前に明後日はもっとどっちだよ】 ドチャップドチャップ……ドチャップ。 中井出「うう……ドンナーの中が気持ち悪ぃ……」 水が溜まった靴とかってどうしてこう気持ち悪いんだろうか。 などとぼやきつつ、ドンナーを外して逆さにすると、オジャーと流れ出す海水。 靴下も完全に濡れている。 仕方なく俺はもう片方の靴と靴下も脱ぎ───…… あっという間に乾いたそれを再び装着した。 ゲームって便利だな……そんなことを静かに再確認した。 中井出「えーと……このあたりにある筈なんだが……」 砂漠地帯に入る前の草原を見渡す。 しかし穴が空いているところは見当たらない。 ここじゃないのかな。 遺跡の中でかなり走ったからここらへんだとばかり思ったんだが……。 中井出「ふぅむ……」 開いたナビマップをシゲシゲと見つめる。 しかしながらてんで位置が掴めない。 いや、もちろん自分が居る位置は掴めてるからそれは問題ないんだが。 中井出「俺が飛び出たのがあっちで、方向からしてみてもこっちから流れてきた筈で……」 ……ハテ。 いやいや待て待て、水路……水路?海水路と言うべきか、ともかくあれは凄く長かった。 だったらもっとこっち側に…………あるといいね。 そんな感じで山を越え谷を越え、ハットリくんのように走り続けた。 いったいどんな勢いで水流発したらこんなに遠くまで飛ぶのかと疑問に思うくらい走った。 そして───ついに! 中井出「……飛んだ方が早くない?」 悲しみの事実に気づいた。 ……険しい山を二つ越えた時のことだった。 だがめげない!諦めない!それが俺達に出来る唯一の戦い方なんだよ!! だって空飛んだらデスゲイズに襲われるかもしれないんだから! 中井出「忍者じゃないけど忍者……人にして人にあらず!」 日に百里の道をも歩くという忍のモノよ……一時のみ俺に力を貸してくれ! ……言ったところでそんな加護は降りないだろうけどさ。 ───……。 ……。 ズドドドドドドドドド───ズシャァッ!!ザッ!ザザァアアアアアッ!!! 中井出「フゥウウウウンモッフ!!」 それはさらに海を渡り、とある小さな孤島に辿り着いた時のことだった。 小さな島の中心に、なにやらキラキラと輝くものを見たのだ。 だから足を止めてそれを確認しに行ってみれば─── 中井出「お、おお……!これっ…………まさにこれっ…………!」 ようやく発見。 氷付けのドワーフだ。 この鋭い陽光に当てられてなお少しも解けない氷の中で、 瞳を閉じたまま……ね、眠ってるのかな。 わざわざこんな状態のブツが発見されるってことは生きてるんだろうけど…… どう解凍すればいいのやら。 中井出「………」 小突いてみても、キンキンと氷特有の硬さと冷たさが返ってくるだけだ。 いっちょエンペラータイム使って超速黄竜剣疾風斬でもやってくれようかと思ったが、 それでもし砕けて中のドワーフ達まで 性質の悪いジグソーパズルのようになったらどうしよう、などと考えるとダメだった。 中井出「フンッ……!!」 とりあえずは……フロートで軽くしたソレを崩れた穴から持ち上げ、 これからのことを小さく考えてみた。 とりあえず何処に行くべきかだが……やっぱあそこか? しかし待て、様々なアイテムをナギーとシードに持たせっぱなしだ。 まずは二人を迎えに行って、それから行くとしようか。 遙か過去より今を生きる存在が居る、グレートキャッツガーデンへ。
【Side───晦悠介】 ズズゥウウウン…………!! 悠介 「………」 彰利 「……潰れた……ねぇ」 間一髪と……言うべきなんだろうか。 全力で遺跡を走り、外へ出た俺達を迎えたのは、 戻らない中井出と───完全に潰れた遺跡だった。 既にそこには入り口の穴すらなく、遺跡は地下空洞ごと砂によって押し潰されていた。 ナギー『………』 シード『……ウソだ……父上……』 ドリアードと魔王の子はそんな景色を絶望を含んだ眼差しで見ていた。 ……当然といえば当然だ。 いくら復活するとはいえ、こんな風に誰かが潰れてしまうのを笑っていられるわけがない。 彰利 「……さあ、歩き出すのです子供たちよ。貴様らの中井出はもう───」 シード『───!うるさいっ!父上が……父上がこんなことで死んだりするもんか!!』 ナギー『そうなのじゃ───……!!ヒロミツは絶対に無事なのじゃ!!     こんなことで……こんなことで死んだりなどせんのじゃーーーーっ!!』 悠介 「………」 彰利 「気持ちは解らんでもないが……あの落盤だ。     強くなったとはいえ、人間である中井出に対してそれは無茶な話ぞ……」 シード『うるさいうるさい!僕はここを離れないぞ……!     父上が戻るまで離れるもんか!父上は生きている!必ず生きている!     父上……父上ぇえーーーーっ!!返事をしてください!父上ぇええっ!!』 ガボォッシャァアアアアッ!!! ゾンビ「イエーーーイパパダスよーーーーーっ!!!」 シード『うわぁあああああああっ!!!!』 ナギー『ふぎゃああああーーーーーっ!!!!』 悠介 「うおぉおおおおっ!!?」 彰利 「キャーーーーッ!!?」 姫  「きゃあああああっ!!ゾンビィイイーーーーッ!!!」 ……ぽてっ。 突如砂の中から現れたゾンビを前に、姫さんが絶叫を上げて気絶した。 ……というか、バサバサと落ちた砂の中から現れたソイツをよく見てみれば…… 中井出「やあ」 …………中井出だった。 悠介 「えっ……あ、いや……な、中井出……!?」 中井出「うむ。我こそが原中が提督、中井出博光だが」 彰利 「ぶ、無事だったん!?あの落盤で!?」 中井出「いや……無事もなにもそもそも潰れてないし。     ナギーとシードが悲しんでるようだったから、     坂田鋼鉄郎の真似して元気づけてやろうかと」 悠介 「……元気が出るどころか腰抜かしてるが」 中井出「結果オーライ!《ズビシィ!》」 悠介 「全然オーライじゃないと思うんだが」 ていうか親指立てるな。 【Side───End】
───そんなわけで…… わざわざクソ暑い砂の中ゾボゾボと進行して、 見事に坂田ゾンビの真似をして元気づけることに成功した俺だったのだが。 中井出「なぁ晦一等兵よ」 悠介 「なんだ?」 やはりこういう事態に慣れている者には意見を聞いておいて損はないかなと思い、 グレートキャッツガーデンを目指す前に質問を開始した。 中井出「なにかの封印とかを解くにはどうしたらいいと思う?」 悠介 「封印?モノにもよるが───」 中井出「氷結系のやつなんだけど」 悠介 「氷結系か……やっぱりモノにもよるけど、     大体は封印や呪いをかけたヤツを殺したりすれば解けるのが基本だ。     もしくはそれらを解くための詠唱を知っていればなんとかなる」 中井出「そっか……破壊したらダメかな」 悠介 「なにが封印されてるのか知らんが、     もし生き物だったりしたら破壊した時点で死ぬぞ」 中井出「ヒィ!!あ、危ねぇ……!     危うく殺人……ん?人?まあいいや、殺人犯になるとこだった……!」 悠介 「……ということは、封印されてるのは生き物か」 中井出「ん……ん、まあ……そうなる。     なんとかならないか?俺そういうのからっきしでさ」 悠介 「それなら───」 よっ、と。という感じで、晦が背中に背負った悠黄奈さんを降ろす。 で、その頬をぺしぺしと叩いたのちに水を創造。 無遠慮にその顔にバッシャアとかけると…… 悠黄奈「ひゃあっ!?」 覚醒、悠黄奈さん。 悠黄奈「あ、あれ……?わたし……」 悠介 「スライムに飲み込まれてたんだ。経緯は知らないけど、無事でなによりだ」 悠黄奈「え?あ、はあ……」 しかしどうにも現状が把握出来ない様子。 でもとりあえず、俺から距離を取るために 俺を凝視しながらバックステップしてたらスライムに飲み込まれた、 って事実は教えない方がよさそうだ。 中井出「悠黄奈さん、ちょっと頼みたいことがあるんだけど」 悠黄奈「!《ババッ!!》」 中井出「ああちょっと待った!待って!     今戦う気は無いからそんな目を合わした途端に武器構えないでよ!!     魔王にだってプライベートがあってもいいじゃない!!」 悠黄奈「…………、それもそうでしょうか」 中井出「………」 納得された……なんだか複雑な心境だった。 悠黄奈「それで、いったい今はどういう状況なのですか……?     他のみなさんが居ないみたいなのですが……」 中井出「やつらならば貴様を見捨てて逃走しおったわグオッフォフォ……!!」 悠介 「ウソだからな。トラップにかかってどっかに飛ばされただけだ。     ていうか中井出、目覚めたばっかで状況がよく理解出来てないヤツに     平気でウソ教えるなよ頼むから……」 中井出「断る!」 悠介 「断るなと言うのに……!ああもういい、悠黄奈、中井出がお前に用があるそうだ」 悠黄奈「わたしにですか?……いったいなんの……」 きょとんとした顔で俺に向き直る悠黄奈さん。 でも身構えてはいるところは流石というか……油断をしない心構えが実にお見事だった。 そんなわけで俺はここから見える砂山の後ろに彼ら彼女らを案内し─── 氷付けのドワーフたちが今も転がるそこへと辿り着いた。 悠介 「これは……ドワーフか?なんだってこんなに……」 中井出「経緯は解らんが遺跡のさらに地下で見つけたんだ。     さすがにそのままにしておくわけにはいかなかったから持ってきたわけだけど」 彰利 「ウヒョオオオオ……こりゃすげぇや、カッチコチだ。     これ結界とか封印とかのレベルなんかね……」 悠介 「どうだ?悠黄奈」 悠黄奈「………」 晦が悠黄奈さんの反応を見る。 俺や彰利、ナギーやシードもそれに釣られるように悠黄奈さんを見る───と。 悠黄奈さんは目を閉じながら氷に触れ、なにかを感じ取ろうと……してるのかな。 正直なにをしているのか僕には解りません。 悠黄奈「……これは……封印や結界の類ではありません」 彰利 「な、なにーーーっ!?」 中井出「な、ならばなんだというんだーーーーっ!!」 悠黄奈「永久水晶です。どんな経緯があったのかは解りませんが、     遙か過去……そうですね、仮説になりますが……。     サウザンドドラゴンが封印されんとした際、     その災厄から逃れようとしたドワーフたちは、     何処か冷気が溜まりやすく、諸力が集いやすい場所に逃げ込んだのでしょう。     けれど封印の際の大地震の時、その場に運悪く閉じ込められ───     出られないままに諸力と冷気に密閉された場所で、     為す術もなく結晶に巻き込まれたまま、今に至る……」 中井出「え……じゃあなに?     つまり冷気と諸力があれば永久水晶って簡単に出来るもんなの?」 悠黄奈「いいえ。そこによほどの力を持ったなにかがなければ、     そこまで諸力は集わないでしょう。     これほどの永久水晶を精製するとなると、     それこそ普通では考えられないくらいのなにかが必要となる筈です」 中井出「………………それって、オリハルコンとかでも可能?」 悠黄奈「え……はい。オリハルコンは諸力魔力との相性もよく、     純度の高いオリハルコン合金ならば、数が集えば可能でしょう。     そうですね……かつてドワーフが錬成に錬成を重ねて研究していた結晶、     緋々色結晶でしたら、それも容易いのではと───」 中井出「…………」 悠介 「どうかしたのか?中井出。急にそんなこと訊くなんて」 中井出「……ナンデモナイヨ?」 彰利 「……?ムッ!?もしやてめぇ!     この永久水晶とともに緋々色結晶とやらも見つけたんじゃねぇだろうね!?」 中井出「なっ!なにを言う!ホレ見ろ!     バックパックの中にはそんなもの入ってねぇだろうが!!」 いきなり難癖つけてくる彰利に向かって自分のバックパックを開けて見せる。 と、疑り深い彰利はじっくりと中を調べ…… しかしソレが無いことに気づくと、グムゥと唸った。 どうやら納得してくれたらしかった。 中井出(グフフフフ……!愚かなり彰利一等兵……!     結晶が我が防具の中に仕舞われているということも知らずに……!!     そう……バックパックには入ってないさ……!     なにせブリュンヒルデの中に収納してあるのだからなぁグオッフォフォ……!!) そう……あとで調べてみて解ったことだが、 あの鉱脈で見つけたオリハルコン…… それは大部分がオリハルコン原石っていう、合金になる前のものだった。 オリハルコン合金にしなければ大して価値のないものだ。 だがその中にいくつか緋々色結晶が混ざっていたのだ。 ……まあ悠黄奈さんの話を聞くまで、 それがどれほど素晴らしいものなのかも知らなかったわけだけど。 悠介 「それで、解放できそうか?」 悠黄奈「はい。力が解放されている今の状態なら可能です」 悠黄奈さんはそう言うと、少し離れていてくださいと目配せをする。 俺達はそれに従い、少し離れた場所からコトの行く末を見守ることにした。 ……で、そんな中、どうしてかナギーとシードが俺の傍に来て、 服をしっかと掴んで離そうとしない。 ……やっぱり心配させたんだろうか。 無茶は控えないとな……と今だけは思っておこう。 なにせ、いつまたあんな状況が訪れるか解らないから約束は出来ないし。 むしろ無茶をするために冒険を楽しんでる感があるから。 ……俺だけではなく、原中や他の一部の皆も。 と、そこまで考えた時だ。 巨大な氷の結晶がガシャンッ!と砕けた───と思えば、 その欠片が悠黄奈さんの手に集まってゆく。 当然と言うべきか……ドワーフの皆さんはそこにドシャゴシャと鈍い音を立てつつ落下し、 それでも呻き声を上げ……なんと起き上がったのだ。 思わず、ヒィ!本当に生きてた!と叫びそうになった。 ドワーフ1『う……ぐ、むぅうう……!!』 ドワーフ2『ぐっ……眩しい……!       こ、ここは……?サウザンドドラゴンはどうなったのだ……?』 彰利   「ウワー……少ないと思ってたら結構入ってたのね……」 同意見である。 氷を通して何かを見るとちょっとヘンに見えたりするもんだが、 その要領で少なく見えてたとか……そんなところなんだろうか。 ちなみにその数は30以上。 重い筈だ。 悠黄奈  「サウザンドドラゴンの脅威は、もう何年も前に終わりを告げていますよ」 ドワーフ1『む……?おぬしは……おお、セルシウスか……!』 悠黄奈  「この世界感ではお久しぶり、ですね」 彰利   「オウ?知り合い?」 悠黄奈  「かつてのドワーフの族長です。       サウザンドドラゴンとの戦いを前に、力を合わせたことがあるんです」 設定ではですが、と小声で続ける悠黄奈さん。 ドワーフ1『状況が把握出来てはいないが……ワシはロイド=セイバルズ。       ドワーフの族長を務めているものだ』 中井出  「うむ、俺は中井出博光。原中の提督を務めているものだ」 彰利   「ウヌ、俺は弦月彰利。黒の秩序を務めているものだ」 ナギー  『わしはナギー。然の精霊を務めているものなのじゃ』 シード  『僕はシード。魔王が一子を務めているものだ』 悠介   「………」 彰利   「さあ!!」 悠介   「やかましい!!煽られたってやらんわ!!」 ロイド  『なにやら解らんが……騒がしいな、まったく』 背の丈に似合わず、足元まで長いヒゲをワッサワッサと撫でるロイド老。 で……我らはそんなロイド老を前に、 今この世界で起きていることの全てを話して聞かせることにした。 さすがに何もしらないままでウラシマ効果はキツイだろ。 ───……。 ……。 ややあって─── ロイド  『ふむ……なるほどな。ワシらは眠っておったか。       だとしても、眠っていた状況はなにより安全な領域だったな。       永久水晶内ならば、よほどの衝撃が加わらん限りは傷も負うまい』 彰利   「体とか平気で動かせるん?」 ドワーフ2『甘く見るなよ。       俺達ドワーフはそんじょそこらの人間よりも体力に自信はあるさ。       なんなら今すぐにでもなにか鍛えてみせたっていいぞ』 中井出  「なに!?ならばこれを頼む!!」 ドワーフの言葉を前に、 彰利が武器を取り出すより先にズズイとジークフリードを突き出す。 彰利   「あっ!こ、これ!アタイがやってもらう筈だったのに!」 中井出  「コココ……!所詮この世は弱肉強食よ……!!」 彰利   「グゥウ……!そ、それ終わったら次は僕ンだかんな!」 悠介   「何処の子供だお前は。       ほら、鍛冶はともあれ、欠片は集まったんだ。次行くぞ次」 彰利   「なにぃ!?だってタダでやってくれるんだよ!?鍛えなきゃ損だぜ!?」 ドワーフ2『誰もタダなんて言ってないぞ』 彰利   「行こうぜ悠介。ロマンが俺らを読んでるゼ」 中井出  「読むのか」 悠介   「ああ……お前ってほんと彰利だよ……」 彰利   「アタイがアタイなのは当然さ!!つーわけで中井出ー!」 ドワーフに有料を告げられた途端に物凄い速さで去っていった彰利、 ふとこちらを向いて叫ぶ。 叫ぶくらいなら離れる前に言えばいいんじゃないだろうか。 でも一応、 中井出「おー!?なんだー!?」 と返す。 多分ろくな用事じゃないだろうけど、一応。 で、出た言葉は─── 彰利 「……次だ。次会った時が貴様の最後だ」 まったく予想していなかった言葉だった。 しかしこんな言葉に返事を飛ばさないほど、俺の男は廃っちゃいないのだ。 中井出「フフフ、返り討ちよ」 だからニヒルに笑むとともにそう返し、向かい合いながら怪しく笑った。 フフフ……と笑ったのちにフッフッフ……と変化し、 やがてグオッフォフォとサンシャインスマイルで。 悠介 「お前らさ、なんでそう申し合わせてもいないのにポンポン言葉が出てくるんだ?」 そんな我らを見て晦一等兵が一言。ちなみに物凄く疲れた顔してる。 中井出「なんでって……」 彰利 「俺に訊かれてもなぁ……」 悠介 「この現状でお前か中井出以外に誰に訊けっていうんだよ……」 彰利 「ぬう、それもそうかも。しかしながらだね悠介よ。     アタイ達はそれはもう長い間をノリだけで乗り切ってきた猛者という名の修羅よ。     申し合わせなど無くてもここまで出来るのは、     既にそれが自然体になってるからじゃよきっと」 中井出「ああほら、晦とゼットが向かい合えば必ず剣を弾き合わせるが如く自然に」 悠介 「解りやすいけど嫌な喩えをするなよ!!ていうか自然とまで言うか、オイ……!」 彰利 「まぁよ、まぁあああよ、今更ギャースカ言っても始まンめェよ。     ホレ悠介行きませう。今回のことでさらに覚悟が決まったのよアタイ。     絶対ェエエ強くなる。負けてられないって思えちまったからね」 悠介 「───そか。だったら気が変わらないうちに進むか。     とりあえず今日は重力修行な?」 彰利 「ゲッ……体力作りとかにしない……?走ってスタミナつけるとか……」 悠介 「言った傍から挫けるなたわけ!     この世界で走ってもスタミナはつかないだろが!」 彰利 「グ、グゥウウ〜〜〜ッ!!!こ、こうなりゃドンとこいだぜ〜〜〜〜っ!!     というわけで中井出、     僕修行の鬼になっていつか貴様を殺すからそこんとこヨロシク」 中井出「なにその挨拶めいた殺人予告!!されたくないよヨロシクなんて!!     もっと自分の力を別の方向に向けようよ!     目標にされるのは嬉しいけどそれが殺すためなんて冗談じゃないよ!!」 悠介 「そうそう。しっかりしとかないと、いつかゼノに闇討ちされるぞ。     あいつ、結構腕上げてきてるみたいだ」 彰利 「マジで!?」 悠介 「ああ。途中で見かけたってみさおからtellがきた。     彰衛門……ていうか彰利、     お前に真面目に強くならないと追い越されますって伝えといてくれって」 彰利 「ア、アゥワワワ……!!こりゃやべぇ……!     どうもアタイ、ゼノと戦うのは苦手で……!よ、よし!すぐやろう今やろう!     どんな修行でも耐え抜いてみせるぜ〜〜〜〜っ!!」 悠介 「そうか、じゃあ現実世界で俺がやってた修行を」 彰利 「段階を踏んでお願いしますマジで」 悠介 「はぁあ…………まずは精神修行から入ったほうが良さそうだなお前……」 心底呆れた声と溜め息だった。 やがて二人は何事か話し合いながら去っていき、それを追うように─── 悠黄奈「それでは博光さん、失礼します」 敵対する俺に礼儀正しくペコリとお辞儀をした悠黄奈さんが駆けていった。 ……回収した永久水晶を持って。 どんな効果があるのか知らないけど、解いてくれたお礼だ。 ステキアイテムだったらショックだけど、スパッと諦めよう。 中井出(……ていうか、確か龍神烈火拳の威力が上がるとかそんなのじゃなかったっけ?) 以前見た情報ではそんな感じだった気がするが─── 結構行われたバージョンアップの中で変わってる可能性もあるのかな。 まあいいや、今は目の前のことをコツコツ潰していこう。 とりあえず………………姫さんが消えた。 中井出(───アレ?) 馬鹿な……先ほどまでここで気絶していた筈……! それはもう熱い砂漠の上に倒れてジュウジュウと顔面を焼いてた筈なのに……! 中井出「ハッ!」 と思い、バッと晦たちを見る。 しかし……姫はいない。 ハテ、と思ったが───ゾチュリ。 彰利 「ゲゲッ!これ!暴れるんじゃありません!」 彰利の脇腹辺りが黒くゾチュリと蠢いた。 それで理解に至った!彼女は攫われていた!───俺の言えたセリフじゃないけど! 中井出「彰利一等兵!貴様!!」 彰利 「わっ!もうバレた!!逃げるぜ悠介!悠黄奈さん!     この小娘を王様に渡してガッポリ軍資金を頂くのだ!     こんなところで燻ってる場合じゃあ───ねぇぜ!!」 悠介 「軍資金云々は別にしても、燻ってる暇がないって言葉には賛成だ!」 悠黄奈「それではごきげんようです!」 中井出「なにぃ!?待───」 て、と言うより先に、ヤツらは我が前からドシュンッと消え去った。 ……彰利の転移術だろう。 くそ……これではこの博光の大いなる人質計画が全て水泡に……! ああいや、だが今はそれよりも武器だ。 今それを考えたってどうしようもないことなのさきっと! そう思うようにしてバッとドワーフたちに向き直った─── ドワーフ2『これは普通の鍛冶道具じゃ鍛えられないぞ?』 ───矢先にこれである。 予想はついてたものの、ドワーフなら或いは……とか思った俺が馬鹿だった。 ロイド『ほうほう、皇帝竜の素材で固めた剣か。     しかもこれはシュヴァルツレイヴを鍛えたものだな?』 中井出「え……解るのか?」 ロイド『そりゃそうじゃ。宝具精製には我らドワーフ族も無関係ではない。     その歴史を知ればこそ、これがどんなものから成長していったのかくらい解る』 おお……猫よ、いやさアイルー長老よ……! ここに貴様のような鑑定眼を持つドワーフが居るぞ……! っとそうだ。 中井出「なぁロイド老。アイルーって知ってるか?」 ロイド『うん?おお、あの獣人種の猫どもだな。知っておる。     これだけの年月だ、もう生きてはおらんだろうが───』 中井出「いや、ピンピンしてるぞ。これを鍛ってくれたのもアイルーだ」 ロイド『なんとな……?そうかそうか。     どんな理由があるにせよ、見知りが居るのはいいことだ。     さて……そろそろ話を本題に持っていこうか。     ああ、本題というのはお前さんの望む方向での本題だが』 中井出「おお、俺が望むことはただ一つだ」 返されたジークフリードを掲げ、地面にザゴォンと突き刺す。 超震動は起こらない。闘争本能とかそういうのを武器が読み取ってないからだろう。 中井出「これを鍛えてほしい。専用の鍛冶道具ならアイルーが持ってる」 ロイド『皇帝竜の角から作り出した道具か。皇帝竜はお前が仕留めたのか?』 中井出「まあ……からがらになんとか」 ロイド『そうかそうか、それはアイルーも驚いたことだろう。     あいわかった、その注文、全霊を賭けて承ろう。     土中で死ぬことも無く眠り続ける筈だったワシらを救ってくれた礼だ』 中井出「よっしゃあ頼むぜ〜〜っ!」 ロイド『……と、その前にだ。……出せ、持っておるのだろう?』 中井出「出す?」 ハテ……と思ったが、老の視線を追ってみると、そこにはブリュンヒルデが模す防具が。 ……なるほど。 中井出「……グオッフォッフォ……!老も人が悪い……!」 ロイド『ドワーフ族は鉱石や合金、金属には鼻が利く。     お前がオリハルコンや緋々色結晶を持ってることくらいすぐに解ったわ』 おお……本当にアイルー種並に鼻が利くんだな……。 普通に驚いた。 中井出「一応詰められるだけ詰めてきたから、     どれがどれだかなんて考えてる暇なかったぞ」 ロイド『なるほど、命からがらすぎたわけだな』 ブリュンヒルデを村人の服に戻すと、ゴシャドシャと鉱石や合金が砂地に落ちてゆく。 ていうかなにもこんなところで話し合う必要なんて無かったかもしれない。 でもドワーフたちは平気な顔してるから、我慢でなら負けん!と、 無駄な対抗意識を燃やした俺はこのまま話を続けることにしたのだった。 自分で思うほど、つくづく馬鹿である。 ナギー『わしらもバックパックを空けたほうがいいかの』 中井出「うむ!俺も今すぐブチ撒ける所存である!」 シード『では僕も』 セイヤー!と奇妙な掛け声とともにバックパックを逆さにする。 すると出るわ出るわ財宝の山。 ロイド『おうおう、よくもこれほどまで』 中井出「あ……そういや元は老達の財宝だったっけ」 ぬおお、意気揚々とした気持ちが途端に気まずいものに……! ロイド『なに、構わん。あのままではどうせ瓦礫の下敷きになっていただろう。     それを誰かの役に立てられるなら、これほどいいことはない』 中井出「ろ、老……!」 ロイド『ところでその老というのはやめないか。ワシはロイドだ。     ヒゲは生えているが、老人扱いされるには早い。まだまだ現役だ』 中井出「そ、そうか……残念だ……」 ロイド『あ、ああいや……なにもそこまで落ち込むことはないだろう……。     というかこちらが悪いことをしたようで複雑なのだがな……。     ドリアード二世、この男はいつもこうなのか?』 ナギー『ナギーなのじゃ。わしのことはナギーと呼べ。     ……そうなのじゃ、ヒロミツはいつでも全力で感情をぶつけてくるのじゃ。     そんなヒロミツだから一緒に居て楽しいのじゃ』 シード『そうだ。父上からは学ぶことがたくさんある。     父上は僕が知らないことをたくさん知っていて、     それが難しいことでもやってのけるんだ。     僕はそんな父上だからこそずっとついていくと決めたんだ』 ロイド『ふぅむ……妙に好かれているんだな。……悪いやつではないようだ。     いいだろう、老と呼んでも構わんぞ。ワシもお前がどんな男なのか興味が沸いた。     まあ、この武器の鍛えようを見れば、どんな男かくらい想像がつくがな』 老が砂に突き立ったジークフリードを撫でて微笑む。 解ってくれるか老……俺がどれほどジークフリードのために防御を捨ててきたかを……! 大事に大事に育てたのだ……今やジークと俺は一心同体! ……霊章に仕舞えるって意味でもね。 ロイド『さて……これほどの量をこれ一本に注ぎ込むのは骨が折れそうだな。     鍛冶道具も取りに行かなくてはならない。ドリ……ナギーよ。     癒しの大樹まで転移は出来るな?』 ナギー『出来るのじゃ』 ロイド『ではここに居る全員を頼む。それから……カッチ』 カッチ『はい族長』 ロイド『アイルーのやつと連絡はつけられそうか?』 カッチ『旧時代と同じものを彼が持っていれば』 ロイド『よし、試してくれ。向うから来てもらった方が早そうだ』 ナギー『い、癒しの関所で鍛冶をするつもりか!?』 ロイド『不都合でもあるか?』 ナギー『あるのじゃ!そんなことをしては森人にさらに迷惑がかかるのじゃ!』 ロイド『ふむ……では魔王の子よ』 シード『死人の森には父上の武器を鍛えるだけの設備が無い。行っても無意味だ』 ロイド『ふぅむ……ではその付近に使われていない建物かなにかはないのか?』 シード『それは……』 使われてない建物……あるな。 ちょっと近寄りがたい空気はあるけど。 ていうかろくな思い出がないっていうか。 でも使われてないのは事実で……でもそこを教えると俺が大変な目に合いそうな予感が。 しかし言う!何故なら俺はなによりも武器の成長を望んでいるから!! 中井出  「……、あ、あるぞ?一つだけ」 ロイド  『そうか。よし、ではそこで───』 中井出  「……えと、ただし……ゾンビ達が出迎えてくれるかもしれないけど」 ロイド  『………』 ドワーフ達『………』 俺の言葉で皆様沈黙。 だけど老だけは小さく息を吐いて俺の腰をポンと叩くと─── ロイド『…………退治は任せた』 中井出「やっぱりぃいいいいーーーーーっ!!!!」 予想通りの言葉を俺に送ったのだった。 ───……。 ……。 ……天国か地獄か解らないけど、 とりあえずきっと冥界には行っただろう僕の家族たち……お元気でしょうか? 父さん母さん、じーさんにばーさん……僕は元気です。 元気ですが……今の現状を思うに、涙が出そうでかないません。 ゾンビ『ン゙アァアアアア……!!!』 ゾンビ『ジアアアァァァアア……!!!』 中井出「来るなぁ寄るなぁ噛み付き魔人めぇええ!!     来たら殴るぞぉ!本気だぞぉ!殺すぞコラァアアア!!!」 僕は今……ここに居る。 じゃなくて、元花舞う都エーテルアロワノンに居る。 何故って、話し合った結果、やっぱりここを使うことになったからで─── やっぱり存在していたゾンビを俺が受け持って、老たちやドワーフたち、 途中で合流したアイルーや他のキャット達、 そしてナギーやシードが教会の大聖堂目掛けて一直線に走っていくのを見届けて、 俺は“武器無し状態”でゾンビどもと戦っているのだ。 ちなみに防具も無い。 何故って、防具も鍛えてやるからよこせって言われて身ぐるみ剥がされたからである。 この辛さが……どう唱えればキミに届くだろう。 武器も無く、ネッチョリして腐った敵を拳で破壊しなければならない悲しみを。 ゴシャアと殴ればウジと謎の汁と肉片が飛び散り、 パキャアと割れば頭蓋からハエがフィーバー。 足を砕けば這いずり回り、腕を砕けば口だけでも噛み付いてくるとてもとても嫌な状況を。 中井出「俺はぁあーーーーーっ!!!俺はよぉおおーーーーーっ!!!」 思わず風来のシレンの村人のように叫んでしまう。 しかしこれも武器のため! ジークフリードやファフニール、 ドンナーやブリュンヒルデのためにも俺はここで戦い続ける! 中井出「そうだ……ようは全滅させちまえばいいんだ……     そうすればもう悲しむことなどなにもない!」 ゾンビ『ぇぇええぅえうぇう……!!』 中井出「我が身に宿れ魔人カルキ!オラオラオラオラオラオラァアアーーーーッ!!!!」 バゴシャドゴシャベキャゴキャバキベキゴスゴシャベキャバキャゴパァアアアッ!!!! ゾンビども『るげぇえええええ…………!!!』 拳に魔人の輝きを込め、迫り来るゾンビどもを殴る殴る殴る!! といっても基本攻撃力と武器攻撃力に+修正が入るだけで、 武器が無い今ではそんなに使えるとは言えないわけで。 くそう武器が無いだけでこんなに心細いなんてどこまで情けないんだ俺……。 というのも武器を手放したくらいで能力が途絶えることなんて無い筈なんだが、 やっぱり効果範囲っていうのがあるらしく…… 結構離れていると武器に備わる技術スキルとかを行使出来なくなるらしい。 当然戦覇王の祝福とかも無し。 だが構わん!こうなりゃここまで来るのに培ったレベルで憐れな亡者どもに魂の救済を! 中井出「お亡くなりになりやがれぇええええええっ!!!!」 俺は拳を振るった……! 振るって振るって振るいまくった……! たとえ汁だらけになっても、それが口の中に入って全力嘔吐しても。 ───……。 ……。 やがて全てが終わる頃……俺は夜明けの陽が差す誰も居ない元花の都に立っていた。 亡者どもは残らず殲滅。 なのに上がったレベルはゼロ。 今のレベルを考えればこんなもんなのかもしれない。 中井出「パパン、ママン……僕の手は汚れてしまいました……いろんな意味で」 で、そんな手を壊れた噴水広場の水でバシャバシャと洗う。 なんだかこっちも妙に粘着性があるけど気にしない。 中井出「体は疲れなくても、今回ばっかりは心が疲れた……。     そもそも寝てない所為で精神がギリギリで」 ゴバショッ!ドゴォオッシャアアッ!! 中井出「オワッ!?」 背後で炸裂音! 何事!?と振り向いてみれば…… 陽光とともに地面からおはようを告げるゾンビの群れが……!! 中井出「そんな習性だけ残して死人になるなぁあああっ!!!うおぉおおおおっ!!!!」 前略家族の皆様……どうやら俺には寝る暇もないようです……。 ───……。 中井出「はーーっ……はぁーーーっ……!!はぁっ……はぁあ〜〜〜っ……!!」 ゾンビ、殲滅。 いや、そんなこと確認するよりも眠い。 もういい、俺ここで寝る。 襲い掛かってきたら対処する方向で寝る。 神経が図太い?フフフ、それも原中で鍛えたこの肝っ玉があればこそよ……!! おやすみムーミン。 ……。 ガブリ。 中井出「ほぎゃあああああああーーーーーーっ!!!」 そしておはようグッドモーニング!! 軽い痛みを肩に感じて飛び起きてみれば、 俺の肩に歯を立てようとして歯が折れたらしいグールが!! あ、あ……危ねぇ……!寝る前にVITマックスにしといてよかった……!! 中井出「てめぇらどこまで蘇り続けりゃ気が済むんだぁああああっ!!!」 あとはもう同上である。 拳を振るい足を振るい、またもやごっさりと出現していたゾンビどもを殲滅。 それが終わると噴水前の石碑に背中を預けて眠りこける。 どうやら出現周期が決まっているようで、倒しても倒してもゾンビは出るもよう。 ならば俺は武器が完成するまでずっとこうやって戦い続けるのみさ……!! こうなりゃヤケだよ俺!! ───……。 で…… 中井出「いやぁああああああっ!!     なんか敵が周期を重ねるごとにパワーアップしてるぅううっ!!」 訪れた現状はこんなもの。 既にここでの戦いを始めて……何時間になるんだろうか。 ちょくちょくと眠るのにも慣れ、 もうなにも恐れない……!と心に誓った次の瞬間にこれである。 だが諦めない!それが俺達に出来る唯一の戦い方なんだよ! 危なくなったら平気で逃げ出す俺だが、武器の成長がかかっているのなら決して引かぬ!! 中井出「かかってこいやぁああああっ!!!」 こうして俺は、 恐らくジワジワとデカくなりつつあったゾンビどもをコロがし続けた代償と、 今この場で向き合い続けなければならなくなったのだった。 最初は普通サイズだったのに回を重ねるごとにちょっとずつ大きくなっていたらしい。 ああ、気づけばこんなに立派になって……! というのも既に敵は巨人サイズ。 数は減ってくれたが、 それでも徒手空拳で防具もない俺にはかなり危険な状況であることに変わりはないわけで。 加えて言えば回復アイテムは地竜戦で全て使ってしまった。 さらにいえばこいつらしつこいくせに経験値が物凄く少ないため、 レベルもてんで上がらない。 オウノゥ……。 ───……。 中井出「ぐっは……!は、ぶはぁっ……!!」 やがて舞台は昼に突入。 今頃みんなは何をしてるかな……とか考えながら、 俺は体が大きくなった次は、 強さがどんどん上がっていったギガースゾンビをブチノメしていた。 ここまでくると流石に経験値も相応なものになり、 ようやく1レベル上がった俺は心も体もリフレェエエッシュ……! 呼吸を整えて、段々と出現速度が早くなっているゾンビの出現を待った。 ───……。 夕方。 中井出「オゥラオゥラオゥラオゥラオォオオゥラァアアアアアアッ!!!」 バゴォンドゴォンバゴシャボゴシャドッガァアアアンッ!!!! フルメタルギガースゾンビ『グゥウウォオオオオ……!!』 ゾンビは鋼鉄化していた。 ───……。 夜。 中井出      「STRマックス!ジャイアントスウィイイイイングッ!!!!           うぉおおおおおおおおおっ!!!!」 メガタウロスゾンビ『ヌグォオオオオオオッ!!!』 ゾンビはモンスター側にジョブチェンジしていた。 ───……。 深夜。 ワイバーンゾンビ『グヴァアシャァアアアッ!!!!』 中井出     「…………僕……もうお家帰りたい……」 ゾンビは竜族になっていた。 ───……。 ズゴォオッッシャァアアアアンッ!!!! ドラゴンゾンビ『グギャァアアォオオオ…………!!』 そして……時は白みゆく夜明け。 竜族のゾンビがとうとうワイバーンからドラゴンゾンビに変わった頃。 瀕死の俺にようやく届く声があった。 ロイド『武器が完成したぞぉっ!!』 中井出「カカカカカカ…………!!」 喜びと苦労とせつなさとひもじさと心細さがごっちゃになった心境がここに。 解ってもらえるだろうか……ゾンビどもがうようよ居た場所に残された、 店の食べ物を食べて飢えを凌いだこの約二日間の俺の悲しみを。 そんな状態でドラゴンまで素手でブチノメし、もうほんと死ぬところだった俺に、 ようやく届いた声……その喜びを俺はどうやって表現しよう。 いやもう素直に喜んどく。 騒ぐ気力も無いよ俺……。 そうして俺は随分と痩せコケた老から鍛えられたジークフリードを受け取り、 ドデカイモンスターが現れる前にと大聖堂でご就寝の皆様を回収、 とっととエーテルアロワノンをあとにしたのだった。 …………ちなみに。 超巨大生物と連日連夜戦った末……気づけば俺のレベルは4780に達していた。 あれだけ戦って11レベル……経験値8倍だったらどれほど上がっていたのかと考えると、 ちょっぴり泣きたくなった夏の日の出来事だった……。 Next Menu back