───冒険の書178/蝶・外道英雄降臨───
【ケース458:晦悠介(再)/外道と断言出来るクズ英雄】 ───そうしてエトノワールについた俺達を待っていたのは─── 悠介 「……!?なんだよこれ……!」 無惨に倒された原中の連中や、名誉ブリタニア人、そしてエトノワール兵たちだった。 彰利 「悠介!城だ!王国に攻め込む理由なんて一つしかねぇだろ!」 悠介 「あ、ああ!」 彰利 「ほれ夜華さんも!急ぎますよ!」 夜華 「解っている!」 嫌な予感がした。 まさか、一瞬でも彰利の言葉に流されかけた俺の意思があいつに届き、 ジュノーンとなって殺戮を───!? だとしたらこんな事態になったのは俺の所為だ! 早く───!もっと早く走れ……! ゲームの中とはいえ、もう誰も死なせたくなんか───!! 彰利 「閏璃に柿……!田辺に蒲田……!ひでぇ……みんなやられちまってる……!」 悠介 「大丈夫だ……!塵になってないってことはまだ死んでない!     今はそれよりもレイナートのところに!」 彰利 「おう!」 城下を駆け、長い坂を上り、門の先を走る。 そこにも原中の連中が転がっており、それは城の中まで続いていた。 ヤバイ……!この状況じゃあ、もうレイナートは……! っ……いいや!走って間に合うかもしれないなら諦めるな! 彰利 「な、なあ悠介!?もしかしてだけどさ……!ジュノーンが───!」 悠介 「……だったら敵わなくても止めるんだ!!彰利、篠瀬!力を貸してくれ!」 彰利 「オッ……」 夜華 「悠介殿……」 彰利 「フッ……オーケー親友。お前が戦いで人を頼ってくれるなんて嬉しいぜ?     ……夜華さん、いいかね?」 夜華 「当然だ。今の悠介殿はとても澄んだ目をしている。     相手が誰だろうが、わたしは力を貸すことに異存などない!」 悠介 「彰利……篠瀬……───……ありがとう」 ……そうだ。 俺は戦いの中であまりに孤独だった。 頼れば。 振り向けばきっと、手を差し伸べてくれる人はたくさん居た筈だったのに。 悠介 「……ん!」 頷き、長い道を走る。 謁見の間へと続く長い長い道を。 途中、やはり倒れている兵士や名誉ブリタニア人たちを見て心が痛んだが、 今はそれよりもやらなくちゃいけないことがあるんだ───!! 悠介 「レイナート!!」  バダァンッ!! そうして───俺達は走る勢いもそのままに、 閉ざされていた扉を開け放って謁見の間へと辿り着いた……! そして、そこで待っていたのは───!! 中井出「やあ」 中井出だった。  バキベキゴロゴロズシャァアーーアーーーーッ!! そして俺達は扉を開け放った勢いもそのままに、 謁見の間の絨毯で盛大にコケたのだった。 彰利 「テッ……テメェエエエエエエ!!なにやってやがるんだこんなところでェェエ!!     え……なに!?俺達焦り損!?あの緊張感なに!?     散々焦って急いで走ってきてこれか!?」 悠介 「なにもこのタイミングでここに居ることねぇだろコラ!!     空気読めよテメェエエエエエエエ!!!」 中井出「え?俺?───な、なんで俺怒られてんの!?」 突然怒られた中井出は何が起こったのかまるで解らないといった風情で、 ただあたふたとしていた。 いやちょっと待て……どうしてこいつがここに居るんだよ……。 ナギー  『静まるのじゃおぬしら。ヒロミツはただ船を借りに来ただけなのじゃ』 悠介   「……船?」 シード  『そうだ。水の戒めの宝玉を探すために海に出なければならない。       だがそれは港に置いてあるような小さな船じゃダメなんだ。       ブルードラゴンや水に生きるモンスターたちの攻撃に耐えられるような、       丈夫な船じゃなければいけない。だからここに借りに来たんだ』 夜華   「ま……待て。その……貴様は“まおー”とかいう悪的存在なんだろう?       それが何故強奪ではなく王に自ら頼みに来ているのだ……」 中井出  「え?魔王だからって強奪するの、当たり前すぎてつまらないじゃん」 悠介&彰利(ああ……中井出だ……) ただその一言につきた。 ていうかな、わざわざ敵の本拠地まで来て“船貸してくれ”って……普通じゃ出来ないぞ? ああいや、中井出が普通じゃないのはよ〜〜く解ってる。 解ってはいるが、それが出来ないのが人間ってやつで…… それでもやっちまうんだから本当に普通じゃないよな、中井出って……。 彰利 (あ……そういやさ、他の皆様方も千年の寿命受け取ったのよね?) 悠介 (うん?ああ、そうだな。それがどうかしたか?) 彰利 (いや……それで得た力まで人のものに変換したんなら、     極端的なことで言えば……このヒロラインに居る全てのプレイヤーを見ても、     真の人間って中井出だけなんだよね?) 悠介 「あ」 中井出「お?どうかしたのか晦一等兵」 悠介 「へ?あ、いや……どうかしまくっててどこからツッコんでいいか解らんが、     今はとりあえずなんでもないって言っとく……」 そうか……。 考えてみれば千年の寿命を受け取ったってことは、 もういろんなヤツの体の中には魔導に必要な要素が生まれてるわけだ。 式を操る能力然り、魔導術然り。 じゃなけりゃマクスウェルのもとで満足な勉強や修行なんて出来なかった筈だ。 でもその力の素自体を人のものに完全に変換してしまった今、 この世界で本当に人間なのって……中井出だけってことになる。 ただ寿命が長いだけで、武器が無ければなんにも出来ない……そんな人間がそこに居る。 彰利 (なんだかすげぇね?これだけ人外寄りの皆様が居る中、彼だけ人間なんて) 悠介 (俺としてはそんな人間なあいつが、     今一番強いかもしれないって事実に凄さを感じるが……) どれだけいろいろなことに驚かされてこようが、 身近なヤツにここまで驚かされるのも珍しい気がする。 しかも相手が人間とくるなら……なぁ? 中井出  「というわけで船をお借りしたいのだが」 レイナート「断る、と言ったら?」 中井出  「自分で作る」 悠介&彰利『奪わないのかよ!!』 中井出  「おいおいキミたち野蛮だぞ……?       魔王に対する勇者さまがそれじゃあこの世界の未来が心配だよ僕は……」 悠介   (おい……!なんだか知らんが魔王に諭されてるぞ……!!) 彰利   (ギィイイイ……!!何故だか知らんがとっても悔しいぃいい……!!) レイナート「ふむ……一つ聞かせてくれ。何故キミは魔王になどなった。       あのままブレイバーとして旅を続けていたなら、       それなりの地位に立てただろうに」 中井出  「フフフ……!旅人が勇者になるなんてそんなありがちなことやって、       この博光が満足出来るとでも思うたか……!」 悠介&彰利『ありがちじゃねぇよそれ!!       まずファンタジーって時点でそうそうないだろ!!』 中井出  「むしろそうそうない状況で実行するから最高なんじゃないか……!!」 彰利   「なっ……なるほど……!!」 悠介   「流されるなばかっ!」 彰利   「バカとはなんだコノヤロウ!!」 中井出  「それじゃあ俺からも一つ。何故この博光を魔王と称し、狙うようになった?」 悠介   「───」 俺が疑問に思っていたことだ。 やっぱり当事者、といっていいかは微妙だが、中井出自身も疑問に思っていたらしい。 それに対してレイナートは─── レイナート「……民を安心させるためには仕方がなかった。       お前がどんな経緯で西の大陸を沈めたのかは知らない。       だがそんなことが事実としてあり、お前が魔王だと謳う者が居る以上、       お前を魔王として認め、憎むことでしか解決出来なかった」 悠介   「………」 中井出  「………」 ある意味、予想通りの答えだ。 中井出もそうだったんだろう、目を閉じて噛み締めるように受け止めると、小さく笑った。 中井出「そっか……だったら俺も、     そんなことがあった事実を受け止めて魔王をしっかり演じないとな……」 悠介 「中井出……」 その顔は妙に吹っ切れた顔だ。 疑問が晴れ、そして民を思うあまりに仕方なく自分を魔王と呼ぶしかなかった彼を、 責めるのではなく受け入れるかのような─── 中井出「まず手始めに殺さないでおいた討伐部隊を皆コロがしにして、     次に全ての民どもにこの博光の真の恐ろしさを味わわせてそれから……!」 すまん、見間違いだった。 レイナート「なっ……お、お前は!そんなことをすれば民たちが───!」 中井出  「ふははははは馬ァアアア鹿めぇええっ!!       この博光がそんな話を聞いたからといって、       感動してやられ役を買うとでも思ったか!!       甘し!俺はむしろその魔王という役を破滅の方向で受け入れよう!!       怯えるがいい民たちよ!今ここに!俺は魔王博光の真の誕生を宣言する!!」 悠介&彰利『だぁああこの馬鹿ぁああああっ!!!』 今、目の前で魔王が誕生した! その名も……中井出博光!! レイナートの中途半端な美談(?)が彼の原ソウルを見事に刺激しやがった!! ……ちなみに言うと、今の馬鹿って言葉はレイナートに向けたものである。 中井出  「愚かなりレイナート……!今の貴様の話では俺が損するだけで、       あとは貴様が魔王を討伐した英雄と称えられるだけ……!つまり、       俺が何処に行こうが後ろ指を指されたり石を投げられるだけではないか……!       泣いた赤鬼も裸足で逃げ出すそんな作戦、この博光は受け入れられんわ……!       この話は無かったことにしていただこう……!」 レイナート「ぐくっ……!」 焦るレイナートを余所に、中井出は魔王然とニヤリと笑う……!! そして───! 中井出「それはそうと船貸して?」 サワヤカスマイルでそう言った。 悠介 「もういいから自分で作れお前!!」 中井出「自然の精霊の加護を一身に受けている僕に     愛すべき自然を薙ぎ倒せというのかこの外道!!」 悠介 「作るって言ったのはお前だろうがぁっ!!」 中井出「黙れクズが!!」 彰利 「死ね!!」 悠介 「おぉおおおのぉおおれぇええはぁあああ……!!!」 彰利 「《ギゥウミキミキ……!!》ごぉおおおおお………………!!!」 あっさり手の平を返した彰利の首を全力を以って締め上げた。 ええいもうどうしてこう原中の連中は……!って俺も原中なのは確かだが……!! 中井出  「で、船貸してくれるのだろうか」 レイナート「……断る。これで渡してしまえば、魔王に手を貸した王と言われるだろう。       通した意地は通しきらなければただの虚言だ。       私はそんな王など目指していない」 中井出  「そうか……うむ!素晴らしい!」 レイナート「な……なに……!?」 中井出  「民の期待に応える王……結構じゃないか!!俺はあんたを見直した!       これで魔王の力に屈するようなら民なんて守れやしない!!」 レイナート「な……、な……?」 断られたにも関わらず、中井出は満面の笑顔でレイナートの肩をバシバシと叩いていた。 ちなみにソナナニスはというと……既に床でノビていた。 入ってすぐ気絶させられたんだろう。 彰利 (俺……思うんだけどさ。もし中井出が本当に魔王って感じのバケモノだったら、     レイナートってば船渡してたと思うね) 悠介 (まあ……なぁ……。     どっかの村をとことこ歩いてそうな男にしか見えないもんなぁ……) そしてこれが俺達の感想。 訪れたのが牙向き出しで竜みたいな魔王だったら、絶対に船なんて渡してただろう。 でも訪れた魔王は中井出で、物凄く平凡な容姿の男だったわけで。 つくづく魔王っぽくない男が魔王になったもんだ。 中井出「フフフ……自身で強く認めたことで、称号が“魔王”になったわ……!     これで俺は全ての村や町に嫌われ、     サンドランドでエロマニアとして称えられるだろう……!」 キラリと彼の瞳から雫がこぼれた瞬間だった。 まだエロマニア扱いされてたのか……不憫な……。 中井出「さて、それではナギー、シード。     これから流木を拾い、泥舟丸Mk.Uを作るぞ」 ナギー『おお!自然の有効利用じゃな!』 シード『破壊ばかりではなく時に環境にやさしいとは……!流石です父上!!』 いや、環境にやさしい魔王ってどうよ。 というか乗った瞬間沈没しそうなその名前はなんとかならないのか? なんて呆れが入っていたその時だった。 彰利 「ちょっと待てぇ〜〜〜い」 悠介 「へ?」 なんと彰利が立ち去ろうとする中井出の前に立ち塞がり、 黒で象った棍棒を持ってニヤリと笑った。 彰利 「賞金首が一人でお散歩たァいい度胸だぜ……。     俺達ァ最近結成したチーム『チョコレート』のモンだ……。     まだホヤホヤなんだが……名前くらい覚えておいてくれ。     ……まァこれから死ぬンだからその必要もねぇか(笑)( しょう )」 マテ。 俺はそんなチーム名は初耳だぞ。 なんて言ったところでこいつが聞くわけもなく─── 彰利 「往生せいやぁああーーーーっ!!!」 棍棒を持って中井出に襲い掛かった!! 中井出「遺跡にあったマジックアイテムその1……パピヨンマスク!」 彰利 「なにぃ!?」 だが彰利が中井出が立っている場所へと辿り着くその間、 中井出はバックパックから蝶型のマスクというか、 ハデなデザインの眼鏡のようなものを取り出した!! そして取り出す動作をそのままに顔につけると、中井出の姿が変貌する! パピヨン「これで完成……パピ!ヨン!!」 彰利  「ゲゲェ変身したぁああーーーーーーっ!!?」 パピヨン「遺跡には面白魔法グッズもかなりあったんでね……。      武器も鍛えたしそういうグッズも手に入れた。今の俺は蝶・ハッピー!      ただ変身アイテム使いながらだと経験値入らないんだよね……」 彰利  「ウヌウなんと面白そうなものを!      しかしそんなパピヨンスーツ一枚では防御力も少ないだろう!そぉい!!!」 パピヨン「フン《ゴギィン!!》フフン《ガンゴキィンッ!!》」 彰利  「ゲェエエーーーーーッ!!!      棍棒が簡単に弾かれる!!どういう皮膚してんだてめぇ!!」 パピヨン「フフフ……!変身能力はなにかしらの能力に一点集中が為されるのさ……!      パピヨンにはボマー、カルガラには槍、カルキには体術、狂いし者には斧。      もちろん他にも変身アイテムはあり、それぞれステータス移動も自由自在……」 彰利  「つ、つまり……?」 パピヨン「メチャクチャ痛いのを我慢してるだけなのさ……!」 彰利  「……こいつ、ただの馬鹿かもしれない」 変身に気をとられててステータス移動が間に合わなかったらしい。 しかも彰利に普通に馬鹿呼ばわりされる始末。 でも中井出は後悔はしてないらしい。 パピヨン「馬鹿で結構!何故なら世界は馬鹿であるほうが楽しめるからさ!      真面目に生きて社会に貢献してそれでなにになる……。      貢献しただけ自分以外の誰かが楽出来て、      自分は疲れるだけだろう……え?違うか武籐カズキ」 彰利  「誰がカズキだこの野郎!!ええい蝶野っぽく喋りやがって!      こうなったら全力で貴様をコロがしてくれる!      あ、王様、娘さん連れ帰ったからあとで金ちょーだい?」 悠介  「こんな時に言う言葉かそれが!!」 彰利  「もちろんさ!金は欲しいもの!この世界で金って物凄い重要だよ!?      だから貴様の首にかかる賞金も僕がいただく!くたばりゃぁああああっ!!!」 彰利の背中に十七枚の黒翼が生える!! ってあいつマジだ!!王様避難させないままであんな力使ったら───!! 彰利 『あ、悠介、姫さんと王様お願い』 悠介 「言うのが遅いっての!!くっそ───くおぉおおおおっ!!」 ゴパァと彰利の黒から吐き出された姫さんをなんとか受け止め、 すぐさまレイナート目掛けて疾駆。 そのまま内側に意識を集中させ、オーダーを解放! 可能なだけ速度を上昇させると、一気に謁見の間入り口まで駆け抜けた! が─── 悠介 「《ズキィッ!》いづっ……!?」 初の解放、どんな能力があるか解らないにも関わらず無茶な行使をしたため、 頭痛と足への負担が現れた。 しかしそんなことを気にかける間も無く謁見の間で爆発が起こり、 けれど俺は二人を庇いながら様子をうかがった。 彰利  『ぬ、ぬうう……!なんて威力の爆弾出しやがる……!      ルナカオスが粉砕されやがった……!』 パピヨン「フ、フフフ……!ニアデス・ハピネス……!」 彰利  『ゲゲェ使った本人はもっとボロボロだぁあーーーーーっ!!      なにがしてぇんだてめぇ!このクズが!』 パピヨン「急に吐血感に襲われたんだから仕方がないだろう……ウヴッ……!      くそっ……パピヨンはダメだ……。      こんなペナルティがあるんじゃ使い勝手が難しい……      なにか他のアイテムを……」 彰利  「クォックォックォッ!!させるかぁああああっ!!!」 再びバックパックを漁る中井出を前に、彰利が一気に斬りかかる! しかし中井出は異様なまでの速度で バックパックから妙なブレスレットを取るとマスクを外し、 すかさず腕にブレスレットを装着!! 中井出「変身!!」 ギシャァアアアアンッ!!! 彰利 「うおっ!?まぶしっ!!」 ???『アァアーーーーールッ───カイザァアーーーーーッ!!!』 装着、絶叫、視界を貫く鋭い閃光! やがて消えてゆく光の中から現れたのは───僕らのヒーローアルカイザーだった!! 彰利 『なっ……キャアアアアアア!!!変身ヒーロー!変身ヒーローだ!!     すげぇ!サ、ササササイン頂戴!?』 アル 『ナックル!』 彰利 『《バゴシャア!!》ギャァアアアアアアアアアアッ!!!!』 そしてヒーローにあっさり殴られる僕らのブラックオーダー。 しかもブライトナックルだったため、黒いアイツは物凄く痛がっていた。 彰利 『ふ、不意打ちとは紳士的でなくってよ納サン!!』 アル 『誰が納クンか!!そんな極一部の人にしか解らないこといきなり言うなよ!』 彰利 『ぶべっ……フフフ、だが貴様がアルカイザーに変身したからには……     俺は絶対に負けられねぇ理由が出来たぜ!     一つ!貴様が光属性の攻撃に優れていること!!     一つ!そのベルトがメチャクチャ欲しい!     一つ!負けたらあの言葉が出そうだからそれだけは勘弁してもらいたい……』 あの言葉? ……ああ、あの言葉か。 確かにホンモノに言われるのは案外屈辱かもしれん。 アル 『アルカイザーのカイザーは皇帝のカイザー!見よ!この素晴らしき一体感!』 彰利 『なにぃ!?……ゲゲッ!ただのスーツかと思ったらこれ竜鱗で出来たスーツだよ!     え……なに!?じゃあこれカイザードラゴンのスーツ!?』 アル 『ククク……!武器と霊章同化した今、     多少の変化にも武器が対応してくれるのさ……!これぞ緋々色結晶の魔力……!     武器の魔法効果が上がって様々な力が解放されたのさ!!』 彰利 『なんだとてめぇ!緋々色結晶持ってねぇって言ったじゃねぇか!』 アル 『持ってなかったさ!変形させた防具の中にしまっておいたのだからね!!』 彰利 『ギ、ギィイイイイイイイッ!!!まんまとしてやられたはこの俺が!!     もう辛抱たまらん!悠介!このヒーローブチコロがしますよ!?』 悠介 「俺もかよ!───ええい!悩むより突っ走る!!」 彰利の言葉に考えかけたが、この世界でいちいち考えるのなんて無意味だと断ずる! 俺は篠瀬にレイナートと姫さんを任せ、中井出へと疾駆する! 彰利 『二対一……卑怯とは言うまいね?』 アル 『うむ!ヒーローはいつでも相手側の非常識に付き合わねばならん!     こんなことで卑怯だのと言うつもりはない!!』 彰利 『おっ?なんと珍しい。どういう風の吹き回し───』 アル 『何故ならこのアルカイザーも非常識を好むからだ……!!』 彰利 『うおお珍しくもなんともなかったぁあーーーーーっ!!!』 悠介 「お前なぁ!少しはヒーローらしい声調で喋ってみせろよ!!」 アル 『う、うるせぇええーーーっ!!ヒーローだって人の子なんだよ!!』 悠介 「うるっ……って……!     お、おおお……!彰利……!ヒーローにうるせぇって言われたぞ俺……!」 彰利 『すげぇヒーローが居たもんだなオイ……』 アル 『さあ!臆さぬならば……かかってこい!!』 彰利 『よっしゃよく言ったこんわらしゃあ!!』 悠介 「オーダー解放!《ジャキィンッ!!》───いくぞ中井出!』 白と黒が正義のヒーロー(?)を前に戦闘体勢を整える。 中井出はいつでも来いといった感じ……なのだが、 構えは以前と変わらず隙だらけだったりする。 これなら─── 悠介 『疾ッ!!』 一呼吸ののちに疾駆! 一気に間合いを詰め、 アル 『レイ・ブレェエーーーード!!《ギシャーーーン!!》』 悠介 『どわっ!?』 突如剣を出現させた中井出に驚愕! ちょ、待て!!前振りも無くそんなゴツい剣をどっから───って霊章か!! アル 『受けてみろ正義の剣技!カイザースマッシュ!!』 悠介 『《シュフィンドッゴォオンッ!!》ぐわぁあっ!!……かぁっ……!!?』 咄嗟にガードに回した剣ごと圧され、足が謁見の間の床に沈む。 ちょ、ちょっと待て……!!なんつぅ威力……!! 普通に以前の三倍以上は破壊力がありそうだぞ……!? 悠介 『く、は……!』 アル 『アル・サミング!』 悠介 『《ドチュッ!》ぐおぉおおああああああああっ!!!!』 アル 『アル・ヘルスラスト(地獄突き)!!』 悠介 『《ザクッ!》ゲハァッ!?か、げはっ……!!』 アル 『アァアアアル・ヘッドバットォオオッ!!!』 悠介 『《ゴバァッシャァアンッ!!》ぐあぁあああっ!!!』 そして怯んだところへ卑劣技のオンパレード……。 何度でも言おう……物凄い正義の味方が誕生した。 俺は目も見えないままに爆裂する頭突きによって地に伏され、 ふらふらする頭を庇いながらも起き上がろうとし─── 悠介 『い、ぐぐ……!!お、お前なぁ……!!《ガシィッ!》うわっ!?』 アル 『アル───ジャイアントスウィイイイイイイング!!!!』 悠介 『うわばかっ!待て!待───うぉわぁああああああっ!!!!』 あっさり捕まり、ジャイアントスウィングの餌食となった。 彰利 『どういう正義のヒーローだてめぇ!     ジャイアントスウィングするヒーローなんて見たことねぇぞ!?』 アル 『そんなことはない!きっと誰もがやりたがっている!     ていうかウルトラマンあたりならやってそうだから大丈夫だ!!』 彰利 『そげなインスタントヒーローの名前なんて、     今言われるまで忘れて《ドボルシャアッ!!!》ゲブルファァアアッ!!!』 ……やがて解放された俺は目が見えない中で黒と衝突。 その勢いのままに謁見の間の壁画と化した。 アル   『ブラックオーダー……ホワイトオーダー……お前は強かったよ。       でも、間違った強さだった……』 悠介&彰利『ギ、ギィイイイイイーーーーーッ!!!!』 予想していた通りの言葉をホンモノに言われ、俺達はそれはもう腸を煮え繰り返した。 まさか……こんなことを本当に言われる日が来るとは思わなかった。 そしてまさかここまで悔しいとは思わなかった。 まさか自分の口からギィイイとかいう言葉が出るとは思わなかったから。 彰利 『《バゴォッ!ボゴッ……!》まだだ!俺はまだやれるぞぉ!!     夜華さん!キミも参戦するのだ!     いくら中井出といえど、原中以外のおなごを殴るのには躊躇する筈!!』 夜華 「そんなことで手加減されるのは御免だが、彰衛門の敵はわたしの」 アル 『ツリはいらねぇ!取っときなァッ!!』  ドゴォッチュドッガァアアアンッ!!! 夜華 「くはぁあああっ!!!?」  ……シャアア……キラキラ……♪ 彰利 『……アレ?』 参戦しようとした篠瀬───だったが、 中井出が振りかざし、前に突き出した拳から放たれたD-マグナムによってあっさり死亡。 しかもそのダメージは……ちとシャレにならない数値だった。 アル 『グハハハハハ!!女子供も容赦無し!それがこの俺アルカイザー!!』 ナギー『おお!やってしまうのじゃヒロミツー!!』 シード『ああ……!誰であろうと容赦しないその立ち居振る舞い……!     なんと魔王然とした姿だ……!やはり父上は最高だ……!!』 彰利 『確かに最高だけどやべぇよこのヒーローイカレてる!!     だが……俺は怒ったぞぉおーーーーっ!!フリィイーーザァーーーーッ!!!!』 ゴシャァッキィンッ!!《潜在能力:怒りが発動!!》 彰利 『九頭竜闘気&ブラックオーダー……!!     17翼の闇から放たれる力……その身に刻め!!』 彰利の目つきが変わった……アレは本気の時の目だ。 怒り文句がフリーザなのはどうかと思うが、それでも今の目はホンモノだ。 アル 『ククク……この、     誰のためじゃなく己の正義のためだけに力を発揮するヒーローに勝てるかな……?     断っておくがこのアルカイザー、     己の勝利のためならどんな外道もするが油断はしないぞ』 悠介 『それの何処が正義なんだよ!』 アル 『己の正義!他人のことなぞ知ったこっちゃねーーーっ!!     つくづく思っていたが正義のヒーローだからって何故悪と戦わなければならん!     恐怖と向き合ってまで何故戦わなければならん!     そして逃げ出したからって何故咎められねばならん!!     正義のヒーローだって人間なんだよ!逃げたっていいじゃないか!     逃げた者を咎める前に自分で戦ってみろってんだ!     どれだけ怖いか解るから!俺ああいうやつら大ッ嫌い!     ならどうするか!?───俺が悪になる!正義という名の悪になろう!!     そして平和に過ごす哀れなクズどもに魂の救済をグオッフォフォ……!!』 悠介 『落ち着け!それもうヒーローじゃないだろ!!』 アル 『ヒーローの定義など他人が勝手に決めるものだ晦一等兵!     ならば訊くが、貴様は皆に自分を英雄だと言えと言ったのか!?』 悠介 『い、いや……言ってないが……!』 アル 『つまりそういうことだ!どれだけ正義を気取っても一度逃げただけでクズ扱い!     そんな扱いでいいのか正義のヒーローいいやよくない反語ォオオッ!!!     正義とはなんぞや!?それは決して曲らぬ己の信念!     逃げてもいい!無様でも生き抜いて、その信念を貫くこと!それが正義!!     だからとりあえず邪魔者には地獄へでも行ってもらおうか』 悠介 『た、たわけ!俺にだって信念くらいある!     だからここで退くわけにはいかないんだよ!』 アル 『フフフ、ならばかかって《ゾブシャア!!!》ギョアァアアーーーーーッ!!!』 悠介 『うおっ!?』 アルカイザー絶叫! 何事かと距離を取ってみれば……彰利が中井出の影を使い、 その背中に鋭い鎌を刺していたのだ! 影から伸びた漆黒の鎌は役目を終えたかのように中井出の影に沈み、姿を消した。 ああ……あれは油断がどうとかのレベルじゃないな……。 しかもダメージがハンパじゃない。 竜鱗スーツに身を包まれているっていうのにあのダメージだ、 どうやら背中が弱点っていうのは本当の本当に真実らしい。 彰利 『お前の弱点はそこか……集中的に狙わせてもらうぞ』 アル 『フ、フフフ……目つきが随分鋭くなったな……!     そういう目も出来るのかって妙に納得しちまったぜ……!     そういや空界の花見の時もそんな目で晦と対峙してたな……!』 悠介 『いや……一撃でそこまでボロボロになるお前も相当にヘンテコだ』 アル 『しょうがないでしょ!?     いろいろパワーアップする中で背中の弱点まで強化されちゃったんだから!     僕だってこんなパワーアップ欲しくなかったよ!ノーサンキューだったよ!!     フハハハハ……だから今日のところはこのヘンで勘弁してください……』 彰利 『………』 悠介 『………』 いや……なんて言えばいいのか……つくづく中井出だった。 かなり強くなったんだがどこかしこに欠点があるというか…… そういえば映像系の能力を身につけた時も、自分で欠点見つけて落ち込んでたっけな……。 どれだけ強気に出てもこんなだから憎めないっていうか……はぁ。 悠介 「《ビジュンッ……》解ったよ。そもそもお前、船借りに来ただけ───」 アル 『死ねえぇええええええっ!!!!』 悠介 「へ?うわちょっと待てぇえええええええっ!!!」 オーダーを解除した途端、アルカイザーが襲い掛かってきた!! しまった油断した!そうだよ相手は中井出じゃねぇか!! どんな外道な手段でも勝とうとするその精神───原ソウルがある限り、 こいつと対峙してる場合は絶対に気を抜いちゃいけなかったのに───!!  ガギドッガァアアアンッ!!! 彰利 『ぬがぁああああっ!!!』 悠介 「おっ……あ、彰利!?」 殺られる───そう思った時、俺の前に出て来た彰利が 黒を圧縮して作ったルナカオスでアルカイザーの攻撃を受け止めた───が、 やはり威力は尋常じゃない。 彰利の足は俺がそうだったように床に沈み、その攻撃の威力を見せ付けていた。 彰利 『どっ……何処まで素晴らしいヒーローなんだてめぇえええっ!!』 あ。彰利の口調が普通に戻った。 どうやらツッコまずにはいられなかったらしい。  ギッ……ギャリィンッ!!───ズザァッ!! アル   『フフフフフ……!!英雄はいつでも腹に黒いモン溜めてんのさ……!!       真のヒーローだってヤバくなれば逃げ出すし、苦しくなれば挫ける……!       誰だって自分が一番可愛いのさ……あんただってそうだろ?』 彰利   『いや……変身ヒーローの口からそんな言葉が聞ける日が来るなんて……。       でも現実にヒーローが居たなら、       きっとそうなんだろうって納得出来るのが悔しい……!       そりゃそうだよな……いつでも危険値が大好調な事態ばっか任されて、       周りに勝手に期待されりゃあ逃げ出したくもなるさ……』 アル   『隣の芝は青い!』 彰利   『青すぎて、幸せっぽい鳥が見つからねぇ!!』 アル   『現実を見ろ!』 彰利   『起きないから奇跡!』 アル&彰利『人の話を聞けぇえええい!!』 彰利   『アァアーーーッ!!なんでい〜つも〜♪危険値大好調ォオオ〜〜♪』 アル   『あぁっ……!逃げる、前に……!悪夢が、悪夢がやってくる……!!       死ねぇえええーーーーーーっ!!!』 彰利   『結局それかいいぃいいーーーーーーっ!!!!       おのれこうなったらこっちも一切加減無しの超全力だ!!       軋れ!“ロードオブブラックラインゲートォオオオオッ”!!!』 アル   『なにぃいいっ!?貴様このアルカイザー相手にそれを使うか!!』 彰利   『うーーるせぇええっ!!もはや貴様に勝てなきゃ意味ねぇだろうがぁ!!       貴様に船は作らせん!ていうかしまった!       小僧に風の宝玉壊すように言っておくんだった!!』 アル   『───《ピタリ》』 彰利   『……ウィ?』 彰利の言葉に、ピタリと制止するアルカイザー。 そしてコリコリと頬……というかフルフェイスマスクを掻くと…… アル 『……え?凍弥少年が風の戒めの宝玉持ってんの?』 彰利 『エ?ア───も、持ってねぇよ!?ウハハ!?     あげな小僧に宝玉取るだけの力があるわけないじゃん!!』 アル 『フッ……フフフ……フハハハハ……!!やはりここに来てよかった……!!     そうか、ヤツが持っているのか……!それは探す手間が省けた……!!     あれは最後か最後から二番目に破壊すると決めているのだよ……!     今破壊されては困るのだ……!ならば……』 彰利 『な、ならば……?』 アル 『殺して奪う』 彰利 『な、なにをする貴様ァーーーーーッ!!』 アルカイザーがゴファアアアアアンと輝き出した!! それはまるでジェットエンジンでも搭載しているような輝きと出力!! 彰利 『き、貴様なにをする気だ!!』 アル 『簡単よ!正義の名の下に凍弥少年を殺して宝玉を奪うのよ……!』 彰利 『うおお全然正義っぽくねぇ!!アンタもうほんと魔王だよ!!     だがその意気やよし!     キミが飛び立った瞬間に小僧にtell飛ばして宝玉を砕くように伝えよう!!』 アル 『死ねぇえええええええええっ!!!!』 彰利 『キャアアアーーーーーーッ!!?』 アルカイザーが彰利の口封じにかかった!! って、何処までもヒーローっぽくないことを平気でやるヤツだなまったく……!! …………て待て。 考えてみればアイツ、俺のこと全然見えてないぞ? だったら………… 悠介 「……あ、凍弥か?ああ、ああ。で、早速で悪いんだが……風の宝玉砕いてくれ。     ああ、急で悪いんだが、今魔王と戦っててな。     少しでも弱体を狙いたいところなんだ。だから───うおっ!?」 ナギー『………』 シード『………』 悠介 「あ、い、いや、待て。話せば解る。やめろ!なんだそのゴツいハンマーは!!」 ナギー『ヒロミツの邪魔をする者はわしらの敵なのじゃぁああ!!』 シード『父上の邪魔をする者は僕らの敵だぁああ!!』 俺目掛けて振るうため、ハンマーと巨大傘が持ち上げられてゆく……!! ちなみに言うと俺は……実は麻痺中である。 ヒーローの攻撃に麻痺属性が混ざってるなんて初耳なんだが…… いやな?麻痺じゃなければもうとっくに立ってアルカイザーに向かっていってるって。 ……ああ、だめだ。 もう目の前にハンマーと傘がドグォオッシャァアアアッ!!! ……一撃で星が見えた気がした。 というか一発で昇天した。 そんな中でせめて一目でもと調べるを発動させたが─── 明らかに俺よりもレベルは数段上だった。 そうだよな……中井出と一緒に旅してれば、レベルも上がるよな……。 そんなことを思いつつ、俺は神父のありがたい言葉を耳に、 王城に戻るかどうかを悩んでいた……その時。 彰利まで飛ばされてきた現状を考えて、俺達はもう王城に戻るのをやめた。 Next Menu back