───馬鹿者は眠らない/天才はとっとと寝ろ───
【ケース479:中井出博光/懐かしい場所、忘れられぬ光景】 まるで狙い済ましたみたいな出来事だなって思った。 我ながら客観的に頭を動かしたもんだ。 それでも嬉しいかと訊かれれば嬉しいと素直に答えることが出来ただろう。 何故ならその場所は、 俺がずっと後悔を持ったまま生きるきっかけとなった場所なのだから。 藍田 「……ここ、提督の家……だよな」 丘野 「ちとカタチが違う場所があるけど、そうだよな」 彰利 「……つーことは、今度は中井出の歴史?」 中井出「………」 自然と視線が俺に集まる。 俺は今ひどい顔をしてるんだろう。 そんな俺の顔を見て、どうしてか……いや。 理由が解る笑みをよこす彰利が、今は憎く思えた。 彰利 「どうするね?これから」 中井出「そりゃお前、“中に入る”だろ」 彰利 「ぬおっ!?暗い顔が一気に笑顔に!?……ほほ、やる気だね?」 中井出「───」 やる気……なんに対してだ?なんて訊かない。 言っても無駄なんだ。 それを、俺は朧月の家で知ってしまった。 一方的に信じてたのは俺だし、意思を尊重したのも俺。 だから憎んだりなんてしてないし、確かにそうしたいのは誰だって同じだ。 ……これで最後だろう。 急に彰利の力が制御不能に陥ったのはルドラの仕業だって容易に想像がつく。 でもこれで最後だ。 藍田からも丘野からも、辛すぎる過去なんて聞いた記憶がない。 みさおちゃんは解らないが、ナギーにもそういった過去はないだろう。 だから……俺で最後だ。 どうしようもない無力さを思い知らされたあの過去が迫る時代に、俺は降り立った。 中井出「じゃ、行くか」 彰利 「オウヨ!ハッピーな生き様さらしてやろうぜ!」 藍田 「あ、俺提督のばーさんに会ってみてぇんだけど」 丘野 「拙者はじーさんの方に!」 ナギー『わしはどっちにも会ってみたいのじゃー!』 みさお「同感ですねっ」 悠介 「………」 騒ぎながら、まるで他人の家のようなかつての我が家へ侵入を開始するみんな。 晦は考え事の最中のようで、動きがどうも鈍いが───それでも入っていった。 みんなアポなんて知らんとばかりだ。 いきなり入っていったら驚かすだけだろうに…… 中井出「───……まいったな……」 みんなが家の中に見えなくなってから、小さく呟いた声が風に流された。 そして俺も歩くのだ。 確かにある後悔を胸に、かつて声と涙を枯らした思い出の家の中へ。 ───……。 ……。 で─── 初芽 「おやおや、いらっしゃいな……お客さんですか……?」 総員 『ざわっ……!』 チャイムも鳴らさずに入った俺達を客として見てくれたのは、 忘れもしない、俺が大好きだったばーさん、初芽(ウメ)だった。 あの頃と変わらないシワくちゃの笑顔と声、そして物腰。 かつて無くしてしまったその全てが、目の前に存在していた。 藍田 (……こ、この人が噂に聞いた……!) 丘野 (て、提督の祖母殿か……!!) 彰利 (な、なんと人の良さそうな……!) みさお(な、なんだか……傍に居るだけで落ち着けそうな人です……!) ナギー(さ、さすがはヒロミツの祖母なのじゃ……!) 中井出「…………」 気を抜くと涙が出そうだった。 いっそ泣いちまえばよかったかもしれない。 でもそんなことはせず、歯を噛み締めて耐え抜いた。 彰利 (ホレホレ中井出?我らのようにどどーんと正体明かしておしまい?     そうすりゃ話も弾むしなにより行動しやすくなるぜ?) 中井出(コココ……!それはまた魅力的な提案……!だが断る) 彰利 (なにぃ!?) 中井出(この博光の最も好む事の一つは。うきうき顔で迫る男にNOと断ってやることだ) 彰利 (グ、グムムーーッ!そ、それが貴様の意思ならば受け止めるだけだが〜〜〜っ!) というわけで。 中井出「失礼!我らは辻・介護集団“SJS団”の者!!     故あってあなたがたを介護しに参上つかまつった!!     あ、ちなみにSJS団は     世界を大いに盛り上げるためのジョン=スミスの団も担っております」 総員 (いや断られるだろ!そんな辻斬りみたいな特効じゃあ!!) 初芽 「あら、そうなのかい?それはありがたいねぇ……最近腰の調子が悪くてね」 総員 (通ったぁああーーーーーっ!!!) 中井出「では自己紹介を。我は“提 督”(だい うなが)。提督と呼ばれております」 藍田 「我は洋菓子 折罵(ようがし おりば)。ビスケット=オリバと呼ばれている」 丘野 「我は穴借素 棺(けっしゃくもと ひつぎ)。アナカリスと呼ばれている」 彰利 「我は呂貧 増久(ろびん ますひさ)。ロビンマスクと呼ばれている」 ナギー『わしは荒夷 詩亞須(あれい しあす)。ナギーと呼ばれておるのじゃ』 みさお「えと……屠神冥月です。みさおと呼ばれてます」 悠介 「………」 総員 『で、彼が籾安芸 美麗人(もみあげ びれいど)。モミーと呼ばれております』 それぞれが名乗り、偽名を挙げる中、一人だけモノ言わぬ晦の名を勝手に大決定! するとなにか引っかかるものでもあったのか、 モミー「……へ?な、なんだ?なんか言ったか?」 ハッとして辺りを見渡したのちに僕らを見る僕らのモミー。 だが時既に遅し!! 提督   「よろしく!よろしく美麗人!」 ロビン  「頼んだぜ美麗人!!」 オリバ  「任せたぜ美麗人!!」 アナカリス「美麗人!貴殿は美麗人でござるよ!!」 ナギー  『美麗人なのじゃ!おぬしは美麗人!』 冥月   「これから頑張りましょう美麗人さん!!」 モミー  『ちょっと待ていきなりなんだよ!び、美麗人!?』 ロビン  「イエス美麗人!ミセスロイドじゃあねぇぜ?       フルネームは籾安芸美麗人!       モミアゲが美しい者にこそ送られる称号でギャアーーーーーッ!!!」 ───その日、ロビンは怒れる般若にボコボコにされた。 ───……。 ……。 彰利 「ちくしょ〜〜〜……」 で……ばーさんの寛大な心の先にあっさりと家の中に通された俺達は、 案内された客間で静かにズズリとお茶を飲んでいた。 ああもう……このお茶の味が懐かしい……。 ばーさん、お茶にいろいろな隠し味入れるのが好きだったよな……。 悠介 「……美味い……はは、美味いなっ、これっ」 初芽 「そうかいそうかい、いっぱいあるからどんどんおあがり」 あの晦も笑みをこぼしながらお茶やお茶菓子をぱくぱく食べているくらいだ。 経験消滅の中で味覚も下がったとかあるかもしれないが、それでも俺は嬉しかった。 藍田 「いやしかし……なるほどねぇ。提督が自慢するわけだよ」 丘野 「他人を一発で上がらせてしまうとは……大物でござるな」 みさお「あの、おばあさん?こう言ってはなんですが……人はもっと疑ったほうが───」 初芽 「構いやしないよ。わたしはこれでも人を見る目だけはあるつもりだからね。     みぃんな、やさしい目をしとるよ」 藍田 「ジョワッ、聞いたかサンダー。この五大災厄を見てやさしいだとよ」 丘野 「ヌワッ、なかなか見所のあるばーさんじゃねぇか〜〜〜っ」 ナギー『おぬしもいい目をしておるぞ。とてもやさしい目なのじゃ』 初芽 「おやそうかい?ありがとうねぇ」 ナギー『《なでなで……》う、うぅう……』 ばーさんが、やっぱりシワくちゃになりながらナギーの頭を撫でる。 笑みを浮かべたその顔はとてもやさしく、 不思議と俺以外に頭を撫でられることを嫌うナギーも、 されるがままに……だけど嬉しそうに目を細めていた。 ナギー『……不思議なのじゃ。いや、さすがと言うべきなのかの……』 初芽 「うん……?なにがだい……?」 ナギー『撫で方が似ておるのじゃ。     手の平からやさしさが溢れてくる感じなのじゃ。さすが、ヒロミツの───』 中井出「シャーーーーッ!!!」 ナギー『《がぼしぃっ!!》むくっ!?』 我が名を言うナギーの口封じに、ばーさん特性蒸しケーキを突っ込む! いかん!いかんのだよナギー!その名を言ってはいかんのだ!! …………もふもふ……ごっくん。 ナギー『な、なにをするのじゃヒロ』 中井出「シャアアアーーーーーッ!!!!」 がぼしぃっ!!!…………もふもふ……ごっくん。 再来。 再びナギーの口封じをしたこの博光は、 くにおくんのようにちょぇえーーーっ!とナギーを抱えて走ると廊下へゴー! そこで人の道の尊さを外道高校の番長のように……拳ではなく口で語った。 中井出「よいかナギー!これはミッションである!     いかにばーさんに我が博光であるということを悟られんためのミッション!」 ナギー『な、なにぃ!?そうじゃったのか!?』 中井出「そうだったのだ!何故出会った時に偽名を使ったのか解らんのか!」 ナギー『おお……あれにはそういう意味が含まれておったのじゃな……!     ならばヒロミツのことは提督と呼べばいいのじゃな?』 中井出「イエスアイアム!ではよいな!?この場でのみこの博光は提督という名になる!     誤って我を本名で呼ぶ者には等しき罰を与えよ!     これぞ“地獄の始業ベル!名も無き修羅の戦い”である!」 ナギー『解ったのじゃ!こう見えてもわしは!ミッションの達人なのじゃああっ!!』 中井出「その意気だナギー!では参るぞ!覚悟を決めろ!」 ナギー『サー!イェッサー!!』 無駄に元気な僕とナギーだった。 ともあれ、こうして我らは熱き思いを胸に一歩を踏み出した……! 【ケース480:中井出博光(再)/マスタードビー】 デゲテンテンテンテンテンッ!! 提督猫『時はッ!19XX年!世界は……ヤムチャの炎に包まれた!』 忍者猫『というわけで……』 執事猫『これからどうする?』 黒猫 『さあねぇ』 白猫 「白の秩序になると猫毛も白になるのな……」 神魔猫『ひとつひとつの変化に感心してたら身がもちませんよ』 やることが無くなった。 というわけでもないのだが───視線をツイと動かせば、 ナギー『おのれ貴様わしを誰だと思っておるのじゃー!!』 博光 「うるせー!おまえこそおれをだれだとおもってるんだー!!」 ……過去の俺とタイマンを張る、どこぞの高位精霊様が。 視線を動かせばもなにも、 俺達ゃ猫状態で静かに囁き合ってるから聞こえようもないんだが。 執事猫『提督さ、自分が小さい時にナギーと喧嘩した記憶ってあったりする?』 提督猫『今さらだけど確かにあった。よく解らん生意気な小娘が居てさ。     で、今まで居なかった筈の猫がごっちゃり居て、子供心に不思議に思ったもんさ』 忍者猫『それが我らだったと知ったのは、我らが猫になった瞬間だった、と』 提督猫『そうなるなぁ……。俺、小娘の方はばーさんとじーさんの     別のところの孫かなにかだと思ってたくらいだし』 白猫 『忘れてたのか?』 提督猫『いやぁ〜……ばーさんとじーさんとの思い出の方が印象深すぎて、     正直小娘のことは記憶の片隅に追い遣られてたなぁ……』 黒猫 『そうなん?』 提督猫『しょうがないって。小娘に会ったのも猫を見たのもこの日一日だけだった筈だ。     印象に残るほど一緒に居たわけでもないし、なにかがあったわけでもない』 思い出ってさ、重要なとこしか記憶されてないもんだよね? 今ならギャルゲーの主人公が物事覚えてないのも頷ける気がするよ。 よ〜するにガキの頃に会った女のことなどどーでもよかったのだろう。 記憶を当てはめて見ても、衝突したのは数えるくらいにも満たない…… 実際、会ったのはこの一回だけだったし、猫と会ったのもこの日一日だけだ。 つーことはこの一日が終われば俺達は晦の時みたいに時間跳躍を実行され、 惨劇の当日へと転移させられるんだろう。 フフフ、ならば俺は今この時を精一杯遊ぶだけだぜ?……猫の姿で。 初芽 「しかし驚いたねぇ……介護の人が来たと思ったら猫又だったなんてねぇ……」 提督猫『我らの声は心の清い老人にしか聞こえません』 執事猫『現にあの小僧はナギーとの喧嘩に夢中で聞こえちゃいません』 初芽 「博光ちゃんには歳の近い友達が麻衣香ちゃんしか居ないからねぇ。     こうして遊べるのが嬉しいのかもしれないねぇ……。     わたしにはまだあんな元気な顔は見せてくれたことがないんだけどね……。     少し……寂しいねぇ……」 提督猫(うぅ……) 執事猫『おお!提督が罪悪感を感じてるぞ!』 忍者猫『笑顔くらいさっさと見せればよかったものを!このクズが!』 提督猫『う、うるせー!!まだ慣れてなかったんだからしょうがねぇだろーがー!!』 初芽 「あらあら……喧嘩はいけないよ。してもいいことなんてないんだからねぇ。     仲良くしなさい。それと、そんな汚い言葉を使っちゃだめだよ」 提督猫(うぅ……) 執事猫『おお!提督が言いくるめられたぞ!!』 忍者猫『すげぇ!あの提督が!』 提督猫『ほっといてぇえええ!!もうそっとしといてぇえええ!!』 なんということだろう……原中が提督たるこの博光ともあろう者が……! ばーさんの前では悪烈外道の限りを尽くせぬなど……!! 提督猫(ぬう……) でも馬鹿だから気にしないことにした。 提督猫『へっちゃらさーーーっ!!』 ……などと珍遊記のガンスの真似をしてる場合じゃなく。 ナギー『ギャーーース!!』 博光 「ふぎぃいいいーーーーっ!!」 どうしよう。 過去の僕と小娘ことナギーのバトルがヒートアップしてるんだけど。 どうやら周囲に害を及ぼさないようにって容姿相応の力に押さえられてるみたいだけど、 それでもナギーはマジである。 過去の僕に掴みかかっては叩いて叩かれの連続だ。 ああ……!こんな時僕はどうすれば……!───ハッ!そ、そうだ! 提督猫『さーはったはった!一口1ギミルだよー!』 とりあえずトトカルティッククライシス。 ちなみにギミルとはヒロラインで使われる遊びの賭け事用の金である。 正式名称“1ギミルコイン”。アイテムとして使うとLUCKがその日一日1あがる。 ラックは隠しステータスだから、普段どのくらいあるかなんて解らないんだけどね。 一日を明かして目覚めた時、その日のラックポイントが決められるらしいよ? 執事猫『お、おお〜〜っ!俺はナギーに1ギミルだぜ〜〜〜っ!』 忍者猫『な、なに〜〜っ!?ならば俺はナギーに1ギミルだぜ〜〜っ!』 黒猫 『そうはいくか〜〜っ!ここで俺がすかさずナギ子に1ギミルだぜ〜〜〜っ!』 神魔猫『ここは手堅くナギさんに1ギミルですね』 白猫 『提督……ここは貴様の実力を信じるぜ!ナギーに1ギミル!』 提督猫『えぇっ!?それって俺の弱さを信じるってこと!?』 つーか賭けになってねぇよこれ!! 提督猫『さ、参考までに……どうしてみんな僕に賭けないの?』 総員 『原ソウルを持たぬ貴様がヤツに勝てるわけがない』 提督猫『ウワー……』 即答で一斉だよオイ……。 とか言ってる間に、 博光 「う、うわっ!?なにすんだよー!」 ナギー『とったのじゃ───オォラァアーーーップッ!!』 博光 「《メキャアッシャア!!》ギャーーーーーッ!!!」 過去の僕はナギーに捕まり、見事なOLAPをキメられて絶叫していた。 そんな光景を見ていたら、 そういえば謎の小娘にとても痛い技かけられたなぁって記憶がふつふつと……。 あれぇ……この日からだったっけ……。 男女差別なんて、しても自分が泣きを見るだけだって踏ん切りつけたのって……。 なんて思ってる中、スルリと技を解いたナギーが過去の僕が立ち上がるのを待ち、 立ち上がってから再び組み合うと───すっかりお留守になっている足をスパァンと払う! 博光 「うわわっ!?《ダンッ!》あうっ!」 で、あっさりとコケた過去の僕の足を取ると己の両足でガッチリと挟み、 ナギー『スピニングダブルトゥホールドなのじゃーーっ!!』 なんと大胆にもダブルトゥホールドにチャレンジ!! だが所詮は女子供の脚力! あっさりと外されたナギーはその拍子にコケ、過去の僕に掴みかかられた!! 博光 「───」 ナギー『?』 だがなにもしない! ここで説明しよう!この時の僕の心境は─── “それでも女の子は男の子が守るものなんじゃ……”だった筈!! そんで確かそんなことを思った直後にゾブシャア!! 博光 「キャーーーッ!!?」 ナギーのサミングが炸裂!! さらにあまりの痛さに後ろを向いて屈み込んだ過去の僕に飛び掛り─── ナギー『カーフブランディングーーーーッ!!』 ドゴシャアアア!!! 博光 「ピッ!!」 ……カーフブランディングを見事にキメ、過去の僕をKOしましたとさ……。 ナギー『ナンバーワーーーン!!』 総員猫『………』 ああうん……思い出したよ僕……。 これで目が覚めた時には小娘と猫たちの姿が無くて、 俺はその時の悔しさを心にしっかりと焼き付けて、 相手が誰だろうが容赦など一切しない修羅になろうと誓ったんだった……。 そしてそれを原中大原則に記したのは他でもないこの博光だったのだ……。 どうして忘れてたんだろ……って、忘れたい過去だったからだろうね、うん。 提督猫『あの……ナギー?僕のこと嫌い……?』 ナギー『嫌いだったら一緒に居ないのじゃ。なにを言っているのじゃ?』 執事猫『……ナギ助さ、アレが提督のちっこい頃の姿だって気づいてねぇんじゃねぇか?』 忍者猫『知ってたとしたらもっとヒドイことになってるやもでござるよ。     なにせ相手が誰でも容赦するなって教えたの、提督殿でござるからな』 黒猫 『ちなみにこの後キミはどうしたの?』 提督猫『これがきっかけで誰が相手でも容赦しないことを誓って、     みんなで集い記した原中大原則に、     “相手が誰だろうが容赦することなく挑め”って書いた……』 総員 『あれってお前が書いたの!?』 原中大原則……その名のままの本には、 読むのも面倒なくらいの数字がびっしり書かれている。 かつて我らがそれに適当に決めた原則を書いてゆくという行事をしたことがある。 書かれた数字の何番目でもいいから自分が閃いた原則を書いてゆくというものだ。 一人ずつ適当なページを開いて適当な原則を書いていくから、 誰がどんな原則を書いたのかは基本的には解らない。 だから同じ原則が別の番号に書いてあることもあるわけだ。 当然俺以外にも俺と同じことを書いたヤツは居たわけだが…… 執事猫『そうか……まさかナギ助が原因であの原則が産まれたとは……』 忍者猫『ちっちぇぇえでござるな提督殿……』 提督猫『うるさいよもう!』 白猫 『けどそのお蔭で原中がなんでもありになったのは確かだよな』 黒猫 『男女差別があったままじゃ、     こうまで皆様と一緒に盛り上がれる集団じゃあなかったでしょうな』 神魔猫(それって喜ぶべきことなんでしょうか……) それぞれの言葉ののち、神魔猫……みさおちゃんが疲れた顔をしてたが気にしない。 何故なら僕らは今猫なのだから。 猫はあまり深いことは考えず、時間の流れすらも気にせずに気侭に生きるものなのだ。 ……でもせっかくなので僕らはあえてその逆を取りたいと思います。 何故ってそれが原ソウル。常識だけでは語れない。 そもそもこうして二足歩行でギャースカ騒いでる時点で、常識など超越してるわけですが。 執事猫『じゃ、そろそろ話戻そうか。介護ってなにすりゃいいんだ?』 提督猫『それは───ばーさんの手伝いに他ならないんだよ!!』 総員 『な、なんだってーーーっ!!』 忍者猫『じゃあ腰を痛めている初芽殿の手伝いをすればいいわけでござるな?』 神魔猫『あの……今のなんだってーの意味は……』 黒猫 『なんにでも意味を求めるのってよくないことだと思うな、僕』 忍者猫『そうでござるよ、提督を見るでござる。     日々特になにも考えずに墓穴を掘って恥を晒しているでござるよ?』 提督猫『いやあの……ここで僕関係無いよね?』 執事猫『今大切なことはなんだ?ばーさまに夢を与えることじゃねーか。初心に帰れ。     お前あの頃あんなにキレイな瞳していたじゃないの』 提督猫『お前は俺の過去の何を知ってんだァアアア!!あの頃っていつ!?     つーかそれって今の俺の瞳が死んでるってことじゃあねぇかァアアア!!』 黒猫 『いぃやぁあ〜?今の目もキレイだぞ〜?それはそれはキレイな桃色だよ。     ヤバイくらいに桃色だよ。引き返せないくらいピンクだよ』 提督猫『テメェエエエエ!!そりゃエロか!?俺の目がエロ色ってことかコラァア!!     もうやめよう!ほんともうやめよう!エロ話に無理矢理繋げるのやめて!』 黒猫 『バッキャロォオオオ!もっと自分の個性に自信を持ちやがれ!!     日々興奮し猛っていたあの頃の自分を今こそ取り戻せ!     貴様からエロを抜いたらただの提督じゃあねぇかァア!!』 提督猫『だからそれでいいって言ってるでしょォオオ!?     自分がホモと言われ続ける状況をよく考えてみろってオイィイ!!』 黒猫 『ッ……今貴様が苦しむのなら呼ばれて本望!!』 総員猫『おお匠!!』 提督猫『妙なところで男気見せんなぁああっ!!』 初芽 「こぉれ……っ!喧嘩してはダメだって言っとるだろう……!」 総員猫『はうあっ!』 閑話休題。 目的を忘れるな僕ら。 えーと……そうだ介護だ。 我ら猫の力を今こそ集いて道を切り開こう!! ではまず差し当たり─── ───……。 ……。 デェ〜ンテケテケテテンテンテンテンッ♪ デェ〜ンテケテケテテンテンテンテンッ♪ デケンテデケンテテケンテテケンテ・テレレレレレレレンッ♪キンコーン♪ 総員猫『ゴニャァ〜〜ウニャッ!』 メシを作ってみました。 掃除はしたし買出しにも行った。 悪質キャッチセールスは二度とここらヘン歩けないように地獄を見てもらったし、 脅威となりそうなものはあらかた片付けた。 ───それでいい。 今どれだけ足掻こうが、明日……いや、 早ければ今日にでも俺達は“あの日”に飛ばされる。 ここで起こした物事は絶対に、辿る道を妨害するようなことにイコールしないし、 ルドラが関与している以上それは絶対に在り得ないだろう。 彼がなにをしたいのか。 それが、今の俺にはなんとなく解るから。 でも、だからってこの行動を選ぶわけじゃない。 俺は“こんな時が来たなら”と、頭の中で何度も過去を振り返っていた。 だからすることなんて決まってる。 提督猫『よっしゃ〜〜っ!では運ぶぜ〜〜〜〜っ!!』 執事猫『お待ちくださいサー!突然ですが異様に気になることが!』 提督猫『ぬう何事か執事猫よ!』 執事猫『今自分らが猫だから言うんだけどさ。     もし猫飼うことになったら名前なんてつける?』 黒猫 『ブラックダダーン』 白猫 『弧陽(こかげ)』 神魔猫『シラセ』 忍者猫『ドルバッキー』 提督猫『ミナガルデ』 ナギー『ドスコイカーンなのじゃ』 総員猫『それはやめとけ』 ナギー『何故なのじゃ!?』 執事猫『とりあえず猫からしてみれば、     この中の誰が名付け親になってもろくなことにならないってのがよく解ったよ』 黒猫 『そういう貴様は?』 執事猫『え?ゴリライウォン。言ったろ?“この中の誰が”って』 なるほどろくでもねぇ。 提督猫『ではそろそろ行くぜ〜〜っ!!』 忍者猫『ちょっと待つでござる提督!拙者も気になることが!』 提督猫『な、なに〜〜〜っ!なんだというのだ貴様ら〜〜〜っ!!』 忍者猫『犬を飼うとしたらなんと名付けるでござる!?』 黒猫 『ゲッペタン』 白猫 『佩倣(はくほう)』 神魔猫『ノブ』 執事猫『ヒゲリン』 提督猫『ドントルマ』 ナギー『フビラインカーンなのじゃ』 総員猫『それはやめとけ』 ナギー『だから何故なのじゃ!?』 忍者猫『やはりろくな名前がないでござるな……。ちなみに拙者はクインキーでござる』 黒猫 『ドルバッキーといい……ゾンビパウダー?』 忍者猫『そういう貴様はとんねるず』 提督猫『執事猫は世紀末リーダー伝か……』 執事猫『そういう提督はモンスターハンターだな』 神魔猫『父さまは思いつきですか?』 白猫 『そうだけどな……どうしてお前は白瀬矗かな……』 神魔猫『いえ……ただなんとなくなんですが』 ノブ?…………誰? ちなみにミナガルデはモンスターハンターの街の名前で、ドントルマもまあ街の名前。 ミナガルデの名前、大好きです。 提督猫『そんじゃあそろそろいくぜ〜〜〜っ!!』 黒猫 『ま、待つんだ提督〜〜〜っ!!お、俺も気になることがあった〜〜〜っ!!』 提督猫『捨ておけ』 黒猫 『ええっ!?俺だけダメなの!?』 白猫 『どうしてレタスは美味いのかとかしょうもないことだろどうせ』 黒猫 『違いますよ失礼な!あたしゃただ泣きながらごはん食べると美味しくない歌がどう     して武蔵ロードのエンディングテーマに選ばれたのかが疑問でね!?』 提督猫『じゃ、いこうか〜』 総員猫『お〜』 黒猫 『アレェ!?ちょっと待ってなにそのとんでもなくやさしい顔!!     やさしいのに無視!?え!?アレ気にならねぇ!?俺すっげぇ気になるよ!?』 白猫 『代弁して答えてやるとだな……』 黒猫 『オ、オウヨ』 白猫 『……いい歌を歌ってくれる人が居なかったor監督が適当に選んだ』 黒猫 『ア……ゴメンナサイモウイイデス……』 どっちにしろ悲しすぎる事実だなぁ。 なんにせよ料理が冷めてしまわないうちにさっさと運ばないとな。 提督猫『運送だぁーーーーっ!!』 総員猫『Yah(ヤー)ーーーーーッ!!!』 我ら猫、一丸となって料理を運びます。 なんだか酷く沈んだままの黒猫をそのままに。 ……ちなみに言うと、過去の僕は気絶したまま放置状態である。 ばーさんが毛布かけてくれてあるけど、目覚めたりしてない。 それはそれでありがたいけどね。 ───……。 ……。 ……掃除、料理、草刈、害虫駆除、水撒きなどなど…… やることをやり終えてみると、 当たり前って言やぁ当たり前なんだが本気でやることが無くなった。 だから我らはテレビをつけて当時のアニメだのドラマだのを見ているんだが…… 黒猫 『なぁ中井出よ。     こげなところでTV見てないでばーさまとかと思う存分話してくれば?』 彰利にしてみれば、俺がここでテレビを見ていることは疑問を抱いてしまうことらしい。 見れば、晦もみさおちゃんもナギーも同じような顔をしている。 というか俺を見ながらコクコクと頷いている。 提督猫『ホホホやだ』 だが断ったね!この博光は!! 黒猫 『何故?』 提督猫『何故って……貴様が普通に返してくると逆に不気味だよな……』 俺にしてればそれこそが疑問を抱く瞬間だった。 見れば、晦もみさおちゃんもナギーも、藍田も丘野くんも同じような顔をしている。 というか彰利を見ながらコクコクと頷いている。 黒猫 『ヒ、ヒドイ!なんてヒドイ!!たまにはいーじゃねぇかよぅ!     でも僕知りたい。何故貴様はルドラに選ばれるほどの後悔を胸に、     会いたかった筈のばーさまやじーさまともっと積極的に話さないの?』 白猫 『……やっぱりこれはルドラの仕業なのか?』 黒猫 『他に思い当たるヤツがおらんよ。     時間操作っつーたらゼクンドゥスだろうけど、物事にあまり興味なさそうだし。     そもそも中井出の過去を探る理由が解らん』 神魔猫『……ですよね』 提督猫『キミタチ……本人を前になんてヒドイことを』 僕の過去は見る価値がないと? や、そりゃ重要性なんてねぇんだろうけどさ。 黒猫 『それだけ疑問に思っておるということじゃよ。実際どうなん?     俺だったら過去の大事な人には会って思いっきり話したいって思うけどね』 提督猫『や、そりゃ思うだけなら俺もだぞ?でも自分が自分だ〜ってこととか、     未来から来たのだ!とかいうのは話したいとは思わないなぁ』 黒猫 『何故!?それが解らんというのだよ!!』 提督猫『フフフ、知りたがり屋は早死にするぞ』 黒猫 『グ、グゥムッ……』 どうにもならんことはある。 過ぎ去ったことはしょうがない。 でも少なからず落胆したのは確かで……けどまあ、嫌いになったかって言ったら全然だ。 裏切る時は相手から。それが俺の生き方だ。 自らの意志で望むべきことをやったんだ、アレは裏切りなんかじゃない。 誰だってそーするだろうし俺だってそうしたいとは思うさ。 黒猫 『そんじゃあキミはこのまますぐに後悔の瞬間に辿り着いてもいいと?』 提督猫『ああ。二人の元気な姿を見れただけで俺は本当に満足なんだよ。     このまま帰ってもいいくらいだ』 黒猫 『本当にええの?だってお前……』 執事猫『まあまあいいじゃあねぇかよぅ。提督のことは提督に任せるのが一番さ』 忍者猫『言ったでござろう?提督のことはほっとくべきだと』 黒猫 『ぬう……』 ナギー『意地は張っておらぬか?我慢してるように見えるぞ?』 提督猫『じ、実はここに来る前から便所を我慢していて』 神魔猫『どれだけ経ったと思ってるんですか!行くならさっさと行ってください!!』 提督猫『ありがとうみさおちゃん!というわけでさらばだぁあーーーーっ!!』 黒猫 『あっ!て、てめぇ!!』 みさおちゃんの言葉を励みに逃走を実行! こんなところに居ては延々と質問責めにされてしまうわ! 黒猫   『みさおさん!なんてことを!千載一遇のチャンスを逃すとは!』 神魔猫  『どんなチャンスですか!       大体自分が知りたいことをごちゃごちゃ訊くこと自体が間違いなんですよ!』 執事猫  『そうだこのクズ!』 忍者猫  『そうだ貴様はクズだ!クズだ!クズだ!!』 白猫   『いや、そこまで言うことじゃないだろ……』 執事猫  『だったら貴様もクズだ!クズだ!!クズだ!!!』 忍者猫  『猫の風上にも置けねーでござる!!』 黒猫&白猫『猫関係ねーだろオイィイイ!!』 背後にそんな絶叫を受けながら、 僕は行きたいわけでもなかった便所へと逃げ出したのでした。 そしてしばらく考え事をしようという意志を抱きつつ、 ガチャアとW・Cの扉を開けたのだった……!! 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