───冒険の書182/妖精さんの危機?───
【ケース489:中井出博光(再グローグ様)/僕らは金のまさかりを手放せない】 彰利 『お、おのれ許さんぞ……!よくも僕の友悠介を……!』 中井出「や、つーか晦もさ、起き上がってからも回復しないHPに     疑問を抱いてればこんなことにならなかったと思うんだ、僕」 彰利 『経験が飛んでから、彼ちょっと抜けてるからねぇ……だが許さん!     今ここで勝負だ!もはや油断はせんぞ魔王め!!』 中井出「あ、篠瀬さん」 彰利 『ヒィッ!?ややや夜華さんこれは違うんだ!     僕はキミをほったらかしにしてたわけじゃ───あれ?居ねー』 中井出「死ねぇええええーーーーーっ!!!」 彰利 『キャアアアーーーーーーッ!!?《ガギィンッ!》どわぁっち!?』 中井出「なにぃ!?」 なんと!彰利め、この博光の不意打ちクラッシュを黒の剣で受け止めおったわ!! 彰利 『キ、キミねぇ!実力はあるんだから正々堂々と戦おうとは思わんの!?』 中井出「思わん!」 彰利 『ちっとは迷えよテメェエエッ!!なに平然と外道発言してんのォーーーッ!!』 中井出「解ってないようだから言ってやろう!     俺に実力があるのではない!武器が強いのだよ彰利一等兵!     武器の無い俺などカスだ!     だから貴様がこの博光を打ち破ったところでなんのステータスにもなりはしない!     故に立ち去るのだ!ていうか見逃してくださいマジで!」 彰利 『そんなこと言ってまた不意打ちする気だろこの野郎!』 中井出「…………ソ、ソンナコトナイヨ?」 彰利 『図星なの!?エィイもういい!     貴様相手に油断は本当に禁物だということがよーく解ったわ!     ていうかむしろ思い出したね!貴様はそういうヤツだった!』 中井出「当たり前だ!見縊るな!」 彰利 『そこって誇るとこなん!?』 もちろんだとも! この博光、原中に身を置いて以来面白いことに首を突っ込み、 常識に常に挑み続ける姿勢を崩さぬ猛者よ! 油断なぞする方が悪い! そして僕はその隙を敵に作らせて突くのが大好きです! 外道と呼びたくば呼ぶがいい! 戦いとはそういうものだと!戦いとは油断した方が馬鹿なのだと! 戦いとは相手を見下してさっさと能力を解放しない方が激烈馬鹿なのだと! 僕は様々な漫画やアニメから学びました! 彰利 『ヌッ───フンッ!』 ギャリィンッ! 中井出「ぬおっ!?」 鍔迫り合いのように押し合いをしていた刃が力任せに俺ごと吹き飛ばされる。 チィくそう!やっぱりレベル倍化はハンパじゃあねぇ! 彰利 『俺の中で貴様は確実に強敵と決まった!弾けろ漆黒!バレットアームズ!!』 ゾンフィフィフィフィフィフィィンッ!!! 中井出「オ……アッ!?」 彰利の影がゾブゾブと範囲を増やし、その影から無数の剣が飛び出る。 それは彰利の背後の景色を闇の剣で埋め尽くすほどの数だ─── 中井出「あ、あのー、つかぬことをお訊きしますが」 彰利 『死ねぇえーーーーーっ!!!』 中井出「オアーーーーーッ!!?」 ガガガォンガォンガォンガォオオンッ!!! 問答無用で闇の剣が飛んできました! ちくしょう彰利の野郎本気で俺をコロがす気だ! そしてこうなったからにはもちろん僕も彼をコロがす気です! 中井出「“解除(レリーズ)”!!」 キュバァンッ!!───長剣を双剣化させ、さらに六閃化を発動! そんでもって───プスンッ。 中井出「あれ?うわオワァア!!ここここんな時にマグニファイ切れたぁああっ!!!」 いや落ち着こう僕!こんな時こそストック解除!! ───ヤベェエエ!!ストックにアビリティ詰め込んどくの忘れてたァアアア!!! なのに無情にも降り注ぐ剣!困惑する俺を見て高らかに笑う彰利! 中井出「ぬ、ぬおおおおおおおおおおお!!!!     負けっかぁあああああああああああああっ!!!!」 こんな僕にも意地はあります。 それはコロがされたくないということではなく、 高笑いしてるヤロウに吠え面かかせてやりたいという “純粋なハート”から産まれた意地です。  フィガガガガガガガガガガガガガギギギギィンッ!!! 双剣を振り回す振り回す振り回す振り回す!! 六閃化した双剣をこれでもかというほど振るいまくり、 降り注ぐ剣を叩き落してゆく! もちろん光属性を込めて、闇の剣を消滅させることを忘れない。 じゃないと叩き落した先で黒に戻った剣がなにをするか解ったもんじゃないから。 彰利 『ドフィドフィドフィ!!なかなかやるじゃあねぇか〜〜〜っ!!     ならば───速度アップ!!受けきれるかな!?』 ゴォッ───!! 中井出「いぃっ!?」 剣の速度が嫌なくらいに速まった!! あ、ヤバイ。このままじゃヤバイ。 彰利 『ドフィドフィドフィ!!どうやらついてこれねぇようだなぁ〜〜〜っ!!     闇が消され続けてるのは相当辛いところだが、この勝負は俺の勝ちだ〜〜っ!!』 中井出「ぬ、ぬああああああああ!!」 ザクザクゾシュゾボゴシュドシュズシャアッ!! 中井出「ギャアーーーーーーッ!!!」 体が刻まれてゆく。 弾く速度が間に合わない……!このままじゃ───ッチィ!! 中井出「───ヒュウッ───ぬぁああああああっ!!!!」 フィギギガガガガガガガガギシャシャァンッ!!! 彰利 『……回転速度が上がった!?馬鹿な!この局面でなにが出来たというのだ!』 中井出「18!24!30!36!42!48!54!60───!!」 バヅンと視界が飛んだ。 だが構わずに双剣を振るう。 4回振っただけであっさりと視界が飛ぶなんて条件の厳しすぎる攻撃。 超速剣疾風斬と呼ばれるそれは、さっきまでの俺の剣速なんて軽く越し、 降り注ぐ闇の剣を片っ端から破壊して消滅させてゆく。 声  『コ、コノヤロー!     そんなチンケな技でこの将軍さまに楯突こうなんて10年早いぜーーーっ!!』 目は見えない。 が、こういう状況になったらムキなる相手だってことくらい俺にも解る。 燃え盛れ心眼テオハート! 彼奴めの攻撃を的確に弾くのではない……近づくもの全てを薙ぎ払え! だってどうせ見えないし! 中井出「120!132!144!156!168!180───!!」 身体能力が明らかに向上してゆく。 いまやただがむしゃらに振るってるだけのジークムントとジークリンデが、 予想通りにムキになって超速度で放たれ続ける剣を弾き殺してゆく。 ───視界が閉ざされたからってそれが限界ってわけじゃない。 疲れを知らないこの世界にとって、 どれだけ剣を振るおうが息切れなんてものは存在しないのだから。 声  『ア、アワ……アワワ……!ば、馬鹿な……ば、馬鹿な……!!     この数!この速度だぞ!?こんな馬鹿なことがあってたまるか!     なにかの間違いっ……!インチキっ…………これはインチキ………………!     最大速度なのに───《マジュウンッ!》ア……ウォァア〜〜ッ!!」 中井出「───!」 オーダー解放時特有の声のブレが消えた───? 真由子さん!今!! 中井出「“義聖剣(ぎしょうけん)”!!」 キュバァンッ!! 中井出「エネルギー───全ッ開ッ!!」 ヒュフォゾガガガギィンッ!! 闇を破壊尽くされたために解除状態となったであろうオーダーの残りの闇の剣を、 長剣化したのちにギミックを利用し、 槍状にしたジークフリードを大きく振るうことで叩き落す。 もちろんそれで全部かどうかなんて確認のしようがないんだが、 それでも彰利が立っていた位置くらいはなんとなくだが覚えてる気がする! 中井出「ジュースティング!スラッシャァアアーーーーーーッ!!!」 ギリィッ───バッガォオオンッ!! 光の突撃槍の一撃を烈風脚の速度をプラスして叩き込む! これさえ決まればドゴォオオンッ!!! 中井出「ホゲルギャアアアーーーーーーッ!!!?」 …………アア…………この冷たい感触…………! アハハ……コレ……壁ダァ…………!  ……ドグシャア……。 ───結論。 人生そう上手くいきません。 どうやら剣を弾くのに夢中になりすぎた所為で、彰利が立っていた位置を誤ったらしい。 思いっきり壁にぶつかったらしい俺は、 そのまま地面にドシャアと倒れてピクピクと痙攣してました。 声  「……恐ろしいヤツよ。まさかゲームの中でとはいえ、     この彰利の闇全てを破壊してみせるとは……。     しかも俺の攻撃よりも自爆でこそ大ダメージを受けるとは……。     こいつだけはここで始末せねば……     のちにきっと私の障害となるだろう。悪く思うな、少年……」 そして、闇の剣を放ってた時から 妙にそれっぽい雰囲気とセリフを吐き出してた彰利が、倒れる僕の傍に立つ気配。 ああ……やばい……。やばいって解ってるのに世界が回ってる……。 このままじゃコロがされるな……ヤバイなぁ……。 ヤバイのに世界が回ってて動けないや……。 動けないから───ランダムルーレット発動……!!  ピキィンッ!ダラララララ─── 声  「ギャア!な、なななに!?なんの音!?───貴様なにかしおった!?     ……ええいどうでもいい!貴様をコロがせば全て───!」  ジャンッ!《博打No23!自爆!!》 シュカァッ───!! 声  「いや──……」
【Side───晦悠介】 ドォオッゴォオオオオオオオオン!!! 悠介 「だぁぅわっ!!?」 教会から出た途端、町の外れから巨大な火柱と爆煙が立ち昇った。 ああ……ありゃあ中井出花火だな……。 どんな経緯があったのかは知らんが、また無茶なことを。 って、確かランダムなんだよな。 悠介 「おーおー、火柱に巻き込まれて人影が二人ほど飛んでってるな」 間違い無く彰利と提督だろう。 自分が発動させた能力で吹っ飛ぶなんてほんと名前通りの自爆だよな。 悠介 「……戻らないほうが身のためだって思ったが……」 様子、見にいってやったほうがよさそうだな……。 【Side───End】
シュゥウウウ……ゴコッ……パラパラ……ゴ、ゴコッ…… 中井出「カカカカカカカ…………!!」 爆心地で瀕死になりつつ起き上がった。 いやもう毎度毎度とんでもねぇ威力と惨劇を巻き起こしてくれる能力です。 これだから博打はやめられないねグオッフォフォ……!! ……って、あれ? 中井出「み、見える!見えるわ!世界が見える!」 ああ!憧れていた青空があんなに近くに!! ……じゃなくて。 中井出「ぬ、ぐぐぅ……!!」 体勢を立て直し、ちゃんと立ったのちに周りを見渡した。 家は……あーあ潰れちまったよォ!どーすんのコレお前の所為だよコレェ!! でもなくて。 中井出「───居た!《ギャオッ!!》」 瓦礫に埋もれて倒れている彰利を発見するや、 俺は即座に……効果音だけ立派なままに、 のたりのたりとゆっくりと彰利に向かって進んでいった。 グウウ……!疲れはないとはいえダメージが辛いのは当然のこと……! メキメキと軋む体の所為で思うように前に進めやしない……! 中井出「フ、クハハハハ……!無様よなぁ彰利一等兵……!」 彰利 「ウ、ウウ〜〜……」 中井出「ちょ、ちょっと待っといで……今からそっち行ってコロがしてあげるから……!」 彰利 「なんつーか……キミのほうがよっぽど瀕死に見えるんだけど」 中井出「任せてくれたまえ」 実際HP1だし。 なんて考えてる暇があるならまず回復アイテム使おう。 中井出「輝けハイポーション!“アイテムマグニファイ”!!」 マキィンッ♪《ハイポーションの能力が引き出された!味わいが深くなった!》 中井出「……あれ?」 味わい深くって……もしかしてそれが潜在能力? 試しにゴキュゴキュと飲んでみるが───マキィン♪ 中井出「ウオッ!?こりゃ美味い!───……でも回復量一緒だ……なにコレ」 だが体に活力が沸いた! 今なら───今ならコロがせる! そう思った僕は彼が挟まっている瓦礫までを走り、彼を見下ろして言った。 中井出「ご、ごめんっ……これでも急いできたんだけどっ……!ま、待たせたよね……!」 彰利 「ううん、わたしも今来たところだから」 中井出「じゃあ死ね」 彰利 「うおお前後が繋がらねぇえーーーーーーっ!!ギャア待ってぇえ!!     オイラまだ金預けてないから奪われるわけにはーーーっ!!!」 中井出「キョホホ!今の言葉を聞いてさらにコロがしたくなったぜ〜〜〜〜〜っ!!」 さあいざ!と、霊章から双剣を取り出し、 すぐさま頭上で長剣化させると、仰向けに倒れ伏す彰利目掛けて一気に───!! 声  「待てっ!!」 中井出「───ぬっ!?なにやつ!!」 彰利 「《ゾヴシャア!!》ギャアアーーーーーーッ!!《シャアア……キラキラ》」 悠介 「あ」 中井出「あ」 呼びかけられた所為で手元が狂い、見事に彰利の心の臓を貫いた僕は、 なんだか肌寒い風を身に浴びながら途方にくれていた。 中井出「貴様……!よくも……よくも彰利を!!」 悠介 「へ?あ、いやちょっと待てぇっ!!     それ俺のセリフだろ!!───セリフだよな!?」 中井出「違うのだ!僕はギリギリのところで止めて、     “もう追ってくるな……”とシヴく決めるつもりだったのだ!     それなのにキミが急に話し掛けるから!!」 悠介 「お前それ絶対ウソだろこらぁっ!!」 中井出「いやマジだよ!?これほんとだよ!?     そんな僕が喋るからってなんでもかんでもウソにしないでよほんとだよ!     というわけであのー、     会話が前後繋がってないのは重々承知なので見逃してくれません?」 悠介 「断る。今のお前ならHPも少ないようだしなんとかなる」 中井出「………」 どうしてこんなにも僕をコロがしたがるのでしょうか皆様は。 だがいいでしょう、そうまで言うのならこの僕にも考えがあるのです。 ……ウソです、なんにも考えなどありません。 くそうこれじゃあエンドレスじゃないか! 彰利を倒せても晦が来て、晦を倒せても彰利が来る……! なのにどれだけ戦っても経験値は入らないとくる! これじゃあどうすることもできーーーーん!! 中井出「………」 悠介 「………」 ……逃げんべ。 大物っぽく見せて一旦引くなら許してくれる筈さ。 だって狂いし者の正体がヤツなら、ヤツだって二回くらいはやってたと思ったし。 だから─── 中井出「フフフ、なかなかのしぶとさだ。この戦い、次に預けておいてやる」 悠介 「え?……い、いやちょっと待て、     預けるもなにも俺は今ここで、HPの少ないお前とだな」 中井出「せいぜい次に会う時までに腕を磨いておくのだな───フハハハハ!!」 ダダッ!!───そして始まる僕の逃走劇! ザザァッ!───しかし回り込まれた!! だが甘し!! 中井出「“フロート”!チョイアァーーーッ!!」 悠介 「なにぃ!?」 重力マイナス状態にして思い切り地面を踏み弾き、大空へと逃走! やがて空に舞う風にさそわれながら、当てもなく流されてジュギィンッ!! 中井出「あれ?《ガクンッ!》オワァーーーーーーーーーッ!!!?」 跳躍した体が地面目掛けて落下してゆく! 馬鹿な何故!?フロートがまったく効かーーーーん!!  ドゴォオオオオオンッ!! 中井出「ギャアーーーーーーッ!!」 そして見事に大地へと落下する僕。 しかもハイポーション程度の回復しかしてなかったもんだから瀕死状態である。 中井出「だ、誰だ〜〜〜っ、こ、こんなひでぇことしやがるのは〜〜〜〜っ」 遥一郎「俺」 中井出「おおホギッちゃんではないか」 遥一郎「普通にホギッちゃん言わないでくれ頼むから……。     っと、そんなこと言ってる場合じゃないんだ!エィネ、知らないか!?」 中井出「うむもちろん知ってるぞ。妖精だろ?《モグモグゴキュゴキュ》」 遥一郎「そういう意味で言ってるんじゃないっ!     エィネを見なかったかって訊きたいんだよ!」 中井出「ぷはっ……エ?それって……」 とりあえずグミやポーションを飲み食いしまくってHP完全回復完了……は、いいんだが。 アレ?そういやホギッちゃんの肩付近にいつも(?)浮いてたエィネの姿がないな。 まさか行方不明!? 遥一郎「ここでログアウトしたからここに居なきゃおかしいのに居ないんだ。     だから以前一緒に居たお前ならなにか知ってるんじゃないかって───」 思って、空飛ぶ僕を重力魔法で地面に激突させたと。 遥一郎「おかしな噂も聞いたんだ……妙な男が周りをキョロキョロ見渡し続けながら、     コートを丸めたみたいなものを持って街の外に走っていったって」 中井出「な、なんだってーーーーっ!!で、ではエィネは攫われたというのかナワヤ!」 遥一郎「誰がナワヤだ!!」 中井出「……コイブチ?」 遥一郎「MMRから離れてくれ!こんな冗談言ってる場合じゃないだろ!?」 中井出「そんな場合だからこそ敢えてやってみせるのが原中の心」 遥一郎「解った!原中魂がどうとかはもう解ったから!お前なにか知らないか!?」 中井出「ぬう……ホギッちゃんよ。貴様がここにログインしたのはついさっきなのか?」 遥一郎「あ、ああ……観咲たちに捕まらないようにって、     時間ずらしてからログインしたんだが……」 何気ない会話の中から彼の気苦労が知れた瞬間でした。 そして僕は理解したのです。 恐らくこの世界は誰かがログインした時から全世界が動き出す仕組み。 仮説を立てるならこうだ。 僕と晦が早めにログインしてしまったことで、 そこにはホギッちゃんがログインするまでの空白の時間が発生していたのだ。 そう。エィネはその時間のうちに攫われてしまった───そう考えるのが妥当だろう。 中井出「さすがに何処に行ったかまでは知らないなぁ」 遥一郎「そ、そっか……。じゃあ妖精の世界に行って、     そこに居るやつらに誰に連れ去られたかとか聞けないか?」 中井出「む、無理だ〜〜〜っ!な、何故なら妖精の世界とこのフェルダールとは     別世界として隔離されているからだ〜〜〜っ!     お、恐らく妖精界からこちらの状況は見れたもんじゃねぇぜ〜〜〜っ!!」 遥一郎「……お前ってこういう状況でも余裕でふざけられるんだな」 中井出「状況は楽しんだモン勝ちだと思ってるから」 遥一郎「はぁ……ところでその背中の子供たちはなんなんだ?」 中井出「や、それがさ。ちょっと能力の暴発みたいなのが起きて、     我が能力の前に眠りについてしまったのだ」 遥一郎「そ、そうなのか」 さて、そろそろ真面目に考えよう。 妖精を攫うヤツなんて、子供か珍しいモンコレクターとかそんなやつくらいだろう。 そこから導き出される答えは───そ、そうか〜〜〜〜っ!! 中井出「ホギッちゃん!見世物小屋だ!見世物小屋を探すんだ!」 遥一郎「見世物小屋!?……って、まさか」 中井出「うむ!ロマサガシリーズでそういうイベントがあったのだ!     この世界が我らの思考の中から構築されているのだとするならば、     きっとそういったイベントもあったに違いない!故に見世物小屋だ!」 遥一郎「ようするにこれはお前らの斬新な思考の所為で起きた事件ってわけか」 中井出「や……そう冷静に分析されると僕としても辛いんですが……」 遥一郎「けど……見世物小屋か。………………聞いたこともないぞ?」 中井出「うん僕も」 遥一郎「………」 中井出「………」 そもそも俺は、守護竜イベントの所為で他のことを蔑ろにしまくっていた修羅である。 そんな見世物小屋だとかそーいう噂なんて聞いたことが──────いくら考えても無い。 遥一郎「じゃ、じゃあ……なにかそういう話に詳しそうなヤツは居ないのか?」 中井出「うむ居るぞ?」 遥一郎「だったらすぐ呼ぶとか行くとか行動起こすべきだろここは!」 中井出「お、おお?」 なんだかホギッちゃんが人が変わったように怖い……! 以前はあんなに大人しい人だったのに……! 力を手に入れると人は変わってしまうって話、本当だったのだわ……! まあそれはそれとして。 中井出「じゃあまず───」 遥一郎「まず?」 中井出「アレをなんとかしてください」 スッと指差し向こうを促す。 するとズドドドドドと、 まるで全力疾走するスピードワゴンさんの如く走ってくる晦と彰利が。 遥一郎「晦に弦月……じゃないか。どうしたんだ?」 中井出「なんでも僕を殺して名をあげたいらしいよ?」 遥一郎「…………弦月は解るけど晦までもか……」 中井出「感情が戻ったらしくてさ。今の彼は前までの彼じゃない。気をつけるのだぞ」 遥一郎「ああ。《ザッ……》……ってちょっと待て!俺がなんとかするのか!?俺が!?」 中井出「当たり前だろうがこのクズが!     貴様に落とされた所為でこの博光の回復アイテムはほぼ消滅したんだぞ!?     そのアイテム分の価値は戦ってもらわなければ気が済まぬわ!!」 遥一郎「現金一括でたのむ」 中井出「謝謝」 解決した。 遥一郎「それで、あいつらはどうするんだ?」 中井出「はっはっは、任せてくれ。シード!出番だ!!」 シード『《ビクゥッ!》は、はい父上!!───あれ?ここは……?』 中井出「ここがどこかはどうでも良し!     今すぐ死人の森まで転移せよ!レッツファイクミー!!」 シード『サーイェッサー!!闇法転移!《ミジュウウウン……!!》』 シードが魔力を発する! それとともに頭上に黒いゲートが開き、 横から見れば闇の柱にでも見えそうな感じに僕らに舞い降りた! 中井出「“握手(アクセス)”!!」 遥一郎「《がしぃっ!》うわっ!?」 だがシードのことだからちゃんと説明しとかないと他者は置いていきそうなので、 しっかりとホギッちゃんの手を握ると─── 僕らはゲートにいざなわれるままに虚空に浮き出したのだった。 彰利 「なにぃ!?逃げる気か提督てめぇ!!」 中井出「うるせぇ羅武てめぇ!!用があるって言ってるでしょ!?     もう僕のことはほっといてくれたまえ!」 彰利 「らっ……羅武関係ないでしょ!?もう忘れてよあんな奇妙なニックネーム!」 悠介 「うるせぇぞ羅武てめぇ!ギャーギャー騒ぐなヒトデアフロ!!」 彰利 「なしてここでキミまで羅武てめぇ言うの!?     そしてよく見ろコノヤロー!俺普段と変わらぬツンツン頭でしょ!?」 悠介 「うるせぇぞ羅武てめぇ!!」 彰利 「改めても羅武てめぇ!?     ちくしょう親友がものすげぇ賑やかなヤツになっちまった!     嬉しいのにちょっぴり寂しい!───とか言ってる間に魔王が逃げてゆく!     待てコノヤロ《バヂィッ!!》ギャアーーーーーーーッ!!」 彰利が闇の空から舞い降りるゲートに触れた途端に弾かれる。 おお、もしかしてこれはあれなのか? 否!あれじゃなかったとしても言ってみたから言う! 中井出「無駄だ彰利一等兵!これは“反膜”(ネガシオン)という名のゲート!     大虚が同族を助ける時に使用するものよ!この闇の光に包まれたが最後!     闇の内と外は干渉不可能な完全に隔絶された世界となる!     貴様は最早我らに触れることすら叶わんのだ!!」 彰利 「な、なにぃいいーーーーっ!!?魔王てめぇいつから虚になったんだ!?     卑怯だぞコラ降りて来いコラモービー!!」 中井出「うるせぇぞ羅武てめぇ!!」 彰利 「だから羅武関係ねぇって言ってんでしょ!?なんか今悠介が     モミアゲモミアゲ言われるのを嫌がる気持ちが解っちゃったよもう!!」 悠介 「気休めはよせよ羅武てめぇ……」 彰利 「うおおなにそのモミアゲの辛さは貴様にゃ計れんって言葉!!     しかもやっぱり羅武てめぇだし!     ───って言ってるうちに中井出もう消えそうだし!」 見上げる彼らと見下ろす僕。 おお、せっかくだからここで魔王っぽいことのひとつでも言ってみよう。 中井出「さらばだ勇者よ……ここは貴様らの勝ちにしておいてやろう……。     だが忘れるな。次に会った時こそが貴様らの最後だ……多分」 悠介 「多分なのかよ!」 彰利 「ものすげぇ自信の無い魔王だなオイ!!」 中井出「突き進んだら普通ではいられない……たとえそれが魔王でも。     知るがいい勇者よ!この魔王博光は常識破壊の魔王となる!     貴様らの常識などこの博光が破壊してくれよう!それがこの博光の野望!!」 彰利 「うるせー!!この博光この博光しつけーんだよ!」 中井出「大きい声出すんじゃないのォ!     アンタはもうホンット人の揚げ足ばっかり取ってェエ!!」 彰利 「べつに揚げ足なんて取ってねーでしょ!?こちとら文句言ってんだ文句!     魔王宣言するならせめてもっとそれっぽいところでしろコノヤロー!     なんでよりにもよって城下町でするかね!!」 中井出「え?その方が普通じゃなさそうでいいじゃん」 悠介 「お前本当に魔王の自覚あるのか!?     喋り方が普通過ぎてこっちの覇気まで削がれるんだが!?」 中井出「無茶言うな晦一等兵!俺ゃ平凡な一市民なんですよ!?     それがどうして魔王になったからってデカい態度が取れましょう!!」 彰利 「魔王って時点で一市民じゃねぇでしょうが!」 中井出「うるせぇぞ羅武てめぇ!!ひっこんでろクズが!!」 彰利 「あの!?メッチャクチャ態度デケェんですけど!?」 中井出「ともかく!これから俺はちょっと用事があるから出かけるけど!     今度会った時は必ず《ビジュンッ!》」 ……。 悠介 「消えたァアーーーッ!!喋り途中で魔王消えたァアーーーーーッ!!」 彰利 「ダッセェエエーーーーーーッ!!     前代未聞すぎてあまりにもカッコつかねぇーーーーーッ!!!」 ───……。 Next Menu back