───冒険の書203/光の回廊へ───
【ケース522:中井出博光(再)/光のタワー(中途半端に和英だととても変)】 ……さて内部。 まず目に入ったのは…… “魔術師の指輪を持たぬもの、この先進むこと叶わぬ”という看板。 ちゃんと日本語で書いてあるとはおやさしい。 魔術師の指輪ってのは……ソーサラーリングだよな、うん。 中井出「んーと……最初はどうすりゃいいんだ?」 広い一階を見渡す。 が、階段らしきものがあるわけでもなく……あれ? 二階にはどうすればいけるのやら。 中井出「看板でも壊してみるか?……っと」 看板の後ろに石版を発見! “蝋燭全てに光を灯せ。さすれば道は開かれるであろう” ……と書いてある。 蝋燭?蝋燭って……ああ、あれか。 看板まで一直線、必要な幅の通路以外は水で占められている塔の一階。 その通路から離れた位置に、確かに燭台がぽつんとあった。 あれにつけろってことか……よし。 中井出「ファイヤファイアファイヤー!!」 ジュゴジュゴォン!ジュゴォンッ! マリュリュリュリィ〜〜ン♪《道が開けた!!》 離れた位置に存在する燭台に火をつける。 ソーサラーリングで飛ばした火はしっかりと三つの蝋燭に火を灯すと、 確かに次の階への通路……というかワープポイントのようなものが出現した。 中井出「了!次だ次!」 留まることなく二階へゴー! いやぁいいねぇこういうワープポイントみたいなの! こう、乗った途端にチュィイイインって一瞬にして移動するって素晴らしい!! そんな高揚を胸に、塔全体から見て中心の、 半径5メートル程度の輝く円へと足を踏み入れる。 するとヴオンッ……という音が鳴って……!!嗚呼!最強!! 中井出「こ、これから始まるんだ……!俺のワクワクドキドキ光の塔攻略が……!!」 ……もう攻略してるけどね。外壁から。 ともあれ、輪状の光が俺が歩み込んだことを確認すると、 俺を中心に狭まり、足元から上半身までをゆっくりと昇って……って遅ッ!! なにこの中途半端な転送装置!ファンタジーなのに!ゲームなのに! なんか一昔前のスキャナーの読み取りくらい遅いよこれ!!  ミヂッ……ミヂヂヂヂヂィイ……!! 中井出「遅っ……遅ぇええええっ!!ねぇちょ……もっとこう……ねぇ!!     早くならないの!?ねえl!───器詠の理力発動!!     ……これジークフリードよ。なにかいい策はないか?」 ジーク『───』 中井出「だんまりかー……グムムー」 新たに憶えた技や、固有秘奥義などの使い方は頭の中に勝手に浮かんでくる。 このことを憶えているだろうか。 それと同じく、武器の使用方法自体も頭の中に追加されて浮かんでくることがある。 ほとんどの場合はメールで届くんだが、 端折って伝えてくる場合などは大抵頭の中に直接情報が流れる。 そんなわけで、俺の頭の中に届いたものが人器と器詠の理力の関係についてなんだが。 この二つは切っても切れないというか切っちゃいけない関係らしい。 人器は戦いや成長とともにレベルアップしてゆくもので、 人器のスキルが上がれば器詠の理力の能力が上がるのだそうだ。 つまり……今はだんまりで声さえ聞こえない状態だとしても、 人器さえ上がれば声も聞こえるようになる、と。 さらにレベルが上がれば、 マグニファイで開く潜在能力とは別の能力も開けるかもしれないとか。 開ける武器は決まってるらしく、なんでもかんでも潜在解放が出来るわけじゃないらしい。 器詠ってのは武器の意志を詠むだけじゃなく、 力も解放するって意味が込められてるんだと。 武器を知り、武器の意志を受け取り、解放することがこの能力の究極らしいのだ。 でもまだ人器って1レベルなんだよね……気が遠くなる話だ。  ミヂ、ヂヂヂ…… 中井出「…………と、考え事にふけこんでみたんだが。     てんで転送されないのはどうしてなんだろうなぁ《ビキィ!》ぎああああ!!」 呆れた途端に強烈な頭痛! や、やべっ……器詠の理力発動させっぱなしだった……!! か、かかか解除!解除っ……! 中井出「いぃい〜〜っ……いてっ……いていてっ……ぐぅううう……!!」 涙目にすらなるほどの痛みがとてもズキズキ。 解除しても痛みが残るなんて、ほんとどうかしてる。 あーもう涙止まらないよ、どうしよう。 中井出「え……涙……?わたし……泣いてるの……?」 声  「な〜にやっとるんだお前は……」 中井出「お?」 聞こえた声にハッと顔をあげると、 今ここに来たのか、入り口前でこっちを見て呆れてる晦一等兵が。 中井出「いや、かなり痛くて涙が止まらなかったからさ、     涙が出てなけりゃ出来ないことをやってみようかと無駄にエコロジー。     涙の一滴さえ笑いに変えてみせましょう」 悠介 「………」 何も言わずとも、本当に無駄にエコロジーだ……とその目が言っていた。 その後ろからは穂岸らも歩いてきて───ビジュンッ!! ───……。 ……。 ───ィイイ……ィイン……!! 中井出「………あれ?」 …………ワッツ!? あれ!?晦は!?ここ何処!?アレェ!? 中井出「……転移した?」 今さら? 中井出「…………何処まで遅けりゃ気が済むんだよ!や、つーか今さらだけど、     ソーサラーリング持ってる俺がここに居て、晦とかって転移出来るのか!?」 ど、どうする俺!やばいぞ俺! えーとえーとこういう時は手の平に阿修羅と書いて……飲み込む!!シャッキィーーン!! 中井出「テルだ!tell───晦悠介!」 ナルルルル……ブツッ! 声  『───提督か?今何処居る?』 中井出「ううんわたしリカちゃん。     今ヘマやらかしてストーキング罪でブタ箱にブチ込まれてるから、     あなたの後ろにはいけないの」 声  『いやに現実的なリカちゃんだな……あー、それはいいからっささと答えろ』 中井出「……あのー、毎度思うんだけどさ。俺ってほんとに提督って思われてるんカナ」 声  『なに言ってんだ、お前が提督じゃなかったならなんだってんだ』 中井出「とりあえずエロマニアではないです。話の流れからして」 声  『………』 中井出「あれ?あれちょっ……なんで黙るの!?     今ちょっとだけ舌打ちっぽいの聞こえたんだけど───ねぇ!!     無視しないでよ!ねぇ!!」 声  『ところで提督がそっちに飛んだ途端、ワープポイントが消えたんだが』 中井出「あっさり流しおったわ!!まあいいけど」 しかし恐れていたことが起きてしまったようだ。 まさか俺が飛んだ所為で、他の方々が転移できないなんて……! ああ……なんて……なんて……なんて面白いんだ……!! 中井出「それじゃあそういうことで」 声  『へ?いやおいっ!戻ってくるだろ!?来るよな!!おいぃっ!!』 中井出「断る」 声  『うおおにべもなく断りやがったこのクズが!!     お前アレだな!?屠竜の秘術を奪い去る気だな!?』 中井出「エ?この先にあるのって屠竜の秘術なの?」 声  『……へ?言ってなかったか?───あ、いや!待て!ウソだからな今の!な!?』 中井出「あ、僕用事思い出したから切るね?     それじゃあね、また明日笑顔で会お〜ね〜♪グオッフォフォ……!!」 声  『そんなこと言われたあとに     そんな邪悪な笑みをこぼされて笑顔で会えるかたわけぇええーーーーっ!!』 ブツッ……ふう、これでよし。 ウフフ、いいこと聞いたね、うん。 この先に秘術があるのであれば、独り占めしない手は無しさ。 ……でもな、考えてみると晦ってホギーとスミーを連れてきてたんだよな。 それってつまり、屠竜の秘術ってのは魔術か式である可能性が高いってことだよな。 あ、いや、天界人だから法術か? どうあれ剣士向きじゃないかもしれないって予想を立てたわけだな。 それらを総合して考えるに、この先にある屠竜の秘術……それは。 中井出「十中八九、エクスカリバーだろうな……」 リヴァイア=ゼロ=フォルグリムが使っていた眩い極光を思い出す。 あれは……なんというか凄かった。 魔法とか魔術って“出来たらいいな〜”とか“かっこいいかも”とかは思うもんだが…… 純粋に“凄い”とか思ったのはあれくらいだ。 中井出「エクスカリバーかぁ……俺が使えないのはまあ当然として」 石版とか魔術書だったらそれを持ち帰って、法外な金額で売りさばこう。 ……もっとも、こういう場所だ。 魔法書以外にも武器とかあるとは思うけど。 そうと決まれば善……否!悪は急げ! 善ばっかり急ぐなんて汚いだろ!悪だって急ぎたいんだよ! ベンジョンソンの限界速度くらいで急ぎたいんだよ! 限界迎えて便所に走るジョンソンさんくらい急ぎたいんだよ!! 中井出「というわけでGO!!」 既に頭痛も治まった! ならば冒険!レッツファンタジックラァーーイフ!! 【ケース523:イセリア=ゼロ=フォルフィックス/トラッピングバトラーズ】 イセリア「うーわー……提督クンったら物凄い速さで光の塔攻略していってる……。      どう思う?光の塔製作者のウィルオウィスプくん」 ウィル 『なんということ……!      本来ならばマスターにじっくりと紐解いてもらう筈の塔が……!      こんな……こんなっ……こぉおんなっ……!      少しばかりゲームが得意というだけの男にっ……!!』 少しどころじゃなく、相当みたいだけどね。 や、ほんと凄いよこのコ。 ドリアード『呪われても弱体化しても挫けないところなんて、ふふっ、カワイイですよ』 ネレイド 『イジワルしてもすぐ立ち直るタフさも見上げたものです』 オレアード『でも突付くとすぐ泣いたり叫んだりするところは、まるで子供ですね』 ナパイア 『時間だけが過ぎて、子供のまま大人になったみたいな感じ』 アルセイド『……ニーヴィレイのこと、大事にしてくれてる。このコ、いいコ』 ナイアード『堅苦しいままの存在で終わらせる筈のニーヴィレイがこれですもの。       二言目にはヒロミツヒロミツって。       もうわたしたちが立てた設定なんてどこ吹く風です』 イセリア 「ニンフたちはこのコのこと、お気に入り?」 ニンフ  『うふふふふ……さあ、どうでしょう』 イセリア 「………」 面白いものを見る目のまま微笑まれてしまった。 ……提督クンは苦労しそうだね。 ノート『…………ふむ。やはり無駄だな』 と、そんな一方で我らがスピリットオブノートは難しい顔で溜め息を。 イセリア「どうしたの?溜め息なんて珍しい」 ノート 『先ほども言っただろう。中井出博光の未来についてを覗いていた』 イセリア「ああ……みんな揃ってる中で提督くんが居なかったってあれ?      それがどうしたの?新しいなにかでも見れた?」 ノート 『少々無理をして先を無理矢理覗いてみたんだがな。      やはり……ただその場に居なかったわけではない。      中井出の身体はここに置き去りにされ、その中には魂が無かった。つまり……』 イセリア「……死んじゃったってこと?      しかも魂がなかったってことは……ゲームの中で?」 ノート 『もしくは身体に戻ったのちに殺され、ここに安置された、という可能性もある』 イセリア「……どちらにしても魂がないまま置き去りにされてるのは間違いがないの?」 ノート 『そうらしい。      ……まったく、先のことを見てここまで嫌な気分になるのは久しいぞ』 また溜め息だ。 かくいうわたしも溜め息は吐いていた。 ───提督クンが死ぬ。 それはいったいどういう状況の果てになんだろう。 そしてそれは、頑張っても破壊出来ない……運命ってやつなんだろうか。 だとするなら……うん、わたしはヤだな。 提督クン、地界人にしとくにはもったいないくらい面白いコだし。 や、地界人だからこそいいのか。 遊び甲斐があるっていうか、からかい甲斐があるっていうか。 こーゆーゲーム世界って妙に悟っちゃうコとか多そうなのに対して、 原中連中は本当に純粋に楽しんでくれてるし、 その中でも提督クンは武器にこれでもかってくらいのめりこんでくれてる。 作り甲斐があるってものじゃないか。 そーいう純粋なコが死ぬって……はぁ、鬱だ。 イセリア「提督クンをゲーム参加禁止にするのは?」 ノート 『そうしての未来も見てみたが……駄目だな。      そうすると地界が無事では済まない』 イセリア「……え?なにそれ。      提督クンゲームの中で死ぬのに、どうして地界に影響が出るの?」 ノート 『それが解らん。……溜め息も出るというものだ』 イセリア「………」 再び漏れる溜め息に、わたしも釣られるように溜め息を吐く。 いったいこの世界での未来はどうなって……あれ? イセリア「……ねぇ。それってさ、ああ、それっていうのは今の未来の話の前のことで。      魂無い状態で置き去りってやつのことね?      ……それってさ、もしかして提督クンだけゲーム世界でやることが残ってて、      だから転がってるだけなんじゃないかな」 ノート 『……いいや、それは否だ。その時には既に今あるゲームの世界は崩壊している。      魂がそこに残っていた時点で、ゲームの中の世界ごと消滅している』 イセリア「あ……そ、そうなんだ……そっか……」 じゃあ、もう確定だ。 提督クンは……このままじゃ絶対に死んでしまう。 助ける方法はあるのかもしれないのに、 それを調べるための未来視が黒の精霊たちによって妨害されている。 つまり……彼らは嫌な未来を知りながらもなにも出来ないわたしたちを嘲笑っている。 なんていやな状況だろう。 普通ならただ楽しんで終わるだけだった筈のものが、どうしてこんなことに……。 イセリア「……ねぇ、やっぱり提督クンには教えるべきだと思うの。      自分がどれだけ危機的状況にあるか」 ノート 『言ったところでどうなる』 イセリア「うん、それは───あー……死期が近いからこそ全力で遊ぶとか言いそう……」 ノート 『そういうことだ。どのみち止まらん。      遊びを邪魔するのであれば、勝てぬと解っていても襲い掛かってくるぞ』 イセリア「空界の精霊王の異名さえ持つスピリットオブノートに襲い掛かる地界人ね……      ほんと前代未聞な上に動機があまりに子供っぽい……」 ノート 『だからこそ観察していて面白いのだがな。      私とてこのままこの男を死なせるつもりはない。      もはや我々の中では希少種でもある地界人だからな』 イセリア「地界人なら外にゴロゴロ居るけど……      確かに性格上から考えれば稀少中の稀少ね」 最初はただ楽しむためだけだった。 けど、やっているうちにどんどん凝りはじめてきたゲーム製作。 でもみんな積極的に動くことはあんまりなく─── けど、提督クンだけは本当に無鉄砲に動き回ってくれた。 お蔭で張り合うみたいに楽しんで製作することが出来たし、 何処をどうすれば盛り上げられるのかも解ってきた。 なんだかんだでわたしたちも彼に十分楽しませてもらっているのだ。 そんな彼を死なせてしまうのは、正直気分が悪い。 さて……この場合、わたしの正否はどちらに傾くのだろう。 自分がまだまだ楽しみたいために助けるのか、彼のために助けるのか。 イセリア「……自分のためね。それ以外想像つかないもの」 実に素直に答えが出た。 まあ、こんなところでウソを言ったって仕方ない。 同じことを精霊たちにも訊いてみたけど、全員が全員自分のためと答えていた。 約二名、マスターのためとかほざいてた精霊が居たけれど。 イセリア「驚いた。みんな悠ちゃんのためとか言うと思ってたのに」 ノート 『精霊とはマスターとともに成長するものだ。      つまり、マスターが誰かのために強くあろうとするならば誰かのため、      己のために強くあろうとするのならば己のために強くあろうとする。      ようするにだ。今の我々の在り方はマスターの在り方からくるものだ。      今のマスターがそれだけ己のために力をつけている、なによりの証拠だ』 イセリア「へえ……じゃあ悠ちゃんに訊いても同じ答えが返ってくるってこと?」 ノート 『その通りだな。まあ甘いマスターのことだ、      生死に関わる土壇場でそういった場面に出くわしたら、      自分より相手を取る可能性もあるが』 ……うん、軽くでイメージできた。 というより相手より自分を取る悠ちゃんを、実のところ上手くイメージできなかった。 イセリア「……ま、いいかな。      危機が迫る前から見えない未来のことをあーだこーだ言ってても始まらないし。      そもそもどうすれば防げるかも解らないのに騒いでてもしょうがないわ」 全ては夏の終わりに。 その日が来るまで、せいぜいこの束の間の平穏を楽しもう。 わたしに出来ることなんて、 ゲームの世界に居るコたちに魔法を教えてあげることくらいだ。 それでも出来ることがあるだけマシなんだろう。 イセリア「でも、考えたものよね。ゲームの中で人を成長させるなんて。      これなら修行って考えて嫌がるコも居ないし、      楽しみながら自分が強くなったって実感を持てる」 ノート 『最初は真実、遊びだったのだがな。事情が変わった。      我らだけでは対処しきれん未来だ。故に、その他の力が必要だった』 イセリア「その他ね……」 ノート 『だがな、さて……。      力をつける者も居れば、調合やミッションばかりに手を出す者も居る。      危機感があるのかないのか。      自由にしろとは言ったが、こうも緊張感が無くてはな』 まあ、そうじゃなければ提督クンが精霊たちに好まれる理由はなかったんだけど。 本当に、行き当たりばったりで、行けない場所も破壊して行っちゃうようなコだから、 どこをどう固めようかとか大変だった。 最初の頃はもう、そういったものを破壊されないように立ち回るのが大変だった。 この扉はアイテムが無ければ開かないように……って設定したら、 扉じゃなく壁破壊しちゃうし。 ほんとどこまでも常識破壊が好きなコだ。 イセリア「やっぱり惜しいなぁ……なんとかならない?」 ノート 『こればっかりは知らんとしか言ようがないな。したかろうが、しようがない。      ルドラを始末出来れば、それが一番なのだがな。      どの道今出来ることは何もない。      あるとするならば力をつけ、それこそルドラどもを始末することのみだ』 イセリア「今の状態じゃやっぱり無理?」 ノート 『ふむ……やはりマスターの伸びがまだまだだ。      ゼットが居ることはかなりのプラスだが、まだ足りん』 ……うん、それは確かにって思う。 わたしにしたって、今やゲーム内に居る人達に勝てる可能性すら危うい。 エクスカリバーが無ければ相当難しいだろう。 だからあのコたちには頑張ってもらいたいと……そう思うんだ。 イセリア「本当、思い通りにはいかないものよね……って」 虚空に映し出された無数の画面の、その一角を見て唖然。 その中で蠢く提督クンが、ダメージ床を完全無視して蝋燭に火をつけていた。 触れればダメージを受ける床……それなのに、 地面を破壊してその瓦礫をダメージ床に敷き詰めて接近、着火。 それが終わるとさっさと次の階に進んで─── ああ、ここはかなり自信がある。 わたしとウィルオウィスプとで難し〜く作った場所だ。 ワープしたすぐそこは四方全てが崖っぷちで、蝋燭は空中を移動する床に備え付けてある。 だから床を破壊して梯子にするとかいうズルは出来なジュゴォン!! イセリア&ウィル『ホワァアーーーーーッ!!?』 ……メチャクチャだった。 提督クンはバックパックからグミの包装紙をいくつも取り出すと、 それを握り固めてからソーサラーリングで着火。 大きく振り被ると、空飛ぶ蝋燭目掛けて投擲し、無理矢理着火して次の階に……。 ウィル 『こっ、こここっ……こっ……この男はどこまで人を侮辱すればっ……!!』 イセリア「いや〜〜〜…………なんかもう逆に清々しいかも……」 ここの正攻法は、実は見えない床があったりしたのだ。 そこを辿って近くまで行って着火。 それが正しいやり方だったっていうのに…… 人が考えた謎解きをなんだと思ってるんだろう。 で、でもでも次の回も難しく作ってあるから大丈夫! また崖っぷちで、だけど後方には壁! 壁の裏側に蝋燭があるって階! そして天井も低くて、壁も天井も破壊出来ないシロモノ! やっぱりここも見えない道があるんだけど、さあどうするかなぁ! ……あ、やっぱり最初は壁に攻撃して……天井も攻撃……うっふっふ、無駄無駄。 さあ、ちゃんと見えない道を探してってちょっとぉおおおっ!!! イセリア「うあああああ甘く見てたぁあっ!!完全に甘く見てたぁあっ!!」 ノート 『……なるほど、こういう強引さもありか』 壁は床下より下部には存在してない。 だから見えない道を通って、壁の下をくぐるようにして反対側に行くんだけど…… なんと提督クン、床の下の崖に指を減り込ませながら壁の下をくぐって、 強引に反対側に行っちゃった……! どんなロッククライマーなのさキミ……!! そんなわけでこの階もクリアー。 い、いやいやいやいや次の階こそ! 次の階はまたまた崖っぷちで見えない通路……というか階段! 蝋燭はかなり高いところにあって、 さっきみたいにゴミを燃やして投げる程度じゃ届かない! ここは見えない階段を登って、接近してから火を灯すしかない筈ってキャーーーッ!!? イセリア「……あぁ……馬鹿……わたしの馬鹿……」 なんのことはない……提督クンは純粋にSTRをマックスにして、 思い切り跳躍したのちに武器を解除。 風切りの刃で突風を吹かせて、さっさと蝋燭のもとへと辿り着いてしまった。 ……どうしよう……このコメチャクチャだ……。 正攻法じゃなくて、無理矢理にでも意外性を貫いて解きたいみたいで……。 そ、そうだ、今からでも次の階の改変を───あわぁっ! 慌てすぎた所為で妙なところでミスが─── あぁああああ〜〜〜っ……壁破壊されて火ぃつけられちゃった……! イセリア「うがぁあーーーーーっ!もーーーーっ!      どーしてこのコはまず最初に壁を壊すことから始めるのよぉっ!!」 ノート 『正攻法ではつまらんからだろう』 イセリア「わかった!もーーーぉ解った!      こうなったら次の部屋を正攻法以外では攻略出来ないようにして───      あぁああああああっ!!!なんでそんなこと思いつくのぉおおおっ!?」 あっさり攻略の裏を取られた。 つ、次!これを教訓に次を───うああ!考えてるうちに攻略された!───次! あぁああ───次!つ、次!つ……次……つ……うぅううう…… イセリア「だめ……だめぇえ……ゲームでこのコに勝てる気しない……もうやだぁ……」 終いには泣けてきた。 ノート 『やれやれだな。オリジン、代わってやったらどうだ』 オリジン『簡単に言われるほど暇ではない。……が、息抜きにはいいかもしれぬ。      どれ、ちょいと遊んでやるとしようか』 ニヤリと笑い、狭界の精霊王はついにその牙を剥いたのだった───!! ───……。 ……。 オリジン『ぬっ!ぐっ……馬鹿な!こんな穴が!?次だ!次!』 イセリア「ねぇオリジン、次わたしの番なんだけど」 オリジン『黙れ!───くそ!何故この男はこう正攻法を嫌うのだ!!      やさしい問題を出してやったところで、必ず妙な解き方をする!      これは挑戦か!この狭界の精霊が王たる私に対する挑戦かぁああっ!!』 開始3分でキレた。 気持ちは解る。痛いほど解る。 オリジン『次……ククク、これならばどうだ……?燭台の周りを超圧縮テクタイトで固め、      攻撃もソーサラーリングの炎も通らなくした……!      クリア出来るか!?出来まい!ふわぁーーーははははは!!』 イセリア「うわぁ大人気ない……」 ノート 『ついさっきまで同じようなことをしていた汝が言うか……』 イセリア「いやぁ〜……やってみれば解るけどね、      提督クンとゲームで遊ぶともうほんとに熱くなるよ?コノヤローって感じで。      意地でも打ち負かしたくなるっていうか」 ドガシャバッゴォオオオオンッ!! オリジン『なんだとぉおおおっ!?超圧縮テクタイトの防御壁が……!!      そ、そうか!徹しか!ぬかった!徹しの存在を忘れていた!ならばぁああ!!』 せっかく作った硬質壁をあっさり徹しパンチで破壊され、 絶叫する狭界の精霊王がここに居た。 オリジン『これならど《ごしゃーん!》なにぃ!?次《ごしゃーん!》なにぃいっ!!?      おぉおおおおのれおのれ!ならばこうだ《ごしゃーん!》ぐ、ぐおおおお!!      何故この男はこうも常識外れなことをするのだ!      真面目に解いて楽しむという進み方を知らんのか!!』 明らかにそっち側は度外視されてるんだと思う。 なにせ提督クンだし。 イセリア「提督クンとの戦いって見てる分には面白いんだ……。      真っ先にやってた自分がちょっと悲しい」 ノート 『ふむ?……時にイセリアよ。      その呼び方はなんだ?以前はヒロミチと読んでいたように記憶するが』 イセリア「や、ほら。提督クンさ、      みさおちゃんに中井出さんって呼ばれるの照れくさいって言ってたでしょ?      だから提督クンって呼び方にしてみようかなって」 ノート 『……またすぐにでも変えそうな気がするがな』 イセリア「その日その時の気分って大事だと思うんだよね、わたし」 オリジン『ぐおおおおおおおお!!』 平凡な話をしてる間も、オリジンの連敗記録は伸びていた。 いい加減諦めればいいのに。 と、ここでスピちゃんがクスリと笑って一歩を踏み出した。 ノート 『……やれやれ、見ていられないな。どいてみるといい、私がやってみよう』 イセリア「オチが読めたわ」 オリジン『ああ私もだ』 ノート 『のたまっていろ』 ついに挑むは空界の精霊王! さあ、結果は如何に───!? ───……。 ……。 ドゴォンッ!!……シュボッ!テュララリリ〜〜ン♪ ノート 『ぬぐっ!?馬鹿な!これはなにかの間違いっ……!!』 イセリア「やれやれ見ていられないな。どいてみるといい」 ノート 『う、五月蝿い!まだだ!今のは何かの間違いだ!!』 オリジン『のたまっていろ』 ノート 『五月蝿いと言っている!!くそ、馬鹿な……!こんな筈では……!』 世界の精霊が頑張ります! 他の場所の管理なんて完全無視です! お蔭で───あ、暴走した飛竜が適当に吐いた火球が宿から出てきた永田くんに直撃した。 イセリア「ちょっとちょっと!ねぇ!竜族が本格的に暴れだしてるわよ!?      一日目はまだ村とかへの襲撃は無しにするんでしょー!?」 ノート 『捨て置け。私にとって、今が聖戦だ』 イセリア「うわ!あっさり見捨てたよこの人!」 ノート 『フ、フフフフ……!これでどうだ中井出博光……!      私が知恵を絞り完成させた129階の恐ろしさを知───ぐあああああ!!!』 そしてあっさり攻略された。 うん、もうだめだこの精霊。 悔しさで混乱してる。 負け知らずの人が負けるとこんな感じなんだろうね、うん。 イセリア「なんかスッピーが負け続けるの見てたらスッキリしちゃった。      わたし、管理に戻るね」 オリジン『私もだ。早々見れるものではない、いいものを見せてもらった』 それぞれがそれぞれの作業に戻った。 スッピーがやっていた作業はそれぞれが分担してやる方向で。 ……だって、熱くなりすぎてもう別人みたいにゲームに夢中になってるし。 ノート 『こんな馬鹿なことが……!おのれおのれおのれえええええっ!!!      ここまで私をコケにしたのは貴様が初めてだ中井出博光!!      いいだろう!私も全力を以って貴様を迷宮に押し込めてくれよう!!』 いつの間にかゲーム管理が戦いに変わってるし。 まあ、好きにやらせておきましょう。 提督クンだって、そうそう何度もノーちゃん相手には勝てないだろうし。 …………それにしても、今の暴走してるスピリットオブノートって、 スッピーって愛称もノーちゃんって愛称も全然似合わない形相してる。 まあいいか、仕事仕事。 ───……。 ……。 コーーーン…… ノート『間違いだ……なにかの……何かの間違い……』 全員 『勝っちゃったァアアーーーーーーーッ!!!』 なんだかんだでやっぱり気になってたみんながチラチラと見守る中─── 提督クンがとうとう光の塔を攻略した。 それ=スピリットオブノートの敗北、ということであり…… スピちゃんはそれはもう、 この世の不幸全てを背負ったみたいな絶望フェイスを俯かせて、項垂れていた。 シルフ『スピリットオブノートを一対一で打ち負かすとは……この男、化け物か……!?』 思考回路はきっとそうだと思う。 勝ったって言ってもゲームでだけど、 やっぱりね……頭脳戦でスピちゃんに勝つなんて相当なことだよ提督クン。 サラマンダー『地界人にしてはなかなかやる。少々興味が沸いたぞ』 中身は外道だけどね。 この場合、常識を外れた道を歩む男って意味での外道、かな。 ともあれ今のでさらに感心された提督クンが、映像の先の光の塔の頂上に居た。 楽しみだねー、これからここでどんな反応見せてくれるのか。 Next Menu back