───冒険の書180/魔王売買所───
【ケース486:中井出博光(阿修羅再)/ドミニク】 キュゥウウウイピピンッ♪ 《指輪の試練発動!レベルが半分になり、この状態がしばらく続きます》 ウサギ獣人『ああ……』 降り立った途端のナビログに絶望。 どうやら本格的に試練が開始されたらしく、 ヒロラインに降り立っても結局半分のままのレベルに軽く泣きそうになった。 のだが。  ピピンッ♪《試練サポート能力開花!アビリティに“アイテムマグニファイ”が追加!》 そんなログを見た途端、僕の心はこれでもかってくらい救われたのです!! ウサギ獣人『こ、これはぁあああーーーーっ!この能力はァアーーーーッ!ウサ!!』 ミギャアアーーーと絶叫!そして今さら自分がウサギ獣人であったことを思い出す。 ログアウトする前、ウサギ獣人になっていろいろな準備してる途中だったの忘れてた。 その時に買った新しいテントも白亜紀に置いてきちまったし、また買わねば……。 なんて思考はこの際あとだ! ウサギ獣人『ええとなになにウサ……』 以外なところから能力を得た。 だが詳しいことがまるで解らない故、俺はナビをいじって新規アビリティの説明を開く。 するとどうだろう、なんとも素晴らしい説明書きがそこに現れるではないかっ……!!  ◆アイテムマグニファイ  名前の通り、アイテムにもマグニファイが使える能力。  ジョブによって試練アビリティは違ってくるため、戦士だったためにこの能力に。  そもそもマグニファイは武器の能力を最大限にまで引き出す能力であり、  その視野をアイテムに向けたのがこのアビリティである。  たとえばポーションにマグニファイをかけて飲むと回復量が上がったり、  眠魚(みんぎょ)にマグニファイをかけてみれば、敵を眠らせることも可能。  しかし一回使用すると無くなってしまうものは、  やはりマグニファイをかけても消滅してしまうので注意が必要。  あまり攻撃的ではないため、使用待ち時間は2分に一回となっている。 ……。 ウサギ獣人『……す、素晴らしいウサ……!』 まさかアイテムの能力を引き出すことが出来る日が来るとは……! ……と、喜びの途中のことだった。 腰にある大鎌にハタと気が付いた。 ……お、おお〜〜〜っ!これは我がファミリーのハートが宿った鎌ではないか〜〜〜っ! ウサギ獣人『ウサァーーーーッ!!』 シャキィンッ!ヒュフォフォフォフォフォンッ!キ……ガキン。 ウサギ獣人『……ウサ』 腰にそのままあった大鎌を振り回したのち、腰に収める。 よかった、ちゃんとそのまま残っててくれた。 ここに影響がなかったらどうしようかと思ったくらいだ。 あのまま蒼空院邸で武器合成出来るヤツを探してもよかったんだけど、 やっぱり俺は頼るなら猫かドワーフにしたいのだ。 なにせ僕の全てとも言える武器を預けるのだから。 ああ……お前はなんて美しいんだ……!!イッツビューテフォゥ……! などとハーネマン教官やってる場合じゃなく。 ウサギ獣人『さてとウサ』 新アビリティや武器の入手への喜びも束の間にしておこう。 まずは……そうだね。 ナギーが降りて来てるなら、きっとシードも居るんだろう。 ちゃんと見つけてやらねば。 なにせ過去の旅で置いてけぼりにしてしまったんだ。 拗ねることはないだろうが、あのテの世代……いや、生後一年も経ってないけどさ。 あのくらいのお子は結構心がピュアハートに違いない。そういうことにしとこう。 故にいろいろケアというかフォローが必要だと思うのだ。 ウサギ獣人『じゃ、ナギーとシードを回収したらエーテルアロワノンに直行だなウサ』 あ、いや、その前に持ち物売らないとな。 先立つものが無ければアイテムも買えぬ。 幸いにして遺跡の財宝がまだまだ残っておるのだ。 面白そうなものだけ残して、要らんものはとことん売ろう。 ゲキガン湿布とか変身アイテムとか、 結構高値で出しても猛者どもなら買うに違いねぇぜグオッフォフォ……! ウサギ獣人『じゃあ……ブリュンヒルデ、ウサ』 ブリュンヒルデに意志を通す。 すると俺の意思を受け取って、ゴワゴワと変形してゆくブリュンヒルデ。 ウサギ獣人スタイルだったこの博光の装備が、 怪しい煤こけたフード姿になるとブリュンヒルデの動きは止まった。 ありがとう、相変わらず素晴らしい能力ですヒルデさん。 中井出「ヒェッヒェッヒェ、あとは怪しい行商人のフリしてアイテムを売るだけだ」 聞くからに怪しそうな笑みをこぼしつつ、 教会からのそのそと出ては城下の通りを目指した。 目立たなそうでいて、何故かちょっぴり気になる裏通りあたりを陣取れば完璧さ。 やつらが降り立つ前に、あたかも最初からそこに居たように見せるのだ! そして怪しいものを売りつけて金にする……!グオッフォフォフォ……!! うむよし!オラなんかワクワクしてきたぞ! 待っているのだぞ猛者どもよ!今貴様らに我が要らんものや稀少石を売りつけてくれる!! ───……。 と、勇んで城下の家の間を陣取った僕。 まるでテイルズオブファンタジアの奥義書売りの人のようだ。 や、でも結構こういう場所で誰かを待つのってほんとワクワクするなぁ。 えっと、ほら、あれだようん。 まるで隠れんぼで誰かが探しに来てくれるのを待つ感じ? ウフフフフ……は、早く誰か来ないかなぁ……! 中井出「ヌッ!?」 などと期待に胸を膨らませていた時である! 急に我が霊章が輝き出し、そこからナギーがシュバァンッと出現したのだ!! 中井出「おばけーーーーーーっ!!ぎゃああああああああああああ!!!」 当然突然のことで僕絶叫!! ナギー『誰がおばけなのじゃ!!』 怒られてしまった……。 中井出「で、でもね?急に手から出てこられりゃそりゃ驚くよ……」 ナギー『指輪の契約のもとに転移を実行しただけなのじゃ。     ヒロミツに渡した契約の指輪はヒロミツの霊章の中じゃからの……。     転移をすればそこから出るのは当然なのじゃ』 そして親切に説明してくれるナギー。 さらには、 シード『あ……父上!』 ナギーの気配でも追ったのか、こんな薄暗い場所を的確に発見しては、 僕を見つけて満面の笑顔を見せるシードがおりました。 陽が差す場所から僕を見て、こちらへ走ってきてる。 ……俺、一発で確認取れるくらいバレバレの格好してるかな……。 シード『ち、父上?発見出来てよかったとは思うのですが……こんな場所でなにを?』 中井出「うむ。ちと要らんものを敵軍に売りつけようと思ってな。     だが魔王のままでは売れるものも売れぬ故、     こうして外見では判断しづらい格好で隠れておるのだ」 シード『なるほど!僕もさすがにドリアードが契約転移をしたのちに     一緒に居るのを見なければ、外見では父上だと気づかなかったでしょう!』 中井出「うむ!その言葉が聞ければこの博光、十分である!」 よしよし、どうやらブリュンヒルデの変身は完璧のようだ。 加えてこの暗がり……誰も我を博光だとは思うまいよ……! シードもナギーが転移したのち、 俺と一緒に居たからこそ俺を俺だと認識できたみたいだし。 ナギー『しかしなんじゃの。随分とボロボロの格好なのじゃ』 中井出「これくらいのほうが怪しさ抜群だからいいのだよナギー」 ナギー『そ、そうかの?わしにしてみればそんなボロボロの服を着た者が、     なにかを売ってくれるとは到底思えんのじゃがの』 中井出「大丈夫!なにを隠そう、俺は商売の達人だぁあああっ!!     他の誰もが素通りするだろうが猛者どもは違う!     ……ていうかうん、閏璃あたりも見つけたら絶対来るよ?」 ゲームを知る者はこういう隅に居る存在はほっとけない性質にあると思う。 なにせゲームの世界では隠れキャラほど重要なヤロウは居ないのだから。 なんてことを考えていると、ふとこの家の間を広場からヒョイと覗く存在が。 ……晦である。 悠介 「ドリアードに種坊主……?こんなところでなにやってんだ?提督はどうした?」 OK!気づいてない! それを確認すると即座にナギーとシードに目配せをし、次なる行動を促した!! ナギー『うむ、実はの。ヒロミツは買い物があるからと街中へ行ってしまっての。     わしらはこうして街を歩き回っておるのじゃ』 シード『するとどうだ、こんな家の物陰に人間が居るじゃないか。     なにをしているのかと気になって来たんだ』 悠介 「……なるほど。ていうか提督、魔王なのに歩き回って大丈夫なのか?     いやまああいつに常識なんて通用しないのは俺もよく解ってるんだが」 ナギー『解ってるのなら心配は無用なのじゃ。     ヒロミツはそこいらの者になど負けたりせんのじゃ』 シード『そうだ。父上は自爆でもしない限り貴様らにも負けはしない』 悠介 「………」 いやあの……確かに自爆しちゃったけどさ……。 もしかしてシードくん?置いていったの根に持ってる? 晦もなんだか可哀相な目で遠くを眺めてるじゃないか……。 悠介 「ああいや、気を取り直して……。     それで、このボロボロ星人、なにかあったのか?」 ナギー『うむ。なにやらアイテムを売っているらしいのじゃ。     値が張るが貴重なものだそうでの。ヒロミツが来るのを待っておる』 悠介 「へえ……見せてもらっていいか?」 中井出『クエッヒェッヒェ……どうぞどうぞ……(裏声)』 バザーモードオン。 ナギーとシードが時間稼ぎをしている隙に設定したバザーモードを解放し、 それぞれのアイテムに値段をつけた上でコサリと布風呂敷の上にアイテムを広げた。 悠介 「うおっ……随分いっぱいあるな……しかも高い」 中井出『クエッヒェッヒェ……要らないんならいいんだよ……。     他のやつが来るまで待つだけだからねぇ……』 悠介 「………」 そんな言葉を無視し、晦は黙って商品に目を通している。 なにげにひでぇ。 だがその目は真剣である。 悠介 「……、この緋々色鉱石って……」 中井出『クエッヒェッヒェ、それはさっきヘンな男と物々交換したものさ……』 悠介 「いや……つーか提督ここに来たのかよ」 カリ、と頭を掻いて溜め息。 ナギーとシードをチラチラリと見るが、さすがは原中を間近で見る者。 すっとぼけ方も一流であり、晦の目はそのウソを見破れなかった。 悠介 「……くそ、買いたいのはやまやまだが金が足りないな……。     もう少しまからないか?」 中井出『クエッヒェッヒェ、悪いねぇ、これも商売なんでねぇ』 悠介 「……そか。じゃあ───殺して奪う」 中井出『なにをする貴様ァーーーーーッ!!』 大驚愕!なんと晦のヤロウ、まさかの強硬手段に出てきやがった!! 予想外!これは予想GUYデェス!!!! ナギー『落ち着くのじゃ』 悠介 「《ドゴォンッ!!》ぷおっ!?」 しかし疾駆中に急に地面から飛び出た大木に激突し、ズリズリと倒れ伏した。 悠介 「い、ぢぢぢ……!」 ナギー『わしの前で殺生をしようなど、随分大胆な行動を取ろうとするものじゃの。     そんなことはヒロミツの名にかけてわしがさせんのじゃ』 悠介 「や、そこは然の精霊の名にかけるところだろ……」 ナギー『うるさいのじゃ!なににかけようがわしの勝手じゃし、     むしろあえてそうするから面白いのではないか!!』 悠介 「フフフ……さすがに提督と長い間一緒に旅をしてきただけのことはある!     だがこれしきで諦める俺ではないわ!     弾けろイメージ!小石をハンマーに変える力!」 シード『落ち着けと言っている』 悠介 「《ドゴォンッ!》はぶっ!?」 ドシャアッ……シュゥウウウウ……。 今度は上からである。 拾った小石をなんとハンマー変換した晦は、空から降ってきた岩の直撃を頭に受け、 ごしゃーんと地面に倒れ伏した。 だが即座に起き上がり、怪しい目つきで我等を見据える。 ……実に元気だ。 そうだよなー、原中が猛者でありながら全然はっちゃけない今までがどうかしてたんだ。 今の晦は相当に好感持てるよ、うん。 ナギー『ぬ、ぬう……そうまでして貴様を突き動かす意志とはなんなのじゃ……!?』 悠介 「問われりゃ唱えん原ソウル!!」 シード『なに!?貴様……!     今まで散々と父上や他のやつらのやり方に文句をたれておきながら!』 悠介 「フハハハハ……!今さら……そう、今さらだからこそいいのだ……!     感情を取り戻し、神となったこの俺はもはや誰にも止められん……!」 ナギー『か、神の笑いとは到底思えん笑い方なのじゃーーーーっ!!』 悠介 「馬鹿か貴様!だからいいんじゃないか……!!」 ナギー『ああなるほどの、ヒロミツならば言いそうな言葉なのじゃ』 納得された。 いや……そうだけどなんかヤなんだけど、その言い方。 シード『では貴様……本当に父上がよく言う“原ソウル”を身につけたと……!?』 悠介 「ククク……その通りだ……。実に気分がいいぞ種の者よ……」 シード『種の者!?』 悠介 「くだらん常識から外れることのなんと心地よいことよ……!     というわけで今すぐアイテム全部よこせ」 シード『誰が渡すか!!貴様……!僕もまだ身につけていない原ソウルを……!     答えろ!どうやって身につけた!僕にも教えろ!』 悠介 「断る!!」 シード『ことわ───なにぃ!?』 悠介 「生憎今の俺のレベルでは貴様らには勝てんだろうがな……!     目の前にアイテムをちらつかされては黙ってられん!!     解るかこの気持ち!今まで心の奥底に沈んでいた冒険心が爆発しているのだ!!     ファンタジーへかける思いなら俺も男だ負けられん!!     だからよこせ!そのアイテム全てをよこせ!!」 彼は今、きっと外道の仲間入りを果たしたのだろう。 そんな彼を見てナギーがくくくと笑い、シードがポカンとしている。 うむうむ……解るぞナギーよ。 今まで真面目だったヤツが原中に染まった時のこの瞬間……! この思いは原中に染まりし者にしか解らん事実よ……! でもこのままではいけないね。 そこで取り出だしましたるは、 属性ボウガンに睡眠でもつけられないかなと買っておいた眠魚。 これに早速アイテムマグニファイをかけて───! 中井出「眠魚(みんぎょ)“古代歌詞”(エンシェントリリック)!!───眠りの詩!!」 悠介 「なにぃ!?」 蒼いデメキン型の魚、眠魚を口に放って咀嚼! その効果を十分に弾き出してから───声として能力を発する!! 中井出「ウヴォォオオエマッズゥウウウウーーーーーーッ!!!」 ……でも出た声はこんなんでした。 ラリホー歌いたかったんだけどそんな余裕が無いくらいにマズイ!! だがその声は確かに眠り効果を備えたままに、耳に聞く者へと次々と襲い掛かる!! 悠介 「う、お……?なんだ……!?急に、眠く……!───……《ドシャア……》」 イエス!晦が眠りに落ちた! 中井出「ナギー!シード!今のうちに───あ」 ナギー『…………くぅ……』 シード『…………んぅ……』 寝てました。 今や裏声を使うのもやめ、これからですよって時に……。 どうやら敵味方を選ばんらしい。 こりゃまた状況によってはなんて俺にやさしくない能力……。 中井出「やれやれ仕方の無いお子たちだ……」 どうしてだろうなぁ、この外道を地でゆく原中が提督、博光ともあろう者が。 老人以外にもこうもやさしい感情を抱けるなど。 ……え?老人には例外なくやさしいのかって? ククク、馬鹿言え。 俺ゃ相手が老人だろうが相手の人となりを見てからじゃなけりゃ心は許さんぞ。 そして相手が外道なら老人だろうが容赦せん。 何故ってそれが原ソウル。常識だけでは語れない。 ともあれ俺は二人が起きないようにソッとブリュンヒルデで包み込み、 周りからは見えないように背中の方でやさしく包んでゆっくり眠らせることにした。 あとは晦だが───コロがして経験値に───とも思ったが、 試練中だから敵勢力だろうがモンスターだろうがコロがしても経験値にならないんだよね。 案外蓄積されてて、 試練が終わったら一気にレベルアップーって感じなのかもしれないけど。 中井出「じゃあ死ね」 さよなら友よ!僕の糧となれ! 卑怯!?結構じゃないかネ!! つーか元々襲い掛かってきたのは晦だし。 そんなわけでこの博光は霊章からジャキンと取り出した双剣を長剣へと変換させると、 大きく振り被ってフルスウィングとともに─── 声  「こ、ここが我らの夢がたくさん詰まっているヒロラインか〜〜〜っ」 声  「どおれ今日もひと暴れしてやるか〜〜〜っ」 振り切ろうとして、止まった。 今の声は田辺に清水! くそっ!まさかこんなタイミングで降り立つとは! 中井出(仕方ない、今は───) 晦を俺が座る位置の後ろに寝かせ、 隅に落ちてたちょっぴりしっとりした布をガバァと被せる。 で、俺は定位置にどっかりと座って、猛者が客が来るのを─── 田辺 「───」 ……待つより先に見つかった。 田辺だ。田辺がなんだかこっちをじぃっと見てる。 その後ろには清水と岡田と永田と蒲田と……って、ともかく猛者どもがいっぱい居る。 田辺 「て、てめぇ〜〜〜っ!こ、こんなところでなにしてやがる〜〜〜っ!!」 そして何故かキン肉チックに喋りながらこちらへ来る田辺くん。 もちろん他の猛者どもも気になるのかついてきていた。 ……仕方ない、晦が起きないか不安ではあるが、ここはパパッと商売を済まさねば。 中井出『クエッヒェッヒェッヒェ、おやおや見つかっちまったようだねぇ……。     あたしゃ闇の商人さ。他では中々手に入らないものを売っているのさ。     見ていくかい?ちょいと値が張るがどれもいいモノばかりだよ』 田辺 「よしこれくれ」 即答!? しかも田辺が指差したそれは───なんとこの中で結構高めな“妖魔の血肉”!! た、田辺め……なんと思い切ったことを。 まさかこれを選ぶとは、ヤツめ……アレをする気だな? 中井出『クエッヒェッヒェ、100000$だよ』 田辺 「謝謝!!」 ガシャガシャチンッ♪《バザーが成立した!100000$を手に入れた!》 ……つーか即金かよ。結構金持ってたんだなぁ田辺のヤツ。 田辺 「ふはははは……!金は尽きたがこれで俺も……!     えーと用途はと……OK飲むだけでいいのかそりゃぁーーーーーっ!!」 んごっふ!!───マキィンッ!! なんと田辺が躊躇することもなく、 何処の妖魔とも知れないものの血肉を丸飲みしてみせた!! するとどうだろう! 田辺の髪の色が金色に、目が鋭い銀色になるではないか!! 中井出『クエッヒェッヒェ……どうだい、半人半妖になった気分は』 田辺 『ああ……悪くない……けど不味ぃ……』 妖魔の血肉を体内に取り込んだ田辺くん。 僕の質問にニヤリと余裕の笑みまで浮かべてくれたのに、 次の瞬間にはオヴェェエエと吐いていた。 よっぽど不味かったらしい。 岡田 「お、岡田てめぇ!人をやめるとは───!」 しかしここで周りの者から反発が─── 総員 『ナイス原ソウル!!』 起こるわけがなかった。 田辺 『あー、あーあーあー……声ブレてない?』 清水 「ブレてるブレてる」 田辺 『…………髪が金色で目が銀色?』 蒲田 「だな」 田辺 『…………よし、ちょっと妖力解放してみるわ』 総員 『いきなりかよ!!』 田辺 『うるせー!俺は黒髪茶眼が好きなんだよ!!     いくら半人半妖になったからってそれは譲れねぇ!ほら思い出してみ!?     妖魔になったやつらって髪の色が金じゃなくなってるじゃん!     だからきっと妖魔になって妖魔超えしたら髪の色元に戻るんだよきっと!』 蒲田 「そうだとしてもなんつーかお前じゃ無理だ」 田辺 『うわヒデッ!覚醒者になる前から無理言われたよ!』 ……ちなみに。 覚醒者だの半人半妖だのってのはクレイモアの話である。 詳しくは漫画クレイモアをどうぞ。 田辺 『でもまあ確かに駄目かもしれないから、俺が暴走したら首撥ねてね?』 藍田 「やさしい顔でなんてこと願うんだよ!」 総員 『だが任せろ!!《ガシャシャシャシャンッ!》』 田辺 『うおお殺す気満々だよこいつら!完全武装しやがった!     フフフ、だが頼もしいぜ……!じゃ、いくぜ!?“妖力解放”!!』 田辺が腰に備えていた仕込み杖をガスンと地面に突き、そこに力を込めるようにして─── 田辺 『ガ……ガ、……ガ、ガガガ───!!』 妖力を解放してゆく!! 綴理 「う、うわぁ……!ほんとに顔に血管が浮き出ていってる……!」 三島 「顔がまるで怒りにシワを寄せた狼みてぇだ……!」 バキッ!メキメキメキッ!ビキッ!ビキィッ!! 田辺 『ガガガガ!!!』 蒲田 「お、おいおい……ヤバイんじゃねぇか!?     これ殺気っつーのか!?嫌な予感しかしねぇぞ!?」 ドクンッ……!! 総員 『あ……聞かなくても現状が解ったかも……』 なにかを境にしたかのように、響くように聞こえたなにかの鼓動音。 それの意味するところは、妖力解放の限界点突破だろう。 見れば田辺はもうほとんど化け物と化し、 腕や肩なんかは衣服を突き破り盛り上がりすぎていた。 藍田 「よ、よし!そっから戻ってこい!そうすりゃまだ半覚醒で済む!」 妖魔 『ガ……ガガ……!ア……ギ……!』 岡田 「しっかりするのだ田辺!貴様なら出来る!根拠はねーけど!」 総員 『ダメじゃんそれ!!』 妖魔 『ギ、ィ……!モ、ド……レナイ……!』 島田 「なにぃ戻れないだと!?」 総員 『よろしく妖魔!!』 妖魔 『イイノカヨソレデ!!』 田辺よ……貴様は原中の順応力を甘く見すぎていたようだな。 いや、甘く見てるつもりはさらさらなかったんだろう。 むしろ戻れないって言ったならコロがしてくれると思ってたんだろう。 しかし甘い。 あっさりと妖魔と化しボコボコと体をバケモノにした田辺を、 猛者どもはあっさりと受け入れた。 え?ええ、もちろん僕もですよ。  シュバァンッ!! 田辺 「オワッ!?」 しかしそれはどういった奇跡だったのか、田辺くんが戻ってきた! 姿は田辺のままの姿でしっかりと黒髪茶眼!! 田辺 「…………クラスメイツへのツッコミで自分を取り戻す自分って……」 そして自分の在り方にショックを受けて、頭を抱えながら屈みこんでしまった。 藍田 「おお……!俺達の思いが田辺を半人半妖に戻したぞ!」 丘野 「しかも髪は黒でござる!     やったでござ───…………いや、もしかして完全妖魔状態でござるか?」 岡田 「田辺ー、お前内臓食いたかったりする?」 田辺 「お?おお、なんだか知らんが無性に内臓食べたい。モツ屋いかない?」 総員 (ああ……こいつもう完全妖魔だ……) 半人半妖、いわゆるクレイモアと呼ばれるやつらはメシを大して食わない。 しかし覚醒し、妖魔に至ると無償に内臓が食いたくなるのが特徴。 半人半妖の時は内臓なんて食いたくなどならないのだ。 つまり田辺くん、妖魔覚醒完了。 血肉を食らって10分も経たないうちの出来事だった。 田辺 「ん、んー……ふんっ!《シャギィンッ!!》ギャアーーーーーーッ!!!」 清水 「んお?どしたギャアーーーーーーッ!!     たたた田辺の右手がぬ〜べ〜先生みたいになってるーーーーっ!!」 藍田 「田辺田辺!そのまま“おのれ妖怪!”って言ってみてくれ!」 田辺 「《ジャキィンッ!》おのれ妖怪!」 総員 『てめぇの方が妖怪だろうが!!』 田辺 「言えって言われたから言ったのになにこの扱い!!」 田辺の右手がぬーべーの鬼の手みたいになった。 つーかこれ、妖混じり? 結界師の志々尾限みたいなことになってるよ……。 田辺 「《ゾリュンッ》おおでもいいぞこれ!好きな時に好きに元に戻せる!!     だったら……妖力解放!《ビキビキビキ……!》」 田辺が妖力を解放する! どうやらそこんところは融通が利くらしく、 クレイモア状態時のように一箇所のみの解放が可能らしい。 現に田辺の右腕に無数の筋が走り、そこだけに妖魔の力が溢れていっている……! 田辺 「“高速剣”!抜刀連技“飛燕虚空殺”!!」 ジョガァッフィチュバァンッ!! ……ィイイ……ィン…………!! 蒲田 「お……おぉおお!?ななななんだ今の!」 藍田 「すげぇ!一瞬空間が捻れたぞ!?」 丘野 「す、すごいでござる……!太刀筋がまるで見えなかったでござる……!」 いや、見えたには見えたのだろう。 しかしそれは“一閃”だけにしか見えなかった。 九撃を一瞬で完成させるのが、真の飛燕虚空殺だとか言ってたっけ……? それが今、高速剣と妖魔の力を借りることで完成へと至ったのだ。 ───が。 田辺 「《ズキィイイイン!!》オギャアアアアーーーーーーーーッ!!!!」 岡田 「ああっ!!田辺!?田辺ぇーーーっ!!」 清水 「田辺が妖魔の身体機能に付いていけずに体を痛めたぁーーーーっ!!」 藍田 「え?そうなの?」 清水 「言ってみただけ」 岡田 「じゃあ転げまわる田辺は無視するとして。     なぁばあさん、いやじいさんかもしれんがもう妖魔の血肉無いの?」 中井出『クエッヒェッヒェ、悪いが今ので最後さ。     他のならこんだけある、買ってみちゃどうだい』 岡田 「ぬう……しかしバカみてぇに高いな……まからない?」 中井出『おっと、まけるのは無理だねぇ。だがやめときな。     殺して奪おうっていうなら、さっき来たモミアゲがセクシーなヤツと同じように     倒れ伏してもらうだけだよ』 総員 『なにっ!?あの晦がアイスソード名物をやったと!?』 それ以前にモミアゲ=晦が普通になってる我らって……。 ああいやいや、考えないようにしましょう。 蒲田 「なるほど……俺達を置いてけぼりにして過去に行った甲斐はあったということか」 丘野 「そんな大胆な行動に出るということは、感情が戻った可能性が高いでござるな」 藍田 「だが老婆よ。この人数にまさか勝てる気でいるのか?」 中井出『馬鹿におしでないよ。     この素材を集めるためにどれだけの修羅場を潜り抜けてきたと思ってんだい。     やるっていうならそれなりの覚悟を決めてかかってくるんだね』 藍田 「ぬ、ぬう……!なんという雄度よ……!この人数を前に怯えもせぬとは……!」 丘野 「どれどれ強さは……ウオッ!?何気に強ェでござるよこの老婆!!     とてもとても強そうどころじゃないでござる!!」 蒲田 「ゲッ……!ま、まさかこんな老婆が居るとは……!」 ていうかあのー、どうして意地でも老婆って言うのかが僕とっても知りたいんだけど。 丘野 「チィ……これは素直に買ったほうがよさそうでござるな……おぉ?     やい老婆。この変身グッズはなんでござるか?」 中井出『ヒェヒェ、それは旅の魔王から買ったものだよ。     そのマスクはパピヨンマスク、     そっちのベルトはアルカイザーとやらになれるらしいぞえ』 丘野 「おお……それは面白そうでござるな」 麻衣香「旅の魔王ってヒロちゃん?」 総員 『それしかないだろ』 即答でした。 ウフフ……僕も既に魔王でイコールされるほどの存在となったか……。 なんだか……悲しいなぁ……。 Next Menu back