───冒険の書201/VS召雷竜───
【ケース519:ゼット=ミルハザード/友情の在り方】 ビギィッ!バキベキメキメキ……!! ゼット『ルゥウウウウオオオオオオオッ!!!』  ヴファオパガァッシャアアアアアッ!!! サンダードラゴン『クギャアァアアアアッ!!!』 振るう赤斧(しゃくふ)が鱗を削ぐ。 飛び散る血飛沫が陽光に当てられ輝く様はまさに壮観。 守護竜と呼ばれる目の前の竜は斬撃の度に悲鳴を上げ、眼に余る巨体を後退させていた。 ゼット『フンッ……守護の竜が聞いて呆れる』 胸殻が砕けてからは容易いものだった。 胸部のヒビをなぞるように渾身を振るえばそこは砕け、当然肉が露出する。 さらに穿てばいくら竜族といえど、耐えられるべくもない。 みさお「ゼットくん!あまり深追いは───!」 セシルが何かを言う。 言葉は耳に届いてはいたが、弱点を曝け出した者相手に深追いをせずしてどうする。 たとえ相手がどう出ようがそれさえも力で捻じ伏せればいいだけどのこと。 ゼット『フゥウウオアァッ!!』  ヴファオヴォウフォンフォザガゾバゾゴゾガバシャア!! サンダードラゴン『ギッ……グオォオオオオッ!!』 血が流れ続ける胸を攻撃し続ける。 当然反撃も来るが、背から伸びる飛翼を使い、素早く避け、なおも攻撃を。 未だ現実の自分の通りに動かない体が恨めしいが、 これがゲームというものならば仕方がないだろう。 どんな状況下であろうが俺が目指すものは変わらない。 この世界で足掻き、強者となった晦悠介を撃ち下す……ただそれだけだ。 ゼット『…………ふふっ、いや───』 もう一人居た。 俺を親友と呼ぶ、直情で何処までもおかしな人間が一人。 この世界で散々と暴れ回り、力をつけていると聞く。 ……どこまで伸びるのかは解らない。 だが、あいつと戦うという場面を想像してみると、 どうしてか微笑むことが出来る自分が居た。 晦悠介との戦いは、既に生き甲斐めいたものになっている。 どんな世界であれ戦い、 どちらが上かを決めたいと思う……いわば縄張り意識のようなものだ。 だが、ならば俺を親友と呼ぶあいつとの戦いを想像すると現れる、 この妙に暖かい感情はなんだろうか。 これが友情というものに対する暖かさなのだとしたら……ああ、それも悪く無い。 そう思える自分が居た。  と───そんな時だ。 ナルルルル……と、聞きなれない音が聴覚を刺激する。 しかしすぐにそれがtellというものだと理解すると、 誰かも解らないままに乱暴に意識を繋げた。 戦いを邪魔されるのは好きではない。 むしろ嫌悪さえ抱くくらいだと言っても過言ではない。 そもそも俺にこんなものを飛ばすものなど居るはずがないと踏んでいたが─── 声  『俺だ!瀬戸内だ!!』 ゼット『───』 聞こえてきたのはあいつの声だった。 瀬戸内がどうと言っているようだが理解出来ないので返しはしなかったが。 声  『ゼットー?もしもーし?えーとあのー、僕中井出だけど』 ゼット『……聞こえている。何の───用だ!』  ヒュゴガギィンッ!! ゼット『づっ……!ちぃっ!!』 振るわれた雷を帯びた尾撃を力任せに弾く。 尾撃は弾けた───だが雷まではそうはいかない。 斧を伝い、俺の腕を焼いては、弾いた分だけ遠ざかってゆく。 ……やはり雷を見ると気分が高揚する。 雷の向こうに晦が居るという錯覚を覚え、したいと思わずとも力が解放されてゆく。 声  『今交戦中か。フフフ……ならばゼットよ。親友であるこの僕が、     今からキミに今すぐそいつをブチコロがしたくなる処方箋をさずけようと思う。     声からしてなかなか手に余らせてるようだからね。     だが僕はキミがそんなヤツに負けるほど弱くないことを知ってる。     だから今、この言葉を贈ろう』 ゼット『なに……?』 妙な言い回しをする。 情けない話だが、先が気になるのか俺の意識は戦闘よりもtellのほうに取られている。 しかし次に放たれた言葉を前に、俺の意識は守護竜抹殺へと向けられることになった。 声  『これからそっち行ってその守護竜コロがします。     今、水の守護竜と風の守護竜ブッコロがしたから、     そいつだってお茶の子さいさいだぜグオッフォフォフォ……!!     そして貴様が苦労してた筈の相手を我らがコロがすことで、     経験値ボーナスは我らのもの……!素材なども剥ぎ取り分以外は山分けだ……!』 ゼット『ぬっ───!!』 それは───癪だ。 別に固執するつもりはないが、獲物を取られるという感覚は本能として許せない。 ───だからだろうか。 俺の中で“ヤツが来るまでにこいつを殺さねば”という意志が膨れ上がり、 それに気づいた時にはもう止められなかった。 ゼット『ルゥウウウウォオオオオオッ!!!』 体が我が意志を受け取り躍動する。 全てを竜化させるのではなく、攻撃に必要な部分だけを竜化し、 他の部位はあくまで速度重視のためにそのままにする───即ち竜人化。 角が生え、鱗が出現し、牙が鋭く硬く変異する。 尾が出現し、飛翼もより巨大になり───その変化の全てが、 目の前の守護竜を破壊するためだけに存在した。 そう、今この一時のみだ───!! 声  『フフフ、効果絶大のようだ……さ、殺気がtellから伝わってくるようだぜ……!』 声  『んあ?提督?なにカタカタ震えてんの?』 声  『なに言ってんの震えてないよ!これは武者震いだよ本当だよ!?     そっ……それよりアフロよ!急いでくれ!     このままではゼットに守護竜がコロがされてしまう!』 声  『7人も乗ってりゃそりゃ辛いって……つーか良かったのか?     他の猛者ども置いてきたりして』 声  『やつらほどの逞しさがあれば追いつけるさっ……!』 声  『追いつけなかったら?』 声  『間に合わないやつが悪ぃのよグオッフォフォ……!!』 声  『こ、こいつ……!』 声  『クズだ……!』 実に人間的な思考をどうどうと話す声が届く。 仲間にクズと言われようが笑って済ますやつらだ、 どこまで本気なのかなど知ること自体叶わないだろう。 だが、俺を親友と呼ぶこいつの周りの地界人はどいつもこいつもがこんなやつらだ。 馬鹿にされようが馬鹿にし返し、殴られようが蹴られようが、最後は笑っている。 互いを本気で憎むことなどせず、全てを笑い事で済まし─── 同じ時を生き、同じ涙を流し、同じ命を生きてゆく。 ゼット『フゥッ!!』  ゾガギィンッ!! ───最初こそ鼻で笑ったものだ。 友情など必要ないと。 だが───俺にもあったのだ。 幼い頃、まだ人であった頃に。 夢を見て、ただ真っ直ぐに生きていた時代が。 しかし、だからといってあんな関係でありたいと願うわけではなかった。 そもそも笑い合う、ふざけ合うなどということが出来ないくらいに、 俺の意識は竜族側へと固まりすぎていた。 人としての感情など微量だ。 中井出博光を友として迎えたこと自体がそもそも奇跡だろう。 ゼット『オォオッ!!』  ゾブシャパガシャゾフィィンッ!! そう、ヤツは例外だった。 凡人でありながら、強くなりたいと願うその姿に自分を重ねた。 そんなことがなければ、俺がセシル以外を受け入れるなど在り得なかったのだ。 だがどうだ、友と呼び、多少の交流が出来てみればそいつはどこまでも人間で。 醜くもあり欲も深く───だが、何処までも純粋だった。 人なのだから醜いのは当たり前。 欲がない人間なんて居るわけがない。 一度の人生を味わいつくしいたから全力で生きている。 人であることを受け入れて、人だからこそ人として生きてゆく。 自分は楽しむために産まれたと断言し、 故に楽しむためならどんなことをも実行する、常識破壊の愚か者。 ……ヤツの周りには“遠慮”がなかった。 男だろうが女だろうが殴る時は殴り、罵倒する時は罵倒し尽くす。 しかし心の底から憎むことなどなく、 それが当然に至るまで自分というものをさらけだしていた。 そんな集団が、ヤツの周りには当然のように存在していた。 ああ───いつか、セシルが言っていたことがあったな。 男の友情は見ていて気持ちがいい、と。 友情などどれも同じだと思っていたが───どうやらそうではなかったらしい。 遠慮もなく、容赦もなく、怒りたい時に怒り笑いたい時に笑う。 そんなことが出来るのは晦悠介と弦月彰利だけだと思っていた。  ───だがどうだろう。 中井出博光という地界人は、人の身でありながら、 俺という存在の全てを知りながら、なお普通に接してくる。 かつて空界を支配していた黒竜王……そんな存在を前に臆さぬ筈がないというのにだ。 自分から切り出しておいてなんだが、 友になれと言った時のあいつは、俺が予想していた反応とはまるで逆の態度をとった。 困惑もなく驚愕さえも後回しにし、ただ一言叫んだのだ。 面白そうだ、是非なろう、と。 ……俺は友情というものを知らない。 憎しみの深さならば色濃く知っているが、そんなものは知らなかった。 だが、どんな存在からも畏怖の念しか送られなかった俺が、 いつしかあいつから送られる気安さを嬉しいと感じていた。 声  『……んー……なぁゼット?お前ってさ、がむしゃらだよな』 ゼット『ぬっ……!?なんだ!脈絡も無しに!』 放たれる細かな雷を鬱陶しく捌きながら、聞こえる小さな声に大きな声で返す。 丁度、相手のことを思考していたからだろうか。 やけに、聞こえた声が癪に障った。 声  『や、お前の生き方さ。邪魔者は力でゴシャーンって感じだろ?     それはそれで大いに結構なんだけどさ。たまには休んだりしないのか〜って。     楽しいことで笑ったりしてさ、オヴァーハハハハって』 ゼット『必要がないっ!これが俺の生き方だ!』 だが───それだけで声さえ荒げるほどに気分が躍動するものだろうか。 そんなことが、小さく疑問として思考の隅に引っかかった。 声  『ん、多分そうなんだと思う。さっきも言ったけど、それも大いに結構さ。     でもさ、その……なんつーのかな───っと、そうそう、あれだ。     どれだけ自分を強くしてもさ、過去だけは捨てるなよ』 ゼット『───!……なに?』 振るっていた腕が停止した。 攻撃本能に疑問が打ち勝ったのか───斧を振るう腕は、敵を前にして止まった。 ゼット『過去の弱い自分など捨てて当然だろう……なにを言い出す』 声  『んあー……やっぱそっか。そうだよな、お前ってそんな生き方してるって思うよ。     でもな、過去を要らないものって考えるヤツに、     今を全力で生きることは出来ねーよ。なんもかんも半端になると思う。     晦への対抗心も、みさおちゃんへの思いも。……もちろん、俺との友情も』 ゼット『───何が言いたい!《ギャリィンッ!》づっ……ハッキリと言え!』 自分でも理解出来るほど苛立っていた。 何事かと、セシルやシュバルドライン、ゼノが俺を見るほどだ。 だがそれでも、守護竜の攻撃を弾いたくせに反撃さえしないほど、 気になって仕方が無かった。 頭の隅にあるうずきが、大きくなってゆくのを感じるからなのかもしれない。 声  『弱かったお前にも、弱いなりに硬く誓ってた夢とかがあった筈だろ。     みさおちゃん───セシルを守りたいって思ったとか、     一人前の剣士になりたかったとか、そんなことでもいい。     なにか一つでも強く思ってたことがあった筈だ。     でも、そんな夢も希望も、一度絶望を味わったからって全部捨てちまうヤツに、     今をときめく資格はありゃしねー。多分』 ゼット『───なんだと!?貴様、俺が味わった苦しみを知らぬわけでは───』 声  『うん僕知ってる。知ってるからこそ言ってるんだって。     ヘンな理屈だけどさ、いっぱい苦労していっぱい涙していっぱい絶望したやつは、     絶対に幸せになれないとなぁ〜んかウソだって思うわけだよ。     それが敵だろうがなんだろうが、俺はそう思う。     あ、もちろん大嫌いなやつがどうなろーが知ったこっちゃないけど』 声  『クズが!』 声  『うるさいよもう!!今ゼットと話してるんだから黙っててよ!     あー……コホン。……誰もが幸せになるだなんてこと、もちろん無理だ。     過去のことでトラウマを持ってるやつだって当然居るさ。楽しさばっかじゃない。     彰利とか晦とか、多分ゼット、お前も、そういうのを持ってると思う』 ゼット『………』 構えていた腕が、いつの間にか下りていた。 振り上げてくれようと思ったが───どういうわけか上がってくれない。 ……戦いになどならない。 そう判断した俺はこの場をシュバルドラインとゼノ、 そしてセシルに任せ、後方へ下がった。 ───その事実に驚愕する。 俺が、……黒竜王である俺が、誰かに戦場を託し、下がるなど、と。 声  『でもさ、長い目で見れば……そう悪くなかったんじゃねーの?     そういう過去がなけりゃあお前はとっくに死んでてさ、     結局セシルだって人身御供で死んでた。     戦争はずっと続いただろうし、お前っていう竜族を召喚できなかった空界は、     巨人族の勝利で終わって、今のバランスは存在しないことになってた。     巨人族は人を嫌ってただろ?     そんなヤツが勝利した世界が平和だったなんて思えない』 ゼット『……、それは』 声  『お前が死んでたら晦っていうライバルにも会えなかったし、     みさおちゃんっていう転生体にも会えなかった。     晦にしたって彰利にしたって、     ああいう過去があったから支えあえるくらいの親友になれた。     ……辛い過去だったからって、全部が辛かったって決め付けるの、よくねぇよ。     弱い自分だったからこそ考えられたことだってあった筈だ』 ゼット『………』 苛立っていた。 なにかを叫びたい衝動、というのだろうか。 けど、どうしてかその叫びたい衝動の中に……中井出博光に対する罵倒は何一つなかった。 ……それで解ってしまった。 俺が、なにを叫びたいのか。 しかし俺はそれをしなかった。 認めるのはいい。 嘆くのもいいだろう。 過去を否定する気持ちも、いつの間にかなくなっていた。 だが……叫びを声にするのは、またいつかにしよう。 ゼット『……愚かだな』 声  『え?俺?』 ゼット『いや……ああいや、貴様も確かに愚かだが』 声  『うわーきっぱりだよこの人……ん?人?まあいいや、ひどい人だ』 ───かつて、守りたい人が居た。 一人前の剣士を目指し、なにもない村で枝を振るい、いつか強くなれる日を幻想した。 しかしその思いは幻想に終わり───俺は竜に成り下がり、 守りたかった者は俺自身の召喚とともに塵と化した。 あれが後悔でなくてなんだろう。 そう、ずっと悔やんできたというのに───その過程があるからこそ今がある。 セシルが居て、しがらみのないこの穏やかな世界が。 刺激を忘れない程度に存在する敵と、 畏怖を象徴するような俺に気兼ねなく話し掛ける常識外れの親友。 かつての時代よりも眩しい時代が、確かにあの過去の先にこそ存在していた。 ……だとしたら、今さらなにを悔やむことがあるのだろう。 欲しいものが全てここにあった。 あの日願ったものの全てがここに。 そう───あの過去があったからこそ。 声  『……よもやあなたが忘れることはあるまい。     この心楽しい川の岸辺に、二人がともに佇んだことを』 ゼット『なに……?』 声  『過去ってのはどうしても付いて回るもんだよな。     忘れたい過去だって当然あるよ。     でも、完全に忘れることなんてそれこそ無理だぜ。     そんでも、心楽しい景色ってのはちゃんとあったと思うんだ。     ……過去を忘れるってのは、そんな楽しいことさえ忘れるってこったろ?』 ゼット『む……それは───』 声  『辛いことはそりゃああるよ。嫌なことってのはほんと、記憶から消えないしさ。     でもま、こんな言葉がある。     “……それが何だと言うのだ。かつてあんなにも煌いていたものが、     今や私の目の前から永久に消え去ったからと言って───     草原の輝きと、花々の誇らしさ。そんな日々は帰ってきはしない。     だが、私たちは悲しむまい。残されたものの中にこそ、     幼い日の思い出の中にこそ……見い出すのだ。───力を”』 ゼット『力……?無力だった自分に、どうして力を見い出すことが出来る』 声  『まあま、難しく考えることないって。     ……なにであったか忘れたけどさ。なんかの本だっけ?ドラマだっけか。     まあいいや、とにかく、そういう言葉があるわけよ。     過去にあった煌きは、どうやっても俺達自身が取り戻すことなんて出来ない。     過去に戻ったって、そこには別の自分が居るだけだ。     あの時に見た草原の輝きも、空の蒼さも、     大地に生える花々の誇らしさも……全部その頃にだけ存在してたものだ。     記憶の中にはどうやったって手を伸ばせないし、過ぎ去った日々は戻らない。     でもさ、悲しむ必要なんてきっとない。悲しんだって構やしないけどさ。     その景色に残されたものの中にこそ、幼い日の思い出の中にこそ───     いつか夢に見た“力”ってのがある』 ゼット『………』 力……? セシルを、身を呈してでしか救うことが出来ず、 あまつさえ竜族に堕ち、守りたかった者を死なせてしまった俺の中に、力があったと……? 声  『お前はさ、みさおちゃん……セシルを守りたいって思ってるか?』 ゼット『当たり前だ。守りたいと思い、救いたいと思い、死なせてしまった相手だぞ。     かつて、ともに在りたいと思い───だが自分を召喚させたために塵となった。     転生した身を力を求めるあまりに食らい、融合までした。     かけた迷惑は計り知れないだろう……だが、だからこそ、俺は───』 声  『……ほれ、それで十分じゃん』 ゼット『なに……?なにがだ』 声  『お前の気持ち。お前はさ、ちゃんと過去を思って生きてるよ。     セシルが幼馴染じゃなかったら……過去のお前が好きな相手じゃなかったら、     きっとそこまでは想えなかった筈だ』 ゼット『好っ───!?き、貴様なにを───!!』 声  『……残された思いはお前の心の中にちゃんとある。     幼い日の思い出も、お前はちゃんと覚えてるじゃないか。     それらの中に、お前が力を付けたい理由もちゃんとあったんだ。     晦を打倒したいだけじゃない。セシルを守りたいって気持ちがちゃんとある。     お前の過去は、価値のないものなんかじゃない。だから胸張って前を見ろ。     お前はもう、無意識にだろうけど力を見い出してる。     それはきっと、お前にとってとても大切なものだろうからさ』 ゼット『ぬ……ぐ……!』 どうしたというのだろう。 反論を繰り出してやろうと思ったというのに、胸が熱くて言葉にならなかった。 ……かつて、自分にここまで言葉をぶつけてくれた者が居ただろうか。 ここまで真剣に思い、真剣に言葉をぶつけてきてくれたヤツが……居ただろうか。 そして俺はなにに心を打たれ、こんなにも震えているのだろう。 ……人の心など、とっくに無くしてしまったと思っていたのにドグシャア!! ゼット『ぐおはぁっ!!?』 声  『ギャオアァアーーーーッ!!』 なにかが俺に衝突し、その反動で回転しながら吹き飛んでいった。 ッ───チィ!不覚!!話に意識を奪われすぎた! まさか攻撃にさえ気づかぬと───…………は? アフロ「あーあー潰れちまったよォオ!!どーすんのコレお前の所為だよコレェエ!!」 ゼット『───……?貴様、何者だ』 意識をしっかり持ち、 キッと前を向けば……そこには見たこともないもじゃもじゃ頭があった。 そして、さらに─── 中井出「というわけでお待たせゼット。僕だよ」 土煙の奥からズチャリと姿を現したのは、つい今まで話をしていた男の姿。 ゼット『貴様、いつの間に……?』 中井出「話をして時間稼ぎをしつつ、このアフロに全力疾走を頼んだの」 アフロ「我ら皆、銀の大車輪の下に。それよりどーしてくれんのコレェ!     こんなリアカーメチャメチャにしちゃってさァアア!!     もう今年終わりだコレ!全部お前の所為だからなこれェエ!!」 ゼット『時間稼ぎ、だと……!?貴様、まさか───!』 中井出「うむ!わざと貴様に関係ある話を持ち出し、     守護竜をコロがさないように策を懲らしたのさ!!     フムフハハハハハハ!!見事に引っかかったなゼットよォオオ!!」 ゼット『ぬっ……貴様ァアアア!!』 中井出「でも、まあ。言った言葉は全部本音だ。     結果的にこうなっただけだから、そう気にすんなフレンド」 ゼット『なっ……ぐ、くっ……!貴様、何処まで本気だ……!』 中井出「俺はいつでも本気!何処までも本気!全力で本気だ!」 ゼット『………』 目の奥を覗くように凝視した。 すると中井出博光は目を逸らさず、不敵に笑んだままで俺の目を覗いてくる。 …………なるほど、何処までも本気の目だ。 こいつは嘘を言っていない。 中井出「グオッフォフォ……!ではこの手負いの守護竜をいただくとするか……!」 藍田 「竜との戦いにも慣れたもんだよな、提督。もう怖くないのか?」 中井出「もちろんさ!《ガタガタガタガタガタガタガタガタ》」 藍田 「サ、サー!物凄い速度で足が震えているであります!」 中井出「違うよ!これはあれだよ!ほら、アレ!     空気椅子のやりすぎで筋肉が大爆笑してるだけだよ!」 丘野 「ウソをつくにしてももっと格好いいウソはねーんでござるか!?」 中井出「遙か昔、子犬を助けるべく新幹線の前に飛び出した時に負った傷が癒えねー」 田辺 「や……それ死ぬだろ普通に」 中井出「どうしろっていうんだコノヤロー!」 岡田 「それ以前にそれってカッコイイとかそんなんじゃなくただのテリーマンだろ!」 中井出「そうだよテリーだよ!テリーの何処が悪いんだテリーカッコイイじゃん!     キッドにオーーーとか言われてたんだぞコノヤロー!!」 藤堂 「キッドは関係ねぇだろサーてめぇ!!」 清水 「いきなりなに言い出してんだサーてめぇ!!」 藍田 「キッドをエサにしてテリーを引き立てようって気かサーてめぇ!!」 丘野 「どこまでクズだ!サーてめぇ!!」 田辺 「一世キャラは二世キャラの引き立て役じゃねーんだぞサーてめぇ!!」 岡田 「くたばれこのクズサーてめぇ!!」 中井出「やめてェエ!サーてめぇはやめてェエエ!!     それだけは言われたことなかったから安心してたのに!」 岡田 「……なかったっけか」 中井出「え?いやそのー……そう改めて訊かれると」 総員 『クズが!!』 中井出「ここでクズは関係ないでしょ!?ないよね!?ねぇ!!」 来て早々に騒がしいヤツだった。 先ほどまでこの場に存在していた空気が微塵にも存在しない。 中井出「もういいよくそう!     こうなったら俺一人でも守護竜倒して素材全部奪って逃走してやる!     どうせ俺経験値もらえねーもん!だから素材だけでも」 藍田 「なんだとてめぇ!」 総員 『このクズが!!』 中井出「全員でクズ呼ばわりかよ!しかも最後まで言わせてもらえないなんて、     なんてヒド《ワガチャチャチャォオン!!》ほぎゃあああーーーーーっ!!」 岡田 「おわぁあーーーーっ!!て、提督が流れ雷撃に当てられてカルボーンにーーっ!」 藍田 「提督!?提督ーーーーっ!!」 ゼット『む……そうだったな。俺としたことが何処まで呆けた。     戦闘中であることを忘れるなど、愚かしい』 流れ弾が中井出博光に当たったことは些事として捨ておこう。 どうせあれくらいでは死にはしない。 すくなくとも俺よりもレベルが上だ、それを考えればシャアアキラキラ……♪ ゼット『な、なにぃいっ!?』 藤堂 「うわぁ一撃で死んだァーーーーッ!!」 田辺 「き、きっと殺る気満々のSTRマックス状態だったんだ!」 岡田 「なにやってんだ提督てめぇ!来てそうそう使えねぇやつだな!」 清水 「クズが!!」 ゼット『………』 改めて見てみれば、天へと昇る中井出博光の塵。 戦う気満々すぎて力のみにステータスを振り分けていたらしい。 いくら俺でも、全てを力のみに託すことなどしないというのに……。 ……つくづく、人の想像の上を行くヤツだ。 ゼット『……なるほどな、頭が痛いなこれは』 無意識に口から出た驚愕の声を思い出すと、そう思わずには居られなかった。
【Side───幕間】 豆村 「おっほっほぉ、ここが噂の、泉の妖精が出るって場所か」 刹那 「斧落とすと、あなたが落としたのは〜とか言って出てくるやつだろ?」 柾樹 「童話の眉唾じゃなかったんだな……いや、眉唾なんだろうけど、     まさかゲームで出すなんて」 満点の蒼空の下、俺と刹那と柾樹と郭鷺はとある地方の泉前に来ていた。 なんでもここにものを落とすと、落としたのは銀のソレとか金のアレとか言って、 あの伝説の妖精が出てくるらしいのだ。……ん?あれ?精霊だったっけ?……まあいいや。 豆村 「GO!」 ともあれ愛用の武器をレッツ投擲! 豪快にヴォシャーンと投げ捨てて、妖精の出現を待った。 すると───サァアアア……!! 豆村 「お、おおおおお!!出たァーーーッ!!」 刹那 「す、素晴らしい……!水に塗れた薄い衣服が悩ましい!!」 悠季美「最低ですね」 刹那 「ほっといてくれ!失恋した男の痛みはこうやって晴らしていくもんなんだよ!」 柾樹 「う……ごめん刹那」 刹那 「む……謝るのは無しだって言ったろ?相思相愛なら俺ゃ文句なんてない。     だから半裸に近い姿を愛でる男の悲しみを邪魔しないでくれ」 悠季美「最低ですね」 刹那 「改めてリピートするなよ!」 波ひとつたたない泉に、 ゆっくりと現れたのは綺麗な薄水色の長い髪をした綺麗なねーちゃんだった。 服装は……刹那が言う通り、薄い水色の衣服。 下着をつけていないのか、しっとりと塗れた服が悩ましボデーにフィットしてて…… と、年頃の純情ボーイにはちと目のやり場に困る。 あ、でもさすがはゲームというか。 そのー……先端とかは見えないみたいですよ?念のため。 泉の精霊『この剣を落としたのは───』 豆村  「はいはーい!俺!俺ー!正直者な俺ー!《バゴシャア!!》ブボルメ!!」 ───電光石火で殴られた。 豆村  「ほわががが……!なにすんねん……!」 泉の精霊『なにを考えているのですかあなたは!      人が眠っているところにこんな鋭いものを!      もし刺さっていたらどうするのですか!?      人の家に石を投げることよりもよほど最低の行為なのですよこれは!!』 豆村  「ヒィ!?ご、ごめんなさい……?」 ……あ、あれ?どうして俺謝ってるの? 銀の剣は?金の剣は? 刹那 「まあ……普通に考えりゃ、泉の精霊の住処に刃物投げたのに、     正直に答えたからって金銀の刃物が貰えるわけねぇよな……」 柾樹 「ゲームの中なのになんて現実的なんだ……」 悠季美「あの……柾樹さん?現実にこんな精霊居ませんよ……」 うん、俺もそう思……ってる場合じゃなくて。 豆村  「あ、あのー、それで俺の武器は……」 泉の精霊『割った窓ガラスが子供には弁償できないのと同じです!返しません!!』 豆村  「そげなぁーーーーーっ!!      ていうか俺今ファンタジーの精霊にすげぇ現実的に説教された!」 窓ガラスって!子供に弁償って! 俺、野球やって窓ガラス割った子供ですか!? 刹那  「じゃあな、ビーン……俺達もう行くわ……」 柾樹  「所詮童話だよなぁ……」 悠季美 「夢を壊された気分です……豆に」 豆村  「俺だって現在進行形で壊されてるんだって!あ、ちょ───待ってぇええ!!」 泉の精霊『お待ちなさい!      あなたのような無礼者にはきちんと言って聞かさないと解りません!      改心するまでは絶対に逃がしませんよ!』 豆村  「タスケテェエエーーーーーーーーッ!!!」 こうして俺は…… なまじっか日本昔話なんて知っていたために泉の精霊に捕まることとなった。 そしてその後、泉の精霊の説教は三日三晩続き…… 放心状態になった俺を改心したと誤解して解放された時には─── …………僕は童話が嫌いになっていました。 【Side───End】
ライン『ぬぅううおおおおおおおおおっ!!!』  グオバンッッガァアアアアッ!!! 藍田 『バズーカチャンネル!!』  シュゴバッゴォオオッ!! 田辺 『タイガーランページ!おぉおおおらららららぁああああああっ!!!!』  ドンガガガガガドッパァアンッ!! 清水 「お前ら速すぎ!こっち溜めるの大変なんだぞくそっ───螺旋斬!!」  ゾガァアフィフィフィフィドッガァアアンッ!! 岡田 「それを言うならこっちだってそうだっつの!覇王烈光斬!!」  ギャリィンッゾッパァアアンッ!! 丘野 「よく言うでござるよ!こっちなんてもう筋肉がガタガタで───ぬおぁああ!!」  シュボゾガァンッ!! 藤堂 「弱音なんて言ってる場合じゃないさ!上手く飛ばすさ!直火判!!」  ヂュドォッガァアンッ!! ゼノ 『集団攻撃は趣味ではないがな───そうも言ってられん!!ぬぅうぉおおっ!!』  ザガァッフィィンッ!!! ゼット『反撃を与える隙を与えず飛ばすか。悪くない遊びだ!』  ドゴンガァアアッ!! 中井出「うむ!一方的に攻撃出来るというのはやはり素晴らしい!!そぉい!!」  ズガァッシャアアアッ!! みさお「でもですね!なにかが道徳的に間違ってる気がするんですよ!?」 中井出「道徳なんざ捨ててしまえ!非常識さえあればいい!!」 みさお「どういう理屈ですかそれは!」 7人 『ザ・屁理屈!!』 ───現在、この場に居る11人で守護竜を囲み、 全力で吹き飛ばしながらのキャッチドラゴンとやらをやっている。 提案したのは早々に戻って来た中井出博光。 吹き飛ばせるだけの力があるんならやってみないかと言われ、現在に至る。 やり方は簡単だ。 ただ全力を以って、守護竜を殴り飛ばすか斬り飛ばすか蹴り飛ばすかすればいい。 シュバルドラインが殴り、藍田とやらが蹴り、田辺とやらが殴り、 清水とやらが斬り飛ばし、岡田とやらも斬り飛ばし、丘野とやらも斬り飛ばし、 藤堂とやらが叩き飛ばし、ゼノが裂き飛ばし、俺が斬り飛ばし、セシルが斬り飛ばす。 落下させてしまったら罰ゲームと言われており、その時の人間どもの竦み上がり様と、 中井出博光の邪悪な笑みを見た途端、俺の中で失敗は許されないという意志が産まれた。 故に今に至る。  ヂガァンガガガガガォオンッ!!! 藍田 「じょやぁあああーーーーーーっ!!!」 岡田 「うおお!?」 ───至るのだが、どうやら早速失敗を犯したらしい。 蹴り主体の執事服の男が、守護竜が放った怒りの雷撃の直撃を身に受けその場に倒れた。 どうやら罰ゲームはやつのものになるようだが───さて。 サンダードラゴン『グ、ググ……グオオオ……!!!          おのれ……人型風情がぁあああ……!!』 怒り心頭、それこそ体を雷に変えんとするこの竜をどうしてくれよう。 多勢に無勢もあり、大分弱ってはいるようだが─── 中井出「よっしゃあトドメいただきぃいいっ!!」 田辺 『なにぃ!?提督てめぇどうせ経験値入らねぇんだろうが!     だったらフィニッシュボーナスはこっちに回せてめぇ!!』 中井出「いやだ!どいつもこいつも人のそばで     ペペラペッペペーってレベルアップしやがって!     俺だってなぁ!俺だって───うぐっ……!     やっぱり貴様らなどにフィニッシュボーナスを渡してたまるか!     こいつは僕がコロがすんだい!」 ライン「後から来て随分と豪気を吐く!貴様らにそれを譲ると思うか!」 中井出「譲ってくださいこの通りです」 ライン「土下座!?」 ゼノ 『貴様にはプライドというものがないのか!!』 中井出「フフフ俺はやりたいことに関しちゃ容赦も遠慮もしないのだよ……!!     やっぱあの時俺が仕留めておけばよかったとか思うのちの貴様らを思えば、     ここでの土下座の一つや二つグオッフォフォ……!!」 ライン「こ、こいつ……!」 ゼノ 『クズだ……!!』 中井出「………」 シュバルドラインとゼノにクズと言われた中井出博光は、 正座したままの状態でとてつもなく悲しそうな顔をしていた。 岡田 「あ、いや……て、提督?ショックなのは解るけどさ……     今さ、ほら……落ち込んでる場合じゃないっつーか……」 丘野 「なんでござろう……     他の誰に言われてもここまでダメージはないんでござろうが……     気持ちが解るというか、     純粋に厳格な輩にクズと言われるとこうもヘコムでござるか……って提督殿!     いかんでござる!体育SUWARIはヤバイでござる!     ハタから見ても鬱加減マックスモーガンでござるよ!!」 中井出「ひ〜と〜り〜が〜大好きさ〜……ど〜せ死ぬ時ゃ……一人きり〜……」 田辺 『うあ……もうダメだ……。こうなったらもうどんな声も届かないだろ……。     というわけでトドメボーナスは俺が貰ったァアアア!!』 岡田 「なにぃ貴様そんなことこの素晴らしき6……あ、いや、5人が許すと思うてか!」 丘野 「さりげなく提督殿を度外視したでござるな……」 岡田 「や……一目で立ち直れないって解るだろ……」 清水 「いいやここは俺が!」 丘野 「なんの拙者が!」 藍田 「いやいや順番は守ってもらわんと」 藤堂 「いつ復活したんだよお前!」 藍田 「みさおちゃんに月生力でパパァと」 さて……御託に付き合っていたらそれこそ長引くだけだ。 守護竜も既に雷竜化していて厄介だが、なんとか出来ないこともあるまい。 シュバルドラインが地属性攻撃でかかるか、 セシルが月然力・地で攻撃すればどうとでもなる筈だ。 弱点属性を仕掛ければ実体も現すだろう。 が─── 岡田 「大体てめぇらがクズとか言うから!」 ライン「クズをクズと言ってなにが悪い」 総員 『ちっとも悪くない!』 ゼノ 『……我が言うのもなんだが、少しはかばったらどうだ。仲間だろう』 岡田 「失礼な!仲間だからこそ遠慮なしにかかってんだ!」 丘野 「なにより彼は我らが提督!     他の者に対してより心を込めて全力でぶつかるのが当然!」 みさお「あの、あーの……それはちょっとどうかと……」 ……二人とも会話に捕まり、意見を出しては騒ぎ立てていた。 そんな中で、 ゼット『───?』 中井出「《ゴゾォ……》URYYEEE……!!」 ニヤリと邪悪な笑みを浮かべた中井出博光が、騒ぐ人垣から出てくるや俺を見て頷いた。 ……なるほど、ようするに始めから他人に手柄を譲る気など無かったというわけか。 そしてその目が言っていた。 他の誰じゃなく、お前がやれ、と。 ゼット(いいだろう、その邪悪さに乗ってやる) 頷き返し、ドラグネイルをギリッと握り締める。 溢れる力は果てしなく、握り締めれば握り締めるほど湧き上がってくる。 それを確認するや中井出博光は疾駆し、 雷と化しているサンダードラゴンの懐へと潜り込んだ。 藍田 「ン───お?なにぃ!?」 疾駆の音に気づいたのか、他のやつらが意識をこちらに戻すが───もう遅い。 中井出博光は即座に指に嵌めた指輪になにかしらの力を流し込むと、 何処から取り出したのか、透明の刃を持つ武器を出現。 指輪から解放した力をその刃に流し込み、下から掬い上げるように雷を斬り裂いた。  ゴヴァァッキィイインッ!! 雷竜 『グギャァアォオオオンッ!!』 するとどうだ、当たる筈もない攻撃が当たり、雷状態は簡単に霧散。 元の姿に戻ったサンダードラゴンは勢いのままに中空に飛ばされ、もがいていた。 中井出「疲れるけどいきましょう!受け止れ!何も解ってない貴様への手向けの花!」 ガッ!ガシャンッ!キィンッ!! 言うや、持っていた土色に変色した透明の武器を腰に存在した剣に重ね、跳躍。 守護竜を追う姿は腰に差した剣を左手で抜き取ると、右手に持ち替え─── 中井出「大切じゃないものなんか───無い!!」 なにを指してのことかは解らない。 だが叫び、巨大な長大剣を右手で二回回転させると、背中に背負うように構える。 中井出「マグニファイ!!オールエジェクトギミック───発動ォオオオオッ!!」 次いで叫び、振るわれた長大剣が光を放ち、 そこから───呆れるほどの無数の武器が飛礫が如く発射される!! 飛翔する先には当然、守護竜の姿が存在している。 だが、ただ武器を発射するだけではなく、すぐ近くに浮いていた刃を手に取ると、 村人の服のような装備になにかしら呼びかけるとなんと飛翼を出現させ、 中井出「いくぜ風切りの刃!武器の強さってのを───見せ付けてやるぞ!     器詠の理力、全力解放!!男じゃわしゃぁああああっ!!」 手に取った刃から風を吹き荒ばせつつ飛翼をはためかせ、 真っ直ぐに守護竜へ向けて飛んでいった。 中井出「───」 ゼット『ぬ……』 だがその目が一時だけ俺を見下ろした。 ……なるほど、来いというわけか───面白い! ゼット『分と掛からず終わらせる。貴様らはそこで黙っていろ』 丘野 「なんとな!?」 騒ぐ者たちに一応の釘を刺し、すぐに飛翼をはためかせて飛翔。 全力で空へ飛び、既に始まっている幾重もの剣舞に心を震わせた。  ゾガッフィゾガッフィゾガッフィィンッ!!  ゾガッフィゾガッフィゾガッフィゾガッフィゾガッフィィンッ!! サンダードラゴン『グ、ガッ……!なんだこれは!          武器がまるで意志を持っているように……!?』 それはまさに剣舞だった。 剣が虚空を舞い、中井出博光が飛翔し撃を連ねるごとに、武器までもが勝手に動き、 サンダードラゴンへ攻撃を連ねてゆく。 だがその武器の数が、撃を連ねるごとに減ってゆき、 代わりに中井出博光が振るう武器が元の巨大さに近づいてゆく。 つまり……武器と己とが交差する際、手に持つ武器と飛翔する武器とが融合している、と。 そう考えるべきか。 勝手に動いているように見えるアレは、 手に持った武器と次に融合させるべき武器とが引かれ合って飛翔していると。 ───なるほど、それを攻撃に利用するとはなかなか面白い。 サンダードラゴン『図に乗るな人間風情が!          このまま食らってばかりだと思うなぁあああっ!!』  ヴァヂヂッ……ヂガァアアアンッ!!! ───サンダードラゴンの身体に再び雷が宿る。 それも、さっきの比ではない。 眩しいくらいの雷がそこにあった。 恐らく、触れただけでも焼き焦げるほどの─── 中井出「来い“レオン”!!“閃速螺旋槍(フォアストール)”!!」  ヒュゴォッ!! サンダードラゴン『なに!?ザゴバシャアッ!!ガッ……グォオオオッ!!』 ゼット     『なに……!?』 ───触れれば焼き焦げるほどの雷だった。 だが、中井出博光が放った言葉を受け取ったかのように飛んだ槍は、 そんなことさえ関係無しに、ところどころに砕けたサンダードラゴンの鱗を穿ち、 肉を裂いて貫通し───中井出博光が構えていた武器に重なり、最後の融合を果たした。 サンダードラゴン『ば、かな……!何故……!?』 中井出     「人だ人だって馬鹿にするけどな!人には絆っていう、          ちっぽけだけどものすげぇ大切なもんがあるんだよ!          鉄だ木だ塊だなんて馬鹿にしようが、          武器にだって使ってたヤツの思いが、絆が宿ってる!!          てめぇにゃ永久に解らねぇよ!          人を見下すだけしか脳のない頭でっかちにはな!!───ゼット!」 ゼット     『───!……応!!』 サンダードラゴンを挟み、丁度向かい側に浮く俺に合図が飛んだ。 なにをすればいいか、などというつまらんことは訊かない。 何故ならヤツは俺と同じで直情馬鹿だ。 突っ切り、破壊することしか知らないほどのだ。 ならばやることなど───最初から決まっている!! 中井出     「おぉおおおりゃぁああああああっ!!」 ゼット     『オォオオオオオオオッ!!!』 サンダードラゴン『ぬ!?ぐ、ま、待てぇえええええっ!!』 中井出     「合体奥義!“究極の一閃(アルティメットライン)”!!」  ギゾガァアッフィィイインッ!!! サンダードラゴン『ガ……ア、……グッ……ガァアアアアッ!!!』 何も考えずに真っ直ぐ飛翔。 形振り構わず防御さえ脳から削除し、ただ敵を滅ぼすためだけに勢いをつけ─── そして繰り出した横薙の二つの一撃が重なり、交差し─── あまりに真っ直ぐなそれは、横から見ればあたかも一閃でしかないようにも見え。 それが故か……究極の一閃という名の意味が、俺にも理解出来た気がした。 そうして理解した頃にはサンダードラゴンは息絶え力尽き、地面へと落下していた。 中井出「ハァッ!!ざっとこんなもんっ!!《ドグシャア!》ゲファーーーリ!!」 そしてヤツも……能力の効果が切れたのか、 妙なポーズを決めながら落下し、地面に激突していた。 つくづくおかしな男だが…… 友と呼ぶことに呼ばれることに悪い気がしないのは何故だろうな。 やれやれ……どうやら俺の頭も存外にイカレてしまっているらしい。 困ったものだ……まったく。 Next Menu back