───精霊さんいらっしゃい/オンラインゲームを創ろう!───
【ケース42:晦悠介/博光の野望オフライン】 中井出「ショラショラショラショラァアアーーーーッ!!!     ステータスボーナスを全てSTRに振り分けた我が猛攻を受けてみよ!!」 清水 「うおお汚ぇ!!誰か!誰か提督を止めろォーーーーッ!!!」 自室の面積を空間干渉能力によって広げた景色。 そこで我らが元・原沢南中学校迷惑部の猛者どもは激しく激闘していた。 言いだしっぺは珍しく我らがリーダー中井出提督であり、 変身した状態で能力をフル活用して二等兵たちを翻弄していた。 ああつまり、これは“提督VS原中(男)”という対戦カードだ。 もちろん武器は枕だが。 田辺 「おのれくらえ提督!ショラッ!!」 田辺が大きく振りかぶり、枕を投擲した───が。 中井出「ステータス振り分け───速度アップ!!」 シュパァンッ!! 田辺 「なにぃ!?」 投げた枕は頬を掠める程度。 提督は枕を敢えて紙一重で躱し、ニコリと笑った。 ニヤリじゃないのは、その顔が子供のように嬉しそうだったからである。 悠介 「無邪気だよなぁ……」 嫌味ったらしく戦っているのではなく、むしろ子供みたいにはしゃぎながら戦っている。 身体能力向上を促せる力が手に入ったことが相当に嬉しかったんだろう。 提督はまるでどこぞの救世主のネオさんのように上体だけを逸らし、 飛び交う枕を次々と避けていっホゴォンッ!! 中井出「覇王ッッ!!」 あ……当たっちゃいけないところにクリティカルヒットした。 丘野 「今でござるよ皆の者!一気に畳み掛けるでござる!!」 ───丘野だ。 いつの間に戻ってきたのか、 投擲スキルが高い丘野が投げ放った枕が、中井出の黄金を的確に捉えた。 総員 『ハワァアアーーーーーーーッ!!!!』 そしてそんな丘野の声に猛る猛者ども。 中井出「やっ……ちょ、待……!!」 提督は当然力なく弱るのみで、対抗できるほどの余力も残ってなさそうだった。 南無。  ドスドスボフドゴバフボフボゴォッ!!!! 中井出「ギャアーーーーーーーッ!!!!!」 博光の野望オフライン───終了。 提督はあっさりと破れ、丘野は隙を作った勇者として胴上げをされドゴシャッ!! 丘野 「うべっ!?」 清水 「ゲェエーーーッ!!落としちまった!!」 藍田 「こりゃやべぇ……とんずらぁあーーーーーーっ!!!!」 例の如く落とされていた。 そうして慌しく猛者どもが散開してゆく中─── ひとり、この場では異様に目立つ服を発見した。 悠介  「空界人の気配がするって思ったら───イセリアだったか」 イセリア「やっほ、悠ちゃん」 ちょいと手を上げてニパッと笑みを浮かべるイセリア。 二児の母であり実の母親に散々オモチャにされて生き、 さらに長い時の中をシュバルドラインの中の呪いとして生きたという…… まあ、俺の良き理解者である。 悠介  「やあ、って一応返しておくけど。どうした?こんな時間に」 イセリア「魔術師には朝も夜も無いって。      活動しようって思えばそれが活動時間なのが、魔術師や錬金術師でしょ」 違いない。 悠介  「で、その魔術師さんはここに何の用で来たんだ?      お茶飲みに来たってわけじゃないんだろ?」 イセリア「まあそれはね。悠ちゃん、今精神関連の世界創ってるんだって?」 悠介  「───ああ、丘野に聞いたのか。一応な。      みんながみんな地界じゃ死んだことになったんだ。      それで、そのみんなが空界に住みたいとか言い出した。      だからそれの予行練習みたいなもんだよ」 イセリア「なるほどなるほど。ね、手伝ってあげよっか?」 悠介  「いいのか?かなり辛いぞ?」 イセリア「大丈夫大丈夫」 ひらひらと手を上下させながら笑うイセリア。 どうやら、断ろうがやるつもりらしい。 悠介  「……解った。じゃあいいか?蓄積イメージを空中に描いていくから、      指定した場所の乱れを安定させてくれ。イメージが濃い部分だと、      どうしても精神をカバーする能力が薄れて困ってたんだ」 イセリア「がってん!」 ……そうして俺は、心を許せる魔術師とともに創造世界の完成を安定させていった。 言うだけあってイセリアのサポートは確かなもので、 何気に詰まってた部分もスルスルと順調に進んでいったのだった。 悠介  「悪い、助かる」 イセリア「気にしない気にしない。それよりも精霊たちは助けてくれなかったの?      オリジンあたりなら簡単に実行できそうなものだけど」 悠介  「指輪が無いから召喚出来ん」 イセリア「あ……そっか」 と言っても、スピリッツオブラインゲートを展開すれば召喚は出来ると思う。 あれは万象のゲート自体に自分を繋ぐものだから、 元素のゲートにも自分を繋げることが可能だ。 だからそういった意味では、ゲート自体から精霊を呼び出すことも出来る筈。 ……まあ、指輪の保護無しに召喚するのはとんでもなく消費するものなんだろうけど。 ノートは……まあ、何処だろうが生きてはいけるヤツだし。 “無”ってのは便利だよな。 悠介  「……よし、試してみるか」 イセリア「んゃ?なにを?」 悠介  「ヘンな声出すな。……ラインゲートからオリジン呼び出してみる」 イセリア「え……そんなこと出来るの?」 悠介  「理屈の上ではだけど。じゃ、行くぞ?」 考えてみればこの夏の騒ぎが本格的に発動して以来、まともな修行が出来ないでいた。 せっかく覚えた鎌の最終解放も一度や二度使った程度で、極めるための修行もしてない。 といっても覚えたばかりなんだから仕方ないといえば仕方ないが。 悠介 「ラグ、頼む」 俺の呼びかけにキィンと音を鳴らして覚醒するラグ。 それに力を込め、一気に鎌を最終段階まで解放させた。 イセリア「う、わ、わわわ……!!」 部屋に満ちる万象の波動に口を開けたまま驚愕するイセリア。 そんな彼女をよそに、俺は元素のラインゲートを開くと───オリジンの気配を探った。 悠介 『───……ありゃ?居ない』 何故に?探し方が悪いのか? イセリア「……悠ちゃん、ゆーぅちゃん」 悠介  『っと……イセリア?』 イセリア「無駄無駄。いくら探したってオリジンなんか見つかりっこないよ。      だってここ地界だもの。      あそこの二本の大樹のお陰で万象の気配は揃ってるけど、      悠介が望む精霊なんてここには全然居ない」 悠介  『───……そうなのか?』 じゃあなにか? 俺はそんな状態でゼットと戦ってたと? 詳しく言ってみれば、この世界にマナの大樹と癒しの大樹を植えてなければ、 俺は万象のゲートの力を得ようとしても得られず、ゼットにコロがされてたと……? ……あぁいや、違和感は確かにあったんだ。 あれだけの能力───“万象”に自分を繋げちまう、なんて能力は規格外もいいところだ。 普通に考えて負ける要素なんて無いだろうし、相打ちに持っていくこと自体が奇跡的だ。 つまりこの鎌の能力は地界ではなく、 13の属性の精霊が集う空界でこそ真価を発揮する───? 悠介 『はは……』 頭が痛くなってきた。 自惚れるつもりはないが、ようするにそんな力をコントロールすることが出来たのは、 ひとえに周りが言うように、“俺が自然に好かれている”からだろう。 じゃなければ、万象がそんなすぐにひとりの存在に力を貸すわけがない。 結局俺は自分ではなく、周り───この世界の自然にこそ助けられたということだ。 悠介 『───』 だから俺は誰にも聞こえない声で『ありがとう』を呟いた。 ……自覚は出来た。 誰かのために生きるのがダメだと言われたわけでもない。 ただ自分の力を信じた上で、守りたいものを守れと─── ラグや俺自身の能力、そして自然はそう言っていたのだ。 これで終わりだ、なんてことはない。 俺はまだまだ、いつまでも飽きることなく守りたいものを守っていこう。 イセリア「悠ちゃん?」 悠介  『イセリア、空界にはどれくらいマナが溜まってる?』 イセリア「え?えっと……13の精霊の力もあって、もう随分安定してるけど。      あ、そういえば前に溜まったマナを結晶化させて作った創造の種、様子どう?」 悠介  『開花はしてないな。深冬じゃ開花できないかもしれない』 イセリア「そっか。どんなコが覚えるのか楽しみだね〜」 悠介  『……楽しそうだな』 まるで自分のことのように。 イセリア「や、ほら。わたしって一応魔術師だしさ。      だから興味には素直なわけですよ悠ちゃん教授」 悠介  『悠ちゃん教授言うな。確かに資格は持ってるけど、空界離れて結構経つ』 イセリア「でもまた行くんでしょ?また精霊たちと契約するために」 悠介  『……エスパー?』 イセリア「ツンツン頭みたいなこと言わないの。顔見ればなんとなく解るよ」 悠介  『………』 そんなに解りやすい顔してるだろうか。 謎だ。 悠介 「───ふう。それじゃあ悪い、提督、丘野、これから───あ」 鎌の解放を解き、いざ───って時。 ふと声をかけた提督と丘野は気絶して動かなかった。 悠介 「…………」 体験版とはいえ、少しは鍛えたやつらがこんなんで……本当に大丈夫だろうか。 俺は先の未来を思い、少し頭を痛めた。 【ケース43:晦悠介(再)/精霊勧誘絵巻】 さて、そんなわけで空界。 真っ先に訪れたのはサウザーントレント、癒しの大樹の前である。 悠介  「いや……時差とはいえ、こう明るいと拍子が抜けるというか」 イセリア「カタイこと言いっこ無し無しっ♪」 何故か俺の行動にイセリアがくっついてきていた。 暇だから付いてくー、とのことだ。 ドリアード『まあ、マスター。ようこそいらっしゃいました』 悠介   「久しぶり、ドリアード。その後の空界はどうだ?」 ドリアード『平和……と言いたいところですが、       相も変わらずメルヘンの勢力が増える一方で……』 悠介   「やっぱりメルヘンか……」 そのうち本気でなんとかしなきゃいけないんだろうが、 どうにもあいつらとは戦いたくないというか会いたくもないんだよなぁ……。 悠介   「竜王たちはどうしてる?」 ドリアード『シュバルドライン以外は相変わらずです。       それぞれの方角を守り、世界を見守る形で時を過ごしています』 悠介   「そっか」 ドリアード『マスター?今日はその近況を訊きに?』 悠介   「ん───あ、いや」 どうにも他に真意があると思ったらしいドリアードは、どこか嬉しげにそう訊いてきた。 まあ……ここであーだこーだ言ってても始まらない。 悠介   「今日は迎えに来たんだ。もう空界にも大分マナが満ちた頃だろうし、       それ以上増えないように安定させるために……また俺と契約してほしい」 イセリア 「わはー、なんだか悠ちゃん、告白してるみたい」 悠介   「う、うるさいっ!大体お前こそその『わはー』って、ベリーみたいだぞ!」 イセリア 「うえっ!?あ、わわ……!無意識に……!!呪い……?これって呪い……?」 悠介   「……まあイセリアは無視するとして───どうだ?受け入れてくれるか?」 ドリアード『───もちろんです』 ドリアードが穏やかな笑みを浮かべると同時に、俺の指に契約の指輪が現れた。 ドリアード『わたしは関心の無い者を、       いつまでも同じ呼び方で呼びませんよ、“マスター”』 そう言って、ドリアードは指輪の中に消えていった。 それから慌てたように、ネレイドやナイアードといった他のニンフたちも消えてゆく。 悠介  「………」 イセリア「……悠ちゃん、顔真っ赤」 悠介  「やっ……ややややかましい!!」 未だに感情の不意打ちに弱い俺は、 イセリアに言われるまでもなく顔が赤いことを自覚していた。 いい加減慣れないといけないんだろうが、 ここまで生きてそれでも治らないんじゃあ望みは薄い……というか無い。 かつて親友にそう断言された俺だからこそ、半ば諦めていたりもした。 イセリア「次何処行くの?考えてみれば、まずサーフティールに出るんだったら      ウィルオウィスプと契約するべきだったんじゃない?」 悠介  「大丈夫だ。『真打は最後に登場するものですから』とか言うだろうから」 イセリア「うわ……滅茶苦茶言いそうな言葉……」 悠介  「次はオリジンにしよう。      マナと癒しを先に契約し直して置いたほうが安定が早いと思う」 イセリア「あ、なるほど」 ───……。 そんなわけでマナの大樹の前。 俺はその大樹に手で触れ、意識をパキィンッ!! 悠介  「───お?」 オリジン「久しいな、マスター」 ……意識を潜らせる間もなく、まるで待っていたかのようにオリジン登場。 イセリア「わっ……悠介、首っ!首っ!」 悠介  「へ?ってうわっ!?」 イセリアに促されて見てみれば、既に俺の首に光り輝く元素の首輪。 悠介 「オリジン、これ───って居ねぇ!!」 首輪からオリジンへと視線を向けた筈が、 さっきまで虚空に居たオリジンは居なくなっていた。 代わりに首輪がキィンと光り、どうやら既に首輪の中に潜ったらしきことが判明……。 イセリア「……事情も聞かないで契約しちゃった……いいのかな……」 悠介  「ああ……えと、まあその、いい、んじゃないか……な?」 俺とイセリアの間に、奇妙な沈黙が訪れた瞬間だった。 ともあれ─── 悠介 「……うん。これでマナと癒しが受け入れられた」 この感覚も久しぶりだ。 ゆっくりと自然が俺の中に溢れてゆくこの感覚。 心地良く、なによりやさしい気持ちになれドシュンッ!!! ディー&ウィル『悠介さま(マスター)!!』 悠介     「う、わっ───!?」 感動の間もなく瞬間的に目の前に現れたのは……ウンディーネとウィルオウィスプだった。 どこか怒ってるような悲しそうというか、ともかく微妙な顔で。 ディー『何故ですか!何故わたしのところへ一番に来てくれなかったんですか!?』 ウィル『いいえマスター!出入り口でもあるサーフティールの頭上に存在する聖堂!     そこに居る私こそを何故一番に迎えてくださらなかったのです!!』 悠介 「あ、いや……落ち着けお前ら」 ディー『いいえっ!いいえ落ち着けません!!     癒しとマナの諸力が合わさって懐かしい波動を感じると思って来てみれば!!     これが落ち着いてなどおられましょうか!!』 ウィル『全精霊中最もマスターに尽くしたこのウィルオウィスプを、     よもやお忘れになられていたのですか!!?』 悠介 「あ、あのな?俺はただ、まずニンフたちとオリジンと契約して、     これ以上マナと癒しを溢れさせないようにしようとしてだな……?     それからお前らを迎えにいこうと……」 ディー『だったら何故まずオリジンのところへ行かずに女性であるニンフのところへ!!     そんなにニンフたちが好ましいんですか!?』 悠介 「ば、ばかっ!そういう問題じゃないだろっ!!」 ウィル『いいえマスター!それだけはしてはなりませぬ!     同じ男性としての精霊に会いに行くのならまずこのウィルオウィスプに!!』 悠介 「そういう問題でもないっ!!」 マナと癒しとの契約を果たしたことで空界中の精霊が反応したんだろう。 今この場にはイド以外の全ての精霊が集い、 追い詰められる俺を見て懐かしそうに苦笑している。 悠介 「懐かしんでないで何とかしようとか思わないのかお前らぁぁああっ!!!」 ノート『おっとそうだったな。     では契約するとしよう。これがわたしの【何とかしよう】だ』 悠介 「ノォオオオオトォオオオオオオッ!!!!!お前なぁああああっ!!!!」 文句を言うにも至らず、ノートはさっさと契約を完了させると指輪の中に消えてしまった。 悠介   「ちょっ……セ、セルシウス!救援要請を───」 セルシウス『却下します♪』 即答で断られた。 さらに俺の左手首に腕はを出現させると契約を完了させ、 フェンリルとともに指輪の中に消え去った。は、薄情者ッ!! 悠介   「ニーディア!お前は助けてくれるよな!?」 ニーディア『その程度、今のお前ならばどうとでも出来るだろう』 悠介   「やっ───こっちにも非があるような気がして強く出ることが───       って聞けぇえええーーーーーーっ!!!!」 そしてニーディアまでもがとっとと契約して指輪の中に消え、 それから助けを求めるまでもなく、 サラマンダー、シルフ、シェイド、ゼクンドゥスが契約を完了させて消えていった。 で─── 悠介 「地獄よりの使者が今まさに貴様の存在を求める。     ノーム……ノーム!!罪深き汝の名はノーム!!     汝、今こそ契約の下に呼びかけに応えよ!!」 ノーム『久しぶりに会ったのにいきなりそれかー!!     せっかく助けてやろうと思ったのになんだくそー!』 悠介 「なにぃ!?だったら助力を求む!」 俺はノームに協力を求めた! ノーム『見せたる!オイラの百万馬力!!』 ノームはやる気だ! 悠介 「やっ───悪かった!謝るから───」 ノーム『うるさいセクシーモミアゲー!そっちがその気ならこう呼んでやるかんなー!』 悠介 「モミッ……!?」 だめだ話にならない!ノームはやる気だ!! 悠介 「いい度胸だコノヤロウ……!!」 そしてやっぱり俺もやる気だ!! ノーム    『へへーん!前までのオイラだと思うなよー!         これでも秘密の特訓して強くなったんだぞー!         それにモミアゲは今、         ウンディーネとウィルオウィスプに挟まれて動けないだろー!         今こそ見せたる!オイラの百万馬力!!』 ディー    『悠介さま!わたしとの話がまだ終わってません!!』 ウィル    『その通り!まずは話が終わってから───』 悠介     『ちょお〜〜〜〜っと……待ってろ。な?』 ディー&ウィル『どうぞお通りください』 ノーム    『あれー!?』 ザワリと髪の毛が銀髪になり、目が真紅になった途端、 ウンディーネとウィルオウィスプが 輝かしい笑顔に汗をたくさん流しながら道を譲ってくれた。 ノーム『あ、あわわー!な、なんだその尋常ならざる力の波動はー!!     モミアゲー!お前どんな修行してたんだー!!』 悠介 『はっはっは、普通だよ普通……』 ノーム『う、うそだー!!』 悠介 「───とまあ威嚇はこれまでにしてと。悪かったな、ノーム。     お前の顔見るとどうしてもあの呪文を言いたくなるというか」 ノーム『な、なんだそれー!納得いかないぞオイラー!オイラが悪いのかー!?』 悠介 「そうだ」 ノーム『えぇっ!?』 悠介 「冗談だ」 笑いながらポムポムとノームの頭を叩いた。 ノームは『子供扱いすんなー!』と怒りつつも、何気にされるがままになっている。 ……そういえばいつかノートが言ってたっけ。 信頼する者に気安くされるのは悪くないものだ、って。 悠介 「契約、してくれるか?」 ノーム『……これが最後だかんなー?次あの妙な呪文言ったらオイラ絶交するぞー?』 悠介 「ああ、解ってる」 俺がきちんと頷くのを見ると、それで納得したように指輪となって消えるノーム。 悠介  「……ふう」 イセリア「ふーん?やっぱり悠ちゃんって人よりも人外って感じだね」 悠介  「───イセリア?なんだそれ」 イセリア「だってさ、笑いながら精霊の頭をポンポン叩いてた時の悠介、      まるで別人みたいだったよ?」 悠介  「……そうか?」 自覚がないからよく解らんが。 まあ、どっちだっていい。今はまず─── 悠介 「そういえばイドは?」 そう、この場に居ないどこぞの死の精霊が気にかかる。 ディー『悠介さま。彼が気配を感じて集まるどころか、     呼んでも来るような精霊ではないことはマスターも良く知っていると思いますが』 悠介 「あー……そうだったな」 考えるまでもなかった。 どうやら精霊の性格ってのは十数年程度じゃあ変わらないらしい。 悠介 「しょうがない、迎えに行くか───って、それよりも」 ポムと手を打った俺は、とりあえずウンディーネとウィルオウィスプとも契約を果たし、 ゆっくりとラグを構えて鎌を解放した。 悠介 「覚醒しろ。“万象担う創世の法鍵(スピリッツオブラインゲート)
”」 言葉が虚空に流れた刹那、空界の万象と精霊の力が流れ込んでくる。 それに鋭い眩暈を覚えつつ、だがしっかりと意思を以って安定へと導く。 イセリア「ゆ、悠ちゃ〜ん?」 イセリアの心配そうな声が耳に届く。 長続きはしないだろうけど、まだ平気な方だ。 だから俺はさっさとサーティナルラインゲートに意識を飛ばすと、 意識の手でその先に居るイドの気配を引っつかんで引きずり出した。  ズボォンッ!! イド 『───!?な……!!』 もちろん突然の出来事に、さすがのイドも驚愕気味だ。 けれど俺の顔を見ると、 諦めたような納得したような顔をして、さっさと契約したのちに右手首の輪に消えた。 悠介  『───よし。これで終了だな』 イセリア「そうだけど。や、本当にラインゲートからの召喚なんて出来るもんなんだね〜」 悠介  『俺も実際、出来るとは思ってなかったけど』 言いつつラインゲートを閉じ、大きく息を吐いた。 悠介  「はぁ。やっぱりいくら精霊になれたからって、ラインゲートの行使は辛いな」 イセリア「そりゃそうだよ。そこまで完全に使いこなしてたらもう完全に人間やめてるわ」 悠介  「まったくだな」 呆れる他無い。 などと小さく溜め息を吐いた瞬間、オリジンが首の輪から出てきた。 悠介  「オリジン?」 オリジン『それで?一体どんな用があるのだマスターよ。      マナの安定以外になにか用事があるように見えたが?』 悠介  「あ、ああ……まあその。ゲーム創るの手伝ってくれ」 オリジン『───』 ……こののち。 俺はそれぞれの輪から自己召喚して出てきた精霊総員に罵倒されることとなった。 精霊の力をゲームに使うとは何事か、とか。まあそんなところを。 ───……。 ……そうして、ようやくきちんとした説明を続けて説き伏せた頃には、 俺の精神は相当に参っていた。 考えても見ろ、精霊13体対俺ひとりだぞ? 弁解の言葉も説明も、散々罵倒に掻き消されたわ……。 オリジン『まったく……それならばそうと最初から説明をしろ』 悠介  「お前らが聞いてくれなかったんだろうがっ!!」 ノート 『地界人たちの鍛錬のための創造世界か。なるほど、中々に面白そうだ』 ウィル 『私も喜んで協力しましょう!ええ!マスターのために!』 ディー 『わたしの方がこのシャイニング変態より役に立ちますよ悠介さま!!』 ウィル 『シャイッ……!?この潤い肌がぁっ!!』 ディー 『潤い肌の何処が悪いのですかこの輝き太郎!!』 悠介  「頼む……この上喧嘩なんて勘弁してくれ……」 イセリア「どの世界に居たって悠ちゃんって相変わらずなのね……」 悠介  「もういいよ……」 今なら本気で泣けそうな気がした。 ノート   『さて。それでは地界に行くとするか』 シルフ   『わたしたちは何をすればいい?』 悠介    「あ、ああ。諸力のサポートとか弱まった紡ぎの補修とかを頼みたい。        オリジンとノートには精神干渉をより強固に」 オリジン  『解った』 ゼクンドゥス『私は何をすればいい……』 悠介    「創造世界の時間の流れの調節を頼む。        時間の流れを現実世界の半分にしてほしいんだ」 ゼクンドゥス『解った。任されよう……』 悠介    「ウィルオウィスプとシェイドは朝昼夜の光と闇を明確にしてくれ。        それぞれの属性の精霊がそういう方向を担ってくれると助かる」 ウンディーネ『それではわたしは水に潤いを』 悠介    「ああ。普通に飲めるくらいにしてくれていい」 シルフ   『となるとわたしは風だな』 サラマンダー『私は火、となるわけだが……平気なのか?私の火は火傷では済まんぞ』 悠介    「大丈夫。どんな怪我だろうが、        致死になるような激痛は降りかからない仕様だから」 ニーディア 『なるほどな。ならば我も存分に雷を放てるわけだな』 セルシウス 『……雪のフィールドはあるのですか?』 悠介    「一応考えてはいる」 まあ、開発段階だから断言は出来ないわけだけど。 ドリアード『わたしたちは自然の強化、ですね?』 悠介   「ああ。精神世界は精霊たちのほうが干渉しやすいと思う。       好きな部分を好きなように変えてくれていい。       特にノームには地盤の慣らしを頑張ってもらいたい」 ノーム  『任せとけー!見せたるオイラの百万馬力!』 ノームはやる気だ!! って、それはもういいから。 イド 『……俺はどうすればいい』 悠介 「魔物や猛者どもの死に様を見届けてくれ。     あいつら猪突猛進だから、機会があれば何度だって死ぬ」 イド 『……面倒なことも無しに“死”が見れるのか。     いいだろう、貴様のその提案を飲んでやる』 ニヤリと笑う死の精霊。 本気の本気で、死を見れればいいらしい。 悠介  「よし、と。それじゃあ各自目的は決まったな?」 オリジン『ああ。より確かなものにしたいのなら、      ウェルドゥーンの赤い魔女も呼ぶといいだろう。      性根は腐っているが、魔力は人にしては大したものだ』 イセリア「わたし、オリジンとは気が合いそうな気がする」 悠介  「ベリーの敵全てを仲間と思うのはやめような」 なにはともあれ、これで準備に専念出来そうだ。 すぐに完成───とまではいかないだろうが、なんとかなりそうだった。 Next Menu back