───グドゥモーニン/グーテンモルゲン───
【ケース461:中井出博光/ソムリエに探偵をさせると前口上が長そうだ】 シュゴォオオオオオオオッ……パパァアアアアッ!!!! 中井出「ンンンンンンン…………いくぞォオオ……!!」 成長した魂が実体に入ってゆくのを感じた……! しかし以前のように体がナマっているということもなく……いや、少しだけあるけど。 そんな体をグゴゴゴゴと足の力だけで起こし、 オメガルガールのように目を……光らせるのは無理だった。 しかし……なんというか、筋肉痛かこれ。 体がメキメキと軋んでる。 喩えるなら体が魂に追いつくために急激に変化していってるような…… ノート『……、戻ったか』 中井出「やあ」 オメガルガールの目覚めを何処か遠い目で見つめていた精霊たちに軽く手を上げて挨拶。 どうやら俺は他のみんなより先に体に戻って来たらしい。 ……まあ、死んだあと教会で自分の能力について体育座りしながら考えてたら、 このままではいかんとウサギ獣人の姿でアイテム揃えたり食材揃えたりして、 次はとうしようかとか考えてたら急に視界が暗転して……気づけばここに居たわけだけど。 ノート『汝は死亡したこともあって、魂を戻しやすい状態にあったため、     他の者より先にログアウトしてもらった。     他の者も30秒も経てば戻るだろう』 中井出「おお、そうなのか」 だったら…………どうしようか。 っと、どうせなら疑問をぶつけてみようか。 中井出 「スッピー、今日何日?ログインしてからどれくらい経ったの?」 ノート 『スッピーはやめろ。ノートと呼ぶことを許可する』 中井出 「そ、そうか。ではノート先生と。      ノート先生、ログインしてからどのくらい経ったの?」 ノート 『先生……あのな。ああいい、いちいち気にしていたら話が進まん。      そのことは汝ら原中の行動を見ていれば解りもする。一日だ。丁度早朝だな』 中井出 「それっぽっちしか経ってないのか!?どれほど圧縮したんだキミタチ!!」 オリジン『極限まで圧縮してはこちらの疲労度も高いのでな。      それぞれが疲れにくい程度の圧縮率を駆使し、調整していた。      お蔭でゼクンドゥスの疲労が高いがな』 中井出 「ウワー……」 見れば、確かにゼクンドゥスの顔には 見ただけでハッキリ理解できるくらいの疲労が浮かんでいた。 ご、ご苦労さまです。 思わずそう心の中で思ってしまった。 イセリア「はぁ……あ、ねぇヒロミチくん」 中井出 「博光だが」 イセリア「愛称として呼んでるだけだから気にしないの。      お水いっぱい持ってきてくれる?喉渇いちゃった」 愛称って……なにやらハヤ太くんと呼ばれるハヤテくんの気持ちが少し解った気がした。 もういいよエロマニアじゃなければなんでも……。 中井出 「うむ、それは構わんが。      ようするに式を使って水を出すことすら出来ない状態なんだな?」 イセリア「ん。妙なところで理解が早いコって好きよ?」 中井出 「俺は肝心なところで理解が遅いコもそれはそれで嫌いではないが」 イセリア「まあ、人間そうそう誰かを嫌いにはならないでしょ。      ソリの問題とか性格の問題とか、よっぽど悪くなければね。      それで、お水いい?出来れば水筒かポットかなんかに入れて、      コップを持ってきてくれるとありがたいかな」 中井出 「何気に注文がグレードアップしてるな。まあいいけどさ」 飲まず食わずだったんだろうか。 イセリア氏はどこか痩せたような雰囲気のまま、俺に向かってひらひらと手を振った。 ……っと、しまったしまった、やってもらいたいことが一つあったんだ。 晦……はまだ寝てるし、どうせノートが居るならこっちに頼んだほうがいいかもしれない。 そもそも今の晦は究極パワーダウン中だしな……。 中井出「えと、ノート先生よ。ちょっと一生に一度のお願いがあるんだけど」 ノート『……、』 中井出「……あの、もしもし?」 ノート『ああいや、なんでもない。     ただ急に一生の願いを懇願する者を初めて見た気がしただけだ』 どうやら謀らずに無の精霊の常識を打ち破ることが出来たらしい。 まあそれはそれとして。 中井出「俺の変身能力なんだけどさ。カルガラをべつのものに変えてほしいんだ。     ほら、晦に頼もうにも今の晦って能力初期化状態だろ?」 ノート『ふむ……なるほど。     汝は真にただの凡人だからな、べつに苦労するものでもない。構わないぞ」 中井出「一言余計だよもう!!凡人だとかそんなの関係ないでしょ!?」 ノート『関係が必ずしも無いわけではないがな。変身するものにもよる。     では問おうか。汝はなにに変身出来るようになりたい』 中井出「お、おお!いいのか!?だったら俺は───!!」 こうして僕は無の精霊様に心の底から願い─── 変身用腕時計に新たなる理力を埋め込んでもらい、 カルガラにはなれなくなったが別のものに変身出来るようにしてもらった───!! ……それと同時に、ヒロライン能力の“変身”も、 カルガラではなく別のものへと変化したのだった……! ───……。 ……。 そんなこんなでしばらく待つとモソモソと動き出す猛者どもや名誉ブリタニア人たち。 ハタから見ると蘇る屍のように見えるのは、べつに俺の目がおかしいからではないと思う。 彰利 「う、むむ……む、むおお……」 藍田 「いぢぢ……うわっ!?     妙な体勢でログインした所為で左腕の感覚が無くなってる!     ───重ッ!!妙に重いよこの麻痺した腕!!」 彰利 「ああ、腕が高レベルで麻痺すると、     持ち上げようとしても物凄く重く感じることがあるよね。     もう過去のことになるけど、     アタイにもそげなことを感じることが出来た時代があったワ……」 悠介 「人間やめてもう随分になるか……ただあの頃が懐かしい……」 彰利 「身体能力のことで言うなら、産まれた時からとっくに人間やめてたけどね」 モソモソと置き出す者たちの中には、突如としてミジュンッ!と登場する者もしばしば。 改めて言うまでもない、ナギーやシード、フォルネリアといったヒロライン側の者たちだ。 結局またこちらに降りたつことになったようで、 目をパチクリ動かしては、キョロキョロと辺りを見渡していた。 そんな現状を考えるに、俺が今すべきことは───…………グゥウ…… 中井出「オッ……」 まず、腹ごしらえだろうか。 そういやヒロラインでもあまりろくなもの食べてなかったしな。 彰利 「お?今腹の虫鳴らしたの中井出?」 中井出「うむその通りだ。飲まず食わずの一日を過ごす中で、     この博光の腹に住まう猛獣も辛抱たまらんと吼えておるわ」 彰利 「ほほう……だが腹の虫なら負けねぇぜ?俺なんかこうだ」 《オォ〜……彰利ィイ〜……!!ヒモジイぃい……彰利ィイイ……!!  食わせろォオ……彰利ィイイ……!!アキアキアキアキ…………!!》 中井出「ヒィイなにそれ!何!?     腹ン中でどんな亡者飼えばそんな怨念めいた腹の虫が唸るの!?」 彰利 「なにって……俺の中に住まう腹の虫、その名も……ダイオキ神!!」 中井出「なにその有害物質以外の何者でもねぇ名前の腹の虫!!     ただの毒だよそれ!そりゃ亡者も胃袋で呻くよ!     ていうかそれただ黒の物質が助けを求めてるだけなんじゃないの!?」 彰利 「なにを言うんだこのクズは……     僕のダークセンチネルやアモルファスはそんなヤワじゃないぞ?」 中井出「グッドモーニングよりも先に目の前の人にクズを唱える早朝の貴様に乾杯。     落ち着いたところでメシにしようと思うのだが……ぬう、     まだマクドナルドはやってないか」 悠介 「いや……正直もうハンバーガーは勘弁してもらいたいんだが」 中井出「なんだとてめぇ!!」 総員 『このクズが!!』 彰利 「原中を生き迷惑部に所属していた猛者でありながらドナ様を侮辱する気か貴様!!     猛者ならば41度の熱を出してもお粥ではなくバーガー食らえ!!」 悠介 「無茶言うなよ!普通に体に悪いぞそれ!!」 中井出「やってもみないうちから大きく出たな晦一等兵……!!     何を隠そう、俺は実行して生死の境を彷徨った!!」 悠介 「命懸けの崇拝もほどほどにしとけぇっ!!     そんなこと続けてたら本気で死ぬぞお前!!」 中井出「理解出来んなら唱えよう……本望だ」 藍田 「お、おおお……!さすが提督だぜ……!!」 丘野 「ドナ様にそこまでの思いを抱いているとは……!!」 彰利 「それに比べりゃ貴様はただのクズだ!クズだ!クズだ!!」 悠介 「やかましい!!ここぞとばかりに罵るな!!」 みさお「あの……目覚めたらまず騒がなきゃ気が済まないんですか?」 中井出「もはやこれは男の魂よ。ちなみに言うと原中の猛者どもに至っては、     女であろうが男の魂を持ち合わせているものとする。普通に逞しいし」 みさお「いえですね……そんな説明を聞きたかったわけじゃなくて……」 みさおちゃんがはぁ……と溜め息を吐いた。 いかんな、こんな状況に溜め息をつくだけでは、 いずれ晦みたいな周りに振り回されるだけの存在になってしまう。 振り回されながらも楽しめる逞しいおなごに成長してほしいものです。 ……ナギーみたいに。 彰利 「ほいじゃあまずメシにするとして……スッピー、     キミら休むんだよねってあれ居ねぇ!!」 中井出「精霊たちならとっくに外の大樹の下に行ったぞ?相当疲れてるみたいだ」 彰利 「あらそうなん?やっぱキミがホワイティンになったことって、     精霊たちにかなりの負担をかけてるんじゃない?」 悠介 「どうしてお前はそう人が気にしてることをチクチク言ってくるかな……」 彰利 「何を言う!アタイは嬉しいからこげなことを言っておるんじゃぜ!?     あの他人第一の悠介が、精霊たちが苦労するって解ってるのに     精霊状態ではなく神状態を選んだ……最強だ。俺はもうそれだけで嬉しい。     でもやっぱり精霊たちの苦労も考えると、少しはイヤミのひとつでもと。     ホレ、精霊たちの場合キミに遠慮して言えないだろうから」 悠介 「……はぁ。そうだろうよ……。だから余計に気にしてるんだろうが……」 彰利 「ぬ……それは考えに入れてなかったな。あいすまんこってす。     つーわけでメシ食いに行こうメシ!!」 中井出「食いに行くって、何処にだ?」 彰利 「月詠町定食店“やまふじ”に!!カツ定食いてぇ!!」 中井出「おおやまふじか!懐かしいなオイ!!でもこの時間じゃ結局開いてないぞ?」 彰利 「ゲッ……」 盲点だったとでも言いたいんだろうか。 ハッと時計を見てガックリする死神王がここに居た。 彰利 「じゃあどうすんだよ提督この野郎!!」 中井出「だからなんで俺怒られてんの!?     ここ俺を怒るところじゃないでしょ!?怒る意味すら解らないよもう!!」 みさお「あの。なんでしたらわたしたち女性陣が」 総員 『だめだ』 みさお「えぇっ!?ど、どうしてですか!?     普通男の人は女性の手料理は嬉しいものじゃ───」 豆村 「そ、そうだぜ提督!なんだってそんなこと!!」 刹那 「意中の子の手料理を食べられる瞬間を突き放すようなことを!!     俺のもう取り戻せない瞬間に対する最後の晩餐を無にする気かキサマァアア!!」 豆村 「落ち着け刹那!今は朝だ!晩餐にはほど遠い!」 中井出「うむ!何故そこであえて俺に意見を飛ばすのかは知らんがな!     訊かれたならば答えよう!」 総員 『外食の話してんのに手料理が食いたいわけねぇだろうが!!』 みさお「そんな理由ですか!?」 中井出「そんな理由だ!手料理に焦がれる甘酸っぱい少年どもよ知るがいい!!     衝動というのは女子の手料理ごときでは止められんのだ!!     たとえばどうしてもラーメンが食べたい時があるとする!     しかしそんな時に意中の女から手料理を食べさせてあげると連絡があった!     さあ!貴様ならどうする豆坊主!!」 豆村 「え……そりゃ手料理」 総員 『このクズが!!!』 豆村 「最後まで言わせないでそれッスか!?」 彰利 「黙れクズがこのクズがほんとクズが腐れクズが!!!     お前そこはラーメンだろクズが!!お前衝動ってもんを解らなすぎ!!     こと食に関して人間ってのは素直なもんだろうがヨォオオイ!!」 豆村 「そ、そんなこと言われたって     俺は意中のコの料理食いてぇんだからしょうがねぇだろクソ親父!!」 夜華 「みずき貴様!親に向かってなんだその口の利き方は!!」 豆村 「うひゃあっ!?ごごごめん母さん!!俺いい子です!!」 藍田 「ていうか……弦月の口調についてはツッコまないのな、篠瀬さん」 うむ、実に騒々しい。 一つの部屋の中でギャースカと騒ぐもんじゃないな、しかも夏に。 でも妙に涼しいから心やすらぐ晦部屋。 洋館の中にあるのに和風なのがまた晦らしいと改めて思う。 ……それはそれとしても、どういうことだろうな、豆坊主が篠瀬さんを母さんなんて。 しかもそのことについて様々なやつらがなんの疑問も……ああいや、 晦一等兵だけは難しいというか、複雑な顔をしてる。 日余二等は……全然普通の顔で笑ってる。 他の彰利一等兵の妻どもも喧噪を眺めて苦笑したり笑ったりだ。 いつもならここであーだこーだ言い始める筈なんだが……アレ? 中井出「……晦一等兵。ちと訊ねたい」 悠介 「ん……中井出か。どうした?」 中井出「貴様、この状況のこと、なにか感づいてるか?」 悠介 「状況って……こいつらが騒がしいのはいつものことだろ?」 中井出「いや、そんな子供の相手が疲れたような     パパみたいな言葉が聞きたいんじゃなくてだな。     ……彰利一等兵と、その妻どもの反応《がばしっ!》むごっ!?」 悠介 「……!!お前っ……!」 突如として晦一等兵にネックロック&口封じをされた!! え……何!?なんなのこの状況! 悠介 (中井出お前っ……覚えてるのか!?) 中井出(僕はキミが女性の着替えを覗いた時に1円を出したことを忘れない) 悠介 (それは忘れていいんだよ今すぐ忘れろっ!!     じゃなくて!彰利が多妻状態にあった頃のことだよ!) 中井出(……?覚えてるもなにも、今もそうじゃないのか?) 悠介 (………) 晦一等兵がなにか疲れたような顔をして盛大に溜め息を吐いた。 が、それには安堵の色も混ざっているように見えた。 悠介 (ああ、いや……解った。あいつらしいよほんと……。     ようするに俺独りだけに秘密を持たせるのは悪いって思ったんだな……) 中井出(貴様がシャンゼリオンの録画に失敗して泣いた秘密のことをか?) 悠介 (どうしてそこでシャンゼリオンが出てくるんだよ!……人のこと言えないが) 中井出(うむ!言ってみただけである!!そしてさっぱりだ!……説明してくれるのか?) 悠介 (……───ああ。外、出るか) はぁ、お馴染みの溜め息を吐いた晦一等兵が窓から外を見下ろす。 つくづく思うが毎度毎度破壊されてもいつの間にか直されてる家は、 いったい誰が直しているんだろうか。 俺達の場合破壊したらしたで放置してばっかだし。 ───……。 ……。 ───そんなこんなで外。 庭に出てきた俺と晦一等兵……それと、何故かついてきたナギーは、 精霊たちがマナの大樹の下で休む中で癒しの大樹の下に座ると、 その木陰で大きく息を吐いた。 なんだかんだで疲れた。 ヒロラインは楽しいが、楽しければ楽しいだけ中断した時の反動が大きい。 それだけ魂に無茶させてるってことだろう。 ……ちなみに俺は、ニンフ代表のドリアードさんにマナの結晶というのをもらってある。 ギシャーンと新たなる変身をした際、それはそうとと渡されたものだ。 これがあれば、ここから離れたところに行ってもナギーに影響は無いらしい。 多少の範囲内ならここから生まれるマナで補えるらしいんだけど、 離れすぎるとマナが届かず、ナギーは大変なことになるらしい。 と、そんなことを癒しの大樹の幹に背を預けつつ考えていると、 小さく晦一等兵が息を吐いた。 悠介 「さて……どこから話したもんかな」 中井出「何処からでもかかってこい!」 悠介 「お前はなにか?戦いでもする気かここで」 ナギー『応援なら任せるのじゃ!』 悠介 「せんでいい!!」 座った先からだはぁ……と溜め息を巻き散らかす晦一等兵。 おお、将来ストレスでハゲそうである。 もしくはストレス性胃炎の悪化で苦しむことになりそうだ。 悠介 「解った、解ったから……頼むから黙って話を聞いてくれ……」 中井出「相変わらず苦労の多い人生歩んでるんだなぁ……」 悠介 「……あのな、その中に自分も含まれてることを少しは自覚───」 中井出「だが断る。この博光の最も好むものの一つは。     頼むと懇願する者に対しNOと断ってやることだ」 悠介 「だったらなんのために外に付いてきたんだてめぇはぁああああっ!!!」 中井出「ウオッ!?だ、だから懇願することを予測してNOと断ヴァーーーーーッ!!!」 最後まで言う暇もなく、まるで彰利がそうされるかのようにボコボコにされました。 ───……。 ……。 中井出「うおおいぢぢ……!!     今ちょっとだけ問答無用でボコられる彰利の気持ちが解ったかも……。     あのね、僕暴力はいけないと思うんだ」 悠介 「あのなぁあ……!!お前らが素直に人の話を聞くやつらだったら、     俺だって拳を握らずに円滑に話が出来るってことを頭に叩き込めたわけ……!」 そう言われればそうなのだが。 だが解ってても実行するのが原ソウル。 たとえ殴られる結末が見えていても、 その事実に恐れはしても退きはしないこの根性……俺達は修羅という名の馬鹿者なのだ。 中井出「うむよし!ならば聞こうか!いったい我らの中でなにが起きているのかを……!」 悠介 「はぁ……。じゃあ、話すぞ……?」 俺の言葉を受け取り、晦がその疲れ果てて重い口を開き始めた。 ……やがて聞かされたのは一人の馬鹿野郎の身の上話。 いい加減に自分に見切りをつけ、全てを手放そうとした男の話だ。 けれどその中には救いがあって、 その男は一人の女性とのみ結ばれたという事実がここに残った。 ここに、ってのは俺と晦の記憶の中にってことだな。 どうして俺なのかは解らんが。 中井出「……どうして俺だったんだろな?」 悠介 「それは……まあ、なんだ。俺とよっぽど親しいヤツが、     原中の中じゃお前以外に居なかったからじゃないか?」 中井出「……晦一等兵よ。貴様はもう少し積極的に友と接するべきだと思うぞ?」 悠介 「ん……ああ。大丈夫だ。これからは俺も変われると思うんだ。     ……と、そうだ、お前には言っておくよ。     俺、これから彰利とみさおと、ちと過去に飛んでくる」 中井出「過去に?なんでまた」 悠介 「自分の過去と向き合ってくる。     もういい加減、自分が自分じゃないままなんてのは嫌なんだよ。     だから過去に飛んで、自分がどんなヤツで父さんがどんな人だったのか。     それを、自分自身の目で確かめてくる」 晦は……ええと、そうだな。 今まで見たことも無いような、酷く真っ直ぐな目でそう言った。 そこからはかなり強い決心みたいなのが受け取れた。 もう止まるつもりはないんだと。 震えているつもりはないんだと。 そう言っているかのような目が、しっかりと俺の目を覗き込んでいた。 だから、俺は─── 中井出「面白そうだ!俺も行こう!!」 ナギー『ヒロミツが行くならわしも行くのじゃー!!』 悠介 「───エ?」 そう叫び、ビシィッ!と石化したかのように身を固まらせた彼の顔を、 きっと一生忘れまいと……心に誓ったのだった。 【ケース462:弦月彰利/馬鹿につける薬?トクホンチールでも飲んでなさい】 ………………で。 彰利 「……なんなのその物凄くカオスな雰囲気」 みさおさんとともに庭に出てきたオイラを待っていたのは、 体育座りをしながらシャンゼリオンがどうだとかブツブツ呟く悠介と、 中井出&ナギー『OH霊!!』 ナギ子さんを手の平に乗せながらペアスケートのキメ技を決めている中井出提督だった。 中井出「ちゃ〜ちゃっちゃちゃっちゃちゃ〜ちゃっちゃっちゃっちゃ〜♪」 ナギー『たったったらったたったった〜たらったったったた〜♪』 さらにその場でスケートリンクもないのにくるくる回転すると、 やがてそれはよくスケート選手がやるようにその場だけの高速回転となり、 ついには素晴らしいキメポーズが───!! 中井出「ウヴェェエエエエ……!!!」 ナギー『気持ち悪いのじゃぁあああ…………!!』 ……キマらなかった。 どうやらあっさりと目がまわったらしく、二人はその場にへたりこんで動かなくなった。 しかし無理矢理奇妙なポーズを取ると、オウレイと叫んだのちに嘔吐。 何処までも中途半端に逞しいお方たちだった。 みさお「あのですね……仮にも然の精霊が自然に向かって嘔吐しないでくださいよ……」 ナギー『精霊とて人の子なのじゃ……!!』 みさお「精霊は精霊でしょうが!」 ナギー『うるさいのじゃー!精霊にだって耐えられないことの一つや二つあるのじゃー!     精霊だからって妙に上に見るでないのじゃー!!』 中井出「うむ!よく言ったナギーよ!!もはや初見の貴様など見る影も無い!!」 みさお「それって精霊としては喜ぶべきところなんでしょうか……」 中井出「あ……うん……俺も時々考えてみたりする……」 彰利 「それって普通にダメってことでは?」 中井出「否である!たとえそうだとしても俺は生物の変化を尊く思う!     そして、たとえああいった世界の中だとしても     すくすくと成長してくれるナギーがカワイイ!だから───え?     ち、違うよ!カワイイっていうのはそういう意味じゃなくて!     別に僕ロリコンじゃないよ!?僕普通の同年代の女の子が好きだもん!!     ───違うよ!今のは喩えであって浮気したいわけじゃないよ!     なんなのもう!どうしてそう人のこと追い詰めようとするの!?     僕は麻衣香を愛してるの!麻衣香以外の女とこの先を過ごすつもりなんてないよ!     ……え?じゃあ娘は捨てるのかって?捨てないよ!なに不吉なこと言ってるの!!     カワイイ娘を捨てたりするわけが───だからロリコンじゃないってば!!     違───別に娘にかまけるあまりにナギーを捨てたりしないよ!!     ていうかどうして捨てる捨てないの問題になってるの!?     いつの間にか僕ナギーのパパ!?違うよね!?───違うよ!!違うってば!!     違うよねって訊いてみたからって違わないなんて無責任なこと言わないでよ!     どうしてキミタチは僕を不幸に導こうとするの!?     毎回こんなんで僕がヴァーってボコボコにされるんじゃないか!!     ダ、ダメだよ!!今回ばっかりは本当に僕なにも悪いことしてないんだから!!     やめてよ!なにその不吉なデカい影の棍棒!     そんなので殴られたら内臓だけじゃなくて     僕も見たことないような未知な汁が飛び出ちゃうよ!!     ───喜ばないよ!!そんなの見て喜ぶような変態さんじゃないよ僕!!     自分の知らない自分が見れて良かったねどころじゃないよ!死んじゃうよ!!     そんな謎の汁をまだ見ぬ自分として認識するのも嫌だし死ぬのも嫌だよ!!     やめてよもう!ここはヒロラインじゃないんだから精霊さんたちが休憩してる中で     そんなのヒットさせられたら僕はもう……ッ……!!───だから違うよ!!     違うって言ってるでしょもう!聞いてよ人の話!!快感なんて覚えないよ!!     覚えたとしてもそれじゃ絶命してるよ!     え?死ぬ間際に快感感じられたんなら本望だろ?何処の変態なのそれ!!     指差さないでよ!変態じゃないよ僕は!!───エロマニアでもないよ!!     どうしてそういう話になると意地でもエロマニア扱いするの!!     卒業したって言ったでしょ!?卒───勝手に留年させないでよ!!     エロマニア留年ってどんな称号!?勇者なんて称号よりもよっぽど勇ましいよ!!     男前すぎて涙しか出てこないよォオアア!?《ちゅいんっ!!》ギャアアアア!!     ななななにすんのぉォオ!?いきなり影棍棒振り落とさないでよなにすんの!?     涙しか出てこないならそれでいいでしょ!?もう少しで頭蓋が潰れてたよ!!     謎の汁なんて出したくないって言ったでしょなにするのもう!!やめてってば!     ヒロラインで散々苦労してその上現実世界で影に潰されるなんて嫌だよ!     ていうかなんでみんな僕を殺す気満々なの!?僕なにか悪いことした!?     ……え?ただ僕のまだ見ぬ汁が見たいだけ?ちょ、待ってよ!!     なんなのその予想外にも程がある惨殺理由は!!ちょっと……待ちなさいったら!     なんでそんなのに興味持っちゃってるの!?殴ったって出てこないよそんなの!!     僕の謎汁は架空のお話の中の登場液体であり実在する個人団体事件とは     そもそも関係がないんだからァアォァア!!?《ぴしゅんっ!》ヒぎゃあァア!?     や、やめてぇえええ!!!僕まだ死にたくないぃいいっ!!!     無言で棍棒とか刀とか振り下ろさないでよほんと死んじゃうぅううう!!!     ───ハッ!この騒ぎを聞きつけた猛者どもが庭に!     ……え?騒ぎというよりお前の悲鳴だろ?叫ばせてるのは誰だよぅ!!     た、助けてぇええ!!このままじゃ僕、自分さえ知らない、     あるかどうかも解らない汁を屍から搾り出され……なにトトカルチョしてるの!?     しかもなにその汁があるかないかってお題!!出ないよ!出ないったら!!     なんなのその倍率!叫んでる僕以外の全員が“ある”に賭けてるのはどうして!?     ていうか話が聞こえてたんなら助けに来てくれてもいいでしょ!?     なんで些細な一言から汁問題に発展しなきゃならないの!?やめてよ!     僕ただカワイイって言っただけだよね!?そうだよね!?     こんなんじゃうっかり道端に咲く花も褒めてあげられないじゃないかぁっ!!     ……え?道端に咲く花にさえ欲情するなんて、さすがエロマニア?───違うよ!     だからどうしてェエッキャアアア!!?《ぢゅごぉんっ!!》ぅうォオオ!!??     やめてぇええええ!!!無言で振り下ろすのやめてぇえええっ!!!     そんなのくらったら生きてられないからぁあああっ!!!     もういいよ!汁ならあるから!あるってことでいいから納めさせてェエエエ!!!     えぇっ!?だったら見てみたい!?だ、だめだよ!謎の僕汁は僕だけの汁なんだ!     みんなに見られたら価値が下がっちゃうんだよきっと!!     だからもうやめてったらぁああっ!!だ、だめぇええ!!     そんな太いのやめてぇええええ!!やめ───ヴァーーーーーッ!!!Next Menu back