───冒険の書190/やかましいけど穏やかな朝───
【ケース501:弦月彰利/ランポスという名をつけた人、あなたは偉大だ】 考えた末に出た結論は、 料理とか作ってそれをみんなで食べて楽しみましょうっていうものだった。 結論から言うと訳が解らない時ってあるよね、うん。 ともあれ高らかに叫ぶ我らの前にはようやく上り始めた朝日があった。 ようするに僕らは祭りの準備期間の中に居る。 や、いいもんですよ?亜人族みなさんが一緒になってワイワイと準備しとるんですよ。 手が空いてるヤツは音楽とか演奏して、本当に賑やかなもんです。 魔術猫『で……なんで俺、また料理作ってるかな……』 黒猫 『ぶつくさ言うねぃ、オイラも悠介も中井出も手伝ってるじゃない』 白猫 『そうだぞ穂岸。そんなのいちいち気にしてたら胃がいくつあっても足りやしない』 魔術猫『ああ、お前が言うと説得力あるよ』 始まったのは亜人族開催の宴の準備だった。 当然亜人族以外はナギ子さんやら種ボーイくらい。 一応妖精も亜人族として数えさせていただいております故、そうなる。 いやぁ、よい場所ですよこの要塞! 見晴らしもいいし空気は綺麗だし賑やかだしで、言うこと無しじゃよ。 しかも空浮いてるのYO!今や僕らにとっては当然のことみたいになっている浮遊も、 これだけ大きなものを自分らが(中井出が)集めたもので 浮くようにしたっていうのがまた感動! そういった技術面はドワーフとかアイルーじゃなきゃ引き出せなかったっていうんだから、 なんともはや、中井出の周りは実にファンタジーのステキ要素が揃っておるわ。 だが忘れちゃいけない、僕らは敵同士なのだ。 けどまあこんな姿をしている間くらいは盛大に宴を楽しみましょう。 だってね、やっぱ楽しめる時に楽しまないのはもったいねぇもの。 提督猫『さあさお立会い!おたっ……立ち会ってぇえええっ!!     みんなで無視しないでぇええ!!』 ほらごらん?チラリと視線を移せば、 みんなに構ってもらえず悲しんでいる我らが提督の姿が。 ブリュンヒルデとかいう生きた防具を変形させて、 シュレック2の長靴を履いた猫装備を身にまとってる。 でも、うん。思いっきり無視されてます。 原因はね、ものすご〜く簡単なことでして。 それを説明するにはまずチラリと視線を動かさなきゃなりません。 ナギー『………』 ハイ、あそこで頭からキノコ生やしそうな勢いで落ち込んでる精霊が原因です。 ヤツが落ち込んでるもんだから、自然要塞であるここに悪影響が出始めておるのですよ。 お蔭で要塞の状態が不安定になっておりまして、このままじゃ下手すりゃ落下、 なんてこともありうるとドワーフの偉い人、ダルトロス老は語ります。 だから仲直りするまでは口などきかねー!くそして寝ろ! という、まさに外道なイジメ攻撃が始まったのです。 やっといてなんだけど、楽しげな音楽が演奏されてる中でやることじゃねぇよね。 でもそれがまたいいのです。 黒猫 『ヨゥヨゥヨゥメェーーーン!アイはミーYO!!     中井出中井出、ホレさっさと謝っちまいなさい!?     そしたらちゃんと相手してやっからYO!!』 提督猫『やだもんねぇえ〜〜〜っ、俺悪くないもぉお〜〜ん』 黒猫 『おお!それは伝説の悪ガキの真似!     ……いやー、ほんとどうして悪ガキって語尾を不必要に延ばすんだろうねぇ?』 提督猫『きっと本能で相手をむかつかせる言葉遣いを発しているのだ!』 黒猫 『なるほど!じゃなくて謝れっつーのに!ほれ早く!     あっしが悪ゥございました彰利さんって言ってごらんよホラァア!!』 提督猫『ちょっと待て羅武てめぇ!     俺いつの間にお前に謝らなきゃならん状況に至ったんだよ!』 黒猫 『羅武じゃねぇって言ってんでしょうがまったくもうこのエロスは!!』 提督猫『エロスじゃねぇって言ってるだろうがこのホモが!!』 黒猫 『グウウ……!……あ、ところでさ』 提督猫『お?どうした彰利一等兵』 黒猫 『………』 途端の切り替え速度にもしっかり対応。 さすがは僕らの提督さん。 とまあそれはどうでもよいのですがね。 黒猫 『あの……ホレ、妖精のゲートあるじゃない?     あれってもはやここに固定されとるんだよね?』 提督猫『うむ。レアズ将軍がそう言ってたぞ。自然に溢れるこの要塞は、     ゲートを固定しとくにはもってこいなんだとさ』 黒猫 『ほへー……』 見上げてみれば、高い位置にあるゲートから降り注ぐ緑色の粒子めいたもの。 それ見てるだけでもロマンチストならロマンティック空間を広げられるんでしょうね。 現にホレ、 妖精A『うわーーーやけに冷え込むと思ったら、粒子雪だよシフ』 妖精B『ふふ……魔力がよっぽど安定してないと粒子雪なんて出ないのに、珍しいわね』 妖精A『見て見て、どんどん降ってくるっ、綺麗ね〜♪キャハッ、冷た〜い』 妖精B『あ〜わかったわかった、いつまでも燥いでないで準備を済ませちゃいなさい』 妖精たちもキャイキャイと燥いでおるわ。 この綺麗な緑色の小さな光、名を粒子雪というらしい。 触れてみると確かに冷たい……おお、本当に雪みたいだ。 ───ともなれば。 黒猫 『うわーーーやけに冷え込むと思ったら、雪だよ中井出っ!』 提督猫『ふん!んなモン、おらが新潟じゃ珍しくもなんともねえっぺや』 黒猫 『見て見て、どんどん降ってくるっ、綺麗ね〜♪キャハッ、冷た〜い♪』 提督猫『あン〜〜〜あ都会モンはこれだからやだィヤ、雪のおっかなさを知らん。     まァいいコテ。所詮雪国のチビシさは雪国モンしか解らんでや。千絵カナスィ』 俺達もキャイキャイと燥いでみました。 するととんでもなく冷たい目で妖精たちに見られてしまった……。 ……意味のないことはするもんじゃないね。楽しいからいいけど。 黒猫 『ところでさ、中井出って今、守護竜討伐目指しとんのよね?』 提督猫『うむ!成り行きと面白いもの見たさ故の行動だ!』 元気よのぅ。 でもなにも試練中にやることないと思うんだけどねボカァ。 黒猫 『というわけでナギ子と仲直りなさい?』 提督猫『わけわかんねーよ!!』 黒猫 『まったくだ!!』 グウ……中井出の無意味に許容範囲の広いノリの良さを利用し、 返事をさせて仲直りへのきっかけを作ろうと思ったのに……。 や、さすがの中井出でもこんな思いっきりなバレバレ条件じゃあ頷かんか。 困ったねぇ……なんとしても仲直りしてほしいんですがね。 いやそもそも仲直りとかそういう状況なんかねぇ。 ただあの状況じゃあ話すことはなにもないって言っただけだよね? それをどう受け取ったのか、物凄いダメージを負って動かなくなったわけで。 …………ギャアもう!ダメ!ダメじゃわそげなことでは! 人生楽しく真っ直ぐGO!! 故にこのおせっかい焼きのスピードワゴンがちょちょいと仲を取り持ってやるぜ。 黒猫 『まずは黒をいじって……《ゴワゴワ……》むう!完璧じゃ!』 黒をいじって、顔だけスピードワゴンに!OHパーフェクトゥ!! 猫の身体にスピードワゴン!見事なアンバランスさだ!頭が滅茶苦茶重い! かつてこれほどまでに斬新でアグレッシヴなスピードワゴンさんが存在しただろうか! いいやおるまい!……反語。 ワゴン猫『YO!お嬢ちゃん!』 ナギー 『ふぎゃーーーーーっ!!!』 顔を見るなりボコボコにされました。 ───……。 ……。 ワゴン猫『あいたたた……まったく無茶をする……』 いきなり殴られた顔面をさすさすと撫でながら、身に余る悲しみを口にしてみました。 いきなりはねーべよいきなりはYO。 ナギー 『おぬしが恐ろしい姿で現れるからじゃ!      なんなのじゃ!?わしになにぞ用でもあるのか!』 ワゴン猫『なきゃ話し掛けるわけねーべよ!いいかいお嬢ちゃん!      誰だって聞きたそうな顔してるんで自己紹介させてもらうがよ!      俺ぁおせっかい焼きのスピードワゴン!      困惑するアンタの姿が見てらんなくてくっついてきた!      甘ちゃんなあんたが好きでも嫌いでもねーから教えてやるぜ!      てめぇに中井出と仲直りするためのアイディアってやつをな!』 ナギー 『───お、おお!まことか!?』 ワゴン猫『まことだとも!さあ!今こそ立ち上がる時ぞ!いいか!?まず───』 クォックォックォッ……! さあ中井出よ……! このおせっかい焼きのスピードワゴンのおせっかいで仲直りをするがいい……!
【Side───中井出博光】 提督猫『ひ〜と〜り〜が〜だいすきさ〜……ど〜せ死ぬ時ゃ……ひとり〜きり〜……』 ごらんよ僕。 世界はこんなにも悲しみで満ちている……。 あの朝日だってなにも祝福しちゃくれない。 夜明けが新しい船出を称えるなんてウソさ。 そんなもん称える余裕があるなら少しでも早く僕の悲しみを照らしておくれ。 この悲しみが影の中で繁殖してしまわないように……。 提督猫『………ウウ』 でもさ、一体僕がなにをしたと? 自分の中じゃあナギーを傷つけるようなことをした覚えなど皆無なんだが? 堂々と罵倒するのは男らしくでいいが、 こうやって陰湿にハヴるのは好きじゃない……こんにちは、中井出博光です。 陰湿なのはいかんよな、やっぱ堂々と罵倒せねば。 だから僕は今こそ立ちあがろう! こんなやり方でイジメられててもちっとも面白くない! どうせイジメるなら堂々と面と向かってイジメてみろってんだ! そんな勇気も無いやつらがイジメなど片腹痛い!! 提督猫『やい貴様ら!』 忍者猫『オ?なんか今声しなかった?』 執事猫『さぁなぁ聞こえなかったぜぇ?』 提督猫『ローテツ!』 執事猫『《ベチヂガァンッ!!》いっだぁあーーーーーーーっ!!!』 忍者猫『なっ……なにヨ今光ったべ!!』 目の前の我を無視して不良イジメッ子の真似とはいい度胸! そんな輩には雷撃ドンナーシュートをお見舞いだ! 普段は温厚なこの博光、 陰湿でちぃとも面白くないことを前にすればたちまち心を鬼に切り替える修羅! おまんら……ゆるさんぜよ!! 提督猫『ククク……キミたち僕のこと見えないんだよね?     だったら何が起こっても平然としてられるんだよね?     あ、大丈夫だよ?これポルターガイスト現象だから。     キミたち僕のこと見えないんだろ?ね?     そう、僕は目にも映らない妖精さんさ。そんな僕が今キミたちに牙を剥く!』 執事猫『うあやべ……!悪ノリしすぎた……!目がマジだぞ?』 忍者猫『ま、待つでござる提督殿!ギブ!もうやめるでござるから!』 提督猫『おだまりなさい!そもそもやり方が気に食わん!!     猛者どもともあろうものがイジメの典型を選んでヘラヘラ笑うなど!     よってこれより修正を始める!全力で抗うように!』 執事猫『な、なにぃ!?本気かよ提督───え?歯ァ食い縛るんじゃなくて抗うのか?』 提督猫『失礼な!俺はいつだって本気だ!いいか!?全力でだ!     全力でぶつかってくるのだ!     だが間違うな!イジメてた自分を誇って戦うのではない!     むしろ陰湿なるイジメに走った自分を捨てるために戦うのだ!     これはきっと一時の過ちにすぎないのさ……!!     だ、だからそれを払拭するためにも全力でくるのだ〜〜〜っ!!!』 忍者猫『て……提督殿……!』 執事猫『て、提督てめぇ……!そこまで俺達のことを心配して……!!』 忍者猫と執事猫がじぃいいん……と嬉しさを噛み締めるように天を仰ぐ……! そんな二人(二匹?)を見てこの博光は…… 提督猫『死ねぇええーーーーーーっ!!』 襲い掛かりました。 忍者猫『え?うわほぎゃああーーーーーーっ!!!』 執事猫『甘いわ提督!貴様がどう出るかなどこの藍田亮は予測済みよ!!』 提督猫『なにぃいい!?』 ゴシャーと襲い掛かった俺を前に、丘野くんは怯んだが藍田くんが即座に反応! 烈風脚で移動を開始すると、目にも留まらぬ早業で我が背後へ付く!! 提督猫『ば、馬鹿な!動きを追いきれんだとーーーっ!!?』 執事猫『疾風の如くと烈風脚とAGLマックスの複合技だ───貴様には見切れぬ!!』 提督猫『き、貴様ーーーーッ!!!』 前に疾駆してから後ろを向く! そうしてから体勢の建て直しを 執事猫『“反行儀(アンチマナー)キックコォーーーーース”!!』 ドボォッシャァアアーーーーーンッ!!! 提督猫『ゲファーーーリ!!』 がっ…………ダメ…………っ!! 疾駆するより先に鋭い蹴り上げが我が身を襲う! 藍田くんてば向けてるのが背中だろうがお構いなしに、 この博光を朝日が昇る綺麗な空へと強引に蹴り上げやがったのだ!! ……しっかりSTRマックスにして。 提督猫『お、おのれ〜〜〜っ!!貴様このままでは済まさん〜〜〜っ!!』 執事猫『もちろんだぜ提督〜〜〜〜っ!!』 提督猫『な、なにぃーーーーっ!!?』 見下ろす景色に虚を突かれた! 藍田くんがさらに烈風脚を行使し、空に飛ばされたこの博光を追ってくるのだ! しかもなにをするかと思いきや、身体を捕らえたり蹴ったりするでもなく、 我が足をガシィと掴んでぐるりと立て回転をする───!! ……あれ?これって…… 執事猫『将軍家三大奥義のひとーーーつ!!“大江戸ドライバァーーーーッ”!!!』 提督猫『やっぱりぃいいいーーーーーーっ!!!』 仕掛けてきたのはなんと大江戸ドライバー! 足を背負うように肩に回し、 敵の背に腰かけるような体勢のまま地面へと落下する将軍家奥義! これをやられると、まるでナパームストレッチをくらったかのような ダメージが身体を蝕むとさえ言われている……!! 提督猫『だ、だが甘ぇえ〜〜〜っ!!     こ、この原中が提督たる博光がこの技の性能を知らんとでも思うたか〜〜〜っ!』 執事猫『な、なにをぬかす〜〜〜っ!!     大江戸ドライバーは将軍家に与えられた最強最古の奥義だ〜〜〜っ!!』 提督猫『自惚れるな万太郎!この世に常勝のパワーなど……有り得ない!!』 ググ……!! 執事猫『グ、グウウ!!馬鹿な!』 提督猫『そう!この技の欠点は足しかフック出来てないということだ〜〜〜っ!!     こんなもの、反動を利用して身体を丸めてしまえば、     逆に貴様へ技を仕掛けられるほど甘い技なのだ〜〜〜っ!!そうらぁ〜〜〜っ、     あとちょっとで逃げ《ドグシャアッ!!》ギャアーーーーーーッ!!』 執事猫『あ』 忍者猫『あ』 ベラベラ喋ってるうちに樹木の床に叩きつけられました。 しかも技を破ろうとした瞬間だったもんだから、頭頂から思い切りゴシャアと。 お蔭で首がヘンな方向に曲り、なんだか意識が遠退いて…… 執事猫『お、俺達は忘れない……提督……貴様のような男が居たことを……』 忍者猫『陰湿なイジメよりも、     やはり全力でぶつかるイジメの方がまだ男らしいということを……』 いやあの……確かにそうだけどさ……。 でも猛者以外には滅多なことじゃそんなことしちゃだめだよ……? あれは気心知れまくった我らだからこそ許容出来るってこともあるんだから……。 あ、ダメだ……意識が…… 【Side───End】
ザムザムザムザム!! さあ!早速ミッション開始だぜ! このおせっかい焼きのスピードワゴンがナギ子に教えたのはたった一つの冴えたやり方! それさえきちんと実行出来れば中井出との仲直りなど楽勝だぜ! ナギー『ヒロミツ!』 提督猫『グビグビ……』 ナギー『………おおお!?ヒロミツが泡を噴いて気絶しておるのじゃーーーっ!!     どどどどうすればいいのじゃ!?のう!これは想定外なのじゃーーーっ!!』 ぬう!?よもや中井出が気絶中だとは───いやむしろなにがあった!? だが構わん!GOサインだナギ子さん!! バッバッバッ……(か・ま・わ・ん、や・れ……!) ナギー『ぬあっ!?や、やれと申すのか!?     ヒロミツが話を聞いてなければ意味がなかろ!』 バッバッバッ……(黙れクズが!いいからやれ!) ナギー『誰がクズなのじゃーーーっ!!おぬし!     回りくどいことをしてただわしに喧嘩を売りたかっただけなのじゃな!?』 ゲゲッ!? やべぇ応援するつもりがついヘンテコなサイン出しちまった! つーか解るほうも解るほうじゃないスカ!? こりゃいかん、すぐに訂正せねば作戦が失敗に終わる! バッバッバッ……(クズはウソだ!ともかくやれ!じゃなければ全てが無意味に終わる!) ナギー『うぐっ……た、確かにそうじゃがの……!』 バッバッバッ……(起きてないのなら起こせばいい!だからGO!) ナギー『む……そ、そうじゃの。このままではヒロミツに嫌われたままになるのじゃ……』 ……そもそも嫌われてなんかないんだけどね。 だが面白いから真っ直ぐゴー!! ナギー『ひ、ヒロミツ〜?お、起きるのじゃー……』 ぺしぺし……ぺし。 ナギ子さんが中井出の頬をやさしく叩きます。 しかしそげなもんで起きるわけもなし、依然泡を噴いたまま動きません。 ノンノンナギ子さん!そげなことではダメよダメ! もっとアグレッシヴに!優しくなんて甘い甘い!! そんな旨をサインで送りました。 ナギー『む……や、やさしいかの。では───』 ブンッ───べちっ!ぺちっ!べちっ! ナギ子さんがさらに頬を叩く。 しかし威力が足りないためかキツケにもなりゃしない! よってそれではダメだと再びサイン!エイィまだるっこしい! だがここは我慢だぜ!何故なら俺はおせっかい焼きのスピードワゴン! ここで手を貸すのはおせっかいじゃなく邪魔でしかないぜ! ナギー『む、むうう!解ったのじゃ!これもヒロミツと仲直りするためじゃからの!     覚悟はよいなヒロミツ!───たぁああーーーーーーーっ!!』 提督猫『い、いてて……ん?なに《ぶわぁっちぃーーーーん!!》ギャアーーーーッ!!』 ナギー『はわぅっ!?ヒ、ヒヒヒヒロミツ!?』 なんと! 今までペチペチと叩かれていたことが効いたのか目覚めた彼が、 ナギ子さんの全力の一撃の前に絶叫!! しかも猫だから、ビンタが顔にジャストフィットというか、つまりクリティカル!! 中井出はそのあまりのビンタ力にバキベキゴロゴロズシャーーーアーーーッ!!と滑り、 アイルーキッチンに突っ込んで様々なものを巻き込んで転倒!! その際、煮込み中の高熱スープが入った寸胴まで巻き込み、 ガポシャばっしゃぁああああああんっ!!! 提督猫『うあっちゃギャアアアアアアアアアアアアッ!!!!!』 ジュウウバシャバシャ……!!バシャ……バ……バシャア…………ガクッ。 ワゴン猫『お、落ちたーーーっ!ロビンがーーーっ!!』 じっくりコトコト煮込んでいたスープをその身に浴び、 絶叫したのちにスープの海で再び気絶したのだった…………!! ワゴン猫『ひでぇ……なにもあそこまでやらんでも……。      このスピードワゴンは叩けとは言ったけど、      再び気絶させろなんて言ってないぜ……?』 ナギー 『きっ……気絶したのは結果論であろ!      そもそもおぬしが叩けなど言わねばこんなことにはならなかったのじゃあっ!!      どどどどうするのじゃ!このままではわしは、      目覚めた途端にヒロミツを理由もなく叩いた存在になってしまうのじゃ!』 ワゴン猫『理由ならあるじゃないか!中井出を起こそうとした!それが理由!おお理由!      なんて立派な理由なんだ!この理由があれば大丈夫さきっと!だから僕帰る』 ナギー 『ふざけるでないぃっ!!      わしはこういう時どうすればいいのかなど知らぬのじゃ!      このままではヒロミツとの溝がより深いものになってしまうであろ!?      おせっかい焼きを自称するなら最後まで自称するのじゃ!この痴れ者がぁっ!』 ワゴン猫『なんで痴れ者!?』 フッ……だがここまで言われちゃあ、 このスピードワゴンのおせっかい魂も黙っちゃいられねぇ。 ワゴン猫『いいだろうお嬢ちゃん!だったら次の作戦だ!』 ナギー 『大丈夫であろうな……!』 ワゴン猫『大丈夫だぜジョースターさん。      俺の見立てじゃあヤツは既にアンタを許しかけてる』 ナギー 『目が覚めた途端に叩かれただけでか!?そのようなことが起こるわけがなかろ!      おぬしはほんに常識というものを知らぬ者よの!底が知れるぞ!』 ワゴン猫『バカヤロコノヤロォ!我らが中井出提督が常識なぞで計れるものか!      つまり中井出相手じゃ正攻法は効かないと考えるべきなのだ!』 ナギー 『む……そ、それはいやに説得力があるの……』 キャア!喰らいついた! クォックォックォッ……!これでもうしばし退屈しのぎが出来そうじゃわい……!! ……いや、普通に準備は面白いんだけどね?やっぱパンチが欲しいわけよ。 だったらどうせなら仲直りも兼ねて楽しめれば最高ジャン?ジャジャン? というわけでレッツゴー!! 【ケース502:中井出博光/愛シャルリボーン】 バシャ……ドチャチャッ…… 提督猫『ウ、グウ……!』 ふと目を開けると、そこはキッチンだった。 身体がヒリヒリする理由は、多分俺からよい香りがすることに関係があるんだと思う。 そしてヒクヒクと反笑い状態で僕を睨む晦一等兵とホギーにも。 提督猫『やあ』 とりあえず挨拶をしてみたら、 奇声を上げながら襲い掛かってきた二人にボコボコにされました。 ───……。 ズキズキズキズキ…… 提督猫『あの……どうして俺、ここまでボコボコに……』 思わずちくしょ〜〜と呟きたくなるような、見事なボコボコっぷりだった。 しかも敵対心解いてくれないから回復してくれないし…… 白猫 『やかましい!人が苦労して作ったスープを台無しにしやがって!』 魔術猫『頼むから準備の時くらい静かにしててくれ!     こっちは丹精込めて作ってるんだよ!』 提督猫『あ、ああ……なるほど』 ようするにこのスープは二人が協力して作ったものだと……。 なるほど、それは悪いことをした。 だからと、俺は落ちて乾き始めていたスープを指で掬うと、それをペロリと舐めた。 提督猫『うん美味い《バゴシャア!!》ウヴェェイェ!!』 そして見事に殴られた。 提督猫『な、なにをするだァーーーーッ!!こ、ここって普通、○○クン……!     とか言って感激するところじゃないの!?     ホラ!漫画とかでありがちな、     おなごが料理作ってきてくれるんだけど目の前で台無しになっちまって、     だけどそれを砂も払わず食べるシーンとかでさ!』 白猫 『あのなぁああ……!!     台無しにした張本人にそんなことやられて喜ぶ女が居ると思うか!?     そして俺は別に貴様のために作ったわけじゃないから感激なんて出来るかぁっ!!     そもそも普通がどうとか以前にこの状況でそれやるとは思いもしなかったわ!!』 提督猫『フフフ、普通じゃないのが普通……それがこの俺提督猫』 魔術猫『じゃあその原中魂を抱いたままそこでずっと正座でもしててくれ……』 提督猫『えぇ!?お、俺は嫌だぜ!って言ったら?』 魔術猫『全部お前だけにスープ作りを任せる』 提督猫『ごぇえええ〜〜〜……?』 魔術猫『心の底から嫌そうな声出すなよ!』 いやしかしこの博光がスープ作り? …………面白そうだ!是非やろう!! 提督猫『よ、よ〜〜〜し、気が変わった〜〜〜っ!     そ、そのスープ作り、この博光が請け負った〜〜〜っ!!』 魔術猫『いいならヘンな声出さないでくれ頼むから』 提督猫『断る!《バァーーーン!!》』 魔術猫『そういうところで断るのもやめろ!』 白猫 『よし、じゃあ提督、これレシピな。これの通りにやれば問題ないから』 提督猫『オリジナリティを行使していいだろうか』 白猫 『だめ』 即答だったという。 けどまあ、少しいろいろ整理しながら料理でも作りましょう。 いろいろ未解決な問題が山積みになってて、これからどうしたものか考えどころだし。 ───……。 ……。 さて……そんなこんなで、賑やかな朝を迎えた僕ら亜人族。 完全に登った朝日を余所に、 俺と晦とホギーはじっくりと料理を完成へと導いていっていた。 しかし流石は料理上手たち。 簡単なものくらいしか上手くできない俺と違って手際がいい。 提督猫(おお〜〜〜っ、みるみるうちに料理が完成してゆく〜〜〜っ!!) それなのに俺は未だスープのみ。 じっくりと煮込むのが美味しさの秘訣とはいえ、退屈だ。 だからアイルーキッチンのアイルーのように身を軽快に振るい、 ぐーるぐーるとスープを掻き回す!! 白猫 『無駄に汁が飛ぶからやめろ!!』 開始3秒であっさり怒られた。 俺……本当に提督なんカナ……。 思うんだけど、ここまでなんの力にも恵まれなかった提督って珍しいと思うよ? 最初の頃なんて俺以外のヤツがやるべきだって本気で思ってたくらいだし。 料理も簡単なものしか出来ないし、 勉強もダメ、運動も並、いいとこ無しの平凡一市民だった。 しかしまあ、だからって現状がイヤだってわけでもないんだよな。 楽しくあれば俺は満足だし。 白猫 『…………ところで……提督?さっきから気になってしょうがないんだが……』 提督猫『え?なにが?』 白猫 『いやお前気づいてるだろ!     あれだよ!さっきからずっとお前のことを見てるナギー!』 提督猫『あ、ああ……あれね……』 ようこそカッパーフィールド。 自然要塞内の拾いキッチンの出入り口から、こちらをじ〜〜〜っと見つめる影ひとつ。 しかも出入り口の影に寄り添えばいいのに、わざわざ木を精製してそこから見つめてる。 木陰から見守るなんて、何処の熱血少年のお姉さんなんだろう。 提督猫『え、えーと……ナギー?』 ナギー『《ビクゥッ!》───《ザザァッ!!》』 提督猫『…………あれ?』 話し掛けた途端に身を跳ね上げ、逃げ出してしまった。 ……はて。 提督猫『ねぇ晦一等兵?これってなんてときめき?』 白猫 『知るか!』 メモリアルがどーたらなんぞ知りもしないが、 目が合った途端にポッと頬を染めて隠れられても困るんだが。 提督猫『どう思います?ロリコン魔術師穂岸くん。略してロリ道化師ホギー』 魔術猫『誰がロリコンだ!!その見解今すぐ改めろ!!』 白猫 『ああ、でも穂岸はこういう状況詳しそうだしな。なんなんだ?あれ』 魔術猫『いや……なんなんだって聞かれてもな。     多分お前と話すきっかけを必死に作ろうとしてるんだと思うぞ?』 提督猫『…………そうなの?だって頬染めてたぞ?』 魔術猫『ここで大体のヤツが恋に目覚めたんじゃないかとか言うんだろうが、あれは違う。     まず態度が少しわざとらしい。裏に首謀者が居るって考えて間違い無い』 白猫 『よし彰利だ』 提督猫『うむ彰利だ』 魔術猫『首謀者ってだけで犯人確定か……。あ、でも待った。     あの子供がお前と話をするきっかけを求めてるのは確かだと思うぞ。     わざとらしさは確かにあったけど、目が真剣だった。     怯えと期待を孕んだ目って言うのかな、そんな感じだ』 提督猫『おお……なんていう説得力のある言葉だ……!さすがロリマスターホギー……!』 魔術猫『……なぁ、何気に不名誉な称号がクラスチェンジしてないか……?』 白猫 『やめろって言ったって聞きゃしないから諦めていいと思うぞ。     気にしないのが一番だ』 ふぅむ……ナギーがこの博光と話すきっかけを探している……? 馬鹿な……この博光とナギーは出会ったその時から無遠慮に相対し続けてきたというのに。 遠慮無用に話し掛け、時には頷き時には反発するのが我らだったというのに。 なにがナギーをああも慎重にさせてしまったというのだ? ……なにか悩みがあるのならば聞いてやらねばなるまい。 結局のところ、確かにいろいろありはしたが、 ここまでナギーを引っ張りまわしてしまったのは他でもないこの博光なのだから。 提督猫『すまん晦、ホギー、ちょっと話してくるからスープ見ててもらっていいか?』 白猫 『だめだ』 即答だったという。 ……なんだか少し、店長に旅に出たいと告げたのに“だめじゃ”と断られ、 “武器屋トルネコ───完”に至ったトルネコの気持ちが理解出来た気がした。 魔術猫『お前も案外容赦ないな……いいよ、俺が見とく』 提督猫『お……おお!謝謝!謝謝ロリ道化師!!』 魔術猫『それやめろ!ただのホギーのほうがまだいい!!』 提督猫『よろしくホギー!』 魔術猫『え?───ぐあぁあああああっ!!!』 白猫 『お前も案外ハメられやすいのな……まああれだ、よろしくホギー』 こうして僕らに新たな仲間、ホギーが加わったのだった……!! と、それはそれとして俺もナギーと話をしてこなければ。 提督猫『じゃあ、すまんがよろしく』 魔術猫『俺の馬鹿俺の馬鹿俺の馬鹿俺の馬鹿……』 白猫 『聞いちゃいないぞ?』 提督猫『…………よろしく!』 白猫 『まあ……そうなるとは思ったけどな。     俺もむざむざスープを台無しにする気は無いし、解った、任された』 了! ではこれよりナギーとのコンタクトを積極的に開始する! ───と、ササッと向き直ってみれば───急に走り出して逃げ出すナギー。 提督猫『……あれ?ちょ……逃がすかぁーーーっ!!《ギャオッ!!》』 逃げる者が居るのなら全力で追いましょう! いや、なんていうかさ、逃げるヤツ追うのって……面白いし!! そんなわけで今この時より、ナギーとこの博光の追いかけっこが始まったのだった……!! キョホホ、彰利一等兵よ…… 貴様がどんな知略を巡らせてこの博光を待ち構えているか……そんなことは知らん。 だがこの博光がそう簡単に何事に引っかかると思うなぁあっ!! 提督猫『ふはははは《カチッ》あれ?《ドゴォンッ!》ゲファーーリ!!』 走ってる最中になにか黒いの踏んだ! と思ったら横からロープで結われた丸太が飛んできて我が脇腹を直撃! どことか猫だから勢いにも勝てず、樹木の壁へとプチッと圧された。 提督猫『イデェッホゲエッホゴホ!!痛くて咽る!痛い!咽る!!』 潰れた拍子にドヒュウと僕の体内から吹き出た酸素。 すると身体が新しい酸素を求め、咽るように酸素を吸った。そして痛い。 提督猫『ウヌヌヌ〜〜〜ッ、も、もしやナギーの行く先々、     こういったトラップが仕掛けられていると……!?』 となると前を走るナギーは囮か……! ナギーを追うとトラップの数々の餌食となると……! クフフ、やってくれるぜ彰利一等兵……! だがこの博光、こんなアトラクションめいたものがかなり好き! よって追跡はやめん!おそらくこの行動も想定内だろうが、貴様には誤りがある! 囮をああもしっかりと見せたのは失敗だったな! つまりナギーが走る道を走れば、この博光も安全だということドゴォン!! ナギー『ふぎゃああーーーーーっ!!!』 …………。 提督猫『エート……』 アノー、前を走るナギーが丸太に吹き飛ばされたんですけど……。 な……なるほど、解ったぜ彰利一等兵……これは無差別トラップ遊戯だ。 囮と見せかけたナギーでさえ己のトラップの餌食とする、 嗾けた者のみが大変楽しいトラップ地獄……!! だがいいだろう!今さらなにを怯えることがあろう!うんごめん素直に怖い。 だがそれよりも面白そうという気持ちが勝ったのなら、立ってみせよう原ソウル!! 提督猫『大丈夫!なにを隠そう、俺は罠抜けの達人だぁあーーーーーっ!!』 ではゴー! 大丈夫!僕なら出来る! 我らの魂を心でなぞれば、どこに仕掛けそうかなどなんとなく解るというもの! そう、俺ならばきっとそこに置くだろうという場所を避ければいいのだ!! 提督猫『フンフンフンフンフンフン!!!』 走る!走る走る走る走る!! ───おお!ホレ見ろ全然大丈夫だ! やはりこの勝負、この博光が一歩を先んじる!! さあナギーももう目の前でガシャンッ!! 提督猫『ヒィ!?』 身も凍る思いィイイイイッ!!! やられたッッ!!それは油断という名の愚かな敵ッッ!! 踏み込んだ床が黒く変色し、今までで一番嫌な重苦しそうな音を奏でたァアアアッ!!! 油断はしないと心に誓っていても、 いつでも油断しないなんてことは出来ないのがヒューマン! だがっ……ああだがっ……!この博光の思考パターンを考慮した上で、 油断の波紋が大きくなり始めたところにトラップを設置するなどっ……!! ナギー『かかったの、ヒロミツ!これは全て作戦なのじゃ!』 提督猫『な、なにぃい〜〜〜っ!?ま、まさかてめぇ〜〜〜っ!!』 ナギー『そうじゃ!ここに逃げ込んだのも罠にかかったのも全てが演技よ!     フフフ、浅はかよのうヒロミツ!わしの演技にまんまとのせられおったのじゃ!』 グウウ〜〜〜ッ、よ、よもやそんなことが〜〜〜っ!! ……でも罠には素でかかったと思うね。 だって本気で驚いて本気で痛がってたし。 いやぁ……ナギーだなぁ……実に負けず嫌いだ。 ナギー『その罠は特別製らしいからの……!一度かかったら逃げられず、     しばしの溜めののちに爆発を起こすのじゃ!     黒いトゲトゲ頭に言われたのじゃ、     余裕のあるヒロミツとはなにを話そうとしても無駄じゃと。     故に弱らせてから話をするという結論に出たのじゃ。どうじゃ?聡明であろ?』 提督猫『…………』 キミは馬鹿だ〜と〜♪叫び〜た〜い♪明日を変えてみ〜よう〜♪ 凍りつい〜ていく〜時を〜♪ぶち〜壊〜したい〜♪ キミは馬鹿だ〜と〜♪叫び〜た〜い♪勇気で踏み出そぅぉお〜♪ このあ〜つい〜♪思〜いを〜〜♪受け止めて〜欲し〜い〜♪ などとスラムダンク風替え歌を歌おうとしてる場合ではなく。 提督猫『フッ……まいった、俺の負けだ……。強くなったなナギーよ……。     最後に……最後に貴様の顔をよく見せてくれないか……?』 ナギー『ヒロミツ……』 負けた……負けたぜマジで。 よもやこの博光がこうもあっさりトラップにかかってしまうとは……。 おそらくこの罠も少しもしないうちに爆発するのだろう。 ならば原中が提督たるこの博光を見事ハメてみせた“漢”の顔を、 たっぷりと目に焼きつけながら逝くとしよう……。 それが我が男道。 ナギー『ヒロミツ……わしは《ガシィッ!》ふわっ!?』 提督猫『ツカマエタ』 我が言葉を疑いもず近づいてきたナギーをしっかりキャッチ!! もう二度とキミを離さないですぅう〜〜〜っ!! 提督猫『安心しろナギー……この博光、貴様を置いて独りでは逝かぬ……!!』 ナギー『なっ……お、おぬしわしをたばかったなぁっ!?』 提督猫『ククク……知るがいいナギー……!     勝負とはどちらかの敗北が完全に決定するまで続くものなのだ……!     そして───貴様は最後の詰めを誤った!だから一緒に逝きましょう?』 トラップにかかったことは素直に負けとして受け入れよう! だが勝負自体での決着はどうやら引き分けのようだなぁ〜〜〜〜っ!! 提督猫『さよなら天さん……』 ナギー『はっ、はなせ!離せというにぃっ!!』 ゴカァァアアッ───!! ナギー『ひきゃぁあああーーーーーーーっ!!!!』 ドォオッゴォオオーーーーーン!!!! ……その日、頂上へと続く螺旋階段の前で、巨大な爆発が起きましたとさ……。 ───……。 ……。 ドカドカバキベキドスドカボゴドス!!! 執事猫『コノヤローーーッ!!祭りの前だってのにギャースカ騒ぎやがってーーーっ!!』 白猫 『やかましくて集中できねぇだろうがーーーっ!!     もう少しで料理が台無しになるところだったわーーーーっ!!』 提督猫『オアーーーーーッ!!!』 で……現状がこれである。 何故か爆発騒ぎが俺が原因ってことにされて、皆様にボッコボコに殴られている。 今や巨大な爆発=俺って方程式が完成してしまってるらしい……。 うう……俺だって好きで爆発してるわけじゃないのに。 黒猫 『そんでキミ、ナギ子さんとは仲直りしたの?』 提督猫『だからその仲直りってなんのこと!?     俺とナギーは最初から喧嘩なぞしてないよ!?』 黒猫 『うそつけこの野郎!     だったら何故ナギ子さんは仲直りがどうとか言っておるのかね!』 提督猫『質問しているのは俺だーーーっ!!』 黒猫 『な、なんのーーーっ!今質問してるのは紛れもなく俺だ〜〜〜〜っ!!』 白猫 『埒が開かないから……ナギー、説明してくれないか?』 ナギー『………』 提督猫『ぬ、ぬうナギー』 今まで会話に混ざらず、一歩離れて俺を見ていたナギーがおずおずと前に出る。 嘆かわしい……かつての覇気に溢れたナギーは何処に行ったんだ。 これではまるで親とはぐれた子供ではないか。 ナギー『の、のうヒロミツ?喧嘩なぞしていないというのは本当か?』 提督猫『逆に訊きたいくらいだが……いつ喧嘩したの?』 ナギー『ほれ、の?わしが謝ろうとした時にの、     わしと話すことなぞ無いと言ったではないか』 提督猫『……えーと。自然要塞が危険なのに話をする暇なぞあっただろうか』 黒猫 『や、キミなら平然とやりそうじゃない?』 提督猫『任せてくれたまえ』 白猫 『なのにそれを実行しなかったから戸惑ったんだろ。ようするに提督が悪い』 提督猫『あーあー……キミたちはす〜ぐそうやって誰が悪いとかで決めたがる……。     悪を決めて謝らせれば満足出来るのか?そうではないだろう人々よ!!     考えてもみろ晦一等兵。人の個性や性格から一定のパターンが出来たからって、     いつまでもその通りに動くのは実につまらん。     ていうか思うがままに動いて悪って決め付けられるのは悲しいですハイ』 俺個人の行動原理は無視ですか? 提督猫『でも僕が目指すのは悪道なので素直に謝ります……すまなかったなぁ、ナギーよ』 ナギー『ヒ、ヒロミツ……』 深々と頭を下げた。 こればっかりはしょうがないだろう、 散々と“原中”という存在の常識破壊行動を見てきたんだ。 こんな事態を招いたのも大半が俺と彰利の所為。 ナギー『ヒロミツは……わしのことを嫌っておらなんだか……?     ま、まことか?まことであろうな!』 提督猫『もちろんだとも!この博光、相手が裏切らんかぎりは滅多に裏切らん修羅!     そして原中という集団は常にそういった異常で奇妙な信頼で結ばれている!!     そんな我らを見てきた貴様だからこそこの博光は受け入れよう!!     我らは同志である!ともに面白いものを追い続ける同志!     そんな貴様を何故あんな些細なことで嫌うことが出来よう!』 ナギー『ヒロミツ……うぐっ……うぁああんヒロミツーーーーッ!!!』 提督猫『フオッ!?』 驚愕! なんとあのナギーが涙を流し、声高らかに泣きながらこの博光へと駆け寄ってきたのだ! やがて、まるでドラマの感動シーンのように重なり合う二つの影……! ナギーは猫なこの博光に抱き付き、俺は─── 提督猫『カメハメ52の関節技の一つ!キャプチュードォオオッ!!』 ブワァドグシャォオオオーーーーーン!!! ナギー『ぴぎゃーーーーーーっ!!!』 総員猫『オワァアーーーーーーーーッ!!!!』 抱きついてきたナギーに対し、上手く腕を絡めてキャプチュードを完成させた……!! 黒猫 『ななななにしてんのアンタァーーーーーッ!!!』 提督猫『ククク、キン肉マンを何度も読み返した俺は、     あらゆる危機が訪れようとも身体が勝手に相手の身体に絡みついて、     52の関節技をかけてしまうのさ』 白猫 『今のシーンの何処に危機があったんだよ!』 提督猫『ウ、ウウ〜〜〜ッ……ど、動転してたんだ〜〜〜っ……!     い、今思えばなんてことを〜〜〜っ……!     ナ、ナギーが泣きついてくるなど前代未聞だったために、     つ、ついカメハメ直伝の52の関節技防衛本能が働いてしまったのだ〜〜〜っ!』 さすがにピクピクと痙攣してるナギーを見ると、 やっちまった感がふつふつと湧き上がってくる。 これはいかんとナギーを抱き上げると、 俺は砲台広場よりも上部にあるてっぺんを目指して駆け出したのだった。 黒猫 『あ、て、てめぇ!何処に行きやがる!!』 執事猫『てめぇ〜〜っ!何処に行くかは知らねぇが、     次騒いで爆発でも起こそうものなら容赦しねぇぜ〜〜っ!!』 提督猫『あれで手加減してたの!?僕もう物凄くボロボロだよ!?』 白猫 『そりゃあれだろ。提督、今回の戦いで経験値全然もらえなかったし』 提督猫『ア……アア〜〜〜〜ッ』 そういえばそうだった……。 みんながレベルアップする中で、俺はまたしてもおいてけぼりをくらったんだった……。 そう、今や俺なんぞよりナギーの方がレベルが高い。 そんな事実がこう、ね?僕のファンタジーを愛する心を傷つけるのです。 試練って辛いなぁ……こういう気持ちを乗り越えるのも試練だとでも……いうのだろうか。 ともあれ俺は頂上を目指した。 誰にも邪魔されずに、静かにナギーと居るのもいいだろう。 もちろん、頂上に行く前に発見したシードも連れ攫ったけど。 ───……。 そんなこんなで自然要塞頂上。 砲台広場の上にある大木のてっぺんに、俺とナギーとシードは居た。 中井出「ふう……ん、あ〜〜〜……くぁあ〜〜あっと……」 そして僕はヒューマンでした。 こういう時くらいはまあ人に戻るべきかなと思ったもんだから。 シード『……やはり父上はその姿の方が安心出来ます』 中井出「おおそうか」 猫の姿は猫の姿で結構気に入ってるんだけどな。 シュレック2の長靴を履いた猫と同じ模様でお気に入りだ。 我ら原中は長靴を履いた猫を応援します。 そういや特に彰利が気に入ってたっけ、あの猫。 竹尾タケオ騒動の時もそれっぽい装備して遊んでたし。 ナギー『………』 中井出「ナギー?な、機嫌を直しなさい。     あそこはお前、感動のシーンに自ら水を差す場面だろ?」 ナギー『うるさいのじゃっ!ほっとくのじゃっ!!』 シード『ほっといてほしいなら父上の足の間から移動しろ!僕に譲れ!     言っていることとやっていることが滅茶苦茶だぞお前!』 ナギー『うるさいのじゃー!おぬしのことなぞ知らん!     “ここ”(ヒロミツの傍)はわしが先に手に入れたからわしのものなのじゃ!』 シード『だったら子供みたいなことを言うな!』 ナギー『うるさいのじゃうるさいのじゃうるさいのじゃ!!』 最近になって思ったんだが、この二人、普段はなんだかんだで一緒に居るわりに…… どうしてか俺が絡むとギャースカと喧嘩を始める。 そんな二人を静めるために、 まず我が足の間に鎮座ましましてるナギーの頭をやさしく撫でた。 撫で方はじーさん直伝だ、相手にとってこれでいいのかどーかなんぞ知らないが、 素っ気無くても撫でられた方ってのは案外安心するもんだ。 ナギー『………』 現にナギーからはツンツンした気配が無くなっていき、 やがてはこの博光の胸にぽすんとその身を預けてきた。 ……それを見たシードの顔が羨ましそうなのはどういう謎? むう、もしやこやつも子供なりに、甘えたい時期だとでも……いうのだろうか。 しかし生憎と我が足の間はひとつ。 ……仕方なし。俺はシードに手招きすると、己が背中を我が背に預けよと指令。 シードは困惑しながらも我が背に己の背を預け、困惑が混じってそうな息を吐いた。 中井出「いいかシード、我が子よ……。背中とは男がもっとも信頼すべき場所。     それを他人に預けるということは、     預けし者が預けられし者を信頼するという意味を含んでいるのだ」 シード『信頼……背中を……?で、では父上は───』 中井出「うむ。いつまでも高き存在であれ、我が子よ。     貴様が貴様を見失わぬ限り、この博光は貴様をいつまででも信頼しよう」 シード『父上っ……!も、もったいないお言葉!』 中井出「だが辛くなったらいつでも甘えてくるのだ。     俺はな、シードよ。貴様に辛い試練ばかりを押し付ける気はさらさらない。     だって自分の試練だけで泣きそうなくらい悲しいし……」 シード『父上……』 中井出「シード、貴様は俺の息子だ。     血は繋がってなくても、魂で繋がっていると信じてる。     信頼とはそういうものだ。俺はそれを、お前にもっと深く理解してほしい」 シード『………』 俺の言葉に対するシードの返答はなかった。 だが俺の背にかかる負担が増したことに、俺は思わず笑みを浮かべてしまった。 そんな笑みのまま見下ろしてみれば、撫でられるままに眠ってしまった高位精霊。 その顔を見て、笑みを深いものにしながら……この広いフェルダールに吹く風に撫でられ、 俺もシードも、やがては呼吸を落ち着かせて眠りについた。 ……たまにはこんな日があってもいい。 そう思えた、とある朝の出来事だった。  ……ちなみに。  目覚めたのち、宴の準備をサボった罰として、  三人で散々っぱら説教くらったのは言うまでもない……。 Next Menu back