───冒険の書212/この歌が自然に届きますように───
【ケース533:藍田亮/恐れを知らない戦士のように……】 ズボシャシャシャア!! 清水    「ここが完全無比超人になれるトロフィー球根のある        黄金の国ジパングか〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」 岡田    「どおれ明日は大暴れしてやるとするか〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」 サンダー  『いくら明日の“究極の超人タッグ戦”がオープン参加だと言っても』 ライトニング『オメーラみてえな有象無象にあんまりエントリーされても        無駄に時間を食うばかり……』 サンダー  『邪魔な小枝は間引いておかんとなァ〜〜〜ッ』 ライトニング『オレたちの明日のトレーニング相手になってもらうぜ!』 清水    「ウワアアーーーーーッ」 岡田    「ギャヒヒィ〜〜〜〜ッ」 西の大陸(膝下は海水まみれ)に辿り着いた俺達だったが、 突然ブキャナンとマスクド・アラジン(キン肉マン二世キャラ)の真似をする清水と岡田。 そんな彼らに付き合って、即座に変身した俺と丘野は彼らの頭にザッと乗っかる! もちろんその乗っかり方は原作に忠実に、サンダーが屈伸逆立ち風味、 俺が背を思い切り仰け反らせて自らの足首を持ち、 その状態で腹部で岡田の頭の上に着地するという素敵っぷりを疲労。じゃなくて披露。 それにしても暗いなここ。 マクスウェルがここの空気の層自体に光を貼り付けてくれてもこの暗さ…… 光が消えちまうまえにケリつけたほうがよさそうだ。 清水 「この口汚い罵りようと傍若無人なふるまいは今回の“究極の超人タッグ戦”     開催の黒幕でもある悪衆・時間超人だな!?」(サウジアラビア ブキャナン) 岡田 「て…てめぇらがあの悪名名高きライトニング&     サンダーかぁぁーーーーっ!?」(サウジアラビア マスクド・アラジン) 清水 「ていうかなんで俺達の顎の下にわざわざサウジアラビアとか出てきてんだ!?     なにこれ!!」(サウジアラビア ブキャナン) 岡田 「な、なんだこりゃ!消えろこの!」(サウジアラビア マスクド・アラジン) 藤堂 『なぁーーにやってんだお前ら!     遊ぶのは素敵だが今はそれどころじゃねぇだろ!』 田辺 『いいからさっさと走るべ!』 清水 「遊んでねぇえーーーーーっ!!」(サウジアラビア ブキャナン) 岡田 「くそう!早速隠しジョブ的姿になりやがって!     俺もさっさと隠しジョブ欲しい!つーかこれすげぇ邪魔くせぇ!     消えろこの!消えろっつーの!」(サウジアラビア マスクド・アラジン) お遊びはここまでにしといたほうがよさそうだ。 確かに一発ミッションを成功させる魅力は高いが、 それ以前に失敗して水圧に殺されるのも嫌だし。 そうと決まればライトニングモードオフ! 修羅となりて、一刻も早いこの大陸の救済を為そう! 藍田     『よっしゃあ行こうぜ野郎ども!』 岡田     「隠しジョブだからって仕切んなクズが!……あ、消えた」 清水     「羨ましいじゃねぇかこのクズが!……あ、こっちもだ」 丘野     「拙者を差し置いて自分だけ!ひどいでござるよこのクズが!」 藍田     『なんで俺ばっかりクズクズ言われてんだよ!』 通常ジョブども『羨ましいからだ!!』 藍田     『それなら藤堂も田辺もそうだろうが!!』 清水     「うるへー!普通に空浮いてるお前がこの中じゃ一番羨ましいんだよ!」 田辺     『俺だって牙銀モードじゃなくちゃ空飛べねぇんだぞこのクズが!』 藤堂     『そういやどういう原理で空飛んでんだよテメェエエ!!』 岡田     「ここはみんなでジャップジャップ水を掻き分けて走る場面だろうがァア!         空気読めよオメェエエーーーーーーーッ!!!」 藍田     『清水……俺の背に乗れよ』 清水     「OH.YES……!」 岡田     「裏切り者ォオオーーーーーッ!!」 丘野     「てめぇ清水!俺達を裏切る気かこのクズめがぁーーーーっ!!」 田辺     『じゃあ岡田は俺が乗せるとして……じゃ、行くか!』 岡田     「最高さ」 隠しジョブども『オーーーゥ!!』 こうして俺達の旅は再開した! さあ行こう!……って、なんか違和感あると思ったら既に提督が居ねぇ!? あの野郎一人でさっさと突っ走って行きやがった! おのれ許さんぞ!大陸浮上イベントは男のロマン! それを一人で───じゃなくてナギ助と二人だけで拝見しようなんて行為は許されん!! そうと決まればと、俺達は全速力で飛翔した! 空を飛ぶ俺!翼を生やして飛翔する田辺!ローラーダッシュで水の上を滑る藤堂! そして───丘野は叫んだ! 丘野 「待ってくれぇえーーーーーっ!!!」 清水と岡田が俺と田辺の背に乗る中、一人置いてかれた素晴らしき丘野だけが、 ジャップジャップと海水を掻き分けて走っていた……。 さようなら丘野くん……俺達は貴様のことを忘れない。 丘野 「ちっ……ちっくしょおおお!!元忍者をナメんなよコラァアアアッ!!」 しかしそんな時だった! 丘野の野郎がバックパックから水蜘蛛を取り出し、足に装着したのは! でも忍術自体が滅んだ今、それはクソの役にも立たずに沈んだ。 丘野 「ちぃいいいいっくしょおおおーーーーーっ!!     ちぃいいいいいいいっくしょおおおおおーーーーーーーーっ!!!!」 血管ブチブチにして限界まで顎を開いて絶叫する様はまさにナッパ!! でも俺達は止まることなく無視して進んだとさ。 アディオス丘野、出来ることならば這い上がってこい……ここまでな。 などと思いつつ自分の喉をトントンと突付いたが、 悔しさとともに強引に駆けてくる彼にしてみれば相当な挑発だったらしい。 丘野 「覚えてろ……!俺はこのままでは終わらんぞ!!     かならず生きて……貴様らを見返してくれようぞぉおーーーーーっ!!!」 遠ざかる俺達を目に立ち止まり、胸を張るようにして絶叫する丘野! 丘野 「え?あ、あれギャァォアァアーーーーーッ!!!」 するとその上から、まるで申し合わせたかのように降り注ぐ瓦礫の数々!! 清水 「うおおお!?天井なんてないのにどっから瓦礫が!?」 岡田 「まるでボスが最後の捨てゼリフを残してる場面のようだ!     つーか丘野!?丘野ぉおおーーーーーっ!!!」 何故か降り注ぐ瓦礫に埋もれ、 丘野の姿が見えなくなる……つーかどういう状況なんだこれ。 確実にイセリア氏の遊び心なんだろうが、それにしても瓦礫が丘野に直撃してたが。 生きてるのか?あれ。 田辺 『丘野……いいやつだったな』 藤堂 『惜しい男を亡くしたぜ……』 とりあえず確認もしてないのに死亡確認らしい。 まああれだ、丘野のことだから生きてようが死のうが、どうにかするだろう。 ここでは自分のことだけを考えることにしようか。 提督も多分そんな考えだったからこそ、俺達を置いてったんだろうし。 ───……。 ……。 ヒュゴォオオオオオオオッ!!! 藍田 『清水〜!こっちで合ってるか〜!?』 清水 「お、お〜!ナビマップによると、大陸の中心部はこっちで間違いなさそうだ〜!」 空……とはいえないが、海水の少々上をゆく。 かなりの距離を進んだつもりだったんだが……こりゃ結構長い。 ボ・タが無くなった分、狭まった感は確かにあるんだけどな。 こりゃ広ぇわ。 藍田 『しっかし提督の野郎どんな速さで進んでやがるんだ?てんで姿が見えねぇぞ?』 岡田 「あれじゃないか〜!?持ち前のステータス移動で水の上を走ってるとか〜!」 藍田 『……提督……つーかあいつの常識破りへの意思って普通じゃねぇからなぁ……』 清水 「まあそんなところが面白いから一緒に居て飽きねぇだけどな〜。     あ、それよかさ、せっかくここに来たんだからさ、ほら、昆虫探しでも……」 岡田 「な、なんだとてめぇ!俺を置いて隠しジョブになろーって気か!     ていうかキングストーン寄越せ!俺が混成になるから!」 清水 「な、なぁあ〜〜ん〜〜だ〜〜よ〜〜〜〜!!     これ俺が提督に貰ったんだぞ〜〜〜っ!!?」 岡田 「ギギィイイイねちっこく子供みてぇに言ってんじゃねぇえーーーっ!!     寄越せぇえ!寄越せよぅ!!」 清水 「まーまー!俺のマスカレイドあげっからそんな怒るなって!     それと七星剣とか手に入れればそれでお前も……な?」 岡田 「なっ……し、清水……!貴様という男は……!」 清水 「俺達……素晴らしき7人じゃねぇか!誰一人欠けてちゃならねぇんだ!     だから二人で……ハッピーな生き様をつっかっもーぜ!ドラゴンボールが如く!」 岡田 「清水ゥウ!!」 清水 「岡田ァア!!」 ……その理屈だと、瓦礫に散った丘野はどうなるんだろうか。 ていうか人の背中で感動物語を無理矢理展開しないでほしいんだが……。 まあいいか。 藍田 『しっかし昆虫ねぇ。普通、探したってそう見つかるようなもんじゃねぇだろ』 田辺 『そこはアレじゃないか?中井出あたりがナギーと一緒に探しててくれそうだ』 藤堂 『あ……そりゃいえてるな。なにせ中井出だ』 清水 「そろそろ大陸の中心だけど……ちと中井出にtell飛ばしてみるわ」 岡田 「ン、頼む」 カチカチと清水がナビをいじってゆく。 いや、俺からじゃ背中の清水の様子なんて見れやしないけどさ。 清水 「ン〜〜〜……お、中井出か〜?清水だけど。     ……ん、おお。ああそう。今中心に向かってるところだ。     つーか中井出って呼んでることは普通に流すんだな。     え?べつに強制するつもりはない?号令時だけ呼んでくれればそれでいい?     いやほんと軽いなぁお前。で……え?なに?     …………中心に居る?もうかよ!どれだけの速さで……海の上走った?     ───予想通りっつーかなんつーか……」 どうやら海の上を走って一気に辿り着いたらしい…… 人間なのに人間らしからぬこと平気で実行しようとするから怖ェよ、俺達の提督さんは。 清水 「それで?……ふんふん、石版があって?     そこに───ゲッ!マジかよ!しかも浮上すると入れなくなる!?     お、おおおおいおいおい!ちょっ……藍田!藍田!」 藍田 『お、おっ?なんだなんだ?なんだよちょっ……やめろ首突付くな!』 清水 「入った最初の地点近くに隠しダンジョンがあるらしいんだよ!     しかもそこに聖王の財宝が封印されてるって!」 藍田 『なっ……マジか!?……っておい!     さっき浮上すると入れなくなるとかどうとか……!』 清水 「そーなんだよ!大陸の中心の祭壇に石版があったらしいんだ!     そこに書いてあることナギーが読んでくれたらしいんだけど、     封印のお蔭でギリギリこの大陸につながってる状態らしくて、     でもその封印自体がかなり過去につけられたもので!     もう浮上の衝撃にゃあ耐えられず、     財宝残したまま海底に置き去りってことになるって!」 岡田 「あ……だったらまた要塞で沈んでけば───」 清水 「だーめなんだって!この大陸の下には狭い底なしの穴があって、     丁度その穴に封印の洞窟ってのがぶら下がってる状態らしいんだ!     そんな場所、要塞じゃあ潜っていけねーって!」 藤堂 『じゃあなにか!?知ってるのにアイテム取れずにジ・エンドか!?』 清水 「そ……そうなる……かなぁ……。     あ、それと出来ればすぐに来てほしいとさ」 藍田 『んお……なんでまた。ナギ助になにかあって浮上出来ないとか?』 清水 「いや……浮上させる前に昆虫探してたらしいんだけどさ。     見つけたわ見つけたんだけど、     それがゼニマンティスっていうバカデカイカマキリらしいんだ」 総員 『昆虫どころじゃねぇだろそれ!!』 昆虫って混成ジョブ───仮面ライダー用の材料だろ!? カマキリのライダーなんて聞いたことねぇぞ!? あ、い、いやあったっけ?よく思い出せねぇけど俺が知る限りじゃなかった!! せいぜいカミキリムシくらいだろ!オイ! ……待てよ?そういやどの昆虫が必要とか、そういう誓約はなかったよな。 ただ出来るだけ強い昆虫を、って。 じゃあ───なるほど!虫の種類はなんでもいいと! 藍田 『ゼニマンティスか……よっしゃあ足で仕留めることをここに宣言!』 藤堂 『おお!?大きく出たじゃねーかてめぇ!だったら俺は拳で仕留める!』 田辺 『ならば俺は幻魔で仕留める!』 清水 「……いいよなー、隠しジョブは夢があって」 岡田 「なんか俺達疎外感……」 疎外だなんどとはこれ心外。 俺達はただ、自分の力を、というか新ジョブの力を試したいだけだ。 そして俺はなんとなく解っていた。 中井出の野郎が逸早く走ったのは、こういう事態を予測してのこと。 こういう事態ってのは、隠しアイテムがあるかどうかの話な? そしてあそこに残りし丘野こそが、必ずやそれを手に入れることだろう……! や、これでほんとに死んでましたっていったらもう笑うしかないぞ? 今から戻るにしても、そろそろ水位が上がり始めてる。 それはつまり、崩壊が進んでいるということに他ならない!! やっぱりここに辿り着くために空けた穴が崩壊のきっかけなんだろうな。 どのみち急がないとヤバそうだ。 ここでのゼニマンティスがどれほど強敵かはわからないが、 サガフロンデティアでは嫌な敵だったのは確か。 しかも中井出が呼ぶくらいだ、嫌な相手に違いない……! 持ち堪えてくれよ、中井出……いやさ提督───!!
【Side───中井出さん】 ゼニマンティス『ヂシャーーーーッ!!』 中井出    「ほうらごらんナギー、あれが伝説の守銭奴カマキリ銭マンティスだ」 ナギー    『おお……!あれが噂に名高い銭マンティス……!』 中井出    「銭マンティスはな?こうして───オラッ!!」 フィンズボシャアッ!! ゼニマンティス『グギャア!?ヂ、ッ……ヂヂヂシャアアアアアアッ!!!』 中井出    「はっははっはははは!HAHAHAHAHAHAHAHA!!         銭投げをしてぶつけてやると、物凄く怒るんだ〜!」 ナギー    『はっはっは!なるほどのう〜!これは愉快なのじゃ〜!』 中井出    「愚かだなぁ〜っははっはっは!!         猛者どもをハメてやろうと罠を仕掛けておいて、         昆虫でも探しておこうかと思ってうろついてて……         見つからなかったから消沈して帰ってきたところだったのに……!         悲しみが止まらなかったのに……!         子供の頃は虫取り名人として有名だった僕はいずこに……!?         そんなセンチムェントゥァ〜ルな気分で泣きそうになっていた……!         世界の中心でトラップの才能がないを叫んでいた……!         虫取り最低ランキング毎年優勝決定だった……!         それが、こォれだよォ〜〜ッ!         ハッ……ハハハ!?アーーーッハッハッハッハ!!アァーーーーッ!!         俺!イケてる!ナーーウ!!今ァ!!イッケテェルゼェエーーーッ!?」 フェルダール暦4202年(適当)……世界はどこまでも広く、穏やかだった。 【Side───End】
……。 藍田 『……なんか今、どっかからイケテルイケテェルとか聞こえてきたんだけど』 田辺 『俺も聞こえた……ってあったあそこだ!』 清水 「何処何処イカ子さん!」 田辺 『あ、今俺千里眼使ってるからお前じゃ見えないと思う』 清水 「つくづく妖魔ってバケモンだなオイ!!」 俺も目を凝らしてみるが……見えやしない。 どういう眼力してるんだこいつ。 田辺 『バケモンか……いい響きだなぁ。     なんつーかさ、人外になったやつってバケモノとか呼ばれるの嫌がるじゃん?     俺ってあれの気持ち解んないんだよな。     好きでなったんじゃないにしろ蔑まされるにしろ、     なったからには諦めて楽しむしかないだろ。なぁ?』 藤堂 『はっはっは、同感。俺なんてナノロイドだぞ?』 岡田 「……閃士って人やめるのかな……」 清水 「混成はライダーだから人やめてるよな……。     心はヒューマンって言い張る手もあるけど、     それはなんつーか……至った者として潔くないしなぁ……。     うん、俺は堂々と人外を名乗るぞ。     つーか提督をひとりぼっちヒューマンにするのが楽しそうだ」 岡田 「今でも世界的一人ぼっちヒューマンだろ。     俺達の中じゃあもう既にただ一人の地界人だし」 清水 「そう、それよ。地界人でも別の世界でも、ほら、人は人だろ?     空界だろうが自分のことを人間って言うと思う。神界冥界はそりゃないけど」 ……まあ、そうだなぁ。 神と死神だし、自分のことを人間とは呼ばんだろ。 天界は……どうだろなぁ。 藍田 『じゃ、つまりなんだ?空界人と天界人が居る限り、     提督はロンリーヒューマンを名乗れないということなのか?』 清水 「そうなるな。だがその空界人と天界人が人をやめたらどうなる?」 藍田 『……フッ、なるほど。考えることがエグイぜ清水……!』 清水 「や、実際さ。俺達ン中で地界人……つーか“人間”に、     あそこまで情熱を燃やすヤツって他に居ないだろ?     だからむしろ中井出提督がどこまで人を極められるかを見てみたい気がする。     そしてそんな存在を彼だけに託したいというか」 藍田 『あ、それ解るかも。よーするにあれだろ?     世界創造がせめて晦だけの能力だったら……って感じのアレ』 清水 「そうそれだ!過去からこの夏にかけてまでの映像でさ、俺ゃやっぱ思ったんだ。     スピリットオブノートは創造とかが出来る精霊だったからまあしゃーないわ。     納得いかんけどしゃーない。でもさ、晦ってあれだろ?     最初はハト程度とかしか上手く創造出来なかっただろ?     それをさ、ず〜っと鍛錬して強化していくわけよ。     そしてようやく世界創造してさ、いろいろやってさ、そしたら……」 そうだよな……弦月が冥界を引きずり込むわ、 月くんが満月の草原を作り出すわでもう見てらんなくなったな……。 しかも当の晦は世界創造が出来ない状態だし。 だがなっちまったもんはしょうがないもんな、今さらだ。 藍田 『……っと、見えてきたぞー!』 岡田 「なにぃ!?……おお!見える!俺にも見えるぜ!」 田辺 『フフフ、俺には罠にかかってるなにぃーーーーっ!!?』 総員 『うるせぇぞタコ!なに急に叫んでんだクズが!』 田辺 『叫んだだけでクズ呼ばわりかよ!』 ともあれ祭壇に辿り着いた俺達は、ズザァッと祭壇に着地! それからそれぞれが散会し、ゼニマンティスの襲撃に備えオワァーーーーッ!!? 藍田 『な、なななおわぁあぁあ……!!』 辿り着いたばかりの俺達が見たもの……それは、 巨大な罠にかかったゼニマンティス(だと思う)を投擲物でボコボコにしつつ、 イケテルイケテェルと叫んでいる我らが中井出博光提督だった……!! 藍田 『ててて提督!?ソレ……ッ!?』 中井出「誰!?───OHハハハァ!なんだ藍田じゃないかぁ!     見てくれこれ!俺の罠にかかった憐れな昆虫!     ハハ!?アハハハハ!!アァーーーハハハハハハ!!!     今こそ俺が素晴らしい!俺イケてる!ナーーウ!!今ァ!俺がイケテェルゥ!!」 うおお普通に乱心してる!涙流しながら喜び狂ってる! な、なんだこりゃなにがあった!? まさか初めて相手を自分のトラップに引っ掛けたことが嬉しかったとか、 そんな理由でここまで燥ぐわけが───……ありそうだな普通に……中井出だし。 岡田 「あ、あー……て、提督?なにがそんなに嬉しいのか知らないけど……     とりあえず動けない敵に石を投げつけまくる姿は、イケてない気が───」 中井出「───」 岡田 「え?あ……」 中井出「……、……」 藍田 『………』 気づきたくなかった事実に気づいてしまった漢の目をされた。 口をあけて、驚愕の顔をしたまま岡田を見て……そのまま停止しちゃったよ。 あ、いや、停止しながらも涙がズゴゴゴって溢れてきてる……。 藍田 『お、おいおい提督……どうしたんだよ……』 中井出「だ……だって……!情けなくて……!     初めて罠にかけて……一人で舞い上がって……!     俺にはこんないい武器があるのに……!     一瞬でも自分がイケてるだなんて思ったのが間違いだったんです……!     でも一度くらい……ッ!トラップくらいぃい……ッ……!!」 清水 「や、トラップが悪いって言ってるんじゃなくて、     トラップにかけたあとに投擲物でボコるのはイケてないと」 中井出「なんだじゃあいーやー」 清水 「えぇ!?いいの!?」 中井出「グゥウウエッフェッフェッフェッフェェエ……!!     敵を動けなくしてフルボコるのはバトルの常識よォオ……!!     卑怯だ卑劣だなどという言葉はこの博光には通用しねェエエ……!!     だからうん、いいんだよきっと」 とことんまでにクズだ……さすがは提督。 なんつーか……あんたを見てると時々、 人間やめてる自分でさえあんたより人間らしいって思えてくるよ……。 中井出「というわけで清水二等!こいつもう弱ってるからどうぞ。     ちゃんとナギーにこいつが大陸最強の昆虫だって確認取ったから」 ナギー『わし自らが太鼓判を押してくれようぞ!さ、遠慮せず持ち帰るがよい!』 清水 「おっ……おぉ〜持ち帰りィイイ〜〜〜ッ!!!」 藍田 『───《ハッ!》ま、待て!待つんだ清水!』 清水 「《ギョキキィッ!!》どわぁっとととっ!な、なんだよ藍田!     人が勢いつけてるところに!急に立ち止まるのは足によくないんだゾ!?」 藍田 『ゾじゃねぇ!忘れたのか!?俺達はあの時誓い合ったじゃないか!』 清水 「え?ち、誓い?って……え、と……な、なにを?」 藍田 『そいつを蹴り殺すって』 清水 「勘弁してくださいっつーか誓ってねぇ!!」 チィ……そういや清水と岡田はノッてこなかったんだっけか。 清水 「ん〜じゃあ捕獲用麻酔玉を投げつけてっと……。     あ、悪いみんな、ちとこれぶつけるの手伝ってもらっていいか?」 岡田 「よしきた」 田辺 『こりゃ面白そうだな、よし乗った』 俺や藤堂、提督も合わせて、それぞれが清水から捕獲用麻酔玉を受け取る。 で、シゲシゲ見つめてるわけだが……赤い玉、だな。 あまり麻酔玉って感じがしない。 中井出「オラァア!!オラ寝ろォオオオッ!!!」 バゴォン!ドボォッ!!! ゼニマンティス『ヂギギーーーーッ!!』 なんて思ってると、早速ゼニマンティスに麻酔玉を投げる提督! しかも眠らせる気がないのか、むき出しの眼球だとか、 バキに弱点とされた喉部分ばかりを執拗に狙っている!! ───しかしゼニマンティスは眠らない!! 中井出「な、なにぃ!?いくらぶつけても眠らない!!」 清水 「お前なにやってンのォオオオ!!?     麻酔玉だからって全力でぶつけたら寝るわけねぇだろうがァアア!!」 中井出「ぶつけろって言ったじゃないか!!」 清水 「言ったけど全力でとは言ってねぇえーーーーーっ!!!」 中井出「全力じゃダメとも聞いてねぇえーーーーーっ!!!」 藤堂 『おーい、どっちも悪ってことで、さっさと浮上させないかー?』 田辺 『そろそろ水位がシャレにならなくなってきたぞー』 中井出「おおっ!?それはいかん!───ナギー!」 ナギー『解っておるのじゃ任せておけ!』 清水とギャースカ言い合ってた提督が、ナギ助を連れて祭壇の中心へ! 祭壇とか言うからてっきり、 ギリエルスパイダーと戦った場所かと思えば……違ったな、見事に。 考えてみりゃあの時は妖精モードだったんだ、普通の体躯の状態で探しても、 あんなちっこい場所はそうそう見つけられるもんじゃねぇか。 藍田 『で、それからどうすんだっけか』 ナギー『歌を歌うのじゃ』 中井出「……そういやどんな歌なのか聞いてないな。     ていうか然の力を解放するだけでいいんじゃないのか?」 ナギー『自然は歌にこそ反応してくれるのじゃ。じゃから歌う。     歌は澄んでいればいるほどよいわけじゃがの、     自然によっては、澄んだ歌よりも激しい歌を好むこともあるのじゃ』 中井出「へ〜……そういうのはやっぱり自然に訊くしかないわけか」 ナギー『じゃの。しかしここで重要なのはやはり然の力の解放じゃからな。     力を解放しやすい歌を歌えばいいだけのことよの』 力を解放しやすい歌、なんてあるのか? いやまあナギ助は歌で支援するタイプだ、 そういうのもあるかもしれないって思うには思うが。 ナギー『ではヒロミツ』 中井出「俺音痴だから歌わないぜ?」 ナギー『わ、我が儘を言うでない……やらなければ浮上出来ぬのだぞ。     浮上が不可能ならばここで溺死するのか?嫌じゃろう』 中井出「俺としては聖王の財宝の方が気になるなぁ……」 総員 (さすが提督だ……) こんな時にまで財宝を求めるとは……それでこそゲーマーよ。 と、そんなことを思っていると、ふと提督が俺を見ていることに気づいた。 藍田 『どした?提督』 中井出「や……丘野くんは?」 総員 『俺達を巨大生物から守るために犠牲になって……!』 中井出「な、なんとまあ……!」 ナギー『お、丘野……見上げた男よの……!』 ものの数秒……もかからずに信じられた。 見てるか丘野……お前、みんなからこんなにも信用されてるんだぜ……? 藍田 『だがあいつは必ず駆けつけると言っていた……!』 清水 「誰かを守って死ぬことは愚であると知っているからだ……!」 岡田 「だからきっと無事さ!なにせ丘野だもの!」 中井出「そ、そうだな……あいつは強い男さ!     特に普段が穏やかな分、恨みを持った時のあいつのしぶとさときたら相当だ!     あっはは、まあ恨みを持てばの話だけど」 総員 『………』 中井出「あ、あれ?どしたのみんな、そんな陰気背負ったりして」 そうかぁ……そうだったよなぁ……。 あいつ、恨みが入ると怖いんだったよ……。 再会したらどう言い訳しようか……いや、素直にメシでも奢って許してもらうとしよう。 ナギー『では歌うぞよ?すぅ……はぁ……』 中井出「───《ギラッ!》」 藍田 『《ギラリ!!》』 中井出「俺の漢が張り裂けェそうさ     フリィイダァム!フリィイダァアアム!!」 藍田 『青筋ィイイ立てて怒ってェッいるぜ     ダイナマイトォッ!ダイナマイトォオッ!!』 中井出「上手く宥めてやーらなーきゃあっ!!     マジにー!ヤバイだろぉおおおおぅっ!!」 藍田 『導火ァ線ンンーーーーーーッ!!     火は止まらァアないィイイイイイイッ!!』 中井出「もっと下だよォオオゥ!!」 藍田 『もっと右だよォオオゥ!!』 中井出「もっとやさしくゥ!オーマイガァアーーーーッ!!」 藍田 『お前の女で天国ゆきィッさァアーーーーッ!!!』 ドコトントントンッ♪ 中井出「あぁ〜〜〜おゥいィつっきぃ〜のひかァりィ〜浴ァびてェエ〜〜〜ィ♪     今日ォ〜ゥォもぉ〜〜〜ゥう〜たう〜〜、     セニョォ〜ゥォリィイイタァア〜〜〜〜〜〜〜〜ッ♪」 藍田 『そぉお〜〜〜ゥのっ声はァあンまくゥせッつゥなァくゥウ〜〜♪     木ィ々をォオ〜〜ゥ揺ゥウウウらッすゥ♪かっぜぇのなッかァア〜〜〜ッ♪』 中井出「気持ちいい〜〜♪」 藍田 『気持ちいぃ〜〜♪』 中井出「子守歌ぁあ〜〜♪」 藍田 『子ォオ守歌ァア〜〜♪』 二人 『エェケソミラソネェエ〜〜ッ♪ガァアニだムゥ〜〜ゥチョォオ〜〜ゥ♪ドゴォオオオオンッ!!! 中井出「オオオッ!?水没が早まった!?」 藍田 『なッ……何事ォオオッ!!!』 ナギー『何事ではないわぁっ!この痴れ者どもがぁああっ!!』 中井出「オオッ!?痴れ者とな!?」 藍田 『ナギ助!?これはいったい!?』 質問を投げかけてみるが、どうやら怒ってるらしく、 ブンブンと子供のように腕を振り回しながら、 プンプンという擬音が聞こえてきそうなくらいに息巻いている! ナギー『おぬしらが妙な歌を歌ったせいで、見よぉっ!     自然たちが拒絶反応を起こして力を失わせていっておるであろ!!』 中井出「すげぇ……俺達にかかれば大陸さえ一撃だ……!」 藍田 『素晴らしすぎるぜ俺達……!』 岡田 「既に論点が思いっきりズレてるな」 まったくだ。 水位の上昇率が相当だ、このままじゃ少しもしないうちに沈むだろう。 田辺 『このままじゃ俺達、沈むと書いて(チン)?』 清水 「どーすんだよ提督てめぇ!」 中井出「大丈夫!なにを隠そう、俺は大陸浮上のたァアアつじんだァアーーーーーッ!!」 ナギー『おおそうなのか!さすがヒロミツなのじゃー!     ではこれからなにをどうするべきかも知っておるのじゃな!?』 中井出「知らぬ!!」 総員 『うおお無駄に男らしいィーーーーーッ!!!』 ナギー『何処が達人なのじゃーーーーーっ!!』 中井出「気分だけ達人なのだ!出来ないのならばせめて     気分だけで達人になりたいというヒューマニックハートが何故解らぬ!」 ナギー『それは立派なことじゃが今は命と大陸に関わることであろ!しっかりせい!』 中井出「クク〜〜〜〜ッ」 ナギー『ムウウ〜〜〜〜〜ッ』 そうこうしている間にも、海水は腰あたりまでジャブジャブと! ああ、このままじゃ本当に藻屑だな。 藍田 『て、提督!今すぐ力の解放を!』 中井出「お、おう解ってる!ナギー!今こそ心をひとつにして大陸を浮上させる時なり!」 ナギー『解っておるのじゃ!』 言うや、提督とナギーが祭壇の上で妙なポーズを取る! あれは……アレだな、スケートのペアの人達がやる格好。 ダンスのペアの人たちもやるかもしれんが、肩に女を乗せてビシィと決めるポーズ!  ───やがて歌いだす。ナギ助が、静かで、穏やかな歌を。 それにより地震に襲われるこの台地。 浮上を開始しているのか、揺れは最初からかなり激しいものとなっていた。  ───さらに歌いだす。提督がなにかに耳を傾けるようにして、楽しく、賑やかな歌を。 それは……自然に耳を傾けたかのように優雅で美しく、しかし音痴だった。 以前ナギ助になんとかしてもらったらしい音痴っぷりは元に戻り、 かつての音痴っぷりを見事に再現していた……!! しかしもし、自然っていうのが声調ではなく思いを受け取るものなのだとしたら。 今の提督の声は、きっと自然たちに暖かく届くことだろう。 なにせ自分の音痴っぷりなど気にもせず、伸び伸びと歌っている。 そんな声が届かないのであれば、元から歌う意味などきっとなかった。 ……まあ、上がる水位に焦っている風情もあるにはあるが。 さすが提督だ、ここ一番でもカッコよく決められねぇ。  ゴゴッ……ズゴゴドゴォンッ!! 総員 『ギャッ!!』 だが───そんな格好の悪さも払拭するように、大陸は浮上を始めた。 真っ直ぐに、上へ上へと。 重力がそう感じさせてるんだ、間違いない。 岡田 「お……おおお……!これが大陸浮上の瞬間か……!     まさかこんなイベントに関わることが出来るとは……!」 清水 「素晴らしい……!なんて素晴らしいんだ……!」 藍田 『素晴らしすぎるぜ───って清水、ゼニマンティスは?』 清水 「お?ああ、一応眠らせたあとにバックパックに収納した。     なんとか運べないかなーとか思って押し付けてみたら、一応入った」 田辺 『あんなデケェのがスッポリと……すげぇなバックパック』 藍田 (……提督の場合、なにを運ぶにも     バックパックから拒絶されてばっかだったらしいのに……     提督、精霊たちに遊ばれてんなぁ……) ……浮上も佳境の最中、さすがに苦笑も漏れるってもんだ。 要塞が沈む速度よりもよっぽど早い浮上は、 ナギ助と提督の力の合わせ方が上手いためなのだろうか。 周りにある木々がぼんやりと光まで灯してるくらいだ……相当の影響力があるんだろう。 藤堂 「うーお……すげぇすげぇ!暗い場所の中で発光する木なんて初めて見た!!」 周りのやつらもそれに気づいたのか、既に能力を解いた藤堂がまず先に歓喜の声をあげる。 それを皮切りにそれぞれが騒ぎ、燥ぎ……トドメに、 どんどんと溢れてくる海水に驚愕した。 清水 「ヒ、ヒィイイ!!海水が!海水がすげぇ勢いで溢れてくるぅうーーーっ!!」 岡田 「きっと浮上する速度に空気の層が耐えられないのだ!」 田辺 「ど、どうする!?このままでは沈んでしまう!」 藤堂 「提督提督!もっと丹田に力を込めて!もっと早く浮上させて!     ほらもっと早く!優雅に!そして力強く!」 藍田 「───いや!ここは提督が歌っている歌を、俺達も歌ったほうがよさそうだ!     提督の声で届くのならば、俺達の声でも届くと信じるべきだ!」 清水 「なるほど!……つーか歌ってるのがとんねるずの“一番偉い人へ”なんだけど」 岡田 「俺好きだぞ?みなおか20年目突入記念に歌ったやつよりも昔のほうがだけど」 藤堂 「もしかして提督ってとんねるず好き?」 田辺 「さっきはいきなり藍田とガニ歌ってたもんなぁ……っと、それより歌歌」 慌てて歌を歌おうとする───も、既に歌は終わり、次の歌へと移行していた。 どうやら木々の気紛れに歌の種類を任せているらしい。 中井出「願い叶う午〜後に〜…………佇む〜光がぁ〜……     誰かのために……生まれぇ〜た〜……」 岡田 「これは───Love can save the world?」 清水 「あ、あーあーあー!OVAサイキックフォースのエンディングソングか!     なつかしーなぁおい!……いや、それよりもよく覚えてたな」 まったくだった。 さすが中井出だ……いらん細かいことにばっかりに記憶力が働く。 ……確か、元外国の歌なんだっけか? まあいい、とにかく今は歌うだけ───ってまた歌が変わった! ええいコロコロ変えやがって提督め! …………でも、変えるたび歌うたび、木々に宿る光は眩いものになってゆく。 それはつまり、ナギ助や提督の中の然の力だけじゃなく、 周りの木々からも自然の力が放たれてるってことで─── 藍田 「……、は、はは……」 ……ヤボはなしだ。 ここは素直に提督とナギ助に任せよう。 いや、そんな言葉じゃ括れない。 正直俺は歌えそうになかったんだ。 木々が楽しむように、喜ぶように歌い続ける提督や、 そんな提督を信じきって一心に歌い続けるナギ助と。 ……この二人の歌だけで十分だ。 俺達が適当に歌うのは、この世界を壊すことになる。 音程の外れた歌と、素晴らしすぎる音程。 その全くかみ合わさらないはずの二つの音程が、今……ひとつになっている。 考えてみれば当然だ。 提督が自然の声を聞くことさえ出来るのならば、 それは然の精霊であるナギ助の声を聞くこととそう変わらない。 つまり、ナギ助が願う歌を、提督が歌ってるっていってもそう間違いじゃないわけで─── 藍田 「……いや」 理屈なんて抜きにしよう。 俺は……ただこの“自然の歌”を、静かに聞き入れていたい。 それだけなのだから。 藍田 「───」 ふと仰いだ、低くなった空気の天井。 そこから薄っすらとこの空間を照らす光が、 やがて海上から漏れる光と同化して眩いものとなる。 なんだかんだで海上は近い。 近いんだが───ガゴォオオンッ!!! 岡田 「ぐおーーーーーーっ!!?」 清水 「ギャッ!!」 田辺 「ついに来た!東京大地震だ!!」 藤堂 「ここ東京じゃねぇ!!」 藍田 「……やっぱ、そうスムーズにはいかねぇよな」 空気の層の先に見えるものがあった。 それは巨大な影……いや、光を放つ空気の層のお蔭で見ることの出来るソレは、 さっきのゼニマンティスよりも、 デビルテンタクラーよりもよっぽど大きいモンスター……! 岡田 「なっ……ななななんじゃありゃぁあああーーーーーーっ!!!」 清水 「なんじゃアこりゃァアアアアアッ!!!」 藤堂 「してやったり顔でジーパン刑事の真似してる場合じゃねぇだろうがァア!!     なにィイ!?お前こんな事態が起こるの待ってて、     それ言う準備でもしてたんかァアア!!     そういうのは自分が死ぬ時にでもやれやァアア!!」 清水 「いやでもこういう緊迫した空気の中で言いたいじゃん!?     自分が死ぬ時に言える余裕があるなんて前提を俺は持っちゃいねェエ!!」 田辺 「───おお!提督がアンインストール歌いだした!俺これ大好きなんだよ!     歌っていい!?ねぇ歌っていい!?」 なんかもう収集つかなくなってきた。 そもそも俺達の中で収集がつけられる場面があるのかといったら、 せいぜいで提督が号令をしている時くらいなわけで───ええいもう! 藍田 「あの巨大生物はどうすんだよ!空気の層潰されたらそれでお終いだろうが!」 藤堂 「どの道空気の層の向こう側じゃあこっちからの攻撃なんて当てられねぇだろ!     今はなんとか海上に出て、それから戦うしかねぇよ!だから提督!頑張ってくれ!     ───つーかなんでアンインストールだけそんなに馬鹿上手いの!?」 藍田 「ああそれ俺も疑問に思ってた!他の歌は激烈音痴なのに、     なんでアンインストールだけそんなに上手ぇんだよ!」 疑問点1!でも疑問を投げかけたところで、提督は心を込めて歌うのみ───! ナギ助や自然とのシンクロが相当に深いのか、俺の言葉なんざ届いてねぇ! 田辺 「恐れを知らない戦士のように振る舞うしかない!     だがその実、恐れを知らない戦士になんてなれやしねー!     そういうことを我らが提督は知っているからさ!     オォエェアァェエォオオオオオェエエーーーーーィ!!!」 岡田 「ッ───チィ!!みんな、無駄かもしれないけど歌おう!     自然の力を込めることなんか俺達にゃあ出来ないかもしれねぇけど、     思いはきっと届く!提督に合わせるんだ!」 清水 「岡田……!てめぇってやつは……!」 岡田 「え……い、いやあの、この局面でてめぇって……」 行動が決まってからは速かった。 せめて少しくらい自然の感情が解るようにと、全員で提督の肩に手を置いた。 静かに、心を沈めるように。 水没してゆくかもしれないこの空気の層の中で、怖い気持ちを静めるように。 俺達の歌が……せめて、少しでも自然に届くように───!!  ───ただ歌う。  気取って歌うんじゃない、心の底から、自然を求めるように。  助かりたい一心があったのは最初だけ。  俺達は───ただ自然に語りかけるように歌った。  恐れを知る、知らないように振る舞うしかない戦士の歌を。 一人ってのは、世界の広さから見ればたった一つの塵のようだ。 それでもそんな塵の一つが生きてゆく日常は、かけがえのないものであってほしい。 けど、自由に振る舞えない世界の中はとても窮屈だ。 だからふと、全てを終わらせたくなる時がある。 怖いものは山ほどある。それでも……なにも怖くないと思わなきゃ開けない道だってある。 だから─── 藍田 「……───」 気の所為だろうか。 触れる肩から、中井出の意識が流れ込んできた気がした。 頭に届いた感情は、“一人の人間”の思いだろうか。 覚悟を決めるってことは、恐れを忘れるよう努めること。 怖いものを受け入れてしまえば動けなくなるから。 だから、怖くても怖くないと歯を食い縛って覚悟を決めるしかないと。 そんな思いが、歌とともに俺の頭に届いた。 藍田 「───!」 だからというわけじゃない。 ないけど、俺は歌った。 周りのやつらにもきっと届いたであろう、その思いとともに。  ……もう、押し潰される恐怖も、水没する恐怖も感じなかった。 覚悟を決めること。 それは、怖いものも立ち上がる勇気も、全部を込めて立ち向かうということ。 その思いや想いを、俺達は中井出から受け取った。 幼いうちから大切なものの大半を失くしてしまった人間だからこそ決められる覚悟を。 口から吐き出される慟哭のような歌声が心に響き、いつしか涙さえ流しながら歌った。 そんな心を包むように流れるナギ助の歌が心地よく、 ……そう、いつからか俺達は、自然と一体になるようにして─── 悲しみも喜びも恐怖も、全てを受け入れるようにして歌っていた。 然の力が解放されるかなんてどうでもよかったんだ。 ただ心から歌を歌い、心から響かせられればよかった。 声調なんて関係ない。 上手く歌うってのは、気取って歌うのとそう変わらない。 他のやつらは違うかもしれないが、少なくとも俺はそうだ。 俺の中じゃあ上手く歌おうとすることは、格好つけようとするのと変わらない。 でもそれじゃあダメだった。 音程なんてどうでもいい。 ただ原始的に、本能で、心で歌うように───!  届け、届けと……自然のために歌い、自然が俺達のために光り輝く。 それを幻想的と言わずになんと喩えよう。 既に海面は間近に迫っていたが、そんなことさえ今は景色の一つでしかない。 今心に宿る思いは、狭まる空気の層の中にある自然全てに、 この歌を届けようとする思いだけだ。  だから届け、と。 叫ぶわけでもなく、か細く鳴くわけでもく。 声の高さじゃなく、心で届かせるように歌を歌い続けた───!  ゴブシャアアッ!! ───空気の層が破壊される。 触手のようなものをたくさんつけたソイツはタコのような風情だった。 一気に降り注ぐ大量の海水───そして、それとともに落下するように迫り来るタコ。 けど、そんなものを前にしてもただ歌った。 ……もう、提督の肩に手を置くまでもなく、俺達の中にはなにか熱いものが宿っていた。 津波のように押し寄せる波が木々を破壊し、その破片が俺の頬を抉ろうとも─── 気づくまでもなく動揺するまでもなく、その傷は瞬時に癒えていた。  ……自然と一体になるっていうのは、きっとこういうことだ。 酷く穏やかで、風に揺らされる草花の穏やかさが心の中にあった。 耳を澄ませば聞こえてくる風の音が心地よい。 風など吹かないこの場で、空気の層の破裂により吹き荒れる空気だけが俺達を撫でてゆく。  ─── 動作は酷く自然だった。 構えたことにさえ気づくのが遅れたくらいで、 だけど……それがあまりにも自然的な行為だったから、 俺達はその行為を疑問にも思わなかった。 中井出「───」 構えたのは中井出だった。 自然の力や想いを全身に込め、ナギ助の加護を一身に受けたソイツは、 大海嘯のように迫る海水と巨大なタコを前に静かにジークフリードを振るう。 走りもせず、力も込めず、ただ───自然に。  やがて振るわれる。落下する巨大生物と海水へと、拍子も見せずに。 だからその撃が、大陸さえ包まんとする巨大なタコを一撃で両断し、 降り注ぐ海水の塊───つまり海さえ両断した時には……さすがに驚いた。 だけど驚きに歌を止めることはなく、歌い続ける。 自然の心地よさに埋没するように、穏やかに、穏やかに。 海さえ割る中井出の斬撃の正体がなんだったのかは解らない。 けど、振り荒ぶ風と蒸発する海水を目にした俺の中に疑問が浮かぶのは当然だ。 ……けど、そう……けど、それが結果ならそれでいい。 どんな加護を受け入れ、どんな奇跡の先にあの斬撃が放たれたのかもどうでもいい。 あの剣は想いを宿す霊剣だと、いつか誰かが言っていた。 その想いを自然から受け取ったにせよ、あれだけの一撃が放てたということは…… それだけ中井出が自然と同調していたという証拠だ。 中井出「……、」 中井出がなにかを呟き、剣を納める。 直後に、割った海に押し出されるように大陸は浮上した。 眩い光を全土に受け、地面を走るように流れる海水を海に落としながら。 ……やがて歌も終わると、俺達は喩えようの無い心地よさに包まれながら…… ただぐったりと、六人全員で背中を預けるようにして、その場に座りこんだのだった。 Next Menu back