───冒険の書196/VS蒼泳竜───
【ケース512:中井出博光(再々)/水を往く者】 ザザァア……ザザザザァアアア…… 岡田 「やあ、なんだか波が高くなってきたな」 清水 「風はそんなに吹いてないのにな」 西の大陸付近は、風もないのに波が荒れていた。 押しては返すような水の動きが筏を大きく揺らし、 だが我らは絶妙なバランスを取りつつも状況を見守っている。 しかしその“我ら”の中には僕こと中井出博光は混ざっていなかったりする。 それがどうしてかというと…… 中井出「あのー……どうして俺、筏の前方に括りつけられてるんでしょうか」 揺れる波など気にしている余裕がなかったのだ。 荒れる波に対し、俺は下半身を海に沈めた状態で筏の前方に縛り付けられていた。 一応手は動かせる。 動かせるんだが……俺を縛っているのは麻衣香の魔法で、 しかもそこに上乗せするように木村夏子二等の邪法がかけられていて…… まあその、ようするに動けません。 ロープに縛られた上にそんなものをどんどんと重ねられた結果がこれである。 ちなみにロープで縛ったのは殊戸瀬。 急に縄抜けマジックを見せてとか言ってきたから、 “見せちゃらあ”と無責任に叫んだのがそもそもの発端さ。 え?マジック?そんなの出来るわけないじゃないですか。 マジィイイック!って絶叫してハイパーストレングスで引きちぎる予定だったのさ。 それなのにこの有様……笑いたければ笑うがいいさ、こんな僕を。 殊戸瀬「どうして、って……餌?」 中井出「助けてぇえええええっ!!!」 自虐の途中で超絶叫!! なんかいきなりエサに指定されてるよ僕! ハ、ハラショーマジック! オォノォミスターマイコー!縄抜けマジックが捕食ショーに早変わりだぜマイコー!! 助けてマイコー! マジックは好きだけどこんな命懸けカッパーフィールドは勘弁だぜマイコー!! 丘野 「まあまあ、冗談だって。     人をエサにしたくらいで守護竜が出てくるわけないじゃん。     睦月も人が悪いぞ?提督をからかうのも大概に───」 殊戸瀬「来た」 丘野 「そうそう、来た───愛?」 藍田 「や、愛じゃなくて!来た!なんかでっけぇの来た!!」 中井出「なにぃ!?」 ちょっと待ていくらなんでもそんな! 普通こういうのって“来ねぇなぁ……”とか“見つからねぇなぁ……”とか言って、 じゃあ帰るかとか言い出した時にドゴォンって来るもんだろ!? それが───ヒ、ヒィでけぇええええっ!! なんていうデカさだ!巨人族の2.5倍はありそうなデカさだ! いやそんなもんじゃ済まねぇよこれ!3倍!否……4倍以上ある! 巨人のデカさが僕らの3〜3.5倍あたりとして……ヒ、ヒィ!やっぱデケェ!! まるでキングサイズのガノトトス───いやそれよりデケェ!! ちょっと待てェエエエエ!!今までの守護竜だってここまでデカくなかったぞ!? そりゃカイザードラゴンはこいつよりデカかったけどさァアア!! う、おお……大きさにしてどれくらい……!? 人の数で数えると人間何人分の大きさでしょうか……!? とか思ってるうちに魚影が近づいて───ヒ、ヒィ助けてぇええ!! 中井出「ってアレアレェ!?あのちょっ……みんな!?なんで海の中に逃げるの!?     うわっ!ちょっ……逃げるなら……これ解いてから───!!」 殊戸瀬「大丈夫。提督が食われてる隙に集中攻撃を開始するから」 中井出「テメェエエエエエ!!最初っからそれが狙いだったのかコノヤロォオオ!!」 総員 『誰だって自分が一番かわいいのさ……あんただってそうだろ?』 中井出「当たり前じゃあああっ!!だから助けてぇええええっ!!!」 総員 『断る!』 中井出「今まさに目の前で食われようとしている人に向かってなんて無情な!!     ていうかちょっと待て!     みんな海の中に逃げ込んでるのになんで俺の方に一直線なのこいつ!」 と、狼狽える僕に、視界の隅でそっと黒い瓶を取り出す人が居た。 殊戸瀬「……憶えてる?ダークボトル」 中井出「殊戸瀬ぇえええっ!!てめぇえええええっ!!」 もうほんと泣きたかった。 俺ってこんなんばっかりだちくしょう───なんて悲しんでる場合じゃねぇ!! さっさとこの縄を外して……あ、あれェ!? 中井出「くそっ!このっ!ゲゲェまだ魔法障壁が張られたままだ!     ままま麻衣香ァーーーッ!!木村夏子二等ォオーーーーッ!!     魔法!魔法解除して魔法!このままじゃ食われるでしょォオオ!!?」 殊戸瀬「大丈夫。提督が食われてる隙に集中攻撃を開始するから」 中井出「リピートすなぁあああっ!!」 手を回す!背中側にある結び目をなんとかしないと本当にヤバイ! ヤバイのに───魔法障壁もそうだけど、 結び目が届くか届かないかの絶妙すぎる場所にあって届かねぇ!! チクショウこんな時に自分の固い体が恨めしく思えます!助けてトラサルディーーーッ!! ってヤバッ!もうヤバイ!ほんとヤバイ! 来るよ来る!絶対来る!水の守護竜さんが牙を剥きに! 今まさに海面に顔を出して、勢いのままに俺に喰らいつくに違いねー! 中井出「く、くそっ!くぉっ……は、外れろ……このっ!!外れろよォオッ……!!」 障壁なぞなにするものぞ! 手をバチバチと焼くバリアーを無視し、結び目を無理矢理掴む! そしてほどこうとするが……結び目が複雑すぎてほどけねぇ!! 気分はまるで、幻の超巨大魚を釣ろうと海に出たフォルテさんだった。 だって状況があまりにも───って来たァアアアアッ!!!  ザバァッシャァアアアアンッ!!!! ブルードラゴン『ヴシャァアアアォオオオオッ!!!!』 海面から飛び出た巨体! 泳ぐ速度をそのままに、俺目掛けて一気に飛びついてくる! どうする!?どうするって───逃げられない俺にどうしろと!? どうしろ!?どうしろって───思い出せ、俺! 同じ状況にあったフォルテさんはどうしていた!? 同じ状況ならば、その通りにやればきっと逃げられる! そうだ、そうに違いない!! 中井出「うっ───うおぉおおおーーーーーっ!!!」 眼前に迫った超巨大水竜を前に、唯一自由な両手をガバァッと振りかざした!! そしてその両手を以って、我を飲み込まんとする巨大な口をドガァ!! ブルードラゴン『ギッ!?』 ───がっしりと……引っ掴む!! 藍田 「おっ……おおおおおお!!フォルテさんだフォルテさん!     すげぇ!あの荒業を実際にやってのけてみせるとは!」 丘野 「すげぇや!さっすが天下の提督さんだ!」 ぎぃいいい好き勝手言いやがってあの野郎どもぉおおお……!! こちとら今の衝撃で、 腕からなにやらブチブチってステキな音が聞こえてきてるってのに……! つーか痛ッ!痛い!!腕の筋切れたんじゃないの!?これ!! だが諦めない! それが俺達人間に出来る唯一の戦い方なんだよ!───って人間俺だけだった! 中井出「どっ……どう、したぁ……!!お前の力はこんなもんかぁ……!!     オラどうしたぁ!こんなもんかぁあっ!!」 ビキミキと鳴る腕を無理矢理奮い立たせ、 少しでも油断すればパクリといかれる状況を押し退けようとする。 押さえてはいるが、あまりに巨大すぎるのだ。 現に今だって、顎を動かすことを許してしまえばお口の中へ持て成される状況。 だがそれを、口の端をSTRマックスで握り潰す勢いで掴み、 阻止しつつ圧し返してゆく……! 中井出「ぬっ……ぬ、ぐぬぬ……ぬぉおおおお……!!《ゴカァア……!!》」 しかし守護竜を圧し返すには、俺のステータスはあまりに下がりすぎていた。 だが───そんな時だ。 俺の内側に何かとても熱いものが溢れ、身体に力が漲ってゆく───! 見ればナビネックレスが灼熱を纏ったように赤く光り、 ログになにかの文字が流れていた……だが今はそんなことを気にする余裕なんて無い!! 中井出「おっ……オォオオオオオオッ!!《ギシャァーーン!!》」 力を込めれば込めるほどネックレスが紅蓮に染まり、それとともに─── ブルードラゴンの口に覆われていたためか日差しが遮られ、暗い俺の視界が赤く染まる。 ……もしかしてフォルテさんのように目が赤く光ってたのかもしれない。 中井出「おぉおおりゃぁあああああっ!!!」」  グゴゴドォオオッパァアアアアアアンッ!!!! だがそんなことを気にするより先に、俺の手はブルードラゴンを空へと放り投げていた。 清水 「うおおおおおっ!!?すげぇマジでフォルテさんやりやがっ───     うおぉあぁあああああああああああああっ!!!?」 田辺 「ななななんだこりゃでっけぇええええええええっ!!!」 水面下の物体がやたらと小さく見えたり歪んで見える……そんな経験があるだろうか。 それは今まさにこの場で起こり、 それでもデカいと感じていたものはさらに巨大なものだったのだと僕らに思い知らせた。 光に反射するくらいに輝く青の鱗……それが連なった甲殻はもはやひとつの結晶。 両脇に伸びる飛翼と水かきが融合したようなソレは、 恐らく飛行能力さえ備えてあるだろうほどに巨大で。 そしてなにより圧巻を憶えたのは、 大きさももちろんだが……その巨体から伸びる尾の長さだった。 で……例の如くと言えばいいのか。 ブルードラゴンを真上に投げ飛ばしてしまった俺は、 重力に従って落下してくるブルードラゴンを前に流石に絶叫。 こんなところまでフォルテさんをやっちまった自分に、 アーメンと十字を切りたい気分でギャアアアアアアアアア!!!!  ドゴバシャアアアアアッ!!!  バキメキゴボゴボザバッシャァアアアンッ!!! 一撃でした。 ミラクル泥舟サードインパクトカスタムショッキングレベル512クーポン券付きは、 空より落ちる超巨大魚(竜)の重みに耐え切れず、あっさりとバラバラ。 縛り付けられた俺ごと海の藻屑と化した……わけではなく。 中井出「《ザボシャアッ!》ぶはぁっしゃあああああっ!!死ぬ!死んでしまう!!」 咄嗟にVITをマックスにしたお蔭でなんとか圧殺されずに済んだ俺は、 崩壊した筏からなんとか脱出。 衝撃で魔法も邪法も解けてくれたお蔭で、ありのままの僕のまま海面へと浮き上がれた。 そして……ここまで来たら、バトルでしょう! 中井出「ふはははは!ようこそ大激闘!水の竜よ!今こそこの魔王博光の───う」 見渡す限りの大海原がそこにあった。 当然足場などなく、攻撃をするにしても敵は海の中。 これではまともな攻撃を当てることなど不可能。 中井出「えーと……どうやって戦えばいいんだろこれ」 殊戸瀬「提督が食われてる間に集中攻撃を」 中井出「おやめなさいそんな人を盾にした作戦!」 麻衣香「でも逆の立場なら喜んで実行するんでしょ?」 中井出「当たり前だ!見縊る《がぼしゃあんっ!!》ギャボボババーーーーッ!!!」 足に鋭いものが突き刺さる感触! その途端に俺の視界は海の中に沈み、 咄嗟に叫んじまったために酸素もまるで溜めることができないまま、 一気に引きずり込まれた……!! 中井出(ガ、ゴバッ……!グ……!) 物凄い勢いで引きずり込まれる中、強引に首を動かし、足に絡み付いている物体を見る。 中井出(……!) 見えるものは……鋭い痛みと流れる血……そして、水中で鈍く輝く二つの目……!! 田辺 《死んでくれ兄さん!!》 中井出《ゴヴァーーーーッ!!?》 詳しく言えば、妖魔化した田辺くんがそこに居ました。 ナビで届けられた死んでくれ宣言にナビで答える中、 どうしてか包丁を持った田辺が水中で俺に襲い掛かってきたのだ。 中井出《ななななにやってんだテメェエーーーーッ!!》 田辺 《え?なにって……坂田ブラザーズの真似?     ……いや、やっぱこういう場合じゃなくちゃ出来ないことはしないと》 足にガッシリと絡み付いている、鋭い爪が痛々しい。 ていうか血ィ出てるよ血。 実行する冗談全てが全力だからほんと大変つーかなんつーか。 中井出《テメェエエ!!今やってるのが守護竜戦だと知っての狼藉かぁあーーーっ!!》 田辺 《当然であります!サー!!》 中井出《ならよし!!》 やりたいことには全力を!それが我らの原ソウル!! 時と場合など知ったことじゃねー! でも心の準備くらいさせてくださいお願いだから。 中井出《ではとっとと海面に上がってバトルぞ田辺二等!》 田辺 《サーイェッサー!!》 気を取り直してガバゴバと水を掻いて海面を目指す。 ……目指してるんだが……剣が重過ぎるのと、 深いところまで一気に沈められた所為で中々海面に届きやしない。 なのに田辺は身体をメコモコと変異させ、 飛翼のような水掻きを使って物凄い速度で海面へと上がってゆく。 中井出《待っ……そんな速く上がれるなら俺も連れてけコラァアーーーーッ!!!》 田辺 《誰だって自分が一番可愛いのさ……あんただってそうだろ?》 中井出《ここでその言葉は関係ねぇだろ!》 田辺 《志村、うしろうしろ》 中井出《志村!?っておわぁあーーーーーーっ!!!》 言われた通りに振り向けば、巨大な魚影が俺へ目掛けて真っ直ぐGO!? そーかいそーかい貴様はこれから逃げ出したのか俺を贄にして! ちくしょう憶えてろテメェエエ!! 無事に海面に戻れたらひどいぞがぶりんちょ。 中井出《ほぅわああああああっ!!!!》 痛ァアア!!噛まれた!下半身噛まれた!むしろ噛まれてる! 現在進行形で噛まれてる!! なんでここで噛むかなぁ!! こんだけデケェんだからもういっそのことひと飲みにしてくれりゃあ、 胃袋の中で暴れ甲斐もあっただろうに! アースドラゴンといいこいつといい、ほんとどうして噛むかなまったく!! 中井出(っ……) しかし今回はちとヤバイ。 弱体化してる上に、武器はスキルの大半を封印されている。 だってのにいきなりこんな窮地に───望むところだコノヤロウ!! 中井出(“武装解除”(エジェクション)!ヒノカグツチ!!) 腰にあるジークムントからヒノカグツチを解除! 即座にスキルを解放し、ブルードラゴンの口内にある自分の足元に火円を発生させる! ボマースキルが無いから爆発なんて起こりはしないが、 それでもスキルとしての炎は水くらいじゃ消えやしない。 巻き起こる炎は確実にブルードラゴンの口内を焼き、 少しずつだろうがダメージを与えてゆく。 やがてその影響か、噛み付きの力が弱まるのを確認すると、素早く脱出! しかしそれに気づくや、上から覆いかぶさるように再び噛み付きにくるブルードラゴン。 中井出(なんなのその食に対する異常なまでの執着!     食べれなかったんだから素直に諦めてよもう!“エジェクション”!) そんな敵を前に、次はハウリングナイフを解除。 巨人の里で買い、早々に武器に融合させた短剣だ。 中井出(マグニファイ!ブッ飛べカラミティイイーーーーッ!!!) それを解除するやマグニファイを発動! 潜在能力である“衝撃波”を引き出し、ブルードラゴン目掛けて一気に放つ!  ゴヴォォバギュゴォッバァォオオオンッ!!! ブルードラゴン『グギィイイッ!!?』 ナイフから放たれた衝撃波が、海水を巻き込みながらブルードラゴンにブチ当たる。 水のうねりなどそうそうないであろう水面下で巻き起こる水流。 それによほど驚いたのか、ブルードラゴンは身体を大きく暴れさせながらも、 大した抵抗も出来ないままに海面へと吹き飛んでいった。 次は─── 中井出《───麻衣香!こちら貴様のダーリン博光イエア!     今すぐ俺にリバースグラビティかけてくれ!》 声  《キモいからやだ》 中井出《即答でひでぇ!物凄ェ速さでひでぇ!ちょっと彰衛門の真似しただけでそれ!?     ってマジで頼む!すぐそっちにブルードラゴンがフッ飛んで行くから、     俺を海上に飛ばしたあとにすぐに海面に氷結魔法かけてくれ!     そこを地盤にして正々堂々・試合開始!》 声  《正々堂々って……どうせ悪道外道の限りを尽くすんでしょ?》 中井出《うむ!俺は正義なんて大ッ嫌いだ!名乗るなら最初から悪を名乗る!     何故ってそれが原ソウル!常識だけでは語れない!というわけで頼む!》 声  《う、うん……まあいいけどあわぁあーーーーーっ!!?     ききき来たああっ!!ほんとに来たぁあーーーーーっ!!!     い、いくよヒロちゃん!リバースグラビ───》 声  《待って麻衣香。ここはまず海面に氷を張るべきだわ。     これでまた水中に潜られたらコトなのは解るでしょう?     提督は溺死でもすればすぐに飛んでくるから》 中井出《殊戸瀬ェエエエ!!テメェエエエエッ!!!》 溺死という言葉がキーとなったのか、 今さらながらに息が苦しくなってきている自分に気づいた。 なのに海面へ向かおうとしても武器が重くて浮上していけない。 おおう!どうする玄奘やばいぞ玄奘!! このままでは本気で溺れ死ぬよ俺!なにか───なにか無いか!? ていうか殊戸瀬が邪魔しなけりゃもう海上だったんじゃないかなぁ俺! ってそうだ!俺にはあれがあった! 中井出(ヒノカグツチとハウリングナイフを戻して───エジェクション!     闇に煌く主神の赤槍!“グングニル”!!) ジャゴォンと解除した大きな槍を海底に向けて構え、潜在能力を発動!! すると、無消費なのに高威力。 そして物凄い反動を誇る極光大砲がゴブシャドガバォン!! 中井出(ギャブレヴァアアーーーーーーッ!!!) ───放たれた途端、俺は背中と後頭部と脚部の裏に物凄い水圧を感じ─── まるで水で出来た壁に幾度もぶつけられているような感覚を味わいつつ、 おまけに身体をメキメキと締め上げられるような苦しみを味わいながら、 ようやく海上へと吹き飛んだのだっ─── 声  『“空軍・(アルメ・ド・レール)パワーシュートォッ”!!』 たバゴシャォオオオンッ!!! ブルードラゴン『クギャアォオオオオオッ!!!』 中井出    「ウォオオオーーーーーーッ!!!?」 ナニコレェエエエ!!! 海上に飛び上がった途端に、俺目掛けてブルードラゴンが素っ飛んで来たァアア!! ……って、軌道上の先……いや後か?そこにヴィクター化した藍田二等が……! もしや今の声とこの吹き飛んできているブルードラゴン……藍田が蹴り飛ばした!? そうか!ならば! 中井出「麻衣香ァーーーーッ!!」 麻衣香「うん解ってる!今みんな筏の上に乗ったところだから!     ───受けよ、無慈悲なる白銀の抱擁!“アブソリュート”!!」 詠唱開始とともに麻衣香を中心に広がる魔法陣! それが唱えられた魔法の言とともに弾け、ここら一帯の海面を完全に氷結させる! だがそれだけでは止まらず、麻衣香はさらにさらにと氷結魔法を連続詠唱! 凍った部分の下も、さらにその下もと次々と凍らせ、分厚い地盤を作ったのだ! 丘野 「地盤が出来れば───開門、“開”!!」 足がつける場所が出来るや、猛者どもが一斉に行動を開始する。 中でも丘野の行動は早く、開門を開くや否や、人型とは思えない速度で疾駆を開始!  ズルベシャズザザザザァアアア!!!! 丘野 「ちぇるしぃいーーーーーーーーっ!!!!」 次の瞬間には見事に滑って転んで、氷の上を滑走したのだった。 ……顔面で。 藤堂 「なぁにやってるさ丘野!ここは動かずに仕留めるのが一番さ!     “大槌小槌”!満!満!満!!」 それを見るや藤堂が腰に備えていた小さなハンマーみたいなものを取り出し───あ。 中井出「フオッ!?《ドゴォンッ!》ペポォッ!!」 確認できたのはそこまでだった。 余所見してた俺の身体になにやら強大な衝撃が徹り、 何事かと見てみれば……ブルードラゴンさんだった。 ブルードラゴン『クォガァアアアアアアッ!!!!』 中井出    「キャアアアアアアアアアアッ!!!!」 ブルードラゴン、咆哮! 俺、絶叫!! 吹き飛ばされた勢いのままに俺に激突したブルードラゴンは、 そのまま俺に牙を剥いたのだ! 俺は咄嗟にブラッシュデイムをエジェクションで取り出し、 迫る巨大な口に向けて振るうが───無理!大きさが違いすぎる!! だが我が手に輝くは懐かしのブラッシュデイム! これを握りながらあっさりと負けるなどこの博光!意地でもゴメンである!! 藤堂 「劫火灰燼!火判!」 だから咄嗟に急所だけは守ろうと……まあその、 適当に頭とか心臓部分をブラッシュデイムで守ろうとしていたところに、 なにやら横から巨大なハンマーがジュゴパァアンッ!! ブルードラゴン『ギギャァアォオオオオッ!!』 中井出    「ホキャーーッ!!?」 巨大なハンマーが、ブルードラゴンの身体を容赦なく打ち落とした! しかもハンマーの接触部分には丸で囲われた“火”という文字が書いてあり…… うわ、直火判だ直火判……!殴った場所から直接火柱立ってるし……! ありゃ熱くて痛ぇぞドグシャア!! 中井出「おぶえぇっ!!」 状況を見守ってるうちに脇腹から氷の大地に落下した。 そりゃ、飛行手段がなくなってしまった俺にしてみりゃ、 いつまでも空を飛んでいられるわけもないわけで……おお脇腹痛い。 だが痛がってる暇などないのは重々承知の上だ。 すぐに起き上がって上空を見た───途端に離れた場所で炸裂音。 予想はついたがすぐに振り向くと、そこには氷結した海のカケラを散らし、 轟音を立てて氷面に落下するブルードラゴンの姿があった。 麻衣香「重力よ、我が呼び声に応え反転するがいい。“リバースグラビティ”!」 だがそれも多少の間の光景だ。 氷の地面に落下したブルードラゴンはすぐさま麻衣香の魔法によって中空へ飛ばされ、 岡田 「ブレイブハート全開ィイイイッ!!デミルーンエコォオオーーーーッ!!!」 待ってましたと言わんばかりに猛者どものそれぞれが疾駆&跳躍。 既に人のジャンプ力など超えすぎている速度と跳躍を見せ、 ブルードラゴンへと攻撃を連ねてゆく。 その中でも岡田のデミルーンエコーは見るだけでも素晴らしく、 大きく振るい、斬りつけた先から幾つもの巨大な無属性の衝撃波の刃のようなものが発生。 しかもその衝撃波は対象に衝突するや二つに分かれ、再び別の部位を狙って飛翔する。 しまいには物凄い数の刃が巨大なブルードラゴンを何度も何度も斬りつけ、 まるで花火でも見ているかのように鮮やかに。 二度斬りつけた先から、刃が闇に散る夜桜の花びらのように散ってゆく。 清水 「次いっきまーす!ウェイクアァーーーップ!!ムーランルージュ!!」 だが散る花が消え去らないうちに武器を変異させた清水が大地を蹴り、 紅蓮に染まる大剣を手にブルードラゴンへと攻撃を開始する! 清水 「老婆から買ったインスタントブースター発動!     10秒間だけ俺は最強の俺になる!!」 ブレイブハートもインスタントブースターも、俺が適当に売りさばいたものだ。 ブレイブハートは心に揺ぎ無い勇気を刻み、攻撃に一切の迷いを出さなくする。 お蔭でクリティカルが出やすくなるというスグレもの。 幾重にも衝撃波を飛ばすデミルーンとの相性はバツグンだ。 インスタントブースターは一回のバトル中10秒間だけ速度が上昇する。 簡易烈風脚とか疾風斬のようなものだ。 それを以って、清水が永続スキルのムーランルージュを高速に放ってゆく───!! 清水 「だぁあああらららららららぁああああああっ!!!!」  ギュシャァアッフィゾンガガガガガガブシャアッ!!! ブルードラゴン『ルシャァアアォオオゥウッ!!!』 紅蓮の刃から、高速回転する衝撃波が何度も何度も放たれる! 衝撃波ひとつで10ヒットするそれを、10秒間という時が許す限りに高速で放ち続け、 落下しようとするブルードラゴンの巨体を、 放ち続けている螺旋衝撃波だけで空中にとどめている。 そこへようやく立つことに慣れたらしい丘野が顔を真っ赤に染め上げ、 一気に地面を蹴って跳躍する───って! 顔が真っ赤ってことは、もう第三の門まで開いたのか!? ……あ、い、いや違う! 顔が赤いだけじゃなくて、浮き出してる血管の量とか血走った白目とか、 身体から溢れ出る蒸気とか、もうこれ人間技じゃない! 丘野 「死なば諸共……火影の力、なにするものぞ……!     最終の門、死門───“開”!!解放!“八門遁甲の陣”!!」 中井出「ま、待てぇえーーーーーっ!!死ぬ気か貴さ───へ?」 叫んだ時には丘野を見失っていた。 立っていた場所には深く沈んだ足跡しか残っておらず、 ただ風を切る音だけが聞こえた気がして─── 丘野が既に攻撃に移っていたということに気づいたのは、 炸裂音とともにブルードラゴンが吹き飛んだのをこの目で見てからだった。 だというのに丘野の姿は見えないまま。 虚空で四方八方に吹き飛び続ける巨体を見て、それを見守る俺達は唖然とする他なかった。 丘野の装備は体術武器ではなく忍者刀だ。 なのに敵が吹き飛ぶ……それはつまり、 移動速度が速すぎて斬撃に衝撃波が付加されていて、 それに吹き飛ばされるカタチになっている、ということになる……んだろうか。 衝撃波の発生条件なんて俺には解らないが、 目の前で起きてることが大変な出来事だってことくらい俺にだって解る。 丘野に飛行能力なんてない。 それはつまり、地面を蹴り、跳躍しながら攻撃を加えているということだ。 なのに姿がまるで見えない……それは既に人間業など軽く越してしまっている。 それは、そうだ。人の域を越えない限り、竜族相手に立ち回ることなんて出来ないだろう。 そして丘野は既にそれを実行出来る能力を得ていて、こうして立ち回っているのだ。 ───ブルードラゴンが吹き飛ぶたびに龍型の闘気と虎型の闘気が弾け、 吹き飛ぶ距離と闘気が弾ける範囲が段々と狭まっていくのを感じる。 やがて、それらがある一点に揃った時、 ブルードラゴンの頭上にとうとう丘野の姿を確認した。 だが相手もさすが竜族。 そこに丘野が居ることに俺達よりも早く感づいたのか、 すぐさま上空に自分の顔を向けると、巨大な口を開いて極光レーザーを放った───! 丘野 「ッ……ツガァアアアアァアアアアアッ!!!ブギャアッチュゥウンッ!!ファァキィ……イィイン……!! ブルードラゴン『……!?』 ───だが!丘野は突き出した左手でそれを受け止め、 自分の全長の何倍以上もあるソレを握り締めて破壊してみせた……!! 総員 『んなぁああああっ!!?』 それを見ていた全員が、我を忘れて叫ぶほどの衝撃を受けた。 だって……ただの竜族のレーザーじゃない。 守護竜っていう、ランク違いもいいところの規格外の竜族のレーザーだ。 それを左手一本で、って……! これが……これが火影をも超えるといわれる八門遁甲の力か……! 丘野 「づッ……、ト、ドメだぁあああっ!!!     くらえッ……龍虎の牙!───龍虎ォッ!!滅牙斬!!」 丘野は俺達の驚愕も置いてけぼりにして、 トドメとばかりに光り輝く二振りの忍者刀を一本の極光剣に変換! 俺達よりもよっぽど驚愕しているであろうブルードラゴン目掛け、 一気に振り下ろした───!! ……いや、振り下ろすはずだった。 丘野 「《ブギィッ!》がぁっ!?《ブチ、ビキミキ……!!》ぐあぁああああっ!!」 高い空で極光剣を構えた丘野に異変が起こった。 身体を折り、身体のいたるところから血を噴き出させ、 冗談ではない本気の悲鳴をあげる丘野。 その拍子か極光剣は二振りの忍者刀に戻り…… それに気づいた時には、丘野はもう力尽き、塵と化していた。  ギシャァォゥンゴッパァアアアンッ!!! しかし次の瞬間にはブルードラゴンの傍で大爆発が起こり、 マグマが弾けるような熱が広がった。 中井出「うおおなにごと!?」 藍田 「こ、これは───ああ!」 ギピィンッ!《技術連携!核熱!》 中井出「───ああ!連携効果!」 藍田 「そ、そうかそうか!     最近連ねるように技を使ったことなんかなかったから忘れてた!」 田辺 『だったらまだまだ終わりじゃねぇぜ!《キュバァンッ!!》』 核熱の衝撃でさらに宙へ吹き飛んだブルードラゴンを見上げ、 俺より先に海上に出ていたであろう田辺が飛翼を出現させて空を飛ぶ。 向かう先に存在するのは当然ブルードラゴン。 腰に構えた仕込杖を手に、妖魔の力、速度を以って、一気に───撃を連ねる!! 田辺 『抜刀連技!』 ゴコォッキィイインッ!! 田辺 『極意!飛燕!虚空殺!!』 噛み砕くように言を放ち、暗転した世界の中で田辺が秘奥義を発動させる。 それは、一度しか振るっていないように見えるのに、 刹那に九閃を放つという奇跡を見せる極意。 妖魔の奥義、高速剣を最大限に利用した多重次元屈折現象……だったか? 刀の軌跡で球体を描くように振るう…… そんな芸当をたった一閃振るう瞬間に終わらせる奥義だ。 だがブルードラゴンにやるには、いささか相手が大きすぎる───筈だった。 田辺 『おぉおらぁああああああっ!!!ゾガガガガガガガゾブシャアッ!!! ブルードラゴン『グギャァアアアォオオオオッ!!!!』 中井出    「いぃっ!?」 田辺が振るう刀が光を帯びて巨大化し、さらに田辺の腕までもが伸び、 ブルードラゴンの巨体───強いて言うなら翼をこれでもかというほどに切り刻んでゆく。 あのバカデカい剣って……もしかして幻魔か!? 九閃じゃ終わりにしないってくらいに切り刻みまくって、 空中に切り上げたかと思うと飛翔してそれを追い、 再び飛燕虚空殺で巨大な円を描くように飛翼へ連撃を連ねる! 次いで横一閃に赤く輝く刃を振るい斬りつけ、 トドメに両手で持ち上げた巨大な刃を上段の構えから一気に振り下ろす!! 田辺 『斬り砕けっ!!“幻魔相破ァアッ”!!』  ギャリィンッゾバァッシャアアッ!!! ブルードラゴン『グォオオオオオオゥウウッ!!!』 総員     『ホワァアーーーーーッ!!?』 光が点る刃での連撃はとても美しかった。 飛燕虚空殺が描く球体の軌跡がまるで太陽のように映り、 それを裂く一閃と両断が太陽を斬り砕く刃のように見えたのだ。 威力もまるでバケモノ級。 今の俺では叩き出すのでさえ無理というダメージをこの一瞬で与えてみせ、 ブルードラゴンを氷の大地に叩き落した。 藍田 『真由子さん!今!───バズーカチャンネルァアアアアアッ!!!』 だがそれだけでは終われない!とばかりにすかさず烈風脚で疾駆した藍田が、 脳のチャンネルをいじくり潜在能力を発動! 氷の上を滑るブルードラゴンの鼻っ柱を容赦なく蹴り上げ、 体躯とまるで反比例した威力を叩き出して再び空へと吹き飛ば───したところを、 藤堂 「直火判!!」 再び振るわれた灼熱の巨大ハンマーで叩き落とされ、 そこへ跳躍した藍田の串焼きのダメ押しが炸裂。 ……なんかもう見てられない。 陸に上げられてからのブルードラゴンのボコボコっぷりを見てると、どうしても。 でも、でもだ。  ドンガガガガガドパァアアアンッ!!!! 総員 『ぎゃああああああっ!!!!』 相手は守護竜だ。 油断なんてしたら、ひどい目に遭うことくらい予想がつく。 現に、怒りとともに大きく振るわれた尾撃一撃で、猛者どもの人垣が一気に吹き飛んだ。 ただでさえ巨大な体躯だ、 しかも尾と呼べる部位は全長の5分の2を締めているほど巨大であり、、 攻撃力も竜族の筋力から放たれる一撃だと思えば想像がつく。 吹き飛ばされた猛者どもは、それこそ弾丸の如く吹き飛び、打ち上げられ、叩きつけられ、 それぞれが大ダメージを受け、大地に転がることとなった。 藍田 『ぐ、げっ……!ぶはっ……!』 吹き飛んだ中のひとり、藍田が受けたダメージの中で立ち上がろうとするが─── 血を吐き、ガクガクと震え、起き上がれないでいた。 藍田 『あ、れ……!?立て……ねぇ……!』 中井出「ダメージがデカすぎるのだ藍田二等よ!守護竜という存在を甘くみるでないわ!     さあ!アイテムを食らいまくって回復せよ!」 藍田 『イ、イエスサー……!』 とはいえ……俺もなにかをせねば。 ここでボーっと立ってたってしょうがない。 でも技と呼べる技など全て封印されてしまってる有様。 頼れるのは武器と、ステータスのみ。 ならば引き下がるのかと言われりゃそんなことは断じて無し!! 何故なら旅を始めた頃なんて今よりよっぽどなにもなかったのだから! 中井出「ゴー!!」 故に疾駆!ブラッシュデイムを戻し、長剣化させたジークフリードを鞘に納め、 そこからギミックを発動させて再びブラッシュデイムを取り出す。 重い武器が二つもあるのは、早く走るにはちと効率が悪いからだ。 だから長剣にして腰の後方にある鞘に納め、そこから蒼剣ブラッシュデイムを取り出した。 何故敢えてこれを取り出したのかといえば─── 中井出「では声高らかにいきましょう!ストック解除!マグニファイ!!」 ギピィンッ!!《マグニファイ!鬼人化が発動!ステータスが二倍になった!》 そう、鬼人化を発動させるためである。 追加能力が無い、まっさらなままのブラッシュデイムだから一分間しか保たないが─── それでもやっぱり、俺にはこれがないとしっくりこないのだ。 思えば烈風脚が無かった頃、俺はただひたすらに疾駆をして敵との距離を縮めていた。 故に今思う。こんな感触が懐かしいと。 大地を蹴り弾く感触が、スキルではなく自分の力で進んでいくという感触が懐かしい。 ようこそがむしゃらだった頃の僕! ……あれ?がむしゃらって……今の俺、あまり成長してない? 中井出「い、いいよ!?いいもん!     成長したのが武器だけだっていっても僕それだけで嬉しいもん!」 大体ガキの頃からあまり性格変わってないし! 大きく変わったことがあるとしたら、エロマニアじゃなくなったことくらい──ホワッ!?  コプシャゾガァアギキキキィイイインッ!!! 中井出「《ザブシャアッ!!》ぐあぁあっ!?いっ……!!」 疾駆する中、考え事に意識を奪われたのが災いとなった。 ブルードラゴンが首を大きくのけぞらせ、 一気に横に振るうとともに口から水撃を放ってきたのだ。 それは周囲に居た猛者どもや俺に襲い掛かり、俺はよりにもよって足を抉られた。 見れば村人の服は深く破壊され、足はもう骨が見えるくらいにまで削られて……! 中井出「う、ぐっ……!!」 血が溢れる前に自分の骨を見た。 それが赤に染まる様は、直視してていい気分じゃない───どころか、 吐き気さえ覚えるものだった。 だがその傷が光とともにすぐに塞がる。 中井出「ウオッ!?───あ」 びっくりして顔をあげると、この場に居る全員に回復魔法をかける麻衣香が居た。 ……そうだ、最近一人で突っ走りすぎてたから忘れてた。 俺、今は独りじゃないんだね。 戦いに明け暮れる日々に……そんな単純なことさえ忘れていたよ。 中井出「よっしゃあ!今なら覇王のメロスが撃てるようなそんな気分だ!     撃てるわけないけど!」 でもその思いだけは誰かが適当に受け取ってくれると嬉しいです。 中井出「ÅGIマックス!」 そして治ったからにはじっとしてなどいられない! そんな思いを胸にステータスをいじくって、氷の上を大!激!走! 鬼人化効果は───残り41秒。 中井出「立ち上がれぇい戦士たち!ここで負けてしまうわけにはいかぁああん!!」 総員 『サッ……サー!イェッサー!!』 俺の声に、完全ではないにしろ回復した猛者どもが立ち上がる。 俺はそれに先んじるように走り、ここが敵の制空圏だと勝手に思うや、 足を止めてAGIに振り分けたステータスを、STRとVITに振り分ける。 今は速度は必要ない。 足を止めようがここは氷の上だ、 勢いは散々つけた───あとは身体が勝手に進んでくれる。 ブルードラゴン『ルゥウウウォオオオオッ!!!』 総員     『ハワァアアーーーーーッ!!!』 暴れ出すブルードラゴンへと、総員がかりで一気に畳み込む。 水撃と尾撃をやられるだけであっという間に状況を覆されるが、 そのダメージも麻衣香がすぐに回復してくれる。 だから俺達は傷を負うことを厭わず、ひた走る修羅となって突撃を続けた。 中井出「“器詠の理力(バストラルフォース)───”!!」 そんな中で俺がすることは脱力。 そして集中のみだった。 剣の練習も、修行も、特訓も、師匠も要らない。 どう動くか、どう振るうかなど───剣が教えてくれる!! ……でもどうして英語なんだろうな。普通に器詠の理力でいいだろうに。 バストラルの意味なんて知らないけどさ。 中井出「はぁっ……ふっ」 トンッ───と軽く地面を蹴った。 姿勢は低く、それこそ地面を滑るように駆ける。 ───通常、漫画やアニメのように跳躍して敵に切りかかる馬鹿など存在しない。 空を飛べるならまだしも、 跳躍してしまえば自分がどれだけ不利になるか、解っているからだ。 仕掛けるなら疾駆。 それも、出来るだけ敵が構えるエモノより下をくぐるように。 当然龍種にエモノなんてものはないし、対人戦法云々を説いても仕方あるまい。 ようは出来るだけ強引にでも突っ込んで仕留める!それだけ! 跳躍して敵に切りかかる馬鹿は居ない!?馬鹿で結構!!馬鹿で本望!! 中井出「エェエイヤァッ!!」  ヴフォガンガギゴギガギゴギィンッ!! 敵に接近するや、双剣を振るって攻撃を連ねてゆく。 蒼剣とも双剣とも呼ばれるこのブラッシュデイムを振るうのも懐かしい。 しかし振るう先から傷も付けられずに弾かれるのはかなり悔しいものがある。 それでも─── 中井出(……こっちか?───おっ、次はこっち……こっちだな) 武器が心を躍らせている。 まるで振るわれるのを喜ぶように、犬が散歩を喜びあちこちへ走り回るように。 俺は目を閉じるでもなくそれを自然に受け取り、 それが自然であるように剣を振るってゆく。 そうして少しずつ、だが確実に───武器から意志を受け取る速度を速めていき、 中井出「せやぁあああああっ!!!」  ギンガガガガガガザゾゾフィィンッ!! 弾かれるばかりだった斬撃を、少しずつだがしっかりとした斬撃へと変えていった。 ───モノには切れやすい角度ってもんがある。 そこに、剣が自然に向かおうとしてくれる。 その意志を受け取ると、俺はただ静かにSTRとAGIを込めて剣を流す。 ただそれだけだ。 ただそれだけでも、もろい部分を穿てば崩れるのは当然のことなのだ。 ラーメンスープの袋だって、切り口から切らなきゃまずひん曲がるだけだ。 力任せに捻ったところで、それは切っているんではなく引き千切っているだけだ。 力も要るし、なにより効率が悪い。 故に既に切れた、ある意味でもろい部分を裂く。 それと同じだ。 ───剣は俺にその部分を教えてくれる。 俺はそれを受け止め、しかし時には俺の意志も贈ると、 まるで未知の冒険を前にわくわくするかのように踊り出す武器。 その度にアグレッシヴな攻撃を繰り出しては、 ピンチに陥ったりしてスリルを味わいまくっていた。 飯田 「お、おい!提督がなにやら剣を振り回しながら笑ってるぞ!」 下田 「きっと尾撃の食らいすぎで頭がイッちまったんだ……!」 永田 「提督……エロもの好きのいいヤツだっ《ブワァチィッ!!》ギャアーーーッ!!」 岡田 「うおお!?永田がブルードラゴンの尾撃の餌食に!!」 島田 「永田!?永田ァアアーーーーーーッ!!」 しかし───最初の超連撃に加え、これまでのちまちました攻撃が効いてきたのだろうか。 ブルードラゴンは鱗の色を青から銀に変えた……とともに、 遠くの景色から嫌な予感がする轟音が高鳴る。 こ、こここれはもしかして……!! 中井出「ま、麻衣香ァーーーーッ!!」 麻衣香「無理!むむむ無理無理無理ぃいいいっ!!     あんなでっかいのわたしの魔法じゃどうにもならないよぉっ!!」 中井出「あんなでっかいの!?ってうぎゃーーーああああぁあああっ!!」 言われて改めて見てみれば、既にそれは目で見えるものになっていた。 分厚い筈の氷を破壊しながら迫るソレは巨大な津波。 恐らくどころか確実に、ブルードラゴンが発動させたタイダルウェイヴだ。 ただ魔法とは明らかに違う……! これは、種類でいえばリヴァイアサンが使用する大海嘯(だいかいしょう)に近い! 魔法ではなく守護竜としての特性として放たれた秘奥義……そんな感じだ。 巨大な津波はまるでブルードラゴンの蒼さを吸収したかのように青く、 俺達目掛けて襲い掛かってきている。 当のブルードラゴンはといえば、 水かき代わりの飛翼をはためかせ、卑劣にも波より高い位置まで逃げておるわ! 中井出「テメェエエエ!!卑怯だぞこら降りてこいコラモービー!!」 藍田 『こっち向けこらモービー!!』 田辺 『なに考えてんだコラモービー!』 清水 「卑劣だとは思わねぇのかコラモービー!!」 藤堂 「ちょっとこっち来いコラモービー!!」 岡田 「降りて来いコラモービー!!」 そんな守護竜様に対し、丘野を抜いた我ら素晴らしき6人の怒りは爆発寸前! まるで関係ないことまで叫んだりして、ブルードラゴンをモービー扱いしまくった。 いや、なんかさ、ほら。空飛んでるヤツってモービー扱いしたくならない? ……なんて言えたのも束の間。 総員 『ヒ……ヒィイイイイイッ!!!!』 氷を破壊し、やってきた超巨大津波を前に、俺達は自然と口から絶叫を放っていた。 だが諦めない!それが俺達に出来る唯一の戦い方なんだよ!! 中井出「素晴らしき田辺二等!」 田辺 『《ズシャア》ここに……』 中井出「藍田を連れ、ブルードラゴンのもとへ飛べ!     そして必ずや、彼奴をこの大海嘯へ道連れにするのだ!」 田辺 『し、しかしサー!相手は水属性の竜族!     津波ごときで動じるものでありましょうか!』 中井出「効くかどうかはこの際どうでもいい!     高いところで自分だけ安全なのが気に入らんだけである!!」 藍田 『おお!それは俺も思っていたところだぜ〜〜〜っ!!というわけで田辺GO!!     ヴィクター化してる今なら空も飛べるが、貴様ほど早くは飛べぬ!』 田辺 『───よし任された!いくぞぉおおおおっ!!』 藍田 『おぉおおっ!!』 ドシュゥウンッ!!───田辺が後ろから藍田を抱え、一気に空へと飛翔する! 上昇速度は呆れるくらいに早い。 藍田と田辺すぐにブルードラゴンの頭上へ辿り着くと、 田辺は藍田をさらに上空へと放り投げ、藍田はその勢いを利用して高速縦回転を始める。 縦回転。それだけ見れば、藍田がなにをしようとしているのかは想像がついた。 藍田 『“粗砕”(コンカッセ)!!』 ギャルルルルドガァォンッ!! ブルードラゴン『グオッ!?』 回転する藍田を訝しげに睨んだ途端、灼熱の踵落としは炸裂した。 それは、それだけでも相当な威力があったが───さすがは守護竜。 飛翼を強くはためかせると、津波の中へと言わず氷さえ突き破るくらいの衝撃を殺し、 津波へと落ちる前に体勢を立て直しパガァン!! 藍田 『げぇえっはぁっ!!?』 しかも身を捻ると同時に藍田へ尾撃を炸裂させ、逆に氷の地面へと叩きつけやがったのだ。 だが俺達だってこれだけじゃ終わらない。 田辺 『回転数……最大……!!』 ブルードラゴンが藍田に気を取られたその間隙、 田辺は長く伸ばした腕をこれでもかというほど捻り、 手にした幻魔を武器に───一気に突き出していた!  ドゴォゾンガガガガガガガォオンッ!!! ブルードラゴン『───!グワォギャァアアォオオオオッ!!!』 中井出    「うっ……うおぉおおおおおっ!!?」 空気さえ捻り穿つが如く放たれた螺旋の突きは、 本能からか避けようと身を捩ったブルードラゴンの飛翼の付け根へと炸裂。 とても硬い竜族の鱗を削り、破壊し……なんと千切ってみせたのだ。 総員 『ゲッ……ゲェエエエーーーーーッ!!!』 驚くなという方が無茶だ。 いくら全員で攻撃し、ところどころに傷があったからとはいえ……いやちょっと待て! そういやあいつ、最初からヤケに翼ばっかり狙って……ぬ、ぬう!計算づくというやつか! 冗談抜きでかなり強ぇぞ妖魔田辺!……つーかあの幻魔が強すぎるのか!? って、そうこうしてるうちにブルードラゴンを飲み込んだ大海嘯がァアアアア!!! 総員 『ほっ……ほぎゃあああーーーーっ!!!!』 ンゴゴゴゴゴどっぱぁああああああんっ!!!! ───パーティーは全滅した。 まあその、空飛んでた田辺と、エルに乗って空に逃げ出してた殊戸瀬を除いて、全員。 ───……。 だが諦めない!それが───ええいそれはもうどうでもいいわ!! 麻衣香に頼み、海を凍らせてもらい西の大陸付近の海域まで走ってきた我らは、 鱗の色が青に戻っているブルードラゴンと交戦中の田辺と殊戸瀬─── そして丘野と合流した。 中井出「おお丘野二等!貴様既に戻っていたのか!」 丘野 「イエスサー!開門を開いて海面を走ってきましたサー!! 丘野は殊戸瀬とともにエルに乗っていた。 だが水面下の標的を攻撃するにはあまりに難しい状況。 見れば、ブルードラゴンは水の中から水撃を放つという攻撃ばかりを仕掛けてきている。 当然だ、飛翼が無くなっては宙を舞うことさえできない。 けどこのままじゃあ攻撃が当てられない。 やっぱりここはリバースグラビティ&氷結で、また氷の地面に引きずり出すか……? ───否!男ならば出たとこ勝負! そしてやはり一度はこれをやらねばスッキリしない! 中井出「というわけで───パンドラポット!ランダムルーレット発動!!」 守護竜バトルで確実に使っているパンドラポットを発動! ろくな目に遭ってないが、それでも今の俺には目立つ実力もないのだから仕方なし! そりゃ、カイザードラゴンと戦った頃よりは武器も自分も強いつもりではあるが…… 技術スキルの面であまりに寂しすぎるし。 マグニファイにしたって、ストックにはもう無かったりする。 一回ストックしたはいいけど、次をストックするのを完全に失念していいた。 故に今の俺のストックはカラッポだ。  ダラララララ……ジャンッ!《博打No.23!自爆!》 中井出「なにぃ!?───はいストック!《ガフィィンッ!!》」 あ、危ねぇ……!チクショウ! なんだってこの博打スキルって必要な時にはてんで出ないものが真っ先に出るんだ!? 毎度のことながら俺にちぃともやさしくない! 中井出「だがくよくよしてても埒も無し……」 続けてまいりましょう!パンドラポット……発動発動発動発動!! ジャンッ!《博打No.26!超弱体化!》───はいストック!! ジャンッ!《博打No.21!マクスウェルシステム!》 ジャンッ!《博打No.03!矮小化!》───はいストック! ジャンッ!《博打No.16!ブラッドセイバー!》 ───ぬう……イマイチパッとせん!発動発動!! ジャンッ!《博打No.27!シャドウフレア!》いやぁああああ!ストックストック!! ジャンッ!《博打No.28!バレットウェポンズ!》 ガションッ!! 中井出「オワッ!?」 マクスウェルシステムがHPTP自動回復をし、 ブラッドセイバーがブルードラゴンのHPを吸収する中─── 俺の腕の中に巨大な機械的なものが出現。 しかもブラッドセイバーで吸収したブルードラゴンのHPがそこに蓄積されてゆく。 つーかこの機械、どっかで見た気が……バレットウェポンズってことは重火器だよな。 ───ええい構わんなるようになれ!! 中井出「───OK!」 頭の中に使用方法が流れ込む。 その通りに武器を動かすと、これがやはり重火器であることを確認した。 中井出「ヲゥガリランチャーバースト!!ぶぅち抜けぇええええっ!!!」 腕にあるランチャーを一回転させ、エネルギーを充填! ブラッドセイバーで吸収したHPもエネルギーに変換し、 今まさに海面に顔を出して水撃を放とうとしたブルードラゴン目掛けてレッツブラスト!!  キュバァアアゥィィンチュドッゴォオオオンッ!!! 中井出「《メキメキボギャア!!》ギェェアアアアアアアアッ!!!!」 ランチャーからは巨大な波動砲が放たれた! ───が、あまりの反動に身体がついていけずに、衝撃に負けて腕が折れた。 ち、ちくしょう!ランダムで出る重火器までもが俺にやさしくねぇ!! だが破壊力は折り紙付きだったらしく─── 放たれた波動砲がブルードラゴンに直撃するや、超爆発を巻き起こす!! 麻衣香「あわぁあーーーーーーっ!!?」 藍田 「ウヒョォオオオーーーーーッ!!?」 それはもう、ここら一体の海水の大半を全て雨にしてしまうほどの爆発。 ブルードラゴンは大きく吹き飛び、 一時的ではあるがクレーターのようにえぐれた海から遠く離れた海へと落下した。 中井出「はがっ!はがっ!ハガァアアーーーーーッ!!!」 柴野 「提督さん!今は尻尾切られたリオレウスの真似してる場合じゃないでしょ!?」 中井出「してないよそんな真似!確かに尻尾切られたリオレウスは     ハガァーーとか言ってるように聞こえるけど違うよ!!     腕!腕折れてんの!痛いの!解る!?」 灯村 「ベホイミ!」 中井出「《バゴシャア!》ヘボォーーイ!!」 なにを思ったのか、この状況下で灯村二等がベホイミと叫びながら殴ってきた! 中井出「な、なにをするだァーーーッ!!     いきなり殴りかかるなんて紳士的じゃなくってよ灯村さん!」 灯村 「回復呪文さ!回復呪文も攻撃にすることが出来るとブロキーナ老師も言ってたし!     だから、さあ!次はフェイスロックベホイミ!」 中井出「どこの賢者の所業ですかそれ!!     あ、あの今守護竜バトル中なんだよ!?解っててやってる!?」 灯村 「当たり前だ!見縊《ゾブシャア!!》みげーーる!!」 中井出「うむよく言った!故に死ね!!」 元気よく返事をしてくれた彼に霊能パンチ(サミング)をプレゼントして黙らせた。 折れた腕もとりあえずは然の加護とマクスウェルシステムのお蔭で回復した。 なにげなく発動したマクスウェルシステムだったけど、これはこれでありがたいものだ。 と思いつつナビで博打スキルを見てみると……“???”の部分が残すところあと一つ。 ナンバー09を残すのみとなっていた。 これだ……これさえクリアすれば、もう好きな博打スキルを使いたい放題に……!! 中井出「うっふっふ……」 藍田 「で……提督よ。守護竜、まだ生きてると思うか?」 中井出「え?……そりゃ……アレだよお前。     生きてるっていうかピンピンなんじゃないか?」 丘野 「───よ、っと。難儀なことでござるなぁ。     これからああいうヤツと何度も戦わなければならないでござるか」 氷の上に丘野がストンと降りてくる。 滑ることもなく、見事にストンと。 見れば、靴の底に何かを仕込んでいるらしく、それで滑らずに済んでいるのだろう。 丘野 「む?……おお、靴の裏に砂をくっつけたんでござるよ。     にかわを塗って、砂をボフッと。するとこのような感じに」 ゾリゾリと丘野が氷を歩いてみせる。 ……帰りが遅いと思ったら、こんなの用意してたのか。 丘野 「しかし綾瀬殿の魔法も板についてきたものでござるなぁ。     海を凍らせて地面にしてしまうなど」 麻衣香「あ、来た」 丘野 「む?なにがでござ」 ドッゴォオオオオオオンッ!!!! 丘野 「《ゴキィン!》覇王ッッ!!」 中井出「ゲファーーーリ!!」 藍田 「ゴフォーーーリ!!」 麻衣香の言葉を合図に、氷が砕けたと思ったらそこからブルードラゴンが! 氷を割って頭から突っ込んできたブルードラゴンは、 氷の上だろうがかかってこいと言った感じで俺達を吹き飛ばした。 ……しかもその鼻っ柱の丸っこい角の先端が、丘野くんの黄金を的確に捉え……!! 島田 「おっ……丘野ォオオオーーーーーッ!!」 皆川 「気をしっかり……丘野!丘野ォオオーーーーッ!!」 三島 「ヒ、ヒィ!白目剥いて泡噴いて痙攣してる!」 佐東 「守護竜のぶちかましを直撃だもんなあ!!」 それぞれ、猛者が好き勝手に騒ぐ中で、俺と藍田は氷の地面に手をついて着地。 すぐに身体を起こすと、氷の上に立ち上がる巨体を見上げた。 ……相変わらず馬鹿みたいなデカさだ。 尻尾を入れればカイザードラゴンよりデカいんじゃないか?こいつ……。 ブルードラゴン『グルルル……!我が領域を侵し、害なす者よ……!         どんな用を持ちここに来た……!』 中井出    「オッ……!?」 と、そんな時、俺の聴覚に届く声があった─── 間違い無く、目の前のブルードラゴンの声、だろう。 中井出    「精霊の力を解放するためである!         そのためには貴様が守る水の戒めの宝玉が必要なのだ!」 ブルードラゴン『ほう……?気紛れでかけてみた声に反応する者が居たか。         だがそれは無理な相談だな。宝玉をくれてやることなどできん』 中井出    「ぬ、ぬう!そう言われるとは思っていたがそこをなんとか!         むしろ龍の中にも一体くらいそういうヤツが居てもいいと思わない!?」 ブルードラゴン『くどい。断ると言っている』 中井出    「じゃあ死ね」 ブルードラゴン『なっ……!?切り替えが早すぎるぞ貴様!!』 中井出    「うん、そんなことこの世界じゃ言われ慣れてるからいまさらだけど」 でもそれがみんな人外から言われてるのってどうなんだろう。 なんて思ってる場合でもないんだが、そこを敢えて思うのが原ソウル。 人よ、常識などに囚われてはいけません。 もし現実に非常識を実行することが怖いなら、 まず思考の中でだけでも自由の自分を想像してください。 想像とは自由であるべきです。 自由であるべきだから、僕のクラスメイツは世界なんか創造できちまいます。 中井出「《バゴシャォンッ!!》ゲファーーリ!!」 思うに、今や創造以外に能力が無い彼は、 その創造を的確に、しかし無意識に創造することで様々な能力を駆使します。 彼らが言うところの“白”の能力……あれはオーダーがどうとかなどではなく、 神となったことで死神である彰利に対して妙な反対意識が想像として産まれた結果です。 あいつが死神で黒なら、神である俺は白だ、と。 何故なら彼は創造神になりましたが、 神の力の一切は必要ないと、会得を放棄したのですから。 つまり彼に創造以外の能力があること自体が間違いなのです。 ……まあその、管理者であるイセリアさんやら精霊さんたちが余計な頭働かせてなけりゃ。 中井出「《バゴォンッ!!》ゴフォーーリ!!」 俺はな〜、晦は創造を極めるべきだと思うんだよな。 せっかく俺達にも精霊たちにもない能力を持ってんだ、 それを極めればそれだけで素晴らしいと思うのに。 まあ……精霊でいえばスピリットオブノートは異例中の異例だから度外視するけど。 元々晦の創造の理力ってスピリットオブノートからもらったようなものだったらしいし。 中井出「コ、コノヤローー!!《ゴバァン!》ブフォーーリ!!     そ、そそそそんなチンケな技で《ズパァン!》ガフォーーリ!!     ここここの提督さまに《バゴシャア!!》ゲファーーリ!!     たっ……たた楯突こうなんて10年早《ドパァン!》ゲフォーーリ!!」 彰衛門が死神で黒だからって、神になった晦がそれと対極を担う必要はないと思うんだが。 つーか俺ボコボコです。 戦いながら余計なこと考えてる所為でつくづくボコボコです。 それでもただやられているわけではない。 攻撃を受けようがどうしようが、仕返しとばかりに千切れた左翼の付け根を狙い、 傷口を無理矢理広げてダメージを与えていた。 すると猛者どももそれに気づいたのか、 ウエッヘッヘと怪しい笑みを浮かべて傷口をこれでもかというほどに狙いに走った。 ブルードラゴン『ぐっ……卑劣に走る人間がぁあっ!』 中井出    「黙れェエイ!!弱点を突くのは戦いにおいての常套手段!!         キン肉星の王位を永久のものとするためにも!         邪魔者は灰にするのだァアアッ!!」 俺はスーパーフェニックスの生き様を応援します。 卑劣に走ろうがどうしようが勝たなければ意味がない。 人よ、悪に生きよ!この世に正義などありはしない! 中井出「藍田二等ォッ!!」 藍田 「あいよぉっ!武装錬金!《ジャキィンッ!!》』 合図するとともに走り、ブルードラゴンの背後に回る。 その間、前方で猛者どもが注意を引いて、 俺達はその隙にガッシリとブルードラゴンの尾を掴み、STRをマックスに移動! 中井出「うっ……ぐ、ぅううぉおおおおおおおおおっ!!!!」 藍田 『どぅっ……ああぁりゃぁあああああああっ!!!!』 渾身を込めて───ジャイアントスウィング!! だが動かない!一瞬だが勢いだけで多少動いたが、 そもそも竜族の力自体に筋力の差がありすぎる。 カイザードラゴンを投げた時のように俺の体がデカければ別だが─── 田辺 『俺も手を貸すぜ〜〜〜っ!!』 藤堂 「俺にもやらせろ〜〜〜っ!!」 清水 「お、俺もだ〜〜〜っ!!」 岡田 「ク、クク〜〜〜〜ッ!!」 丘野 「ムウウ〜〜〜〜〜ッ!!」 しかしそこへ素晴らしき7人が集結すると、状況は一変した。 ていうか丘野くん、その……黄金は大丈夫ですか? あ、いや、多分麻衣香あたりに回復してもらったんだろうけどさ。 っと、いかん、今はこんなことを考えてる場合じゃない。 ───ともかく状況は一変。 あれだけ重かったブルードラゴンの体が引きずられ、宙に浮き、ついには─── 素晴らしき7人『おぉおりゃぁあああああっ!!!』 STRをマックスで発動することで、バカデカい守護竜を振り回すに至ったのだ! ……特にまあその、田辺の腕力のお蔭で。 完全に妖魔化した時の田辺の力は相当なものがある。 通常時……半人半妖の時でも基本的な力はけっこうあるようだが、 完全妖魔化の時はそれはもう驚くくらいだ───とも思ったンだが…… すぐ隣でマカァーーン!という音が鳴り、見てみれば…… オリバ「いいじゃないかソノダッ!!全員に勝ったらブラックベルトだッッ!!」 総員 『ほぎゃああああああーーーーーーーーっ!!!』 すぐ隣に怪力無双がいらっしゃいました。 しかもあまりにショッキングなことだったから、 我らは誤って手を離してしまったというのに─── ブルードラゴン(片手デ振リ回サレテイル……!500トンヲ超エルワタシガ……!!) なんと怪力無双は片手でブルードラゴンを振り回しているじゃないかッッ!! しかも俺がSTRマックス&人器で苦労して投げ飛ばした相手を、 全然余裕の顔でブンブカと!! そりゃブルードラゴンだって驚愕の事実を呟きたくもなるわ! ……でも呟き方がドイルさん風だったのはどうしてデスカ? オリバ「ヌォオオオオオオオオッ!!!!」 麻衣香「あっ!やばっ───ア、アブソリュート!!」 オリバがいよいよ力を込めて、 遠心力とともにブルードラゴンを大地へ叩きつけようとする時。 麻衣香が焦った様子を見せ、地盤をさらにさらにと氷で固めていった。 それはさっき、大海嘯で破壊された氷よりも分厚い氷で、 既にそこがかつて海だったなんてどがぁっしゃぁああんっ!!! 総員 『キャーーーーッ!!?』 こっ……壊れたァアアアアアア!!あっさり壊れたァアアアアアッ!!! 氷ッ……こんな分厚い氷がっ……!! 中井出「よし畳みかけよう」 藤堂 「案外冷静でありますな提督」 中井出「守護竜はな……ほんとな……     叩けるうちに叩いておかないと絶対に後悔するんだ……ほんと……」 岡田 「うっ……なにやら物凄く重みのあるお言葉……」 藍田 「《シャキィン!》ウーシャー!力こそが正義ー!」 中井出「正義ではなく悪である!」 藍田 「おうとも!正義という名の悪である!」 麻衣香「みんなー!準備いいー!?はぁっ───賢者の英知!     チェースペル発動!リバースグラビティ!」 守護竜は油断すると絶対に危険。 そんな気持ちを汲んでくれたのか、麻衣香が素早く猛者どもに発破をかけると、 すぐさま無詠唱でリバースグラビティを発動! 分厚い氷を割り、海水に沈みかけていたブルードラゴンを空中に飛ばすと、 麻衣香「コメッティックミサイル!フリジットコフィン!イグニート・ジャベリン!     ファイヤーレーザー!ライトニングペイン!エクスプロード!!     エンシェントノヴァ!インブレイスエンド───メテオスウォーム!!」 ドンガガガガガゾゴゾゴドゴゴガバンガガガガドッガァアンッ!! ドゴォンドゴォンドゴォンドゴォオンッ!!! 総員 『キャアアアアアアアアーーーーーーーッ!!!』 準備もへったくれもなかった。 口早に魔法の名前を叫び、連続で魔法を撃ちまくる僕の妻は、 周りのみんながメテオから逃げ惑う姿を見て揚々としながら、 まだまだと魔法を連ねてゆく。 中井出「うおっ……うおぉおおおっ!!待って麻衣香待ってぇえええっ!!」 永田 「わはははは!!ガンマクラッシュだちょーーーっ!!」 ドゴォオオオオオオン!!!! 永田 「ギャアーーーーーッ!!!」 岡田 「ああっ!ハルクの真似してメテオに抱きついて落ちてきた永田が     地面への落下とともに爆発したァアーーーッ!!!」 飯田 「永田!?永田ァアアーーーーーッ!!!」 美奈 「ちょっと麻衣香ぁーーーっ!!?     毎度思うけどこのメテオってどうして味方にまで攻撃判定があるのーーーっ!?」 麻衣香「その方が───面白いから!!《ジャーーーン!!》」 総員 『提督てめぇ!このクズが!!』 中井出「なんで俺《ドゴォオオン!!》ブゲルギャァアアアアッ!!」 叫ぼうとした途端に、近くに落ちたメテオの余波と炎を食らって吹き飛んだ。 HPを見れば三分のニほどのダメージを受けており、 メテオの恐ろしさに改めて身震いしながら……煙をあげつつ氷の上を転がった。 麻衣香のやつ……またMNDマックスで撃ってやがるな……? この威力、きっと間違いない。 一撃でこのダメージだ、巨体は圧倒的に不利だぞ……。 それに、チェーンスペル発動中ってことは 麻衣香「さらに!《キィンッ♪》」 総員 『やっぱりぃいいいいいっ!!!』 予想通りに追加大魔法シューティングスター発動!! そんな状況を前に僕らは囚われの身となったトルネコさんの真似をする他なかった!! そして始まる大激走世界。 振り上げた稀緑杖グルグリーズの先端から放たれる無数の小さな流星群を、 僕らは死ぬ思いをしながら躱し続けることとなる。 これ、一つ一つのダメージは小さいけど、数が尋常じゃないから……!!  ヂガァアアガガガガガガッ!!! 永田 「ギャアアアーーーーーーーーーッ!!!!」 島田 「ああっ!せっかく回復した永田が流星の餌食に!」 蒲田 「永田!?永田ァアアーーーーーッ!!」 こうして、永田くんのような犠牲が現れてしまうのは仕方のないことだろう。 当然体のデカい守護竜はその流星を幾重にもくらい、 散々と怯んでは眉間にシワを寄せていた。 麻衣香「さらに!《ピキィーーン!》ビッグバン!!」 そしてとうとう発動する大本命! 相手のHPをとことんまでに削り、1にしちまう凶悪魔法! ボスクラスの相手には普通にダメージを与えることになるようだが、 それでもそのダメージは普通の魔法の威力からは考えられないほど強力だ。 ブルードラゴン『グ……オォオオゥシャァアアアアッ!!!』 だが敵とてやられてばかりではない。 咆哮とともに大きく口を開けたブルードラゴンは、今度は水撃ではなく光を溜めだした。 ───レーザーだ。 空界で知り、今や竜族のほぼ全てが吐くであろうと理解されている極光レーザー。 ビッグバンは、その威力こそ周知だが───攻撃判定が発動するまでがとても長い。 しかもブルードラゴンは麻衣香しか見ていない。 このままじゃビッグバンが発動する前に……! 麻衣香もそれに気づかないほど馬鹿じゃない。 だけど一歩も動かず、ビッグバンの発動のみに意識を集中していた。 中井出(───!……へへっ) そんな麻衣香が、一瞬だけ俺を見て、キリリと引き締めていた顔を穏やかに緩めた。 ───上等じゃないか。 夫として、妻に信頼を寄せられて嬉しくないわけがない。 中井出(とはいえ、レイジングロアも使えない状態であれを止めるのは不可能……) とくれば、これしかない。 俺はもう一度パンドラポットを発動させると、 続いて麦茶も飲んでランダムルーレットを発動させた。  ダラララララ…… 中井出(時間がない───早く結果を出せ!)  ジャンッ!《博打No.13!メタルボディ!》 中井出「よりにもよってこれかいぃいーーーーっ!!!」 そりゃこれなら麻衣香の盾くらいにならなれるよ!?なれるけどさァアア!!  ピピンッ♪《麦茶効果!“ガッツ”!最大値以上のダメージを受けても1は残る!》 中井出「ギィイイイイイイタイミングがいいやら悪いやらぁああああ……!!     ああくそうもうヤケクソだ!鋼鉄の肉体ィイイッ!!《ゴキィイイインッ!!》」 死なない上に盾になれるなら上等! でも死なないってことは自爆が起ころうがどうしようが死なないってこと! ならば─── 中井出「ストック解除!アァーーーンド───ランダムルーレット発動発動発動発動!!」 麻衣香の前へと走りながら、ストックに封入した危険な能力を次々と解除してゆく! さらにランダムルーレットも惜しむことなく解放し、 やがて極光が放たれる頃には麻衣香の前へと立ち塞がった!  ───轟音が耳に届く。 ビッグバンが発動し、放たれた極光とともに辺りを眩しく照らしてゆく。 そんな中でジャンジャンと音を立てて決定されるルーレット能力。 それが───俺を小さくしたり爆発させたり回復させたり 巨大化させたり巨大化させたり爆発させたりを繰り返し……  ズガォガガガガガドガァアォオンッ!!! ブルードラゴン『グ……ギ……!?』 レーザーが俺に当たる頃には、俺は……巨大化を終え、 麻衣香どころか猛者ども全員の盾となっていた。  ゴゴ……ゴコッ……コココ……コォオオオンッ……!! 中井出「終わりだ……竜の者よ……」 不吉な音を巻き込み、ビッグバンの閃光が一気に広がってゆく。 それとともにヂガガガガドガァアォオオンッ!!! ブルードラゴン『ギィイイガァアアアアアアッ!!!』 巨大な超爆発を起こし、ブルードラゴンを吹き飛ばした。 俺はメタルボディとガッツのお蔭で死ななかったが─── ブルードラゴンは見るからに大ダメージを負っていた。 それでも退こうとしないのは……竜族の誇り故なのだろうか。  ジャンッ!《博打No.24!リミットグローヴ!》  ジャンッ!《博打No.30!Vシステム!》 ならばその誇り……この魔王博光が打ち砕いてみせよう。 中井出「V-MAX……発動ォオオオッ!!《ゴォオッ……ギシャァアアアアッ!!!》」 身体が光に包まれ、感覚的に鋭いなにかが俺の中に芽生えてゆく。 それを確認すると、俺はコズミックレイヴを完成させるべく青白い光を身に宿し───  バサァッ!! 中井出「───エ?」 走り出す前に、俺の横を何かが飛翔した……と思うや、 そいつは巨大な武器を手に弱ったブルードラゴンへと一気に肉薄し、 田辺 『その命!貰ったァッ!!俺式抜刀秘奥義!“虚幻魔空殺(こげんまくうさつ)”!!』  シュガァッフィザガガガガガガガガフィィンッ!!  ザンッ───ヂガァンヂガァンヂガァンヂガァン!  ゾゴォッフィゾブシャドッガァアォオオンッ!!! 飛燕虚空殺から幻魔相破へのコンボを三度決め…… 最後の一撃で見事にブルードラゴンを完殺してみせた。 そう、飛び出していったのは田辺だった。 田辺 『《シャキィンッ!》勇ゥウウウ者ァアアーーーーーッ!!!」 総員 『ハワァアアーーーーーッ!!!』 中井出「………」 そして……勝利の雄叫びをあげる田辺くんや猛者どもを前に、 V-MAXを発動させたままのポーズで固まった僕はどうしたらいいんでしょう。 あ……いや……今は剥ぎ取りだな……うん…… 塵になってないから……剥ぎ取りだよね……うん……。 悲しくなんかないさ……悲しくなんかないもん……。 でも……田辺、メチャクチャ強くなったなぁ……。 あとで幻魔を何処で手に入れたのか訊いてみよ……。 まあ多分、妖魔化した時に手に入れたんだろうけどさ……ウフフフフ……。 とりあえず今回の教訓。 多勢ってのは、それだけで立派な戦略になるんだなぁ……と。 Next Menu back