───冒険の書206/VS光天龍(再)───
【ケース526:中井出博光(再)/光天龍バトル】 中井出   「ゆっけぇ!」 田辺    『戦え!立ち向かえ〜〜っ!!』 中井出&田辺『常識破りのスゴイやつゥ!ヘイ!!』  ヴァチコォンッ!! 中井出&田辺『ギョヴェエエエーーーーーッ!!!』 ───前回までの!少年陰陽師は!? ……呆けた龍を前に駆け出した僕と田辺! しかし刃を手に襲い掛かる敵を前に、 いつまでも黙っているタコなどいらっしゃらないわけでして。 原中迷惑部部歌とともに駆け出していた僕らは、あっさりと尾撃で潰されていた。 はい、少年陰陽師全然関係ないです。 中井出「強ぇええ!!強すぎだよこいつ!なにこの硬さと耐久力!     ちくしょう!頼むからメチャクチャ弱い竜とか出てきてくれよ!     強いやつばっかりで俺もうめげそうだよ!!」 田辺 『仮にも守護竜ってボスなんだからそりゃ無茶だろ!』 中井出「この世界が僕らの思いから構築されていったなら、     そういうのが居てもいいでしょ!?居たっていいよ!僕が許すよ!居てよ!」 潰された蚊のように、鱗の上でぐったりと倒れていた俺達は、 悲しみの声を上げながら起き上がるとすぐに駆け出す。 同じ場所に居るとまた潰されるからだ。 田辺 『つーか弱い竜って、それだけで夢が壊れないか?』 中井出「バカモン!なんのための常識破りか!常識に囚われてちゃ楽しめない!     だからこそ常識を破壊しようと誓い合ったあの頃を忘れたか!」 田辺 『そりゃそうだけどなんかヤじゃないか!?弱い竜って!』 中井出「こっちはもう死活問題だよ!一匹くらい居てくれたっていいじゃないか!     なんていうかこう───ねぇ?人の力で普通に倒せるような竜とか。     体術だけで倒せたら最高に気持ちがいいと思うんだ。武器でもいいけど」 あ、いや……じゃあ今までのとそう変わらんか? でもね、ほんとね、もう辛くてね……。 倒した時の達成感といったらそれはもうグオッフォフォ、ないですがね。 田辺 『体術か。ぬう……提督!体術は好きか!』 中井出「大好きだ!」 田辺 『ロック・リーが好きか!』 中井出「大好きだ!」 田辺 『八門遁甲が好きか!』 中井出「大好きだ!」 田辺 『じゃあ武器ありで八門遁甲使ってた丘野は?』 中井出「体術遁甲はリーやガイ先生がやるからこそ素敵である!     だから丘野がやる分には武器ありの方が好ましい」 田辺 『ああそりゃ賛成』 八門遁甲……それは体術の超エキスパートとなったガイ先生が、 忍術が使えないために使った禁術……だったっけ? リーが好きなだけだから世界設定とかよく知らんが。 解放するだけのチャクラがあるなら忍術は使えないの?と突っ込んだらきっと負けだ。 そこにもきっと尋常ならざるほどの設定があるのだろう。 中井出「体術じゃないのに遁甲使えるのはおかしいって言葉もまあ頷けるかなぁ。     でも原作は原作、そこから別の考えを引き出すことは悪ではない。     原作通りじゃなきゃ嫌だって人が全てじゃあ、     八門遁甲自体が認められなくなってしまう。     羅針盤って知ってる?あの……ほら、小狼くんが使ってたアレ。     あれ使って吉方だのを見ることを奇門遁甲って言って、     八門遁甲ってのはそれが歴史とともに名前がそれに変わる前のものなんだって」 田辺 『へー……じゃあなに?八門遁甲ってのは───』 中井出「うむ。恐らくNARUTOの作者が吉や凶となる方角を体内にあてがい、     それぞれを開くと力が出るが凶の方角、死門を開くと死ぬ、     と……そうやって受け取り方を変えて作った奥義に違いない」 田辺 『んじゃつまりあれか。八門遁甲の意味をそのまま受け取ってたら、     リーの奥義自体生まれなかったってこと?そりゃ言いすぎだろ提督てめぇ』 中井出「はっはっは、ようは発想の転換は大事だってことだ。     俺も言いすぎだとは思うが、可能性を否定する気はさらさら無しである。     リーはあれだろ?ジェット=リーのパロディから来てるようなもんだろ。     で、技も中国関連にしようと思えば、八門遁甲に辿り着くのも頷けるってもんさ。     とにか《ゴギィンッ!!》いだああーーーーーーっ!!」 田辺 『オワッ!?』 危機的状況の中、平和にリー談議をしていたらやっぱりやられた尾撃。 それを渾身の一撃で返したんだが……見事に腕がシビレた。 だがそれでも続けよう!気になることは一気に終わらす! そうすれば戦いに集中出来るというもの! 中井出「と、とにかく!教科書通りに物事受け取ってちゃ柔軟な考えなんて無理である!     同人作家見てみろーコノヤロー。     基盤となる設定があろうが好き勝手やって楽しんでるじゃあねぇか。     でも原作大事にしないヤツにいいモンなんて作れっこないが。     それは原作者が考えて考えて作り出した作品なんだからなぁ」 田辺 『……つまり?』 中井出「凄まじく広がった人気作品を真似るのはいろいろカドが立つってことさ。     ちょっと待っといで?tell:綾瀬麻衣香……と。《ブツッ》あ、麻衣香?僕博光」 声  『ヒロちゃん?どしたの?』 中井出「うむ。頼んでおいたリーのアレ?どうなった?」 声  『武器ありは認めない・98%、武器ありでもいい・2%』 中井出「やはりそうか……すまんかった、いろいろ忙しいだろうに」 声  『え?や、今シヌラウマで海草料理食べてるからべつにいいけど。     ヒロちゃんちゃんと食べてる?栄養偏ってない?』 中井出「大丈夫だよ!上京した息子を心配するかーちゃんみたいなこと言わないでよ!」 ブツッ……はふぅ。 ウーヌ、いつの間にかあんなに心配性になっちゃって……。 横から極上ガイアスマイルで人のこと見てる田辺二等がもう鬱陶しくて鬱陶しくて。 普通のニヤニヤフェイスならまだ解るけど、どうしてわざわざガイアスマイルかなぁ。 中井出「というわけで、“八門遁甲は武器ありを認めない”が98%を占めた。     ちなみにこの質問は俺が麻衣香に頼み、     猛者を含めたヒロラインに参加している者の中で、     NARUTO……いや、むしろリーを愛する者に対して質問してもらったことだ。     八門遁甲を使うにあたり、やはり体術であるべきか否か」 田辺 『体術派が圧倒的だな。それって猛者どももそう反応したってことか?』 中井出「や、猛者連中は総勢で1%扱いだから。     もう1%は多分、閏璃とかだろうな」 田辺 『あー納得。でも猛者連中全員が認めるを選ぶとは。……や、俺もだけど』 中井出「まあ……俺達ゃネジ外れてるからなぁ。     そりゃ体術もいいって思うけど、別の武器でやってもいいとも思う。     中間だな、ようするに。こうであればいいって想像まで否定はせぬ。     原作者が考えたものを好き勝手に変えるのは好ましくない……そう思うのも当然。     でもなぁ……そうしたらいろんな視点でものごと見れなくなっちまう。     原作が好きで単行本買ってアニメを見る……それが真のファン。     アニメを見て原作を知り単行本を買う……それが俄かファン。     でもどっちもファンには変わりないのにどうして差を見い出してしまうのか。     アニメ見て原作も買ったんなら、順序こそ違うけど同じことなのにねぇ。     しかしそれを認めないのが真のファン。     ……真ってなんだろね?俺は時々それが解らなくなる」 田辺 『俺達ゃ完全俄か方面まっしぐらだからなぁ……。     原作とアニメ、どっちで知ろうが好きになったからには全力で好きになる。     そこにファンだのどーのの意識はないんだが……。     ファン意識ってわっかんねぇなぁ……好きで見てるんだからいいと思うんだが。     アニメにゃアニメの、原作にゃ原作の良さがあって、     原作でやってた部分とアニメでやってた部分の違いだってもちろんあるわけで。     ファンって、どこからどこまでをファンっていうんだろうか。     俺、誰かになになにのファンか〜って言われたら激怒出来る自信があるが。     好きなだけだ、それをファンって言葉で括られるのは我慢できん。     ……ああもういいや解らんわ、やめよ、この話」 中井出「いいや知るのだ田辺二等!真であろうが俄かであろうが!入った種類が違おうが!     作品を愛する心に偽りなし!!ならば胸を張るのだ田辺二等!     胸張って《ヴァヂヂヂィ!!》ウギャーーーーーーッ!!」 鱗から発せられた魔力が僕の身を襲う! これは───フォトン!? 光属性の下級魔法……らしいです。 ログにそれっぽいこと書いてある。 中井出「ちくしょー!ちょっと待ってろモービーてめぇ!今こっちは忙しいんだよ!     とぉにかく!完結していない原作内容を固定した目で見るのはいかん!     完結してないんだからもっと自由な目で先を見るべきなのだ!     解るだろ?ほら……アレだよお前。魔術が使えないって設定だったヤツだから、     それを見て同人誌とか描いてたヤツが居たとしてさぁ、     そいつは頑なに主人公に魔術を使わせなかったんだよ。     それが物語の基盤でありルールだと思ったからさ。     それ以前に別のヤツが主人公に魔術を使わせた漫画描いたら、     ファンから物凄い罵声を浴びて、漫画描くのが嫌になった。     そんなこともあったから、彼は魔術を使わせなかったんだ」 田辺 『ふむふむ《ゴギィ!!》うぶぅえぇっ!!』 田辺が尾撃を前に吹き飛ばされた! でも僕は静かに続けました。最強。 中井出「ところがどうだ、原作の方で物語が進み、     主人公はあることがきっかけで魔術が使えるようになった。     すると周りの原作ファンどもはそれを受け入れて、     魔術使い放題の同人誌を描くようになったんだ。     魔術を使わせないをモットーに描いてきたソイツはそれを頑なに守ったが、     とうとう周りに受け入れられなくなり、     果ては原作を馬鹿にしてるとまで言われるようになり、ついには同人界を去った」 田辺 『げぶっ……ごふっ!い、いでで……!ファ、ファンって怖ぇなぁ……!     あっさり設定変える原作者も原作者だけど……げふっ……』 中井出「ファンフィルターは本当に怖いぞ?     それが好きすぎると、全てのものをフィルターごしに見てしまうんだ。     先入観ってやつか?現在の新しい作品を見て好きになったのち、     過去に出ていた作品を見て、     “これ、なになにの真似だ”とか言う若者も居るほどだ。     クソガキャアなどは特にだが。     それこそ過去の作品の原作者への侮辱だと思うんだがなぁ……」 田辺 『あぢぢ……な、NARUTOとかもそれありそうだな……。     今や忍者モノの代表作品と言っても過言じゃない。     これを見て好きになった小僧どもが、     忍者とくればNARUTOを思い出す可能性はとても高い』 ドラゴンボールの法則だな。 空を飛べ能力ば“舞空術”、波動を出せばエネルギー弾とかかめはめ波、みたいに。 NARUTOの法則はあれだな、忍術とくればNARUTOってやつ。 今の世、多重分身を使おうものなら、 無意識で描こうともNARUTOの真似だって言われるだろう。 カエルを呼び出しゃ自来也の真似、木の下面に逆さに立ちゃあNARUTO忍術の真似と。 そういうファンって怖いと聞く。 真似だ真似だと叩かれて漫画界を去る者だって居るだろう。 中井出「ふむ……」 田辺 『……?提督?』 中井出「どうだろう。いっそ、忍術……というか忍者自体を抹消してみるのは。     丘野のジョブのことなら、イセリアさんになんとか頼んで───」 田辺 『ジョブチェンジか?     それならナビメールでさっき《ベゴシャア!!》ブゲルギュア!!』 中井出「おわ《ブワァチィイン!!》ギャーーーーーース!!」 平和な僕ら再び襲う悲劇! 自分の体の上でのんびり話し合う俺達に激怒したのか、 今度の尾撃はとてもとても痛く苦しく、俺達二人を同時に吹き飛ばした!! でも落とすつもりはないらしく、 体を動かして硬い鱗の上を跳ね転がさせる光の守護竜さん。 ち、ちくしょう!なんて余裕だ! 田辺 『も、もういい!もういいよリー談議!     楽しければいいよ!他になにが要るんだよ我ら原中に!』 中井出「あ、そういや最初リー談議してたんだっけ。     ───うむ!もとより我ら、一つの事実に囚われん修羅!     誰がなんと言おうがゲームの中くらい好き勝手に突っ走る!」 だってそうしないと死ぬし。 田辺 『……でも丘野くんにはなにか別の能力プレゼントしようね?     ジョブチェンジもいいけど』 中井出「賛成。八門まで開けばとっても強いのは解ったし、いい死に様も見れた。十分さ」 田辺 『けどさ、八門遁甲の解除って出来るのかね』 中井出「そんな時のためのイセリアさんさ!     綺麗で美しく思い遣りのあるイセリアさんならきっとすぐに、     躊躇することなくやってくれるさ!!」 ガカァアン……!!《丘野眞人の八門遁甲が封印、抹消された!》 中井出&田辺『速ェエエエーーーーーーーッ!!!!』 なんという速さッッ!! なんとなくおだてるために放った適当な言葉が、予想以上の効果を発揮したらしいッッ!! ナルルルルル……───そして鳴り響く僕のtell。 中井出「…………《ブツッ》……も、もしもし?」 声  『なにしやがってんでござるか提督てめぇえーーーーーーーっ!!!!』 ……出てみれば、丘野くんだった。 中井出「あ、あのー、僕今死活問題処理の真っ最中で忙しいから、ね?後でね?」 声  『そんなことは関係ねぇでござるよ!拙者の!拙者の遁甲が!     イセリア殿からメールが来たでござるよ!?     提督殿が拙者の能力の抹消を願ったと!』 中井出「うむ!貴様は八門遁甲に頼らずとも十分強い!だから抹消を願いました」 声  『それだけ!?たったそれだけで!?』 中井出「うむ!───っとわっ!《ゴギィンッ!》っ……〜〜〜っ!!     い、いでっ……いででっ……!!」 しつこく振るわれる尾撃!それを、咄嗟に左手のジークリンデで押さえる! ……いや、押さえたんだけどさ。 なんというか当たり所が悪かったというかっ……! 指っ……!指がっ……!指挟んだっ……!いたっ……痛いっ……地味に痛いコレ……!! 田辺 『剣と尾の間に指挟んで痛がってる場合じゃねぇぞ提督!』 中井出「わ、解ってるよもう!とにかく!諦めるのだ丘野二等!     我らごときが八門遁甲に思いを馳せるなど馬鹿な夢だったのだよ!     一点集中なんざ俺達のスタンスじゃねぇ!     この世界は楽しみながら強くなるための剣と魔法の世界!     僕らにゃまだまだ楽しむ要素が残っている筈さ!     どれか一つを極めようとするには、この世界は広すぎる!     そもそも我らは世界を楽しむために強くなるんだ!     世界平和はむしろそのついでと言っても言いすぎではない!     一つを極めるのは達人に任せればいい!     知るのだ丘野二等!我らは一つを極めるにはまだまだ未熟すぎる!」 田辺 『もういいじゃねぇか!     八門遁甲はリーとガイ先生だけが使えるのが最高なんだ!     他の誰が真似することが出来たって、それは八門遁甲じゃねぇ!     体術のエキスパートで努力の天才!それが揃って初めて使えるんだ!     体術は使えてもエキスパートじゃねぇ俺達が使うなんて愚行もいいとこ!     丘野!八門遁甲はリーとガイ先生に任せればいい!     一つの技に縛られるな!一つの事実よりも遙かに広がる可能性を見い出し、     我らとめくるめく楽しみの世界を目指そう!』 中井出「我らは俄かだからこそ見えるものもあるのだと再確認した!     我らはそれこそを大事にするべきだ!     というわけで素晴らしき7人よ!光の塔へGO!!     もし倒せたらの話だが、光の守護竜の素材が手に入るやもだぜ〜〜〜っ!!」 声高らかに、tellの先に居るであろう素晴らしき7人……というか5人に向かって叫ぶ。 出来れば合流してみんなで全力抹殺を試みたいところだが、 あそこからここまでの距離はかなりある。 彼らが辿り着くまで僕らが生きていられる保証は一切無し! ああジョジョ!恐ろしい!なんて恐ろしい!ジョジョ!!ああ!ジョジョ!! 声  『竜の素材でごるか……ならばそれらを以って忍者刀を鍛えるでござるよ!     ……一応、八門遁甲抹消のお蔭で他の忍術が使用可能になったでござるし───     そうでござるな!ポジティブでござる!さよならリー!     拙者にはキミの真似事は無理だったでござる!     そもそも他人の忍道を真似て貫くなんて出来るわけがねーでござる!     だからゆきます己道!!咲かせてみせよう漢花!!せっかくのこの冒険の世界!     もっと自由に生きることをここに宣言するでござる!」 中井出「え?えーと」 なんでも術が使えるようになったらしい。 それは素晴らしい!と言ってやりたかったのだが…… 僕は彼に言ってやらなければならないのです。 忍者やめれと。 声  『一つを極めるのって生半可じゃないでござるしね。     その生き様は素晴らしいとは思うけど、     正直見るのと目指すのとじゃあ違いすぎるでござる。     やる側になってみれば、実際はいろいろなことが出来たほうが楽しいでござるよ。     リーが“努力の天才”という、ガイ先生の言葉は間違いではござらん。     だから拙者は───』 中井出「ぬ、ぬう……───すまん立て込んでるから切るな?」 声  『なっ───せめて最後まで聞くで《ブツッ》』 悪は去った。 田辺 『ひっでぇええ……』 中井出「だってあんな輝いた声調で言われたらさぁ!ねぇ!?解るでしょ!?」 田辺 『や、そりゃ解───うおおお提督!レイ!レイが来る!』 中井出「ヒィ!?……い、否!怯えてばかりではいられぬ!     いくぞぉお田辺二等ォオオッ!!決めた覚悟は磐石!     私たちは───一歩も引きません!───多分!」 田辺 『おぉおおおっ!!』  キンガガガガガガガガガガガズバジュバゴキィンッ!! 気分を切り替え、STRとAGIとVITへステータスを絞り込み、 攻撃力と速度と防御力を上げた状態で双剣を振るい、レイの軌跡を弾き殺してゆく! 一方の田辺は高速剣を使ってレイを打ち落とし、 隙あらば自分が立っている鱗部分へも攻撃し、肉さえ削いでゆく───! ……やっぱ幻魔って強ぇえよ……羨ましい強さだよチクショウ……。 だ、だがなー!俺だってなー!ジークさえ呪われてなけりゃあもっと……ウウーーーッ!! 中井出&田辺『だぁりゃあぁっ!!』  シュガァッフィィンッ!! 最後のレイを二人で斬り滅ぼし、息をつく。 いくら疲れないとはいえ、この緊張感の中で息を乱すなっていうのは無茶がある。 だから俺達は攻撃を集中させないように、ホーリードラゴンの上を駆け続けた。 田辺 『はぁっ……───けどさ!     これで丘野のパワーダウンが相当になっちまうなぁ!どうする!?』 そして懲りずに浮上する日常話。 でもさすがにこれは決めておかないとマズイというか───ええい構わん! 攻撃なんぞ避けるか受け流すかして、話を進めよう! 死んだら蘇って再挑戦すればヨロシ! 中井出「丘野の場合、問題は武器の強さなんだよな……忍者刀ってのは二本だろ?     一方だけ強くしてもダメだし、二本強くするとなると金や素材が倍かかる。     だからどうしても、他のやつらより+修正が弱いんだ」 田辺 『あ……なるほど』 中井出「よってだ。こんな結論へ辿り着いてしまったんだ、     我らの金で丘野くんの武器を強化してあげようじゃないか!     当然、俺も猫にかけあって提督価格で仕立ててもらう。     それを条件に、丘野くんには忍術の一切を使用しないようにしてもらうのだ」 田辺 『おお!いい考えでありますな!きっと丘野めも喜びましょう!!』 ……なんか、田辺の口調がちょっと時代劇っぽくなってきた気がする。 でもノリでなんでもやれるって最高なことだと、我ら原中は叫びます。叫べます。 たとえこの身が殴られようと、一時のみに咲くチャンス……叶えてみせよう我が声で! ようするにどんなにしんみりした状況にあっても、 もしなにかしらの接点を見い出せるような言葉があったとしたなら楽しみに走る。 それが我らの原ソウル。 話しながらでも攻撃を返せます。時々手痛いダメージ負ってるけど。 中井出「というわけでハハハハ、尻尾に捕まってしまったよ」 田辺 『なに紳士的に笑ってんだぁあーーーーーっ!!!て、提督!?提督ーーーっ!!』 考え事はいかんと何度自分に言い聞かせたかなぁ。 解らず屋なハートがいっそ悲しい。 そんなことを、僕の身体に巻きつく尻尾によって宙に浮かされながら考えてみた。 ホーリードラゴン『クク……梃子摺らせてくれたな。          だがこれで終わりだ!我が光の波動にて消滅するがいい!!』 中井出     「ククク……甘いわ龍よ!          この博光がただ捕まるだけで終わると思うてか!          貴様に希望という名の二文字を教えてやる!          どんな時でも希望は輝くものなのさ!          そしてそれを胸に刻み込むがいい!          貴様の胸に希望を刻む男の名───田辺二等!」 バァッと鱗の上の田辺くんを見る! するとその様子になにかを感じ取ったのか、 ホーリードラゴンも己の身体へと振り向き───! 田辺 『え?なに?』 きょとんとした顔で僕を見上げる田辺くんを前に、 絶望という名の二文字を胸に刻み込んだ。 中井出「アレェ!?ちょ……なにやってんの田辺くん!!     人が捕まりまでして注意逸らしたんだから攻撃くらいさァア!!     ほら!傷口にサクッと《メリキキキ》ごおおおお……!!」 田辺 『なにぃ!?マジで捕まってたんじゃなかったのか!?』 中井出「マジで捕まりました」 田辺 『さっすが天下の中井出さんだ!!』 感心されてしまった……俺ってほんと人徳ねぇなぁ……。 いや、この場合は“ある”って考えていいのか?原中的には。 田辺 『よし!提督の意志は受け取ったぜ!今から炎魔溜めるから頑張っててくれ!』 中井出「エェ!?炎魔ってあれだよね!?さっきやった牙銀大砲!     アレの溜めがどれだけ時間を要すると思ってるの!?     その間中の俺の命は誰が保証してくれるの!?」 田辺 『《ゴバァォンッ!!》ホーリードラゴンじゃないか?』 中井出「ワァオ……」 相変わらずの牙銀変身ポーズを終えた田辺クンの口から放たれた言葉を前に、 エセ外国人風に妙な言葉が口から漏れた。 これが真に戸惑った者の声か……自分で言うのもなんだが変な声だった。 だがな、フフフ……ホーリードラゴンよ。 この博光、敵の裏を掻くことだけならば、 そんじょそこらの村人に負けないくらいの自信がある。 中井出     「ブリュンヒルデ!」 ホーリードラゴン『……?今さらこの状況でなにを───なにっ!?』 ブリュンヒルデに意志を通して形状変化を実行。 村人の服をネコジャラシのようなものに変化させ、 断続的に圧迫される光天龍の束縛から逃れた。 中井出「これぞ奥義───モンゴルマン式ネコジャラシ逃走劇!     ……ネーミングセンス無いね俺……」 田辺 『落ち込んでる場合じゃねぇだろうがこのクズが!     一応溜めといてるから、時間稼ぎしてくれ!!』 中井出「うむよし!出来る限りのことはしよう!───ブリュンヒルデ!」 驚愕し、力を緩めたホーリードラゴンの束縛から解放されたブリュンヒルデを呼び、 再び村人の服になってもらうと同時にホーリードラゴンの体の上に降り立つ。 こういう時には本当に、武具に意志があるとありがたいって本気で思える。 でも出来れば自分の力でこう……ねぇ?強引に逃げ出せるくらいの強さが欲しいというか。 もちろん武具は愛してますがね? 中井出「くそう!こんなことなら子供の頃からもっと体鍛えておくんだった!     僕は今、自分の非力さに悲しんでいる!」 田辺 『子供の頃に筋肉鍛えると、体が成長しなくなるぞ?』 中井出「うん知ってる。全部言ってみただけの言葉だから」 僕らはそれをガンバ!Fly highで知りました。 筋肉が突っ張りすぎて、筋や骨が伸びなくなるんだとさ。 だから子供が必要以上に筋肉鍛えると、体が子供のまま大人になっちまうんだそうだ。 ちゃんとセルゲイ=アンドレアノフ氏が悲しんでたから間違いないよ? もちろんそれも漫画であったことだから、どこまでが真実かなんて解ったもんじゃない。 かなり前に決定していたことが覆される例を僕らは知っている。 人は猿から進化した〜とか言ってたけど、結局あれは間違いだったらしいし。 と、懐かしいこと思い出してないでなんとかしよう。 中井出「せいやぁっ!!」  ガギィンッ! 中井出「うおっ!?まぶしっ!」 輝く鱗に一撃を加えると、火花とともに光も散る。 律儀に俺達を身体に乗せたまま戦わせてくれるこいつに感謝を! でもなんだか嫌な予感がするのは気の所為? とか思ってる矢先に鱗全体が閃光を発し、 その大きな一つ一つから光の剣が発射され───!  ゾガガガガガガガァッ!!! 中井出「ぎっ!?がっ……な、なんだ、こりゃ───っ!!」 田辺 『っ……やべっ……妖魔状態で光属性はやべぇっ……!解除!《キュバァンッ!」 地面……いや、俺達が立っている鱗から放たれる光の剣は、 今まで放たれた光のレーザーやレイのように、内側から破壊するような効果を持っていた。 突き刺さるんだが貫かれるような痛みが内側から広がり、 喰らい続ければ間違いなく自分が殺されると、 早く理解出来る確かな威力がそれにはあった。 田辺もそれを感じたのか、完全に妖魔状態を解除すると人型に戻り、 完全妖魔状態でいるよりよっぽど小さくなった身体を利用して、 光の剣を避けたり弾いたりしている。 田辺 「プリズムソードか!光魔法なら大抵使えるんじゃないだろうなぁっ!」 中井出「そう思った時点でそれはありえるって思っておいて損はないのだよ田辺二等よ!     これだから守護竜バトルってのはもう!!」 嫌な予感が次々に炸裂する……それが守護竜バトル! これを使ってくるんじゃないか、とか考えてると大抵が嫌な方向に転がる。 だからなるべく考えないようにするのが賢い生き方。 田辺 「くっそ!足元から急に出てくるから上手く避けられねぇ!     最初からこれが狙いだったんだったらとんでもねぇぞこいつ!」 中井出「だから!そういうやつらなんだよ守護竜ってのは!」 とはいえ───もうほんとどうしてくれようか。 正直空中で戦うのが疲れてきた。 こいつが地面に降りずに、 俺達を体の上に置いているのは間違い無く魔法を当てやすくするためだ。 しかし実際、俺達がここから飛び降りて地面に降りたとして─── こいつに攻撃を当てられるかといったら、かなり無理がある。 なにせ、こいつは空中でレーザー撃ちまくってれば簡単に勝てちまうわけだし。 そう考えると、 今もこうして俺達を振り落とさずに乗せていること自体が信じられないくらい───ん? 中井出(……振り落とさない……?落として、レーザーでも吐けば一発なのに……?) じゃあ……つまり、なにか? こいつは俺達を背中に乗っけて、魔法の実験体にして遊んでるだけだ、と……!?  ヂリッ─── ……闇の炎が温度を増した。 俺の感情を受け取った故か、 敵の軟弱な考えを許せずに怒りを燃やした狂いし者の感情が故か。 いや、そんなことはどうでもいい。 俺の中で確かに落とされた撃鉄は、そんな答え程度じゃ止まってはくれなかったのだから。 中井出「男の勝負にィ……!加減の二文字はねぇええええっ!!!」 闇の炎が爆発する! ぶった斬ってくれようと振り上げた腕を、そのまま鱗に叩きつけるように!  ズォヴァッシャァアアアッ!!!! ホーリードラゴン『ギアァアアアアォオオオゥウウウッ!!!?          ガッ……!?な、んだ……この力は……!?』 長剣にし、振り下ろしたジークフリードが鱗を豆腐のように切り裂き、 爆砕しながら肉に埋まる。 軟弱者への怒りの一撃……“弱者など要らぬわ!”スキルが齎した破壊の一撃だ。 しかも一瞬だが、攻撃の際に狂いし者と意識が混同したためか、 攻撃力が異常なほど上がった。 これで砕けなかったら、相手の硬さも異常を通り越していたが─── 中井出「うぉおおおうらぁああああああっ!!!!」  ビヂヂギギガガギゾヴァシャアァアアッ!!! ホーリードラゴン『ぐぅぉあぁああああっ!!!          ぐっ……くそっ!おのれおのれおのれぇええええっ!!!』 肉に埋まった剣を強引に、 それこそ肉を引きちぎるように方向性を定めずに斬り払う! それも、爆発させながらだ───恐らく内部はズタズタだろう。 だが光天龍の大きさからみれば、ジークフリードで斬り払える範囲など高が知れている。 予想通り、ダメージは通したがそう高いものじゃない。 なにせ高い速度で駆けても、頭から尾までの距離がそうそう縮まらないほどの大きさだ。 全長だけで言うならカイザードラゴンを軽く超えている。 となると……やっぱアレをやるしかないんだろうか。 い、いや!どうせやろうとしても自爆が発動するだけだろうし! だったら出来るだけ時間を稼いで───!  ギピンッ!《ホーリードラゴンの身体に異常な光が集束する!!》 ───ごめん早くも挫けそう。 だ、だが諦めない!諦めたら死ぬから諦めない!それが俺達に出来る唯一の戦いなんだよ! ホーリードラゴン『全て塵と化すがいい!“ホーリー”!!』 中井出     「いぃっ!?」 背筋が凍るのを感じた。 ホーリーって……あのホーリー!?って言ってる傍から、 ホーリードラゴンの体全体の光が虚空に放たれて─── しかもそれが無数の光球に変わって、俺と田辺へと降り注ぐ───!! 田辺 『う、うおわっ───』 中井出「───ッチィイイ!!」 調べる発動!ホーリーの強さ、威力を分析!───出来るかンなもん!! そして無理!俺の力じゃ押さえきれん尋常ならざる力の波動なのは一目瞭然だ! ならばどうするか! 中井出「───ハッ!そ、そうだ!わたしにはこれがあったうぉりゃあ!!」 驚きの声もそこそこに、バックパックから取り出したソレを投擲! するとソレは三つある光のうちの一つに直撃! 途端ヴァァアッガァアアアアアアアンッ!!! ……大爆発を起こして消滅した。 田辺 『なっ……あ、あれは───』 中井出「アレだよお前……ジャスタウェイに決まってんだろ」 ブルードラゴンをコロがした時点で、殊戸瀬に一個だけ貰っておいたブツである。 でも所詮一個だけ。 残り二つのホーリーを破壊するだけの威力のあるものなど既に無し! ……さよなら青春。ありがとう友情フォーエバー。 中井出「田辺───溜めはあとどれくらいで完了する?」 田辺 『あと三十秒ってところだが───ダメだ、間に合わない!』 中井出「───その三十秒、大事に使ってくれよな」 田辺 『え……?提督?ていと───まさか!?』 田辺に返事をする前に鱗を蹴り弾き、 俺は───田辺の盾になるように、上空へと跳躍した。 そう……残された方法など、これしかないのだ……。 中井出「ジョルノ……俺に構わずに溜め続けろ……。     そうだ、それでいいジョル《ジガガバォオンッ!!!》ノギャアーーーッ!!」 言われた通り、十秒経つ前に直撃をくらった。 二つのホーリーをその身に受けた俺は、 まるで元気玉をくらったベジータのように顔面を細くし、 弾かれたように上空へと吹き飛んでゆく───!! 中井出「がっ───あ、あぐあっ……ぁあああああっ!!     ぎ、あ……ああああああああああっ!!!!」 せめて集中できるようにとふざけてみたが───ダメージが半端じゃない。 喰らった背中から破壊され、気づけば脇腹にはとっくに風穴が空いていて、 肩も砕けて骨も塵と化し─── 痛いのに、痛んだ先から痛覚ごと消滅させられていっている───!! 中井出(っ……さすがにこれは……耐えられん……!!) 滅び行く体で、なんとかグミを取り出すが───取り出した先から消滅した。 中井出(く、そ……まじ、かよ……!!) ……どうやらここまで。 散々足掻いてみたが、今回ばっかりは耐えられる威力じゃあなかったのだ。 下半身が消滅し、上半身も胸当たりまで消滅。 ───そこまでいった辺りで、俺の意識は自らの手で俺の意識の蓋を閉じた。 ───……。 ……。 ゴカァォオオオオオン……!! 田辺 『光が弾けた……くそ、提督……!』 中井出「やあ」 田辺 『ってなんでここに居るんだよてめぇ!!』 中井出「左手をごらんください」 促した塔の外壁。 そこに、僕を復活させたロッククライマー……その名も神父が居た。 田辺 『……なにやってんの?あいつ』 中井出「修行だそうだぞ。カイザードラゴン戦の時も、     何故か山で修行がどーとか言ってた」 田辺 『それって、ただ趣味が登山とロッククライミングってだけなんじゃ……』 中井出「俺も今回になってそう思い始めてきてるとこ……」 言いながら、俺達を振り落としにかかっているホーリードラゴンにしがみつく。 死んでも復活するという事実を知るや、急に暴れ出したのだ。 先ほどのようにミミズが如く暴れたり、急上昇してみたりとかなり厄介だ。 だがこの博光、既に死亡したことでリセットされた様々なスキルを利用、 アイテムマグニファイを使用し狂人スキルは引き起こしてある。 そう簡単には振り落とされねぇぜ〜〜〜〜っ!! ……でも辛いことは確かです。 中井出「ぬ、ぬおお!!おのれ卑怯な!」 田辺 『俺達が言えた言葉じゃねぇだろそれ───よし!ストック!!《ガキィン!》』 中井出「───おお!ようやく完成したか!」 田辺 『《マキィン!》───イェッサー!     いつでも撃てま《バキミキキ!!》いがぁああっだたたたぁーーーーっ!!」 溜めが終わるや人型に戻った田辺くんが、能力の反動に身体を軋ませて再び絶叫! でも俺と同じく鱗に掴まって、上昇のために圧し掛かる気圧に耐えながらグミ食ってる。 素晴らしい根性だが……やっ……これキツイ……! 気を抜くと滑り落ちてしまいそ───ボファアン!───う? 中井出「……あ、あれ?」 田辺 「提督、今なにか……」 上昇してゆくホーリードラゴンとともに再び突き抜けた雲。 だが……その“感触”に疑問を感じた。 雲……雲に感触?───ホワイ!? 中井出「ま、まさか───トタァーーーーーッ!!!《バァーーーッ!!》」 田辺 「なにぃ提督!?」 一つの答えが僕の中に生まれるや、僕は迷うことなく雲へダイヴ!! 田辺も“ええいままよ”とか言って、ともに飛び降りてきた! ホーリードラゴン『なに……!?気でもフレたか!』 そんな自殺めいたことをする僕らに、ホーリードラゴンが言葉を投げかけるが─── フフ、気がフレただと?そんなの───とっくの昔からフレ切っておるわ!! 中井出「ワハハハハ馬鹿め!常識通りに物事をする者の気が正常なのだとするならば!」 田辺 「我ら常識破壊の猛者どもは!とっくの昔に気などフレているのだよ!!」 ここは不思議なファンタジックワールド! ならば、普通の雲もあれば───あの雲もある筈!!  ───ボムンッ! 中井出「ムグオッ!」 田辺 「ふぶぼっ!」 雲へと投じた身が、その雲にこそ弾かれるようにボムンと弾んだ。 ……ポムポムと触れてみると、そこにあるのはなんともいえぬ弾力。 そう……僕らは───雲の上に居た!! 中井出「ファッ……ファンタジィイイイイイーーーーーーッ!!!」 田辺 「イッ……イエーーーーッ!!幻想イエーーーーーッ!!!」 雲に乗ることが出来た───たったそれだけのことだ。 ファンタジーの中では常識的な部分でもあるかもしれん。 だがこれは僕らにとっては素晴らしき一歩……!! そう……僕らは雲の上に降り立った最初の人類となったのだ……! ……たぶん。 中井出「おおお!なんという弾力!トランポリンなど目じゃない!」 田辺 「なんだというのだろう……!     感触とかをトランポリンに置き換えてみれば、     ただトランポリンの上で弾んでるだけの事実……。     それでもそれが空中で、     しかも雲に乗っているというだけでこうも感動が溢れてくる!」 中井出「なんという素晴らお宝だァーーーッ!!《ギャオッ!!》」 田辺 「なにぃ!?さ、させるかぁーーっ!!《ギャオッ!》」 バインバインと弾んでいた田辺二等を余所に、 立てる場所があるのならそこには意味があるに違いねーと、 天の辺りをねめまわしていた俺の目に───なんと二つの宝箱! それに気づくや雲を蹴り弾いて、一直線に駆け出した!! やったッッ!宝は先に手に入れたものに入手権限がある! 僕は光の部屋での状況と同じく、田辺より一歩を先んじることが出来たのだ!! 中井出「ソイヤァーーッ!!《ガチャチャア!!》」 宝箱がある場所に辿り着くや、両方同時に開け放つ───すると、  ジャガジャンッ!《ロビンズイコンとエンシェントレリックスマシンを手に入れた!》  ジャガジャンッ!《解体芯書とキングストーンを手に入れた!》 というメッセージとともに、各二つのアイテムを入手した! ……ハテ、ロビンズイコンはまあ解るとして……や、効果までは解らんけど、 解体……“芯”書?それにキングストーンって───。 それにこのエンシェントなんたらって……アレですか? 田辺 「アッ!!ず、ずるいぞ!     宝箱は二つあったのだから、僕に一つ分けてくれてもよかったではないか!」 中井出「フン!これは僕が先に見つけたものだ!僕がどうしようが勝手さ!」 田辺 「……いやまあいいけどさ。なんか重要そうじゃない気もするし」 中井出「や……同感だけどさ」 田辺 「───でも待てよ?ロビンズイコンって確か……」 田辺が首を傾げる中、しみじみ思いながら俯いてみると、 ふとナビにメールが届いていることに気づいた。 丘野とtellした時点で気づこうよ、俺……。 中井出「メールが届いてる……なんだろ」 田辺 「む?……ああ、あれじゃないのか?バージョンアップの話。     なんでも今回から、ジョブのことがいろいろ変わるんだとか。     さっき言おうとして中途半端になってたな、忘れてた」 中井出「へー……」 田辺 「つーか見てなかったんだな」 中井出「う、うむ……てんで気がつかなかった」 田辺 「まあ立て込んでたみたいで、届いたのが今朝だからな。     ドタバタしてりゃあ気づかないのも当然だ」 中井出「そうなのか───むう」 チラリと見れば、ホーリードラゴンは我らの行動を伺っている様子。 さっきみたいに無闇に攻撃しようとして、 抜刀連技くらいそうになるのを恐れているようだ。 ならば……今の内?  ◆ヒロミ通信No.971───“今回のバージョンアップについて”P1  今回よりジョブ変更が自由になりました。  自由がウリのヒロラインにて、  ジョブだけが好きにできないのはどうかという声があったためです。  ただし条件が必要となり、現在のジョブからドロップアウトするために、  ロビンズイコンが必要となります。ロビンズイコンはこの世界のどこかにあるので、  それを見つけてドロップアウトしてから変更してください。  ジョブ変更は西の大陸のジョブ爺に話し掛けることで可能です。  なお、竜騎士などの槍使いは、剣士と一緒くたにし、戦士として扱うことになります。  戦術士が剣士、斧使い、槍使い、執事、女中などの接近戦主体のジョブ。  魔術師がワイズマン、ネクロマンサーなどの魔法主体のジョブ。  狙撃主がアーチャー、ガンナーなどの遠距離攻撃主体のジョブ。  それぞれ三つのレンジジョブには新たなアビリティが加わります。  近接/戦術士に“覚悟”。STRとVITに+修正。永続アビリティ。  魔法/魔術師に“英知”。INTとMNDに+修正。永続アビリティ。  射撃/狙撃主に“狩魂”。DEXとAGIに+修正。永続アビリティ。  どれも“アビリティ”であるため、基本値として設定。  ステータス移動の際、そのポイントまでは移動できません。  ◆P2  竜騎士などが仲間にする飛竜などは、ペットシステムとして安定。  ペット扱いとなり、竜騎士も基本的には戦士扱いとなります。  しかし以前と同様に固有ジョブアビリティは使用可能なので安心を。  ちなみに、戦術士が銃を撃とうが、ジョブが急に狙撃主になるわけではありません。  戦術士が銃を撃ってはいけない理由など何処にもありません。  逆に魔術師や狙撃主が殴りかかろうが剣を振るおうが、戦術士にはなりません。  武具の選択は相変わらず自由です。賢者が大剣振るおうが構いません。  聖職者が呪い装備を着ていようが、ジョブが聖職者ならそれは聖職者です。  自由気侭に思う存分道を外れてくれて結構です。  ◆P3  最後に、特定のアイテムの使用によってなれるジョブも存在します。  それらは唯一無二のジョブなので、なれた人は幸運だと言えるでしょう。  隠しジョブと必要アイテムは以下の通り  1:魔王───天地の覇紋、邪術儀式用血判状、魔王の斧、魔王の盾、魔王の鎧  2:聖王───聖王の槍、聖王の兜、聖王の具足、王家の指輪  3:法王───法術士の法衣、栄光の杖、妖精の弓、昂翼天使の指輪  4:修羅───闘鬼の仮面、黒飾の外套、鬼人の灼衣、黒の篭手  5:揺炎───贄殿遮那、氷結地獄の首飾り、火除けの指輪  6:妖魔───妖魔の血肉  7:混成───キングストーン、昆虫  8:閃士───カムシーン、マスカレイド、七星剣、氷の剣、銀の手、聖杯  9:機士───エンシェントレリックスマシン  0:覇王───全稀色系武具、全精霊武具  基本的に必要素材を合成、完成したものを装備または服用でクラスチェンジ。  魔王は天地の覇紋と魔王の斧を合成したものと魔王の盾と魔王の鎧を装備、  その上で邪術儀式用血判状にて儀式を行うと可能。  聖王は聖王シリーズ全てを装備し、アイテムとして王家の指輪を使用。  法王も同じく必要素材を全て装備した上で指輪を使用。  修羅は必要素材を全て装備した時点で変異。揺炎も必要素材を装備して指輪を使用。  妖魔は妖魔の血肉を食すのみ。混成は昆虫とキングストーンを合成、完成品を飲み込む。  閃士は武器を全て合成、完成品と銀の手を装備後、聖杯を飲み込む。  機士はエンシェントレリックスマシンを体に寄生、シンクロ率が100%ならば可能。  覇王は稀黄剣(きこうけん)シュバルドライン、稀緑杖(きりょくじょう)グルグリーズ、稀黒装(きこくそう)レヴァルグリード、  稀赤斧(きしゃくふ)ドラグネイル、稀紫槍(きしそう)カルドグラス、稀蒼刀(きそうとう)マグナスを稀色武具とし、  砕臥拳装(さいがけんそう)メテオストライク、流雨尖爪(りゅううせんそう)ヴァルナスレイ、灼撃武装(しゃくげきぶそう)フラムベルグ、  風刹蓮華刀翔風斬魔刀(ふうせつれんげとうはばのかざまのかたな)神真槍雷剣(しんまそうらいけん)ヴィジャヤ、氷結槍剣(ひょうけつそうけん)アブソリュート、  熾天陽輝刀無間裂鬼(してんようるいとうむげんざっき)黒死霧葬剣(こくしむそうけん)ダークマター、蛇竜元龍杖(じゃりんげんりゅうじょう)ディスト・ディムス、  神樹霊装(しんきれいそう)ミストルテイン、月華長尺刀斬冥叢魔刃(げっかちょうしゃくとうざんめいそうまじん)魔人拳爪(まじんけんそう)ディアボロス、  魔黒竜尖斧(まこくりゅうせんぶ)ジャガーノートを意味し、  それら全ての武具を合成させると完成する武器を装備。  普通に考えて不可能なので欠番(0)扱いです。 ……。 田辺 「……ウフフ、やっぱ俺って幸運だったのね。     あそこで老婆が売ってた妖魔の血肉、誰よりも先に買っといてよかった」 中井出「なんかすげぇ納得……妖魔状態のお前強すぎだもん……つーかさ、     ロビンズイコンってジョブチェンジのために必要だったのな」 田辺 「へ?───あ、そうだよそう!ドロップアウトするために必要だったんだ!」 中井出「へぇ〜これがねぇ……。調べる発動」  ◆ロビンズイコン  ロビンダイナスティに伝わるメダル。  現在のジョブからドロップアウトするために必要となるメダルであるが、  別にストーンヘンジを探すために必要なのではなく、  これを使用することで簡単にジョブ解除が可能。  ドロップアウトを実行するとすっぴん状態になるので、  周囲に敵が居ないことを確認してから使用しよう。  *潜在能力:ドロップアウトをすると必ず素っ裸になる ……。 中井出&田辺『ヤな潜在能力だなオイ……』 名前がロビンズイコンって時点で、あまりいい予感はしてなかったが…… まさかロビンのドロップアウトと同じく素っ裸になるとは……。 こりゃ街角なんかでやった日にゃあ生き恥さらしもいいとこだ。 中井出「しかし……あれだな。話戻すけど、十の隠しジョブってさ。     妖魔はまあ貴様がなってるとして、     混成、閃士、機士って案外早くなれそうだよな」 田辺 「特に混成と機士か……機士なんてすぐで、混成なんて昆虫捕まえればすぐじゃん」 中井出「その他は難しいな……閃士は、     カムシーンとマスカレイドだけなら持ってるからいいとして……」 田辺 「あ。そういや弦月から贄殿遮那と氷結地獄の首飾り、     篠瀬さんが持ってるって聞いたな。     ……あとのジョブのことはちょっと解らないけど」 中井出「そうか?少なくとも“魔王”の邪術儀式用血判状は知ってると思ったんだが」 田辺 「あえて触れないようにしてたんだからそっとしといてくださいサー!!」 そう、それはかつて田辺くんの命を賭して、邪術を覚えようとしていた時のこと。 稀蒼刀マグナスを篠瀬さんに届けるおつかいイベントを、田辺くんらに任せた時のアレだ。 届けなきゃ死ぬという恐怖を前に、彼らが北から南へ東から西へ駆けずり回ったアレ。 今となってはいい思い出さ。 田辺 「……って、思い出した。そういや一つ合成出来ないままだった武器があったんだ」 中井出「ほほう?それは?」 田辺 「レイジングリズィーっていうリザードマン種に伝わる宝剣。     武器が仕込み杖(刀)だった所為で合成出来なかったんだ。     ……そういや清水から無理矢理もらっておいて、合成出来ないことに気づくや、     悪いことしたって思って“合成した”ってウソつき続けてたんだっけ……」 中井出「なかなかにクズだな、田辺ニ等」 田辺 「原中ですから」 ニヤリと笑う彼は本当にクズだった。 じゃ、次だ次。  ◆エンシェントレリックスマシン  “古代遺跡の機械”という意味を持つ、奇妙な形の物体。  遙か過去の時代のとある文明において開発されたらしい、拳大程度の大きさの機械。  なにを目的として作られたのかは不明だが、使用には相当なシンクロが必要。  ナノマシンで構築されており、その集合体。  鉄分を増幅させて自身を複製するように造られており、鉄分を求める習性からか、  人体の傷に自らの意思を以って付着するという特性を持っている。  そのため、傷口に付着すると、血中鉄分を以って自己複製。  体内を支配し、やがては体内全体を埋め尽くす。  身体に寄生、シンクロ率が合うと、そのまま外れなくなる。  逆にシンクロ率が低ければ一定の鉄分だけを奪って外れる。  害らしい害はなく、シンクロ率さえ高ければ武器として扱うことも……? ……。 中井出「……なぁ、これってやっぱり……」 田辺 「間違いないと思うぞ?」 これは面白そうなものを手に入れた……! 誰かを贄に使ってみるしかあるまいよ! と、それより次だ次。  ◆キングストーン  世紀王が持つとされる不思議な石。  かつては太陽の石と月の石とに分かれていたが、  古のナノテクノロジーによって融合させられたとされている。  とても強いエナジーが込められており、別名を陽月石という。  太陽、または月の光を浴びるととても力強い力を発揮する。  が、持っているだけでは効果は現れない。  黒太陽、影月の名を宿しており、合わせた名を闇蝕。えんしょくと読む。  これを身に宿せし者、“闇の陽月”(ダークサンライト)の二つ名とともに大いなる力を得るだろう。  ただし人をやめることになるので注意。武器も固有武器となり、  それ以前に使用していた武器は使えなくなる。  が、武器が剣である場合にのみその剣が変異する。  使用するには特定の昆虫が必要。なるべく強いのを選びましょう。 ……。 田辺 「世紀王?って……もしかしてあれか?」 中井出「懐かしいなぁおい……でもどうやって使うんだ?これ。     虫と合成させて飲む以外に方法ないの?」 田辺 「ないんじゃないか……?」 昆虫を必要とする時点でかなりバレバレな気もするが、とりあえず俺が使うことはないな。 人であることがこの博光の絶対条件だ。 誰がなんと言おうが、俺は人をやめる気は無い。 ……と、では気を取り直して……解体芯書をば。  ◆解体芯書───かいたいしんしょ  解体の奥義が記された書物。  過去、武器を愛する者が誤って不必要なものを合成してしまったのち、  生涯をかけて研究、完成させた伝説の奥義が記されている。  行きつけの信頼のおける技師に渡し、武具解体術を覚えてもらえば、  合成させた武器でも解体してくれるようになる。  例:グレートソードに毒の武器を合成させてしまったが、やはり要らなかった。    そんな時に解体術を覚えた技師を頼れば、    合成した毒の武器を元のまま取り出してくれる。  さらにこの本には常識を覆す技師の秘奥義が記されており、  技術がズバ抜けて高い技師に渡せば、合成不可能なものの悩みも解消されるかも……?  しかしそれが完全に完成に至るにはもう一つ条件が必要であり、  それは技術の高い技師ならば知っていること。  必要ならば技師の方から依頼されるので、なんとか手に入れてみよう。 ……。 中井出&田辺『オーーーッ』 これは素直に素晴らしい……! 合成したものを解除できるなんて! ……まるで夢のような書物だわぁ? でもなんだろうね、最後のほうの合成不可能がどうとかのやつ。 もしかして合成不可能な武器とかも合成出来るとか? ……だったら最高!どんな依頼をされるとしても、必ずや成し遂げてみせましょう! 中井出「───《ピキーーン!》閃いた!」 田辺 「おお提督もでありますか!自分もでありますサー!!」 丘野くんの旅路を革命させる───いわば丘野くん改造計画!! それを実行するために、これはとても重要なアイテムだ! 中井出「tellゴー!《ナルルルル……ブツッ》俺だ!瀬戸内だ!」 声  『その声は提督殿でござるか!?     ひどいでござるよ!人の決心を最後まで聞かずに───』 中井出「おっか〜のくんっ、……忍者やめない?」 声  『いっ……いきなりなんてことを!拙者に忍者をやめろと!?     そんなこと、ロビンズイコンが無い限り───……見つけたんでござるか?』 中井出「うむ!今手元にある!でだな、刀系のものは剣と合成出来ないのは知ってるな!?     故に貴様は武士になれ!それらの忍者刀を立派な一本の刀にし、     この乱世を駆ける武士であれ!」 声  『サーイェッサー!!面白そうだからやるでござるよ!』 田辺 「早ッ!もっと冷静になって考えたりとかしねぇのか!?忍者好きなんだろ!?」 声  『失礼な!拙者は時代劇全般が好きなのであって、忍者が好きなわけではござらん!     故に武士になるでござる。武士ならばござる語もそのままでいけるでござるし』 田辺 「や……でもさ。忍術とかもったいなくないか?せっかく復活したんだろ?」 声  『もはや忍道に未練無し。己の忍道を貫き守り通そうにも、     拙者にゃその忍道自体がなかったことに気づいたでござる。     ならばなにを貫くか。……結論は原中魂だったでござるねぇ』 何故かとても誇らしげな声だった。 今この場に丘野くんが居るのなら、きっと遠くの空を眺めていたことだろう。 ……ここ、空というか雲の上だけどさ。 声  『それになにやら最近、少し嫌な気分ではあったでござるよ。     忍者といえばNARUTO、という感じで見られている気がして……。     生分身を使おうものなら多重影分身、     木に逆さにくっつこうものならNARUTOの真似。     ……忍の行動全てがNARUTOと照らし合わされるのが、     もう我慢出来なくなったでござる。     分身は言わずもがな、逆さにぶらさがることくらい     らんま1/2あたりで忍キャラがやってたでござるよ。     そこでチャクラを使っていたかどうかなんて知らんでござるが。     そんな忍の先入観にかまけてNARUTO技に走った自分を反省するためにも、     その武士へのジョブチェンジ……受けて立つでござる!』 中井出「ぬう丘野二等……自分で言っといてなんだが、後悔はせぬか?」 声  『やらんうちから後悔は出来ません!サー!というわけでとりあえずやるでござる。     ……あ、清水殿ー!螺旋斬の名前、ダンシングソードに大決定でござる!』 声  『いきなりだなおい!……や……別に名前にこだわり持ってないからいいけどよ。     名前もいい名前がないから適当につけただけだし』 声  『で、イセリア殿ー?もし拙者以外に忍者が居ないのなら、     忍者のジョブを抹消しちまってくだされー!もはや忍に戻る気さらさら無し!     拙者はこれより刀に生きるでござる!』  ガカァン……!《ジョブ“忍者”が完全抹消された!》  ピピンッ♪《忍者関連のアビリティが消滅!自由人でも使えないようになった!》  ギピンッ♪《忍者刀の種類が、武士が装備可能な小太刀扱いになった!》 総員 『早ッ!!』 物凄い速度だ……ありゃ絶対にろくに調べもしてなかったぞ。 もし丘野くん以外に忍者が居たらどうする気だったんだ……? 声  『お?お、おおお!ジョブが“忍?”になってるでござる!疑問系でござるよ!     忍術も全て抹消されているでござる!これはなんと見事な!     ……え?イセリア殿?……おお、おお、そうでござるか!大感謝でござる!』 中井出「丘野二等?」 声  『吉報でござる!     イセリア殿が忍術以外の技は継承させてくれると言ったでござるよ!     無月散水も龍虎滅牙斬も大丈夫だそうでござる!』 中井出「そ、そうか」 田辺 (きっと設定変えるのが面倒臭かったんだろうなぁ……) 隣で遠くを見ている田辺二等の考えが頭の中に響くように理解出来る思いだった。 声  『これで了でござる。螺旋丸みたいな技名もなくなり、     忍者のジョブも無くなった……忍者と忍術はこの世界から消えたでござる。     忍者が拙者だけっていうの、結構プレッシャーだったでござるよ。     これでなんとか人心地でござる』 声  『それはいいんだけどさ、忍者の里ってどうなるんだ?』 声  『……?おお、そうでござった。あそこが無くなると麦茶豆がもらえなく……え?     ふむ……ぬう。そうなんでござるか?     ウヌ、ウヌ……おお、なるほど。───武士の里に変更されたらしいでござる』 武士か……篠瀬さんとか連れていったら喜びそうだな。 って……篠瀬さん?……篠瀬さんか。そっか、おお、そうだな。 声  『あのー、ところで提督殿?』 中井出「む?どうした?」 声  『今現在、アフロにそちらへと運んでもらっているのでござるが……     アフロが先ほどの料金を払えとうるさいでござる。どうするでござる?』 中井出「あ」 忘れてた。 しまったそうだよ、アフロに運んでもらっておいて、俺金払ってなかった。 ……まあいいや!僕魔王になりたい! 物事に縛られない、魔王な人になりたい! こうなりゃ人々に散々と恐怖される魔王になりたい! 丁度天地の覇紋もあるし!邪術用のアレは木村夏子二等から貰うとして、 あとは魔王装備を揃えるだけだし。 中井出「あ、キャッチホンだ。切るぞ丘野くん」 声  『え?いやあの───ま、待ちたまえ!じゃなくて、だから金!金《ブツッ》』 中井出「……悪は去った」 田辺 「ひでぇな提督……」 中井出「この世は乱世よ。武器を鍛えてやろうとは言ったが、     それとこれとは話が別だ。それに……ねぇ?     彼が小太刀を合成させて刀を作るんだったら、     もう俺達が鍛えてやる必要なんてないんじゃないか?」 田辺 「あ」 彼は二刀を鍛えていた筈だ。 ならばその二つが合成される時、二つの武器に宿る+修正は一つになる筈。 そうすれば我らの武器の+修正にだって追いつくってもんだ。 田辺 「あ、あーあーあー、そっかそっか。じゃあ解決だな。     大体俺達と同じくらいの+修正に……あ、いや……俺の、だな。     いやそれ以上か?とにかく高い+修正になるんだろうなぁ。     提督の武器、+修正が尋常じゃないし」 田辺二等が幻魔を見せつつ言った。 +99で止まっているそれは、 猫と出会うことがなかったためなのか、100の位へ達していなかった。 中井出「+99って……よくこんなのでホーリードラゴンの鱗切れたな」 田辺 「や、だってほら、俺妖魔だし。光属性の敵には強いぜ?     他の守護竜相手の時は妖魔化で膨れ上がった能力全部、     STRに変えて叩き込んでただけだし。あとは───」 中井出「幻魔の基本能力か……それ強すぎだろ」 田辺 「“幻魔”自体はレベルに呼応して強くなるんだとさ。     だから武器レベルを上げても“幻魔”自体の攻撃力の+にはならないみたいだ。     ようはレベルアップだな。俺とともに成長する武器……ってことらしい。     当然、武器レベル上げれば基本攻撃力はあがるわけだが」 中井出「…………《ホロリ》」 田辺 「や……そこでどうして泣くんだ?」 中井出「いや……俺もそんなことを思えた時代があったなぁって……」 己とともに成長する武器……封印される前のジークフリードはまさにそれだった。 それなのに……い、いや!これは試練だ!過去に打ち勝てという試練さ! だから今は目の前の問題に打ち勝ちましょ!? じゃないと過去を振り返る暇さえないよもう! 中井出「───さあ来い鈍牛!準備の全ては整った!今こそ貴様をコロがしてくれよう!」 田辺 「妖力解放───レベル1!《ガフィィインッ!!》』 俺が火闇霊章を燃え盛らせ、田辺ニ等が半人半妖化。 片や、両腕から闇の炎を燃え滾らせる凡人魔王。 片や、金髪銀眼の、幻魔という大刀(クレイモア)を持つ妖魔。 大刀と書いてクレイモアって読むのは相当な力業だが、今はそんなことどうでもよろし。 サガフロンティアでは剣の形の幻魔だが、元が仕込み杖だから仕方ない。 ……そう考えると、篭手とかの武器だったらどんな幻魔になってたのか興味が尽きん。 ちなみにレベル1で半人半妖/金髪銀眼、レベル2で妖魔/銀髪緋眼、 レベル3で完全妖魔/形態自由……だけど人型は無理らしい。 と、考え事はここまでだ! 中井出「来た来た来たァアッ!!」 田辺 『炎魔の準備はいつでもOK!隙ありゃいつでも撃ってくぜ!』 ホーリードラゴンが身体をうねらせ、俺達目掛けて───素っ飛んできた!! うねらせたのなんてほんの少しの間だ。 突っ込む体勢を決めるや、うねりなど無視して真っ直ぐ突っ込んできた。 逃げるなよ、俺……覚悟、決めたろ───!? 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