───愛/「高橋名人はきっとモンハンを満足に出来ない」という258話───
【ケース484:中井出博光(再モンケイ)/ゲームは一日一時間?うん、それ無理】 ズズ……ズチャッ。 ズズ……ズチャッ。 彰利 「ああもう今日は最悪だったよ……」 中井出「今日っていうか昨日っていうか……はぁ」 ああ……朝日が昇るよベン……。 結局誰にも夢を与えられないまま朝日のヤツが昇ってしまうよベン……。 彰利 「命からがらシズノおばちゃんから逃げ出したところを     よもやポリスに発見されるとはねぇ……」 中井出「ダメージ抜け切ってなかった所為であっさり捕まって、     今まで尋問というか説教というか、ともかくガミガミやかましかった……」 なんで夢を与える筈が説教与えらんなきゃならんのだ……。 他のみんなはどうしてるだろうか。 いいや探すのめんどいしこのまま帰ろう。 なんていうか僕ら眠いよ。 中井出「蒼空院邸戻ったらどうする?」 彰利 「寝るかヒロラインか……今回もバージョンアップあるんかね」 中井出「メンテナンスはするだろうけどバージョンアップはどうかな」 彰利 「せっかく黒一色になったんだからさ、オイラまたビッグバンかめはめ波撃ちたい」 中井出「あーあれか。ヒロラインだと界王拳中じゃなきゃ出来なかったんだっけ?」 彰利 「……忘れた。でも使いたいのよ。そりゃね?かなり自由度上がってきてるから、     撃とうと思えば撃てるだろうけど。元々死神の力を一点集中して放つヤツだし。     魔人天衝剣が出来るなら出来ない方がおかしいのよね。     あ、そういや一つ気になったんだけどさ」 中井出「お?なんだ?」 彰利 「藍田くん居るじゃない?彼の烈風脚って“キメラ”の奥義っしょ?     なのに何故に超連歩烈風脚じゃなくて超速蹴烈風脚なん?」 中井出「そりゃお前。“歩”じゃないからだろ」 彰利 「あ、なるほど」 ……つーか彰利って俺が烈風脚使えること、知らんのだっけ? なんか前に一度見せたような……まあいいや。(キレててそこだけ憶えてない) 中井出「なぁ彰利一等兵」 彰利 「なんでありますかサー」 中井出「猛者どもでも名誉ブリタニア人でもいいから、武器合成出来るヤツって居ない?」 彰利 「武器合成ねぇ……我が愚息ビーンはあれでなかなか     鍛冶だののスキルレベルが高いらしいが、合成は出来ないんじゃあねーの?」 中井出「ふぅむ……じゃあ篠瀬さんってどうやって武器合成したんだろうな」 彰利 「風の精霊がそういう業に長けてたとか?」 中井出「同じ属性武器ならピッタシカンカンって感じか!おおなるほど!」 彰利 「なぁ〜んて、そげな都合のいい話がそうそう転がってるわけないけどね」 中井出「だよなぁ。いくらヒロラインだからってそうそうないよなー」 ワハハと笑いながら、 なんだかんだで肩を組んで大きく足を振ったガニマタ歩きで帰路を辿った。 いろいろあったけど僕らは元気です。 何故って、世にある楽しみをむさぼり尽くすまでは落ち込んでなどいられないからです。 悩む時間って大切だけど、悩みすぎる時間は無駄じゃないかと思うんだ。 それならいっそ吹っ切って……というか考えるのやめて楽天的に行こうじゃないか。 いわゆるひとつの処世術。 ……ちと違う?いや構わん!違ってもいい!ノリで行こうノリで!  そんなこんなで僕らは朝の白みが完全に失せ、  太陽が町を照らす頃に昂風街へと辿り着いた。 歩いてここまでって結構遠いんだが、挫けずガンバリャいつか辿り着く! うんステキ! 中井出「やぁ、歩きってのも結構面白いな」 彰利 「AGIマックスの歩法ってハタから見ると足の動きがえらく不気味だ」 互いに互いの足を見る。 残像さえ出る足の動きはまるでムカデのようで不気味です。いやマジで。 そりゃこんな歩き方してりゃあ日の出とともに離れた町までなど余裕で辿り着くさ。 中井出「やぁマイコー、もう蒼空院邸が見えてきたぜ?」 彰利 「HAHAHA、僕らの足はもう世界の器を越えてるのさザビエル」 中井出「ザビエル!?」 マイコーで始まってザビエルで返されたのは初めてだった。 と、そんなことはどうでもヨロシ。 寝るかメシかヒロラインか。 帰ってから決めるにしても、どうにも眠い。 どうしようか、いっそ寝てしまおうか。 でも眠るだけならヒロラインでも十分なわけで。 ……よし、眠るのはヒロラインに入ってからにしよう。 中井出「彰利!俺決めたよ!これからは東方の拳と呼んでくれ!」 彰利 「北斗じゃないの?」 中井出「や、べつに俺と北斗関係ないし」 東方は関係あるけどね。 東の術はすごいものさ。 俺の場合、体全体にダメ出しされたけどさ。 そういや烈風脚は“人”の奥義だったよな。 空界人になったら……というか多分もうされてるだろうけど、 空界人になったら烈風脚とか使えなくなるんだろうか。 いや、そこまでセコくないか。 ゲームは楽しくなきゃ意味が無いし。 彰利 「……あ、そういやキミ武器強化が趣味というか生き甲斐じゃったよね?     今どんだけ強ぅなったか見させてもらってええ?」 中井出「だめだ」 彰利 「貴様には情ってもんがねぇのか!!」 中井出「いやぁ悪いなぁ。以前だったら良かったんだけど、     今はいろいろ事情があって見せてやることは出来んのだよ。     スキルの問題でね、見せちまったらつまんないことが混ざってる」 彰利 「ぬう……そりゃ次に対峙するまで楽しみにとっとけってことかね?」 中井出「いや。出来れば試練が終わるまで待っててほしいかな……」 彰利 「いや……なんというかその……ゴメンナサイ」 訳の解らん勝手な試練の所為でレベル半分武器レベルも半分。 俺の強さに比例して強くも弱くもなるマイパートナーは、 現在僕に付き合って半分の+しかないのさ。 しかし悲しむことはないのだよ博光よ。 何故ならレベルは下がったけど、 頑張ってつけてきた技術スキルなどは一切無くなっていないのだから!! 斬れば炸裂ギガボマー!振れば荒れ狂うエアブリンガー!! 大丈夫さ!ジークフリード、僕とキミは一心同体だ!! エネルギーを全開すれば月にだっていける!窒息死するけど! だからここからもう一度血の滲むような旅をするのさ! 現在のレベルから倍の状態でも散々苦労した守護竜と、それこそ命懸けで戦うのさ! 中井出「ちくしょうてめぇ!     ヒロラインで見つけたら真っ先に石ぶつけて逃げてやるからな!」 彰利 「いやなにいきなり後ろ向きなキレ方してんの!?」 ああでも俺逃げられないんだった! くそう狂いし者め!男にだって後退の二文字があってもいいじゃないか! 下痢腹抱えても逃げずに戦えっていうのか貴様は! …………なんていうかフと思ったんだけど、下痢腹と紅薔薇って似てるよね? 中井出「これからとんでもなく苦労しそうだよ俺……」 彰利 「人はそれを試練と呼ぶ?」 中井出「でもあのー、別に僕試練に志願した覚えないんですけど」 彰利 「それは素直にゴメンナサイ。だがなー!     試練の指輪を貴様の指に嵌めるという案を出したのは、     他でもないナギ子なのだぞ!」 中井出「……ここで他でもないって言葉って意味無い気がしない?」 彰利 「あ、うん……僕も言っててヘンかなって思った……」 閑話休題。 さて、そろそろ無意味に庭を高速移動しつつ話すのはやめて、 さっさと中に入ろうか。  ガチャッ……ゴギギギィ…… 中井出&彰利『ただいまよー』 どうでもいいけど銀魂の神楽のただいまヨーの発音は素晴らしいと思わないかい? 特に“慌てるな!クーリングオフというものがある”の回の声。 多分そこでしか言ってないだろうけどさ。 でもここでお前の家じゃねーだろってツッコミはヤボってもんさ。 彰利 「しかしさ、キミ実際にここに来る者の中で     唯一のヒューメンになっちまったそうだけど。感想とかってあったりする?」 ツッコミはなかったけど感想を求められました。 しかもまったく見当違いの方向の。 そんな、聴覚でも急な疑問が巻き起こる中、 僕の視界にゃ結構な動乱が巻き起こってたりもしました。 永田 「《チュボォオオン!!》ほぎゃあああああああっ!!!」 蒲田 「ああっ!永田の指が吹き飛んだ!」 岡田 「永田!?永田ァアーーーーーッ!!」 どんな面白劇場なんだろうか。 永田たちだけじゃなく、 恐らくこの家に集っている者どもがこぞって玄関ホールでなにかをやっていた。 喩えられる言葉がないから“なにか”と言うしかないんだが……実際なにこれ。 中井出「とりあえず蝶・サイコーと言っておこう」 彰利 「目の前の状況は完全無視か」 中井出「お前がこの人間・博光へ感想を求めたんじゃないか。     俺は人間である自分を誇りには思ってないが当然のことのように思ってるよ?」 彰利 「や……そりゃ当然だし。つーか人としての誇りはないの?」 中井出「原中が提督という大業に身を置いて二十数年……あれ?三十?まあいいや。     そんなものはドヴ川に投げ捨ててきたわ!つーか邪魔!     この乱世を生きるには人としての誇りなど邪魔なだけ!!     芯があればいいのだ!誇りとは違った、決して折れぬ芯があれば!!」 彰利 「……で、その芯って何本あるの?」 中井出「俺が大事だと思った信念の数だけ!!」 彰利 「おっしゃあそれでこそ僕らの提督だ!」 中井出「一本の芯なんて無理!人はその場その場で変わる生き物さ!     だから状況適応能力なんてものがある!     つまり芯なんてものは状況に応じて変えてゆくのが賢い生き方!     でも俺別に賢くなくていーから自由に生きたい心の底から!!     そのための常識破り!ああありがとう原中魂!」 彰利 「おーいキミたちー、いったいなにしとんのー?」 中井出「いや聞けよ」 熱いパトスは軽やかに流された。 でもとりあえず叫びたかっただけだから聞いてもらわんでも結構。 寂しくなんかないものごめんなさいやっぱ寂しいです。 閏璃 「おお提督じゃないか」 鷹志 「グフフ……おぉいみんなぁ、人間が居るぜ人間が」 柿崎 「なにぃ人間だってぇ?」 来流美「あら本当。人間が居るわ」 中井出「下級種族を見るような言い方すんなぁ!     ちくしょう僕以外が魔導使えるようになっただけでなにこの疎外感!!」 鷹志 「や、さすがに冗談だけど」 中井出「うん知ってた」 柿崎 「ほんと無駄に逞しいよな……」 中井出「しかし親戚よ。これはいったいなんのカーニバルだ?」 鷹志 「ん……ああ。凍弥がさ、魔導万象引き出したいって言ってさ。     みんな巻き込んでの式大会をちょっとな」 閏璃 「残念ですがこの大会、式を使えない人にはご遠慮願っているので」 中井出「なにぃ、じゃあ俺は魔人カルキになって貴様らにマハラギダインを」 閏璃 「式じゃないだろそれ」 中井出「うんそうだね」 うーん……やっぱり疎外感。 かつては映像の将と呼ばれたこの博光も、今や式なぞ使えないヒューメン。 だが後悔は無い。 何故なら俺は人間で居たいから人間であったのだから。 中井出「で、空界人の貴様らは魔導大会をしているとして。     他の種族の者どもは?」 閏璃 「お?そういやホギッちゃんを始めとする天界人のやつら、見ないな」 鷹志 「何処でなにやってんだか。     ちなみに俺達がここに居るのは他の部屋じゃ人数が入りきらんと思ったからだ」 中井出「なるほど」 チラリと視線を動かせば、麻衣香に泣きついて指を癒してもらっている永田くんが。 相変わらず我が妻は回復担当のようである。 回復担当なのに一撃力の高い高位魔法を使えるんだから大変なもんだ。 中井出「で、死神よ。貴様はこれからどうするんだ?」 彰利 「アタイ?アタイはこれから死神どもを集めて、     鎌解放の実力のほどを調べてみようかと」 中井出「そか」 彰利 「人間、貴様はどうするのかね?」 中井出「んー……ゼットはシュバルドラインと竜的な話し合いしてそうだし……     あ、じゃあ同じく一人の晦とこれからのことをしずしずと話すかね」 彰利 「そうかえ?したらここでお別れだ。悠介、今いろいろ考えとるに違いねぇ。     光と闇の僕らではのんびり話すことさえ難しいのだ。     だからどうか僕の強き友の話を聞いてやってくれ」 中井出「断る」 彰利 「えぇっ!?いやあの───えぇっ!?ここで断る!?」 中井出「いやいや大丈夫、言ってみたかっただけだから。じゃ、そっちはそっちで頑張れ」 彰利 「オウヨもちろんだ。     ククク、試練を受けたからといってヒロラインじゃ手加減しねぇぜ?     貴様をコロがすのはこの彰利よ」 中井出「コココ……出来れば返り討ちよ」 彰利 「いやあの……ものすげぇ後ろ向きだね」 中井出「うるせー!俺だって弱体化させられてなきゃもうちょっとなぁ!!」 い、いや……過ぎたことは言うまい。 これは実際試練なのだ。 過去に打ち勝てとは言わないが、試練に打ち勝てという試練と受け取った。 ……それは試練だろうか。 まあいいや。 中井出「じゃなー」 彰利 「オウヨー」 交わす言葉も適当に、恐らくはもう帰ってきているであろう晦の姿を求め、 この博光は輝かしき第一歩を踏みしめたのだった……!! 【ケース485:中井出博光(厄再)/体だけは丈夫なので今日も笑ってようと思った】 さて……そんなこんなでホールをあとにして階段を登ってきたまではよかったんだが。 中井出「晦のヤツ、何処居るんだ?」 そもそも俺はヤツが何処に居るのかを知らなかったことに今さら気づいた。 いや、本当は気づいていたのだろう。ただ気づきたくなかっただけなのだ。 俺は心の底から、宇宙人や未来人や幽霊や妖怪や超能力者や───ってそうではなく。 いかんぞ、頭が混乱してる。 眠いからか?ああ眠いからだろうさ。 こんな時はヘタに動き回らず、静かな個室でのんびり相手が戻ってくるのを待つべきだ。 というわけで手近な扉をガチャッと─── 憩  「あら。ようやく来ましたわね」 ───開けて、バタンと閉めた。 よし何処に出かけようか。 大丈夫、僕ならきっと何処までも行けドバァン!! 憩  「ちょっとあなた!失礼ではなくて!?」 中井出「失礼でいいから森へ帰れ」 憩  「わたくしが森の生き物に見えるとおっしゃるの!?なんと失礼な!」 中井出「だから失礼でいいと言ってるんだが……なんだ貴様、この博光に何用か」 憩  「……ふん。まあその、あれですわ」 中井出「恋愛……じゃないな。泥沼相談なら余所に駆け込んでくれ」 憩  「言い直す必要はありませんわー!!恋愛!恋愛ですわ!!」 中井出「帰れ」 憩  「アドバイスをいただけたならすぐに帰りますわよ!」 中井出「美味しいオムレツを作りたいなら卵は三つじゃなく二つだ。     よくミルクを混ぜるヤツが居るが、あれは大きな間違いだ」 憩  「なるほど、参考になりますわってそうではなく!!」 あーあ……嫌なヤツに捕まっちまったよォオオ……。 包み隠さず言おう、恋愛相談大嫌い。 相談とか言いながらノロケしか語らないんだよこの人種は……。 憩  「相談というのは他でもありませんわ!」 中井出「胸がちっさいことか。すまん、俺にはどうすることも」 憩  「違いますわ!!あ、ぁあああ〜〜なたに言われるまでもありませんわ!!     胸のことなど些細なこと!わたくしは外見よりも心で……───     なんですの、その疲れたような溜め息は」 中井出「なぁ……俺国に帰っていい?」 憩  「あなた日本人でしょう!何処に帰るおつもりですの!?」 貴様が居ない場所に今すぐ行きたい。 中井出「解った解ったから……なんだよもう」 憩  「最初からそうやって聞こうとすればよかったのですわ。     相談というのは他でもありませんわ。その、と、ととと殿方とは、     いったいどういったものを好んで食されるんですの?」 中井出「納豆だ」 憩  「秋彦さまはあんなゲテモノ食されませんわ!!」 中井出「人の好みを決めつけるなよ!」 憩  「あーなたに言われたくありませんわ!!さあ!正直におっしゃい!!」 中井出「いや……つーかなんで俺警察に尋問されるみたいな状況下にあるんだ?」 憩  「そんなことは今はどうでもいいのですわ!!     今度わたくしが秋彦さまのために料理を作って差し上げるのですわ!!     だからその参考にと!     あなたのような下賎な輩の言葉にも耳を傾けてやろうと思ったのですわ!」 中井出「そうか。だが断る」 憩  「なっ!なぜですの!?」 中井出「教える教えないは個人の自由だからだ!     だから貴様ごときにゃ教えてやんねー!くそして寝ろ!!」 まさに外道!! 憩  「くっ……!?な、ななななぁんとお下品な!!     あぁあああ〜〜なた!少しは品というものを知りなさいですわ!!」 中井出「それも断る!俺の意思は俺のもの!貴様に左右されるほど弱くなどないわ!!」 憩  「ぐっ……いちいち楯突く庶民ですわね……!!」 中井出「や、庶民なのは貴様も同じだし」 憩  「おぉおだまりなさい!!落ちぶれても元上流家庭!!     品で言えばわたくしはあなたより一回りも二回りも上ですわよ!!」 中井出「ははははは」 悠介 「そいでさー」 憩  「お聞きなさい!!」 悠介 「やだ」 憩  「ギィイイイイーーーーーーーーッ!!!」 いつの間にか部屋にやあと訪れた晦との談話中、 突如としてお嬢が僕らの間に割って入った! ……だがあっさり一蹴。 やはり今の晦はなにかが違うぜ……! 悠介 「ところで提督よ。こいつなにしに来たんだ?」 中井出「ああ、なんでも彼氏との会話中にデーブ=スペクターを     デブ=スペクタクルと言い間違えたらしくてな。     それをなんとか誤魔化すための処方箋が欲しいとかなんとか」 悠介 「薬局へ行け」 憩  「そうじゃありませんわよ!!相談!相談をしに来たのですわー!!」 悠介 「そうなのか?残念だがここには薬剤師も医者も馬鹿につける薬も無いんだが」 憩  「どういう意味ですの!?いいからわたくしの話を聞きなさい!!     あなたがたは既婚者なのでしょう!?     だったら年長者らしくもっとドンと構えて話を聞くべきではなくて!?」 悠介 「そんなのは俺の勝手だと思うが」 中井出「まったくだ。     さっきからなんべんも言ってるんだが聞く耳持たないんだよこの馬鹿」 憩  「馬鹿と言うんじゃあありませんわー!!」 ……埒が開かん。 開かなくしてるのは間違い無く我らだが。 悠介 「よし、解ったからとっとと話してスッキリしろ」 中井出「なんで……殺したんだ?」 憩  「彼がっ……彼が急に別れようとだから違いますわ!!」 何気にノリのいいお嬢さんだ。 中井出「なんでもな?彼氏に料理食べさせてやりたいらしくてな。     だから殿方が好む料理を教えろ。     教えないとこの屋敷に仕掛けた爆弾を爆破させるって」 悠介 「おおクズだな」 憩  「してませんわそんなこと!!あ〜なたちょっと黙っていてくださる!?」 中井出「やだ」 憩  「ギ、ギィイイイイイーーーーーーーーッ!!!!」 中井出「おおそうだ晦。貴様、過去でなにか掴めたのか?     そして感情は全て戻ったりしたのか?」 悠介 「うん?あ、ああ。感情は全部戻ったぞ。なんというか物凄く自分が自然だ。     ちょっと気持ちの整理つけてたからボーっとしてたけど、もう大丈夫だ。     ようやくお前らに追いつけた」 中井出「おおっ……!そうか!ははっ、そうか!!     ならば我らも───誠意を持って祝わねばならんなっ!!」 悠介 「いらん」 中井出「むごっ!?……ぬ、ぬう……ならば小娘よ。貴様の望みはなんだ」 憩  「……殿方が好む料理を教えてほしいですわ」 …………。 中井出「ラーメン」 悠介 「それだ」 憩  「───……ら、らーめん?……そんなものでいいんですの!?     キャビアとかフォアグラとかフカヒレとかは───」 悠介 「高いだけで腹も膨れんものを男が喜ぶもんか」 中井出「それで言うならやっぱラーメンだろ」 憩  「…………それって手作りになりますの?」 中井出「解ってねぇな……スープも麺も自分で作れば手作りじゃあねーか」 憩  「そ、それを!このわたくしにしろとおっしゃるの!?」 中井出「おっしゃる!だから頼む!帰ってくれ!」 憩  「ひどい言い方ですわね……」 悠介 「んー…………ラーメンレシピが出ます。弾けろ」 ポムッ。 悠介 「……よし、と。ここにレシピがあるから頑張ってみるんだ!」 憩  「ま、まあ……モミアゲさん……!」 悠介 「モミ言うな」 憩  「ありがとうですわ!……それで、材料費なんですけども……」 悠介 「へ?」 中井出「いや……無いの?」 憩  「み、身ひとつでカンパニーを出たわたくしになにを期待していますの!?」 中井出「金無いんなら彼氏のためにメシとか言ってる場合かぁーーーーーっ!!」 悠介 「お前!今まで何処でどう寝泊りしてたんだ!?」 憩  「彼の家で暮らしてますわ」 二人 (すげぇ!言い切りやがった!!) ある意味で感動!というか驚愕!! 晦に渡されたレシピを握り締め、平然と言ってのけるこいつは本当に馬鹿なんでしょーか。 いや、ある意味勇者だな。 悠介 「はぁ……えーと……」 中井出「お?貸してやるのか?」 悠介 (これが原因でヒロラインダイヴを邪魔されても困る) 中井出(……フホホ、越後屋、そちも悪よのぅ) 悠介 「というわけでこのお金で材料を買いなさい」 憩  「まあありがとうですわモミアゲ様!!」 悠介 「や、だからモミ言うな」 そういや元上流家庭の誇りは何処行ったんだ? ……ああいや、深く考えるのはやめとこう。 人間、状況が転じればなんでもやっちまうもんさ。 憩  「これはいつか必ずお返しいたしますわ!あなたに感謝を!ですわー!!」 ズドドドドドーーーッ!! ……で、貰うモン貰ったらとっとと逃げ出す元お嬢。 なるほど、確実に丘野の血は引いてるというわけか。 悠介 「感謝するだけして駆け出す女も珍しいよな。     まあ、素直ってことで好感は持てるほうだが」 中井出「へえ。晦って真っ直ぐな女が好みのタイプなのか?」 悠介 「んー……そうらしいな。今までそんなの気にせず過ごしてきたが」 ふむ。 そういや晦とこんな会話を真面目にするのも奇跡的な気がする。 解らん知らん興味無いの三点盛が基本だった晦が、 今自分から好みのタイプを語るほどに成長したのだ。 これは彼を知る我らにとっては大いなる一歩だ。 ……今さら好み聞いたってしょうもないけど。 悠介 「ところで……提督は実際こんな場所でなにやってたんだ?     まさかあいつと一緒にここに来たわけでもないんだろ?」 中井出「おおそれよ。貴様を探していたんだが、     当てもなく探すよりは待ってたほうがいいのではと思ってな」 で、手近な場所でのんびり待とうとここのドアを開けたらヤツが居た。 そんなことを僕は身振り手振りで晦一等兵に語ってみせた……!! 悠介 「……結局のところ、寂しいだけなんじゃないか?あいつ」 すると返ってきた返事がこれ。 寂しい?ヤツがか? ……まあ、急に親が死んだってことになって、 しかも自分らまでカンパニーをやめることになれば、 お嬢様だった彼女や彼にとっては相当辛いことであり寂しいことに繋がるだろうが…… だが大して話もせずに行っちゃったしな。 ほんとに寂しいのか?それともただの照れ隠し? まあいいや、ここでそれ考えても答えるべき本人が居ないんじゃあ結局解らん。 中井出「まあお嬢の本意がどうあれ、     俺達にゃあどうにも出来んということで段落を打とう」 悠介 「話し始めたばっかなのにいきなり段落かよ」 中井出「それよりもこれからどうするかを考えてたんだが。     貴様はこれから他の者達のようにやることとかあるのか?」 悠介 「ん……いや。出来るならさっさとヒロラインに行きたいなって思って、     こうして二階に来たんだが」 で、自室に向かう途中で僕とお嬢の口論を聞いて参上したと。 なるほど、家政婦は見た的な発見例だったわけだ。 中井出「じゃあ……もしノートン先生が居るなら、一足早くダイヴさせてもらうか?」 悠介 「俺はそのつもりだった。提督はどうする?」 中井出「お、俺も付き合うぜ〜〜〜っ!!」 悠介 「よっしゃ!じゃあ早速俺の部屋に行くかっ」 中井出「うむ!全速前進!!」 悠介 「サーイェッサー!!」 元気に返す晦の顔は、まるで初めてのゲームを前にする子供のようだった。 純粋に楽しんでる顔だ。 後に控える闇なぞ今は関係ないと断言するばかりの弾けん笑顔だ。 ……なんか、いいね。 俺、こういう晦嫌いじゃあ……ねぇぜ!? というわけでまずはドバァーーーン!! 中井出「ノートン先生ノートン先生!!」 ノート『む……?マスターか。ついでに中井出博光も』 中井出「ついで!?叫んでたの僕だよね!?それなのに確認がおまけなの!?」 悠介 「よっ、ノート。     悪いんだが俺と提督だけ一足先にヒロラインにダイヴさせてくれないか?」 ノート『それは構わんが。イセリアが爆睡中だ、少々処理が遅れるかもしれん』 中井出「おぉ?イセリ子さんって結構重要な役割担ってたの?」 ノート『主に汝の監視役としてだが』 中井出「………」 それほどまでに危険人物視されてんのか俺は。 そりゃ好き勝手にゲーム内の常識ブチ破りまくってるけどさ。 ノート『地界で言うところのウィルスレースだな。     ワクチンを作ろうがそれを破るウィルスを作る。     それと同じで汝はプロテクトを作ろうが別の方法で簡単に壁を破壊してしまう。     それを開発するためにイセリアは欠かせぬ存在なのだ』 そして伝説の高位精霊にウィルス扱いされる僕。 光栄だけどなんだか涙が出ちゃいそう。 ノート『まあどうにでもなるだろう。潜るのは汝ら二人でいいのか?』 中井出「あ。ナギーは?」 ノート『眠っているうちにダイヴさせておいた。既にゲーム内に降り立っている』 中井出「了!なら遠慮無用にダイヴでゴー!」 悠介 「ん、頼む」 ノート『了解した』 ノートン先生の言葉を耳にしたのち、そこらに適当に腰かけて目を閉じる。 するといつもの体の内側を引っ張られるような奇妙な感覚を覚えたのち─── 気づけば僕は、エトノワール城下の教会に立っていた……! ……そういや死のルーレットでポックリいったんだっけ……忘れてたよ。 Next Menu back