───冒険の書184/火を灯せ!亜人族の誓い!───
【ケース492:中井出博光(謝恩再)/サーカステントの謎】 ───そして舞台はとっぷりと夜。 フクロウがホーホーと鳴く中、闇に紛れて生きるのは我ら奪還屋である。 今頃は猛者どもがエーテルアロワノンに着いてる頃だろうか。 いやまあそれは考えても仕方ないことか。 今は目の前の物事をなんとかするのが鮮血だ。じゃない、先決だ。 提督猫『グオッフォフォ……見ろホギーよ。やつらのんびりと眠りこけておるわ』 遥一郎「俺としては普通に猫化してるお前が珍妙でたまらない」 提督猫『なに言ってんだ、現実世界の腕時計の能力で変身が出来るなら、     こうして猫に変身するのだって当然出来ることに気づかなかった者が馬鹿なのだ』 遥一郎「……それで、その格好でどうするんだ?」 チラリと、デカいテントを見て囁くホギッちゃん。 そう、我らは既に劇団のテントの前に居る。 前と言っても真ん前ではなく、 テント近くの森林からテントを覗いているカタチになっているわけだが…… ああ、ちなみにエィネは確かにここで見世物にされていた。 昼、俺と穂岸はそれを見て腸を煮え繰り返したもんさ。 わざわざ入場券まで買ってサーカスだのなんだのを見たりはしたが…… 正直気分のいいものではなかった。 そりゃあ最初はよかったさ。 だがシメに妖精を見世物にするその根性が、俺と彼の逆鱗に火をつけた。 ……ナギーとシードは雑技団(?)の華麗な動きに終始ワイワイだったわけだが。 提督猫『この格好なら見つかったとしてもアイルーが迷い込んだだけって思うだろ。     人の姿で居るよりよっぽど安心さ』 遥一郎「いや……テントに誰かが迷い込めば誰だって焦るんじゃないか?」 提督猫『ククク、まさにそれよ。俺は焦らせるのが仕事さ』 ナギー『わしはなにをすればよいかの』 シード『父上、なんなりと』 提督猫『うむ。では貴様らは我が生き様をここからしかと見ておくのだ。     そして見事この提督猫がエィネを連れ戻してきたら、即座に死人の森へ転移。     それを以ってミッションコンプリートとする』 シード『戦わないのですか?』 提督猫『奪還屋は奪還が仕事だ。戦う必要など無いのだよシード』 遥一郎「……それに、見世物をするヤツらなんてのは───な?」 提督猫『うむ。シードよ、どちらにしろ我らはヤツらと戦うことになるだろう。     ああいう輩はな、金の生る木を奪われたら意地でも取り返そうとする人種だ。     こっちは取り返しただけなのに、     一度手に入れればこっちのものだと言わんばかりの身勝手さ。     それがやつらの手段なのだよ。だから、な。     この姿でエィネを奪うということは、     のちにエーテルアロワノンが狙われるってことだ』 今やエーテルアロワノンは猫とドワーフの街だ。(むしろ要塞) 少なからずその事実を知っているヤツは居るだろうし、 それを嗅ぎつける野郎どもも出てくるだろう。 だから、もし戦うことになるとしたらエーテルアロワノンでってことになる。 提督猫『じゃ、行ってくる』 遥一郎「全員で突貫した方が早くないか?」 提督猫『馬鹿を言っちゃいけない。我らは奪還屋であって強盗ではないのだ』 遥一郎「……奪還してる最中に見つかったら?」 提督猫『え?騒ぐ前にボコボコにするけど』 遥一郎「………」 かわいそうなものを見る目で見られてしまった。 しょうがないでしょ!?僕だって逃げたいよ!? でも逃げたらヤツが目覚めるんだからしょうがないじゃないか! 奪還屋なんだから見つかったら逃げたいさ!だって奪還するだけが仕事だもん! あとのフォローもケアも知ったことじゃあありません! 別に邪眼使ったりだとかスネークバイト使って戦うなんて野蛮なことしないよ!? ……野の蛮だからいいのかな。いやそういう話じゃなくて。 提督猫『では行ってくる』 シード『父上、ご武運を』 ナギー『頑張るのじゃ』 やがて、シードとナギーの言葉を耳に歩き出す。 完全に消灯されたサーカス用巨大テントは、 随分とまあひっそりとして本当に寝ているとはいえ人が居るのかと疑いたくなる。 思えば外見と中身が一致しないことがよくあったものだが、ここはどうなんだろうか。 考えてもみよう。 サーカスのテントってのは確かに大きく、外見からして中の広さも伺えるだろう。 だが漫画やアニメなどのテントの中に、どうしても俺は疑問を持ってしまうのだ。 あの外見で中のあの広さはありえんだろう、と。 提督猫(………) 思考も半端なままに誰にともなくコクリと頷き、 やがてこの博光は暗く静まった巨大テントへと侵入を果たしたのだった……! ───……。 ……。 ゴソゴソ……ズズズ…… 提督猫(ふ〜〜〜ん!《ズボォッ!》……ふぅ) 猫の小さな体を利用し、狭い隙間を強引に突き進んだ。 テントとはいえしっかりと戸締りは出来るらしく、こうでもしなければ入れなかったのだ。 もちろん破壊して通るという方法もあったのだが、今の僕は孤独なソルジャーさ。 じゃなくて奪還屋だから無茶なことはしないでおいた。 奪って還るのが仕事だから破壊はしないのだ。これぞ真の奪還ハート。 提督猫(さてエィネはと……) 暗い世界をキョロキョロと見渡す。 だが入ってすぐ見つかれば苦労などしないのだ。 たまには苦労せずに見つけたいもんだなぁほんと。 提督猫(うむ。言ってても仕方ない) さっさと見つけよう。 足音は極力抑えて、誰かが来たらブリュンヒルデで擬態する方向で。 提督猫(………) しかし、見世物小屋をやってるだけのことはある。 ここにエィネはいないようだが、 ライオン型モンスターとか像だとかが檻の中に閉じ込められている。 どうやら眠ってるようだが……ストレスとか溜まらないんだろうか。 いい身分だなぁ管理者は。モンスターをとっ捕まえて見世物にして金取るんだろ? おまけに妖精まで捕まえる始末。 これはもう捨て置けぬぞ、同じ人間として。……今は猫だが。 提督猫  (もし。……もし、ライオンさん) ライウォン『…………コルルルル……』 試しに声を掛けてみると、気だるそうに眼を開けるライオン型モンスター。 像もモンスターらしく、こちらを見てギラリと眼光を鋭く輝かせた。 ライウォン『……なんの用だ』 提督猫  (しぃっ、声を小さく。私は七つの海を股にかける宝石商ジェム。       赤い宝石を捜して世界中を飛び回ってるニヒルな猫さ) ライウォン(……その猫がなんの用だ) 提督猫  (ごめん、本当は魔王博光。       故あってこんな格好をしてるが、西の大陸を支配した魔王が一人である) ライウォン(魔王……?───……!聞いたことがあるぞ……!       少し前に西の大陸に住まう者を恐怖のどん底に突き落とさんとした、       人間にして魔王に至った者が居たと……!そ、その名もエロマニア!!) 提督猫  (違うよ!博光だって言ってるでしょ!?       ちょ……なに急にしおらしくなってるの!?       驚くなら魔王ってところに驚いてよ!       エロさ加減に恐怖されても嬉しくないよ!) ライウォン(む、無茶を言うな……!猫に変化でき、俺の言葉まで理解するその様……!       それも偏に貴様がエロマニアだからなのだろう!?) 提督猫  (そんなわけないでしょ!?僕べつにエロマニアだから       猫になれたりモンスターの言葉解ったりするわけじゃないよ!?       武器の能力!武器の能力なの!解る!?ていうか解って!解ってよ!) ライウォン(そ、それで……エロマニア様はこのようなところにどういったご用で……?) 提督猫  (………) 完全に怯えきってしまったライオン型モンスターを前に、 僕はちょっとどころかかなり本気で穴に入りたい気分になりました。 産まれてきて……というか、エロだった頃があってごめんなさい。 提督猫  (えっとその……ね?       ここに妖精連れてこられたよね?僕、その子探してるんだ……) ライウォン(妖精……?あ、ああ、そ、そいつは今日連れてこられた新入りです……。       べ、べべ別の部屋に連れていかれましたが……!) 敬語をやめてください。 なんで俺こうまで怯えられてるんだろ……エロマニアってだけで。 提督猫(しかし別の部屋か……) あまりのんびりもしていられん。 ここはもう見つかるのを覚悟で一気に行くか? 提督猫(……いや待て。とりあえずフロート) フと思いつきでフロートを解放。 天井に届くくらいまで浮き上がると、ヒタリと天井に張り付いて移動を開始。 ジークフリードが無くても霊章融合を果たしたからには 関連武器さえあれば能力解放お茶の子さいさい。 ガサガサと天井を這いずり回り、 まるでフルフルにでもなった気分のまま次の部屋を目指した。 ───……。 ……。 カサカサカサ…… 提督猫(───!) 天井(テントの裏)を這い回りどれくらいか。 もういい加減入る部屋も無くなってきた頃、この博光はとうとうエィネを発見した! そこは団長室……だろうか。 他の部屋に比べて遙かにゴージャスなそこに、 エィネは鳥かごのようなものに閉じ込められた状態で発見された。 しかもこの博光アイで見つめるに、どうやら寂しさのあまり声を殺して泣いているようだ。 提督猫(………) 少しイラッときてしまった。 だが耐えよう、何故なら奪還屋は奪還がお仕事。 そうと決まればとカゴの真上に移動し、バックパックからフック付きロープを取り出すと、 毒流し仕事人のように天井からスルルーとロープを下ろしてゆく。 目標は鳥かごのテッペンのわっかだ。 アレにフックを付けて、上まで引っ張ればOK! え?そんなことせずとっとと回収しろ?それはいかんぜ我がハート。 こういう状況を楽しんでこその人生だ! 考えても見ろ!こんな状況が我が人生の中であと何回あると思ってるんだ! ……うん、作り出そうとすれば何回でもありますね。 たとえば宿で寝ている猛者どもを天井から襲撃するとか。 提督猫(GO!) だが救出イベントともなればそうそうにはないのだ。 だから伸ばした!ロープを!!  スルスルスルスル…… 提督猫(ン、ンー……ンン?ンー……) どうも真上から見てると距離感ってものが難しい。 ロープの位置はここらでいいんだろうか……もうフックがかかる位置にある? ……解らん。 だがヘタにフックを動かそうものならカゴにガツーンとぶつかって団長が起きてしまう。 これはそうならないように楽しみつつやるクエストなのだ。 ならばこの勝負、負けられん。 だがこれがまたなんとも難しい……!い、いいや大丈夫! なにを隠そう!俺はUFOキャッチャーの達人だぁああああ!! 提督猫(GO!!) 高さ!位置!フックのカタチ!全て計算通りよ!! 故に振った!フックを引っ掛けるべく!するとごしゃーーーん!! エィネ『ひゃあっ!?』 団長 「ひっ!?な、なにごとだ!!」 提督猫『うおお失敗したぁあーーーーーっ!!!』 団長 「なにっ!?誰だ!!」 提督猫『ヤベェエエ!デケェ声出しすぎたァア!!』 ってこの声がデケーよ!! なんてサンタネタやってる場合じゃなく! 団長 「猫……!?空を浮く猫だと!?」 提督猫『どうもニャ。天井掃除のために雇われたアイルー種ニャ』 団長 「なに?そうなのか?……だったらこのフック付きロープはなんなんだ?」 提督猫『道具袋から落っこちたニャ。ホントは静かに掃除して     サワヤカな朝をプレゼントしようとしたんだけど、失敗したニャ』 団長 「………」 うわー、思いっきり疑いの眼差しを投げかけてきてる……。 そりゃそうだ、俺でも疑うよ、うん。 団長 「私は猫など雇った憶えはないがな」 提督猫『そうは言われても雇われたニャ』 団長 「───…………じゃあ訊くが。雇われたのなら合言葉を知ってるな?     私は毎度、雇った者にはこう言えと部下たちに知らせてあるのだ。     ではいくぞ?合言葉を返してみろ。───山」 提督猫『合言葉なんて無いニャ。なに言ってるニャ?』 団長 「───……解った、いいだろう。馬鹿なやつらは大抵引っかかるんだがな。     断言出来るのなら真実雇われたんだろう」 提督猫『だからそう言ってるニャ。───《ギシャーン!!》』 クックック……ちょろいちょろい……! この原中が提督たる博光に、そんなちっちぇえ引っ掛けが通用すると思うたか。 合言葉は?などと簡単に投げかけてくるヤツほど、 合言葉など用意していないものなのだと何故気づかん。 団長 「これからは気をつけろ。私は些細な音でも起きてしまうほど、今は神経質なんだ」 提督猫『了解ニャ』 …………ズズ、バサリ。 団長が再び布団に潜った。 ククク、愚かなヤツよ……。 やはり猫の姿はいい。 人で居るよりも相手の警戒心が弱い弱い。 でも静かなる奪還は見事失敗に終わってしまった……。 だからもう開き直ることにした。  ヒュオッ───シュタッ。 提督猫(ゴニャッ) 天井から床に降りた俺は、ヒタヒタとエィネが捕らえられているカゴへと歩み寄る。 もちろんエィネが俺を見ても俺だと解る筈もなし。 ただ困惑顔で俺を見て、小さく“助けてください”と訴えかけてきた。 言われるまでもないが、助けてほしいと願う知り合いの思い……無駄には出来ぬ! 提督猫『団長さん、ちょっといいニャ?』 団長 「なんだ!私は静かに眠りたいんだ!邪魔をするなら───」 提督猫『このカゴ、痛んでるニャ。このままじゃ中の妖精に逃げられるニャ』 怒り心頭といった風情の団長に待ったをかけ、カゴを促す。 静かに眠りたいなら妖精さらいなぞしなければいいのに。 この博光は精霊攫いをした時、眠れぬ夜なぞすごさないほど快眠な日々を過ごしたぞ? 団長 「なに……?馬鹿を言うな、そのカゴは今日降ろしたばかりの高級品だぞ?」 提督猫『だったらツカマされたニャ。とんだ不良品ニャ。ホラ見るニャ』 促したカゴの柵の一つを摘み、STRマックスでコキャリと捻る。 すると、柵のうちの一つがあっさり砕ける。 団長 「なっ……!?」 提督猫『猫の力でコレモンニャ。どうするニャ?     お金を払ってくれるなら、ボクが仕立て直してあげてもいいけどニャ』 団長 「た、頼む!この妖精に逃げられるわけにはいかんのだ!     金なら掃除代金の倍額払おう!」 提督猫『毎度アリニャ!それじゃあ道具を外に置いてあるから、外でやってくるニャ。     団長さんはカゴから外に出ない妖精に安心しながら眠るといいニャ』 団長 「あ、ああ……すまない。疑ったりして悪かった」 提督猫『ニャハハハハ!急に猫が宙に居たら驚くのも無理はないニャ!』 そう言いつつエィネが閉じ込められているカゴを持ち上げると、 例のごとくゴニャァアア〜〜ォオと鳴きながら部屋の外へと逃走を果たしたのだった……! ───……。 ……。 バオォオオオオンッ!!!ズドドドドドドド!!!!───ズシャアアア!! 提督猫『ヘイお待ち!!』 テントの一角の布をブチ破って草原を駆け、落ち合う場所へと移動した俺は、 ナギーやシード、ホギッちゃんにエィネを見せるとテコーンとウィンクしてみせた。 遥一郎「エィネ!?───……は……はぁあ……!よかった……無事だったか……」 エィネ『え?え……?よ、与一さん?え?』 ナギー『うむうむ、状況が掴めておらぬのじゃろうがもうしばしの辛抱なのじゃ』 シード『では父上、すぐに転移を開始します』 提督猫『うむ。頼むぞシードよ』 おお連携とは素晴らしい。 事前に打ち合わせをしていただけあって、 みんなの行動が流れるように行われようとしている。 エィネ『あ、あのー……しばし待つより説明を───』 総員 『だめだ』 エィネ『どうして全員で!?』 提督猫『こちらにもいろいろ事情があるのだ!奪還屋は奪還が仕事!     なにも起こらないなら起こらないほうがいいに決まっているのだ!!』 遥一郎「お、おお!その通りだ!」 提督猫『でも原中的にはそれが許せないからテントに粉塵爆弾仕掛けてきました』 遥一郎「なにをやってんだお前ぇえええええっ!!!」 提督猫『なにを……!?人攫いへの罰に決まってるじゃないか!』 遥一郎「だったらもうお前も自然の精霊誘拐罪で地獄を見てしまえ!!     奪還屋は奪還が仕事じゃなかったのか!?」 提督猫『地獄は見ないが地獄絵図なら!奪還したならそのあとはもうプライベート!     仕事とプライベートは別さという言葉を知らないのかホギッちゃんよ!     ほ〜ら、こうやってテントに続いてる粉塵に衝撃を加えると』 遥一郎「うわわやめろぉおっ!!」 提督猫『な〜んて、冗談《ドンッ───ジョリッ》あ』 遥一郎「エ?」 冗談、と言った途端に僕の体がホギッちゃんに押されました。 するとどうでしょう、冗談で構えていた両手のファフニールがジョリンと擦れ合い、 俺の体から流れ出ている粉塵にチリッと衝撃を与え───  ガンバババババドッガァアアン!!! 声  『ギャアアアアアアア…………!!!』 テントまで続く塵をどんどんと爆裂させ、終いにはテントを吹き飛ばしたのです。 総員 『………』 吹き飛ぶテントに飛び交う悲鳴。 その機に乗じて逃げ出す魔物に、訳も解らず騒ぎ出すヒューマンたち。 提督猫『……お前……エィネを攫ったことを爆破してやりたいほど恨んでたなんて……』 遥一郎「え?お、俺の所為、なのか?あれって……」 ナギー『わ、わしは見たのじゃ……!冗談じゃと手を止めたヒロミツを押して、     無理矢理着火させた貴様の姿を……!』 シード『ひどいヤツだ……攫ったヤツ以外に罪はないというのに、     まさか眠りこけているやつらを爆発させるなんて……』 遥一郎「うぇえ!?いやいやいやちょっと待ってくれ俺はべつに───!!」 提督猫『……帰ろう……。これでもし猫たちが恨まれるようなことがあったなら、     全てホギッちゃんの所為ということで落着して……』 遥一郎「ま、待て!待て待て待てッ!!ちょっと待った!」 提督猫『…………、うむよし!ちょっと待ったぞよし帰ろう!!』 遥一郎「何処のランプの精霊だよお前!全部俺の所為になるならせめて治療くらい───」 提督猫『な、なにぃいーーーーーっ!!?』 ま、まさか……! やつらはエィネを攫った輩だぞ……!? それを、それを救うと……!?  ───(いき)ッッ!!なんという雄度ッッ!! ……フッ……フフフ……。 負けた……負けたぜおめぇにゃよ……。 提督猫『ホギッちゃん……いやさ、穂岸よ……。     男だな……アンタ漢だ。久しぶりに漢に会ったって……そう思えたよ』 遥一郎「じゃあ───!」 提督猫『ああ。安心して捕まってこい。俺達逃げるから』 遥一郎「ウオォオオーーーーーイ!!?一緒に来てくれないのかよ!!」 提督猫『え?俺達のために囮になってくれるってドラマじゃないの?これ』 遥一郎「違う!!俺はただ普通に癒そうと思っただけだよ!!」 提督猫『ば、馬鹿な!なに言ってんだ頭大丈夫か!?』 遥一郎「お前にだけは頭の心配されたくない!!」 提督猫『相手はエィネを攫ったヤツだぞ!?     それを助けるなんて何処まで偽善者なんだお前は!』 遥一郎「ギィイイイイイそこまでキッパリ偽善者言うなぁあああああっ!!!」 この世に正義などありはしないのだ! だから善は全て偽善。 人はただ正義ではなく悪を名乗ってりゃいいのだよホギーよ。 そう言いたかったけどツッコミ疲れて ゼーゼー言ってる穂岸を見てたら可哀相になってきたのでやめた。 提督猫『まあ、助けるのはOKだと思うぞ?俺はやらんが』 遥一郎「鬼だなお前……」 提督猫『攫って金にするという魂胆が気に食わん。     我ら原中、珍しい生物だからとそれを金にするほどクズではない。     故にそういったクズ中のクズは心底嫌うぞ俺は。容赦の一切もなく。     我らは楽しきを愛し真のクズを憎む。     やっちゃいけねぇことの境くらい我らは知っているのだよ』 遥一郎「そうか?」 提督猫『楽しみに無茶は当然付き物だが、巻き込まれるのは大体猛者どもだ。     我らは猛者どもにならいくらでも迷惑をかけるクズ集団。     だがこうまでクズであるとさすがに眼を瞑ることなど出来まいよ』 ナギー『ではどうするのじゃ?』 提督猫『任せた!』 遥一郎「やっぱり俺なのかよ……」 見ればモンスターは全て逃げて、爆発はしたが燃えたりしなかった瓦礫の上で、 幾人かのサーカス団員が途方に暮れていた。 そん中でも団長はエィネを探して物凄く狼狽えていた。 そんな姿を見せられてはこの人情家で名通りする博光、捨て置けぬ……!! 提督猫『もし……もし!そこの方!!』 だから俺は走ったのだ! 狼狽える団長のもとへと!! 団長 「───!?お、お前は!おい!妖精は!?妖精はどうした!!」 提督猫『は、はい!実は死ねぇえええええええっ!!!!』 団長 「《バゴシャア!!ペキコキ……♪》えぶるぇえええええっ!!?」 総員 『えぇええええーーーーーっ!!?』 そして我が姿に気づくや全力疾走してきた彼の頬を、 跳躍とともにアッパーカットで殴打!これぞカエル飛びアッパー!! なにやらペキコキと砕けるような感触がしたが知らん!! 何故ならこの博光は今!物凄く怒っているからだ!! 提督猫『貴様……!仲間の無事より商売道具優先など団長の風上にも風下にも置けん奴!』 団長 「う、うるさい!私はあいつらなぞより妖精が大事なんだ!     今日の売り上げなど妖精見物だけでどれくらい稼げたと思う!?     やつらの倍以上だぞ!?もういい!あいつらなどどうでもいい!     私には妖精が居ればいいのだ!さあ!何処だ!?妖精は何処だ!!」 提督猫『グオッフォッフォ……!     妖精ならば我が故郷エーテルアロワノンに送ってやったわ……!     掃除係などというデマカセをよくもまあ信じたものよなぁ〜〜っ!!』 団長 「なっ……!?なんだとォオオオ!!?貴様許さんぞ!!     妖精を取り返したら八つ裂きにして見世物にしてやる!!」 提督猫『取り返す?フフフ、出来るかな貴様に。……で、出来ないよね?』 遥一郎「どこまで情けないんだよ!そこはキッチリと啖呵切ってみろ!」 提督猫『断る!!』 遥一郎「だから断るなって───ああもう!!おいお前!」 団長 「な、なんだ貴様!」 ガシガシと頭を掻き毟ったホギッちゃんが団長に向かってズカズカと歩み詰める! おお!なにをする気だ!? 提督猫『暗殺か!』 遥一郎「脈絡もなく縁起でもないこと言うな!」 団長 「わ、私になんの用だ!おい!     泥棒はこいつの方だぞ!?わたしは妖精を奪われたんだ!」 提督猫『セットダイナマイト!クズを蹴散らせ我が拳!』 遥一郎「待てって!俺から話があるから!」 提督猫『俺は無い』 遥一郎「俺があるんだって!ちょっと勘弁してくれ!疲れるだろ!」 ぬう。 そこまで言われたら仕方が無い。 遥一郎「おい、妖精を奪われたって言ったな」 団長 「そ、そうだが……?」 遥一郎「あの妖精と一緒に旅をしてたのが俺だって言ったらどうする?“行商人”」 団長 「行商……?なに言って───あ゙っ!?」 月の無い暗がりの夜の中、ホギッちゃんが行商人と言ったのち、 団長がマジマジと見ると突然肩を跳ね上がらせた。 提督猫『知り合い?』 遥一郎「ログアウトする前に俺に話し掛けてきた男だ。     弦月の訳の解らない話の合間に、ジロジロとエィネを見てヘラヘラしてたヤツ」 なるほど、ハナっからエィネを狙って近づいてきてたということか! ……ところで僕はこのおっさんよりも弦月の話ってのが気になるんだが。 提督猫『おいクズよ!』 団長 「クズ!?」 提督猫『貴様に言っておこう!エィネは我らが仲間!     それを攫ったというのなら俺は貴様を許さん!』 団長 「……許さん?ハハッ?猫風情がなにを言う」 提督猫『猫風情!?猫風情と言ったか!ならば奪い返してみよ!!     逆に言うが貴様風情に我ら猫を滅ぼせるかな!?』 団長 「ふはっ!?はははははは!!知らないようだから言ってやる!     私には国に流通があるのだ!兵士長の弱みを握っているからな!     どうとでも言えば国が動くのだ!」 提督猫『なんだとてめぇ!!』 遥一郎「このクズが!!」 団長 「なんとでも言うがいい!私は欲しいものはなんでも手に入れる!     そのためにどんな手段も行使し、兵士長まで顎で使えるくらいにまで至ったんだ!     今さら猫が来ようがどうしようが私の敵ではないのだよ!!」 提督猫『クズがクズがクズがクズが!!』 遥一郎「カスがカスがカスがカスが!!」 団長 「なんとでも言いすぎだぁあーーーーーっ!!!     き、貴様らは遠慮という言葉を知らんのか!!」 提督猫『クズにかける遠慮はない!!』 遥一郎「断言してやる!貴様は真実カスでクズでゴミ以下の最低野郎だ!!」 団長 「ぐっ……!?フン!だがもう遅い!既に兵士長には魔法で連絡を入れてある!     今頃エーテルアロワノンへの進撃準備をしているところだろうよ!!」 提督猫『上等だこの野郎!!───じゃあまず手始めに貴様をボコボコにする』 団長 「えぇっ!?い、いやあの……     普通ここはすぐにエーテルアロワノンに戻るところじゃ……」 遥一郎「普通じゃないのが普通である……それが原中魂らしいぞ?     提督さんよ、俺にもやらせろよ」 団長 「ま、待て!ちょっと待て!そんなギャアアーーーーーーッ!!!」 ジリジリ追い詰め、ボッコボコにしました。 今回ばかりはホギッちゃんも相当頭にきてたのか、とめることもせずに殴りかかっていた。 二人でAGLマックスでフラッシュピストンマッハパンチを繰り出し続け、 団長が宙を舞いつつ気絶するまで続けられたそれは、 彼を恐怖のどん底へと突き落としたことだろう。 毎度思ってたんだよね、 目の前にボスが居るのに町を救うためにボスを放って戻るやつらは、 何故とっとと根源を潰さないのかと。 話してる暇があったら潰すべきだと思うんだ、うん。 今回はそんな常識の壁を破壊してみました。 遥一郎「よし!クソ野郎!」 提督猫『ニャハハハハ!貴様も中々ノリがいいではないか!ではシードよ!     これよりエーテルアロワノンに帰還する!転移の準備は十分か!?』 シード『サーイェッサー!!』 ナギー『しかしヒロミツ。兵士長と戦うということは国と戦うことじゃろ?     国がエトノワールしか残っていない今、そこと戦うこととなるわけじゃが』 提督猫『大丈夫!だって僕魔王!あ、ホギッちゃんはここで別れる?     この戦争にキミは関係無いし、このままエィネを連れて旅に出てもいいよ?     ていうかここで別れてくれ。もしもの時のため、     貴様にはエィネとともに行動していてほしいのだ』 思えばエィネを救出した時点でホギッちゃんは関係ない。 そんな彼をこれから起こる聖戦に巻き込ませるのは悪いというかもったいない気がした。 何故もったいないかって? こういうバトルは真面目なやつが居るとつまらなくなるからさ。 俺はこの世界を精一杯に生きてるが、楽しむことを放棄した覚えなどない。 だからといって猫たちやドワーフを巻き込んで死なせたりするつもりも一切ない。 遥一郎「……それは構わないけどさ。お前らはどうするんだ?     さすがに求めるものが虚像であることにいつまでも気づかないほど、     王国のやつらは馬鹿じゃないだろ」 提督猫『大丈夫!なにを隠そう、俺は騙しの達人だぁああああっ!!!     今回は特別に妖精の世界から妖精王デッカードに出向いてもらおうと思う』 エィネ『妖精王の名前はレアズ=クロムルージュですが』 提督猫『い、いいの!デッカードでいいの!忘れてたわけじゃないよ!?知ってるもん!     とにかくそういうことだから!あとのことは我らにお任せ!     それとエィネ、妖精界へのゲート開いてくれると嬉しいのだけれど』 エィネ『は、はあ……。あの、さっきから気になってたんですけど、     どうしてわたしのことを知っているんですか?何処かでお会いしましたっけ』 首を傾げて訊ねる妖精さん。 キュートだ。 じゃなくて、そうか。ずっと猫の姿だったから解らなかったか。 提督猫『訊かれたのならば応えよう!それが俺の生きる道!     遠き者は耳に聞け!近き者は眼にも見よ!     俺が原沢南中学校迷惑部提督!中井出博光であるーーーーーっ!!!』 どぉーーーーーん!!! エィネ『───……え、えぇええええええっ!!?     ひ、博光さん!?博光さんなんですか!?』 提督猫『イエス・アマゾネス!』 遥一郎「アマゾネスは関係ないだろ」 エィネ『あ、あの!博光さん!?』 提督猫『おお!なんだ妖精の君よ!』 エィネ『とりあえず一発殴らせてください』 提督猫『えぇっ!?なんで《パグシャア!》ペッシェ!!』 問答無用で殴られた。 こんな扱い、まるで彰利だ。 でも猫よりも小さい拳なので大して痛くなかった。 エィネ『今まで何処をほっつき歩いていたんですか!     人のことほったらかしにしてあっちこっちで騒ぎ起こして!     しかもやっと見つけたと思ったら魔王!?何を考えてるんですか!!』 提督猫『日々楽しむことのみを考えている!!《どーん!》』 でもなんとなく、みさおちゃんに怒られる彰利や晦の気持ちが解った気がした。 多分こんな感じなんだろうね。 エィネ『はぁ……それで、また離れ離れになるんですね……?     あの、解ってますか?博光さんは戒めの宝玉探しをしてるんですよ……?』 提督猫『大丈夫!既に三つ破壊した!いや、風も合わせると四つか?     ともかく順調である!なんの心配も要らん!』 俺はこれからのことで心配しまくりだが。 だってさ、このレベルのまま守護竜と戦い続けるなんて、本気で死ぬだろ。 だが諦めない!それが俺達に出来る唯一の戦い方なんだよ!! 提督猫『そんなわけだから、我らはエーテルアロワノンに戻って準備をする。     貴様らはそのまま宝玉探しをしててくれ。     俺とナギーとシードは守護竜討伐を主に旅していくから』 遥一郎「根性あるのか無いのかとことん解らないヤツだなお前……」 提督猫『根性なら無いぞ?ただ覚悟だけはもってるつもりさ。     ではナギー、シード。そろそろ戻るぞ。     猫たちやドワーフたちに心の準備をさせなければ。     ギリギリに行って驚愕させるのもまた面白そうだが、     俺は猫やドワーフには多大な恩があるのだ。そんなことは出来ん』 エィネ『それで……ゲートを開けばいいんですよね?     ここでは出来ませんけど、どうします?』 ナギー『エーテルアロワノンならどうなのじゃ?     あそこは既に自然要塞と化しておるのじゃ。     ゲートを開くための自然は十分に備わってると思うのじゃ』 エィネ『あ、はい。ではそこで』 遥一郎「結局行くことになるのか……」 提督猫『妖精王を引きずり出すまでの辛抱だって。     それが済んだらすぐに逃げ出しませい。あとのことは我ら亜人の問題となる』 遥一郎「人間だろお前」 提督猫『フフフ、甘いなホギッちゃん。騒ぎを起こしたのがこの姿ならば、     この姿のまま敵を迎え撃つのが礼儀というもの。     王国兵士であるからと天狗になっている哀れな者どもに魂の救済をくれてやる』 言ってるうちに既に発動させていたのか、再び空からゲートが降りる。 シードの転移術だ。今回は邪魔する者も居ないからすぐにでも飛び立てるだろう。 提督猫『ではこれより!エーテルアロワノンに住まう猫たちやドワーフたち!     そして妖精の安全を守るための聖戦を執り行うものとする!!準備はいいか!!』 総員 『サーイェッサー!!』 提督猫『アイテムは持ったか!』 総員 『サーイェッサー!!』 提督猫『武器の手入れは十分か!』 総員 『サーイェッサー!!』 提督猫『うむよし!ではシードよレッツゴー!!聖戦の幕開けである!!     イェア・ゲッドラァック!ラァアイクッ!ファイクミィイーーーーッ!!!』 ザザァッ!! 総員 『Sir(サー)!!YesSir(イェッサー)!!』 ホギッちゃんやエィネも混ぜた総員が声高らかに叫ぶ! さあ行こう!欲に溺れた憐れな人間どもに亜人族の強さを思い知らせてくれる!! 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