───時空放浪モミ列伝『第ニ章◆外伝・超時空放浪ヒロミツ』───
【ケース467:中井出博光/ユデスキーさんはハゲだった】 グワルキャアアアアアアッ!!ケーッキョッキョッキョッキョ!! コワケェエエーーーッ!!! 中井出「………」 ザワザワと騒ぐ小生物や大生物の戦慄きに心が震える。 つーかなんでこんなことになったんだろうなぁ……。 藍田 「とりあえず大木の上に逃げたはいいけどさ。これからどーすんだ?」 丘野 「拙者に訊かれても」 ナギー『あやつらは高いところには昇ってこれぬのか?』 丘野 「生物としての構造上、木を昇るには不向きなんでござるよ。     だからよっぽど巨大か空を飛べるかしなければ大木には届かないのでござる」 ナギー『むう……なるほどの』 といってもマジモンを見るのは流石に初めてである。 だからジュラシックパークとかで得た知識が正しいかどうかなんて、 ほんとのところは解らない。 藍田 「空にはプテラノドン、地上には肉食……竜って呼んでいいのかな。     ……いや、獣だな、ありゃ」 鬱陶しい限りである。 やろうと思えば始末も出来るんだが……やっぱ怖いモンは怖いわけで。 藍田 「はぁ〜あ……さすがに無鉄砲に突き進むわけにも───あぁっ!?」 丘野 「ぬおっ!?どうしたでござる!?何事でござるか!?───アァアアッ!!!」 ナギー『な、なんなのじゃいったい!!……?あの妙な竜がどうかしたのかの?』 中井出「妙な竜?───ア、アァアアアアアアアッ!!!!」 ナギー『ひうっ!?ヒ、ヒロミツまでなんなのじゃ!?』 あ、あいつは……あいつはぁあぁっ!!! 忘れもしない、あの姿カタチはァアアア……!!! 藍田 「提督……俺、戦闘意欲湧いてきた……!」 丘野 「拙者もでござる……!」 中井出「俺もだ……!ヤツだけは……ヤツだけは許しちゃならねぇ……!!」 視線の先に居るのは……モンスターハンターで言うランポスっぽいやつ。 その名……ラプトル!! ナギー『あ、あの竜がなにかしたのかの……?』 中井出「なにかした!?なにかしたなんてものではないわ!!」 藍田 「よく聞けよナギ助!!ヤツはな!ヤツは……!     なんの罪もないユデスキーさんを惨殺したのだ!!」 ナギー『ゆ、ゆですきー!?ゆですきー…………!!…………誰なのじゃ?』 丘野 「ユデスキーさんはユデスキーさんでござる!!いいでござるか!?     ユデスキーではないでござる!ユデスキー“さん”でござる!!」 中井出「いつか夢見た復讐……!まさかこんなところでてめぇらに会えるとはな……!!     止めるなよナギー……!あいつだけは……あいつだけは許しちゃならねぇんだ!」 藍田 「ユデスキーさんの苦しみ……全部纏めて返してやる!!」 丘野 「宣言するでござる!貴様ら全員……首を折って殺すでござる!!」 俺達の心に覚悟が溢れ出す!! もう臆病風など要らん!! 死ぬつもりなぞないが、覚悟を決めるからには殺す覚悟も殺される覚悟も刻み込む!! 中井出「いくぞぉ野郎どもぉおおおっ!!ユデスキーさんの弔い合戦だぁあああっ!!!」 総員 『オォオオオオオオオッ!!!!』 俺と藍田と丘野は腹の底から雄叫びを上げ、大木から飛び降り大地に降り立った!! 既に完全武装済み……俺の背にはナギーがへばりついており、 急所であるそこを守ってくれている。 ラプトル『クァォウ!?《バゴシャォォゥンッ!!》グキィイッ!!?』 藍田  「この痛み……ユデスキーさんの痛み!!」 そして早くも藍田二等が烈風脚を使い、 勢いのままにラプトルに蹴りをブチ込み首をヘシ折る!! しかも蹴り込んだラプトルを踏み台に別のラプトルへと烈風脚で飛び込み、 さらにさらにと首をヘシ折ってゆく! 丘野 「秘奥義───分身圧縮闘技!!」 だが一息に仕留められるのは4体まで。 その合間を縫うように駆けるのが丘野くんであり、 100体分身した己を圧縮融合し、一気に力を増幅させた丘野くんは物凄い速度で疾駆! 鞘に納めたままの忍刀でラプトルの……やはり首のみを狙ってゆく! 丘野 『二刀流我流奥義!!双閃粉骨連舞!!』 ドンガガバキゴキドッガベッキャゴバシャアアッ!!! ラプトルども『グケェエーーーーッ!!!』 丘野くんと藍田くんを中心に首が折れたラプトルどもが飛び荒ぶ! かく言う俺も既にジークムントとジークリンデを手に、 力の限りを以ってラプトルどもを吹き飛ばしまくっている。 切っ先に素粒子を平べったく集合させ、 切れない状態にして殴るように吹き飛ばしているのだ。 いわば細長いハンマーで殴っているような状態だ。 中井出「くぅうううたばりゃぁああああああっ!!!!」 ギフィドッガァアアアアアアンッ!!!!! ラプトルども『グゲェゥウウッ!!!!』 あくまで喉を狙った攻撃がラプトルどもを吹き飛ばす! あまり全力でやって千切ってしまっては意味がない……! ユデスキーさんの無念は首骨折でなければ晴らせないのだ!! 中井出「よくも!よくもユデスキーさんを!貴様らだけは絶対に許さん!!」 藍田 「貴様らはやってはいけないことをしやがったんだ……!!許さねぇ!!」 丘野 『ユデスキーさんはハゲだったのに……!     なんの罪もない、ただのハゲだったのに……!!』 中井出「そうだ!ハゲだった!」 藍田 「ただ中途半端にハゲだっただけなのに!!」 中井出「それを貴様らは囮に使っただけでは飽き足らず、     首まで折っていきやがったんだ!」 丘野 『許さねぇ!!一匹残らずあの世行きにしてやる!───……でござるよ!?』 ナギー『……話を聞いておると、     ゆですきーさんとやらは何が良かったわけでもなさそうに聞こえるんじゃがの』 中井出「良かったわけでもないだと!?ユデスキーさんはハゲだったんだぞ!?」 藍田 「それだけで十分だろうが!!」 ナギー『訳が解らんのじゃ!!ハゲておればなんでもよいのか!?』 丘野 『なんでもよいのではないでござる!     ユデスキーさんがハゲだからよいのでござる!!』 ナギー『ますます解らんのじゃ!!     もう少し詳しゅうに説明できんのかと言うておるのじゃ!この愚か者がぁあ!!』 中井出「詳しくって……」 藍田 「お前……」 丘野 『なぁ……?』 中井出「………」 藍田 「えーっと……」 丘野 『拙者たち、何故こうまで怒ってたんでござろうか』 中井出「さあ……」 ユデスキーさんはハゲだった。 ただそれだけだ。 だがそんなユデスキーさんを道具として扱った挙句に首折って殺したのも事実。 中井出「じゃあ……せっかくだし絶滅させよっか」 藍田 「仲間がゾロゾロ来てるしな……」 丘野 『腕が鳴るでござるな!!』 きっかけ、なんてものはこれで案外なんでもないところから舞い降りるものなんだろう。 気づけば臆病風に吹かれていた我らの心には幾分かの余裕が生まれていて、 今やラプトルと対峙をしても恐怖は感じ……なかった、と言えばウソになるが。 だが逃げていたさっきまでの我らとは心構えがまるで違っていた。 中井出「さぁ来いぃいい!!」 藍田 「戦士の力がぁあ!!」 丘野 『俺の血がぁああ!!』 みんなでグルガの真似をしつつ絶叫! 飛び掛ってくるラプトルをこれでもかというくらいにボッコボコに痛めつけ首を折り、 しっかりとソリュソリュと剥ぎ取りを実行した。 ……のだが、生臭すぎたのでやめた。 こりゃ吐ける臭さだ。 ヒロラインの中じゃあここまで生々しくなかったからなぁ……。 中井出「ワハハハハハ!!弱ェエエエ!!弱すぎンぜこいつァアアアアッ!!!!」 藍田 「ヒロラインのモンスターどもに比べてなんてザコいんだ!!     恐れていた自分たちがまるでアホゥだ!!」 丘野 『さぁどっからでもかかってくるでござるぅううううっ!!!』 ナギー『おー!どんどんやってしまうのじゃー!!』 これでもかというほど暴れ回る暴れ回る!! 乱暴に剣を振るってはラプトルどもを吹き飛ばし、 生きてたら疾駆して起き上がる前に首を折る!! 今や斬殺モード全開の俺であるが、生きてたらとりあえず首を折る!! 中井出「属性よ、双刃に宿れ───精霊斬!」 なお、逃げ出そうとするヤツらは容赦なく斬滅。 双剣に宿した属性を剣閃として放ち、ズバズバと遠慮無用に斬ってゆく!! 中井出「8!9!10!11!12!───“義聖剣”!!《キュバァンッ!!》」 そして12閃を放つと同時に双剣を長剣に変え、込めていた属性を融合!! 火と雷の融合をここに、一つの破壊をもたらそう!! 中井出「“真・無双乱舞”!!散ィイイイれェエエエエエいィイッ!!!!」 シュゴォッフィゾッパァアアアアンッ!!!! ラプトルども『ギョェエエエーーーーーッ!!!』 振るう武器に炎が宿り、斬りつけた相手が爆発しながら吹っ飛ぶ!! しかも地面に落下すると同時に雷を撒き散らし、 周りのラプトルまで巻き込んで吹き飛んでゆく! 藍田 「オッ、オッ……!?提督てめぇなにしやがった!」 丘野 『拙者たちの武器に炎が纏わりついているでござるよ!?     なんの呪いでござるかてめぇ!!』 中井出「うむ!真・無双乱舞である!真・無双乱舞は仲間とともに発動させるもの!!     つまり!発動させれば仲間扱いの者にもその奇跡が届くのだ!───多分」 なにせ最近じゃ一人で戦ってばっかだったから詳細はよく知らない。 だがそういった能力があればいいとは思っているわけで。 藍田 「おお!そういうことでありますか!」 丘野 『サンキュー・サー!!』 中井出「さっきまでてめぇとか平気で言っておいて、なんなのその変わり様!!」 と言ってみるも既に聞いちゃいなかった。 藍田くんと丘野くんは己の武器に宿った面白能力を前に子供のように燥ぎ、 次々とラプトルを吹き飛ばしては雷を爆裂させていた。 藍田 「だはははははは!!これいい!!いいよこれ!!     地面に落下したラプトルが雷発しながら跳ねる様が最高!!」 丘野 『もっとでござる!もっとラプトルは居ないんでござるか!?』 まさに容赦無用である。 そう思いつつも俺も、騒ぎを聞きつけてやってきた別のヘンテコヘッド恐竜をブチノメし、 ナギーとともに意味の無い勝利の雄叫びをあげたりしている。 ナギー『楽しいのじゃー!!ヒロミツヒロミツ、もっと暴れてみせるのじゃー!!』 中井出「ねぇナギー!?キミ自分が争い嫌いってこと最近忘れてない!?」 ナギー『“争う”のは嫌いなのじゃ!もちろん争い自体も好きではないがの。     じゃが襲われたなら抗うのが当然なのじゃ!     そういった状況での戦いは仕方のないものじゃと見切りをつけておるのじゃ!     だからいくのじゃー!弱肉強食の理くらい知っておるのじゃー!』 中井出「………」 先に謂れの無い攻撃を仕掛けたのが俺達だってこと解ってるのカナ……。 まあいいけど。 ユデスキーさんはハゲだったんだ、それでいいじゃないか。 中井出「“解除”(レリーズ)!!六閃化発動ォオ!!」 込めた属性を散々振るったのちに解除、双剣にし、六閃化させて突っ込む!! 少しずつ満たされてゆく属性を気にかけながら、 しかし容赦することなく大振りに敵を薙ぎ払う……!おおこれぞ無双の心!! 三国無双とかで敵を薙ぎ払う瞬間が頭に蘇るようだ……!! 丘野 『ぬう……!ここまで弱いなら分身状態でも勝てるでござるよ!解除!』 藍田 「うお鬱陶しい!丘野!いいから一人のまま戦ってろって!」 丘野C「ほっとくでござる!拙者は忍者らしい状態が好きなんでござるよ!     そして分身とくれば忍者スキルでもかなりの有名度を誇るもの!     なんていうか……安心するのでござるよ」 中井出「おお!それはなんとなく解るぞ丘野Cよ!だがとりあえず右手をごらんください」 丘野C「?」 藍田 「右?……なにうおぉおおーーーーーーっ!!?」 藍田くんと丘野くん、そしてナギーが振り向いた先には───!! なんとティラノさんよりバカデカい恐竜にバリボリと食されている丘野Iの姿が!! 丘野I「ギャアアアアアアア!!!たたた助けてぇえええでござるーーーーーっ!!!」 総員 『断る!!』 丘野I「僅か一秒も考えずに!?《コキンッ!》うきっ!?」 シャアア……サラサラ……♪ 一定量のダメージを越えたのか、分身丘野くんが消滅した。 丘野C「ひでぇでござるよ提督殿!藍田殿!     もしアレが本物だったらどうするつもりだったでござる!?」 中井出「おお、すかさずツッコミを入れてきたということは貴様が本物か!」 丘野R「ち、違うでござる!拙者こそが本物でござる!!」 丘野U「いいや拙者でござる!だから守り抜いてほしいでござるよ!!」 藍田 「こんな時まで分裂命乞いするなよ!!」 ナギー『ヒ、ヒロミツ!!竜が動きだしたのじゃー!!』 中井出「なにぃ!?」 藍田 「ど、どどどうするんだ提督!     さすがにラプトルサイズから一気にここまでデカくなるとビビるぞ!?」 中井出「うん僕も」 ナギー『なにを情けない声を出しておるのじゃヒロミツー!!     おぬしはカイザードラゴンにも勝ったのであろ!?     それをいまさらこんなマナも感じない竜相手になにを震えておるのじゃー!!』 中井出「怖いものは怖いんだからしょうがないでしょもう!!」 そりゃドラゴンとレックス類と戦うなら、圧倒的にレックス類の方が楽だろうさ! それでも自分より大きい敵には怖じてしまうのが人間ってものなのだよナギー! 丘野 「《ゾリュンッ!》提督殿!こいつはいったい何者なんでござるか!?」 藍田 「あっ!丘野てめぇ!なんで分身解くんだよ!」 丘野 「さっき鬱陶しいとか言ったでござろう!?」 藍田 「分身が食われる分には俺達が安全だろうが!」 丘野 「うおおクズでござる!てめぇクズでござるよ!!」 中井出「うむ!こんな時に仲間割れとは実に天晴れ原ソウル!!」 ナギー『そんなことを言っている場合ではないのじゃー!ヤツが来るのじゃヒロミツ!!』 ナギーが言った、まさにその途端だった!! 謎レックスがゴガァアアと高い咆哮を上げ、我らに牙を剥いたのだ!! ……別の意味で言うなら、とっくに分身丘野くんに牙を立ててたわけだけど。 丘野   「ヒィ!どうするでござるか提督殿!!」 中井出  「ぬ、ぬう……!」 謎レックス『ギゴォオアァシャアァアアアッ!!!ズキィーーーーンッ!!! 総員 『ギャァアアアアアアアアアッ!!!!!』 大激痛!! 戸惑う俺達の目の前で急に発せられた超咆哮が俺達の耳を見事に劈く!! 俺や藍田や丘野くんはすぐさま耳を塞いだが、それでも脳が揺さぶられるような激音だ。 そんな中でナギーも咄嗟に耳を塞いだらしく、ドグシャアと俺の背から落下した。 しかも脇腹を強打したらしい……それでも耳を塞がないよりはマシだ。 藍田 「うぉがいぢぢぢぢ……!!     なんかこんなのを何処かで見たことがあるような───アァアアアッ!!!」 丘野 「な、なんでござるか!?何処かって───ああっ!!     そうでござるよアレでござる!!」 中井出「う、うむ!俺も薄々は思い出していたんだが───こいつは───!!」 ナギー『な、なんなのじゃ!?』 藍田 「ティラノよりデカい恐竜っつったらアイツしか居ねぇ……!!」 丘野 「顎の力こそティラノよりは弱いとの説でござるが、     その大きさで全てを圧倒する超巨大生物!!その名も───」 総員 『ギガノトサウルス!!』 ナギー『ギ、ギガノトサウルス!?     な、なんなのじゃそのギガノタウロスのような名前の生物は!!』 中井出「い、いや!説明している暇はないのだナギーよ!!     今はそれよりもサテライトレーザーでヤツを殺すことを優先するのだ!!」 藍田 「こんな時代に衛星レーザーなんてあるわけねぇだろ提督てめぇ!!」 中井出「それがあるのだ!!確率は30分の1!!     我が博打スキルの中にサテライトリンカーがあるのだよ藍田二等よ!!」 藍田 「なっ……そ、それは本当でありますかサー!!」 中井出「うむ!だが言った通り30分の1であり、     基本的にこの博光にやさしくない能力である博打スキルが、     そうそうこの博光が望むスキルを発動させてくれるわけもない!!」 丘野 「それでは結局ダメではないでござるか!!     どうするのでござ《ドゴォオオンッ!!!》ギャアーーーーーーッ!!!」 ナギー『お、丘野ー!!』 なんてこと! 喋り途中だった丘野二等がギガノトサウルスのぶちかましをまともにくらい、 地面をゴロゴロと転がるハメに!! ぶちかましというよりは、 突っ込んできたはいいけど木に足を取られてコケたのに巻き込まれたわけだけど。 ナギー『丘野……!三度の食事より殊戸瀬が好きなヤツだったのじゃ……!』 藍田 「ちくしょうやりがたったなてめぇ!よくも丘野を!!」 中井出「いくぞぉ藍田!ナギーよ!丘野の弔い合戦だぁあああっ!!」 総員 『ハワァアーーーッ!!!』 ナギーと藍田と俺が叫ぶ!! よくもよくもと心を燃やす!! やがて武器を手に輝かしい一歩を踏みしめんとした───まさにその時!! 丘野 「死んでないでござるよ!!」 なんと丘野くんが現れた!! ナギー『おお丘野!?』 藍田 「丘野……!やっぱり無事だったんだな!?」 中井出「信じてたぜ丘野二等!!」 ナギー『わしも……!わしも信じておったのじゃー!!』 丘野 「ギィイイイイ何処まで白々しいんでござるかてめぇらぁああああっ!!!」 倒れたギガノトサウルスの影からゴゾォと出てきた丘野くん! その体には───なんと傷一つついていない!! 中井出「丘野二等!貴様何者!?」 藍田 「あの巨体にぶちかまされて無傷とは……!!」 ナギー『もしや丘野は不死身だったのかの!?』 丘野 「違うでござるよ!これでもかなり危なかったんでござるよ!?     もうちょっとステータス移動が遅かったらと思うと……!!     提督殿に報告するでござる!やはりステータス移動は最強でござる!!     防御さえ上げればギガノトサウルスの攻撃といえどダメージは微々たるもの!!」 中井出「おおそうなのか!よくやったぞ丘野二等!!」 藍田 「よっしゃあそうと解ればSTRとVITに半々ずつ分けて───!!」 ナギー『というか藍田?おぬしが……オリバ、じゃったか?     あの怪力無双になった方が早いのではないかの』 藍田 「勝利の味をな……より濃ォ〜〜〜くしてェんだ」 眼光を鋭く輝かせた藍田二等が、 その眼光を揺らしながらギラリとギガノトサウルスを見据える!! こう言っちゃなんだが…… ステータス移動がよく通用すると解った途端に随分な余裕が生まれたもんである。 ……それはもちろん俺もだけど。 ギガノトサウルス『グゴォオオオッ……!!』 バカデカい巨体がザリザリと地面を掻き、強引に起き上がる! だがそこへ、既に側転を開始していた藍田二等が襲い掛かる!! 藍田 「どんな食材も捌いてみせます!!」 ヒュオドンガガガガガガベッキャアアァンッ!!! ギガノトサウルス『グォオギャァアアアアッ!!!?』 側転からの勢いに乗った連撃が、重心をかけていたギガノトサウルスの左足をヘシ折った! 藍田 「至高の技が織り成す上質な味わいをご堪能くださいよ、っと───!!」 ボッギャォオオオンッ!!!! 次いで倒れてくるギガノトサウルスの体をアンチマナーキックコースで打ち上げ、 それを追って跳躍しバゴォッシャァアアンッ!!! 追いつくや体を超回転させて踵落とし───コンカッセをキメて地面へ向けて落とす! さらにその反動で浮いた体を利用し、上部にあった大木の枝を疾風の如くで蹴り、 落下するギガノトサウルスよりも早く地面に降りるや 藍田 「“羊肉(ムートン)……ショット”!!」 ギャリドッガァンッ!! ドガガガガバキベキバキャキャキャキャアアアアッ!!!! 鋭い回し蹴りで腹を蹴り抜く!! するとまるで爪先でゴムボールでも蹴ったかのように物凄い速さで吹き飛ぶ巨体……!! 藍田二等の蹴りの強さは相変わらずだ……。 恐らく今までも結局、足しか使ってこなかったんだろう。 ギガノトサウルスは大木を幾重にも破壊しながら吹き飛び、 叫び声を聞く間もなくその巨体は見えなくなってしまった。 丘野 「お……おおぉお……!!」 ナギー『も、物凄い蹴りなのじゃ……!!』 中井出「とっ……飛んだなぁああ……!!」 あとに残されたのは、無惨に破壊された大木の数々だった。 藍田 「……お粗末様でした、っと……。     ぁああ〜〜〜……心臓バックンバックン鳴ってる……!」 丘野 「勝ったのになにを言ってるでござるかてめぇ!!」 藍田 「いきなりてめぇ扱いかよ!     あんな巨体を蹴り飛ばすんだぞ!?そりゃドキドキくらいするっての!!」 中井出「それ以前に蹴りであの巨体を吹き飛ばすこと自体凄すぎるだろ……」 ナギー『なのじゃ……』 蹴術スキルが物凄いことになってるに違いない。 俺は剣術スキルと拳術スキルが結構あるって程度だが…… 藍田の場合は本当に蹴り一本だからなぁ。 オリバになったら拳スキルなんて関係といわんばかりの腕力で、敵を潰しにかかるし。 ある意味でいろいろ手がつけられんモンスターになりつつある。ていうかなってる。 中井出「よっしゃあ勝てると解ったのなら怖くない!     ではこれより我らはこの法律も無い世界を存分に力で支配するものとする!!     各員、全力を以って降りかかる火の粉を抹殺せよ!!」 総員 『サーイェッサー!!』 中井出「覚悟は出来たか!?」 総員 『サーイェッサー!!』 中井出「ステータス移動は万全か!?」 総員 『サーイェッサー!!』 中井出「うむよし!ならば心にシャンドラの火を灯し、存分に暴れてみせよ!!     火山噴火を待つより先に肉食生物を殲滅するのだ!!     イェア・ゲッドラァック!ライク・ファイクミー!!」 ザザァッ!! 総員 『Sir(サー)!!YesSir(イェッサー)!!』 中井出「うむ!では各自の健闘を祈る!すわっ!解散!!」 ザザッ!!ダカタタタタ……!! それぞれが思い思いに走り出す!! 当然ナギーも我が背中から降り、 他の猛者どもと同じくなんだかマシンガンでも持つような構えのまま走り出す! そんな中で俺は誰よりも先に適当な道へと突き進み─── 藍田 「うおおおおお!テリー教官に続け!!」 丘野 「遅れるな!しっかり続くんだ!!」 ナギー『急ぐのじゃー!!』 中井出「なんでキミたち僕を追ってくるの!?」 すぐ後ろを追ってくる彼らにこそ驚愕した。 丘野 「サ、サー!やはりここらを一人で駆け回るにはまだ勇気が足りんでござるよ!」 藍田 「そもそもどうやれば元の時代に戻れるのかも解らないんだから、     ここは一緒に行動するのが得策かと思いますサー!!」 中井出「ぬう……!ナギー新兵はどう思うか!」 ナギー『イェッサー!わしも同じ意見なのじゃー!     ここでヘタに散らばっては、なんらかの拍子で帰れるようになった際に     おいてけぼりを食う可能性があるのじゃ!』 中井出「むぐぐ……確かにその通りだ……よし!ではこれより集団演習を始める!!     全員で行動し、恐竜などをブチノメしながら帰る手段を探すのだ!!」 藍田 「恐竜討伐だってぇ!?」 ナギー『訓練とはいえ命懸けなのじゃー!!』 丘野 「これは是非とも討伐した時、剥き歯で立ち尽くさねばでござるな!!」 藍田 「ジョワジョワ〜〜〜ッ!!俄然やる気が出てきたぜ〜〜〜っ!!」 丘野 「ヌワヌワヌワ!!腕が鳴るというものよなぁ〜〜〜〜っ!!」 ナギー『で、どこからいくのじゃ?』 中井出「キョホホ、そうさのう〜〜〜っ!!     まずはこの時代のデスプレイスとも思える     火山の火口あたりをせめてみるか〜〜〜っ!!」 ナギー『火口?そんなところにさっきのような竜がおるのかの』 藍田 「───いや待てよ?火山っていったら───……ってそうだよ!!」 丘野 「オワッ!?ど、どうしたでござる藍田殿!!」 突如叫ぶ藍田くん! そして驚く僕と丘野くん!! この時、僕らはまだ知る由も無かった……! まさか、まさか藍田くんにあんなことが迫っていたとは……!! ………………。 思わせぶりなことを言ってみたところで、別になにがあったわけでもないんだが。 中井出「なんだというのだ藍田二等よ!」 藍田 「サ、サー!報告するであります!それが原始時代なのかいつなのかは解りません!     しかし火山でなにか思い出すことはありませんか!?」 丘野 「火山、でござるか?…………カーズ!?」 藍田 「そうじゃねぇだろこのタコ!!死ねクズが!!」 丘野 「いっ……言ってみただけなのにものすげぇ言われ様でござる!!」 中井出「火山……?」 ナギー『……?なんなのじゃ?……藍田、それはわしにも解ることなのかの』 藍田 「え?いや……ナギ助はちと無理なんじゃねぇか?こればっかりはな……」 ナギー『むう……ズルイのじゃ』 あのねナギー?俺達別にクイズしたくてここに居るんじゃないんだよ? しかし火山……火山ねぇ。 丘野 「───ハッ!そ、そうか!そういうことかぁっ!!」 中井出「オワッ!?ど、どどどうしたのだ丘野二等!急に奇声をあげて!!」 ナギー『もしや頭の中に悪い虫でも寄生したのかの!?』 丘野 「違うでござるよ!!そんなの飼ってないでござる!!     解ったのでござるよ!藍田殿の言わんとするべきことが!!     聞きたいでござるか!?えぇ!?聞きたいでござるか提督殿ォオオオ!!!」 中井出「あ、俺藍田に聞くからいいや」 丘野 「喋らせてぇえええっ!!!     そこでスルーなんてどれほどご無体なんでござるか提督殿ォオオオッ!!!」 中井出「ええい静まれぇい丘野二等!!」 丘野 「イ、イェッサー!!……で、聞いてくれる気になったでござるか?」 中井出「いや、むしろ俺も解ったからいらん」 丘野 「なっ……ひ、ひでぇでござる!!」 ナギー『な、なんなのじゃー!?ヒロミツー!     わしに教えるのじゃ!おーしーえーるーのーじゃーーーっ!!』 俺が知っていると解った途端にナギーが我が服をぐいぐいと引っ張ってくる。 既に背中から降りた状態にあるナギーは俺を上目に見て、 まるで迷子の子供のように、それこそ我が衣服を引きちぎらんばかりの勢いで引っ張る! なんでこんなところで無駄にパワー発揮してるのとかツッコミたい気分だ。 中井出「じ、実はな……」 ナギー『し、知っておるのか雷電……!』 それでも原ソウルは忘れない。 雰囲気であっという間に察してくれるナギーは、既にどの知り合いよりも染まっていた。 中井出「う、うむ。我らが元の時代に戻れる可能性……。     そ、それこそが、わ、我ら原中に伝わる伝説の奥義、“魅流爬坐亞奴(みるはざあど)”……!!」 ナギー『《ごくり……》み、みるはざあど……!』  ◆魅流爬坐亞奴───みるはざあど  かつて空界で晦一等兵と死闘を繰り広げ、時空の穴に飲み込まれたゼットのこと。  彼はどこぞの時代の火山の火口へと落ちていったという説があり、  彼が落下してくるまさにその時に開くであろう時空の歪み───  それを利用すれば別の時代に飛べる筈なのだ。  故に人々はこれを飛ばされてきた者の名前を取り魅流爬坐亞奴と呼び、  奇妙に崇拝したとされている……。  ちなみに相撲の掛け声で知られるドスコイとは、ドスコイカーンの(略)  *神冥書房刊:『次元遊戯/空へと誘え火口へ堕ツル竜人』より ナギー『な、なんと……そんな説があったとはの……!!     ……と、ところでの、疑問に思ったんじゃが……ドスコイカーンとは』 中井出「さあ行くぞナギー!     うかうかしていては俺達はずっとこの世界の住人になってしまう!」 藍田 「寿命が1000年あったってみんなと再会なんて出来やしねぇ!」 丘野 「その通りでござるよ!だからさあ、いくでござる!!」 ナギー『う、うむ、それは構わぬのだがの、ドスコイ───』 中井出「さあ急ぐぞナギー!!」 ナギー『ま、待つのじゃヒロミツ、ドスコイカーンとは』 藍田 「ボウッとしてないでさあ!!」 ナギー『待てと言うておるのに!ドスコ───』 丘野 「時空の穴が拙者たちを待っているでござる!!」 ナギー『な、なんなのじゃ!?ドスコイカーンとはなんなのじゃー!!』 民明的なことには説明がつけられないので、我らはシカトすることにした!! そうしてナギーの手を引っ張り、いわゆるお姫様抱っこで抱えて走る中─── 予想通りというかナギーはヘソを曲げて、 火山の火口付近につくまでカモノハシのように口を突き出してそっぽ向いていた。 ……そんなに気になることなんだろうか、ドスコイカーンって。 中井出「ところで思ったんだが……ゼットが落ちてくるのっていつなんだ?」 藍田 「いや知らんけど」 丘野 「まさかもう落ちてるってことはないでござるよね?」 総員 『…………』 あの……僕たち、帰れます……よね? そんな不安が心に過ぎった一時の風景だった。 Next Menu back