───冒険の書210/力の求道者───
【ケース531:中井出博光(再ロック)/喧嘩、かっこわるい】 ……、……。 音もなく、沈んでいた。 要塞内から見える景色は、 空気を逃がさないために生い茂った木々やコケで覆われ、見えはしないけど─── それでも、そこが海の中だということくらい理解できる。 中井出「この博光も老いておったわ……木々を密集させれば外が見えるわけがない。     そんな事実に気づくことも出来ぬとは」 これでどうやって敵の進行を察知せよと?なんて心配は無用だぜトニー。 何故なら外の景色は、シードが式によって映像化してくれてるからだ。 シードは法術などの回復系が使えない代わりに、 こういった変則系や破壊系の力に長けている。 映像系の式などしらないと言うシードだったが、フフフ、そこはアレよ。 映像系ならなんでもお任せ、 エロスのためにその青春を映像系の式に一時捧げたこの博光にかかれば、 式自体は使えなくとも編み方くらいは完璧に教えることが出来るぜ? ……そんなこともあってか、映像の式なんて見たこともないとか言う、 精霊たちや亜人族たちに物凄く尊敬の眼差しを送られたのは、こそばゆいひとときでした。 特にシードから送られる尊敬の眼差しときたら……。 俺が周りに褒められることで自分もとても嬉しかったのか、 やたらと興奮してたりしたし。 ……この世界で映像系の式が出来なかったら、指が爆発してただろうに……。 この博光を疑うことなく式を発動させた貴様に乾杯だ。 ところで話は変わるが。 ゲームの中の海の生き物って、 どうしてあんないきなり襲い掛かってくるほど凶暴ですかね。 アレですか。シマに侵入した他ヤクザを煙たがるヤクザですか。 秘密基地への大人の侵入を許さないヤングボーイですかコノヤロー。 常々思ってたんだが、ゲーム世界の海産生物って喧嘩ッ早すぎだよアレ。 ホラアレだよ、王様に船貰って旅立って、 1マス進んだだけで襲い掛かってくるようなアグレッシヴな海の幸をどう思うよ。 絶対おかしいってアレ。 あんなの待ち伏せしてなきゃ出来ッこないよアレ。 もうなんていうか勇者さまの船出を見送る村人たちよりよっぽど歓迎してるじゃないの。 アンタいつからそんな冷たいところで待ってたの。 お前はアレですか。冬の寒い中、想い人を校門で待つ女学生ですか。 二人で一つのマフラーに夢を抱く思春期につるむバの付くカップルですか。 マフラーが欲しいなら俺が中学時代に演劇で使ってた赤いふんどしあげるから。 それ首に巻いて寒い冬を越していきなさい。 大丈夫キミなら恋人なんていなくても強く生きていけるようん。 見るからに強そうだし大丈夫、むしろ軍艦一隻くらい簡単に沈められそうじゃないの。 中井出「というわけでデビルテンタクラーに襲われました」 総員 『デケェエエーーーーーーッ!!!!』 映像に映るはとてつもなく巨大なイカ!! この要塞に勝るとも───……うん……勝ってないね……劣ってるよ……うん……。 この要塞に劣ってはいるけども確かにデカいイカがおりました! きっと主食はクジラに違いない! 彰利  「うおぉおうあデッケェデッケェ!!どうすんの!?ねぇこれどうすんの!?」 ジークン『フフフ、ここは我ら棒人間に任せてもらおうか』 彰利  「うん、なんつーか断る」 ジークン『速ェエ!!』 中井出 「雷撃砲発射用意!つーか準備次第発射せよ!      俺は軍隊などの、撃ての言葉を待つ瞬間が好きではない!!      準備が出来たならそう!とっとと撃つべきだ!撃ち方止めの言葉は無しだ!      ひたすらに撃ち、経験値が入り次第撃ち方を止めよ!!」 総員  『サーイェッサー!!』 彰利  「グムー!しかし外に出てバトル出来るのが一番なんだが───」 中井出 「いけるなら行ってこい!俺は知らねー!」 彰利  「まさに外道!俺だけに行ってこいと申すか!」 中井出 「うむ申す!だって俺じゃあ海を泳ぐことなぞ出来んから!      しかし死神ならば水中だろうが壁抜けの要領で自由に動けるでしょ?」 彰利  「おおなるほど!私にはそれがあった!オーダー解放!《ゴシャアン!》』 彰利一等兵が黒を解放!壁抜けの要領で気泡を通り、海へと出て行った! 悠介 「ルナ、お前はいかないのか?」 ルナ 「ホモっちと一緒っていうのがヤだ……」 夜華 「なんだと貴様……いくら悠介殿の伴侶だからとはいえ、     あまり人の夫を見下した台詞は吐くな」 ルナ 「む。わたしはほんとのこと言ってるだけよ?     たまたま力を得る機会があったからって、ホモっちが死神の王だなんて。     正直わたしはそんなこと今でも認めてないからね」 夜華 「貴様っ───!!」 中井出「うるせーーっ!!内輪もめなら後でやれカスどもが!!     行動は迅速にって言ったでしょォオ!!?     まったくアンタたちときたらほんっとところ構わず騒いでェエ!!」 ルナ 「カッ……!?」 夜華 「カスだと貴様!!     いい度胸だ……わたしにそう言った彰衛門が今まで無事でいられたと思うなよ!」 中井出「おおなんだコラやんのかコラ!言っとくが俺からは一切攻撃せんが、     攻撃を加えられたからには全力でブッコロがすぞてめぇら!!     もうここに至るまで山を越え谷を越え、     直進行軍しながらストックしたモノ全部使ってでもブッコロがす!!     それでもいいならかかってこいオラァ!!」 夜華 「よくぞ言った凡人が!知っているぞ!     貴様は力はあるがまるで型がなっていないと!     そんな貴様がわたしに勝てると思うか!」 中井出「断言しよう!勝てる!貴様は負ける!」 夜華 「っ……豪気もそこまでいけば立派だな!いくぞ!」 ルナ 「2対1……卑怯とは言わないわよね?」 中井出「貴様この博光を誰だと思っておるか!     外道を地でゆく原中が迷惑部部長にして提督!中井出博光なるぞ!!     当然卑怯と言うに決まってるだろうが!!」 ルナ 「うわーーーぁあああ…………」 物凄い呆れ顔だったという。 ルナ 「ねぇ悠介……なんでこんなやつのこと提督だなんて呼んでるの?」 悠介 「提督だからだ」 ルナ 「むー……わけが解らない」 悠介 「いいから、一度戦ってみろ。ボロ負けると思うが」 ルナ 「む。その言葉、いくらゆーすけでも気に食わない。     こんなもやしっ子みたいなのに負けるなんて、そんなことあるわけないじゃない」 悠介 「だからやってみろって。外の方は、俺と彰利とでなんとかしとくから」 ルナ 「…………わかった」 ザザァッ…… 僕の前に、篠瀬さんとルナ子さんが立ち並ぶ。 二人の殺気は本物だ……恐らく最初から全力で来るだろう。 だが、だからこそいい。 中井出「フハハハハ来るがいい死神の申し子たちよ……!     そして存分に知るがいい、魔王という存在のへっぽこさを」 ルナ 「へっぽこさなんて知らしめてどうする気なの……」 中井出「え?いや、だからさ。世の中の人達は魔王って存在を誤解してるんだよきっと。     魔王ってのは魔の王って呼ばれてるだけで、     強いかどうかなんてほんとは誰も知らんの。魔の王であればどうでもいいのさ」 夜華 「なにをぶつくさと。これから戦う者同士の間に、つまらぬ問答は必要ないだろう」 中井出「話が早くて助かるよ。じゃあホレ、どこからでもかかってきなさい」 立てかけておいた剣を鞘ごと腰に装着し、構える。 属に言うターちゃんポーズである。 夜華 「……?どうした、剣を抜かないのか」 中井出「戦いは既に始まっているのだ……問答は必要じゃないだろう?」 夜華 「なに?───ふふっ、言った傍から問答をするとはわたしも腑抜けたか。     ……貴様の覚悟は受け取った。いくぞ!」 中井出「さぁ来いィイ!!」 クッ───タンッ…… 篠瀬さんが刀の唾を親指で持ち上げたのち、軽く地を蹴る。 それは、本来ならほんの少し前に進む程度の歩法だったが───風が動いた。 駆け抜けるように、俺の横を。 そして膨らむ殺気───ぬう!来る!! 中井出「VITマックス!アァーーンド……ハイパーアーマー!!」 来るのは恐らく背後からの一撃! それを予測した上で、振り向きながらVITマックスとハイパーアーマーを発動!  ゾギィンッ!! 中井出「ギャア!!」 そして振るわれた斬撃を前に怯む───こともなく、 刀を振るった状態で硬直時間に囚われていた篠瀬さんを刀ごと掴む!! 夜華 『なにっ!?』 既に死神化をしていたらしい篠瀬さんを掌握! で、刀を掴まれて動揺したところですぐに刀を離す。 夜華 『くそうわぁっ!?』 武器を掴まれれば、即座に離させようと力を込めるのは本能というものだ……。 それを巧に利用し、 事実まさに力を込めたばかりだった篠瀬さんは力を込めすぎ、バランスを崩す! そこへ渾身のナックルパートを─── ルナ 『二人相手だって忘れてない───?』 決めようとしたところに、ルナ子さんが飛翔して鎌を振ってくる!! ───なんてことは予測済みよ!! 中井出「フフフ、来る頃だと思ってたよ」 ルナ 『え《バゴロシャアンッ!!》ぷぎゃあっ!!?』 戦い慣れしたヤツの行動なぞワンパターン!! ど〜せこっちが最大の攻撃チャンスを見い出した時にこそ攻撃してくるに決まってんだ! そんなことなぞ、知ってりゃどうとでも出来───ごめんなさいうそです、 かなり危なかったですマジで。 予想以上に速いですこの人たち……僕もういっぱいいっぱいです。 思わずAGIに重点置いて殴っちゃったし、 事実ルナさんも大して効いてないようで、すぐに体勢立て直すと距離取っちゃったし。 夜華 『っ……なるほど!型に囚われないことで、相手の出方さえ狂わせるか!     剣術者同士の戦いならばまずどう出るかを見切り合うものだが───』 貴様にはそれが通用しない、と。 篠瀬さんは微かに笑んで、再び疾駆した───!! ……素晴らしい速さだ。 さすが、嵐風の二つ名を持つだけのことはある。 だが甘し!それだけではこの博光には勝てぬ! 中井出「ぬ、ぬう……!それにしても速いにもほどがあるだろ……!     これは既に忍者であった頃の丘野二等よりも速いのでは……!?」 声  『速いだけでは───ないっ!』 中井出「なにぃ!?」 気づいた時には既に後ろを取られていた! あ、しかも突くつもりだ。向きからしてこれは心臓かなぁ。 ああだめだ、これじゃあ流石に避けられ─── 中井出「覇気脚!!」 夜華 『《ドゴビシャァンッ!!》くわぁあーーーーーっ!!?』 中井出「《ゾグシャア!!》クヒィイーーーーーッ!!!」 迫り来る篠瀬さんの刃───それは避けられん! だから、篠瀬さんの目が我が上半身に向けられすぎていることを利用し、 ドンナーで篠瀬さんの足を雷撃覇気脚(いわゆる踏み潰し)!! ……しようとしたんだが、当然刀の長さと足の長さじゃあ、先に当てられるわけもなく。 踏み潰しではなく、雷撃で怯んでくれたお蔭でなんとか心臓穿ちは避けられた!! それでは参りましょう!怯んでる貴方への、自分の傷を厭わぬ全力攻撃!! 中井出「オッレェエエエのパンチィイはァッ!!ダイナマイトォオオオオッ!!!」 ルナ 『───シッ!!』 中井出「ぬう!?」 今度ばかりは思い切り拳を振り始めてしまった僕! その瞬間を狙っていたのか、 方向転換不可能な状態の僕に向かって、ルナ子さんが飛翔してきた! このままでは避けられん!だがそれがどうした。  コガドォオッゴォオオンッ!!! 夜華 『ぐわぁあっ!!!』 止まることなく全力でナックル!! それもただ殴るだけではなく、地面に叩きつけるようにしての殴り払いである!! だが当然、力が篭れば篭るほど、 その後の隙はデカくなるものでゾゴフィィンッ!! 中井出「いがぁあうぁっ!!」 振るわれる鋭い斬撃───!! 鎌が俺の背を裂き、肉を千切る熱さが俺を怯ませる!! だが私は一行に構わんッッ!! ルナ 『どう?痛いでしょ?解ったらすぐにカスって言ったことを撤回───』 中井出「ぬぉおおおおおおりゃぁあぁああああっ!!!!バゴドゴゴババガヂガゴガゴバシャアッ!!!! 夜華 『がっ!ぐっ!ぐわっ!がぁっ!ぐはっ……!!』 ルナ 『なっ───ちょ、ちょっと!なにやってんのよぅ!!』 中井出「なにを───!?戦いである!!貴様こそなにを世迷言を申しておるか!     先に言った筈だ!攻撃したからには必ずブッコロがすと!!」 喋りながらも拳や足を落としてゆく! 篠瀬さん!キミが!塵になるまで!!殴るのをやめない!! ルナ 『っ……このっ!やめなさいよ!』 中井出「ぬう!」 殴り続ける俺へと再び振り下ろされる鋭い鎌! だが俺は怯みきっている篠瀬さんを持ち上げると ルナ子さんへと放り投げザゴフィンッ!! 夜華 『がはぁっ!!』 ルナ 『えっ!?やっ───《バゴシャォンッ!!》あぐぅっ!?』 ルナ子さんの攻撃を防いだのちに顔面へナックル! さらにたたらを踏み、倒れた彼女へと容赦のない連打連打連打連打!! ルナ 『あっ!ぐっ!ちょ……やめないさいよ!こんなのがっ……戦いだっていうの!?     なんでも盾にして、無理矢理隙作って、強引に攻撃するのが!!』 中井出「おーおー綺麗だねぇ!やはり貴様らは綺麗だ!死神なのに心が綺麗だ!実に見事!     だが言わせてもらえば戦いってのは汚いものだ!     不意打ち!裏切り!なんでもあり!それが戦いってものよ!     それをなんだいあーだこーだと!命の遣り取りにルールが必要かい!?     そんなことは強者の勝手なセリフだい!     弱いヤツのことなんざ目にもかけてないセリフだ!     強いやつはそれでいいかもしれないがな!     弱いヤツはなにやってでも勝たなきゃいけないんだよ!     そして俺は戦いってものを誤解してるヤツにこそ言いたい!     勝てばいいのよ勝てばグオッフォフォ……!!」 夜華 『ぐ、ぬうう……!こ、いつ……!』 ルナ 『クズだ……』 中井出「だぁあからそれはもういいって言ってるでしょ!?     自分がクズであることなんてとっくの昔に知っとんのじゃああああ!!     試合にルールは必要!だが戦いにルールなど必要ではないわ!     血で血を洗う戦いに卑怯卑劣などもはや常套!!     男だろうが女だろうが子供だろうが老人だろうがこの博光は容赦せん!!     戦いの中でこの博光と出会った者には戦いの二文字を刻み込んでくれるわ……!」 夜華 『ぐっ……たとえそうであろうとも、闘者として最低限の誇りは───』 中井出「え?誇り?僕そんなの持ってない。だから死ね」 夜華 『なにぃっ!?』 殴られ続けて脳でも揺れたのか、立ち上がってもフラフラ状態の篠瀬さん─── そんな彼女に、こちらもフラフラ状態のルナ子さんを引っ掴んで───投げる!! ルナ 『あぅわぁあああっ!!?』 夜華 『っ……!?くそっ!《がしぃっ!───ズザザザザァッ!!》……っつぅ……!』 中井出「おおっ!?」 意外!てっきり避けるかと思いきや、篠瀬さんはルナ子さんを抱きとめると地面を滑った! しかもその姿がとても隙だらけ!……だが僕は駆け出しませんでした。 何故って?それも狙いのうちの一つだからさ。 ルナ 『え……な、なんで……』 夜華 『忌々しいが……わたし一人ではあの男の奔放さ加減は見切りきれん……。     力を貸せ、死神の女。わたしはあの男に負けることを認められない』 ルナ 『……、───いいわ、乗ったげる。けど、今回限りだから』 夜華 『よく言うものだな。貴様とて一人では適わぬだろう』 ルナ 『どうかな。やってみれば案外簡単に消せるんじゃない?     わたし、死神の力は強く引き出したけど、鎌は解放してないし』 夜華 『そうか、貴様もか。───わたしもだ』 中井出「お……おお?」 そ、そうなのですか? 私はあまりの出来事に大変驚きました。 あの速さでまだ加減していたとは……やりおるわこの人妻ども。 だが忘れてもらっては困る。 こちらもまだ拳と足以外、武器を使っていないことを。 ……まあもとより、この二人に“協力し合う”ってことを教えるためのバトルだし。 もちろん俺が言ったことにはなにひとつウソは無しだけど。 中井出「そう、協力し合うの、いいこと。貴様ら二人が存分に協力し合わなければ、     この魔王博光は倒せぬと知れ!倒せるだろうけどそう知っといてお願いだから!」 夜華 『協力……?───貴様、まさか』 中井出「隙あり死ねぇええええええっ!!!」 夜華 『ぇうわぁっ!!?《ガゴギィンッ!!》っ───!!     ま、待て!貴様はわたしたちに     協力し合うことを教えるために仕掛けたのではないのか!?』 中井出「うんそうでも死ね!!     理解したからって武器を納めるお人好しなど知ったことではないわーーーっ!!     こちとら体張ってんだ!せめてそんな常識くらいブチ壊してくれる!!」 夜華 『ぐっ……無茶苦茶だぞ貴様!!』 中井出「ワハハハハ!常識などクソ喰らえ!!それが我らの原ソウル!!」 普通ならば“やっと解ってくれたね……”とか言って構えを解く場面───だがしかし! むしろそのままバトルことを僕は一度してみたかった! だから続行だ!Yah!! ルナ 『協力はするけど邪魔をするんだったら知ったことじゃないわ。     どういう理由にせよ、敵対したんなら覚悟してもらうから』 中井出「その意気や良し!そういう考え大好きです!」 篠瀬さんを力任せにゴリゴリと圧しながら、再び背後から迫るルナ子さんに叫び返す。 圧している武器は紅蓮蒼碧の長大剣ジークフリード。 対する篠瀬さんは緋凰焔紅諡───卍解武器だね。 だがそんな武器、今や封印と呪いを受けたこの博光でも圧せられる!! レベル差以上に武器の強さがモノを言っているのだッッ!! ああ……やっぱり武器強化はいいなぁ……!心が晴れ晴れするようじゃわ……! 自分とともに強くなってくれるのも嬉しいけど、 やっぱり僕としては武器は地道に鍛えていきたい。 見てくださいこの武器を。 今回鍛えたお蔭で、ついに+3000に達しました。 詳しくは3021だけど。 きっちりと守護竜素材もふんだんに使ったこの武器……素晴らしいの一言に尽きる!! でも封印と呪いの所為で、付加された能力全部使えなくなってるけどね。 今まで使えたやつとかは平気なんだけど……はぁ。 ルドルグニスをエジェクトして、それを鍛えてもらったほうがよかったかもしれん。 しれんが……俺はジークを愛している。 呪われてしまったからといって、何故別の武器に乗り換えることが出来ようか。 俺は人も武器もただ一つを愛していきたいと思っています!本当です! 中井出「では参る!そして参られよ!」 ルナ 『言われるまでもひゃわぁっ!?《ヒュバォオンッ!!》     なっ!あ、あぶっ……あぶなっ……!!』 中井出「上手くよけたようだがグオッフォフォ!!驚いてる時間はねぇぜ〜〜〜っ!!」 参ると言った途端に篠瀬さんを押し退け、ルナ子さんへと疾駆&アタック!! 長大剣を思う様に振るい、風を切っては威圧する!! ルナ 『このっ───《シュヴンッ……》』 中井出「ぬう!?」 だがしかし、ルナ子さんは現状が悪いと見るや壁抜けで床に埋没!! 我が攻撃の届かぬ場所へと逃げ出したのだ!! おのれ死神が……! この博光がこの要塞だけは傷つけたくないことを知っていながらの狼藉……許せぬ!! 中井出「……《チラリ》」 夜華 『っ!?《ギクゥッ!!》』 ならばと後ろを見ると、嵐華の極みを狙って力を溜めてる篠瀬さんを発見。 そんな彼女にニコリと微笑みかけると即座に逃走!! 夜華 『なにっ!?貴様逃げる気か!!』 中井出「そのまさかよッッ!!     わざわざ喰らってやるほどお人好しではないのでネッッ!!」 夜華 『誰が逃がすものか!!紅葉刀閃流嵐華の極み───!!《ドゴォンッ!!》』 中井出「ハワッ!?」 篠瀬さんが地を蹴り、俺が離れた分を一気に詰めてくる!! おおお、真正面への低い跳躍一回でよくもまあここまで飛べるなあ!! 中井出「素晴らしい!素晴らしい反応速度だ篠瀬さ毒霧!!」 夜華 『《ブシィッ!!》くわぁああーーーーーーーっ!!?』 だが甘し!! この博光がなんの準備も無しにただ逃げると思うてか! その構えを取った時点で、キミが追って来やすいように、 向かって正面に逃げたことにさえ気づかぬとはグオッフォフォフォ!! さあ参りましょう!右手は刀を握ったままだが、 反射的に左手で目を庇ってしまった彼女への最高奥義!! ジークフリードを鞘に納めて───今!! 中井出「モモタロウストライクスリィイーーーーッ!!!」 夜華 『《ガガキィッ!!》なっ!?なに《ガドゴゴォンッ!!》うぴぃっ!!』 右手を左腰に、左手を顔に当てがっていた彼女の腕をクロスして掴むなんてことは、 思った以上に簡単だった。 その状態で我が手前に強く引き、それこそ本当に腕をクロスさせ、 下からその中心に膝蹴りを一閃。 そのままスープレックスするように大きく勢いをつけ、 受身が取れない状態で頭から地面に激突させる! 打撃、締め技、投げ技の三位一体攻撃……これぞストライクスリー!! これを喰らった直後にすぐに動ける者など居るわけもなし─── 案の定篠瀬さんは目を回したようにぐったりと倒れ、 力を込めて立とうにも脳が揺れて立てないようだっバドォッゴォオンッ!! 夜華 『かぐわぁっ!!?』 そんな彼女の顔面に容赦無用の下段打ち下ろし。 卑怯?結構です。 中井出「ククク……この博光は相手が弱っていようが、女子供だろうが容赦しねぇ……!!     戦いってのはなにも力や頭脳だけじゃないんだぜ……?     覚悟さ。覚悟が無ければ。刺す覚悟と刺される覚悟、殺す覚悟と殺される覚悟。     様々な覚悟を持った者だけが最後の最後まで立っていられるのよ!     ───……運が良ければ《ザゴブシャアッ!!》グワアーーーーーッ!!!」 ルナ 『大した説教ありがとう。これは授業料代わりよ《ガシィッ!》───えっ?』 喋ってる途中に、いつの間にか出てきていたらしいルナ子さんに背中を切られた! だが無理矢理身体を捻り、喋り途中のルナ子さんの腕を左手でキャッチミー!! そしてそのまま思い切り引き寄せるとともに、ギチリと握った右手のファフニールで……! ルナ 『やっ!わっ!ちょ待ぁあーー《ドゴバガァアォンッ!!》ふぎゅっ!!』 殴ると同時に地面に叩きつける!! これぞユリー=チャコフスキーが刃牙を仕留めたフィニッシュブロー! 素晴らしい……!ていうかユリーさんどうなったんだろう。すごく気になる。 中井出「ダメだ…………ダメ……ほんとうにっ……ぜんっぜん……ダメ…………っ!     0点…………っ!点をつけることさえ……ためらわれる…………っ!     協力のきょの字さえ…………見せられないままに終わる…………っ!     こんなことがあっていいのか…………?あ……?     お前らはそんなことでいいのか……?満足か…………っ?」 夜華 『ぐ、く……!き、さま……!言わせておけば……!』 ルナ 『うぅう……』 中井出「えー、というわけであなたがたは0点だ。0点。     協力する気が全くない。喧嘩ばかりの跳ねッ返り娘どもだ。     アレだな、顔をガングロにして親泣かせるタイプ。     今時がどうとか流行がどうとかなんてどうでもいい。ありゃねーだろ人として。     と関係ないことは捨てといて。     二人とも速度や技能はこの博光など足元にも及ばん力を持っています。     それなのにお二方は夫ばかりを意識して、     カコイイトコミセヨー、とか燥いでこのザマです」 夜華 『なっ!わ、わたしはそんなことは考えていない!!』 ルナ 『ふーん……わたしは考えてたけど?』 夜華 『き、貴様!戦いをなんだと思っている!けしからん!』 や、それをあなたが言いますか。 どう見たって彰利のこと意識してたでしょうに。 中井出「とにかく。あなたがたは本当にダメだ。二人がかりの意味解ってる?     どっちかが相手の隙をつけば簡単に進められるし、     二人掛かりで隙ばっか狙ってりゃそれこそ楽勝よ?     なのにあなたがたと来たらバラバラに戦ってばっかりでもう……。     この結果の情けなさはきちんと夫に伝えさせてもらいますからね!!」 夜華 『なにっ!?待て!貴様なぞに無様にやられたなどと報告されたら───』 ルナ 『そ、そうよそうよぅーーっ!     そんなの情けなくて傍に居られなくなるじゃないのさーーーっ!!』 中井出「私は戦いとは最初から全力でかかるものだと自負しております。     あとから隠された力をモリモリと出す……     そんな漫画的なパターンを、俺は現実では認めたくないのだ。     や、べつにやってもいいんだけどさ、そりゃ各自の自由だしね?     でも最初からそんなこと出来るならさっさとやれって言いたいじゃないか。     漫画やアニメの敵役なんて馬鹿の極みどもだぜ?     最初っからフルパワーでやってりゃ、ザコども一層なんて軽いのにさ。     秘められた力を勇者が覚醒させる前に殺してしまえば勝利なのに。     余裕ぶっこいてちくちく遊んでるからあんなことにっ……!     だから魔王なんざ大したことねぇっつっとんじゃああーーーーっ!!     悪だ!心に悪を持っていれば躊躇などせずコロがせる!     悪に慈悲などあってはならぬ!!漫画やアニメの悪など可愛いもんだぜまったく!     殺さずちくちくと半殺しにするのは残酷なだけであって悪ではない!     悪とは!決して迷わぬ悪とは!躊躇もせずに敵を殺す修羅を指すものである!!」 夜華 『そういう……貴様はどうなんだ……!     こうしてくだらん話をしている場合か……?     殺すなら殺すがいい……!だがわたしは───』 中井出「し〜の〜せさん♪……動かせる部分ってまだある?」 夜華 『なに……?……多少だが体は動《バゴドガァンッ!!》ぶはぁっ!!?』 言葉を聞いた途端に頭に血が上った僕は、容赦無用に篠瀬さんの顔面に拳を落としました。 意志としてでなく浮き上がる体が、その威力を物語っております。 中井出「こぉおおおおのバッカモンがぁあーーーーーーっ!!     動く箇所があるのに戦いを放棄するとは!貴様それでも闘士かコラァアア!!!     キミの命はそんなに安いんかァア!     蘇れるからってあっさり殺せと言えるくらい安いんかァアア!!     キッサマ今が例えば復活不可能だった状態だったら同じ言葉が言えたの!?     愛する彰利をほっぽって、自ら命を捨てることを選択できたの!?ねぇ!!」 夜華 『ぐ、ぶはっ……!ぐ、……そ、それは……!』 中井出「顔面殴っといてなんだけど僕は悲しい!     武士道とは死ぬことと見つけたりなんてことを、     まさか篠瀬さんの口から聞くことになろうとは!     武士でもなんでも大切なものはあるでしょう!?過去のキミには楓さん!     今のキミには彰衛門!!     そんなキミがそんなにあっさり命を捨てようとする様が僕は悲しい!!     そんなの篠瀬さんじゃない!篠瀬さんじゃないやい!     ……ルナ子さんもルナ子さんさ!僕を狙える機会なんてたくさんあったのに、     どこかで篠瀬さんがやられる様を見守っていた!     そんなの協力者が取る行動じゃない!協力ってのはそんなんじゃないやい!     だからきっとこの子たちは悪魔に取り憑かれてしまった!!」 夜華 『え……な、なにぃっ!!?』 ルナ 『悪魔って……なによそれ!!』 悪魔は悪魔さ!それ以上でもそれ以下でもない! 詳しくはアウターゾーンをどうぞ。 素晴らしいオバハンがあなたの熟読を待っています。 中井出「そうよそうに決まってるわ!     あなたたちがいつまで経っても喧嘩ばっかりなのは悪魔の所為だ!」 ルナ 『そんなわけないでしょーーーっ!?いいから敵対心解きなさいよぅーーーっ!!』 中井出「騙されるもんか!悪魔は人を騙すのが得意なんだ!悪霊退散!!」 夜華 『退散するのは貴様だ!!』 中井出「《ボゴォッ!!》だっと!!」 動くと言われて間も無い腕によって振るわれた刀の鞘で、頬を強打された。 そう……やはり人間、動けるうちはいつまでも足掻いていなければ。 これだ……僕が見たかったのはこれだったんだ。 中井出「そう……それです。僕があなた方に教えたかったスタンスとはまさにそれ……。     動かせる箇所があるのなら、どうか最後まで諦めないでください。     そして、たとえ動けなくなったとしても、     口が動かせるのなら助けを呼ぶことだって出来ます。どうかそれを忘れないで。     あなたがた玄人は、どうにも戦いに妙な悟りを抱いてしまっている……。     多少動けなくなれば殺せとか好きにしろとか……はっきり言ってそんなのはダメ!     動けるなら頑張ろう!たとえボコられると解っていようが、     抗うことに意味がある!え?それでやられちゃ意味がない?     ……動けるのになにもせず寝転がってることにこそ意味があるとでも?     勝てない戦いだから抗うのは無駄だとか悟った考えなんざどーでもいい!     ようは意志!覚悟!こうすると決めたなら貫く覚悟!!     勝てぬまでも、死ぬまでは抗い続けようと覚悟を決めたなら、     そうするのがせめてもの勝利だと思わんか!」 夜華 『ま、待て……それをすれば結局死ぬではないか……』 中井出「YES。意志を貫き通すというのは、     篠瀬さんの方がよく知ってるとは思いますがとても難しいこと。     一人じゃできないことっていっぱいです。     だから協力してクラサイと僕は言っているのです」 夜華 『……夫を罵る相手と素直に協力しろというのが土台無理な話だ』 ルナ 『それはそうよ。わたしだってホモっちなんかの妻ってだけで嫌だもの』 夜華 『なんだと貴様っ……!』 ルナ 『む。なによー』 中井出「稲妻反転蹴りィイイイイイイイッ!!!!ヂガガドバッシャァアアアアアアアンッ!!!! 夜華&ルナ『あががぎぃいいーーーーーーーーっ!!!』 まったく懲りない人妻二人に雷の制裁を加える! ええいもうこの二人本当に仲悪いなぁ! 親友の妻同士とは思えないくらいの険悪っぷりだよもう! 中井出「協力!協力の意味ワカッテル!?貴様ら大概にせんと僕怒るよ!?本気だよ!?」 ルナ 『お、怒るからなんだってのよぅー。倒れてる女の子殺す気?それも、友人の妻を』 中井出「うん殺す」 ルナ 『え?《ザゴォオギキィンッ!!》ひ、えっ……!?』 夜華 『ば、ばかものっ!この男はやると言ったらやる男だと悠介殿があれほど───!』 仰向けに倒れるルナ子さんの顔のほんの少し横。 そこに、抜き取ったジークフリードを垂直に突き刺す。 刃はもちろんルナ子さんの頬に向けている。 少し横に倒せばサックリ神父行きです。 中井出「うーん、どうやらまだ解ってないみたいだねー。     ルナ子さん?僕はねー、相手が誰だろうが敵対したらコロがすって言ってるんだ。     そこに仲間意識とかは一切ないんだよー?     あるのは敵はコロがしますって気持ちだけなんだよー。     戦いってのはね、そういうものなんだよ?……解るね?うん」 ルナ 『え、えっと……その……』 中井出「晦や彰利の妻だから、猛者どもの妻だから自分はコロがされないなどという、     そんな半端な覚悟しか持てないのだったらいっそここでコロがしてくれようか……     そしてそれからは晦や彰利に近づこうものなら問答無用でコロがして、     この世界では絶対に二人に近づくことさえ出来ないようにグオッフォフォ……!」 夜華 『なっ……ま、待て!それは困る!──わ、解った、貴様の言いたいことは解った!     だからやめてくれ!それだけはやめてくれ!     わ、わたしは彰衛門が傍に居ないと、もうどうしていいのか解らなくなる……!』 中井出「グラッツェ!!それが解ればキミは動ける!───さあ動くんだ篠瀬さん!     そしてルナ子さんと協力し、私を倒してみるがいい!!」 アニメ版スーパーフェニックスの声を真似て、身体に力を込めた。 あの“私を倒してみるがいい”の声、好きなんだよね。 夜華 『ぐっ!くぅうう……!!』 ルナ 『うぐぅうぐぐ……!!』 お二方が身体に喝を入れ、起き上がる。 その様に僕は感動すら覚えた……!……もちろんウソだ。 夜華 『そうだ……今さら、彰衛門と同じ死神に至った今さら、人に負けるわけには』 総員 『あ……っ!』 夜華 『《ビクゥッ!!》な、なんだ!?どうかしたのか!?な、何故わたしを見る!     わたしがなにか妙なことを言ったか!?』 中井出「…………《ニコリ》」 戦闘中の皆様が一斉に篠瀬さんを見る中、 おろおろと周りを見渡していた篠瀬さんがやがては俺を見て、 僕のスマイルにギョッとした───まさにその時。 中井出「……図に乗るなよ、人外ども……」 僕の堪忍袋は、ゴブチャアと自らの意志で自滅したのでした。 中井出「そォオオかそォかァアアア……!!人じゃないってそんなに偉いンかァアア!!     上等だこの武士野郎!!今回ばっかりはこの博光!怒り狂う修羅へと変貌しよう!     おい彰利!この無礼人ブッコロがして構わんよなァア!!つーかコロがす!!     力量!?技量!?種族!?それがどうした刺し違えてでもブチコロがす!!」 彰利 『ゴバァ!?(訳:なにぃ!?)』 悠介 「提督!今彰利海の中だから返事なんて出来ないぞ!?」 中井出「ええい構わん!僕は大抵のことならば笑って済ますが!     種族として人を下に見るやつだけは許せないのだ!!     人じゃないのがそんなに偉いかこの野郎!……野郎?あ、えと、……女郎?」 遥一郎「どうしてそこでスマートに決められないんだよお前は……」 中井出「う、うるさいやい!そんなの僕の勝手じゃないか!     とにかくさあ来いっつーか行く死ねぇえええええっ!!!」 もたもたする相手にキツケの一閃! 本コロがしするつもりで双剣化させた武器を振るう! 夜華 『う、うわぁっ!?』 ルナ 『───だから!二人だってことを忘《ブファォン!!》はわぁぅ!?』 中井出「忘れぬ!故に死ね人外め!」 なんのために双剣化させたと思っとるか! フオオ、こやつもまた、戦いというものを知らぬ愚か者か!ムッハァーーッ!! 夜華 『人外人外と!確かにわたしはこの体自身のために死神に至ったが、     人であることを捨てたわけでは』 中井出「嘘だよ!!」 夜華 『《ビクゥッ!》なっ……!?な、なにを……!うそでは』 中井出「嘘だ!!嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!     篠瀬さん、どうしてそんな嘘つくのかな。……かな。     博光、篠瀬さんがそんな嘘つく理由が解んないよ」 夜華 『う、うそじゃない!わたしは───』 中井出「篠瀬さん、言ったよね。博光に負けるわけには、って。     人である博光に負けるわけにはって……言ったよね」 夜華 『……い、言った、が……それとこれとは』 中井出「同じだよ。篠瀬さんは死神になったことで、博光たち人間を下に見てるんだよ。     だからそんなこと言うんだよね?     博光たち人間が、篠瀬さんよりも基本身体能力とかが劣ってるから。     だから自分より弱い存在なんだって下に見るんだよね?」 夜華 『ち、違う!わたしはそんなことで人を見下したりなどしない!     修練の差で腕前が上か下かを見ることは、それは確かにある!だが───』 中井出「嘘だ!!だったらどうして死神に至った今、     人に負けるわけには、なんて言ったのかな。……かな。     下に見てなかったら、そんなこと言う必要ないよね?」 夜華 『あ……あ……?そ、れは……』 中井出「ほら。言い返せない。     篠瀬さんがどう思おうが、篠瀬さんは博光たちを下に見ちゃってるんだよ。     深層意識の中で、博光たち人間を雑魚だって思ってるんだ。     うん。確かに篠瀬さんはいっつも鍛錬してるよ?     博光たちはそんなことしてないから、それは素直にすごいと博光も思うよ。     でもね、だからって何度も死ぬ思いをしながらも、     今日までを生きてきた博光の道を下に見られるの……なんだかヤだな」 夜華 『し、下に見てなど……!そ、そうだ、現に貴様は強いではないか!     正直驚いたぞ、死神化したわたしをこうも押し退けるとは!     そ、それこそ貴様がこの世界で努力をした結果で───』 中井出『……努力なんかしてないよ、博光は。     やっぱりなんにも解ってないんだなぁ篠瀬さんは。     博光はね、死に物狂いになりながらもこの世界を楽しんで生きてきたんだよ。     楽しむことにはね、努力なんて必要ないんだ。     ただ心の底から、その時その時をありのままの自分が走れればいいの。     ───……それを知った風に言うだなんて、……許せないよ』 夜華 『っ……ま、待て!わたしは───』 中井出「わたしは、なにかな。言い訳があるなら聞いてあげるよ?     でもこれが最後だよ。もしひどいこと言ったら、本当に怒るからね」 夜華 『うぐっ……わ、わたし、は……貴様の誇りを傷つけるために言ったわけでは』 中井出「誇り?誇りってなにかな。……かな。博光に誇りなんてないよ?     あるのは楽しむ心だけだもん。     ……博光、篠瀬さんがなに言ってるのか解らないな」 夜華 『っ!?ま、待て!違う!誇り、ではなく───!』 中井出「もういいよ。なにを聞いても探りの言葉にしか聞こえないよ。     篠瀬さんはそうやって、人を探ることを覚えちゃったんだね。     それは何処で覚えたのかな。お母さんに教えてもらったの?……違うよね?」 夜華 『───!はっ……母、上……?』 中井出「篠瀬さんのお母さんはとても素晴らしい人だって、     篠瀬さん自身が言ってたもんね。     そんな、探りを入れることを娘に教えるような人じゃないよね?」 夜華 『あ、あああ……っ……!?わ、わたしは……わたしはいつから……!?     わたしはいつからこんな、相手の心に探りを入れ、表情を伺うような者に……!』 篠瀬さんがこの博光を前にして頭を抱え、ガクガクと震え始める。 ……自分自身で自分が信じられなくなったのだろう。 僕はそんな彼女を前に、真面目な話だということを悟ったのか、 攻撃を仕掛けてこなくなったルナ子さんを無視して 中井出「ガァーーーーーーハハハハ隙あり死ねぇえええええっ!!!!」 夜華 『───え?ぇあうわぁあっ!!《ゴギィンッ!!》』 中井出「なにぃ!?受けおったわ!!」 襲い掛かりました。が、なんと刀で受け止められた!! な、なんという反応速度よ! 夜華 『きっ……きききき貴様ぁあああっ!!人を苦悩させておきながら不意打ちとは!』 中井出「ワハハハハ!!敵の隙を突くのは戦いにおいての常套手段!     それを無理矢理に作るのも戦法というものよ!騙されるほうが悪いのだ馬鹿め!」 ルナ 『まっ……真面目な話だと思って損したーーーーっ!!     蘇るのを後悔するくらいぎったんぎったんに切り刻んでやるわ!!』 中井出「ごめんなさい謝るので勘弁してください」 総員 『素直に謝ったぁあーーーーーーっ!!!』 ルナ 『え、あ、……え、えぇ……?』 夜華 『あ、あの、悠介殿……なんなのですかこの男は……。     真面目になったかと思えばふざけ、ふざけたかと思えば真剣に謝り……』 悠介 「……ふむ。一言言える言葉があるとすればだな」 ルナ 『……すれば?』 悠介 「提督から目ェ離すと、無事じゃ済まないぞ?」 夜華 『え───はっ!?《ザブシャアッ!》ぐあぁあああああっ!!』 ルナ 『ひゃっ!?なに《ゾブシャアッ!!》いっ……うあぁああああっ!!!』 愚かにもこの博光から目を離した二人に双剣の斬撃を見事にお見舞い!! ふはははは愚かなことよ……! 戦いの最中に敵から目を離すなど、殺してくださいと言っているようなもの……! そして僕はそんな相手に斬撃を振り下ろすことに一切の躊躇をしません。 夜華 『《ビジュンッ……》ぐ、は……!き、さま……!」 ルナ 『《ビジュンッ……》は、う……ぐ……」 二人の卍解が見る間に解けてゆく。 ダメージがデカかった証拠か、それともHPが少ないのか。 どちらでもよろしい!あとはコロがすだけだし。 ……などと、極上ガイアスマイルを浮かべながら一歩を踏み出そうとした僕だった。 が、それを晦一等兵に制止される。 我に振り返り、アイコンタクトを受け取るに、 どうやら二人に話しておきたいことがあるらしいが…… 夜華 「ゆ、悠介殿……」 ルナ 「ゆーすけ……」 悠介 「はぁ……ちょっとは学べたか?」 夜華 「学ぶ……?」 ルナ 「な、なに?それ……」 困惑を浮かべる二人に対し、晦は苦笑いだ。 まあ、自分の妻と親友の妻がここまでボロボロなら、 苦笑いもすれば、多少なりとも俺に“やりすぎだ”とも言いたくなるってもんだ。 悠介 「我らが提督は、技術面ではてんで素人だ。     へ〜ぼんに暮らしてたんだ、当然だ。     戦ったことだってこの世界に降りるまではなかった。     お前らがどうしても下に見るのは、まあ当然だと思う。     俺だってそうだったくらいだ」 夜華 「うぐっ……」 ルナ 「うー……」 悠介 「けどな、そんな提督だからこそ、戦いってのを知ってる。     油断すれば死ぬ。負けたら意味がない。     そういった覚悟を、こいつはちゃんと持って……、……な、なぁ提督?     なんだか背中にいや〜なさッ気を感じるんだが……」 中井出「……ココニモ僕ラ人間ノ敵ガ」 おそる、と振り向く彼だったが、僕はそれを笑顔ではなく憎悪の眼差しで睨みました。 ……敵だ。 僕ら人間を下に見る敵が、我らが猛者の中に入るなんて。 悠介 「うおっ!?ま、待て!落ち着け!     今話の最中だから!な!?い、今のは喩え!喩えだから!」 中井出「うん知ってる。言ってみただけ」 悠介 「解りづらいから本気の殺意を持ってウソつくのはやめろ!!」 中井出「……大丈夫だよ。だって、晦くんも嘘ついてるんだから」 悠介 「ぎっ……!い、いや、俺は嘘なんて……」 中井出「嘘だよ。だって、下に見るのは当然とまで言ってから、     俺だってそうだったって言ったんだよ?それって言い逃れが出来ないくらい、     博光たち人間を下に見てるってことなんじゃないかな。……かな」 悠介 「やッ……そうかもしれないが、けどしょうがないだろっ!     俺達はそれこそ血が滲む努力の中で力つけてきたんだ!     地道にもほどがある!それがっ……この世界に降りて、     敵を倒すだけで強くなるお前らをそう簡単に強者だって認められるもんか!」 中井出「───《ブチリ》」 総員 『あ』 悠介 「……へ?───ぐあ!」 だけ?……ほほ、だけと申しあがりやがりましたかこの一等兵様。 確かに最初はポコポコと弱い敵を倒して地道にレベルを稼ぎ、 新たな場所へ赴いてはその景色を楽しむ毎日だった。 だが今はどうです!?この馬鹿者の所為でドラゴンズカーニバルが開催! 昨日だけで!昨日だけで4体もの守護竜と死闘を繰り広げ、 中でも光天龍バトルは本気で死と隣り合わせの限界ブッチギリバトルを繰り広げた!! それを“だけ”と!だけと申しおったわこのモミアゲが!! 悠介 「わ、悪い提督……!今のは完全に俺が悪かった!」 中井出「よし許す」 悠介 「速ッ!!あ、え……!?ほんとにいいのか《バゴガァンッ!!》ぶへぁあっ!?」 中井出「なーーんちゃってーーーーーっ!!     許すわけなかろうがこのバッカモンがぁああーーーーーーっ!!     で!?これがそうなの!?えぇ!?これが血の滲むような努力の末のキミ!?     嘘に騙されてあっさり殴られるのが貴様の努力なの!?どうなんだい!」 悠介 「く、口調がオカンになってるぞお前!」 中井出「お前じゃない!提督だ!」 悠介 「さ、サーイェッサー!!」 中井出「サーじゃない!桂だ!」 悠介 「なんのことだよそりゃ!!」 中井出「うむ!深い意味はない!とりあえずこの博光に技術も経験もないことは認めよう!     それは確かに貴様らに比べれば微々たるもの!     だがなー!それをドラゴンバトルの開幕者に言われるのだけは我慢ならねー!!」 悠介 「し、失礼しましたサー!完全に俺の失言でしたぁあーーーーっ!!」 中井出「貴様の所為でどれだけ俺が休憩なしでバトってたか解る!?ねぇ解る!?     何度も何度も死ぬ思いしてんのよ!?それなのに貴様ってば、     苦労して手に入れたラグナロクを横から奪おうとするわ、     人の苦労を認められんとかぬかしだすわ!     貴様にドラゴンに飲み込まれた僕の気持ちが解るかぁああああっ!!」 悠介 「す、すまん!本気ですまん!あんなこと言うつもりじゃなかったんだって!」 中井出「嘘だ!」 悠介 「ほんとじゃあっ!!なんでもかんでも嘘呼ばわりするのやめろ!!」 中井出「じゃあキミに一つお願いがあるんだけど」 悠介 「…………無茶なことじゃない限り、頷こう」 ていうか好き勝手に話の勢い殺すなよ、と続ける彼に、僕は断ると返しました。 中井出「ラグナロクは貴様が月の石版を完成させた時に渡す。     だから、月の石版を俺にくれ」 悠介 「───、……それでいいのか?」 中井出「うむ。ちと訳ありでな、必要になるかもしれん」 悠介 「……や、まあ……“手に入れること”が条件だから、     手に入れさえすれば手放してもいいんだが……     まさかそんなので交換してくれるとは思わなかった」 中井出「いろいろあるんだ、こっちにも。     それと、素晴らしき7人が隠しジョブを手に入れるために     必要なものが見つかった場合、無条件でよこせ」 悠介 「お前それ最強部隊作るのに手ェ貸せって言ってるようなもんじゃねぇか!」 藍田 「あ、提督ー、隠しジョブの素材なら俺、猛者どもから貰ってきて揃ってるぞー」 中井出「なにぃマジで!?」 藍田 「おー!なんか結構前に拾ったらしいんだけど、体術使いが居ないからってくれた。     そういやそれっぽい名前のやつ、誰か持ってたなーと思ってさ。     提督が寝てる間に一度合流した。そしたら───コレモンよ」 がしゃんっ、と藍田二等が仮面を被る。 それは、闘鬼の仮面という名の……真っ赤な、だけどどこか黒さを連想させる仮面だった。 しかもそれを被った途端に藍田の装備の全てが変異し───! 藍田 『……修羅への昇華を完了する。人知を超えた我が力、とくと知れ』 顔には真っ赤なフルフェイスの仮面、背には黒い装飾の外套、 身体には灼熱のマグマを思わせる灼衣と、その両手を覆う黒色の篭手。 そして……足は依然変わらず、ランペルージュという武具で覆われていた……! その姿はまさに滅びの母の力を身に受けし者、グラーフ。 腕を組んだまま、小さく浮遊する者の威圧感は、 ついさっきまでの藍田には存在しなかったものだった。 中井出「ぬおお、藍田貴様……いつの間に浮遊を……!」 藍田 『え?ああ、ジョブチェンジしたら、ログにいろいろ使えるようになりましたって。     で、その一つが浮遊。いいなぁこれ』 中井出「………」 聞きました?奥さん。 ジョブ特性に浮遊があるんですって。 ……なんて羨ましいんだろうかちくしょう。 藍田 『んじゃ、ちょっと行って力試ししてくるわ』 岡田 「行くって何処に?……って、まさかテンタクラー!?」 清水 「無茶だろオイ!もう結構深いところまで来てるぞ!?水圧で死ぬって!」 藍田 『男は度胸!───10分アビリティ発動!《ゴシャアッキィインッ!!!》     我の拳は神の息吹!堕ちたる種子を開花させ、秘めたる力を紡ぎ出す!!     ───美しき滅びの母の力を!!《キュバァアォアァアアアアンッ!!!》』 総員 『ホギャアーーーーーッ!!!?』 藍田の体が赤く、黒く、点滅するように輝く! そして光が身体を包むと、浮遊したままの状態で飛翔し、空気の層を破って特攻!! 映像の中、デビルテンタクラーと戦い続けていた彰利の横に辿り着くと、 その勢いも冷めぬまにドンガガガガガガガガドガドガドバァォンッ!! 眩いばかりの黒い輝きを発する双掌で、巨大生物を幾度も幾度も打ち押してゆく!! 夜華 「……、な、なんだあの馬鹿げた掌打は……!!」 遥一郎「あの巨大生物を、怯ませるだけじゃなく確実に潰していってる……!」 ───名を、機神黒掌。 ゲーム、ゼノギアスの中でほぼ最高ランクの技であり、 掌打だというのに恐ろしい威力を誇る、機体・ヴェルトールの奥義である。 機体・ゼノギアスで放てば、どこが黒掌?と首を傾げる奥義だが───  ドゴドゴォン!ドンドドドドドドバォンッ!! 完全に黒の手であり、その威力を今まさに目にした俺達にとって、 それは……機械の神が繰り出す技ではない点だけをおいて、確かに黒掌。 喩えるなら、鬼の面を身につけた者が放つ……そう、鬼神黒掌と呼べた。 藍田 『おぉおおらぁっ!!』  ガヴォドガバォオンッ!!! そして、ついにトドメ。 打ちながら、極限まで高めた黒の掌を両手で放つことで訪れたそれは、 デビルテンタクラーに叫びを残すことを許さず消滅させた───! 総員 『………』 傍観していた俺達は、呆然とするほかなかった。 頑張って戦っていた彰利なんて特にだ。 放つ黒掌の全てが、戦車装甲さえを容易く打ち破る徹甲弾。 だというのに呼吸する暇さえ、瞬くする暇さえ惜しむかのように連ねられる撃は、 敵に生きることを少しも許さなかったのだ。 藍田 『《ゴバァ……》はふぅ……あー、いい運動した』 彰利 『《ゴバァ……》……なんか俺、強くなることに自信を失いそう……』 と、そこへ藍田と彰利が戻ってくる。 海水で水浸しの筈の身体や衣服は空気の層に弾き落とされ、 乾いたままのスベスベお肌になっている。 で、俺達の前に降り立つとそれぞれが死神王、修羅状態を解き、息を吐く。 藍田 「うっしゃ、一応拳スキルも地味に上げといてよかったわ。     ……ほんと地味だけどね。足クセ悪ぃなぁ俺。     拳と足のスキルが倍以上の差があるよ」 彰利 「むぅ……よもやキミが執事をやめるとは」 藍田 「おお。執事もいいけど、俺ゃ足技が好きなだけよ。     サンジくん、好きだし。執事道は別の誰かに任せるさ。     俺は修羅を極める。何故って、我ら原中自体が既に修羅の集団だからだ」 悠介 「理由になってない気もするが、まあ……     お前ってもう執事じゃなくなってた気がするし」 藍田 「否定できねぇなぁ……ホワァッハッハッハ!!     でも誰にも属さない執事ってのもいいんじゃないか?     ほれ、なんつーの?ハードボイルド?」 彰利 「貴様なぞハードドルイドで十分だ」 藍田 「モンスターじゃねぇかよそれ!」 鳥肌でも立たせたのか、震えるような声で藍田は叫んだ。 その姿は変わらずのグラーフだったが……まあ、楽しそうなので実に素晴らしい。 ナギー『おぬしらちゃんと戦闘に参加するのじゃー!敵は一体ではないのじゃぞ!!』 中井出「大丈夫!なにを隠そう!……今の俺は足手まといの達人だァアア!!!」 ナギー『……この状況でそれを威張るとは、さすがヒロミツなのじゃー!!』 シード『お見事です!父上!』 中井出「ありがとう!ありがとう僕のベイビー!!」 どうしてだか涙が出ました。 近接戦闘が出来ない状態の自分が、滅茶苦茶役立たずだと理解したゆえの涙だった。 ……。 ……そうしてガヤガヤと騒ぎつつ、海底深くまで沈んだ僕ら。 晦も思い出したかのように篠瀬さんとルナ子さんに、戦いとはなんぞやを説いていたが、 それももう俺にとってはどうでもよくなっていた。 いいのさ、僕は孤独なソルジャーさ。 今さら彼女らに覚悟を説いたところで通じまい。 だって、彼女らが抱くであろうそれは、俺が抱く覚悟とは結局違うものなのだ。 ならばもうなにを言う必要があるだろう。 俺は、俺だけの覚悟を以って、この世界を楽しみ尽くせばいいのだ。 強くなりたいから冒険するんじゃない。 楽しい冒険をするために力が必要だから強くなる。 俺にとってのそれは、楽しむための過程でしかないのだ。 武器を強化して楽しむ、自分のレベルを上げて楽しむ。 やっぱり、ゲームは楽しめなければゲームですらないと、俺は思う。 故に、我は此処に在るのだ。 しかし、意志ある者である以上、どんなものにも食い違いがあることを自分は知っていた。 だからこそ、彼女らが抱くものが僕が抱くソレと違うとしても、 猛者どもが抱くものと違うとしても……俺は、俺の仲間を裏切らない。 俺は“仲間”が好きだ。 だから、仲間を本当の意味で裏切ることだけは絶対にしたくない。 ……当然だ、自分がされたくないことを自分からやるなんて馬鹿げてる。 許される範囲、笑える範囲でなら、俺達は俺達同士でのみ自由だった。 ……そんなことを、どうしてこんな時に思うのか。 少し不思議に思って、小さく苦笑した。 あんな夢を見たからだろう。 精神世界であるこのフェルダールで夢だなんて…… まあ、珍しいことは確かだが見ることもある。 けど、あんなに鮮明なのは初めてだった。  ───それも、自分が死ぬ夢だなんて笑えない。 俺は笑っていたいのに、どうしてあんな夢を。 仲間にも囲まれず、憎まれ、孤独に戦って、死んでゆく夢を。 それは恐らく、俺が最も恐れるものだ。 仲間が居ない……家族が居ない。 誰も俺を見ず、呼ばず、冷たい心のままに死んでゆく。 もし俺にじーさんが居なければ、俺はそうやって地界で死んでゆくだけだった。 両親を亡くし、ばーさんを死なせてしまった罪の意識を抱いたまま、静かに、醜く。 だから思う。 もしあの夢が予知夢だったためにあんなに鮮明だったのなら。 ……俺はきっと、絶望のままに死に行くのだろう。 なににも感謝出来ないまま、あの頃は良かったって後ろ向き中井出博光のまま。 そこまで考えてみて、なにが一番嫌だな、と思ったのかを自問してみる。 ……すると、とても意外だったけど……───死んでしまうことが、なにより嫌だった。 やっぱり俺は人間だ。 深い絶望を知りながらも、それでも生きていたいと願った。 夢の話だ、現実でもそうとは限らない。 でももし……この現在の果て、未来の先で俺が死ぬことがあったのなら…… どんな後悔を懺悔よりも、死ぬのはやだなって呟いて…… 情けない自分のままに、逝くのだろう。 それは、……どうしようもないくらいに……“人間の最後だな”って思えて…… 俺は、泣きたくなるような夢へと思いを散らし、誰にも見せないままに涙した。 Next Menu back