───冒険の書205/VS光天龍───
【ケース525:中井出博光/光の龍】 広がる大空と、見渡す限りの雲。 遙かに高き塔の果てにて、俺は幻とも呼べる存在と邂逅を果たしていた。 ホーリードラゴン『コァアアルルルル……!!』 その名、ホーリードラゴン。 伝承によれば戒めの宝玉が出るより以前から塔の果てに存在し、 他の竜とは違い、龍という文字が一番似合う竜族。 光輝く姿は白と薄い黄色を幾度もゆっくりと点滅させるような瞬きを見せ、 見ているだけで恐怖……そして目に見る感動を与えた。 ……伝承については晦とホギーからの受け売りだったが、なるほど。 これは確かに幻とか言われるわけだ。 体つきが他の守護竜とはまるで違う。 竜ではなく龍。 日本に広く伝わる龍族の姿が目の前にあった。 思えば日本で知られる龍は翼などなく、巨大な蛇のようなものが浮遊しているイメージだ。 ファンタジーや神話などで知られる竜族とは似ても似つかない。 ホーリードラゴン『月の宝を奪いし者よ……今すぐそれらを安置し、この場から立ち去れ』 中井出     「ウヌ!?貴様、喋れるのか!?」 田辺      「え?喋ってるの?こいつ」 中井出     「あれ?」 ホーリードラゴン『我は汝に向かい言葉を発しているだけだ。          それを受け取れたということは、          汝は龍族の言葉が理解出来ると受け取っていいな?          では繰り返すぞ、宝を安置し、立ち去れ』 中井出     「……ん、ぐっ……」 物凄い威圧感。 口調は、これでもまだやさしいほうだと直感出来る。 やばいぞこれは……強さが四大元素の守護竜とはケタが違いそうだ……! 中井出「断る!」 でも宝は欲しいから断言してみせた。最強! ホーリードラゴン『ならば我が力の前に滅ぶがいい。          汝を行動不能にしたのち、ゆっくりと宝を返してもらうとしよう』 中井出     「なにぃ!?」 田辺      「え?なに?なんて言ってるの?ねぇ」 つーことは……こいつに負ければ、手に入れた武具やアイテムは全部お蔵入り……。 ここまで昇ってきた意味も無くなるってことか。 ───そうはいかぬ! 中井出「田辺二等よ……どうやらこいつは僕が手に入れた宝をずっと狙っていた龍らしい。     でもあの巨体だからあの部屋には入れなかった。     だから僕をコロがして宝を奪うつもりなんだ」 田辺 「なんと卑劣な!!それは許せませんな提督!!」 中井出(───本当に卑劣なのは俺だけどな!) まさに外道!! ともかく田辺二等をやる気にさせた俺はジークフリードを抜き取ると、 ホーリードラゴンを見て調べるを発動!  ピピンッ♪《───光天龍はとてつもない力を秘めている!計り知れない強さだ!》 中井出「ぬぁああにゃあぁああああああーーーーーーっ!!!?」 再びダイキョーフ!! いくらなんでもそりゃあんまりじゃ───!? そりゃ近くに居るだけで足震えたりしてるけど、ぬおお見るんじゃなかった激しく後悔! 田辺 「……、て、ててて提督ぅううううっ!!なんか足が震えて動けぇえーーーん!!」 中井出「そ、そそそそうかぁーーーっ!!実は俺もだぁあーーーーーっ!!」 やべぇ!こいつ本気でシャレにならん! 強さはカイザードラゴンに近いものがある! 下か同等か上か、それすら解らんが本気でヤバイのはよく解る! なにせ今までの守護竜とは違って、目が合っただけで動けやしない! 今までのやつらだったら恐怖はあったけど動けはした……なのにこれだよちくしょう! 田辺 「ちっくしょっ……妖力解放!ディイヤォオオゥアアアッ!!《ゴバァアン!!》』 田辺が燃え盛る火炎とともに妖魔化する! その姿は先ほどと同じ牙銀のものであり、 変身し、己の能力を引き上げることで震えを除去! すぐに動いて、俺の襟首を引っ掴むと高速で疾駆する! 中井出「どわぁああわわ田辺!?田辺ぇえええっ!!」 田辺 『シャレにならんぞあいつ!ここは戦うより逃げたほうがいいだろ!』 中井出「同感だがどうする気だ!?ここ滅茶苦茶高い場所にある虚空遺跡だぞ!?」 田辺 『どうするってそりゃ───レッツダイヴ!!』 中井出「な、なにぃいいいっ!!?バ、ばばばバッカモーーーーン!!!     やめろ!相手は空を泳ぐ龍で───アァーーーーーーッ!!」 バァーーーーッ!! 俺の制止の言葉も何処吹く風。 田辺は俺を掴んだまま遺跡の端から地上へ向けてダイヴ開始! 雲さえ遙か下にある場所からのダイヴは、 光の塔頂上から飛び降りるよりもさらなる落下感を俺に齎した! 声  『逃すか───!!』 そして当然、それを追ってくる声がひとつ。 確認するまでもなく虚空より舞い降りたそれは、光輝く龍だった───!! 田辺 『うおお速ェエーーーーッ!!』 中井出「だから言ったろうがバカモン!!     飛翼が無い分、あいつは自由自在に虚空移動が出来るのだ!     空中戦はこっちが不利になるだけだ!!」 田辺 『サーてめぇ!そういうことは先に言え!』 中井出「言ったよ!?僕言ったよ!?言ったよね!?ねぇ!!」 なんてことを言ってる間に、巨大な顔が俺の横に───!! 中井出「お、あ……うおぉわああああああああっ!!!」 完全に油断してた! 油断はしないって誓ってたのにあっさりだよ! 中井出「くそっ!キャオラァアアアッ!!」 ヒュバァッ───スカッ。 すかさず蹴りで攻撃!だがあっさりと、首を捻っただけで躱された。 中井出「くはっ……予想以上だぞオイ!空中じゃ分が悪すぎる!」 田辺 『世はまさに───大後悔時代!』 中井出「誰の所為だよこのクズが!!っ……このっ!」 剣を左手に持ち替えて、咄嗟に延ばした腕で……揺れる長い髭を引っ掴む!! ホーリードラゴン『なにっ!?』 中井出     「っ……せぇえいっ!!」 それを引き寄せるようにして自分を突っ込ませると、 ホーリードラゴンの鼻先に足を着いて、躊躇もせずに目へと斬撃を振るう! ホーリードラゴン『小賢しい!』 中井出     「《ブオッ───!》おぅわっ!?」 だがその斬撃さえいとも容易く躱され、俺は再び虚空へと振り落とされた。 が───掴んだ髭は離しません!! 中井出「田辺二等!」 田辺 『あいよぉ!』 田辺は牙銀モードだ。 空中を駆けることも出来れば、目の前の龍ほどではないにしろ、自由に動ける。……筈。 その期待通りと言うべきか、田辺は虚空を蹴ると俺の袂まで飛んで来た。 中井出&田辺『不死鳥合体ーーーーーっ!!グワァキィ!! そうしてから俺は髭を離し、田辺の背……つまりケンタウロスの背の部分に乗ると、 剣を双剣に変換、両手に持って改めてホーリードラゴンへと向き直った。 中井出「田辺二等……俺は嬉しいぞ。貴様がこうも人間をやめてくれるとは」 田辺 『や、正直普通に空中走れるとは思ってなかったけどな』 田辺から漏れる炎は味方に攻撃判定がないのか、俺の体を焼くこともない。 そんなことに安堵しながら双剣を強く握ると、 田辺とともにしっかりとホーリードラゴンを見据える。 さすがにまともに戦う余裕はない……田辺の背に乗ってからは、 自由落下をしながら対面する形になっている。 だが逃げ腰のままで逃げ切れるほど甘い相手じゃないっていうのも、見てりゃわかる。 呪いのお蔭で狂いし者に“逃走”を邪魔されることはなくなったが、 その逃走をずっと続けてたんじゃコロがされるだけだ。 中井出「すぅ……はぁあああ───んっ!」 心の芯に覚悟を突き刺す。 でも今回ばっかりは臆さずにはいられない─── なにせ逃げてる事実は揺るがないのだから。 ……と、ここで名案が一つ。 中井出「tell:ニーヴィレイ=アレイシアス=ドリアード……《ナルブツッ!》早ッ!!」 声  『ヒロミツか!?ヒロミツじゃな!?今何処におるのじゃー!!』 中井出「うむナギー新兵!気になるのならば今すぐここへ転移せよ!     霊章は壊れてるが、契約の楔は切れちゃいない!故に降臨せよ!」 声  『っ……い、いいのかの?わしはまだ修行を───』 中井出「ホギーがその場におらぬことくらい知らぬこの博光と思うてか!     修行中でないのであれば貴様は自由!故に───来い!!」 声  『わっ……解ったのじゃーーーーっ!!』 ブツッ、とtellが切れる───と同時に、 目の前の虚空に緑色の光が散り、───すぐに来ることを悟ると双剣を鞘に納めた。 その次の瞬間にはシュポンッとナギーが転移! ナギー『ヒロふわぎゃーーーーっ!!?おおお落ちてるのじゃーーーっ!!』 途端絶叫!俺はその体を咄嗟に両の腕で抱き寄せると、 手に入れたアイテムと俺と田辺が持つ全財産を渡す! ナギー『ヒ、ヒロミツ?これはなんなのじゃ?』 中井出「ナギー新兵!貴様に命ずる!これよりすぐさま転移をし、癒しの関所へ逃れろ!」 ナギー『何故じゃ!?ひ、ヒロミツはわしに関所へ戻れというのか!?     わしが要らなくなったのか!?』 中井出「バッカモーーーンそうではない!……後ろをごらんください」 ナギー『《メギョキャア!!》フギャーーリ!!』 俺をじっと見つめるナギーの首を、強引に後方へ向けさせる。 するとそこにおわすは光の守護竜さん。 ナギー『…………あ、ぅう……!!』 ようやく事態が飲み込め……るわけないよな。逆に混乱したように思える。 だが俺の言いたいことは受け取ってくれたのか、 向き直るとこくこくと頷いて転移を開始した。 中井出「頼むぞナギーよ……!この博光も必ずあとで行く……!」 ナギー『……待っておるぞ?必ず……必ずだぞ!?必ず迎えに来るのだぞ!?』 中井出「フフ……生きていたら、必ず会えるさ……」 ナギー『ヒロ───《ビジュンッ!!》』 別れの言葉も半端に、ナギーは転移した。 だが伝えたいことは伝えたと思う。 俺とナギーが話している間中、ずっと攻撃を避けてくれていた田辺に感謝だ。 しかし……ナギーの口調が出会った頃あたりのものに戻ってたような。 なにか心境の変化でもあったんだろうか───いや、 それは今考えるべきことじゃないな。 中井出「よっしゃあこれで気兼ねなくバトれる!いくぞ田辺二等!」 田辺 『サーイェッサー!!』 考えてみりゃ空中落下バトルなんてそうそう出来るもんじゃねぇ! ワイルドアームズのラストでもなきゃこういうのは出来るもんじゃねぇ! 故に今こそ解き放とう!! 中井出「全ての準備は整った。光の龍よ……臆さぬならば、かかってこい!!」 両脇の鞘から抜き取った双剣を回転させてから持ち、気迫とともに叫び放つ! ……うん、気迫は出せたと思うんだ、多分。 そんなの自分じゃ解らないから確認のしようがないんだけどさ。 だが、覚悟は完了した! 田辺 『提督!あんま震えんな!背中がこそばゆいだろーが!!』 中井出「しょうがないでしょ怖いんだから!!」 覚悟は決めた───が、怖いもんは怖いです。 人間ってそんなもんさ!根性論と感情論だけで全て乗り越えられりゃあ苦労はせぬわ! でも根性論は相当大事だと俺は思うが。 だってヴァルキリープロファイルなんて、後半はガッツがなけりゃすぐ全滅のゲームだ。 懐かしいなぁ……仲間のみんなが死んでも、 ロレンタだけは何故かガッツを見せまくって、いつまでも生き残ってたもんだ。 彼女が居なかったらクリア出来なかったに違いない。 中井出「ん、よし!ではお互い、死のうが意地でもヤツを倒すことを誓おう!」 田辺 『おお!キミと僕との約束だ!』 奇妙な約束を交わすと、俺はすぐさま跳躍し、光天龍に襲い掛かった!! 中井出「ぜえぇいやぁっ!!」  ヒュフォガギィンガギィンゾギィンガギィンッ!! 双剣にて撃を連ね、その反動でくっつくようにして身体を引き寄せてゆく。 掠ろうが、それを払って身を寄せれば近くに行ける。 中井出「ふっ!せい!はっ!つっ!だぁりゃぁっ!!」  ギィンギィンガィンガィンゴギィンッギンガインッ!! 肉薄すればあとは楽、というわけでもないが、 硬い鱗に撃を落としながら敵の体こそを駆け上り、 田辺の高度に合わせて降りてゆく体をさらにさらにと斬り連ねる。 けど、なんつー硬さっ……! 攻撃の全部がまるで鉄パイプで鉄棒でも殴ってるみたいに弾かれる! 竜族の鱗ってのはどうしてこう硬いんだよ! くそ、今ならドラゴンキラースキルの有り難さが解るよ……! あれがスキルにあるとないとじゃ、確かに竜族との戦いに落差はあったのだ。 少なくともここまではっきりと弾かれることなんてなかった筈だ。 中井出「───だったら!エジェクション!」 双剣を鞘に納め、ジークリンデから短剣系の武器、ハウリングナイフを取り出す。 それを逆手に持ち変えると上手く斜に構え、鱗と鱗の間に───一気に突き刺す! ホーリードラゴン『《ゾブシャア!》ヌッ!?』 だが竜族にしてみればそんなものは針が刺さった程度の一瞬の痛み。 しかし知るのだ光の龍よ。 何故あえてハウリングナイフを突き刺したのかを! 中井出「届け!俺の心のビート!!ハウリング───はうあ!!」 しまった!マグニファイを光の部屋で使った所為で、能力引き出せねぇ!! ストックも葬竜剣と……マグニファイが一個だけ!? い、いかんいかん!さすがに衝撃波のためにマグニファイ使うのはもったいねぇ!! つーかやっちまったぁあああああっ!! せめて光の塔攻略してる時にストックしときゃよかったぁあああああっ!! 中井出「ぬう!ならば武装融合!アンド長剣化!     そんでもってぇえっ───STRマックス!キズ口全開絵巻ゃああああっ!!!」 ゾギィンッ!! ゾシュシュベキメキゾシャシャシャシャアッ!!! ホーリードラゴン『グァアアアアアアアッ!!!』 突き刺した切り口に長剣化させたジークフリードを捻り込み、 その斬れ味を以って強引に引き裂いてゆく!! 流石にとんでもなく硬いが、苔の一念岩をも徹す! STRマックス効果のお蔭か、剣の幅くらいの傷程度なら開くことが出来た。 ───が、そこまでだ。 ホーリードラゴンが身体を振るい、俺を落としにかかったのだ。 中井出「ぬっ!おわっ!ちょ、待てぇええええええっ!!!」 まるで暴れるミミズだ。 物凄い速度で暴れてみせ、剣を突き立てたままの俺を強引に引き剥がそうとしている。 けどそれじゃあこの博光は落とせぬわ! 何故なら貴様が力を込めて暴れれば暴れるほど、 筋肉は引き締まってこの剣を離さぬのだからな!! ……だから僕の握力が尽きたら僕が落ちるということですね、ハイ。 中井出「うわはははは!だが忘れてもらっちゃ困る!     この世界において我らのスタミナは無限大!!     握力だっていつまででもフルパワーでいられるわぁーーーーっ!!」 田辺 『わはははは!!龍よ!出会った相手が我ら原中だったことを後悔させてやる!!     うぅううらうらうらうらうらうらぁああああっ!!!!』  ドォンドガドガドガバゴドガバゴォンッ!! 田辺が燃え盛る六本の拳でホーリードラゴンを殴ってゆく! 今さらだが、どうやら今の田辺の宝玉は火属性らしい。 多分だけど彼は手にする宝玉の属性によって、様々な妖魔化が可能なんだろう。 ホーリードラゴン『生憎だが大して効かないな。───フンッ!!』 中井出     「《ヴオッ!!》え───うわやべぇ!避けろ田辺ぇええええっ!!」 田辺      『うおわぁああああっ!!』 捻られる体! 流れる風に振り踊らされるように、 俺の体がホーリードラゴンの体ごと田辺へ向けて落とされる!! 中井出「くっそこのっ───ストック解除!《ゴコォッキィンッ!!》」 ストックしておいた葬竜剣を解放! ───した途端にジークフリードから紫色の光が極光の如く放たれ、 踏ん張ろうと押し込めていた剣がホーリードラゴンの硬い鱗と筋肉を簡単に突き破り、 根元まで一気に突き刺さる!! 中井出「う、おっ───!?ッチィ!考えるより身体を動かせ!     おぉおおりゃぁああああああっ!!!」  ズゴォブシャアッ!!  ブギギガガガガガザバァッシャァアアアッ!!! 田辺へとぶつけられるより先に、 柄を両手でしっかりと掴んでホーリードラゴンの身体を再び駆け上がる!! 当然突き刺さったままのジークフリードは紫色の光─── 即ち葬竜の力を帯びたままであり、鱗や肉を引き裂きながら、 俺の手から離れることなく振り切られた───!! ホーリードラゴン『グ───ガァアアアアアッ!!!!』 最後に尾を蹴り弾き、俺は虚空へと舞い上がる。 すぐに追って追撃でもしたいところだが───生憎と空なんざ飛べやしない。 魔剣クサナギがあればそうでもなかったんだろうけど、 それはナギーに預けちまったから無理な話だ。 ホーリードラゴン『おのれ───おのれ人間風情がぁあああっ!!』 中井出     「うっ───!?やべっ!!」 見上げる眼光が俺を射抜く。 それだけで体が恐怖に支配されるが、 俺は口が動く内に勢いよく舌を噛み、痛みで恐怖を弾き飛ばした。 中井出「っ……きょ、恐怖なんざなんぼのもんじゃああああああ!!」  ギガァッチュゥウウウウンッ!!!! 中井出「う───オアッ───」 だが強がりもそこまでだった。 見上げる姿が顎を最大まで開くと、そこから極光レーザーを放ってきたのだ。 その大きさ───飛竜やそこらの竜族が放つソレとはケタ違いのデカさときたら、 本当に呆れるくらいの巨大さで……!! 中井出「VITマックス───う、うおぉおおああああああっ!!!!」 防御を最大にし、念には念をとグミやポーションを口に詰め込めるだけ詰め込み、 飲み下した───途端、俺の体を熱や冷気ではない、光が襲う!! ……それをどう喩えればいいんだろう。 光に撃たれるというのは確かに熱も感じるのだが、 身体を……そう、身体を貫くような激痛が俺を襲い、 防御なんて無意味だと罵倒されて叩き伏せられるような圧倒的な力が───!! 中井出「ガッ……ギ、ア───ガァアアアアッ!!!」 体が内側から破壊されてゆくような痛みを、俺は初めて体感した。 徹しで体内に衝撃を与えられるとか、そんな生易しいものじゃない。 それを圧倒的に倍化させたものが、一瞬にして内臓を食い破るような、 頭がどうにかなってしまいそうな痛みが俺の中で暴れている。 だから噛んだ。飲んだ。助かりたい一心で、痛みから解放されたい一心で、 口の中のグミとポーションを噛み、飲み─── なのに痛みに我慢出来ずに涙さえ流しながら絶叫した。 声  『……、───!!』 声が聞こえる。 田辺───だろうか。 でもそんなことを考える余裕すらない。 聴覚に意識を集中させることなんかより、一刻も早くこの痛みから逃れたかった。 逃れたい……逃れたい?───だったら、いっそ、死─── 中井出「……───んで───たまるかぁああああああああっ!!!!」  キュウィ───ゴヴァァッファァアンッ!!! ホーリードラゴン『───なに!?』 ほぼ無意識だった。 左手が、なにを思ったのか右手に持っていたジークフリードを掴み、 引きちぎるようにして長大剣を双剣化させた。 その反動、とでも言うべきか。 振り切った腕とジークムントとジークリンデが光を斬り裂き、全てを霧散させたのだ。 田辺 『うおぉっ!?すげっ……すげぇえええっ!!!』 視界の下方で田辺が叫んでいるのが見えた。 でも……俺の意識は別の場所にあった。 ボロボロに焼き爛れた体?……違う。 あまりに少なすぎる残りのHP?……違う。 中井出(……冗談、だろ……?) 腕を振り切り、光を霧散させた時───俺は無意識だった。 無意識でこんなことが出来るだろうか。 それに……それに、光を斬り裂く時に、一瞬見えたあの闇の炎は…… 中井出(───っ……) ふと見下ろした腕の霊章。 それが……ほんの少しだけ、小さくなったように見えた。 それは元の大きさから小さくなったわけじゃなく、 そう……まるで、肩まで広がっていたものが肘まで戻ったかのように……! 中井出(……!!) 理解に至った時、身の毛が弥立った。 冗談……なんかじゃない。 あの野郎……!呪いで封印されてるっていうのに、 その下から力を解放させてきやがった……!! お蔭で助かったのは確かだが、それこそ冗談じゃない……! また身体を乗っ取られるのなんて御免だ! だってそれじゃあ経験値が少なくなるし! …………アレ?じゃあ経験値が入らない今なら……オールオッケー? 中井出「よっしゃあ面白そうだ是非やろう!!〜〜〜〜ッ……!!」 焦げながら叫んだ! すると全身がミキバキと痛んで、声にならない絶叫が口から漏れました。 だが諦めない!それが俺に出来る唯一の戦い方なんだよ!! 中井出「まずはグミを───ンゴッキュ《マキィンッ♪シュゥウファッ》」 双剣を鞘に納めてからグミを適当に口に放り込み、ハイポーションで流し込む。 HPの回復に習うように修復する身体を見下ろして頷くと、 俺は早速ジークムントとジークリンデを鞘から抜いて、霊章に力を込めるように集中する。 中井出「かなり怖いが……器詠の理力、解放!!」 力を込めたところで霊章は沈黙状態だ。 だったらどうするか? 多少でも霊章融合の繋がりが残ってるであろうジークから無理矢理引き出す!! 声  『おぉい提督!?なに落下しながら目ェ瞑ってんだよ!     今はそんな瞑想みたいなことやってる場合じゃギャアーーーーーーッ!!!』 脱力……脱力だ。 武器の意志を受け取って、より深層へ潜るために脱力───…… 中井出「…………《ビギィッ!!》いたぁい!!」 深層のさらに深層へと潜ろうとした時、割れるような痛みが頭に走った。 素直に痛いと言ってしまうくらいの痛さだが、 自分で間抜けな声が出たと恥ずかしくなってしまったのは内緒だ。 それでも諦めない!それが俺に出来る唯一の戦い方なんだよ! 中井出(……これは……違う……これも違う……これはギガノさんの意識……     これは……レオンの……これも違う……これも……     これらは……これを鍛えてくれた猫たちやドワーフの意識で……) ……見つからない。 思えばこの武器には狂いし者の武器なんて混ざってないんだ。 霊章に意識接続出来たところで、霊章の中に居るわけでもない。 中井出(……あれ?) そうだよ、狂いし者は武器にも霊章にも居ない。 あいつは─── 中井出「───!アイテムマグニファイ!」 理解に至ったらもう速かった。 俺は自分の指に意識を向けて、なにもないそこにアイテムマグニファイを通す。 するとガンババババババォオオンッ!!! 中井出「うおゎああああああっ!!?」 霊章が一気に肩までを上り、そこから闇の炎が噴き荒れる───! “狂いし者”の力を発動させたことで、狂戦士スキルが強引に引き出されたのだろう。 ベルセルク、火闇霊章、闘争本能、悪魔の霧、弱者など要らぬわ、 狂人の狂気、五体狂気などの狂戦士スキルの全てが体に満ちるのを感じた。 中井出「───……、あ、れ……?」 だというのに意識が奪われない。 霊章の故障の所為か封印の所為なのか、狂いし者の意識が浮上してこない。 中井出「ええい構わん!今は理屈がどうとか言ってる場合じゃねぇ!!」 ボマーだけが一緒に発動してる理由は知らん! もしかしたらボマーじゃなくて、 この火闇自体に爆発能力があるかもしれんが、んなこた今はどーだっていい!! 田辺 『提督ヘルプミー!!一人じゃ保たねぇよこれ!!』 中井出「うむ!では全力でいくぞ田辺二等!」 落下してゆく───田辺が戦う虚空へと。 ……と思ったら全然違う場所へと落ちてゆく。 あ、あれ?あれちょっ───アレェエエエエッ!? 田辺 『おお提督来てくれたの───あれ?や、ちょっ───提督!?     ちょっと提督!?どこ行くのちょ───待ってぇええええっ!!!』 落ちてゆく……!!田辺が戦う虚空を見上げ、どんどんと───!! すぐに田辺が俺を追うように虚空を駆けるがバガァンッ!! 田辺 『がぁォアアッ!!』 中井出「田辺ぇっ!!」 鋭く振るわれた尾撃が田辺の身体を打ち下ろす。 骨が軋む音がここまで聞こえるほどの痛打が、 離れていたというのに落下してゆく俺へと田辺を吹き飛ばしてきた。 くそ、なんて勢いで吹き飛ばしやがる!落下速度に追いつくなんて相当だぞ!? 中井出「っ……よし来い!受け止めてや───」 田辺 『ケンタウロスの黒い(いなな)きーーーッ!!』 中井出「《パカァン!!》ぶべぇっしぇ!!」 手を広げ、受け止めようとしたら顔面を蹄で蹴りこまれた。 中井出「ななななにしやがるてめぇ……!!」 田辺 『さっさと来なかったからその仕返しだ!』 中井出「今はそんなこと言ってる場合じゃねぇえーーーーっ!!!来た来た来たァア!!」 見上げるそこには光天龍! 真っ直ぐに俺達目掛けて飛翔してくる! 空を泳ぐなんて常識外れなことするバケモンが迫ってるのに、 こんなことしてる場合じゃねーってのほんと! 田辺 『つーか提督!その腕なに!?』 中井出「気にするな!今はヤツを滅ぼすことを優先せよ!ファイクミー!」 田辺 『イェッサー!!』 空中で敬礼する田辺の足を掴み、身体を引き寄せるようにして背中に乗る。 どうするもこうするもない……ただひたすらに全力でぶつかる! 中井出「火闇霊章全開ィイイイイッ!!《ゴババババババォオオオオンッ!!!》」 田辺 『爆発する闇の炎か!いいなぁそれ!俺の炎は宝玉のお蔭で出てるだけだから、     さすがに爆発なんてしちゃくれないが───それでも弱いなんてことはない!     いこうぜ提督!火の玉ブラザーズの出陣じゃぁあーーーーーっ!!!』 中井出「よくぞ言った田辺二等!!うっしゃあ来いやぁあーーーーーーっ!!!」 目前に迫るホーリードラゴン! その突進を、双剣と六本の腕にて受け止めにかかる!! 中井出&田辺  『うぉおおおりゃぁあああああっ!!!』 ホーリードラゴン『クアァアォオオオッ!!!!グオズドォッガァアアアアッ!!!! 中井出「ぐ、いっ……ぎぃぃいあぁあああっ……!!!」 田辺 『いぎぎででがぁあぁあああっ!!!』 あまりにも重過ぎるその衝撃に、田辺が悲鳴をあげる。 当然だ、俺は体当たりされようが落下するだけ。 だが空中で踏ん張りを効かせる役目である田辺には、 俺の重みとホーリードラゴンからの重力全てがのしかかるのだ。 しかし─── 田辺 『こっ……ん、じょぉおおおおおおっ!!!』 素直に受け流せばいいのに、田辺は負けるものかと上昇する力を止めない!! 実に誇るべき男意気!! 貴様の覚悟、しかと受け取った!! そう……我らにはもう、失うものなどなにもない! ナギーズバンクに全てを預けた今、なにを恐れることがあろう!! 恐れるな!恐れるくらいならば強敵を前に一歩も退かぬ修羅であれ! 中井出「うぉおおらぁっ!!」  バァッガゾガフィィンッ!! ホーリードラゴン『ぬぅっ!?』 霊章から噴き出る火闇を爆発させ、その反動を以ってホーリードラゴンを斬り飛ばす! ホーリードラゴン『馬鹿なっ!我が鱗が斬りつけられるだと!?』 中井出     「ワハハハハ!!          こちとらベルセルクのお蔭で攻撃力が格段にUPしてんだよ!          さらに火闇霊章の爆発のお蔭で攻撃の際に勢いもつく!          戦力での不利は否めんがなぁ!ただで勝てっと思うなよ!?」 田辺      『おらおらぁ!余所見してっと危ねぇぞぉ!?ストック解除ォオ!!』 ホーリードラゴン『───!?な……っ!!』  ドガァアッチュバンガガガォオオンッ!!!! ホーリードラゴン『グォオオオァアアッ!!?』 完全に俺に気を取られていたホーリードラゴンに、 田辺がストックから解放した屠竜奥義、炎魔葬竜弾が炸裂する!! 改めて見ても息を飲むほど巨大な紫色の火球がタメも無しに放たれ、 ホーリードラゴンの鱗を燃やし、破壊し、削ぎ、砕き、肉さえ焼いてゆく!! ホーリードラゴン『ぐっ……ヌァアアアッ!!』  ガヴァアッ!!コカカォオオンッ!!!! ───が、鱗を破壊し肉さえ貫こうとしていた紫の炎は、 ホーリードラゴン自身が発したあの極光レーザーの前に消滅。 巨大な傷跡のみを残し、霧散してしまった。 田辺 『そんなあっさりと消すなよくそ……!     提督、よくこんなヤツらと戦う気になれるよな……!』 中井出「その分それらの素材で武器が充実していくサマは最高だぜ?グオッフォフォ」 笑いながら攻撃を連ねてゆく。 霊章から漏れる火を爆発させながら勢いをつけて。 田辺も田辺ですぐにショックから立ち直ると、幻魔を出現させて攻撃を連ねてゆく。 田辺 『おぉらぁっ!!』  ゾガァッフィゾガァッフィゾガァッフィゾガァッフィィン!!  ヴミンッズヴァアッシャァアッ!!! ホーリードラゴン『ギィイッ!!?』 つーかさぁ!幻魔の攻撃力が半端じゃねぇんだけど!? あんな、踏み込んでから往復二斬のあとの上段斬り下ろしだけで、 守護竜の鱗が簡単に破壊されていってるよ! 中井出「そういやいろいろあって訊くの忘れてたけどさぁ!     その幻魔って何処で手に入れたんだぁっ!?」 田辺 『妖魔の血肉食って妖魔化したら仕込み杖が変異してた!』 中井出「変異とな!?」 妖魔化に際して、武器が進化したとでも……いうのだろうか。 そんな疑問が頭に浮かんだ刹那、目の前の龍が咆哮とともに激を飛ばす!! ホーリードラゴン『有り得ぬ!龍族の!光の龍である我が人間ごときに!          何故こうも容易く己が身を破壊される!?』 中井出     「知りたいか……?───知りたくてもてめーにゃ教えてやんねーよ!          大金詰まれても教えてやんねー!!くそして寝ろ!!」 田辺      『なに喋ってんのか知らないけどまさに外道!!』 ホーリードラゴン『おっ……おのれ人間がぁあああっ!!』 中井出     「隙だらけスマァーーーッシュ!!」  フィンッ!バガパギャフィンッ!! ホーリードラゴン『ガァアアッ!!』 口八丁に激怒したところに渾身のスマッシュ!! 身を捻り、勢いを付けられるだけつけての全力の斬り下ろし───!! 火闇霊章での爆発の勢いも手伝ったその一撃は、 ホーリードラゴンの立派な左髭を切り落とした! ……つーか今のなんだよ!髭切り落とした音じゃねぇぞ絶対! どういう硬さしてんだ……でもすかさず手に取ってバックパックへ収納! これで龍の鞭が作れるぜ〜〜〜っ!!……作れるかどうかは知らないけど。 ホーリードラゴン『……!?我が髭を……!?き……さまぁああああああっ!!!』  ギピィンッ!《潜在能力:激怒が発動!ホーリードラゴンの体質が変化する!!》 中井出「いぃっ!?」 ログに出現した文字列を見るや、背筋に冷たいものが通り過ぎてゆく! 体質変化ってまさか───!?と。 ト、トラウマってやつだよこれ!頼むから物理攻撃完全無視とか勘弁してくれ! あんなのはもうカイザードラゴンだけで十分───ガカァッ!! 中井出「ぐああああああっ!!」 田辺 『うおっ!?まぶしっ!!』 だからっ……ああもう!疑問なんて持ってる場合じゃないって決めてたのにまただよ! 考え込んでるうちに体質変化が進行して、 急に体全体から閃光めいた……いや、 閃光そのものといった方が喩えにいい光をホーリードラゴンが発してきた。 しかもその閃光は消え去ることはなく、 まるで鱗自体が発光を続けているように光ったままになっていた。 光る瞬間を間近で見た所為もあって、 目の前に光るなにかがへばりついたみたいにモヤがかかっている───だというのに、 そんなことさえ解るくらいにホーリードラゴンは輝きを身に宿していた。 中井出「くっそ!チカチカが邪魔で見えねーざます!」 田辺 『俺が敵に突っ込むからそこを攻撃すりゃ間違いねぇ!いくぞ提督!』 中井出「なにぃ!?その意気やよし!博打って好きだよ俺!」 伊達に何度も自爆してません! こんなチカチカ、自爆ダメージに比べりゃなんてことない! ならば俺がすることは、握る双剣に渾身を込めて敵を討つだけ! 田辺 『つーか提督ホレ!目薬だ!使え!』 中井出「サンキュートランクス!」 と、力を込めんとしたところに、 田辺の左腕の一番したがバックパックから薬を取り出して、背中の俺に放り投げる。 それを受け取るとすかさず使用!  ピピンッ♪《目の異常が回復した!!》 見える!見えるわトニー! よっしゃあ目が見えれば十分! テオハートが自由に使えない今、盲目になってもメリットなんてありゃしない! だったらテオスラッシャーをエジェクションして心眼テオハートを引き出せばいいんだが、 外した時点でそれはただのテオスラッシャーになる。 つまりは攻撃力+修正が0になるってことだ。 ジークフリードが+2761に対し、0じゃああまりに弱すぎる。 ハウリングナイフで鱗の皮膚の付け根を狙うならまだしも、 普通に武器を突き立てたところで斬れやしないだろう。 中井出     「───よし、整理終了!いくぜ特攻!せいやぁっ!」 ホーリードラゴン『むっ───!?』 武器情報の整理を頭の中で行いながら、 目前まで迫ったホーリードラゴンの額に上手く飛び乗る! 田辺 『何処見てんだオラァアッ!!』 と、額を駆ける感触に注意が逸れたホーリードラゴンへと向かってゆくのは田辺! 炎が灯った六本の腕を前に突き出し、六つの炎を一つの巨大な炎にして発射! ホーリードラゴン『チィッ!忌々しい!!』 しかしそれを、ホーリードラゴンが鱗のない口内で押し潰すように噛み砕く! しかもダメージは大して与えられてない……つくづく嫌なヤロウだ。 田辺 『やっぱこんな程度じゃダメか───よし提督!人型で闘うぜ!』 中井出「なにぃ!?」 そして炎が効かないと見るや、 噛み付こうと襲い掛かるホーリードラゴンの牙を避けると後頭部に着地! 妖魔化をいじくり、人型の妖魔になって俺と同じくホーリードラゴンの上を駆けてきた! 中井出「バ、バカモーーーン!!貴様が人型になったら誰が落ちたこの博光を拾うのか!」 田辺 『そんなもんは知らねぇでありますサー!!     それとももしこの場に俺が居なかったら、     提督は戦わなかったとでもいうのでありますか!?』 中井出「とりあえず飛び降りはしなかったと思うなぁうん!!」 田辺 『ひっ……卑怯だぞてめぇ!!それは言いッこなしであります!』 中井出「言いッこなしでも言っときたい言葉くらいある───わいっ!《ギィンッ!》」 長い体を走る俺目掛けて振るわれた尾撃を、ジークフリードにて弾く。 それでも軽く弾ける程度だが、弾けないほどでもない。 もちろん狂戦士スキルが無かったなら、 今頃腕に留まった蚊のように潰されていたことだろう。 だが当然、一撃で攻撃が止むはずもなく。 尾撃と噛み付き攻撃が断続的に俺達を襲ってきていた。 幾度も、幾度もだ。 田辺 『おわっ!《ゾギィンッ!》───しっかし、この鱗って光ってるだけか!?     ダメージ床みたいにダメージ判定があると思ったら、全然じゃねぇか!!』 中井出「知るのだ田辺二等よ!注意しててしすぎるってことはない!     特に守護竜戦ではなにが厄になって我らに降り注ぐか解ったものではない!!     ぅうぉおおおおっ!!フッハッセイィッ!ハッフッだぁりゃあっ!!」  ガンギンギリャガギゾフィガフィゴギィンッ!! 幾度も振るわれる尾撃を、双剣で弾きながら駆け続ける! 目当てはあそこ───葬竜剣で傷をつけたあの位置だ! 田辺 『うっほ……!提督の双剣捌きも大分板に───せいっ!《ギキィンッ!》     ───ついてきたなぁ……!とわっ!《ゴギィンッ!!》』 中井出「え?攻撃くらいたくないからがむしゃらに振ってるだけだけど」 田辺 『ただの防衛本能かよ!』 呆れられてしまったが、そりゃ仕方ない。 俺の場合、修行らしい修行なんて全然やってないのだから。 完全我流なら、防衛本能が戦いを構成するのは当然のことだと思うけどな。 田辺 『───!提督!雲だ!』 中井出「なにぃ!?つーことはもう光の塔の頂上付近に───って、あった!」 田辺 『晦たちは!?……居た!こっちに気づいてる!』 田辺のように外壁を昇ってきたんだろうが、 そりゃこれだけデカい輝く龍が降りてくりゃ気づきもするっての! でも俺達が落下してる位置からすると、 あそこは離れすぎてて降り立つこともできやしないが。 田辺 『しっかし斬れねぇなくそ!どういう皮膚してんだよ!』  ガギィンッ!ギヂ……ギギギッ……!! 田辺が幻魔を普通に振り下ろす。 だが鱗に弾かれ、その刃が肉に沈むことはなかった。 ホーリードラゴン『効かぬ効かぬ!くすぐったいわぁっ!!』 そうこうしているうちにホーリードラゴンが首を曲げ、牙を剥く!! まっすぐに田辺へと大口を開けて襲い掛かり─── 田辺      『かかったなダァホ!抜刀連技───!!』 ホーリードラゴン『なにっ!?』 ───それが囮だと気づくと、田辺の体から発せられた殺気に怯んだのか、 それともかかったな、という言葉に物怖じしたのか。 ともかく動きが一瞬鈍くなったその顔面目掛け、田辺が跳躍する───!! 田辺      『夢幻ッ!魔空殺!』 ホーリードラゴン『───!ぐ、ぬあああああっ!!!』 鞘に納められ、再び勢いよく引き抜かれる刀型の刃、幻魔。 鞘から解放されたそれは紫色のような輝きを放ち、ホーリードラゴンへと襲い掛かる!! ホーリードラゴンはその尋常ならざる刃の闘気に気づいたのか、 噛み付こうとしていた顔を必死に止めようと───そして逸らそうとしている。 ホーリードラゴン(───まずい!何を喰らおうが構わん……だがこれは───!) 田辺      『オォオラァアアッ!!』 ついた勢いなどそう簡単には止まらない。 それは体が大きければ大きいほどだろう。 当然、俺達なんかに比べれば相当に大きいホーリードラゴンは、 その体躯故か瞬時に止まろうったってそうはいかない。 踏み込んだ田辺と、噛み付こうとしたホーリードラゴン。 やがてその姿が肉薄し───!! ホーリードラゴン(止まれ!動け!避けろ!───避ける!?龍族の我がか!!          何故!?何故龍族たる我が人間ごときの攻撃に恐怖───恐怖だと!?          在り得ぬ!我は───我が人間ごとき恐怖していると───!?)  ヒュゴォッ───!! ホーリードラゴン『───!チィイイッ!!』 田辺の幻魔が思い切りに振るわれる! 斬れ味、破壊力ともに高ランクの武器、幻魔を以って、 今……光の軌跡が描かれヴィガガガガガガォオンッ!!! 田辺 『っ───ガ……!?げ、はっ……!!』 中井出「え───?」 ……光の軌跡───それは確かに描かれた。 けど、それを描いたのは田辺じゃなく…… ホーリードラゴンの鱗から放たれた、“魔法”だった。 中井出「魔法……!?龍族が!?」 放たれたのは光魔法、レイだった。 光を圧縮させ、鋭い光の矢にして雨のように降らす魔法。 それがホーリードラゴンの輝く鱗から放たれて───!! ホーリードラゴン『っ……今のは少々驚かされたぞ人間……!          だが戦いとはやはり先を先をと準備をしておかねばなぁ……!』 中井出     「……貴様、この鱗はまさか……!」 ホーリードラゴン『その通りだ。この鱗は光の属性を高めるためのものだ。          我自身が光の塊となり、大気に散らばる光のマナを吸収、増幅。          そうすることで、龍族の我でも魔法を』 中井出     『死ねぇえええーーーーっ!!!ゾヴアァッシャァアアアッ!!! ホーリードラゴン『ぐあぁあああっ!!き、貴様ぁあっ……!          己から、訊いて……きておい……てぇええ……!!』 俺の言葉に、律儀に話を進めてくれたホーリードラゴンの熱心な説明を余所に、 傷口まで走るとそこに渾身の力を込めて双剣を突き刺す!! ククク……卑怯?なんとでも言うがよいわ!戦いの中では油断したヤツが悪いのよ! ホーリードラゴン『ガッ……グォオオルルル……!!』 中井出     「痛いか……?ああそうかい!          だが敢えて言おう!騙されるほうが悪い!!───無事か田辺!」 田辺      『ぶ、ぐへっ……!ち、と……体の中から破壊されたみたいな感覚……!          でも、グミ飲んだから大分楽に……げ、げっは……!!』 中井出     「うむ!さっさと回復するのだ!          及ばないとは思うが、こいつの注意は俺がひきつけておこう!」 ホーリードラゴン『堂々と宣告されて、見過ごすと思うか!!』 中井出     「思わぬ!思わぬからとりあえず───」 ホーリードラゴン『砕け……レイ!!ガカァッ!!! 中井出「うっ……やべぇっ!!」 田辺 『いぃいいっ!?ま───待て待て待てぇえっ!!まだ回復が───!!』 ホーリードラゴンの言とともに彼の体質が明るくなった─── 次の瞬間には、俺達目掛けて再びレイが───!! ───直感だ、これをくらったらヤバイという、漠然とした直感が俺達の中を駆け回った。 どうする───!? このまま体の上に居座り続けてレイを受けるか、 それとも不自由な中空に飛び降りて戦うか……!! 中井出「ええい迷っていても埒も無し!ランダムルーレット───発動!!」 困った時の博打頼り! 光が頭上に集束してゆく様にハラハラしながら、 聴覚を刺激するドラムロールに緊張を注ぎ込む!  ジャンッ!!《博打No.27!シャドウフレア!!》 中井出「エ?……ヒギャァああァアアああアッ!!!」 よりにもよってこれだった。 そりゃ光属性に対してなら最高のブツかもしれないけど─── ええい迷っててもしょうがねぇ!発動したなら止められねぇし! 中井出「ならばせめて竜族みたいな吐き方で参りましょう!ルゥウオ」  ヴォガァアガガガチュゥウウン!!! 中井出『ウォゲゲギャアアアアアアッ!!!!』 喋り途中なのにシャドウフレアが発射される! お蔭で舌が焼き焦げるわ唇が焼き焦げるわで口内ボロボロ!! だがそれでも無理矢理に顔を動かし、迫り来るレイを破壊してゆく!! ホーリードラゴン『なにっ!?貴様───!?』 人間のくせにレーザーを吐いたのがよっぽど意外だったんだろう。 ホーリードラゴンは虚を突かれ続けているかのように行動を停止し、 レイが全て破壊されても動かないままでいた。 中井出「───ひゃなべにふぉう!!(訳:田辺二等!)」 田辺 『オーライ提督!!───でもまず回復したほうがいいと思うぞ?』 田辺が口がボロボロな僕にやさしい言葉をかけてくれました。 それに“解ってる”と目で返しながらグミを噛み、回復したところで武器を強く握る。  さあ……今こそ好機!全軍打って出る!! 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