───冒険の書208/隠しジョブへと馳せる野望───
【ケース528:中井出博光(超再)/広い世界とちっぽけな僕】 大き目のグミの包装紙で作ったヒロミツ1号と5号、そして100号は…… 風に乗って空高く舞い上がっていった。 どこまでも……どこまでも高く、……真っ青な空をゆっくりと切り裂いて。 やがて真っ白な紙飛行機が雲に溶けて消えるのを……俺は黙って見つめていた。 ……風が吹いていた。 セミが鳴いていた。 草が……揺れていた。 蒼木は吹き飛ばされそうになる大きな帽子を手で押さえ、 ホギーはその横に寄り添って、穏やかに笑っていた。 そうした夏の気配の中……私は。 何故自分だけレベルが上がらないのかを……ただぼんやりと……考えていた。 何故ってそりゃ……試練中だから。 中井出「剥ぎ取り終了……はぁ。僕もう寝る……寝たい……。     サワー浴びて身体を清めてから眠るんだ……」 悠介 「そか。俺はこうして竜の血も手に入ったし、どうでもいいが───」 中井出「おっと勘違いしてもらっては困るぜ晦一等兵。     貴様が欲しいのは竜の血であって、龍の血ではない筈だ。───ン見よッ!!」 バックパックから取り出した小瓶をヴァーと突き出す。 それぞれ片手ずつに持った小瓶……そこには、竜の血と龍の血が存在していた……! 悠介 「なにっ!?やっ……竜の血ってこれじゃダメなのか!?」 中井出「だってそれ龍の血だもん。貴様が必要としてるのは竜の血だろ?     ホレ……アイテムの名前をよく見てみるのだ。龍の血だろ?ちゃんと」 悠介 「ぐあっ……!───提督!交換」 中井出「断る!!」 悠介 「断るなよ元気に!眠かったんじゃなかったのか!?」 中井出「眠いさ!……倒れてしまいそうなくらいね……!」 悠介 「……もう寝てしまえ。そしたら」 中井出「バックパックには俺にしか開けない暗号式ロックがかかっているが」 悠介 「盗んで……っていつからバックパックはそこまで高性能になったんだよ!」 中井出「グオッフォフォ、とにかくこの博光からモノを盗もうなど、15,8秒早い!」 悠介 「……相変わらず無駄に届くか届かないかの時間なんだな」 中井出「アレだよお前、人間なんていつ誰にどう抜かれるかなんて解んねぇんだよ」 あ、いや……人間って僕一人だっけ……。 別に空界人とかを人外扱いしてるわけじゃないけどさ。 やっぱほら……能力が使えない=普通の人間って感じがしない? この場合、地界人ってことになるか。 中井出「というわけで。俺は癒しの関所行って、     そこでナギーを拾ってから猫の里に帰るわ」 悠介 「うん?どうしてそこにドリ……ナギーが居るんだ?」 中井出「負けたら手に入れたアイテムを奪われる〜って設定だったらしいから、     だったら奪われないようにとナギーに全部渡して関所に転移してもらった。     ナギーズ転移は関所にしか飛べないからな…………あれ?     自然が多いところなら飛べたんだっけか」 ……やっちまった。 まあいいや、あそこらへん行くのも久しぶりだし。 それよりも迎えに行かずともさっきみたいに契約転移してもらえば早いんだが、 ……うん、やっぱあそこらへん行くのも久しぶりだし。 旅は移動してこそ旅さ。ゲームとはそういうものだ。 ……サマルトリア物語(たらいまわし)になるのだけはゴメンだが。 悠介 「……そか。それで、屠竜の秘術はあったのか?」 中井出「あった!」 悠介 「見せろ!」 中井出「断る!」 総員 『早ッ!!』 ───その間僅か2秒!! 悠介 「てっ……提督貴様!全てを自分のものにする気か!」 中井出「なに言ってんだ当たり前じゃないか。そうでなくてなにがRPGか。     タンスからモノ漁って自分のモノにしちまう勇者さまをおナメじゃないよ?     それに比べりゃ俺なんて遙かにやさしいぞこの野郎。     なにせ人手の着かない場所の宝箱から取ってんだ。     村人にやさしいじゃねーか。アレだよほら、エコロジックライフ?     環境にやさしい魔王目指してんだよ俺は」 悠介 「……敵対したら?」 中井出「え?容赦なく屠り散らすけど」 悠介 「何処がやさしいんだよそれ!」 中井出「ほっといてくれ!俺はもういっぱいいっぱいなんだよ!     敵に情けかけてられるほどのお人よしじゃあもういられねーんだよ!!     ギリギリなんだよこっちはもう!!」 藍田 「まあほらあれだ、敵は敵って決めないとやってけないだろ?」 岡田 「どれだけ仲が良かろうが、敵になったからには全力で潰す。     当然じゃないか、なにせ敵だ」 悠介 「……その敵に事情があったら?」 総員 『くどい!敵は敵だ!その事情ごとブッ潰す!!』 遥一郎「立派なのか外道なのかわからないな……」 外道です。 悪を自負する外道です。 だって最初から悪だと解ってりゃあ、なにをするにも覚悟なぞあっという間に決められる。 悪になりきれんヤツこそそういう時に後悔するのさ。 ……悪でも僕は後悔しっぱなしな気もするけどね。 中井出「晦よ……敵とは敵だからこそ敵なのだ。     相手が敵であるかぎり屠るのは戦人として当然のこと。     敵がかつての味方だからと、なにもしなかったら死ぬのは我が身。     今を全力で生きている限り、そんなことは御免である。     ならばどうするか?……戦うしかあるまい。     たとえ全てが終わり、悲しみに暮れようとも……     通った道が間違いだったとしても、     せめて己の選択は間違っていなかったと思わねば、     それこそ屠っていった者に対して失礼というものだろう」 悠介 「それって自分の正当化じゃないか?」 中井出「え?……勝者が自分を信じないでなにを信じろというのだ?     敗者信じたら、相手を殺した自分なんてゴミクズ以下のなにものでもねーだろ。     死んだ敗者を信じたかったなら死んだ敗者を追って自害してしまえ!!」 悠介 「うお……そこまで言うか」 中井出「所詮この世は弱肉強食よ!でもたとえ弱くても、     意志を以って刃向かうことには意味があると思うのです。     だから僕は自分を信じられます。仲間を信じられます。武器を信じられます。     故に確かな覚悟と意志を抱いて突き進むならば、己の道を魁るしかないのさ。     戦場では己こそが絶対の悪なのだと信じ込めばなんとかなるさ!」 澄音 「正義じゃなくて悪なんだね」 中井出「うむ!悪はいいぞぅ?なにせ自分が悪だと信じ込んでいれば、     魔王魔王と嫌われてもむしろその反応が面白くなってくる」 総員 『クズだな』 中井出「うるさいよもう!!」 でもクズって言われるのはどうにもこう……いや、いいんだけどさ。 そもそも魔王だって言ってるのにどうしてクズって言われるのかがまず解らん。 だがその意気や良し。 中井出「よし。それでは話も適当に済んだところで行こう。     それと今のは寝言みたいなものだと思ってあまり間に受けんよーに」 藍田 「提督だしな」 岡田 「最初から真面目だなんて思ってないから」 中井出「それはそれでヒドイですね」 いいけどさ。 中井出「じゃ、そーいうわけだから。達者でな」 丘野 「貴様らのことは忘れねーでござる……さらば」 遥一郎「待て」 中井出「《がしぃっ!》ひょっ!?な、なにをする!」 突如としてホギーが我が肩を掴む! ……そういや地面に落ちてった我が右腕はどうなったんだろうか。 やっぱり回復に合わせて我が腕に戻ったと考えたほうがいいのか? じゃなきゃヤだな、うん。 遥一郎「屠竜の秘術、ちゃんと俺達にも見せてくれ」 中井出「だ、だめだ!秘せ───」 悠介 「秘仙丹のことはどーでもいい!そもそもそれが目的でここに来たんだ!     提督貴様、空を飛翔する竜族を貴様一人で始末出来る気か!?」 中井出「ぬう!それを言われると大変心苦しいが!     とりあえずコトの発端のてめーにだけは言われたくねー!!」 総員 『まったくだ!!』 悠介 「うぎっ!?い、いや、今はそんなこと言ってる場合じゃなくてだな……!     ほら、提督だって言ってただろ!?自分を信じるしかないって!」 中井出「うむ!だからこの博光も自分を信じて言っている!     諸悪の根源に言われたくないと!」 悠介 「あのなぁあああ!!あ、い、いや……だからだな!?     俺だって責任感じてるから見せてくれって言ってるんじゃないか!     だから見せてくれ!それがあれば竜族と戦いやすくなると思うんだ!」 中井出「グ、グーヴ……!」 確かにいくらなんでも、この大空を舞い散らかす竜族全てを倒すのは困難すぎる。 それにレベルが上がらない今の俺じゃあ、戦い続けてりゃいずれ力尽きるだろう。 ともなれば……やっぱり協力者は必要なわけで。 中井出「……うむ解った!この博光、男の叫びを黙って見過ごすほど愚かではなし!     罪を償おうという貴様の言葉、胸には届かなかったがなんとなく受け取った!」 悠介 「それはそれでむかつくなオイ!!素直に胸に届かせろよ!!」 中井出「細かいことは気にするな、見せると言っとるのだから……あ、ただし条件がある」 悠介 「条件?……また金か?」 中井出「フフフ、いや……今回は素材がたくさん手に入ったから金はヨロシ。     条件というのは他でもない。見せるのは、手に取らせるのは奥義書だけだぞ?     屠竜奥義書と屠竜魔術書……この二つだけだ。見せるだけで、あげも売りもせん」 悠介 「……ま〜たなにか悪どいこと考えてるのか?顔が邪悪だぞ」 もちろんだ、なにせ悪だからな。 正義なぞクソ喰らえである。 中井出「それで、どうだ?もちろん断るなら貴様らなぞ知ったことじゃねー!!     空を飛ぶ竜族は我ら素晴らしき7人とゼットたちで屠るとしよう!」 悠介 「いや、べつにいいぞ?元々それ以外が必要だから昇ろうとしたわけじゃないし」 中井出「《カキキ》……蓄音したぞ?後悔せんな?」 悠介 「しないしない。だから見せてくれ」 中井出「《ギラッ!》」 田辺 「《ギラリッ!!》」 了承は得た! 俺と田辺は怪しくも鋭い視線を交差させるとグオッフォフォと笑い、 このあとに待つであろう晦の反応を楽しみにしつつ───…… アフロに我ら素晴らしき7人、 ディルゼイルに晦ら一行という編成で癒しの関所を目指すのだった。 ───……。 ……。 と……そんなわけで、癒しの関所前。 ナギー『だから何度も言っておるであろ!     わしはここへ戻る気などさらさらない!さっきから言っておろうに!』 森人 『いいえ戻っていただきます!     あなたは然の精霊としての義務をどう思っておいでか!』 ナギー『大事なものじゃがそれ以上に大事で楽しいものを見つけた!     別に癒しを送り込むことを休んだ覚えはないわ!     ここからでなくとも十二分に癒しを遅れておるであろ!     なにをいらいらしておるのだうつけものが!!』 来て早々に罵倒騒ぎを発見。 たくさんの森人に腕を掴まれたナギーが、森人とギャースカ言い争っていた。 俺はアフロに払い忘れの金額分を自分の分だけ払うと、そんなみなさまに近づき─── 中井出「やあ」 あくまで普通に挨拶してみた。 ……すると向けられる、圧倒的殺意を込めた凝視……!! ナギー『……!ヒロミツ!おおヒロミツか!このうつけどもをなんとかしてほしいのじゃ!     わしの力でどうにかしようにも、     わしは立場上こやつらを傷つけることは出来ぬのじゃ!』 中井出「僕が許します。やっておしまい」 ナギー『サーイェッサー!!』 森人達『えぇえええーーーーーーーっ!!?』 その後の惨劇を誰が知ろう。 急に生き生きとしたしたナギーは上がったレベルとSTRにかまけ、 森人たちをそれはもう投げるわ捨てるわ。 最後の一人をトルネードフィッシャーマンズスープレックスで気絶させたところなんて、 もうさすが原中と言わざるを得ないくらいに見事だった。 ナギー『成敗!《ごしゃーん!》』 倒れる森人たちの中に、一人立つナギーはとても雄々しかった。 決めポーズも相まって、なんと素敵な。 ナギー『ヒロミツーーーーッ!!』 中井出「《がばーーーっ!!》ぬおーーーーーっ!!?」 で、それが終わると我が首もとに抱きついてくるナギー! ぬ、ぬうこれは……飛びつきスイング式DDT!? ナギーよ!貴様がそこまでこのヒロミツの命を狙っていたとは! ならばこの博光も……誠意を以って応えねばならんな!! 中井出「M11型デンジャラスアーチ!!」 ナギーの背中に手を回し、キツくサバオッてからスープレックス! しかしナギーは、それこそ一瞬だけ驚愕の色を表情に表したが、 すぐさま笑むと─── ナギー『フロントカーフブランディングーーーーーッ!!』 中井出「な、なにぃ!?《ドゴォオンッ!!》ぐおわぁあーーーーーーーっ!!!」 なんと、俺の後頭部に回していた腕を解除し、 俺の顎に添えたナギーが俺がつけた勢いを利用してカーフブランディングを!! しかも顔面から落とすのではなく後頭部から落とすリバースというかフロントというか、 ともかく逆技を仕掛けてきたのだ!! もちろん後頭部をしこたま打ちつけた俺は激痛に襲われ、 この大いなる草原をゴロゴロと転がり回ることとなった。 ……まあその、ナギーを抱き締めたまま。 中井出「フ、フフフ……強くなったなナギー……。     この反応速度、かつての貴様からは考えられぬわ……」 ナギー『フフフ、ヒロミツこそ……。本気を出せばわしの技から逃れられたであろうに』 中井出「いや、まさかフロントカーフで返されるとは思わなんだわ。     この博光、虚を突かれたわ」 定番モノには強いが、初めてやられるものには滅法弱い……こんにちわ、中井出博光です。 と、再会の喜びシーンはここらにしてと。 倒していた自分の身体を起こすと、 一緒に起こすことになったナギーをストンと地面に下ろす。 中井出「で、ナギー新兵よ。任せておいた例のブツは、無事であるか?」 ナギー『イェッサー!無事なのじゃでありますサー!!』 中井出「うむそうか!よくやったナギー新兵!」 元気に返事をしてゴゾォと、渡しておいたものをバックパックから取り出すナギー。 そこにはなにひとつ欠けることのない、渡したままのもの全てがあった……!! 藍田 「お、おお!これがそうなのか!」 岡田 「どれ!もちっとよく見せてくれ!」 皆様の興奮は今が旬。 この場に居る全員が、こぞろって我が手にある秘宝を覗きに集まった! 中井出「屠竜奥義書に屠竜魔術書、月光デッキブラシに魔剣クサナギ、     月光竜の卵に───新たに手に入れた、ロビンズイコンと解体芯書、     キングストーンにエンシェントレリックスマシン……」 確認するようにゴソリゴソリと手から手に移し、バックパックに入れていく。 で、もちろんトドメは─── 中井出「そしてトドメがラグナロク」 悠介 「なにぃいいいーーーーーーーーっ!!?」 総員 『うぉうわビックリした!!』 スチャリと手に取った武器を前に晦絶叫! そうなるであろうと期待していた俺と田辺以外の全員が、 とても大きな声の前に驚き竦みあがった!! 悠介 「なっ!おまっ……あ、え?えぇっ!?ていとっ……えぇえええっ!!!?     いや、えっ……えぇ!?ちょ……ラッ!?ララララグ!?」 中井出「グオッフォフォ……そう、貴様の愛剣ラグナロクさ……。     光の聖域でこれを発見した時はたまげたぜ……そう、まさに今の貴様のように」 悠介 「あんなところにあったのか!?───て、提督!それ《ズビシィ!》いてぇ!」 中井出「なァアアにするのアンタァア!人の持ち物にいきなり手を伸ばすなんてェエ!!     貴方には礼節ってものがないのォオ!!?」 悠介 「やっ……けどさ!それ俺ので───」 中井出「なァアアに言ってンのアンタそんなモミアゲ伸ばしてェエ!!     奥義書と魔術書以外は見せもしない約束だったでしょォオ!!?」 悠介 「ぐっ……!だからあんなこと言ってきたのかわざわざ!それは卑怯だろ!     他のアイテムならいざ知らず、そればっかりは黙ってられるわけがない!!」 中井出「口答えするんじゃないのォオ!!     アンタはもうほんと人のアゲ足ばっかりとってェエ!!」 悠介 「アゲ足って……それ言ったらそもそもモミアゲ関係ないだろうが!!」 中井出「なに言ってんの実際モミアゲ長いでしょォオ!!?     とにかくこれは渡しません!そういう約束だったでしょ!?」 悠介 「くおお相変わらずの提督っぷりを見せつけやがってぇええ……!!     あーいいわかったもういい!そっちがその気なら───殺して奪う」 中井出「なにをする貴様ーーーーっ!!!」 なんと晦一等兵が襲い掛かってきた!! コマンドどうする!? 1:たたかう 2:ぼうぎょ 3:とくぎ 4:にげる 5:アイテム 結論:───5!! 中井出「そりゃーーっ!!《バァーーーッ!!》」 悠介 「なにっ!?」 拳を強く握り、襲い掛かってきた晦からまず距離を離す! そしてエンシェントレリックスマシンを取り出すと、 エジェクションしたハウリングナイフを手に岡田くんに襲い掛かった!! 岡田 「へっ!?ち、血迷ったか貴様ーーーーっ!!《サクシャアッ!》いでぇっ!!」 あまりの突拍子の無さに動けなかったらしい岡田の腕に傷をつける! するとじわりと出てくる血!血!血ィイイ!! すかさずそこにエンシェントレリックスマシンを押し付ける!! ズズッチュウゥウウウウン!!! 岡田 「ギャッ!!ギャアーーーーーーーーーッ!!!」 するとどうだろう! 傷口に当てた拳大程度の球体はくしゃりと形を変えると、 音さえ出して岡田くんの体からなにかを奪ってゆくではないか! なにかっつーか確実に鉄分なんだろーけど!  ドシャア…… やがていろいろ吸われたらしい岡田くんが、 糸が切れた人形のように倒れるのを、僕は黙って見つめていた。 悠介 「………」 中井出「………」 総員 『………』 なんだかとんでもなく広がる“やっちまった”感。 どうしてだろう、 神をチェーンソーで惨殺するよりもよっぽど嫌な雰囲気が広がっている気がするのは。 鉄分の大半が吸い取られ、 通常の三倍くらい黄色っぽく見える岡田くん……ああ、やっちまった、どうしようかこれ。 中井出「……《チラリ》」 総員 『!!《ゾザザァッ!!》』 大きくなったエンシェントレリックスマシンを手に、静かに振り向いてみた。 すると、倒れた黄色い岡田くんとマシンとを見比べて後退りする僕のみんな。 中井出「フッ……見ろよナギー。あんなに勇んでいた野郎どもがコレモンだぜ?」 ナギー『………』 中井出「って、あのー……ナギーさん?どうしてキミまで無言で離れてゆくの?」 ナギー『た、訊ねる前にナイフとその球体を地面に置くのじゃ!』 中井出「断る!それを承諾させたいのならまず!     晦一等兵にラグナロクを諦めるように言うのです!」 悠介 「卑怯だぞ提督てめぇ!!このクズが!」 藤堂 「ゲスが!ゲスが!!」 清水 「カスっ……!」 田辺 「ゴミっ……!」 総員 『クズ………………っ!!』 中井出「うーわー、すげぇ言い方」 だがそれでこそ実験のし甲斐があるというものよ。 ニヤリと笑む頬が抑えられん。 いや、抑える必要もなし。 ならば、もはや突き進むしか吉は無し。埒も無し。 ───悪は……我にあり。 中井出「イエーーーーーーッ!!!」 総員 『うおお来たァアーーーーーッ!!』 まるでウィルス感染者に襲われそうになったような勢いで慄くみんな! そんな中で蒼木クンが状況に困ったように微笑をたたえていたが、 すぐさまホギーに引っ張られて逃げてゆく! ───安心するのだホギー!俺は貴様らには用は無い! なぜならせっかく手に入れたエンシェントレリックスマシン…… 使うのは素晴らしき7人と決めてあるからである! 藍田 「ってオィイーーーッ!!なんで真っ直ぐこっち来てンだァアアーーーッ!!」 中井出「藍田二等!これは試練だ!     貴様は知らんだろうがこれはべつにエナジードレインをするわけではない!     体内の鉄分を吸収し、自己複製して繁殖するナノマシンの集合体だ!     本来吸収体が無ければ増殖出来ないのがナノさん!     漫画やアニメなんかじゃおぞましいくらいの自己繁殖をやってるが、     ありゃ実にフィクション!そしてこれもこの世界だからこそのアイテム!     相応しいものの鉄分ならば、僅かでも十分自己複製出来るシロモノだ!     さらに言えば、これは隠しジョブに至るためのアイテムでもあるのだ!」 藍田 「なっ……マジでありますか!?サー!」 中井出「うむ!残念ながら岡田くんはシンクロ率1%だったためにあそこまで吸われたが、     それでも相応しきものの鉄分ならば全然平気なのだ!     むしろ武器として使えるらしい!だから試せ!貴様の勇気を!!」 藍田 「て、提督……!そんな素晴らしいものをこの俺に譲ってくれると……!?」 中井出「当たり前じゃないか!我らは素晴らしき7人!     みんながいつでも今より素晴らしきを目指す集団!     だから試すんだ!今よりも素晴らしき者になるために!」 藍田 「サッ……サー!イェッサー!!」 ババァッと敬礼する藍田二等───それに習うように、 他の素晴らしき7人(岡田くんは度外する)が敬礼し、我がもとへ戻ってきてくれる。 青春だ……青春の嵐だ……! 悠介 「……オチが読めた」 遥一郎「ああ……うん、俺もかな……」 中井出「ふはははは!ほざいておるがよいわ!     今から貴様らに隠しジョブというものを見せてやる!     では藍田くんGO!!」 サクッ……ズズッチュゥウウウウン!!!! 藍田 「ギャァアアアアアアアアアア!!!!!《……ドシャア》」 中井出「あれ?…………清水くん!GO!!」 サクッ、ズズッチュゥウウウウウン!!! 清水 「ギャアアアアォアァアアァァァォォォォ……ォ……《……ドシャア》」 中井出「………丘野くん!!」 丘野 「ヒ、ヒィ!やっぱやめるでござるよ!無理で《サクッ》ギャーーーーッ!!     い、いやでござギャアアアアアアアアアアアアアアア!!!!《……ドシャア》」 中井出「…………」 無駄に大きくなるナノさん。 この子ったらこんなに立派になっちゃって……どうしよう……ほんとどうしよう。 中井出「……田辺くん」 田辺 「いっ……いやっ!俺はいいだろ!?だって俺もう妖魔だし!     ほ、ほら!藤堂だ!藤堂をトレードしよう!」 藤堂 「なにぃ!?貴様我が身可愛さに人を差し出すとはなんと見上げた根性!     でもイヤァアア《ガシィッ!》ホワッ!?た、田辺てめぇ!!」 中井出「ここで見上げた根性と言えるだけ、貴様も立派で一流な原中だ。     俺はそれが嬉しい……」 藤堂 「いや嬉しい嬉しくないの問題じゃねぇって!離せ田辺!離せって!」 田辺に羽交い絞めにされている藤堂くんにゆっくりと近づく。 恐怖は最高のスパイスです。 ジリジリ追い詰め、ゆっくりと恐怖させるのですよ。 藤堂 「や、やめっ……ヒィ離せ!離してェエエ!!田辺離してェエエ!!」 田辺 「ククク、自分のためならどこまでも下郎……!これが悪魔の底力よ……!!」 藤堂 「悪魔関係ねぇだろ!って提督も!ガイアスマイルで近づいて───アーーーッ!」 サクッ…… 田辺 「……アレ?」 藤堂 「……お?」 中井出「……《ニコリ》」 田辺 「ア、アノー、提督?ドウシテ僕の腕ニナイフガ……」 中井出「甘い男よ田辺ニ等……羽交い絞めという、     もっとも腕が隙ダラケになる状態でこの博光の前に立とうとは……」 田辺 「なっ……ぬかったわぁーーーーーーっ!!!     《ズチュゥウウン!!》ぐわぁあぉあがああああああああああああっ!!!!」 ……ドシャア。 無惨にも倒れる黄色い田辺くん……チィ、田辺くんでもダメだとは。 中井出「では……残りは貴様だけか」 藤堂 「お、お言葉ですが、サー……。これは素直に諦めたほうがいいのでは……。     つーか提督てめぇ!自分だけ試さない気じゃあるまいな!!」 中井出「安心するのだ藤堂二等……この博光、貴様らだけに辛い思いはさせぬ。     《サクッ》……俺が終わったら次は貴様……《ズズズ……!!》     シンクロ率が合わないうちに出来るだけ大きくし、     まあ合ったら合ったで……幸運ということでギャアーーーーーーーッ!!!!」 すッ……吸われてゆくッ!! 僕の中の大切なものが……生きるために必要なものが……吸われてゆく……! 俺の手から伸びたナノさんが我が傷から侵入、体内にある鉄分の大半を吸ってゆく!! それとともに大きくなってゆくナノさんが何故だか誇らしくみえた。 おお、我ら素晴らしき7人の力を十分に吸い取りしナノマシンよ……! どうか……残った藤堂に素晴らしき力を与えたまえ……!! 中井出「お、男塾万歳……《ドシャア》」 藤堂 「ど、独眼鉄ーーーーーーっ!!!」 とうとう力尽きた俺は、マシンを手にその場に倒れ伏した。 おお……意識が朦朧とする……体に力が入らん……! それなのに体中がギシギシと痛む……これが鉄の無い体か……! そういや黄色い血が集まった場所ってのはヤケに痛いし……あれと似たようなもんか……? 藤堂 「提督……!アンタの男、確かに見せてもらったぜ……!     まさか一人で助かる気じゃあるまいなと思っていたが、     こんな男を見せてくれるとは……!     ならば俺も素晴らしき7人として恥のない生き様を見せてやる!」 藤堂くんが、倒れ伏した僕の両手からナノさんとナイフを取ると、 ゴクリと喉を鳴らし─── 藤堂 「オッ……うぉおおおおおおおおお!!チェストォッ!!《ドシュッ───!》」 ついに、自らの手で腕に傷をつけ、血を流し始めた───!! するとどうだ、我が鉄分を吸い、球体に戻っていたナノさんがアメーバのように広がり、 一気に藤堂の傷口へと伸びるではないか! 藤堂 「ぐ、ぐおっ……うぉわぁあああああああっ!!!!」 で、やっぱりズチュゥウウウンと座れる藤堂くん。 僕らと同じく激しく吸われ、ついにはドシャアと倒れた。 中井出「ぬ、ぬう……藤堂くんでもだめだったか……」 万策尽きたわ……───と思いきや、なにかがおかしいことに気づく。 ……あれ?そういや……藤堂の体、吸われたわりには黄色くないような……。 それにナノさんが無い。 他のやつの時は、吸われるだけ吸われたら手元に戻ってたのに…… 藤堂の場合、傷口から内部にまで伸びて……やがて完全に潜り込んでいた。 ……これは───ひょっとしてひょっとするのか!?  メキッ……ベキバキゴキバキ!! 藤堂 「グアオッ!アオアァアーーーーーッ!!!」 僕は……いや、我々は理解したッ! 藤堂くんは鉄分を吸われたから倒れたんじゃないッッ! 身体の中にナノマシンが増え続ける激痛に耐えられずに倒れたのだとッッ!! 藤堂 「がっ!ごっ……!ごわぁああああああああっ!!!」 藤堂の体が躍動する! まるで体全体が産声を上げんとしているかのように、どくんどくんと弾んでいる!! 藤堂の体内で複製され続けるナノマシンは、 ついでとでも言うかのように大槌小槌までもを取り込み、一気に増殖した!  そうしたことが何分か続き、やがて───全てが治まる頃。 藤堂 『………』 機士となった藤堂くんが、そこに居た……!! 一見普通の人間だが、左腕が機械の腕のようになっている藤堂くん……! 左目もなにやら右目とは違う色で、時折レンズのような鈍い輝きを見せていた……! 中井出「……どんな、気分だ?」 そして、自然治癒能力ですっかり回復していた我ら素晴らしき7人は、 藤堂くん(ニュータイプ)を迎えるべく微笑み、彼にそう話し掛けていた。 藤堂 『アー……ア、イヤ……ドンナモナニモ、ソウ悪イ気分ジャ……。     ナンカ声ガヘンダナ───ン、んんっ!!あー!……よし《メギャアン!》」 中井出「おおっ!?ロボッぽい声が完全に消えた!」 田辺 「どんな感じなんだ藤堂!やっぱアレか!?アレなのか!?」 藤堂 「てめぇら解ってて実験してたんだろ……ああ、確かにアレだぞ。     ちゃんとARMも左腕に実装されてる」 岡田 「ARM?……つーと……───ウオオーーーーッ!!渡り鳥だぁーーーっ!!」 清水 「渡り鳥の誕生だぁーーーーっ!!!」 藍田 「イエーーーッ!!」 丘野 「原中イエーーーーッ!!」 エンシェント・レリックス・マシン……英語に置き換えて略すとARM。 ワイルドアームズにて、渡り鳥が使うとされる太古の遺産。 重火器が主な、強力な武器を扱う旅をする者とその武器である。 もっとも普通ならナノマシンなんて使わないんだろうが…… まあそれはこの世界ならではってやつか。 この世界に装填する銃弾なんざあるわけがない。 あったとしても、それは調合やらで作るしかないとても面倒なものだ。 その点、ナノマシンならば適合者さ存在するならいくらでも弾を体の中で精製出来る。 ……もっとも、鉄分を使用するらしいが。 藤堂 「うーお……なんという体の軽さ。や、いいぞこれ。     思い切り人間やめてますって感じだけど、     なんつーかそう……機械と一体になった感じっていうのか?     ほら《サクッ……ヂミィイゥウン》……傷つけてもナノマシンが回復してくれる。     ……でも鉄分使うみたいだ……グオオ眩暈がする……!」 これからは食生活に気を使わなきゃな……と呟く藤堂くんだった。 どうやらまだ完全には身体に馴染んでいないらしく、鉄分消費量がバラバラらしい。 岡田 「けどさ、なんだって藤堂は平気だったんだ?     それにシンクロ率ってなにが基準で考えられてんだ?」 藍田 「そりゃ……あれじゃないか?鉄分の多さとか精製されやすさとか」 田辺 「あ、それなら俺知ってるぞ?藤堂は鉄分になる食材が好きなんだ。     あまり好き嫌いもないし、血や肉になるものも結構食ってて運動も好き。     ようするに健康なんだな、こいつ」 丘野 「おおなるほど!それゆえにナノマシンに好まれたというわけでござるな!?」 清水 「この健康優良児野郎!!」 藤堂 「褒められてんのか貶されてんのか解んねぇよそれ!!」 総員 『クズが!!』 藤堂 「だからってハッキリ貶せなんて言ってねぇよ!!」 と、まあ内輪もめはこのへんにしてと。 中井出「ククク、さあ……新たに誕生したニューヒーロー藤堂くんを前に、     貴様らは果たして立ち向かってこれるかな?」 悠介 「いや……もう疲れたからいい。それで?お前はラグをどうしたいんだ?」 中井出「売って金にしようと思ってる」 悠介 「だったら俺が買うから!!いくらだ!?」 中井出「ワハハハハ!それは猫の鑑定眼に訊くのだな!!     俺の口からは言えぬ!……値段なんてわからないし」 悠介 「いちいちカッコつかないやつだな……」 ルナ 「悪っぽく振舞うならもっと知識つけなさいよねー」 遥一郎「ゲームの中でくらい博識になってみたらどうだ?」 中井出「ほっといてよもう!!」 バトルは避けられたらしい。 負けるつもりなんてないけど、さすがに魔術師が二人居るとやりづらいのは確かだ。 デルフリンガーが機能してれば、 下級魔法くらいは吸い取れるが……今のジークフリードじゃ無理だしなぁ。 中井出「あ、ちなみにこのラグナロク、封印されてたのを無理矢理持ってきたやつだから、     月の欠片が全部揃わないと満足に使えないと思うぞ?」 悠介 「どこまで好き勝手やってんだお前は!!」 中井出「物理的には無理だと叫ぼう!比喩で叫べば銀河の果てまで何処までも!!     ゲームの中でならば真に自由に振る舞える!     自由に出来ないものになど興味はないし見向きもしない!     自由である世界で好き勝手に生きれぬことこそを恥と知るがいい!     そしてこんな世界だからこそ我らも真に好き勝手に生きれます。     この世界に感謝を。レストインピース」 悠介 「安らかに眠ってどーする」 中井出「だから、俺眠たいんだってば」 なんにせよ、あとは猫の里に戻るだけ。 戻って竜宝玉渡して、武器強化して……寝よう。 じゃないと身が保ちません。本当に。 中井出「じゃ、帰ろうか……僕らの家へ」 悠介 「その前に提督、魔術書と奥義書」 中井出「奥義覚えた途端に殺して奪おうったってそうはいかねー!!」 悠介 「するかぁ!そんなこと!!言われるまで思いつきもしなかったわ!!」 遥一郎「いや……俺はそうするつもりだったけど」 澄音 「僕も付き合うつもりだったんだけどな」 悠介 「……意外と物騒なんだな、お前たち」 遥一郎「原中を相手にするって、そういうことだってこの前よ〜く思い知ったからな」 澄音 「うん、正攻法じゃあまず勝てないって思ったほうがいいね」 ぬう……こいつら学んできておるわ。 さすがは頭の回転の早い者どもよ。 ……あれ?蒼木くんは違うんだっけ? どう見ても頭良さそうな印象受けるんだが。 中井出「ふむ。まあいいや。ほれ、これが奥義書でこれが魔術書。     貴様らにはまず魔術書を見せよう。で、素晴らしき5人には奥義書を」 総員 『サンキューサー!!』 素晴らしき5人が奥義書を奪い取るようにして見始め、 晦らが魔術書を手に取って目を通してゆく。 うーむ、こんな些細なところに猛者たる者の荒々しさと、 普通の者との行動の差が出てる気が。 総員 『よ〜〜〜ぅし覚えたぜ〜〜〜〜っ!!』 そして早くも読み終えたのは猛者陣営。 というか素晴らしき5人。 晦たちは……まだだな。 中井出「なに?そんなに難しいのかそれ」 悠介 「ん?あ、いや……どうにも一人で覚えられるようなものじゃないらしくてな。     って、そうじゃないな。一人でも覚えられるんだが、     二人の方が強い……あー……なんて言えばいいんだろうな、これは」 中井出「二人がけ魔法みたいなもんか?」 悠介 「似たようなものなんだけどな。一人でも撃てるには撃てるんだ。     けど一人一人覚えられるものが違うらしくてな。     蒼木が風魔法エクスカリバー、穂岸が元素魔法ディバインブレストを覚えた。     俺は魔法使いじゃないから覚えはしなかったんだけど……」 中井出「おお、一応覚えたのか。で、なにを悩んでいると?」 悠介 「二人がけのことだよ。     魔法と魔法を融合して放つ魔術奥義のことも書いてあるんだ。     魔法と魔法は法術で融合させることが出来るとか、そういうのだな。     それの復習してたわけなんだが……」 ふむ。 つまり、なんだ?悩んでるなんてことはなく、ただ復習していたからもたもたしていたと? ……俺の早合点だったのね。 いやでも待て?まだ続きがありそうな言い回しだったぞ? 悠介 「魔法を使いながら法術なんて、やろうとして出来るようなもんじゃない。     魔法を使う時は魔法に集中してなきゃ撃てるものも撃てないんだ」 中井出「なにぃ!?……そうなのか?」 悠介 「彰利みたいな驚き方するなよ。……そうなんだ。     魔法も法術も、消費するのはマナであることに変わりはないけどな、     素とするマナが微妙に違うのは確かなんだよ。     回復は空界側、攻撃は狭界側、みたいな感じで。     もちろん空界と狭界が合わさる前はどっちか一方で攻撃も回復もしてたわけだが」 中井出「水と自然で回復、火と地で攻撃みたいな印象だな」 悠介 「それが一緒くたになってからはその役回りもいろいろ変わったんだが……     魔法と法術、式と諸力、錬金と魔術ってのはそう簡単なものじゃないんだよ」 中井出「ほへ?錬金も関係あるのか?」 悠介 「たわけ、錬金に使う精霊石や魔法鉱石がなにから出来てると思ってんだ」 中井出「あ、あー……なるほど」 諸力のことについても訊こうとしたけど、 あれは精霊魔法を使うためのものとかだったよな、確か。 確信は持てないけど───納得した気になっておこう、うん。 中井出「あ……じゃあつまりなんだ?やるとしたら三人がけになるかもしれないから、     頭ひねってふたりか一人でやる方法がねーかなーとか考えてたわけか?」 悠介 「ん……まあ、そうなる……のか?」 中井出「ハッキリしろてめぇ!」 総員 『このクズが!!』 悠介 「わ、解ったよ!そうだよ!その通りだ!」 中井出「だったら最初からそう言えてめぇ!」 総員 『このクズが!!』 悠介 「結局クズ扱いかよまったくお前らはぁあ……!!」 さて、そうは言ったが三人がけ魔法か……見てみたい気もする。 魔法使いならばマトリフ師匠のように、同時に二つの魔法を使えたりとか出来ないのか? ……この場合、魔法と法術を同時にってことになるんだが。 中井出「あ。こうするのはどうだろうか。マクスウェルに法術を使ってもらって、     ホギーとオギーで葬竜術を」 遥一郎「……オギー?」 中井出「蒼木だからオギー」 遥一郎「ネーミングセンス無いって、噂には聞いてたが……」 中井出「し、失礼な!そんなことないよね!?オギー!!」 澄音 「あっはははは、中井出くんはネーミングセンスが無いね」 中井出「ひでぇ!!」 爽やかスマイルでヒドイこと言われた! でも時々に見る観咲雪音嬢との遣り取りを思い出せば、 これはまあ遊びなんだろうと思えることが出来たのでスルー。 じゃないと心臓に悪い。 だってこの子ったら言ってることが冗談なのか本気なのか判断しづらいんだもの。 悠介    「でも、そうだな。マクスウェル、法術は使えるか?」 マクスウェル『ほっほ、まあ出来ることは出来るがのぅ。        見たいというだけならばやめておくがよいじゃろ。        せっかく魔力を蓄積しているところじゃて、        今無闇に散らしてしまうのは勿体無い』 悠介    「蓄積?」 遥一郎   「古代魔法のことだよ。自然要塞での大戦の時に見せただろ?        あれをマクスェルに教えてもらって、        ゆっくりと魔力を蓄積してるところなんだ。        今の俺じゃあ、あそこみたいに魔力が充満してるところじゃないと、        最初のデュアル・ザ・サンすら発動が難しいんだ。        元素の属性が完全に解放できればそうでもないらしいんだけどな」 悠介    「なるほど、そりゃ大変そうだ」 大変そうじゃなくて大変なんだと思うが。 しかし、見てみたかったんだが……残念だ。 ナギー『のうヒロミツ?行かぬのかの?』 中井出「お?おお、行く行く。……と、その前に。     ナギーよ、ここらでじゃなくてもいいから、有名な強い昆虫を知らんか?」 ナギー『昆虫?どうするのじゃそんなもの』 中井出「どうするってそりゃ貴様、手に入れて混成ジョブの強いヤツを誕生させるのさ」 混成ジョブを完成させるには昆虫が必要だ。 それさえあればまた隠しジョブが完成する……野望達成に一歩近づくのさ! 悠介 「混成?っつーと……隠しジョブのあれか。     ……マテ。お前キングストーンまで持ってるのか!?」 中井出「もちろんだ!今のこの博光の野望は、     素晴らしき7人全てのジョブを隠しジョブにすることよ!     適正条件があったのが機士だけだったからな……あとは自由!     だが既にプランは出来ておるわ。修羅に藍田くん、揺炎に丘野くん、     混成に清水くん、閃士に岡田くん……そして魔王にこの博光!!     既に田辺と藤堂がそれぞれ妖魔と機士に変異済み!     あとは必要アイテムを揃えれば野望が達成されるというわけよ!」 悠介 「お前好きだなぁそういうの……。     参考までに、どうしてそういうジョブ合わせになったのか教えてくれるか?」 中井出「必要アイテムで、なれるものの元ネタの想像がついた。     妖魔はクレイモア、機士は渡り鳥、揺炎はフレイムヘイズ、     混成は仮面ライダー、修羅はグラーフ。閃士は……ちと解らんが。     魔王はまあ普通に魔王っぽいんだろうけど、     予想がついたのがその六つだったのさ。だから、妖魔である田辺が居るなら     丁度いいと思ってそれらを狙い始めたってわけさ」 呆れたようにムシャアと苦笑を漏らす晦に、我が野望を話して聞かせた。 すると、晦よりも素晴らしき7人のほうがうずうずしだして…… 田辺 「提督……!まさか貴様がそんな野望を持っていたとは!」 藍田 「我々をさらに素晴らしき者にしてくれる予定だったとは知らず俺達は!」 丘野 「サンキュー!サンキューサー!!」 中井出「あ、いや……そう感謝されてもな……」 清水 「クズがクズがクズがクズが!!」 岡田 「カスがカスがカスがカスが!!」 藤堂 「ゲスがゲスがゲスがゲスが!!」 中井出「だからって貶せなんて言ってねェエエ!!───というわけで知らないか?」 ナギー『ふむ……知識としてだけじゃが、     西の大陸にはとてもとても強く珍しい昆虫がおったそうじゃがの』 総員 『もうだめだぁああ……』 ナギー『なっ、なにを沈んでおるのじゃ!?     知らないかと言われたから答えただけであろ!?』 藍田 「ナギ助貴様ァア!!西の大陸はもう海の底だろうがァア!!」 丘野 「そうでござるよ!大体ジョブチェンジっつったって     ジョブ爺が居たとしても今頃水死体でござろうが!」 そう、考えてみりゃあ西の大陸は海の底。 超古代都市エルメテウス(モンスターユニオン)の浮上とともに沈んだソレは、 エルメテウスが崩壊した今どうやったって浮上不可能では……。 ナギー   『そのために水の竜宝玉があるのであろうに……そうであろ?じいや』 マクスウェル『ふむ。若いの、今持っとる宝玉はいくつじゃ?』 中井出   「いくつって……地、水、風、雷、氷、光、然……7だな。        そのうちの地、氷、然は自然要塞だ」 マクスウェル『そうか……ふむ。水と風があればなんとかなるじゃろう。        問題は移動中にデスゲイズに会うかもしれぬということじゃが、        まあこの竜の嵐じゃ、空を飛ぶ者を破壊するのに忙しくて、        自然要塞のことは後回しになるじゃろう』 ハテ?……なにをするのかはまあ予想がつかないでもないが…… マクスウェル『これから自然要塞に戻り、        竜宝玉全てを嵌め込んで西の大陸付近まで行くぞい。        それから海に潜り、西の大陸を浮上させるんじゃ』 中井出   「潜るって……やっぱ自然要塞で?」 マクスウェル『ほほっ?解っておるではないか。その通りじゃ。        水の竜宝玉を得た今、水の中とて自由に潜れるわ。        移動にはやはり風の竜宝玉が必要じゃがな。        そしてあまりに深い場所ともなると暗いからのぅ、光の竜宝玉も必要じゃ。        巨大生物が近づいてきた場合は雷の竜宝玉を使い、        雷撃砲を撃つのがええじゃろ。水の中じゃ、雷をよく通す。        そういった意味では、必要な宝玉はみんな揃っておる』 中井出   「ほほう」 それは……なんというかとてもありがたい。 ダメだから竜倒してこいとか言われたらどうしようかと、内心ドキドキものだったのだ。 悠介    「それで、海に潜ってからはどうするんだ?」 マクスウェル『然の竜宝玉で枝の密集体を筒状に伸ばして西の大陸と要塞とを繋ぐ。        知っているとは思うが、西の大陸は海に沈もうとも魔法で守られていて、        酸素などの必要なものは全てのこされておる。        丁度一帯を囲むようにドーム状の魔法障壁がなされておるのじゃよ』 中井出   「あ……そういえばそんなこと聞いた気がする」 マクスウェル『うむ。で、中に入ってからじゃがな。        西の大陸の中心に、まあ森の中なんじゃが、そこに祭壇がある。        恐らく誰の手も加えられておらん、自然祭壇じゃ。        だから余計に誰も気づかず……いや、        気づけない場所だったというわけじゃな。でじゃ。そこで───』 中井出   「盆踊る!!」 総員    『違うだろそれは!!』 マクスウェル『その通りじゃ』 総員    『なんだってぇええーーーーっ!!!?』 マクスウェル『冗談じゃ』 総員    『………』 その時、マクスウェルは気づかなかっただろうけど、 確かにみんなの中で潜在能力“怒り”が発動していた。 僕はもちろん発動しなかったけどね?首謀者だし。 マクスウェル『そこで自然の力を解放するのじゃよ。ドリアードと……ふむ、        西の大陸の現魔王であるおぬしも居たほうがいいのう』 中井出   「え?俺?」 マクスウェル『うむ。ぬしらは能力値の移動が出来るんじゃろう?        ならばそれを使い、魔力をうんと上げて自然の力を解放してみるのじゃ。        さすれば、そのちからとともに西の大陸は浮上するじゃろ』 中井出   「おおそうか!うむ!面白そうだ是非やろう!!」 そんな面白そうなこと、捨ておけるわけもなし! それに乗り物に乗って海底探索なんて……ロマンじゃないか!! しかも好き勝手に動けるならますますファンタジー万歳!! 中井出「よっしゃあでは行く準備をしようすぐしよう!貴様ら異存は!?」 総員 『もちろん無し!!』 中井出「後悔せぬか!」 総員 『サーイェッサー!!』 中井出「全力で楽しむか!」 総員 『サーイェッサー!!』 中井出「海に潜りたいか!」 総員 『サーイェッサー!!』 中井出「その前に眠りたいか!」 総員 『サーイェッサー!!』 中井出「うむよし俺も実に眠りたい!その欲求を隠さぬ態度や実に良し!!     ならば今こそ心の巴里にシャンドラの火を灯せ!!     我らの旅はまだまだ続く!終わらせるにはまだ速い!ならば唱えろ力の限り!     続行だァーーーーーーッ!!」 総員 『Yah(ヤー)ーーーーーーーッ!!!』 中井出「よしいい返事だ!ではこれより自然要塞に戻り準備を開始するものとする!     各員準備が終了し次第眠りにつき、     移動はレアズ将軍などに任せて我らは僅かの時を眠りに費やす!     このまま眠らなければ力尽きるのが我らの誓約!     こればかりは度外視出来ぬのが我らに与えられた不自由!     だが忘れるな!たとえこの身が自由でなくとも!     我らの思考はどこまでも自由だと!」 総員 『サーイェッサー!!』 中井出「うむよし!では全力で自然要塞へ帰還開始!     ナギー新兵!貴様に訊くが、この人数での転移は可能であるか!?」 ナギー『サー!さすがに無理なのじゃ!』 中井出「うむそうか!!アフロ!貴様はどうか!」 アフロ「この人数をいっぺんには無理ですね」 中井出「そうか!では各員好きな方法で自然要塞を目指せ!     ただし全力でである!今日という日の陽が沈むまでに辿り着けなかった者は     容赦なく置いてゆくのでそのつもりで望め!     イェア・ゲッドラァック!ライク・ファイクミー!!」 ザザァ!! 総員 『Sir(サー)!!YesSir(イェッサー)!!』 しつこいまでの叫びの前に、それぞれが敬礼で返してくれる。 俺はそれに敬礼で返し、バッと後ろを振り返ると─── まるでオーガーストリートの雪原を駆けるスピードワゴンの旦那のように、 全力で駆け出したのだった……!! ……ナギーを肩車にして。 中井出「うおおお負けるなぁあああああっ!!     飛竜畜生なんぞに我らの健足が負けるなどあってはならぁあああん!!」 藍田 「うおおその通りじゃああ!!飛竜がなんぼのもんじゃああああっ!!!」 丘野 「男じゃわしゃあああああっ!!!」 清水 「ぐああああ!!しかし悲しいかなどんどん離されてゆく悲しみ!!」 中井出「藤堂ォオゥ!!」 藤堂 「ヘいィ!!」 中井出「打ち落とせェエ!!」 藤堂 「ごめんなすッてェエ!!《メギャアアンッ!!》』 岡田 「おぉおっ!?藤堂の左腕と左目がメカッぽく!?」 藤堂 『狙った獲物は外さねぇ───10分アビリティ発動!     はぁあああ……ロックォオオーーーーン!!《キュィイイ───ビキィン!!》』 藤堂の左目の色が茶色から深い蒼に変わる!! そうしてから我らの上空を先んじる飛竜へ照準を合わせるように左腕を持ち上げ、 藤堂 『消し飛べェエ……!!“携帯式荷電粒子砲(バニシングレイ)”!!』  キュオアゴカァッチュゥウウウンッ!!!! 腕の形からSFのレーザーキャノン砲のような形に変形した左腕から、 眩いばかりの巨大な粒子砲を放つ!! 声  「へあっ!?う、うおぉおなんじゃこりゃぁああああーーーーーーーっ!!!!」 もちろんロックオンしたからには外さないのがアビリティ!! 放たれたレーザーは竜を駆る晦と、その背に乗る仲間たちに直撃し─── 藤堂 『……ちょろいもんよ』 ───消し炭一つ残さず、全員を一撃で仕留めてみせた。 中井出「うーわー……」 藍田 「妖魔田辺にも驚かされたけど……隠しジョブって強ぇえなぁ……」 丘野 「まあ、相手が油断してたということもあるんでござろうが。     どうせ気分だけ急ぐつもりでAGIマックスにしてたんでござるよ」 清水 「で……乗り手を無くしたディル助さんはどうしようか───って、     あ……飛んでった」 中井出「……じゃ、僕らも行こうか」 総員 『サーイェッサー』 海底への旅路に西の大陸の浮上……!そして、その大陸での虫取り……! 空を飛翔する竜を無視しての冒険が、今始まる……!! ……しばらく寝るけどね。 Next Menu back