───天地無用/真夏のバーストエラー───
【ケース482:中井出博光(超再)/神曲奏界ボルカニカ(再)】 パチパチパチパチ…… 中井出「Congratulation(コングラチュレーション)…………!!」 丘野 「Congratulation…………!!」 彰利 「おめでとう…………!」 悠介 「的中おめでとう…………!」 藍田 「やめろてめぇら!いつまでカイジ顔で拍手してんだよ!!」 そんなこんなで蒼空院邸の客間に居る僕ら。 もちろんただ居るだけじゃなく、ねちっこく拍手をしていたりします。 ……カイジ顔で。 中井出「Congratulation…………!!」 丘野 「Congratulation…………!!」 彰利 「おめでとう…………!」 悠介 「的中おめでとう…………!」 藍田 「解ったって言ってるだろ!?もういいから櫻子さん来るまで普通に待てよ!!」 櫻子さんを待つ、というのも、現在この場に櫻子さんが居ないからである。 何処に行ってるのかっていえば、 自分の部屋につい先日届いたらしい荷物を取りに戻ってるのだ。 その荷物がなんなのかは……まあ、サンタになってほしいって言葉だけでも想像がつく。 ……っと、噂をすればなんとやらだ。 櫻子 「あらあら待たせちゃったみたいね。はい、これがそうよ」 説明もされないままに“これがそうよ”と言われてもな、と…… きっとこの場に居る全員が思ったことだろう。 この場に居る全員ってのは俺、藍田、丘野くん、晦、彰利、みさおちゃん、ナギーだ。 他のやつらは晦の部屋でノート先生に能力行使について教えてもらってるんだとか。 藍田 「……あー……あのさ、俺やっぱみんなと一緒にご教授してもらってきていいか?」 丘野 「拙者もなんだか落ち着かんでござるよ。     サンタはサンタで気になるんでござるが……」 悠介 「ああ、行ってきたほうがいいと思うぞ。で、間に合うんだったら来ればいい」 彰利 「そうそう。我らの知らん間に人が空界人になったとか、     そげなこと説明されちゃあキミたちも当然気になってしゃあないデショ」 藍田 「まったくその通りだよ」 丘野 「というわけで、もし授業が早めに終わったら落ち合うでござるよ」 中井出「うむ。月詠街の外れの孤児院に居るから、そっちでな」 藍田 「サーイェッサー!!」 丘野 「サンキューサー!!」 どたたたたたた……!! 藍田と丘野くんがパーティーから外れた!! 僕らは走り去る藍田と丘野くんを見送りつつ、 あらあら元気ねと言ってる櫻子さんへと向き直った。 しかし向き直りつつも気になることはヒソッと話す。 中井出(誰か他に用があるヤツとか居ないのか?) みさお(わたしは調律者らしいですから、特別受ける説明はありませんしね) 悠介 (俺も神にはなったが、使える能力は創造だけのままだしな) 彰利 (オイラは前から黒だし。ナギ子は?) ナギー(ナギーじゃと言うとろうに……。わしは別に訊きたいことなぞないのじゃ。     そんなことをしていてヒロミツに置いていかれる方が怖いのじゃ) 彰利 (キョホホ……すっかり懐かれてやがるぜこのエロが。ところで何故怖いの?) ナギー(わしの知らんところでヒロミツだけ面白いことをするのが嫌なのじゃ) 総員 (ああ……原中だ……) まったく素直に捻くれて育ってくれたもんです。 だが僕はそれが嬉しい。 だから皆さん、どうすんだよオイ……って目で僕を見ないで。 中井出「して、櫻子さん。これはいったい?」 櫻子 「あら。サンタで解らなかった?これよこれ。サンタの服」 白く大きな布袋からゴゾォと取り出され、広げられたのは赤と白の布地。 僕らがよく知るサンタ装備だ。 中井出「ところで知ってるか貴様ら。サンタ服って元々青とか黄色だったんだぞ?」 総員 『キモッ!!』 彰利 「でもその話なら知ってるぜ〜〜〜っ!!     赤になったのはそう遠い昔じゃあなかったとか」 悠介 「赤になったのはコカ・コーラが関係してるとかしてないとかって話があったな」 櫻子 「あら、よく知ってるわね。でも今さら青とか黄色にしても仕方ないじゃない?」 中井出「あえてそこに挑戦したい原ソウルが燃え盛っているのですが……」 櫻子 「そうなの?だけどねぇ、     シズノさんが送ってくれた服を染めるわけにもいかないでしょう?」 ええ……それはそうなんですけどね。 彰利 「そんで、サンタ役は誰?中井出?」 中井出「いや、ここはアレだ。意外性を突いて晦で」 悠介 「おぉおっ!?俺ぇえっ!?」 みさお「ヒゲもありますけど?」 悠介 「なんの迷いもなく勧めるなよ!」 ナギー『ヒロミツはやらんのか?……というかそのサンタとはなんなのじゃ?』 彰利 「ぬ、ぬう……サンタ……」 ナギー『し、知っておるのか雷電……!』 彰利 「……ほんに普通に雷電で返せるのね……。ともあれ、さ、サンタとは……!     子供にプレゼント配って飛ぶ赤服白ヒゲダンディのことなのだ……!」 ナギー『な、なんと……!そのプレゼントは無料なのかの!?』 中井出「うむ!なにせプレゼントだからな!」 ナギー『……わ、わしも貰えるのかの?』 中井出「貴様が“子供”ならばな」 ナギー『………』 あ、固まった。 自分を子供と認めるかどうかで心の中に葛藤が誕生したらしい。 中井出「でも白ヒゲなら晦が似合ってるかもな。白の秩序になったんだろ?」 悠介 「………」 物凄く嫌な顔をされた。 だが恐らく彼はノってくる。 何故なら一度芽生えた原ソウルは、燻る心などを長続きさせてくれはしないのだ。 悠介 「……わ、わわわ……解ったよやってやる!!」 みさお「え?本気ですか?」 悠介 「おぉおい!?勧めといて戸惑うなよ!     戸惑いたいのはこっち───つーか現在進行形で戸惑ってるよ!!」 彰利 「じゃ、アレだ。     トナカイ役は俺が体変形させてやるとして……やるなら徹底的だぁね。     ソリで空も飛べるようにしといたほうがいいやね」 中井出「プレゼントもその中に入ってたりするの?……あ、見せてもらっていいすか?」 櫻子 「ええ、もちろんよ」 ゴサ、と大きな袋が渡される。 少し重い程度で、プレゼントが入ってるとは思えないな。 ……プレゼントじゃないなら何が入ってんだ? サンタ服は晦が持ってるし…… 中井出「ん〜……《ゴソゴソ……ゴサ》おぉっ!?」 袋の中にはもう一着!! しかも赤服ではない色の服が!! ……黄色とか青色があったとか言ってた矢先だよオイ……。 ここにこんなにもスバラシイ色が……! 中井出「……えーと、プレゼント入ってないけど、どうするの?」 櫻子 「お金をいただいてるわ。     ささやかだけど、これでプレゼントを買ってほしいそうよ。     一応さりげなく欲しいものを聞いて、メモしたらしいけど……ああこれがそうね」 中井出「うえっ!?お、俺達が買うの!?」 櫻子 「ええそうよ。もちろん、メリケンサックはだめよ?」 中井出「い、いや……あれは誕生日以外にやるつもりはないので……」 櫻子 「あらそう?……ああそうそう、特攻服と棍棒もダメですからね」 中井出「………」 俺ってそういう目で見られてたのか……なんと嬉しい。 言われなかったらやってたかもしれない自分が怖ェエ。 しかし資金は孤児院から出されるんだよな。 そうそう高額なわけがないし……よし、ならばここはアレだな。 金のかからん方法で何かを掻き集め、それをプレゼントするとしよう。 中井出「じゃ、一応格好だけでも準備しとくか?」 サンタ「既に完璧だ」 中井出「うおゎっ!……つ、晦か?」 振り向けばサンタ。 赤と白の服を着たスリムなサンタがそこに居た。 しっかりと帽子もヒゲも白マユゲもつけている。 彰利 「スリムだなぁオイ……なにか詰めなきゃすぐバレるぞ?」 サンタ「……だな。それはこっちでなんとかするからいいが。     お前たちはどうするんだ?流石に普段着のままサンタと一緒に来たら、     子供の夢壊すだろ。マスオサンタの如く」 彰利 「そうじゃねぇ……オイラはトナカイに変化するからえーけど、中井出、貴様は?」 中井出「あ、それなら大丈夫だ。こっちにもう一着サンタ服があったから、     兄弟サンタってことで入場しよう」 彰利 「あらそうなん?着てみせれー」 中井出「フフフ、そう焦るな。詰め物みたいなのもあるし、     今すぐデヴサンタを見せてやるさ」 そう言うと俺は、華麗なるメタモルフォーゼを見せるべく物陰に隠れ、 ゴソゴソとサンタ服を着ていったのであった……!! ───……。 ……。 で…… 彰利 「ギャーーーーッ!ドロボーーーーッ!!」 物陰から出てきた俺を見た彰利の反応はこれだった。 黒サンタ「あの……櫻子さん?どうして……      サンタのプレゼント袋の中に泥棒衣装が入ってるのかな……。      俺てっきり昔のサンタにちなんだ黒サンタ服かと……」 櫻子  「あらあら……そういえばこの間、孤児院で泥棒が来たらどうするか、      っていう劇をやったとか言ってたわ……。      きっとその時の衣装まで間違えて入れちゃったのね……」 腹や胸などの部分に詰め物をした僕はまさにデヴサンタ。 ……になる筈だったのに、何処で間違えたのか、衣装が泥棒ルックだった。 黒サンタ「ヤバイよコレェ……誰かに見つかったら一発アウトだよ……即通報だよコレ」 なんで悪いことしてるわけでもないのにこんなにドキドキしなきゃならねーんだ……。 彰利  「いいじゃん。逆に黒サンタって珍しいって言ってガキどもに大人気かもよ?」 黒サンタ「え?そ、そう?……でも黒って怪しい印象受けねぇかな」 彰利  「いやいいよシックな感じで。やっぱ締まって見えるよ黒は。      落ち着いた印象を受ける。そして何故だかソワソワする。      戸締りちゃんとしなきゃって言う。何故か」 黒サンタ「それ泥棒に見えてんじゃねーかよ!!      大体この間孤児院で泥棒対策用の劇で使われたんだろーがコレェエ!!      見つかったらもうそれでアウトだよ!アウトどころかゲームセットだよ!!」 彰利  「いや……違うぜ中井出……いやさ提督。      夢を与えるのは“格好”じゃねぇ……気持ちだろ?」 黒サンタ「だとしてもそもそもこの格好に夢を与える資格がねーって言ってんだよ!!      奪うほうだろコレ!夢奪っちゃうよ!夢も希望もないよ!!」 彰利  「いいっていいって。      むしろオイラも黒トナカイにしかなれねぇし、丁度いいじゃん。      ……言ってる意味が解るね?」 黒サンタ「なるほど、晦を異端サンタにしようってハラか」 彰利  「その通りだ」 みさお 「悪巧みに関する物解り速度が尋常じゃありませんね……」 もちろんだ! だがそういうことなら俺も黒サンタで居る甲斐ってものがあるというもの!! 問題はナギーとみさおちゃんをどうするかなんだが…… 黒サンタ「ナギーとみさおちゃん、どうする?」 櫻子  「それならこうしてみたらどう?      みさおちゃんと……ナギーちゃん、だったかしら?      その子は先に孤児院に行ってもらって、      子供たちが寝静まるまでお手伝いをしてもらっておくの。      それで、暗くなってから頃合を見て、サンタさんを招くの」 彰利  「オッ……そりゃあいい。      内部犯というか、仲間が相手側に居れば怖いものはねぇぜ?」 みさお 「どうしてわざわざ嫌な言い方しますかね……      素直に手伝いに行く的な言い方は出来ないんですか?」 彰利  「なに言ってんだ、中井出なんてこんな格好でプレゼント配りに行くんだぞ?      言い回しがなんだ、あらかじめ内部に潜入して鍵開けて招くくらいなんだ。      それともなんだ、お前アレか?中井出の代わりに、      もう夢を与えるっつーか奪いに行くような格好したいのか」 みさお 「いえその……我が儘言ってすいません……内部犯でいいです……」 彰利  「だろ?今時こんな勇者居ねーよ。      この格好だけで勇者だよ。存在自体がスリルだよ。      こんなに隣に居て居心地悪く感じるサンタ初めてだよ」 黒サンタ「目の前で何処まで辛辣なんだテメェ」 サンタ 「まあまあ。口論よりもまずプレゼント探しだろ。      言っておくが俺はプレゼントだとかそういったものはとんとダメだぞ。      センスというか、選んでいいものを引き当てた試しがない」 そりゃ素直にすげぇ。 俺は………………俺も無いかも。 黒サンタ「俺ゃちょっと猛者どもを当たって、      家になにか要らない思い出の品でもないかって訊いてくるわ。      なぁにどうせ死んだことになってるんだから今さらなにをどうしようがOKさ」 彰利  「おお外道だな黒サンタ。外見と同じく中まで真っ黒だな。      でもその案ステキ。僭越ながらこの彰利一等兵からはこの、      高校不良時代に書いた俺著、尺取虫観察日記を贈りましょう」 黒サンタ「あ、あのさぁ。なんで観察日記なの?過去も含めて」 彰利  「いやぁアタイ結構観察日記好きでさ。      寝てる悠介観察日記ってのもあるよ?写真付きのやつ。      高校不良時代に一冊目から六冊目までは若葉ちゃんに没収されて、      それ以降返してもらえてねぇけど」 サンタ 「なにやってんだあのたわけは……」 本当になにやってんでしょうね、キミの元義妹は。 ……っと、ここで話してたらそれこそすぐにでも夜が来るな。 さっさと猛者どもと話をつけてこないとな。 【ケース483:中井出博光(お惣再)/暗黒サンタ様】 ガラガラガラガラ…… 黒サンタ 「なんか……」 黒トナカイ「違くね?」 今日はここ、夜の月詠街からお伝えします……こんにちわ、中井出博光です。 あれから様々な猛者の家に侵入してはブツをかっさらって早数時間。 とっぷりと夜になった月詠街は土地の治安の悪さもあってか静まり返っています。 治安の悪さっていっても、 殺人鬼がうろついてるとかがあったのは未来凍弥の時間軸での話だが。 それでも月詠街では夜は出歩かないっていうのは暗黙のルールだったのだ。 そんな闇の中を、黒トナカイこと彰利が引くリアカーの上に乗った 黒サンタな僕とノーマルサンタな晦が今日もゆく。 今日もどころかこんな痴態さらすの今日が初めてだよまったく。 黒サンタ 「オイオイヤバイよコレ、どっからどう見ても闇を駆ける黒い人だよ」 黒トナカイ「なんでソリじゃなくてリアカーなんだよ僕の親友……。       お蔭でトナカイじゃなくて角の生えた       全身黒タイツの人間にならなきゃいけなくなっちゃったじゃねーの」 サンタ  「タイツに俺は関係ないだろ!       大体着てる服がそんな黒いタイツみたいなモノって時点で       もう引き返せないところまで行ってるんだよお前らは!」 黒トナカイ「テメェエエ!友人が恥辱味わってるってのに自分だけノーマルか!       赤と白が好きなんか!ショートケーキが大好物かコラァ!!       つーか引き返せないとか簡単に言うなァ!まだ大丈夫だよ俺!       少なくともそこの黒デヴサンタよりはライン越えなんかしてねーよ!」 黒サンタ 「あっ!トナカイてめぇ!       トナカイのくせに主人に楯突こーってのかコラァア!!」 黒トナカイ「いやもうお前はそれでいいよ。       黒くてもサンタだって信じてればきっと誰か信じてくれるし、       そうなればそれもちょっとしたオチャメだったって解ってもらえるさ。       ホラ、思春期特有のちょっと偏った思考が齎した珍体とかで片付くだろ。       もしくはホラアレだよお前。ちょい悪オヤジだよ。少し前に流行った。       片足泥に突っ込んでるくらいの方が今の時代ちょいモテオヤジだよ」 黒サンタ 「ちょいワルじゃないよこれは!       片足どころか全身泥につかってるよ!泥のついた棒だよ!       つーか少し前に流行ったんなら今はただの泥棒じゃねーか!!」 それでも脱がないのはもはや意地だ。 ここまで来たらもうやるっきゃねーだろオイ。 サンタ  「……お、孤児院見えて来たぞ」 黒サンタ 「どれ、いっちょ子供たちに夢を与えてみますか」 黒トナカイ「どのツラ下げてそんなこと言えるんだ」 黒サンタ 「うるさいよ!全身黒タイツでリアカー引いてるトナカイに言われたくねぇ!」 それでもソリ……じゃなくてリアカーは進んでゆく。 そして、とうとう孤児院の裏口へと辿り着いてしまった。 シズノ  「ああ、ようやく来たヒィッ!?な、なんだいその格好は!!」 黒サンタ 「しーっ!しぃいいーーっ!!子供達にバレるでしょ!」 サンタ  「バレずに何盗む気なんだよお前」 黒サンタ 「盗まねぇよ!!与えに来たんだろうが俺達!!」 黒トナカイ「こ、これっ……そげに大声出したらっ……」 ……と、注意された時にはもう遅かった。 パッ、パパッ、パッ─── 見ればたちまち明かりが点けられてゆく孤児院内!! そして中の方で動き回る子供たちの影!! 黒サンタ 「ヤベェエエエエエ!!       でけぇ声出しすぎたァアアアアア!!」 黒トナカイ「その声がでけーよ!この声もでけー!!」 シズノ  「ああもうなにやってんだい!いいから隠れるんだよ!!」 黒サンタ 「え、いやあのここで隠れたらなんか余計に泥のついた棒みたいなんだけど」 シズノ  「今さらなに言ってんだいそんな黒い服着て!       どっからどう見ても泥棒以外の何者でもないでしょ!!」 黒サンタ 「いや……これアンタが送ってきたんだけど……」 いきなり前途が多難だった。 ───……。 ……。 みさお「はぁ……頼みますよ?ただでさえなかなか寝てくれない子たちなんですから」 そうして待つこと十と数分。 ようやく静まった孤児院内を覗いては、ハフゥと安堵の息を吐いている僕ら。 騒ぎを聞きつけて合流したみさおちゃんはそれはもう盛大に溜め息を吐いている。 ナギーは子供たちと燥ぎ周り、疲れて寝てしまったそうだ。 黒トナカイ「んじゃまずどれから行こうかね」 黒サンタ 「ゲーム機とかそーいうの期待してるずうずうしい奴はナシ。       けん玉とかそーいう大人の事情を解ってる奴」 サンタ  「あーそりゃ同感」 黒トナカイ「お前らホントに夢を与える資格あんの?」 みさお  「あ、でもけん玉でしたら欲しい子が居たような───」 みさおちゃんが懐から出した欲しい物リストのページをめくってゆく。 それはしばらく続き、しかし突然ピタリと止まると、 みさお  「あ。ありました。辰児くんって子です。けん玉───」 黒トナカイ「……と、キレイなねーちゃん」 総員   『………』 冷たい空気が僕らを撫でていった。 サンタ  「どんなマセガキだよ……」 黒サンタ 「希望が二つあるなんてけしからん。他は?けん玉関係」 黒トナカイ「だからなんでけん玉なんだよ」 黒サンタ 「アレだよ、けん玉ブームが来ると予見して多目に持ってきた。       ヤマが外れたんだよ……去年の韓流ブームは当たったんだけどね?」 黒トナカイ「韓流ブームなんてどうやってプレゼントしたんだよ……あ、あった。       オイオイ案外けん玉ブーム来てんじゃあねぇの?」 みさお  「すみれちゃんですね。けん玉……」 黒トナカイ「……と、ダンディなお兄さん」 総員   『………』 冷たい空気がやっぱり僕らを撫でていった。 サンタ  「ハイ次……けん玉関係」 黒トナカイ「無言でスルーかよ!つーかもういいだろけん玉は!!」 黒サンタ 「うるせーなァアア!!ぶっちゃけ今年はけん玉しか持ってきてねーんだよ!」 サンタ  「もうけん玉にかけるしか俺たちにはねーんだよ!」 黒トナカイ「オメーらただのけん玉くれるオッサンじゃあねぇかァア!!       ってあった!懲りずにまだあったぞけん玉希望!!       つーかてめぇらなんなの!?なんでけん玉しかねーのよ!!」 黒サンタ 「猛者どもの家からいらないものをもらってくる予定だったんだけど       全員が全員いらない思い出の品がけん玉だったんだよ!!」 サンタ  「少ない金で買い物行ったら       予算内で買えるものが安売りのけん玉しかなかったんだよ!!」 黒トナカイ「子供の夢ぶち壊しまくりじゃあねぇかァアア!!       けん玉あげるだけならサンタじゃなくても出来るだろオイィ!!       今確信したよお前ら子供に夢与える資格ねーよ!!」 黒サンタ 「うるせぇ!全身黒タイツの変態トナカイに言われたくねーよ!!」 サンタ  「無意味にマッチョすぎなんだよ気色悪ぃ!!」 黒トナカイ「テメェエエ!デケェ声で言うんじゃねぇ!       こんな時だけマッスルに象ってるって知れたらコトだろうが!!」 黒サンタ 「てめぇで全部バラしてるだろうが!!」 響く絶叫! パッ、パパッ、パッ…… そして瞬く孤児院の電灯!! 黒サンタ 「ヤベェエエエエエ!!       でけぇ声出しすぎたァアアアアア!!」 黒トナカイ「その声がでけーよ!この声もでけー!!」 シズノ  「あぁんたらぁあ……!!いい加減におし!!」 黒サンタ 「え!?いやちょっ……ギャアアーーーーーッ!!!」 ズゴシャア!ドカバキ!ドゴゴスバキッ!ドゴッ……!! ───……。 ……。 シズノ 「はぁっ……!いい加減にしなさいよ、こんな夜中に……。      ご近所の迷惑も考えなさいよ……何があったのか知らないけどさ」 黒サンタ「いや……アンタにボコボコにされたんだけど……」 うおお顔面痛ぇ……!強いよこの人……! 間違い無くご婦人界ナンバーワンの実力の持ち主だよ……! シズノ 「大体なんだいその格好は。夢与える気あんのかい?      それじゃあ奪ってく格好だろうに」 黒サンタ「だからこれアンタが送ってきたものだって言ってるでしょォ!?      着る俺も俺だけどそもそもこんなもん      間違えてでも送ってくるほうがどうかしてるっての!!」 シズノ 「とにかく。やっと寝静まってくれたから、今度こそ上手くやるんだよ?      今度失敗したら殴るからね」 黒サンタ「これ以上どこまでボコボコにするってんだよ!!」 パッ、パパッ、パッ─── 黒サンタ「ヤベェエエエエエ!!      でけぇ声出しすぎたァアアアアア!!」 シズノ 「アァンタはぁああああああっ!!!」 黒サンタ「えぇ!?ちょっと待って!      今のはアンタが叫ばせるようなことギャアアーーーッ!!」 ドゴゴシャバキゴキガンゴンガン……!! ───……。 ……。 シズノ 「いいかい……!これが最後とは言わないけどね……!      やるからには真面目にやんなさい……!」 黒サンタ「ワガガガガ……!!」 解ったって言おうとしたけど口が痛くてまともに喋れん……! でもありがとうヒロライン。 その傷もあっという間に癒えました。 黒サンタ 「仮にもサンタをここまでボコボコにするなんて普通じゃねーよあの人」 黒トナカイ「その格好で言うと“仮にも”って言葉がすげぇ説得力だな」 黒サンタ 「てめーにだけは言われたくねぇぞ二足歩行のマッスルトナカイ」 サンタ  「まあ、いいから。今度こそ成功させよう。       けん玉しか無くてもプレゼントする気持ちが大切なんだ」 黒サンタ 「いや……集めといてなんだけど随分こっち勝手な大切な気持ちだな……」 サンタ  「それを言うなよ……」 ここまで来たらしょうがない。 俺達は一度頷くと、みさおちゃんの導きのもとにようやく動き出した。 予め開け放ってあった建てつけが悪いらしい裏口の引き戸を通り、 孤児院の廊下を静かに歩いてゆく。 抜き足差し足忍び足……! 子供を起こさぬよう細心の注意を払いながら夢を運ぶ修羅……これぞサンタ! 黒サンタ (ククク……!やっとサンタらしくなってきたな……!) 黒トナカイ(アンタ今の自分の姿見てみろ。コソドロ以外のナニモンでもねーよ) みさお  (ヘンなこと言ってないで。ここですよ) サンタ  (おお、ここか) 案内された場所は広い雑魚寝部屋だった。 そこに大勢の孤児が布団を敷いて眠り、すやすやと規則正しい寝息を立てていた。 黒サンタ (プックック、幸せそうに寝てやがるよクックック。       渡されるのがけん玉とも知らずに寝てやがる) 黒トナカイ(夢届けたいのか絶望届けたいのかどっちだよ) サンタ  (じゃ、どいつからプレゼントしようかな) 黒トナカイ(順番がどうでも結局けん玉なんだろーが!       出し惜しみみたいなことしてないでさっさと配ろ!?ね!?) 黒サンタ (慌てるんじゃあありませんベン。       こういう時は小さい子から順々にあげるのがサンタ的なんだよ) ゴリャア!! ナギー 『ふぎゃあっ!?』 黒サンタ(ホワッ!?) なんたること!遠くの子供のもとへ行こうとした第一歩が、 すぐ近くで寝ていたらしいナギーの手をゴリャアと踏んでしまった! ナギー『な、なに《がばしっ!》むぐっ!?う、うー!うー!《ゴキャア!》うぴっ!?』 …………ガク。 騒ごうとしたナギーの首を静かにコキャリと回し、黙らせた。 すかさず周りの子供の様子を確認……OK、起きた子供はゼロだ。 黒サンタ (危ねぇ危ねぇ……危うく子供の夢壊しちまうところだったよ……) 黒トナカイ(今のどれを見て壊してないって判断しろって言うのキミ……) 黒サンタ (姿を見られなきゃサンタはまだサンタなんだよォ。       アレだよ?サンタなんて姿を見られるからパパだって認識されちゃうんだよ) 黒トナカイ(パパ以前にコソドロ以外のナニモンでもねーってお前!       我が子の首折るパパサンタが何処に居るんだよ!!) ともあれけん玉を取り出しては、袋に一緒に入っていた靴下に入れてゆく。 ……つーか入れこのっ……!ちょっ……孤児院の子供たち足小さッ!! 普通に入らねーぞこれ!このっ!こっ《ビリャリャア!!》───あ。 黒サンタ(………) 総員  (………) 靴下……破けちゃった。 まあいいや、この調子でいこう。 はいはいゴトリゴトリと…………お? こいつは確かキレイなねーちゃん希望の辰児くんとやらだっけ。 じゃあアレだな。せっかくだし藤堂の家の押入れに大封印されていた この邪神像(モッコス)でも入れていこうか。 あいつゼノサーガ買ってたんだなぁ……しかも限定版で。 じゃ、これはこいつの枕元にでも置いて、と。 辰児 「………………ん、んぐ……う、うぅううう……!!うぁあああ……!!」 …………うなされ始めた。 これ本気で呪われてたりしない……よな? はは、まさかなぁ……。 でもま、この調子で配っていきゃあ……よしラスト。 って、この子は確かダンディ希望のすみれちゃん? ダンディ……ダンディって言やぁ……。 黒サンタ(…………これだけはやりたくなかったが) 希望とあらば仕方なし。 俺はすみれちゃんの掛け布団の上に紙を敷き、 そこに10円を置いて人差し指と中指を添えた。 そして目を閉じ……ひたすらに唱える。 黒サンタ(コックリーニョさんコックリーニョさん……      どうぞこの娘の夢の中に舞い降りてくださ───あ) いや、ひたすら唱える必要もなかった。 なにせもううなされてる。 黒サンタ(よかったな……ただのダンディじゃなく超絶ミラクルダンディだ。      貴様の願いの範疇、確かに超越させてもらったぞ) 相当に要らんお世話だったろうけど。 サンタ  (こっち終わったぞー。そっちはどうだ?) 黒サンタ (オーケェベイビィ!!終わってるぜ〜〜っ!!) 黒トナカイ(……つーか俺居る意味あったかな) みさお  (言っちゃなんですけど、居なかったらもっと円滑に出来たかもしれません) 黒トナカイ(うわヒデッ!オイラ今回邪魔せんようにって真面目にやってたのに!!       それ言うんだったらこの黒サンタなんて相当に滑り止めだったデショ!?) 黒サンタ (なに言ってんだテメェエエ!!それ言うならテメェこそマッスルトナカイで       二足歩行のままソリじゃなくてリアカー引いてる時点でアウトだろうが!) 黒トナカイ(トナカイで乗り物引いてりゃ乗ってるサンタは満足だろうが!       同じ木製のものでなにが不満なんだこの野郎!!) 黒サンタ 「そういう問題じゃねぇだろうがァア!!       車輪とかバランスとかもっと考えてお願いだから!!」 黒トナカイ「そんなもん空飛べばなんだって一緒だろうがァア!!」 黒サンタ 「テメェエエ!だったら空飛ぶソリと空飛ぶリヤカー想像してみろ!       そんでどっちがよっぽど滑稽か言ってみろォオオ!!」 黒トナカイ「リヤカーの方が面白ェだろうが!絶対リヤカーだ!断然リヤカーだね!!」 黒サンタ 「乗ってるヤツと引いてるヤツの姿も合わせてからそれ言ってみろォオ!!       空飛ぶ泥棒が気球じゃなくリヤカーで飛んでるってどれほどバケモンだ!!」 黒トナカイ「言われてみりゃそうかもしれんけどそれがまた面白いんだろうが!」 黒サンタ 「面白さは既に認めてるけど今は円滑な進め方の話を───」 もぞ、もぞもぞ…… 子供   「んう……誰ぇ……?」 黒サンタ 「ヤベェエエエエエ!!       でけぇ声出しすぎたァアアアアア!!」 黒トナカイ「その声がでけーよ!ってこの声もデケェエ!!」 黒サンタ 「サンタ!案内人!すぐに逃げアレ居ねぇ!!」 黒トナカイ「野郎ども俺達を見捨てて逃げやがった!」 黒サンタ 「だが死中に活あり!こんな暗闇だからこそ保護色しつつ帰れるというもの!」 黒トナカイ「アンタそれもう       見つかったから慌てて逃げ出すコソドロ以外のナニモンでもねーよ!」 黒サンタ 「うるせーなァア!!じゃあどうするのコレ!ここに残るの!?」 黒トナカイ「んなことしませんよ!とっとと逃げる!!」 ダカタタタッ!! 黒トナカイは逃げ出した!! もちろん俺も気絶中のナギーを担ぎ、黒トナカイに次いで逃走開始!!  ……したんだけど。 シズノ      「……あんたらちょっと顔貸しなさい」 黒サンタ&トナカイ『ア、アワワ〜〜〜〜ッ!!』 廊下の先で仁王立ちしていたシズノさんを前に驚愕するしかなかった。 説得ももちろん通用せず、耳を引っ張られて案内された広間で───  その後、僕らはシズノおばさんにボコボコにされた。 Next Menu back