───冒険の書191/旅立ち!夢見る一日祭!───
【ケース503:弦月彰利/バルサミコ酢】 テントンテンテンテンテントンッ♪テントンッ♪ トン・トンテンテントンテンテン・テ〜ンテテッテン♪ 総員 『ハッ!』 昼を待って、宴は開催された。 アイルー種を筆頭に、ドワーフ族、妖精族を交えた奇妙な宴。 だがしかし、それぞれが人見知りなどすることもなく、 まるで歴戦を潜り抜けたパートナーが如く騒ぎ合っていた。 そう、宴に細かな気遣いなど無用。 宴こそが“楽しければいい”の集大成と言えるのさヴェイヴィイ。 黒猫 『あははバルサミコ酢〜♪うふふバルサミコ酢〜♪』 皆様かなり元気に燥いでおります。 悠介とホギーは結構話が合ったのか、少し離れたところで酒を飲みながら談笑してる。 中井出はナギ子さんと種坊主に片手ずつを持たれ、囚われの宇宙人状態で浮かされていた。 おー、腕が痛そうだ……って暴れてますね。 おお逃げ出した───と思ったら捕まった。 やぁ、好かれてますな。お蔭で自由が無い。 解る、解るよ中井出……その気持ち、アタイにも…………ありゃ?なんで解るんだっけ。 ……ああ、まあいいや。 黒猫 『バルサミコ酢〜』 バルサミコ酢を見てニヤニヤしつつ、チラリと視線を動かしてみれば、 メシを喰らいまくって元気に宴を楽しんでいる藍田くんと丘野くんの姿が見て取れた。 で、アタイはというと……バルサミコ酢の名前に心を奪われ、サワヤカに微笑んでいた。 なんて素晴らしい名前なんだバルサミコ酢……!! ……ちなみにこのバルサミコ酢、こっちの世界だと猛毒なので取り扱いに注意が必要。 中毒性をもっていて、一度飲み込むとヤバイことになるのよ? え?なんで知ってるかって? モンスターに飲ませたらヤバイことになったからです。 そんなものを何故僕がこうやって持ってるかというと……トットットットットクトク……。 黒猫 『バ〜ルサミコ酢ゥウ〜……♪』 こうしてグラスに注ぐとさ、危険物だって解ってても飲みたくなるじゃない? そのささやかな緊張感を味わっているのです。 そんな時である。 白猫 『お〜い彰利〜!』 黒猫 『オウ?』 バルサミコ酢の色艶に心奪われていたアタイに、悠介が声を投げてきました。 なんでがしょねぇ?せっかくバルサミコ酢を観覧してたってのに。 ……なんて視線を動かしたのがそもそもの運の尽きだった。……中井出の。 声  『ええいほっとけと言うのに!持ち上げられていたら宴も楽しめんだろう!     ……ふうっ、おお彰利一等兵、この酒もらうな?キツケしないとやってられん』 黒猫 『へ?───アーーーーッ!!』 大驚愕! 悠介に気を取られてたアタイが聞こえた声に振り向けば、 なんとそこにはバルサミコ酢をグイーと一気飲みする中井出の姿が!! 黒猫 『ギャア馬鹿ァアーーーーーッ!!吐け!吐き出せ中井出!!』 提督猫『オ……おぉおっ!?なんだこりゃ物凄く美味ぇぞ!?     も、もっと……もっとよこせよテメー!!まだ持ってんだろ!?』 黒猫 『え?…………あ、あれ?ねぇ中井出?身体なんともない?』 提督猫『?……なんともないって……なにが?』 黒猫 『………』 ……あれぇ? モンスターにだけ効く毒だったんかな。 そうなんだとしたら、ちと味に興味あるかも。 中井出がこうも美味ェと言うのなら、やっぱ気になるよね? 黒猫 『ウムス』 誰にともなく頷いて、アタイはバルサミコ酢の栓を抜いてラッパ飲みを─── 提督猫『…………バ……ババババ……』 黒猫 『オウ?《グビリ》……おお!こりゃ美味ぇ!!……で、中井出どうしたん?』 提督猫『ババババルバル……バルサバルサ……バババ……!!』 黒猫 『お、おい中井出?中井出!?ちょ……どうしたの中井出ぇええっ!!』 何が起きたというのだろう! 突如、中井出がガタガタと身を震わせ始め、意味不明な言葉をガタガタと喋り始めたのだ! 提督猫『バルサミコ酢ゥウウーーーーーッ!!ババババルバルバルサミコ酢ゥーーーッ!!     ルババルババルバルバルサミバルサミバルサミコ酢ゥウウウウウウババルバルバル     サミコ酢ゥーーーーーーーーッ!!!!スゥーーーバババルバルバルサミコ酢ゥウ     ウウウウーーーーーールサミコ酢ーーーーバババルサミコ酢ゥウーーーッ!!     ぶるぁああーーーーーーバルサミコ酢ゥウーーーーーーーーッ!!!』 黒猫 『ヒィイ!?中井出!?気をっ……気をしっかりお持ち!!』 提督猫『《ズパァン!!》バルェエイ!!』 中井出がヤバイことになってきたのでキツケビンタをお見舞い! すると中井出はグラリと傾き、───足を踏み外して大木から落ちてゆきました。 黒猫 『アッ!アァアーーーーーーーーッ!!!!』 しばらくして、お祭り騒ぎの中で微かに聞こえたゴシャリという音。 叫んでみてももう遅い……ぼ、僕は人を落としてしまったのだ!! こ、殺してしまった!でも仕方なかった!と言ってしまいそうな状況だ! あ、でも塵になってないや、生きてる生きてる。 でも落とした事実ってのが心を突き刺すっていうか…… だ、誰も見てなかったよね!?よね!? ジークン『…………《じーーー……》』 黒猫  『なんでここに居んだてめぇ!!』 ジークン『ウィ?やあ、実は亜人種が少ないからって、      ただそれだけの理由で無理矢理この世界に飛ばされてさ。      文句があるならイセリーニョに言って欲しいザマス』 黒猫  『………』 なんだかドッと疲れた。 そして改めてよくよく視線を動かしてみれば、ちらほらと某状の人(?)が居た。 あまりに存在感無いから気づかなかったよ……アタイともあろう者が。 黒猫  『大丈夫なんかねイセリ子さんてば……。      ただでさえ管理人数が多くて大変だってのに』 ジークン『フフフ、我ら棒人間の魂管理など、人一人を管理するより容易い……!』 黒猫  『威張ることじゃねーデショそれ』 つまり人一人にも満たない存在ってことじゃん。 なんて思った矢先、我が身体にも異変が! 自分の意思とは関係なく、口がバルサミコ酢という言葉を連呼しようとしているのだ! 黒猫 『バ……バババ……バルバルバルバル……!!』 口が!口が勝手に動きやがる!───ぬおおおさせるか!! こんな無意味なことで負けてたまるかコノヤロー!! 黒猫 『こんなものが……こんなものがあるからいかんのだ!!』 ようは身体からバルサミコ酢が無くなればいいのだ! 故に身体を暗黒化!バルサミコ酢のみを弾き出し、再び身体を構築! 黒猫 『……はぁ……なんで酢相手に梃子摺るみたいなことにならなきゃならんのよ……』 ベチャリと木の床に落ちた汁を見て溜め息ひとつ。 残りのバルサミコ酢を遠くの景色へと投げ捨て、適当なところで段落をつけた。 黒猫 『ところで貴様アレ居ねぇ!!』 で、改めて話でもしようかと振り向けば既に居ないジークン。 残ったのは口から泡を吐いて動かなくなった中井出だけである。 どうやら棒人間どもが律儀に運んできてくれたらしいが…… うーわー、やーな残され方ー。 だが祭りが始まったばかりだってのに気絶させっぱなしなのは可哀相だ。 どれ、ここは我が力でこの人間を復活させてしんぜよう。 黒猫 『落とせ、“大砲男爵(デル・アルマ)”』 影から鎌を抜き取り解放。 左腕ごと大砲になったそれを中井出に突きつけ、 いざドゴォッチュゥン!!ドッガァアアアアアアン!!!! 提督猫『ホワァアアーーーーーーッ!!!!』 大量の殺気とともに放った砲弾が躱された! どうやら殺気で目が覚めたらしく、見事彼は砲弾を避けてみせた! 黒猫 『やあ起きた』 提督猫『死ぬわっ!!』 死んでも蘇るんだからいいでしょうに。 ていうかね……南無と融合したのちレベルを高めたお蔭で覚えたこの鎌解放、 名前がいろいろとヘンテコなものばかりで憶えづらくて困ってる。 冥界の死神どもからコピーしたものが大半じゃけんど、 月操力がある時はあまり必要ないんで使わなかったものだ。 しゃーけど月操力が無くなった今、 月操力と能力がかぶってるこれらは僕の大事な能力の一部となりました。 回復から攻撃までなんでもござれ。でも名前が覚えづらくて参ってる。 ちなみに今の鎌は冥界にお住まいの“狙撃者”(スナイパー)3位、 オルト=サジェイドマン氏の鎌である。 卍解名は震礫散り醒む砲撃鎌(しんれきちりざむほうげきがま)と書いてクロウウェルバラスティン。 黒を弾丸にして放つ鎌でござんす。 普通は死神の力をそのまま砲弾として撃つんだけどね。 南無パワー複合状態……骨仮面状態で解放すると、さっきみたいなものになりんす。 でもこっちの方の名前、あんま好きじゃねーのよね。 何処の言葉だろ……フランス?スペイン?どちらにしろ俺にゃあ解らん。 黒猫 『ディザスティングヴァニッシャーとかもこれで解放すると嫌な名前になるしなぁ』 強化されるのはいいんだけどね。 まあいいや、ようはアタイが認識出来りゃあそれでいいわけだし。 名前が違ってもどうとでもなる。アタイはノーマル版の名前で呼ばせてもらうぜ〜〜〜っ! 黒猫 『つーわけでさ、夜華さん呼んでいい?』 提督猫『構わん!!』 黒猫 『うおおなんというストレートヴォイス!!普通“なんで?”とか訊かない!?』 提督猫『俺そういうの嫌いだし。呼びたいって言ってんなら呼んでいいじゃん。     大体さー、必要だから貸してくれーとか言ってるのに     “なんで?”って訊かれるとイラッとこないかい?』 黒猫 『や、そげな日々のちょっとした不満をこげなとこで語られてもね。     まあとにかく───開け!虚空の扉!セカンドハンズフリーザー!』 黒から引きずり出しましたるはセカンドハンズフリーザー! それを解放し、時空干渉を実行して夜華さんを引きずり出す!! 黒猫 『異翔転移!おいでませ───夜ッ華さぁああ〜〜〜〜ん!!』 黒い猫が黒い鎌を使って黒い歪みを作り出し黒い渦から妻を呼ぶ!! 何故呼ぶのか!?そりゃアタイが寂しいからさ! だってさ、悠介ってば感情戻ってからはどうにもいろんなところに目が行きがちで、 アタイと一緒に居ても違うところに目が行きっぱなしでつまんないのさ。 ノリがいいのはいいんだけどね。  ズズズズ……!! そんなわけだから夜華さん召喚! もういいんだ、友情はひとまずホギーに預ける。 だから今は夜華さん、貴方が僕を慰めておくれ……!! 黒猫 『アアッ……夜華さん!夜華さぁあーーーーーん!!』 やがて渦から姿を見せ始めた夜華さんに、僕のトキメケの夏はまっさかり!! ああ!抱きたい!抱き締めたい!こんな切ない思い……!ゲロォッ!? 黒猫 『ゲッ……ゲェエーーーーーーーーッ!!!』 伸ばしかけた手がビタァと停止! なぜかって、確かに目の前に夜華さんは現れたのだが─── その足に、いらんもんが付属されてきたのだ!! 思わずバナナの皮を前にした軍曹のような声を思考の中で出してしまった!! 黒猫 『な、なにーーーっ!?お、お前はーーーっ!!』 提督猫『え?───うおおっ!?き、貴様!まさかっ!!』 夜華さんの足に付属されて……というか付属してきたもの! それは───どこぞの能天気死神さんだった───!! ルナ    「《ゾゾゾゾゾ……!!》ゆぅう〜〜すけぇええ〜〜〜っ……!!」 黒猫&提督猫『キャーーーーッ!!?』 俺と中井出、その異様な登場の仕方に素直に絶叫!! 夜華さんの足にしがみついて現れたのは、 この世界でのみ語られる月の精霊、ルナっちだった! ……あ、さらにその腰に悠黄奈さんがしがみついてる。 黒猫 『ハッ……ハワッ……ハワワーーーッ!!』 提督猫『キャーーーッ!?キャーーーーッ!!』 しかしそんなことよりルナっちの形相と登場の仕方ががとんでもなく怖かったため、 俺と中井出、驚愕しきり! こげな恐怖、しばらくぶりな気がします! だがここは彰利よ!忍耐だぜ!? ルナっちがこげに荒れてるのは、元はといえばアタイが悠介とともに中井出を追って、 こげなところまで来てしまったからさ! だからまず僕が宥めてやらねば!! 黒猫 『え、えと……ルナっち、久しぶり……』 ルナ 「───」 あ、あら? なんか生気の篭ってない目でジロリと見られたんだけど。 黒猫 『どうした───の?』 しかもなに?アタイの首の横に大きな鎌がスチャッと構えられて─── ルナ 「───死んじゃえ」 シュファァアンッ!!! 黒猫 『え……?なに───?』 鎌が、一気に引かれたのが見えた。 あとは何が起こるのか───何故だか僕は知っていた気がした。 まず体毛が切れ、次にマフラー……は無いから、首の皮膚が切れ─── 黒猫 『う……ウソ……』 首に手を当てた時には、全てが終わっていました。 ブシャァアアーーーーーッ!!!! 吹き出る鮮血。 間違い無く頚動脈までを切り裂いた鎌が、俺の首から黒い血液を噴き出させていた。 でも馬鹿だから気にしないことにした。 黒猫 『へっちゃらさーーーっ!!』 噴き出る血へと“自分”を移動させ、溜まった血液から自分を構成! 元居た場所のアタイは全て液体に変わりゾリュンと血液と混ざっては、僕を形成したのだ! ドフィドフィドフィ、アタイを殺そうなんて無駄無駄無駄!! 殺したいなら圧倒的破壊力で全ての黒ごと消滅してみせろってんだい! ルナ 「うぎぃいーーーっ!!ホモっちずっこい!     攻撃効かないんじゃ殺しようがないじゃない!!」 黒猫 『なんば言いはらすばいこんげら!!効いちまったら即死級だよこんなん!!     つーか旦那と一緒に蒸発したからって     殺そうとしないでよ危ないでしょまったくもう!』 ルナ 「ん?だってそんなのおあいこよ?しのっちってば悠介のこと殺す気だし」 黒猫 『なにこの暗黒劇場!!ちょ……夜華さん!?夜華さぁーーーん!?     そういや転移してきた筈なのに姿が見えねーと思ったら!!     だめぇええええ!!早まっちゃだめぇえええええっ!!!』 提督猫『女の愛情って怖ぇえなぁ……特にルナさんと篠瀬さんの場合は余計に』 黒猫 『ルナっちはルナっちと同化したから愛情二倍なのは解るけどさぁ!     夜華さん別にそげなことないっしょ!?なんで!?』 提督猫『貴様には教えてやんねー!くそしてねろ!!』 まさに外道!! おのれ中井出め!こやつなにか知っておる!? だが今はそげなことを気にするよりも夜華さん止めんと!! 黒猫 『ルナーーーっち!夜華さん止めに行きますよ!?     このままじゃ悠介が夜華さんに殺され《ザブシャアッ!!》ギャアーーーッ!!』 痛ぁい!痛ぁい!?痛いんだよォオーーーーッ!!! え!?なに!?なんでアタイ背中斬られてんの!? ルナ   「うふふふふ……馬鹿ねぇ。       しのちゃんが悠介を殺すなんてこと、しようとするわけがないじゃない……」 黒猫   『ぬ、う……!?そ、そのッ……声はァア……ッ!!』 提督猫  『(マサ)さんッ……!!』 黒猫&ルナ『違う!!』 サラサラフサフサヘヤーになりつつ語る中井出に、 僕とルナっち(?)でツッコミをGO!───じゃなくて! 黒猫  『気を取り直して……!てめぇ、フレイアだな!?』 フレイア「はいご名答。よく出来ましたー、ぱちぱちー」 黒猫  『ぐおおお何故だか知らんがやたら腹立つなぁもう!!      だが貴様の攻撃はアタイに痛みしか残さなかったぜ!?』 フレイア「痛いってことは蓄積させれば死ぬってことでしょ?まあね、ほら、死んでよ」 黒猫  『なんでそうなんの!?つーか“まあねほら死んでよ”ってどんな言葉!?』 解らんことだらけだよもう! 何故フレイアが降臨なさってるの!? しかもアタイに死ねって! フレイア「とりあえずさ、ほら。      わたし、恭介との結晶であるこの子が“一応”大事だから。      ルナ自身には嫌われてよーがそんなことはどうでもいいの。      だからね、この子悲しませるヤツは誰だろうが許さないの。      ……まったく、親友だかなんだか知らないけど、      連れ添った人が居るなら少しは落ち着きなさいよね。      ただでさえ今までだってあなたに悠介のこと連れまわされて、      この子ったら寂しがったりなんだりで不安定なんだから」 黒猫  『そうなん?でー……それが俺となんの関係があると?』 フレイア「だから!悠介にとってあなたが一番だとこっちが困るの!      不安定になるってことは、それだけ力が暴走しやすくなるってことでしょうが!      この子はただでさえ拠り所が少なすぎる馬鹿ッ子なんだから!」 黒猫  『ブホッシュ、自分の娘のこと馬鹿子って言ったぜこいつ』 提督猫 『おいおいひでぇよ、それ以上は言ってやるなよ。      自然に口に出ちまうほど当然のことだったんだろうからさ』 フレイア「ぎぃいいいいいい……!!!いちいちむかつくわねぇえ……!!」 黒猫  『おお、でもそこで攻撃に出ないところに素直に感心。      その態度に免じて真面目に話を聞きましょう。そィで?俺にどうしろと?』 や、そもそも夜華さんは?───って、居た。 悠黄奈さんが召喚したフェンリルに襟首噛まれて宙吊り状態だ。 身動きとれなくなってる。 フレイア「ん。つまりね、いい加減友情パワーは押し込めて、      夫婦生活に華ァ咲かせなさいって言いたいの。わたしは」 黒猫  『ぬう。そうは言うけど、アタイと悠介って特別友っぽいことはしない間柄だよ?      普通で居るのが俺達にとっての友情だ。      遠慮しないで言いたいことは言って、殴りたい時は全力で殴る。      俺達ゃそうした“日常”を歩くことで友達やっとんのです。      そこに順位なんてものは関係ないのですよ。      結婚したから、子供が出来たから、妻を愛しているから。      そういう理由で廃れるくらいの小さな関係なら、      俺達は子供の頃に互いを救ったりなんか出来なかったよ。      だから他人にあーだこーだ言われる筋合いはねー!!      お呼びじゃねーのよ引っ込んでろい!』 提督猫 『その通りだ!せっかくの祭りの日に暗い話持ち込みやがって何様だ!      頭がたけーぞ頭が!!どんだけ高みから人のこと見下ろしてるつもりだ!』 黒猫  『まったくじゃわい!人の意思無視して自分の意思ばっか押し付けんなクズが!』 提督猫 『や、それキミが言うと説得力無いかも』 黒猫  『その説はどうも……』 いや、あの時はあっしもどうかしてたんでさぁ。 中井出の意志完全に無視してギャースカ騒いでしもうたからね。 そうだよね、起きた過去は変えられない。 変えたとしても、それは“我らの過去”ではないのだ。 刹那の数だけ軸はある。 そんな中で、俺達は“救えなかった過去”の先に立っておるのですから。 ……確かに俺ゃあ運命は嫌いだ。 だが、起きた過去まで否定してやる気はなかった。 それがあのザマですからね……いやほんと、時間移動って危ねーわい。 気をしっかり持たないと、自分の好きなように世界を変えちまう。 それこそ、“その時その時を精一杯生きている人達の意思”を完全に無視してだ。 確かに隆正の時代でも鮠鷹の時代でも、俺が降りることで救われた瞬間ってのはあった。 けど、俺が降りなくても月操力が完成した軸ってのは確かにあった。 だからこそ月の家系は完成したし、ここに至る歴史も存在出来た。 人一人が何をするでもなく、世界はきちんと動いておるのだ。 ま、とにかく、何が言いたいかといえば……自惚れんなってことだね。 どんな力を得ようが、誰かが行使出来る力なんてのはタカが知れてる。 そりゃ、時には世界を救えることだってあるだろう。 いつか悠介がそうしたみたいに、暴走したゼットから空界を救うことだって出来るさね。 じゃけど過ぎた力はろくな結果を生み出さない。 なんの因果か未来の最果てで暴走しやがったあの馬鹿は、 この時代に訪れて世界を壊すとかのたまうのだ。 そもそも“救う力”なんてものを持ってなけりゃこんなことにはならなかったのにね。 ほんと馬鹿だ。 黒猫 『んー……なぁ中井出。お前さ、強くなったよな』 提督猫『え?俺?……なってないんじゃないの?     俺の場合、マジで武器とレベルが無けりゃただの人間だし』 黒猫 『この際レベルで考えれ!あたしが許します!』 提督猫『いやまあいいけど……で、俺が強くなってたらなにかあるのか?』 黒猫 『訊いときたいことがあるんよ。……お前、なんのために強くなる?』 提督猫『知れたこと、面白さを追求するためだ。無駄な暴力に使う気は一切無し!!』 黒猫 『………』 こうまでキッパリ言われると逆に清々しいやね……。 黒猫 『じゃあ、強くなってなにをする?』 提督猫『力無き自分では為し得なかった面白さを追求する!!』 黒猫 『………』 何処までも真っ直ぐな人でした。 内容は思い切り曲がりくねってるけどね……。 提督猫『そう!俺は多少は強くなった!そう!多少!!ここで言いたいことが解れば一流!     何度も言うようだが俺は武器の強化に連れ添うように多少強くなったのみ!     ……男なら一度は自分が持つ武器を思い切り育てたいって思うだろ?     よ〜するにさ、俺は武器を育てるのが面白いんであって、     自分の強さには正直あまり興味がない。言っとくけど全てが終わったら     猛者ども相手に超人パワーを使って遊ぶか〜くらいにしか考えてないぞ?』 黒猫 『それだけってつまらなくないかい?』 提督猫『うるせーこのやろー!俺がそうしたいって言ってんだからいいだろうがクズが!』 黒猫 『なんで俺いきなり怒られてんの!?』 提督猫『あのな〜〜〜、俺はこの力を悪用する気なんかさらさらないんだよ。     この世界でなら悪用外道万々歳だけどな、     地界や空界にいったら、俺は家族と平和に暮らすって決めてるんだよ。     ……で、そーいうお前はどうなんだ?強くなってどーするんだ』 黒猫 『オイラ?オイラはね〜…………ああ、オイラもそれだね。     この騒動が終われば力が無くなってもいいくらいだ。     だってこの騒ぎが終われば強くある理由なんてねーもんね。     とりあえず冥界を統率できるくらいの力があればいいや』 提督猫『だよな、やっぱ』 力の意味を考えてみる。 ただがむしゃらに強くなって、でもじゃあそれからどうする?って訊かれたら─── そんなもの、どうするもこうするもない。 至っちまえば強いことに興味なんて無くなるだろう。 だからって悟って気取る馬鹿野郎にはなりたくない。 最強を目指したいわけでもなく、だからって弱くありたいわけでもなし。 黒猫  『フレっちは強くなるとしたらなんのために強くなる?      強くなった先でなにをする?』 フレイア「わたしはもう強くても弱くてもいいわ。      ただたま〜にこうして出てきて、誰かと話が出来れば」 ……きっとこの人、ただ退屈なだけなんだろうなぁ……。 そんなことを、何も言わずにうんうんと頷く中井出の隣で思っていた。 提督猫『ま、とりあえず俺は楽しめてるうちは強くなるって、そんな感じかな。     強くなってどうする?なんて訊かれても、この世界じゃなきゃやることないし』 黒猫 『強くなるって言っても、武器を強くするって意味なんしょ?』 提督猫『当たり前だ!見縊るな!!』 思うに、こやつほどこのフェルダールで武器に魂を込めてる男はおらんでしょう。 かけた金も素材の数もトップに違いねー。 そういう意味ではこやつが一番“プレイヤー”って感じじゃわい。 戦い方も無鉄砲+がむしゃらな滅茶苦茶闘法だし、死ぬ時はえらくあっさり死ぬし。 そげな中井出を見とると、ほんに楽しんでるんじゃのうと思う時があるわけですよ。 根本的な話になるけど、無駄に強くなってもやることなんて特にないのよね。 アタイは守ることなんてやめちまったし、誰かのために強くなるのもやめたからね。 そうするとホレ、この騒ぎが終わった時点で、 我らが強者を目指す理由なぞ無くなるわけですよ。 でもまあ、この世界の中でなら強くなり続けるのも悪くない。 何故って、イベントとバトルがある限りは面白いからね。 だから“武器を鍛える”ってのはかなり大事です。いやマジで。 武器ならこの世界だけじゃなく現実世界だろうが何処だろうが使い続けられるし。 愛でるだけでも十分さね。中井出みたいに。 黒猫  『つーわけで俺と悠介との友情について不満を垂れる意味など無い!      焦りを感じるのはルナっちと悠介との関係が薄いからなのではないかね!?』 フレイア「ようやく話を戻したと思ったらそんな答えなの!?」 提督猫 『そこはほら、俺達にまともな回答を求めるほうが間違ってるって思わないと』 フレイア「あなたたちはもっと自分に誇りを持つべきだと思うわ……」 提督猫 『いや……ほら……持てる誇りが無いからさ……』 フレイア「あなた本当に種族人間なの!?イタすぎるにもほどがあるわよ!!」 フレっち驚愕!超驚愕!スゲェ!さっすが天下の中井出さんだ! よもやあのフレっちを驚愕させるとは!! フレイア「あ、あー……解った、もういいわ……。なんだかやる気が失せた……。      あなた、頑張りなさいよね……応援したげるから……」 提督猫 『同情するなら金とレア素材とレアアイテムと経験値くれ!』 フレイア「そこはお金だけにしときなさいよ!」 提督猫 『馬鹿かてめぇ!そんな家なき子みたいなことでこの世界を渡っていけるか!!      こちとらただでさえレベル半分で、レベルアップもしない状態で大変なんだよ!      もう試練っていうより拷問にかけられてんだよ!      ギリギリなんだよこっちはもう!!』 フレイア「なんでそのことでわたしが怒鳴られなきゃならないのよ!」 提督猫 『知れたこと!その方が面白《トパァーーーン!》』 黒猫  『キャーーーーッ!!?』 とっ……飛んだァーーーッ!! 中井出の首が飛んだァーーーーーッ!! 生首 (え……?俺の…………体…………?) しかもなんだか飛んだ生首が自分の体見て、闇狩人みたいなことやってるし! ヒョ〜〜〜〜───ゴシャア。 加えて説明すると、飛んだ生首が要塞から落ちいってミンチになりました。 すげぇ……今日の僕らの提督はなんだか落ちてばっかりだぜ。 黒猫 『しかしキミもヒドイね、いきなり鎌一閃なんて』 言いつつクルリと向き直った───ら、フレっちがぐったりとノビていた。 ……ホワイ?───おお!ヘッジホッグスキルか! ますますすげぇぜ僕らの提督!ただでは逝かんその根性、まさに国宝級!! ……でも全然祭りっぽくないや。 こうなりゃもうあれだな、夜華さん連れて遊びまくってやらぁな!! 黒猫 『つーわけで夜華さん!』 夜華 「な、なんだ!?」 黒猫 『“時操反転”(プリーヴィアス)!!』 未だにフェンリルに捕まっている夜華さんに飛びつき、 フニフニの肉級を額に当ててまじない一つ!! するとどうだろう!夜華さんがシュボンッという音とともに猫になるではないか! 武士猫『うわっ!?《デシンッ!》くわっ!』 当然、拍子で解放された夜華さんは大木の床に落下。 尻餅をついて、妙ちくりんな鳥みたいな悲鳴をあげました。 だが休む暇など与えん! 黒猫 『ちょぇえええ〜〜〜っ!!』 武士猫『《がしぃっ!》うわぁあっ!!?な、なにをするんだ彰衛門!』 なにを……!?知れたこと! くにおくんの時代劇だよ全員集合名物、人物持ち上げである! え?持ち上げてどうするんだって?───当然走る! うっふっふ……と言いながらがベストです。 さらに持ち上げられている相手が“え?”と言えば最強。 ここで最強がどうとか言っても意味は通らんけど、そういうもんなんです。 黒猫 『さあ夜華さん!メシ食ったり遊んだりしよう!そして時には語らおう!     夫婦っていうよりもう恋人同士って感じで盛り上がるのさ!     なんだか夢みたいなリアルをその身で感じるのだ!     だって紛れも無く他でもないあなたとわたしは恋人同士なのだから!いや夫婦か。     まあ構わねー!とにかく燥ぐのです遊ぶのです楽しむのです!     祭りってのは騒がなきゃウソだ!その事実を体感するのだ!!』 武士猫『い、いやっ……解った!解ったからまず降ろせっ!!     そ、そのだなっ、わたっ……わたしはそういうことをする時は、     きちんと貴様と同じ目線でだな……っ!!』 黒猫 『こういう時まで“貴様”言うキミに乾杯!ではゴー!!』 武士猫『ままま待てぇええーーーーーっ!!!』 まごついてる時の夜華さんはどれだけ待ってもきちんと話やしねー! だったらもう真っ直ぐGO!! こうして僕は、猫状態でも解るほどに顔を真っ赤にした夜華さんを持ち上げたまま、 自然要塞エーテルアロワノンで行われている祭りの海へと駆け出したのだった……!! 【ケース504:中井出博光/スペッキオ】 チュミミミィイイイ〜〜〜〜〜ン……!!! 提督猫『よ〜〜く見えるぜ……!』 などとマキシマの真似をしている場合ではなかった。 さて……彰利言うところのフレっちにコロがされた俺が、 猫神父の前で蘇ったのはたった今のことだった。 あれからどれだけ時間が経ったのかなんて、時計がないこの要塞内では解りっこない。 そもそもあってもよく解らん文字盤なため、読めやしない。 あ、ちなみにさっきの擬音は復活した時の音のようだ。 その音があまりにもマキシマティックアイの音に似てたもんだから、 ついマキシマの真似をしてしまった。 いや、マキシマティックアイっていうよりは……なんなんだろ、あれ。 解んないからいいや。 神父猫『ゴニャッ。よくぞ復活したニャ。これからは気を引き締めてかかるニャ』 提督猫『うむ、もちろんだとも猫よ。たとえコロがされたとしても、ただでは殺されん』 死んだとしても効果があるのなら、 きっと今頃命懸けヘッジホッグで大変な目に遭ってるだろうから。 もちろん敵対心は解いてはおらぬ。 回復アイテムか魔法がなければ回復することなど夢のまた夢。 ククク……!この博光、ただではやられぬ……! 提督猫『さてと』 せっかくの祭りだ、ここでこうしてても仕方ないし……よし。 とりあえず適当に周ってみよう。 準備の手伝いしてなかったから知らん出し物いっぱいあるだろうし。 ……いや、出し物自体があるかさえ知らないんだけどさ……トホホイ。 提督猫『しかし何処に行ったもんかな……』 正直な話、まだ俺ってこの要塞の何処に何があるのかまるで知らないんだよな。 ……ああ、じゃあ発想の転換だ。 ようはこの要塞の探検がてらに祭りを楽しめばいいんだ。 意味を逆にしてもいいし。 祭りを名目に探検するってやつだな、うん。 よーしそうと決まればレッツハバナーウ! 提督猫『祭りが……!祭りが俺を待っている!射的とかあるかな!?     い、いやまずここはリンゴ飴だな!     あの鈍器を手に、フレっち(命名・彰利)にトドメを《ヒョイッ》ホワッ!?』 突然の違和感。 違和感っていうか、思い切り抱えられておる。 我が身体が……何者かの手によって抱えられておるわ! ……などと大袈裟に言うほどのことでもなく─── 悠黄奈「こんにちは、中井出さん」 ひどくやさしいアイが我が眼を見下ろしておったそうな……。 コマンドどうする!? 1:ちょっと待て!何故選択肢が!? 2:あ、いや……だがうむ、ちと意表を突かれたのは確かであり…… 3:よし、ではいっそのこと適当に頭が弾き出す答えを───!! 4:やあ 5:我輩は猫であるが抱きかかえられる趣味はない 6:どちらさまでしたっけ? 結論:6 提督猫『どちら様でしたっけ?』 悠黄奈「はい。悠黄奈です。昏黄悠黄奈ですよ」 提督猫『うおっ、まぶしっ』 輝く笑顔で言われてしまった……! すると、解ってて言った自分がなんとも醜く思えて……!! けど後悔はてんでしてなかったりします。 今さら自分のことで恥じることなど……いや、彰利見てるとかなりありそうだけどさ。 心の醜さでなら別に、なぁ? 超ド級の外道には成り下がってないが、外道ではある我らだから。 あ、ちなみに……ここで言う超ド級ってのはもちろん我らから見ての外道のことである。 女性を襲ったりだとか、殺人したりとかそーいうことを平気でする輩だな。 もちろん我らもこの世界でなら平気で殺し合いをするわけだが。 提督猫『しかしながら少女よ。我輩は抱きものにあらず』 悠黄奈「あっ」 せっかくの祭りなのに暗い考えは邪魔だな。 とりあえず悠黄奈さんの手から脱出し、大木の床に降り立つと……って、 これどう喩えりゃいいんだ? 大木の床……には違いなんだが、いわゆる枝……なんだろうな。 “都”としての原型あんまりとどめてくれてないっつーか…… や、もちろん建物とかはそのまんま残ってたりするんだけどさ。 床はどうしても大木の床……って喩えになるというか。 タイル……違う。床……いや、床ってほどでもない。 じゃ、樹木か?もういいや樹木で。 木の上に立ってるのは全然これっぽっちも間違ってないんだから。 提督猫『ユーアーJUMOKU!!《ズビシィ!》』 悠黄奈「あの……?」 提督猫『はうあ!?』 地面指差して何叫んでるんだろうか俺は。 だが樹木!よーしよし樹木!そして今僕らはここに立っている!即ち地面!! 樹木よ……今日から貴様は地面!大地だ!母なる大地だ!母星北斗七星だ!! 最後のは全く関係ないが、とにかく大地だ! 提督猫『悠黄奈さん聞いてくれ!これは樹木なんだ!』 悠黄奈「はい、樹木ですね」 提督猫『そしてそこに立っているからにはここは大地なんだ!     台地って意味でもあるんだ!』 悠黄奈「はい、大地ですね」 提督猫『…………う、うん……だよね…………大地だよね……』 悠黄奈「……?はい」 悲しい風が吹いてきた気がした。 いや、ここは挫けるところじゃないぜ、俺よ。 とりあえずはアフティアス!人に戻ろう我が肉体! 提督猫『“時操回帰”(アフティアス)!!《ジャキィイインッ!!》……はふぅ」 額に手を当て、秘密の言葉を囁くことで猫の姿から人の姿へと戻った。 秘密でも囁きでもないなんてツッコミはこの際どーでもヨロシ。 中井出「そう、足りなかったのはコレだよな。     猫の姿じゃどうしても同族って意識が強まって、客として遊べない。     ん……くぁあ……あ〜〜〜っ、解放感〜!     やっぱ人の姿だよなー。状況次第でどんな姿にもなる覚悟はあるけど、     人は人の姿のままが一番だって思うよ」 だからこその“変身”だと、僕は思うのですよ。 中井出「よっし、じゃあまずは腹ごなしだよな。悠黄奈さんハングリー?」 悠黄奈「おなかですか?いえ、わたしはべつに……」 中井出「そっか。だがこの博光は実にハングリー!故にまず───おおそこゆく猫よ!」 ケマル『ゴニャッ?ややっ、これは旦那さん、いつもお世話になってるニャ。     以前まではお得意様でありながら、     今度は要塞に住まわせてもらうなんて世話になりっぱなしで悪いですニャ』 中井出「いやいやこちらこそ、おかげさまで立派な武器に成長しましたありがとう」 ケマル『こちらこそニャ。それで、なんの用ニャ?     今ちょっと演奏者たちに料理運んであげてるところなのニャ』 中井出「おおそれなんだがな。その料理って何処にある?」 ケマル『下の第二調理場でイッケクとサクイマキが作ってるニャ。     ボクらアイルー種用の料理だから、人には合わないと思うニャ』 中井出「なにぃそうなのか。じゃあくれ」 ケマル『……ボクの話聞いてたニャ?』 中井出「いや……専用の食事って気にならない?あ、いやいいわ。     じゃあ───えっと、そうだな。なにか娯楽的なものってあるか?」 出来れば射的でもあれば……って、こんなところでやれることじゃないよな、そもそも。 ケマル『このお祭り自体が娯楽ニャ!』 中井出「ぬう!まったくその通りだ!!」 でもどうしてだろう……いまいち心躍らないテンダー。(?) 祭りごとっていったら、大体が猛者どもと一緒だったからかな……。 そういや麻衣香と離れてから随分経つよな……元気でやってるといいんだけど。
【Side───麻衣香ネーサン】 トンカンカントンカンカン!! 田辺 『ウェーーッシャッシャッシャッシャッシャァアアッ!!』 ジョガフィフィフィフィフィフィフィフィンッ!! ───ゴンガラドシャシャシャシャァアアアンッ!!! 腕だけ完全妖力解放した田辺くんが、巨大な流木を切り刻んでゆく。 その速度は凄まじく、次から次へと木素材が溜まってゆく。 岡田 「おーけー田辺ー!木材はこんくらいでいいわー!」 田辺 『おおー!!』 それで、そんな木材でわたしたちがなにをしているのかといえば。 佐東 「しっかし船作るなんてどれくらいぶりだよ」 藤堂 「小学の夏休みの工作以来じゃねぇの?俺はそうだぞ?」 清水 「俺は近所のガキの手伝いで作ったくらいだな。ま、どっちにしろちっこいけど」 そう、船である。 はるばるエトノワールまで船を借りに来たヒロちゃん…… 我らが提督を海へ旅立たせるため、こうしてみんなで船を作っているのだ。 といってもヒロちゃんだけを行かせるなんてそんなもったいのないことはしない。 当然わたしたちも同行し、守護竜とかいうのと対面してみるのだ。 まずは見てみて、いけそうだったら戦ってみるとかそんな考えなわけで。 今のわたしたちのハートは好奇心120%、不安80%、 原ソウル800%でお送りします。 田辺 『いやぁ〜高速剣すげぇわ!俺、妖魔になってよかったよ!     ありがとうイレーネさん!あんたの奥義は俺の中で生き続けるぜ〜〜〜っ!!』 妖魔・田辺くんが語る“イレーネさん”とは、 漫画“クレイモア”で妖魔狩りをしていたかつてのNo2、高速剣のイレーネさんのこと。 身体全体で完全妖力解放をすると妖魔に成り下がる“大剣”(クレイモア)たちの中、 腕だけ完全妖力解放なんてとんでもないことをやってみせた人である。 中村 「そうだ田辺、ジーンみたく腕捻れる?」 田辺 『おお、クレイモア技なら大抵出来るぞ。     ちなみに俺はクレイモアん中じゃジーンが一番好きだ《ギリギリギリ……!》』 中村 「おおおすげぇ!どんどん腕が捻れてく!     ───…………これって骨とかどうなってんだろうな」 田辺 『さあ……19……20……回転数最大……21……!《ビキビキビキ……!》』 飯田 「話はいいからさっさと手伝ってくれ〜!」 田辺 『お、おー!よーしそれじゃあ───…………この捻った腕、どうしよ……』 中村 「菜子〜、一緒に作業しようぜ〜」 内海 「あ、うん。じゃあ重敏はそこに釘打ち込んで」 田辺 『まっ……待ってぇえーーーっ!!     これ地味に痛いからなんとかしてほしいんだけど!』 殊戸瀬「いつまで遊んでるの、さっさとして」 田辺 『遊んでるように見える!?───最初は遊んでたけど!』 中村 「なにやってんだよ田辺……     そんな腕ばかり捻ってるから正確も捻くれてくるんだよ……」 田辺 『出来るかって訊いてきたのてめぇだろうが!!細切れにするぞこの野郎!!』 まあその、いろいろ悶着はあるけど、みんな元気でやってます。 ……そういえば結局ヒロちゃんには会えなかったけど……今何処でなにやってるんだろ。 【Side───End】
ガフリガフガフショショリショリショリショリ……ゲェエッフ!!……ポムポム。 中井出「ムッハァーーーッ!!食ったァーーーーッ!!!」 さて、いまいち気分がノらないままに悠黄奈さんと別れ、 とりあえず腹を満たそうとキッチンに訪れては、 これでもかというくらい食事をした。 藍田 「いい食いっぷりだが提督よ。早食いは身体によくないぞ?」 丘野 「太って綾瀬殿に捨てられたらどうするつもりでござるか?」 中井出「迷える子羊たちを照らす太陽になりたい……望んでいるだけではダメだ。     なる、なるんだ!絶対に!───……中井出博光です」 彰利 「中井出の陽光なんて浴びたら、     迷える子羊たちや光合成しようとした草木が朽ち果てるんじゃねぇの?」 中井出「とっ……通りすがりでなんて失礼な!!」 で、飯を食い終えてみれば、 何処へ居たのかぞろぞろと現れては僕に妙な言葉をかけるみんな。 うーん、みんな楽しんでいるようだ。 みんなが猫の姿じゃないのは、 やはりみんなも猫の姿では客として楽しめないと踏んだからなんだろう。 祭りを楽しむならやっぱ客としてだよね、うん。 中井出「で……貴様らここになんの用?」 彰利 「メシ食いに来た。下の方先に行ったんだけどさ、猫専用だからダメだーって。     でもやっぱ気になるから夜華さんに食わせてみたら───コレモンよ」 夜華 「…………」 動かぬ彼女がそこに居た。 彰利に担がれつつ、本当に身動きひとつ取らずに真っ青な顔をしていた。 ……可哀相に、また実験台にされたのか。 時々思うんだが、いやすまん、正直しょっちゅう思うんだが─── 彰利って本当に篠瀬さんのこと大事なのかな。 彰利 「ウヒョロキョキョ……!夜華さんたらあれだけ嫌がってたのに、     アタイが“はい、あ〜ん♪”って差し上げたら     真っ赤になりつつパクってムヒョヒョヒョヒョ!!」 総員 (不憫ッ……!!) 思わず涙がこぼれてしまった。 つくづく思うが、篠瀬さんってほんと彰利に遊ばれすぎてる。 これで好き合って夫婦になったっていうんだからなにかがウソだ。 ……まあ、いろいろあってのその後なわけなんだが。 愛情が四倍(?)でもこの有様だってんだからさすが彰利だよなぁ…… ほんと篠瀬さんが不憫でならない。 悠介 「お〜いちょっといいか〜?」 と、そんなことを思っていると、この第一料理室に訪れたる一人のモミアゲさん。 彰利 「ダメだ」 悠介 「少しは話を聞こうとか思えよ!」 そしてそんな彼にあっさりとダメ出しする親友さん。 こっちも奇妙に不憫でならんが……ハテ、改まったりして、なんの用なんだ? 中井出「構わん!用件があるなら唱えるがいい!     ───大丈夫!何を隠そう、俺はセラピーの達人だ!!     何故なら俺は迷える子羊を照らす太陽!     全ての民に我が愛情を余すことなく分け与えよう!     そう……あたかも母親が赤子に乳を飲ませるが如く……!!     《バサァッ》……さあ、僕の乳をお飲み」 彰利 「服はだけんな乳見せんな何処の変態だテメー!」 中井出「お前に変態って言われると物凄いショックだ……」 ただの冗談でとても傷つく自分が悲しかった。 いや、それよりも冗談やって変態呼ばわりされたのちに、 いそいそと着衣を元に戻す作業のなんと悲しい。 彰利 「自分でやってショック受けられても困るんじゃけど……?     てゆゥか俺って皆様からどんな目で見られてるん?」 中井出「変態!」 藍田 「オカマ!」 悠介 「ホモ!」 丘野 「ロリコン!」 総員 『即ち変態オカマホモコン!!』 彰利 「ぶっ殺すぞてめぇら!!」 藍田 「おーお上等だかかってこいオラァ!!」 中井出「やってみろこの野郎!切符は要らねぇ!無賃で地獄へ行ってこい!!」 丘野 「四対一で勝てるつもりだってんだなてめぇ!!」 悠介 「殺せるもんなら殺してみろぉっ!!」 彰利 「え?あ、あれぇ!?いやちょ……今のはただの売り言葉に買い言葉ってやつで!」 中井出「ならばその売り言葉を物々交換で買ってやろう!     こちらの代金は地獄巡りの片道切符ださあ受け取れ!!」 彰利 「全力で遠慮してぇえええーーーーーーーーーっ!!!!     ヒ、ヒィ夜華さん!夜華さん助けてぇえええ!!     俺だけ独りなんてやだぁあああっ!!ジョー起きて!ジョーーーーッ!!!」 中井出「うむ!総員噛み付き攻撃でヤツを仕留めよ!ヤツは顎攻撃を所望である!」 総員 『サーイェッサー!!』 彰利 「その“ジョー”じゃねぇえーーーーーーっ!!」 そうは言うがもう遅い! 晦がすかさず創造した妙な顎装備を装着した我らは、既に攻撃に移っていた!! 中井出「くらうがいい彰利よ!ジョー攻撃の最高峰!“ダガージョー”!!」 ジャコォンッ!!───唱えとともに、 顎に装着した牙からまるでナイフのような鋭い刃物が飛び出しゾブシャア! 中井出「ウギャアアアーーーーーーーッ!!!!《ぶしぃーーーっ!!》」 彰利 「《ビシャシャアア!》……キャーーーーッ!!?」 伸びた刃が僕の口を貫きました。 当然噛もうとしていたために目の前にいた彰利は俺の血を浴び、 何が起きたのか解らないって表情ののちに絶叫。 そして俺もあまりの痛さに絶叫し、その場でのた打ち回った。 悠介 「ククク……!いとも簡単に人を信用するからそうなるのだ……!」 中井出「晦ぃいーーーーっ!!てめぇえーーーーっ!!!」 ようするにこの博光は騙されたのだ!! そう、晦という名の白い男に!! 悠介 「甘いぜ提督……!     かつての俺ならば素直に普通のぐぶぅへぇ!!《ゴプシャア!》」 彰利 「《ビシャア!》キャーーーーーーッ!!?」 晦吐血!そしてその血を一身に浴びる彰利! さらに白な晦の血は黒い彰利の体質に合わないらしく、 彰利 「《ジュウウウウ!!》ギャアアアアアアアーーーーーーーーッ!!!!」 ジュウウと白煙を上げて溶けている!! どこまでバケモンなんだ貴様は! というツッコミは後回しだ! 悠介 「げふっ……!て、……提督てめぇ……!!」 中井出「貴様こそ甘いな晦一等兵……!創造物である時点で、     これでダメージを与えればそれは貴様の攻撃……!     即ち俺が受けたダメージの半分はヘッジホッグによって貴様に跳ね返る……!     この博光がただでやられると思うてかグオッフォフォ……!!」 悠介 「お前なぁあああ……!!」 彰利 「や、つーか溶けてるオイラは無視?」 中井出「おお。どうせだから別の何かに変身してみるとか」 彰利 「おお、溶けてる今が旬と。ではちょっと黒をいじってと……《ゴワゴワ……》」 なんとなく言ってみた言葉に律儀に反応し、彰利が変化してゆく! ……なにになるつもりなんだろうか。ロビン? いや、それならただ変身すればいいだけだし……なんだ? とか思っているうちに変身は終わり───気づけばそこには、 殿様衣装を着た黒い人物が両手を挙げて立っていた……!! 黒い人『シンデレラが死んでれらーーーっ!!     ロシアの殺し屋おそろしやーーーーーっ!!』 ……そして元に戻った。 悠介 「満足か?」 彰利 「最高さ」 満足らしい。 中井出「では話を戻そうか。───晦一等兵」 悠介 「ああ。……通路のド真ん中でルナが倒れたまま動かないんだが……     なにか知らないか?」 彰利 「バトルモードだったのに普通に話戻して、訊くことがそれかィや……」 悠介 「俺にとっては重要なことなんだよっ!悪かったなっ!     お前だって篠瀬が誰かにやられてたりしたら黙ってられないだろうが!」 彰利 「黙れと言うなら黙りますが、相手は血祭りにあげますよ?」 悠介 「いや……黙ってられないってのはそういう意味じゃなくてだな……」 ドガシャァアーーーーーンッ!! 彰利 「ヌッ!?ア、アアーーーーッ!!中井出が窓ガラス割って逃げ出した!!」 悠介 「ちょっと待て!すぐ傍に普通に出入り口があっただろ!     どうしてわざわざ数少ない都の名残を破壊して逃げるんだよ!」 藍田 「そりゃあほら……アレだよお前、ルパンの真似」 悠介 「よく解らんがとにかく決定だ!ルナが倒れてる原因は提督だ!」 彰利 「うん知ってる《バゴシャア!》ダップス!!」 悠介 「知ってるならさっさと言え馬鹿者!!」 彰利 「バカとはなんだコノヤロウ!!     喋り途中に殴るなってなんべん言わせんのまったくもう!」 後方から賑やかな声が聞こえるが無視してダッシュ!! 未だに解いていないフレっちへの敵対心を胸に、俺は自由の旅へと出かけたのだった……! 【ケース505:中井出博光(再)/お祭り男爵と秘密の部屋】 モチャモチャモチャモチャ…… 彰利 「あー団子うめー」 中井出「でさ。なんで貴様俺の隣に居ンの?」 彰利 「キミの影に俺の影接続しといたから。移動もラクチンじゃぜ?」 中井出「もう影とかのことならなんでもありだなお前……」 まだまだ賑やかさが冷めない祭りの最中。 俺は人目につかない木陰に行くと、その下で吉備団子を食っていたのだ。 妖精族に伝わる団子らしく、様々な花の蜜を独自の製法でブレンドし、 これまた妖精界に咲く粉を使用して作ったとされる団子なんだが……これが美味い。 食後のデセル(デザート)には最適な味わいだ。 彰利 「や、それがそーでもねーのよ。     更待先輩殿の能力で影縫いってのがあるんだけどね?     あたしゃどうにもアレが苦手でね。ほら、オイラ闇と影と黒が主能力っしょ?     だから影縫われると身動きとれねーのよね。     そりゃね、その力以上の力ぶつけりゃ破壊できるけどさ」 中井出「抗える力があるだけいいんじゃないか?それって」 彰利 「そういうキミだってや〜な能力持っとるじゃない。     ヒノカグヅチだっけ?影通す時、あの炎が邪魔でしてねぇ」 中井出「そうなのか?…………って、ちょっと待て」 彰利 「あ〜〜〜ん?」 中井出「いや、モンスターハンターのじーさんの真似はいいから」 ……ちと考えてみたんだが…… もしかして俺って、本気で“自分としての能力”って……皆無? 魔術も魔法も法術も無し、創造も白操術も鎌解も黒操術も無し…… …………あるのは戦士としてクラスチェンジしていった時にもらった戦士スキルだけ? 中井出「………」 いや、いいんだけどさ。 確かにそれは人間ってことだ、実に人間らしいと思うよ?うん。 だがこの世界はゲーム世界よ!取れる能力は是非とも欲しい! そう思うのは男として、冒険家として当然じゃないかい? 中井出(とはいうものの……) 実のところ、今すぐ欲しいと思うような能力はなかったりする。 能力が欲しいとは思うものの、特にこれといったものはない。 それよりも武器を鍛えたい気持ちでいっぱいだ。 ……なんだ、能力いらないじゃん。 彰利 「考え事かえ?……あ、もう一個もらっていい?」 中井出「おお構わんぞ。おお考え事だとも」 俺の脇においてある吉備団子をひょいと口に放り、 モチャモチャと咀嚼する彰利を横目にマファーと溜め息。 でも別に暗いほうの溜め息ではない。 彰利 「あー団子うめー」 中井出「意外って言えば意外だよな。お前って和菓子好きだったのか」 彰利 「オウヨ。美味いもんは美味いと言う男だよ俺は。     この団子ばっかりは、俺の海原の心に不快をもたらさないし。     や、マジで美味いよこれ。あとでレシピ教えてもらうべ」 中井出「へ?材料とかってこの世界……じゃないな。     妖精界じゃなくちゃ入手できないだろ」 彰利 「オウヨ!だから悠介連れてってイメージに纏めてもらって、     必要な時に創造してもらうのよ!ステキじゃない!」 中井出「や、そこで奇妙にミラルドさんの真似されてもな」 彰利 「あ、解った?」 ミラルド……テイルズオブファンタジアに登場するクラースくんの幼馴染である。 そして僕はファンタジアではクラースくんが一番大好きです。 彰利 「次がやっぱチェスターだよね」 中井出「心を読まないでお願い」 彰利 「まあよ。まぁああよ。俺たちゃアレだ、     ノリが同じだから好きなキャラとか結構似てるし、そうじゃないかなーって。     一番好きなのってダオス様っしょ?」 中井出「全然違うじゃねーか!敵対してるよ!ラスボスと勇者一向だよ!!」 彰利 「なんだとてめぇ!なんでダオス様が一番じゃねぇんだよ!     そりゃアレだぞてめぇ!     フリーザ様よりコルド大王を愛してるって言ってるようなもんだぞ!」 中井出「どういう喩えだぁ!俺ゃコルドごときよりフリーザ様の方が     比較するのも烏滸がましいくらいに大好きだ!」 彰利 「男が好きなのかこの変態が!!」 中井出「お前に変態とか言われたくないんだから言うなぁあ!!」 悠介 「見つけたぞ提督!」 中井出「ヤベェエエ!デケェ声出しすぎたァア!!」 彰利 「その声がデケーよ!この声もデケー!!」 話してるうちにヒートアップした声に気づいた晦が来訪!! 突然の来訪に驚いた俺と彰利はその場に立ち上がり、即座に体勢を整える! ───そうだ!しまった!俺隠れてたんだった!団子が美味いから忘れてた!! ええい団子───団子?───団子……団子!! 悠介 「提督!ルナの───」 中井出「ええい控えいぃ!!ここにあらせられる団子をどなたと心得る!!」 悠介 「───!?な、なにっ!?……え?団子?」 中井出「この団子様こそ、妖精族が丹精込めて作り上げる至高の団子!     地界だろうがフェルダールだろうが作れないとされる、     妖精界でなければ作れない伝説の団子さまであるーーーっ!!《どーーん!》」 悠介 「なっ……なんだってぇーーーーーっ!!?」 ズガーンとショックを受ける晦! 予想通りに珍しき和菓子の話に喰らいついてきおったわグオッフォフォ……!! 中井出「そんな素晴らしい団子を……!!」 悠介 「だ……《ゴクリ……》団子、を……?」 中井出「あげる」 悠介 「ほっ……本当か!?」 彰利 「ウオッ!?悠介の顔がまるで温泉を前にしたライルくんのように!」 うおお本当だ!頭の中で俺の言葉を反芻してるのか、うっとり顔になってる! うっふっふ、しかしだ晦一等兵よ……! この博光が、いい年齢してるくせに 思考が子供っぽいということを忘れたわけではあるまい! ……いや、自分で言うことじゃないけどね、童心は大切だと思います。 というわけで俺は団子を手にした右手を高々と掲げ、こう言ったのだ!! 中井出「《スッ……》はい“あげた”」 悠介 「《ブチィッ!!》てめぇそこ動くなぶっ殺す!!」 中井出「え?あれキャーーーッ!?」 彰利 「ギャア怒ったァーーーーーッ!!!物凄ェ速度で怒ったァアーーーーーッ!!!」 速ぇええーーーっ!!かつてない速さでブチィっていったぁーーーーっ!!! 中井出「い、いやちょっと待───《ガスッ!》オワッ!?」 悠介 「ハッ!!?」 物凄い形相に後退った僕! そんな僕の背中にガスンとあたる自然の柵の感触! 拍子に手から零れ落ちるひと串の団子!! やがてそれは柵の下───結構下の方にある苗広場へと弧を描き落ちてゆく! ご存知の通りここは様々な自然が絡み合い、 まるでラピュタの城のごとく樹木と都が合体して出来た要塞! 落差の激しい段差もあれば、柵の先が崖だってことももちろんある! 崖っていうよりは、大木のてっぺんの枝から他の枝とかを見下ろしてる感じだけど! そんな場所へと団子が落ちてゆくのだ! 悠介 「さっ───させるかぁーーーーっ!!」 否!ここで晦がダッシュ! “閃速”の通り名を持つ彼(俺が今命名)は、 白の能力を行使してまで物凄い速度で移動を開始! 俺の後方に落ちた団子を救うべく疾駆したのだ! 中井出「あれ?うおわ《ドゴシャアアッ!!》ギャーーーッ!!」 しかしここで問題発生。 団子を救うことしか頭になかったらしい晦は少しでもショートカットをと、 俺が立つ位置へとまっしぐらしてきたのだ! お蔭で俺にぶちかましをしたのちに巻き込む形で落下を始め、 俺も訳が解らんままにジタバタともがき、 やがて───ドッゴォオオオーーーーーンッ!!! 中井出「ゲボハァアーーーーーッ!!!」 悠介 「んぎぃいいいーーーーっ!!」 藍田 「うおわぁっ!?な、なんだぁっ!?」 絡まったままにかなり下方にあった地面へと落下! 苗広場で猫当てクイズをやっていたらしい藍田くんが見守る中、 俺は逆さ状態でメキバキと身体を締め付けられ、晦はケツをしこたま打ち付けた。 まあその、つまり─── 彰利 「キャアアアアアア!!痴漢よォォォォ!!」 悠介 「いやっ!違う!これはっ……」 藍田 「キン肉バスターよ!キン肉バスターだわ!!」 ……こういうことである。 なんて暢気に状況説明してはいるが、こちらは物凄い衝撃を受けて瀕死の状態。 咄嗟のステータス移動も間に合わず、ゴポリと血を吐いて地面にドザァと落下した。 ───だが諦めない!それが俺達にある最大の武器なんだよ! 中井出「か……火事場の……クソ力〜〜〜っ!!」 痛くても!立ってみせようホトトギス! 大丈夫さ!キン肉マンは火事場のクソ力さえ発動出来れば必ず立ち上がってたんだ! 中井出「ゲボォゥハ!!《ゴプシャア!!》」 でも僕は火事場のクソ力なんて無いので、血を吐いて再び倒れました。 中井出「グ、グウウ〜〜〜ッ、さ、さすがはカメハメ48の殺人技の一つだ〜〜〜っ!!     に、二世ではすっかりキン肉族の技とさ、されているが……     カメハメ師匠が編み出したこの技……や、やはり半端ねぇ〜〜〜っ!!」 藍田 「テリーマン!俺と代われ〜〜〜っ!!     ヤツは尾てい骨強打で動けない状態だ〜〜〜っ!!」 中井出「グ、グウウ……!」 藍田 「なぜだ〜〜〜っ!何故タッチを拒むーーーっ!」 中井出「キ、キン肉マンよ……骨が無い左腕では満足には戦えんだろう……!     こ、ここはパートナーであるミーを信用して、そこで休んでいろ……」 藍田 「テ、テリーマン!お前という男は〜〜〜っ!」 いや……真実はまるで違うんだけどね。 ただ全身が痛すぎて動けないだけなのさ。 手を伸ばしたくても伸ばせなかったから、せめてノっておこうかと。 ロビン「ヘイキッドーーーッ!!わたしと代わるんだーーーっ!!」 悠介 「グ、グウウ……!」 ロビン「伸ばすんだ!手をーーっ!!忘れるな!タッグ戦とは独りで戦うものではない!     仲間であるこのロビンを信用するんだーーーーっ!!」 悠介 「ロ、ロビン……」 あっちもあっちで彰利がロビンになってまで、ジ・アドレナリンズの真似してるし。 そんな彼らを見て、ポムと手を打ったのが藍田くん。 その仕草だけ見ても、もう彼がなにを為そうとしたのかが解る俺は、 案外こういう状況に慣れているんだろうね。 マカァーーーンッ!! ライトニング「ジョワジョワジョワ、威勢のいいことよなぁ〜〜〜〜っ」 で、予想通りにライトニングに変身した藍田くんが、 自分の黒で作り上げた黒リングを前に必死に手を伸ばしてるロビンを見て笑う。 ……つーかいつの間にこんなリング作ったんだ? 地面に触れてみれば、本当にいつの間にか地面が黒いリングになってるし。 これってやっぱ黒……だよな。彰利の。 よく出来てるなー。 でも身体が動かないから、詳しい状況は把握出来てない状態なんだけどさ。 シュタァッ! 中井出「ぬう……?」 なにかの気配を感じた……。 うつ伏せに倒れている俺の後ろに、誰かが降り立つのを感じた……! シュシュルシュルシュル……!! 中井出「ウグア……アオア〜〜〜〜ッ!!」 ヒィ!?しかも我が身体がなにかに巻きつけられてってる!? いやちょ……なにこれ!前しか見えないから自分の身に何が起きてるのか解らない!! 声  「忍法!人体縛接包態!」 ジャキィーーーン!!! 中井出『ウグアア〜〜〜ッ!!』 そして……気づけば僕は……いや気づけばもなにも、突然のことで状況が掴めず、 さらに身体が動かせないために為すがままだったわけだが─── 妙な形の箱に入れられ、身動きを完全に封じられていた……!! ロビン 「ア、アアーーーーッ!!」 サンダー「ヌワヌワヌワ……!ロビンよ〜〜〜っ、      ケビンの身を案ずるのなら、妙なことはせんことだなーーーっ」 そう、これはまるでケビンが入れられていたエックス型生命維持装置!! 僕はそこに磔にされるように入れられていたのだ……! …………いたのだじゃないって!!なにコレ!え!?なにがどうなってこんなことに!? サンダー「ヌワヌワ……忍法の中に縛術というものがあってな〜〜〜っ。      実際に試してみたらこんなことになってしまった」 中井出 「そこでなんで僕を実験台に使うの!違うでしょ!?      こういうことするならモンスターとかを生贄に使わなきゃだめでしょ!?      ちょ……ヌワヌワじゃないよ!なにそれ笑い声!?それとも掛け声なの!?      笑い声!?じゃあヌワーーーッて言って攻撃してる時って笑ってるの!?      いやちょ……確認取っただけだよ!疑問ぶつけてみただけだよ僕!      やめっ……やめてやめてぇえええ!!      揺らさないで揺らさなオヴェエエエ……!!脳が揺れるゥウウ……!!      き、貴様らこんなことをしてただで済むと───え?      い、いや、“この生命維持装置名物の水が入ってないぞ”って───      やっ……いやぁあああやめてぇええええっ!!注がないで注がないでぇえっ!!      ぶわっ!冷てぇえええっ!!ちょ、待───どっから持ってきてんのこの水!      え?妖精界の湧き水を直接?なんでそんなレアな水入れてんのもったいない!!      ───違うよ!だからって普通の水だったらいいってわけじゃないよ!!      やめてよ!そもそもあれは治療液であって水じゃないったら!!      やめてぇえええ!この水冷たすぎるぅうっ!凍える!冷たすぎて死んじゃうよ!      死───ってそうだよ!これ生命意地装置どころじゃないよ!      あの酸素送るやつがないじゃん!どうやって送ってるのか知らないけど!      や《ゴポォッ!》ぶばぁはっ!?やめっ……やめてぇえええっ!!      生命維持装置で生命落とすなんてやだぁああっ!!      今すぐ水止めてここから出し───ゴボヴァーーーーーーッ!!!」 ……この後、わたしは悪衆時間超人とはいえ、プロレスラーに溺殺されるという…… 世にも珍妙な方法で神父のもとへと送られることとなった……。 Next Menu back