───冒険の書183/自然要塞と竜宝玉の法則───
【ケース490:中井出博光(来再葛藤)/ガイが見参した時僕は体育座りだった】 …………。 中井出「ルールルー……ルールルー……ルールールールール〜ル〜……」 遥一郎「喋り途中で転移してキマらなかった気持ちは解るけど早く立ち直ってくれ!」 荒野と化し、多少の木々が残っているだけのここ、 死人の森で体育座りをして鼻歌を鼻ずさんでいる僕……こんにちわ、中井出博光です。 シード『す、すいません父上……!     出来るだけ転移を引き伸ばしたのですが、さすがにもう限界で……!』 中井出「ウンイヤアリガトウ。咄嗟に機転を利かせてくれただけでもアリガトウさ……。     シードはこの博光の自慢の息子だよ……」 シード『ち、父上……!《じぃいん……!!》』 遥一郎「いや……だからさ……」 中井出「うむもう大丈夫だホギッちゃんよ!それで俺はなにをすればいい!?     脱げというなら上半身までなら脱ぐが!!」 遥一郎「誰も脱げなんて言わん!!エィネがどうなったかだろ!?」 中井出「ああそうだった……すまん、思いの他動揺してるみたいだ……」 遥一郎「動揺してたら服を脱ぐのがお前の魔王象なのか」 中井出「そうだとも!!」 遥一郎「今すぐ全魔王様に謝れ!!!」 そんなつもりはサラサラ無し。 というわけでエィネが攫われた先を調べるべく、エーテルアロワノンへ向けて歩き出す。 っていっても目と鼻の先だけどさ。 シード『しかし父上。ここに転移してなにをするつもりなのですか?     と、ととというか……何故僕は父上に負ぶさっているのでしょうか……!?』 中井出「まず1!ここに来たのはエーテルアロワノンに行くため!     そして2!……息子が眠りについたのに捨て置けるわけがないだろう……?」 シード『ちっ……父上ぇえ……!!』 遥一郎「お前さっき自分の力で眠らせちまったとか言ってなかったか?」 中井出「ザ・気の所為!さあシードよ!エーテルアロワノンに行こう!     そこでさらなる冒険が僕らを待っている!」 シード『はい父上!!』 遥一郎「……騙されてるうちって大体のヤツが幸せなんだろうな……」 元気に返事をしたシードが我が背から飛び降り、僕らとともに歩く中。 ふとホギッちゃんがそんなことを小さく漏らした。 うむ、世の中そんなもんよ。 信じてる内だけが幸せなのだ。 だが別の幸せも当然ある。 騙されてる内だけが幸せだなんてことなどないのです。 中井出「ところでシードよ。ナギーが起きないのだが」 シード『……おいドリアード。起きているんだろう。さっさと降りろ』 ナギー『………』 シード『ぐっ……寝たふりか貴様!     降りろと言っているのが聞こえないのか!貴様ばかりずるいぞ!』 中井出「え?なにが?」 シード『えっ!?あ、いえその……ぼ、ぼぼ僕も……うぅ……』 遥一郎(……なるほど。子供に好かれるヤツってのはハタから見るとこんな感じなのか) 中井出「んあ?なんか言ったか?」 遥一郎「いいや」 なにか言ったような気がしたんだけど……気の所為だったのかな。 まあいいや、エーテルアロワノンについたことだし───…………こ、こと……だし? 中井出&遥一郎『え゙ぇええええええええっ!!?』 辿り着いてみて大驚愕!! なに!?何処ここ!エーテルアロワノン!? あの花舞う都!?ウソでしょう!?都っつーかこれもう───!! 遥一郎「よっ……よ、よよよ……!!」 シード『よよよよ……!よ……!』 中井出「よっ……要塞だぁああーーーーーっ!!!!」 神様……僕は幻を見ているのでしょうか……。 ああいや、幻じゃないほうがむしろ嬉しいかもしれないけど─── ともかく……見上げたそこは、都ではなく自然要塞と化していました。 【ケース491:中井出博光(再キックフォース)/自然要塞エーテルアロワノン】 要塞……その言葉はまさにこのことッッ! そんな言葉が似合うソレは、いやもうほんと要塞だった。 歩いてきてここまで来るのに気づかなかった自分たちがアホウのようだ。 否定はしないが。 中井出「ナ、ナギーよ、これはいったいどうなっているのだ……!」 ナギー『ぬうこれは……!』 中井出「し、知っているのか雷電……!」 シード『ド、ドリアード貴様!僕が散々声をかけても喋ろうともしなかったくせに!!』 遥一郎「すまん、少し黙っててくれ」 シード『ぐっ……』 ナギー『こ、この要塞は恐らく、わしから流れる然の力がそうさせたものなのじゃ……!     わ、わしの力は今、レベルアップや先代の宝玉や戒めの解放により、     極端に上昇している状態じゃからの……!     さ、さらにシードの力も精霊の力の解放とともに、     弱体化するジュノーンから流れる力によって増強……!     死人の森から今だ流れる力を以前よりさらに抑えることにより、     こうした奇妙な出来事が発生したのじゃと推測するのじゃ……!』 中井出「ぬ、ぬうそんなことが……!」 シード『そうか……精霊の解放でジュノーンは弱体化。     その分の“ナーヴェルブラング”の力が僕に……』 中井出「シード……」 シード『あ、いえ、気にしないでください父上。僕の父は父上以外には存在しません。     ナーヴェルブラングは確かに僕をこの世に誕生させましたが、     特別なにかを残し、学ばせてくれたわけではありません。     しかし僕は父上からたくさんのことを学びました。     世を楽しむこと、敵に勝つことの喜び、敗北することの悔しさ……     そして、その先で強くなれるという事実を!     だから僕にとっての父は、父上……貴方以外には在り得ないのです!』 中井出「シード……おおシード……!我が息子シード……!」 シード『父上……!』 ナギー『む……あーごほんごほんごほんっ!なにをしておるのじゃヒロミツ!     さっさと中に入って状況を見極めるのじゃ!』 中井出「ぬ?お、おおそうだった」 シード『あ……うぅう……!』 中井出「?」 なにやらシードがギラリとナギーを睨む。 む、むうう……!今、この博光の周りで何かが始まろうとしている……!! 気の所為かもしれんが。 ───……。 ……。 なにはともあれエーテルアロワノン。 地図の名前が自然要塞とかになってるのには純粋に驚いたが、 そんなことはこの際どうでもよろしい。 問題なのは猫やドワーフが無事かどうかなんだが─── ドワーフ『やあ』 普通に挨拶されました。 もちろん俺もやあと返し、バカデカい大木の上で椅子に座ってお茶を頂いていた。 ドワーフ『いやいや驚いたわい。急に花舞う都がこんな要塞になっちまうんだからな』 遥一郎 「俺としてはそんな状況の中でお茶を優雅にすするお前のほうが驚きだ」 中井出 「なにを言っとるのだホギー。そんなの全然普通だろ」 遥一郎 「原中を基準に考えないでくれ!!それとホギー言わない!」 ナギー 『ふむ。まあ困っているわけではないのならそれでいいのじゃがの』 アイルー『困るなんてことないニャ。逆に外敵から身を守るのに最適なくらいニャ』 ドワーフと猫が集まる中、こうしてのんびりお茶をすする……ああ風流。 風流の意味するところなんて実際知らないわけだけど、 それっぽい雰囲気だってことにしておこうか。 アイルー『ところで旦那さん、今日はどういった用ニャ?      また武器の仕立てかニャ?旦那さんの武器なら喜んで預かるニャ』 中井出 「あ、ああ。それもあるのだがな猫よ。今日はちと訊きたいことがあるのだ」 ドワーフ『込み入った話なら席を外そうか?』 中井出 「待った。ドワーフにも訊いておきたいことなんだ」 ドワーフ『そうか?では聞こうじゃないか』 中井出 「うん」 コクリとホギッちゃんと頷き合うと、俺はやがて口を開いた。 さっきから開きまくりだが、とにかく開いたのだ。 中井出 「見世物小屋、とかってどっかに無いか?      面目ない話なんだが、エィネ……一緒に居た妖精が攫われちまってさ」 アイルー『見世物小屋ニャ?』 ドワーフ『そんなものがまだ存在しておるのか……。人とは懲りない種族だな』 遥一郎 「知ってるのか!?」 中井出 「落ち着けホギー!」 遥一郎 「ホギーって言うな!」 ドワーフ『バカモンが。      ドワーフはつい最近まで氷付けだったとそこの嬢ちゃんが言ったばかりだろう。      最近起きたことなんて知るわけがない』 遥一郎 「それじゃあ氷付けになる以前のことは!?」 ドワーフ『今より何年何十年も前の話が当てになるのか?』 遥一郎 「…………無理だな」 がっくりと項垂れた。 どうやら一緒に居たヤツが攫われたって現状で物凄く罪悪感を持ってるらしい。 落ち込み具合がハンパじゃない。 アイルー『誰か知ってるニャ?ちなみにボクは知らないニャ』 ジニー 『ボクも知らないニャ』 次々とボクもボクもという声が上がってくる。 ああダメだこりゃ……世界を旅する猫たちならきっと知ってると思ったのに。 アイルー『ダメニャ。誰も知らないみたいニャ』 遥一郎 「そうか…………あ、じゃあここに居ない誰かとかは───」 アイルー『…………ジョニーが居ないニャ』 中井出 「ジョニーか。確かにあいつならいろんなこと知ってそうだな」 アイルー『でもジョニーは中々奔放なヤツニャ。      行動力があるから、一つの場所に留まることが滅多にないニャ』 うん、俺もそう思う。 だったらどうするか?これしかないだろう。 中井出「猫たちよ!耳を塞げ!アイテムマグニファイ!イン・ザ・タマの鈴!!」 シュガァアッキィイインッ!!! 手にしたタマの鈴にマグニファイを通す! そして鳴らす!思いっきり!! 中井出「さあ!おいでませジョニィイイーーーーーーッ!!!」 コシャアッキィイインッ!!! パワーアップしたタマの鈴が大気を震動させる! さあ!結果は如何に!? アイルー達  『お客様は神様ニャア!!』 中井出&遥一郎『《ズキィイイーーン!!》うおおおうるせぇえーーーーーーーっ!!!』 耳塞いでても塞ぎきれなかったらしい。 俺の前にジュザンヌと奇妙な擬音とともに滑り込んできた猫たちは、 注文を今か今かといった目で俺を見上げていた。 中井出  「えっと……まあその。この鎌をジークフリードに合成してください……。       あとこの金でナギーとシードの武器の強化を……」 アイルー達『毎度アリニャ!!』 ゴニャアァアアアオォォォォ……………………行っちまった。 ドワーフ『ふむ。おい若いの。おぬし、守護竜を倒しているらしいな』 中井出 「へ?お、おお。それがどうかしたか?」 ドワーフ『ならば戦利品の中に“竜宝玉”というものがある筈だが。それをよこせ』 中井出 「竜……あー、あれか。なんか守護竜倒すと絶対に戦利品の中に入ってるんだが、      アイテムとして数えられてないからどうしたもんかってずっと困ってたんだ」 ドワーフ『土台が無ければどうにも出来ないものだがな、こうして土台も出来た。      偶然であれどうであれ、この樹の要塞は見事な媒介になるだろう。      出来れば他の竜宝玉も手に入れてきてくれ。      カイザードラゴンの竜宝玉だけでも相当な力を発揮するが、      全てが揃えば相当なものになるだろう』 中井出 「いや、そうじゃなくて……これってなにに使うものなんだ?土台?媒介?」 ドワーフ『それは竜に宿る力の“核”と言えるものだ。      それを取り付ければ竜鱗がごとく強度が増し、      宙に浮き、空を飛ぶことさえ出来るだろう』 中井出 「───それってこのエーテルアロワノンを浮遊要塞にするってことか?      おお面白そうだ!託す!託そうこの竜玉!      ……で、何個くらいで空は浮けそうだ?」 ドワーフ『皇帝竜の宝玉だけで十分だろうな。他の守護竜の宝玉は全て耐久に回そう』 中井出 「…………あ。俺の武器に取り付けるとかそういうことは───」 ドワーフ『無理だな。竜宝玉は武器に取り付けられるほど小さくはない。      加工してしまっては力が無くなってしまうのだ。      出来るのだとしたら我々の方からおぬしに頼み込んでいるわい』 中井出 「そ、そか」 なんだか愛されてる僕の武器。 聞けば我が相棒ジークフリードは鍛冶屋にとっては鍛え甲斐があるものなんだそうだ。 だから猫たちも嬉々し激走したのだろう。 中井出 「じゃ……これ。地、氷、然の守護竜の竜玉だ」 コシャンッ♪《ドワーフに竜玉を渡した!》 ドワーフ『ああ、確かに受け取った。あとは風の守護竜の竜宝玉でも持ってきてくれれば、      自由に空を移動することも出来るだろうよ』 中井出 「あ、やっぱいろいろ条件とかあるのか。      参考までになにがどんな役割をするのか聞かせてもらっていいか?」 遥一郎 「いや、今はそんなことしてる場合じゃ───」 中井出 「場合だとも!それで?」 ドワーフ『お、おお。よく憶えておくんだぞ?      地の竜宝玉が物理攻撃防御の強度を高める役割を、      水の竜宝玉が破損した部分の回復速度を高める役割を、      火の竜宝玉が攻撃側の火力を高める役割を、      風の竜宝玉が飛翔の役割、遠距離攻撃を弱体させる役割を、      雷の竜宝玉が攻撃に対する衝撃を緩和させる役割を、      氷の竜宝玉が火薬設備などの冷却速度を速める役割を、      光の竜宝玉が要塞内の者の傷を自動で癒す役割を、      闇の竜宝玉が状態異常攻撃への耐性、治癒を促す役割を、      然の竜宝玉が浮遊と全ての能力のサポートをする役割を、      時の竜宝玉がそれぞれの能力の速度を高める役割を、      元の竜宝玉が魔法攻撃防御の強度を高める役割を、      死の竜宝玉が死に近づいた者を強くする役割を、      無の竜宝玉が要塞全体に攻撃自体を弱まらせる      見えないシールドを張るという役割を果たす。      ああ、これは全てこの自然要塞に取り付けた場合に      発動するであろう能力についてだ。      もちろん今言った以外の能力も宝玉が引き出してくれることだろう。      過去、勇者たちはこれを以って翼竜王バハムートと戦った』 中井出 「…………テユウコトハァゥ、      僕タァチハコレヲ以ッテ“デスゲイズ”ト戦ウトユウワケデスネェィ?」 ドワーフ『ああ、そうなるだろう。      武器の浮遊能力だけで“宙を舞う災厄”と戦う気か?あまりに無茶がすぎるぞ』 無茶以前に出来れば戦いたくないんですけど。 ……って言ったところで聞きやしねーんだろうねちくしょう。 それにいつかは戦わなきゃならんのだ、 これがそのための準備クエストならやらねばなるまいよ。 ……それまでにはなんとかバトれるくらいになっとかないとな。 未だにデスゲイズを見ただけで体が動かなくなるくらいの恐怖を覚えるほどだ。 あいつは普通にヤバイ。 存在自体が恐怖の塊だ。 だからえーと、まずは見詰め合えるくらいにまでならないと───って、 俺は女恐怖症なのに見合いをしようとしている馬鹿者ですか? 見詰め合えたら手を繋ごうとか思ってるのか?繋ぐ以前にメテオで死ぬわ。 中井出 「あ……そういやさ。“これを以って”ってことは、      過去の勇者ってやつも自然の要塞に竜玉を嵌め込んだってことか?」 ドワーフ『いいや。勇者一行が竜玉を嵌め込んだ媒介は天空城だ』 中井出 「天空城?」 ドワーフ『ホレ、今も浮いておるだろう。今はどうか知らんが、      精霊マクスウェルが管理している城のことだ』 マクスウェルが管理……天空……って! 中井出「あそこ!?あの修行場!?」 遥一郎「そうなのか!?───あ、あ〜……道理で……。     修行する場所にしてはやたらとゴツい設備が整ってると思った……。     って、じゃあその修行場……じゃなかった、     天空城を使えばいいだけのことじゃないのか?」 あ、それ俺も言おうと思ってた。 べつに無理にこの要塞を使わんでもいいと思う。 ドワーフ『これだけの時が流れたんだ、以前の宝玉の力もいい加減弱まり、      今では浮いているのでやっとというところだろう。      そこに来てこの要塞に宝玉だ。以前滅せられた守護竜も、      精霊たちの戒めの宝玉の力の加護もあり、以前より力を増している。      その竜たちの竜宝玉を用いるのだ、      この要塞はあの天空城をも越える浮遊島となるだろう』 遥一郎 「そのためには守護竜を倒さなきゃいけないか……。      気が遠くなりそうだが……大丈夫か?」 中井出 「え?なにが?」 遥一郎 「うわっ!?滅茶苦茶輝いてる!?」 中井出 「ウフ、ウフフフ……!ドワーフ、俺やるよ!      絶対に守護竜滅ぼして僕らの天空の城を作るよ!      こんな楽しいこと他のやつらに任せてたまるか!」 心踊るテンダー!(?) 守護竜倒しに目的が追加されただけでこうもワクワクさんになるとは! ……でもデスゲイズとは最後に戦いたいです、出来れば。 そうは思いつつも小躍りせずにはいられんこの胸の踊りよう! おお!俺の!この博光の心の巴里が燃え盛っておるわ!! ナギー『おお!ヒロミツがやる気なのじゃ!』 シード『父上!及ばずながら僕も手伝います!』 中井出「うむ!ナギー!シードよ!やってやろう!     我らの手でこの自然要塞を浮かすのだ!」 遥一郎「いや……浮くだけならもう出来るんだろ?」 中井出「…………こういう時に正論ばっか投げかけるなよ……」 ナギー『勢いブチ壊しなのじゃ……』 シード『空気を読め頭でっかち……』 遥一郎「えっ……いや!どうしてここで俺が悪いみたいな空気になるんだよ!     そもそも俺達はエィネを助けるためにここに来たんだろ!?     悪さで言ったらお前らのほうがよっぽどじゃないか!」 中井出「お前……原中が提督たる俺に悪を唱えるなんて今さらすぎにも程があるぞ?」 ナギー『まったくじゃ……なにを言っておるのじゃおぬしは……』 シード『魔王が悪でなくてどうする。頭でっかちなのに馬鹿なのかお前は』 遥一郎「諭すように言うところじゃないだろそこは!!     とにかく今は当初の目的をなんとかするのが先決だろ!?」 むう、それは確かに。 もし見世物小屋の主人が実は黒魔術師で、生贄のために攫ったとかだったら大変だ。 でも肝心の見世物小屋の場所が解らないんじゃどうしようもないよな。 ……なんてことを考えているうちに、 ドワーフたちは竜宝玉を持って何処かへ行ってしまった。 そうなるとこの場に残された俺とナギーとシード、 それからホギーはなんとなく場を持て余すだけである。 結局小屋の場所など解らず終いだ。 話し合いの場に残されるっていう状況は案外人を静かにさせるもんで、 俺達は互いに互いを見やったのちに小さく溜め息を吐いた。 遥一郎「……まあ、なんだ。結局ダメだったな」 中井出「そだなぁ……イケると思ったんだけどな」 情報通というわけでもないが、 世界を旅するアイルー種ならきっと知ってると思ったんだが。 ナギー『これからどうするのじゃ?』 シード『というか……あの。今僕らはどういった状況にあるのですか?     確か僕らは船を使って水の守護竜のもとへ……』 中井出「状況が変わったのだよシードよ。仲間が攫われたのだ、黙っちゃおれん。     我ら原中、状況如何で仲間をあっさり見捨てるが、     攫われたのであれば奪い返す。気安いが心底では仲間を思う。これが友情。     俺達ゃ戦闘集団だ。仲間を攫われて黙っていちゃあ、原中生徒の名折れじゃきん」 遥一郎「そうなのか?」 中井出「や……そこは素直に頷いてよ……」 だが仲間を真の意味で見捨てるクズは原中生徒の中には居ない。 それは提督たる俺が保証しよう。 何故なら、俺達は楽しいのが好きだ。 そして、俺達の中から誰か一人でも居なくなるのは楽しさにはイコールしない。 ……奪われた仲間は取り戻すべきだ。 たとえ相手が誰であろうと、である。 なんて思っていた時である。  ズズ……どしゃあああああ………… ジョニー『おぎゃ……おぎゃぐざまは……が、み…………ニャ《ガクッ》』 かなり遅れて現れたのはなんとジョニー! この小さな体でこの大木を昇ってきたのか、疲労困憊……ああいや、 多分ずっとずっとずう〜〜〜っと遠くから全力疾走してきたんだろう。 そりゃ疲れる。 中井出 「猫よ、水だ。口に含んでじっくり馴染ませてから少しずつ飲むのだ」 ジョニー『た、助かるニャ……』 猫を抱き上げ、その口に竹水筒を持っていく。 なんでもここに訪れたモジャモジャマッスルから仕入れたものらしい。 ……それってあいつだよな?ボナパルド。 でもこれにお茶とか水入れて客に出すってどうなんだ?猫たちよ。 ジョニー『復!活!!ニャーーッ!!!《シャランラビッシィインッ!!》』 そして僕は水で復活する猫を初めて見た。 ジョニー『やぁ、助かったニャ旦那さん。      でも呼んだのが旦那さんなら僕は感謝のし損ニャ?』 中井出 「いやいやそんなことはないぞ猫よ。多分。      で、だな。ちょっと訊きたいことがあるんだが───」 ジョニー『訊きたいこと……なにニャ?』 中井出 「う、うむ……実はな……」 遥一郎 「いや……そこから先は俺に言わせてくれ。俺の責任だ」 中井出 「だめだ」 遥一郎 「実はオィィイイッ!!普通ここでだめだは無いだろ!?」 中井出 「普通じゃないから原中の提督やってるんですがなにか問題でも!?」 遥一郎 「ありまくりじゃあ!ああもうまったく志摩兄弟といい弦月といい原中といい!!      どうしてそう人を振り回すことばっかに長けてるんだお前らは!!」 中井出 「実は仲間の妖精が攫われてな。困ってるんだ。      だから見世物小屋とかがどっかにあって、      それが何処にあるのかを知ってたら教えてほしい」 遥一郎 「無視するな人の話を聞け人にダメ出ししておいてお前が言うなぁっ!!」 中井出 「そんなに叫んで疲れない?」 遥一郎 「誰の所為だ誰の!!」 中井出 「この博光は個人の意志を尊重する!それはとても大切なことだからだ!      そして叫ぶかどうかは個人の自由だと思うんだ。だから僕関係ないよ?」 遥一郎 「ギ、ギィイイイイイーーーーーッ!!!!!」 ホギッちゃん絶叫伝説。 でも気にせず話を進めてもらうと、 ジョニー『知ってるニャ。ここからずっと西に行った場所に、      小さな旅をする劇団があるニャ。      そこのそいつらの中に珍しい生き物を見せてお金を取るヤツが居たニャ』 なんとジョニーめ、知ってると言うではないか! すると我が隣に居るホギッちゃん目がギシャアと光り、 遥一郎「西だな!?行ってくる!」 と言ってババッと駆け出そうとする! 中井出「待て貴様!よもやそのまま突貫するのではあるまいな!」 遥一郎「当たり前だろう!?奪われたら奪い返すのは当然だ!」 中井出「もちろんだが強奪するのでは意味が無い!     やるならホラアレだ!もっと面白おかしくやらねばもったいない!     そんなわけだから───ここは俺が行こう!」 シード『父上自ら!?』 ナギー『おお!やる気なのじゃなヒロミツ!』 中井出「当たり前じゃないか!劇団だかなんだか知らんが、     自分の利益のために妖精を攫うなど不届き千万!     よってこれより劇団の馬鹿者どもへ修正を行う旅に出る!」 遥一郎「お、俺も行く!」 中井出「いやさ、実はこれから猛者どもがここに訪れることになってるんだ。     だからそいつらなんとかしといてくれない?」 遥一郎「や……それはお前がやればいいことじゃないのか?」 中井出「断る!」 遥一郎「断るなよ全力で!!」 ぬう、だがこの博光に秘策あり!……いや無いかも。 いやまあ作戦みたいなものはあるといえばあるというか、なんというかそのー。 い、否!なんとかなる!ならなかった場合は……実力行使……!! ククク、これが悪魔の底力よ。 遥一郎 「とにかく。俺も行く。原中の連中を任せるならそこの二人に任せればいいだろ」 ナギー 『なんじゃと!?わしらを置いていくというのか!?』 シード 『貴様勝手なことを言うな!僕は父上の傍を離れたりなどしないぞ!!』 中井出 「…………ジョニー、猛者どもの相手、頼んでいいかな」 ジョニー『いろいろ大変らしいニャ。解ったニャ、ボクがちゃんと迎えてあげるニャ。      妖精が大変な目にあってるのに断るわけにはいかないニャ』 中井出 「おお!貴様が話が解る猫で本当によかった!」 ジョニー『ニャハハハハハ!お任せニャ!!』 豪快に笑う猫を前に、俺と穂岸はウムスと頷いた。 さあ、これからどうするか───じっくりと話し込むなんてことはせずにすぐに突貫する! 真っ直ぐゥウ───GO!!  …………! 中井出(……ヌ?) いざ突貫という時に、耳を掠めるなにか。 なんだろ……声、だよな。確かに聞こえた。 中井出「なにか言った?」 遥一郎「うん?いや……どうかしたのか?」 中井出「や……なにか聞こえたような……」 ナギー『幻聴でないかの。わしはなにも───……聞こえたのじゃ』 シード『父上、僕にも聞こえました。これは……猫の声、でしょうか』 猫?猫って……アイルー? もしや鍛冶場でゴニャゴニャ騒いでるのがここまで聞こえてきてるのか? にしちゃあ、どうも一定じゃないような……───はうあっ!? 中井出「あ、あああああああっ!!アワワー!!」 遥一郎「ど、どうした!気でもフレたか!?」 ナギー『なにを言うのじゃ!ヒロミツの気は常時フレているのじゃ!』 中井出「フレてないよ!どこの異常者なの僕!それが当然みたいに言わないでよ!」 シード『そうだドリアード!父上は気がフレているんじゃない!     フレる以前に異常なんだ!』 中井出「ちょっと待て種てめぇ!悪化してるよそれ!     僕異常者じゃないよ!善良からは掛け離れてるけど平凡一市民だよ!」 遥一郎「自然の精霊の加護受けてるのにどうして善方面じゃないかな……」 中井出「善側の精霊なのに外れ道をゆく我が魂。……素晴らしいじゃないか!     それよりホギー!右手をごらんください」 遥一郎「?───う、おあぁああああああっ!!?」 フイ、と振り向いた先に見えるは土煙! なにかがこちらに向かって駆けてきているのだろう! そしてそのなにかとは、見間違える筈も無い───猫どもである。 ウアー……もしかしてタマの鈴にマグニファイかけると、 世界全域に音が響き渡るのか……? お、おおおお!?死にそうな顔で猫どもが大木登ってきてる!! 怖いよこれ!目ェ血走ってないかオイ!!  ザザザザザァアアアアッ!!! アイルー達『お客《ゲファアッ!!》…………《ドシャア》』 総員   『………』 とひょぉおおお………… 現れた猫どもはお客さまは神様ニャと言い終える前に気絶した。 その数はわざわざ数えるのも面倒なくらいの数であり、 みんながみんなゼェゼェと息も絶え絶えにぐったりとしていた。 そんな猫たちを見て、ホギーが一歩前に出て魔法陣を出現させる。 ジョニー『ひどい疲労状態ニャ……なんとか出来ないかニャ?』 遥一郎 「ああ、ちょっと待ってろ。      女神の慈悲たる癒しの戦慄───“リザレクション”」 詠唱とともに回転する魔法陣。 それがキィンッ───と高い音を奏でると、 猫たちの疲労や体調をも回復に導き、一気に完全回復へと導いた。 猫1 『ギニャーーッ!死ぬかと思ったニャ!』 猫2 『旦那さん人が悪いニャ!こんなところから呼ぶだなんてあんまりニャ!』 中井出「え?俺が悪いの?…………さ、参考までにどこからここまで?」 猫たち『猫の里ニャ!!』 中井出「すんませんでした……」 素直に謝罪の言葉が我が口から生まれ出でた瞬間だった。 だってここから猫の里って随分距離あるぞ? 猫3 『でもいいニャ。お客様は神様ニャ。     それで旦那さん、今日はどういった入用ニャ?』 中井出「あ……もう渡してあるんだが、     猫やドワーフたちに武器の合成と強化を頼んであるんだ。     それを手伝ってくれないか?」 猫たち『了解ニャ誰あろう旦那さんの頼みなら、無下に断るわけにはいかないニャ!』 遥一郎「へえ……随分と慕われてるんだな」 利用回数が多いお得意様だからね……。 さて、俺がそんなことを思っている間にも行動するのが職人の魂。 猫たちはさっさとエイオーと手を上げると駆け出し、 何処にあるかも解らないであろう鍛冶場を目指して姿を消していった。 ともなれば、ここい残る猫はジョニーだけとなる。 ナギー『壮観じゃの……。あんなにも居たのじゃな』 シード『僕も少し驚きました……』 中井出「うむ。では武器は猫やドワーフたちに任せて我らは見世物小屋へ行こう。     待ってるかどうかは解らんが、エィネを奪還しに行かねば」 遥一郎「普通に助けに行くとか言えないのか?」 中井出「助けるんじゃない、奪還するのだよホギー!     何故って、助ける場合は助けてほしくないと思ってる者も居ることがあるからだ!     故に奪還!相手の意思など関係無し!それが奪還便利な奪還!!」 遥一郎「便利っていうか道徳無視してるな」 中井出「道徳なんぞに縛られてたら人生損する」 言い切って、俺は歩き出した。 確かずっと西っていってたよな。 シード『武器無しで大丈夫でしょうか……』 中井出「一応ファフニールもドンナーもあるし、俺は平気さ」 遥一郎「俺も準備は出来てるから平気だ」 ナギー『ふむ……わしとシードは魔法でなんとかすればいいだけのことじゃからの。     ヒロミツがいいならそれはそれで構わんのじゃ』 中井出「うむ!ではこれより西のサーカス雑技団見世物小屋へと向かうものとする!!     イェア・ゲッドラァック!ライク・ファイクミー!!」  ザザッ!! ナギー&シード『Sir(サー)!!YesSir(イェッサー)!!』 中井出    「うむいい返事だ!ではしゅっぱーつ!!」 ナギー    『なのじゃー!』 シード    『奪還……ふふっ、腕が鳴る……!』 遥一郎    「………」 ジョニー   『強く生きるニャ、そこのキミ』 エィネ救出作戦を前にし─── 無駄に元気な我らを見て、ホギッちゃんだけが何処か遠い目をしていた。 Next Menu back