───冒険の書179/エトノワール攻防戦───
【ケース459:中井出博光/愛……覚えてますか?覚えてますよね?え?忘れた?】 それは……背中を狙われまくる中、 力業で彰利一等兵を神父送りにした次の瞬間の出来事だった……!! ピピンッ♪《風の精霊の力が解放!!風の属性が強化!!》 ピピンッ♪《加護の昇華!風の加護がさらに強化され、属性攻撃が強化!》 オゴォ〜ン……《しかし属性が馴染むまでは風の能力が弱体化!》 アル 『ギャアアーーーーーーーーッ!!!!』 無情にも流れるログ!! そして謁見の間に響き渡る絶叫!!(俺の) なんという……!なななんという……!北斗神拳。ではなく。 アル 『ア、アワワ……!!《ギシャーーーン!!》」 冗談であることを願い、すぐさま変身を解いてジークリンデを霊章から弾き出す! そしていつものように風を巻き起こそうとするが───……やっぱり出ない。 中井出「ギャアアーーーーーーッ!!!!」 改めて絶叫!! なんてことだ!風の宝玉の解放とともに武器固有の風の力まで制限されてやがる!! これはなにかの巨大な陰謀だ! ナギー『ど、どうしたのじゃヒロミツ!落ち着くのじゃヒロミツ!!』 シード『どうしたというのです父上!いったいなにが───!?』 中井出「お、落ち着けって……!なにがって……!     風の戒めの宝玉が破壊されてしまったのだ!     これでは空を自由に飛ぶことが出来ない!」 ナギー『な、なんじゃとーーーーっ!!?……ならば走ればいいのじゃ』 中井出「そうだね」 解決した。 そしてとりあえずノリとして驚いてくれたナギーに盛大なる感謝を。 そうだ……どの道いつかは破壊しなければいけなかったもの。 それが今破壊されてしまったからといって、何を苦悩することがあろうか! 中井出    「よし!ではナギー!シード!これより流木を掻き集め、         泥船丸Mk.Uを作り、大海原へ突き進むものとする!覚悟はいいか!」 ナギー&シード『サーイェッサー!!』 中井出    「忘れ物はないか!」 ナギー&シード『サーイェッサー!!』 中井出    「酔い止め薬は必要ないか!」 ナギー&シード『サーイェッサー!!』 中井出    「うむよし!ではこれより流木を集めに海岸へと旅立つものとする!         総員全力を以って流木を集めよ!質の良し悪しは問わん!!         たとえ腐っていても使い、沈没しようが海に出るものとする!!         イェア・ゲッドラァック!ラァアイクッ・ファイクミー!!」 ザザァッ!! ナギー&シード『Sir(サー)!!YesSir(イェッサー)!!』 こうして我らは謁見の間を抜け、城から外へ─── 丘野 「待つでござる!」 中井出「なにぃ!?貴様は───最後まで分身を駆使し、     謁見の間への扉を守っていた丘野二等!!」 ナギー『おお!道が狭すぎて分身が役に立たずに、     ヒロミツの拳でドミノ倒しのように潰れた丘野なのじゃ!!』 丘野 「そんな細かい説明はいらんでござるよ!!     何気に気にしてるんだからほっとくでござる!!     それより面白そうなことをしようとしてるでござるな!拙者も混ぜるでござる!」 シード『何を言う!お前は父上を裏切り───』 中井出「うむ構わん!!」 シード『えぇえええーーーーーっ!!!?』 シード驚愕! だが原中の猛者道にはこんな言葉がある……。 昨日の敵はいつでも敵。 されど面白さの前では我ら皆一蓮托生。 たとえどれほどいがみ合うことになろうが、 面白いものの前では一秒前まで敵だったとしても仲間になれるのが我ら原中!! 丘野 「さすが天下の提督殿でござる!流木を集めるのでござるな!?     ならば拙者はまさにうってつけでござるぜ!?     そりゃあ〜〜〜っ!生分身〜〜〜っ!!!」 オンゾゾゾゾゾゾゾゾゾ!!!! 丘野くんの生分身&分身!! 丘野くんが増殖した!! 中井出   「うむ!相変わらず珍妙な技だな丘野二等!しかしバカモン!!        ここでそれ使ったら出られんではないかこのクズが!!」 丘野×100『はうあ!!う、迂闊だったでござるーーーーーっ!!!』 丘野A   「なにやってるでござるかてめぇ!これではさっきと変わらんでござる!」 丘野B   「うるせぇでござる!拙者の所為じゃないでござる!!」 ナギー   『うるさいのはそっちなのじゃーーーっ!!        いいから先の方に居る者から出ていくのじゃ!』 丘野Z   「お、おお!そうでござるね!……ところで提督殿、        藍田殿の姿を最近見ていないでござるが……        何処かで見かけなかったでござるか?」 中井出   「ふむ、藍田二等か。藍田二等なら以前ノースノーランドで別れたきり、        この博光は会ってはいないぞ」 シード   『ルルカを奪って逃げたあの男ですね?まったく、何処に居るのか……』 丘野U   「ロドリゲスでござるか。そういえば最近見てないでござるな」 中井出   「というか……殊戸瀬二等は今どんな感じなんだ?        すっかり竜騎士らしくなってたりするのか?」 ここに来る際に躊躇なく襲い掛かってきたから、つい反射的に叩き落してしまったが。 なんてことを、ゾルゾルと少しずつ動き出す丘野くんたちを余所に思考。 丘野P「睦月は相変わらずでござるよ。修行は頑張っていたでござるし、     調合なども頑張っていたでござる。     竜ももう普通に乗れるくらいにまで成長したでござるよ」 中井出「ほほう……それは興味深い」 丘野Z「───おお!出口でござる!眩い光が拙者を迎えてくれるでござるよ!」 丘野R「御託はいいからさっさと出るでござる!!」 丘野Y「夏にこんな場所でこの人数は暑いでござるよ!!」 丘野T「《ドンッ!》ギャッ!な、なにするでござるてめぇ!!     誰でござる!?今押したの誰でござる!!」 丘野L「拙者じゃねぇでござる!!」 丘野W「拙者でもねぇでござる!!」 丘野S「なんでござる!?イチャモンつける気でござるか!?」 丘野N「いい度胸でござる!なんならこの中で誰が最強か、     今この場で決めてやるでござる!!」 ナギー『そんなことはいいから外にでるのじゃ〜〜っ!暑いのじゃ〜〜〜っ!!』 丘野E「そうでござる!もはや拙者の熱いパトスは誰にも止められぬでござる!!」 ナギー『そういう意味ではないのじゃああああーーーーーっ!!!     むうう……ヒロミツ!なんとかするのじゃ!!』 中井出「うむ!では粉塵爆破で一気に神父のもとへ飛ばしてやる!!」 ナギー『それはただ死ぬだけなのじゃー!!そんな“なんとか”は御免なのじゃ!!     もっとやさしゅうに出来ぬかヒロミツ!!』 中井出「ぬう!ならば聞くのだナギーよ……名案がある。     丘野二等の分身は、一定のダメージを負うと消える筈だ。     ならばツッかえてるヤツを攻撃して消していけば、     自ずと道は開けるという寸法だ」 ナギー『お、おお!なるほどの!分身ならば攻撃しても心は痛まないのじゃ!』 シード『な、なるほどその通りです!では早速───!!』 丘野S「ヒ、ヒィ!?なにをするでござる!?やめるでござるーーーーっ!!!!」 我らの話に聞き耳を立てていた丘野くんSが悲鳴を上げる! だが構わず、俺達はまず近くに居た丘野くんへの攻撃を開始した!!  ドカバキボゴドスドカベキャモゴルシャアアアア!!!! 丘野S「オゴベバゴボボベブゲゴゲギャアアーーーーーーーッ!!!!」 三人がかりで殴る蹴るどつく! 終いには武器さえも出してこれでもかというほど痛めつける!! が─── ナギー  『む、むうっ……!?ヒロミツ!こやつしぶといのじゃ!!』 シード  『このっ……分身のくせに!!』 中井出  「ええい往生際が悪いぞ分身め!!とっとと消えるのだ!!」 丘野S  「ヒィイやめるでござ《バゴシャア!!》ブベッシェ!!       せせ拙者は本物《ボゴシャア!!》フボッシェ!!       た、助けてぇえええええ分身たちぃいいっ!助けてぇええええっ!!」 分身×99『誰だって自分が一番可愛いのさ……アンタだってそうだろ?』 丘野S  「分身にそんなこと言われたくねぇでござギャアアアアアアアアアア!!!!」 僕らは殴り続けた。 殴り、蹴り、散々痛めつけ続けた。 やがてようやくそいつが消える頃───……どうしてか他の分身まで消滅。 ハテ?と首を傾げる中、 それが本物の丘野くんだったということに気づいたのは─── もう少し経ってからのことだった。 ───……。 ……。 で…… 丘野 「ひどすぎるでござるよ貴様ら……拙者、何度も本物だと言ったでござるのに……」 合流した途端に聞けた言葉がこれだった。 ナギー『仕方なかろ?丘野の分身はそれぞれが自分が本物だと言うのじゃ。     そんな中で一番最初に狙った者の言葉を信じるわけにはいかないのじゃ』 丘野 「分身のくせに我が強すぎるのが悪いのでござるよ!拙者悪くないでござる!!」 中井出「100分の1の確率がいきなり当たるなどと、誰が予測出来ようか……」 シード『つまりただ単にお前の運が無かっただけだろう』 丘野 「うう……ひでぇでござる……」 さて、落ち込む丘野くんはほっとくとして───現在城の城門前。 既に他の連中は城下の方へと下がっているようで、 ここからでも我らの様子を見ているのがうかがえる。 中井出「丘野二等よ……やつらの狙いってやっぱり俺?」 丘野 「もちろんでござる」 即答だった。 くそう、どうせなら俺も魔王を付けねらう一般兵になりたかった。 結構魔王を集団リンチする図って好きなんだが。 そう考えると、多数で立ち向かう勇者一行よりも、 それらと一人で戦う魔王の方がよっぽど勇者って感じがしないだろうか。 とりあえず俺はする。むしろ魔王が勇者だよ! え?俺?俺は魔王だけど勇者じゃないさ!危なくなったら逃げる気満々だし。 そんなものは勇気とは呼べんなァ〜〜ッ!って感じだ。 まあそれはそれとして。 丘野 「どうするでござる?このままでは外に出ることが出来ないでござる」 中井出「ふぅむ……既に囲まれているようだしなぁ」 ぐるりと見渡してみると、少人数ながらも城の周りは囲まれていた。 その大半、というか全員が猛者どもであり、ジリジリと輪を狭めてきている。 恐らくは我らを名誉ブリタニア人が居る城下まで追い詰め、 そこで挟み撃ちにする……といったところだろう。 ……そう、普通なら。
【Side───名誉ブリタニア人陣営】 来流美「全員配置についたわよ」 閏璃 「おお。こういう知略をするのはほぼ初めてだが……成功すると思うか?」 来流美「大丈夫じゃない?一応原中の連中も手伝ってくれてるし」 御手洗「彼らは人数が多い上に連携プレイが得意みたいだからね。     こういうのを任せると、ちょっと頼もしく思えてくるよ」 鷹志 「あとは中井出がこっちの思惑通りに動いてくれればこっちのものなんだけどな」 俺達は今城下に居る。 長い坂の下、視線の先にある城の入り口には原中という名の魔窟の長、中井出博光。 こっちといえば……俺、閏璃凍弥と鷹志、柿崎といった馬鹿者どもや、 穂岸は居ないが穂岸側の人々、その他といった感じのパーティーで落ち着いている。 魔王討伐部隊とはよく言ったもんだが、先ほどあっさりやられたばっかりである。 あまりに突然のことで作戦を考える間もなくボッコボコだ。 だが今回はそうはいくまい……一応俺なりに考えてみてこの作戦、 上手くいけば囲んでボッコボコに出来る。 更待率いる弓矢部隊やみずき率いる投擲部隊など、離れた位置からの援護も完璧だ。 さあ……魔王博光よ!どうでる!? 中井出「───、……、……!」 ……? と、身を緊張と高揚で満たしていた時だ。 中井出が何かを叫び、こちらへ一気に駆けてきた。 鷹志 「───!来た!」 柿崎 「いきなり特攻かよ!無鉄砲にも程があるだろ!」 来流美「解りやすくていいじゃない。わたしはこういう解りやすいの大好きよ?」 閏璃 「ぬおお、貴様と意見が合わさるとは思わなかったが同感だ」 来流美「一言多いのよあんたは!!」 閏璃 「博樹!」 御手洗「うん、解ってる!」 博樹が狙撃部隊や投擲部隊に合図を送る! すると離れた位置に潜むそれぞれがギリリと武器を引き絞り、待機。 さあいつで───もオォオオオオオオッ!!!? 中井出 「全軍突撃ィイイイイイイッ!!!」 猛者ども『オォオオオオオオオッ!!!!』 中井出が駆けてくる!───のだが、その後ろを駆ける、 追い詰め役だった原中の猛者どもまでもが殺気だって俺達目掛けて全力疾走!! ちょっと待て!!これって─── 閏璃 「うおお一瞬も戦わずに裏切りやがったぁああーーーーーっ!!!!」 鷹志 「だぁあーーーっ!!何処までノリに弱いんだよあいつらぁああああっ!!!」 閏璃 「ちくしょう負けてられるか!───よし行けパーシモン」 柿崎 「お前の意地の張り合いに俺を使うなよ!!」 御手洗「み、みんな!作戦は失敗だ!全員もう全力で迎え撃つしかないよ!!」 豆村 「ぬぁああーーーっ!!     そもそも原中のやつらを包囲陣営にしたのが間違いだったんだよ!」 刹那 「言い出したのがあっちなんだから任せるしかなかったろ!?」 柾樹 「と、とにかく町の人に危害が加わらないようにここで食い止めるしか───!!」 悠季美「いくらなんでも町の人に危害与えるほど暴れませんよきっと!」 豆村 「……郭鷺よ、忘れたか?やつらは原中の猛者だぞ……」 刹那 「やつらには俺達の常識など通用しない……     そんなこと修行の中でよく解ってたことじゃないか……」 悠季美「あぁ……そうでしたね……」 閏璃 「おーいお前らぁっ!!お喋りもほどほどに武器を取れぇえーーーっ!!     死闘を繰り広げながらならお喋りしてても構わんから!!」 若人達『死にますよそれ!!』 閏璃 「だったら死なずに喋るためにも全力で突っ掛かるぞぉっ!!」 全員 『おぉおーーーーーーーーっ!!!!』 そうして俺達は坂の上から疾走してくる猛者どもを迎え撃つべく、 彼らとは反対に坂を上り、疾走してゆく!! そんな中、突如中井出の姿が変貌し─── カルガラ「迎え撃つぞぉ戦士達!!この地を奪われるわけにはいかぁああん!!」 なんと大戦士カルガラとなり、カルガラとまったく同じ装備を身に纏いながら駆けてきた! ていうかいつの間にか俺達、この城を乗っ取ろうとする悪役にされてるよ……。 【Side───End】
ガンガギィンッ!!ゴギィ!ガギィイインッ!!! 全員 『ウオォオオオーーーーーッ!!!』 総員 『ハワァアアアーーーーーッ!!!』 やがて衝突する軍隊と軍隊。 城の周りを囲んでいた者たちが猛者だけだと確認したのち、 ここで彼らを裏切ってみないか?と提案したらあっさりOKを出した彼らは、 裏切ったことに微塵にも罪悪感を持たずに全力でぶつかっている。 実にクズであるが実に天晴れ。 佐古田 「死ねぇえええええッス!!」 カルガラ「ぬうっ!?」 しかし微笑ましく思っている暇もそうそう無いらしく、 この騒動に紛れて真っ先に俺の首を狙ってきたのはなんとサコタヨーシェ!! いきなり振るわれた斧を、俺は咄嗟に大戦士の槍で弾くと、 すかさず間合いを取ろうとしてバックステップをドンッ!! 永田 「オワッ!?《ザクッ》ギャアアーーーーーーーーッ!!!!」 鷹志 「うおぉおーーーーーーっ!!?」 蒲田 「ああっ!永田が大戦士に押された拍子に敵の剣の餌食に!!」 田辺 「永田!?永田ァアアアーーーーーーッ!!!」 後ろに居たらしい永田くんを背で押してしまい、神父送りにしてしまった……。 蒲田 「ち、ちくしょうやりやがったなてめぇ!」 田辺 「よくも……よくも永田を!許さねぇ!!」 鷹志 「いっ……今の俺か!?俺が悪いのか!?」 それぞれの思いと思いのぶつかり合い! そして飛び散る汗と血飛沫! この戦いを舞いと唱えるなら、死の舞踏と唱えよう!! さあ!戦士達よ!シャンドラの火を灯せ!! カルガラ「フンッ!!」 佐古田 「《ゴギィンッ!!》うきっ!?グアアアア腕が痺れたッスーーーーッ!!!      てめぇいったいどういう腕力してるッス!?受け止めるだけでも一苦労ッス!」 カルガラ「貴様も戦士ならば言葉より腕で知るがいい!!ぬぅうおおおおおおっ!!!」 槍を打突に構え、一気に閃かせる!! その速度は思った以上に速く、 斧を盾に構えたサコタヨーシェを遠慮なく怯ませ押してゆく!!  ガンギギガギギゴギギギギギギィインッ!!!! 佐古田 「ぬ、ぬおおおお反撃出来ねぇッスーーーーッ!!卑怯ッスてめぇ!!」 カルガラ「この痛み、永田の痛み……!後を追うがいい余所者よ!!      身ぐるみ全部……置いていけぇえええええっ!!!」 佐古田 「《ゾヴシャアアアッ!!!》ギャーーーーーッ!!!!」 散々と追い詰めたサコタヨーシェにとうとう突き刺さる槍! だがそれはただ刺さっただけではなく、 超震動を発すると一撃の名の下にサコタヨーシェを塵にした!! フフフ……それを見た女どもが震えおったわ……! 何処までも甘い者たちよ……! この博光が、相手が女だからといって加減をするとでも思うたか……!
【Side───志摩兄弟】 シャアアア……サラサラ……♪ 浩之 「ぬおお大変だブラザー!佐古田が塵に!」 浩介 「おお!それは一大事だ!すぐにパーティーを開かねば!!」 浩之 「ぬう!ナイス外道だブラザー!」 椛  「そんなことをしている場合じゃありませんっ!!」 浩之 「実に然り!よし行けブラザー散ってこい!」 浩介 「貴様が行けブラザー!我はもうヤツを守る炎に焼かれるのは───む?」 浩之 「ぬ?どうしたというのだブラザー」 それぞれが思い思いに武具を振るう景色の中、 ハタ、と動きを止めたブラザーを見やる。 ぬう……?いったいなにが……?視線を追ってみるがまるで解らん。 浩介 (……気づいたかブラザー……ヤツの周囲だ。     カルガラに変身しているからかどうかは知らぬが、火の円が出ていないのだ) 浩之 (なにぃ……おお確かに!ならば───) 浩介 (そうだ。近づいたところでダメージを受けることもなく、     矢での攻撃も燃やされることなく当てられるということだブラザー!!) 浩之 (おお!今宵のブラザーは冴えているな!) 浩介 (おお!ちなみに今は昼だブラザー!) 浩之 (どうでもいいわそんなこと!今はこの事実を狙撃班にtellで連絡して───     ……うむ我だ。……む?我だというのに。     ええいもういい、今あの提督とやらの周りには炎の壁が無い。     援護射撃を要求する。……うむ、うむ。では頼んだぞ) 浩介 (どうだブラザー) 浩之 (うむ、今すぐ攻撃にかかると───来た!) 外壁の上に見える人影多数! 更待嬢率いる弓兵たちがギリィ……!と弦を引き絞り、提督軍を狙う! ……と、ここで重要なことを思い出した。 浩之 (……ところでブラザー?我々もここに居る限り、     矢の雨に当たることも有り得るのではなかろうか)  浩介 (…………) ピタリと行動を止めるブラザー! そして空から舞い降りる無情の矢! どうするブラザーやばいぞブラザー!! そう思っていた時である!  ゾブシャアアッ!!! カルガラ「ぐおぉあぁあああああーーーーーーっ!!!!」 更待嬢が狙い、放った矢が大戦士カルガラの背を強襲!! 34398ダメージという凄まじい数値を出し、彼を怯ませたのだ!! 浩之 「ぬおお!?なんだこの馬鹿げた数字は!!」 浩介 「す、凄まじい威力!あの女の武器が強いのか、     はたまたヤツの背中が弱点という情報は確かなものだったのか!     もしくは暴れるあまりにVITをおろそかに《ドンッ!》ぐおおおーーーっ!!」 浩之 「おぉっ!?ブ、ブラザー!?ブラザーーーーーーーッ!!!!」 驚愕するブラザーの肩に無情の矢が突き刺さる! お、おのれ何者!?───……味方である。 浩之 「ま、待て貴様らぁああーーーーっ!!!いくらなんでもでたらめ矢すぎる!!     これでは我らも長くは保たぁあーーーーん!!」 外壁の上の弓兵どもにそう言ってみせるがこの喧騒の最中。 我一人の絶叫が届く筈もなくゾバァンッ!! 春菜 「くぁああっ!!?」 浩之 「ぬう何事!?」 それは突然のことだった! 弓兵を率いていた矢のスペシャリストが突如、血を噴出し塵と化したのだ!! これはいったい……!? カルガラ「ぐ、ぬうう……!!う、上手く背を狙ったようだが……!      俺に大きいダメージを与えるということは、      自分にもその半分のダメージが返るものと知るのだな……!!」 ───謎は全て解けた! なんといったか?おおあれだ、ヘッジホッグとかいうダメージ返しのスキルである! そういえば王城防衛作戦の際にブラザーが突貫し、 わざと斬られた魔王の前で絶命してみせたのだ! あれはあれで面白かったが、よもやここでも使ってみせるとは! カルガラ「さあどうするのだ余所者どもよ……!俺に攻撃を加えればそれが返り、      貴様らとで無事には済まんぞ……!」 来流美 「それなら玉砕覚悟で攻撃しまくるまでよ!!せぇえええいっ!!!」 ゾブシャアッ!! カルガラ「ぐぉあああーーーーーーっ!!!!」 来流美 「《ドガァアンッ!!》いぎぃっ!?う、わ……!ちょっと……!!      いくらなんでもリバースダメージ多すぎ……!!」 カルガラ「ぐ、ふふふ……!      背中へのダメージは死のカウントダウンと知るがいい……!!(俺の)」 来流美 「……アンタも相当弱ってるわね」 カルガラ「うるさいよ!速度も槍術も攻撃力も上がってるけど      槍術なんて全然使ってないからスキル少ないんだよ!!      防御しようにも面積も少ないからこっちだっていっぱいいっぱいなんだよ!!」 飯田  「提督てめぇ!だったらどうしてわざわざカルガラに変身したんだこのクズが!」 カルガラ「バカモーーーン!!攻防戦といったらカルガラだろう!!      この熱い思い……誰にも止められん!!」 丘野  「サー!しかしながら今まさに提督殿の命が      敵勢力によって止められようとしているでござるマス!!      至急元の提督殿に戻られることをオススメするでござる!!」 悠季美 「させませんっ!!      元に戻るということはまたあの炎の円が出現するということでしょう!?      それなら今のほうが全然戦いやすいです!!」 浩之  「おおっ!?その意気だ少女よ!!潰れてこい!」 悠季美 「どういう激励ですかそれはぁあっ!!!」 他の者と戦っていた者たちがこぞって大戦士を囲む! そう……まずなによりもあの大戦士が危険なことくらい解っているのだ。 ここで元に戻られでもすれば、大抵の攻撃はあのバカデカい剣や炎の円、 火の粉塵などで落とされてしまうのだ。 この勝負、ヤツをいかにカルガラのままにしておくかが勝負の決め手!! そう思っていた───まさにその時である!  ゴォッ───!! 総員 『ぬおっ!?』 全員 『おぉっ!?』 空を飛翔するなにか! 数瞬太陽を遮ったその影は飛翼をはためかせ、 その背に乗るものとともに我らを見下ろしていた! 声  「面白そうなことやってるな───俺も混ぜろ!!」 夏子 「───!この声……!!」 聞こえた声はどこかで聞いたもの!! そう思った時には飛翔するそれは重力とともにこの場へと降り立ちグシャアッ!! カルガラ「ギャアーーーーーーーッ!!!」 大戦士の背を思い切り踏み潰したのである……!! 藍田 「あ」 降り立ったその者はそれはもう驚愕。 そんなつもりはなかったらしいが、次の瞬間にはヘッジホッグダメージであえなく昇天。 NPCにはリバースダメージは無いらしく、 駆っていた彼は訳も解らぬまま神父送りにされたのだった。 丘野 「……なにしに来たんでござるか……」 まったくその言葉が合っている状況を前に、 我らは潰れた大戦士を見下ろしながら沈黙するのだった……。 【Side───End】
ズキズキズキズキズキズキ……!! カルガラ「ぐ、ぐおおお……!!」 物凄いダメージだ……まさかあそこで藍田二等に強襲されるとは。 しかもあっさり死んでしまう有様……。 ポツンと取り残されたロドリゲスが戸惑ってるではないか。 カルガラ(いかん……マジでカルガラはヤバイ……!) 槍スキルなんてまだ一桁だよ俺……。 しかも槍だから防御できる限界が限られすぎてるし……。 凄いよ大戦士……こんなので飛翔する矢を弾いてたのか……。 カルガラ(今なら皆ホウケている……今が旬!じゃなくて時!変身解除!!) マカァーーーン!! 中井出「ぶはぁっ!!」 変身を解除!───した途端、周りの者がハッとして襲い掛かってきた!! おお、なんと容赦の無い修羅どもよ!! ならば次だ!貴様らを屠るステキ変身! 中井出「狂人乱舞───発動!!」 俺は狂いし者になるべく変身能力を発動!! すると我が体がゴワゴワと変形───しなかった。 中井出「あれっ!?《ゾブシャアアッ!!》ギャアーーーーーーッ!!!」 また背中である。 念のため発動させた火円を無視して突貫してきたカキノキ科の落葉樹が、 この博光の背に剣を刺し───た直後、ギガボマーの餌食となって吹っ飛んだ。 閏璃 「おぉおおっ!?か、柿!?柿ィイーーーーッ!!」 鷹志 「すげぇぜ友よ……!今のお前……飛んでるぜ!!」 柿崎 「少しは普通に心配しろ《ドゴシャアッ!!》よぶぇぇっ!!」 フォル『きゃあっ!?稔さまぁっ!!』 閏璃 「おお……見事に脇腹から落ちたぞ……」 鷹志 「痛いな……あれは痛い《ゾブシャア!》いっだぁああーーーーーっ!!!」 田辺 「フフフ……!我らを前に余所見とは迂闊なことよ……!」 岡田 「この痛み、永田の痛み……!!」 鷹志 「どうしてお前らはそうやって平気で不意打ち出来るんだよ!!」 永田 「ていうかあの……俺もう教会から戻ってきてるんだけど……」 田辺 「見ろよ岡田……永田の幻覚が見えるぜ……!     きっとヤツも草葉の陰で見守ってるに違いねぇ……!」 岡田 「ああ……頑張ろうぜ田辺!!」 永田 「意地でも殺したままかよ!     ち、ちくしょう!そもそも貴様が俺を殺したからこんなことに!」 鷹志 「明らかに逆恨みだろそれぇええええっ!!!」 様々なところで攻防が再開される。 その頃には遠くの方で人が吹き飛ぶ様も見られ、 藍田二等が戻って来たという事実を一目で想像させた。 というかその中には騒ぎを聞きつけたのか永田か藍田あたりに話を聞いたのか、 彰利や晦、篠瀬さんの姿まで混ざっている。 中井出「ご、おおお……!!」 しかしこちらはそれどころじゃなかったりする。 変身能力は発動しないわ、背中を狙われすぎてHPが少ないわで…… だが心に希望を!敵勢力には絶望を!! こんな時こそ唱えよう! 中井出「パルプンティェイイェイイェ!!」 ザザァッ!! 清水 「オワッ!?晦と弦月が一目散に逃げ出した!!」 佐野 「なにしに来たのキミら!!」 周りの喧噪とともにドラムロームを鳴り響く! やがて───ダラララララ……ジャンッ!!《博打No01!死のルーレット!!》 中井出「おおっ!?」 丘野 「何事!?何事でござるか提督殿!!」 中井出「死のルーレット発動!!この中の誰かが確実に死ぬ博打スキルである!」 総員 『ざわ……!!』 ナギー『おお!それは面白そうなのじゃ!!』 中井出「いろいろ教えたのは僕だけど少しは慈しみを持とうね然の精霊さん!!」 唱えつつもルーレットは回る! 俺の言葉にもはや戦いどころではないと、 まるでビンゴがあと一つで揃う人がルーレットを見守るように、 その場に居る全員が息を飲む……!! そして───ピピンッ♪ 中井出「うむ!止まったな!さあ───昇天するのは誰!?」 ナギー『……?ヒロミツ、ヒロミツの頭の上にある矢印、なんなのじゃ?』 中井出「……エ?」 総員 『───!』 彰利 「───!これはいかん!えーとえーと……オーダー解放!」 中井出「待ってよ!なにこの狙い済ましたような的中率!!     この能力僕になにか恨みでもあるの!?解ってたよ!?     そりゃこの能力自体が基本的に僕に優しくないことくらい解ってたさ!!     でもこの人数の中で僕を見事に選ぶその判断基準が解らないよもう!!     あ、いや、ちょっと待って死神さん!!     そんなデカい鎌持って空中から出てこないでよ!!     考えてもみてよ!僕ただ船が欲しかっただけだよ!?     これから流木集めて地球にやさしい船作りをしようとしただけなんだよ!?     それなのに───待ってよ!少しくらい反応してよ!無視しないでよ!     ちょ、やめ───ヴァーーーーーッ!!!」 こうして僕は……他の誰でもない、自分が発動させた能力で……昇天したのでした。 【ケース460:弦月彰利/コロッセオの人々】 ペペペペペペペペペペラペッペペェエーーーーッ!!ジャンッ!! 《レベルが上がった上がった上がった上がった上がった上がった上がった!!》 総員 『ハワァアアーーーーーーッ!!!!』 その場に居た全員のレベルが上がった!! その勢いは留まることを知らず、どんどんとレベルアップしてゆく! 藍田 「ギリギリ間に合ってよかった……!     まさかこんなフェスティバルが開催されていたとは……!」 鷹志 「いや……ていうかさ、どうしてお前らまでレベルアップしてるんだ?」 総員 『提督に矢印がついた刹那、     名誉ブリタニア勢力に寝返ったからさ!!』 鷹志 「……なんか今なら心の底から中井出に同情できる気がする……」 御手洗「彼も平気で裏切られすぎな感じがするなぁ……」 彰利 「原中ですから」 ナギー『わしも上がったのじゃ』 シード『父上……この糧、決して忘れません……』 彰利 「キミたち何気にヒドイのね……」 ナギー『ヒロミツが、“もしこの博光が死ぬようなことがあったなら、     迷わず敵側に回り我が命を糧とするのだ”と言っておったのじゃ』 シード『どんな時でもただでは死なない……それが僕の父上だ』 彰利 「すげぇ根性だね……」 悠介 「……ところで彰利よ。こいつら転移させたの、お前か?」 彰利 「アイドゥ」 中井出に矢印がつくや、これはいかんと発動させたオーダー。 その力を以って全力で鎌を解放。 もはや月操力は使えないから鎌の力で異翔転移を実行し、この場に居ない者たちを転移。 ゼノやシュバルドラインを始めとする皆様方にご足労願い、 すかさず仲間に引き込んだのです。 するとどうでしょう、 レベルが低かったセレっちやゼノたちのレベルが物凄い速度で上がるではありませんか。 ゼット「……これはなんの祭りだ」 彰利 「タダで経験値もらえるフェスティバル」 遥一郎「経験値って、なに倒したんだ?」 彰利 「………」 凍弥 「どうしてそこで目を逸らすんだよ彰衛門……」 みさお「はぁ……今度はいったいなにをやらかしたんですか……?」 彰利 「あのねキミ、なんでもかんでもアタイがしでかしたみたいに考えるのやめなさい。     今回のは中井出が自爆しただけなんだから」 みさお「中井出さんが?」 悠介 「ああ。死のルーレットってのを発動させて、見事自爆。     勝手に魔王討伐の経験値が俺達に流れ込んできたってだけだ」 みさお「なんというか……物凄く可哀相な魔王ですね……」 悠介 「俺もそう思う……」 彰利 「アタイも……」 ルーレットが止まった音を聞いて、サワヤカに微笑んでいた彼の顔がまだ思い出せる……。 いい顔だったな……。 今頃神父の前で自分の能力について体育座りしながら考えてるんだろうなぁ……。  ギギピピンッ♪ 彰利 「オッ、レベル上がり終わったね。どれどれギャーーーーッ!!!」 悠介 「うおっ!?な、なんだよ急にうおおぉおっ!!?」 アタイ驚愕!悠介も驚愕! 何故って…… 彰利 「う、ううお……!一気にものすげぇレベル上がったよ俺……!」 セレス「今まで苦労して戦っていたのが馬鹿みたいなレベルアップですね……」 悠介 「自爆でここまで他人を強くする魔王って、世界初なんじゃないか……?」 藍田 「すげぇや!さっすが天下の中井出さんだ!!」 田辺 「いつも突拍子もないことをして僕らを愉快にしてくれる!!」 彰利 「謝謝!謝謝提督さん!!」 みさお「……誰も彼の死を悲しまないのが流石ですね……」 いやまあ中井出だし……。 彰利 「一回の戦いでレベル1979だよ俺……」 悠介 「俺は1429だ……」 ルナ 「んふふ〜、わたし1982〜」 藍田 「甘い!俺など2007だ!」 みさお「わたしは2158ですね。ゼットくんは?」 ゼット「……2858だ」 総員 『高ッ!!』 丘野 「なんというレベル!     提督殿のように守護竜と戦っていたわけではござらんのだろう!?     だというのにそのレベルとは……!!」 彰利 「どんなバトルを繰り広げてたの!?さ、さあ山岡くん!説明してくれたまえ!!」 みさお「誰が山岡くんですか!!     ……ずっと、竜族の墓でドラゴンゾンビと戦っていただけですよ。     わたしの武器を強化するのに“死竜の朽ちた牙”というのが必要だったので。     でもなかなか落とさないから何度も戦うしかなくて、気が付いたら……」 彰利 「随分とレベルが上がっていた、と……。つーかゼットくんもうほぼ最強じゃん。     その状態でレベル4倍化なんてされたら勝てやしねぇっつの」 みさお「あ、それならもう上から釘を刺されてまして。     今、“竜殺しの咎”っていう呪いがかけられていて、     魔竜化が出来なくなっているんです」 彰利 「あらそうなん?まあアタイも月操力使えなくなってからというもの、     本気で能力が死神のものになっちまって不便っちゃ不便だけど」 鎌の能力引き出さなけりゃ満足な能力使えないからね……。 月操力の場合、ただ使いたい能力を使えばいいだけだったけど、 鎌の場合はその能力に適した鎌を出現させなきゃいかんからめんどっちくてね……。 みさお「え……月操力使えなくなったんですか?」 彰利 「オウヨ!月の家系とまるで関係のない死神王になったさ!!     今の俺は死神王で黒の秩序。月の家系とは縁遠い黒の王ナリ。     で、彼が神になった白い秩序のモミアゲさん」 悠介 「ヤケクソだから言うが異端の神で白い秩序。     こいつと同じく月の家系とは縁遠い、白の神だ。     いろいろあってホワイトオーダーになった」 みさお「えぇっ……!?そ、それはなんというか……母さまが許してくれますか……!?」 悠介 「許してくれたかは別問題として、こいつの目の前で神になったから問題ない」 ルナ 「問題なら大有りなんだけどね……」 みさお「ですよね……。あ、それで父さま、なにか変わったことは?」 悠介 「ああ。剣と弓以外の武器が腕に馴染まなくなった。     鞭も体術も槍術もやってみたんだが、これが全然駄目。     やってみてもイメージ通りに動いてくれない。     ……ようするにもうラグ一本で突き進めってことなんだろうな」 彰利 「光の武具とかは?」 悠介 「“創造”なんだから使えるには使えるだろ。     イメージから生まれるものだ、使えなかったら困る」 ふむん?なるほどねェ。 でも弱体化は相変わらずで、しかもその状態で強くなっていかなきゃならん、と。 さらに言えば持ち前の“器用さ”が殺されてて、今や剣弓以外は多く望めないと。 彰利 「でもさ、ラグって槍にも変形できるんしょ?ダメなん?」 悠介 「今はまだ持ってないからどうとも言えないけどな……考えてもみてくれ。     俺が槍を上手く扱えてたのは“ルドラ”の能力があったからだ。     ああ、今言ったルドラってのは     創造の理力と一緒に俺に流れてきた“ノート”の方のルドラな?」 彰利 「そら解るけどね。……んじゃつまり?     今の悠介の中には精霊としてのスッピーしか居ないから、     “神”としてリセットくらったキミは“自分”の能力しか持ち合わせていないと」 悠介 「……そういうことになる。     大体がルドラの恩恵の下にあった能力だから力落ちは尋常じゃない。     刀術は朋燐のものであって俺のじゃないからリセットくらったし、     他の技術も大体削られてこのザマだ。     残ってるのは空界で散々死ぬ思いをして身につけた剣術と弓術だけだ。     それも、弓術もラグじゃなけりゃまともに撃てやしない」 彰利 「……なんてぇかザコだねキミ」 悠介 「それを言うなよ……何気に気にしてるんだから……」 彰利 「あらら……」 アタイのヴォイスに深く傷ついたらしく、がっくりと項垂れてしまうモミーくん。 気持ちは解るけどね……あれほど苦労して身に付けてきたものが全部パーってのは。 彰利 「……ぬ?なぁ悠介?     もし神のまま強くなったら、キミは以前より強くなれるんか?」 悠介 「そればっかりは解らないな……神の成長率は無限だって言われても、     それはちょっと果てが無さすぎる。神魔の時は純粋な神と死神の力じゃなくて、     反発する力から生まれる反発反動力を力にしてたわけだからな……     反発する能力が無い今、以前の自分を越えられるかなんて解らん」 彰利 「あらそうなん?……まあ、相容れないブツが合わさった時、     普通じゃ起こりえない力が発生するのは解るけど。     以前にも言ったっけ、それが反動力の源だって」 あれも結構前になるか。 今考えると空界バトルも懐かしい。 悠介 「ああ。力を一本に絞った今、その力も発生させようがないけどな」 彰利 「ありゃ……ちと惜しい気もするね」 悠介 「いいんじゃないか?俺はむしろスッキリしたよ。     これで感情が全部戻れば、俺は本当の意味で俺でいられる」 彰利 「オッ……なるほど、そういう考え方もあるか。     ほいじゃあ今回のヒロラインがメンテに入ったら過去に飛んでみるかね?」 悠介 「…………そうだな。いい加減、過去の自分とも決着をつけなきゃならないよな。     未来の前にまず過去だ。自分がどんな馬鹿者で、父さんがどんな人だったのか。     それを見れば、俺も変われる…………と、思う」 自分の考えに自信が持てないのか、ちと曖昧に言う悠介。 いかんぜよいかんぜよ、そんな反応だからアタイや精霊たちも心配になるんだぜよ。 みさお「あ、あの……それ、わたしも行っていいですか?」 と、親友のことでハラハラと胸を痛ませていると名乗りをあげる子みさおさん。 おお……相変わらず置いていかれるのは嫌なのかね。 そういや時間の旅で一番付き合いが長いのってみさおさんだったっけ? 彰利 「それ以前にこのヒロラインがメンテに入らんと話にもならんのだけどね。     なにやら言ってなかったっけ?     今回のダイヴでいろいろケリつけんなきゃならんって」 ピピンッ♪《メールが届きました》 彰利 「おろ?」 タレ?この僕に直接メールなんて……もしかして僕の大ファン? そんな淡い期待に胸を膨らませつつメールを解放。 すると───  ◆ヒロミ通信No96290号  マスターの精神が安定に向かった今、ジュノーン……いや、ルドラの動きも見られない。  今の状態が続くならメンテナンスも可能だ。  ……というより、今回はそれぞれの者の動きが多かったために消費が多い。  大人しく修行場で修行をしていてくれたならこんなことにはならなかったんだが。  ……ああいい、過ぎたことは言うまい。  ようするに今伝えたいことは、急だがメンテナンスというより休憩を行いたい。  マスターが神になった今、その状況に体を慣れさせるための時間が必要だ。  故に汝らには現実世界に戻ってきてもらう。その旨を皆に伝えてくれ。  30秒後にシャットダウンを実行する。実行中の行動は中断されるから気を付けろ。 ───。 彰利 「………………ギャア」 悠介 「……?彰利?」 みさお「どうかしたんですか?」 ん?と顔を覗かせる僕のダーリンとみさおさん。 僕はそんな二人をニコリと見つめ返し、今見た全てをやがて話し始めたのだった……!! ───……。 ……。 彰利 「……そしてお爺さんは伝説の勇者となり、悪い竜をやっつけたのじゃった……」 総員 『わけわかんねーよ!!』 彰利 「まったくだ!!」 ビジュンッ!!……ヂチィッ……!! こうして巧みな話術でみんなの心を鷲掴みにした僕は、 皆様になにをやらせることもなくタイムアウトまでの時間を稼いだのだった……! 時々自分が怖ェエエぜ? 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