───冒険の書215/多少の近況───
【ケース534:霧波川柾樹/旅ゆけば】 ザザァア……チキリチチチチチチチ、チ…… 波の音と奇妙な鳥の鳴き声が聞こえた。 まるでネジを機械で巻いたような音だった。 柾樹 「………」 時は午後に至り、陽は天を登りてのちに沈む。 その景色を見る前に辿り着いた島で、俺達はとある……家、屋敷……どれも違う、 言うなれば研究所めいた場所に来ていた。 ファンタジーという言葉を鵜呑みにするなら、 幻想的かどうかは別としても現実的ではまあない。 たとえば機械だらけの世界をちょっと前までの自分たちが想像するとしたら、 それは確かに現実的ではない幻想の世界である。 そう考えれば機械だらけの世界だろうがそれはそれでファンタジーなのだ。 なにを以ってファンタジーの定義を唱えるのか。 どうであればファンタジーと認められるのか。 そんなものに答えなんて必要じゃない。 自分がこんなものは現実として在り得ないと思った場所に辿り着いた時、 その世界はきっとファンタジーなのだ。 故に……この場所もまたファンタジックワールドだろう。 フェルダールには珍しい、 機械……というよりは魔導器だらけの建物が見える場所に、俺達は立っていた。 刹那 「改めて言うけど……妙〜なところに来ちまったなぁ……帰りどうするよ」 豆村 「どうするもこうするも。漁るしかないだろ」 刹那 「もう漁ったあとだろうが。そして俺が聞いたのは帰る方法だ」 柾樹 「魔王を退治するために建物を漁る。それが冒険者ってものさ」 悠季美「帰り方とは関係ないし平然と下郎めいたこと言わないでください」 冒険者ってそういうものだと思うんだけど。 豆村 「はぁ……泉の精霊から武器強奪して逃げ出したまでは良かったんだけどなぁ……」 刹那 「即興で作った筏で海に逃げ出して、漂流して……辿り着いたのはヘンピな島。     しかも……空界だっけ?そこで言う魔導器だらけの建物が……」 何故魔導器だらけと解るのかといえば、一度入ったからなんだが…… 今さら確認するまでもなく実にヘンピな場所だった。 ペット研究所っていうのかな。 モンスターを子供のうちに捕らえ、慣らし、 ペットにすることを目的として作られた場所らしい。 今や結構な数のモンスターのペット化が成功しているらしく、 これを商売にできたらなーとか考えている研究者たちがそこには居た。 ビーンがしきりにゴブリンをペットにしたがってたけど、それは却下させた。 なにせまだ、ペット化は出来ても完全に慣らすことに成功したわけではないらしいのだ。 しかもその志半ば、研究費用が尽きたとかで…… 仕方なしに俺達はなけなしの金をはたいて、費用として渡した。 でもそれでも足りないらしく、まあ……乗りかかった船ってやつだろうか。 俺達はその研究費用を稼ぐスポンサーみたいなものになってしまった。 ……それが、この孤島から帰る手段もないほどの貧乏である俺達の現状であったりする。  ───回想スタート ……ドンドンドンドンドンッ!! 豆村 「ノックしてもしもーし!誰かぁあああっ!!誰か居ないんかぁああああっ!!     居るなら出ろぉ!早くせんね!なにのんびりしよんね!!さっさときぃ!!」 とある場所、とある扉の前で、豆村ことビーンはイライラしていた。 まあ夏とはいえびしょ濡れのまま旅をするのは嫌なもんだ……が、 そのびしょ濡れ具合もさっさと消えていくんだから、ゲームっていうのはひどく便利だ。 悠季美「誰も居ないんじゃないですか?」 豆村 「いーや居るね!絶対居る!きっととびっきりのHIKIKOMORIなんだ!     だからいっそ燃やしてやれば出てくるさ!     そして僕の絶対王城を返せよぅとか泣きながら言ってくるんだ!     あそこに居れば僕は王様だったんだぞぅとか言ってくるんだ!」 刹那 「お前とりあえず全国のHIKIKOMORIさんに謝れ」 豆村 「や、でもほら、なんつったっけ?えーと……ああそうそう、NHKにようこそ。     あれのアニメ見た時、主人公のことすげぇ嫌ってたあなぁってこと思い出してさ。     散々騒がせといて仕送りがなくなった途端HIKIKOMORI脱出したじゃん?     なんだかぁ〜って思ってさ」 刹那 「極端に考えすぎなんだよお前は。ほら、誰か来たみたいだから応対しろ」 豆村 「……ま、柾樹頼む」 柾樹 「え……ど、どうして俺が」 豆村 「ほら、な〜んか初対面の人との応対って緊張するっつーか……     あの雰囲気苦手なんだよ俺」 柾樹 「………」 自分でノックしといて勝手なやつだよもう……。 男  「はいはいすいません、なんでしょう」 柾樹 「……なんだっけ?」 豆村 「え?や、俺に振られても」 柾樹 「ちょっと待ってくれ豆村、キミ、用があってノックしたんじゃないのか?」 豆村 「用……用───ここ何処?」 刹那 「無茶苦茶な質問だなおい」 男  「ここですか?ああ、はは、ここはペット研究所ですよ」 悠季美「ペット研究所?」 豆村の要領を得ない質問に対して、 現在地がというよりこの建物がなんなのかという形で受け入れた白衣姿の彼は、 苦笑気味に頭を掻いてそう言った。 ペット研究所……?犬とか猫とかそういう次元じゃないよな、多分。 豆村 「《ナルルルル……》あ、親父?今ペット研究所ってところに来てんだけどさ。     親父用にペットのエサでも買ってく?……え?     世界の中心でポニーテールを愛してるを叫んでる男が居る?なんだよそれ。     ……え?漫画もアニメも現実も、萌えにだけ走ったら終わり?そりゃそうだろ」 柾樹 「説明しようとしてくれている人を前にtellしないように」 刹那 「態度悪いぞお前」 豆村 「あ、すまん。まあいいや、とにかくエサ買っていくから」 声  『豆ボーヤか!?俺だ!瀬戸内だ!」 豆村 「瀬戸内さんですか?初めまして」 声  『はい初めまして!我こそは瀬戸内ジャクソンを好む影の暗躍者にして自由の使徒!     悪を素とせし邪悪の申し子イエス!アマゾネス!!』     ああすまんアマゾネス関係ない。こんにちは、中井出博光です。     と前口上が長くなったが俺にもそのエサとやらを一つ頼む!     言ってきたからには無かったらどうなるか解っているんだろうな!     解ってないなら教えてやるから楽しみにしておくように!     なお前言撤回は認めねー!!さらばじゃー!《ブヅゥッ!!》』 豆村 「オアーーーーーーッ!!!!」 そして気づけば、彼は戻れない道に立っていました。 豆村 「お、おおお男さん!あなたを男と見込んでお願いがあります男さん!     エサを!ペットのエサをください!俺を助けると思って!」 男  「エ、エサですか。確かにありますが───」 豆村 「ください!い、いや売ってくださいこの憐れな子羊めに!     子羊でだめならもうケンミジンコでもアオミドロでもいいですからぁああっ!!」 刹那 「態度低いぞお前」 豆村 「あんな、人なのに人間じゃねぇみてぇな人と戦えるかぁっ!!     確かに俺達あの人の自滅で結構なレベルが上がったよ!     けどあの人の場合、持ってる武器だけで俺達なんか打尽だよ!」 刹那 「“親父なんてチャランポラン”とか言ってた頃の勢いはどうしたよビーン」 豆村 「スンマセン……正直自分、調子ン乗ってました……」 柾樹 「うわー……あの豆村があっさり自分の非を認めた……」 親父には負けないとかが口癖だったのに。 彼の中でいったいどれだけの思いが渦巻けば、こんな風に変われるんだろうか。 豆村 「親父は強かった。悠介さんも強かった。認めるよ、俺は世間知らずの子供だった。     それでも人よりは優れた存在だ。普通の人間よりは十分強いのは確かだ。     ……ったのになぁ……。種族なんて関係なかったんだよな、ほんとは。     強くなりたいって思ったなら、一心にそれを貫いてればよかったんだ。     ヘンにカッコなんてつけようとせず、楽しみながら。     この世界でだけはそれが許されてたってのになぁ……。     ……正直、“人間”に強さで負けるだなんて微塵にも思ってなかったッス……」 柾樹 「うーん……だったら追い抜けばいいんじゃないか?     簡単に言うなって言われるかもしれないけどさ、     今はレベルが止まってるわけだし、頑張ればなんとかなるだろ」 豆村 「簡単に言うなァアッ!!」 柾樹 「ん。だから簡単じゃないくらい努力すればいい。……ファイッ!」 豆村 「───……」 刹那 「……ぶふっ!く、くぶふははははっ!!無責任だぜそりゃ!あっはっはっはっは!     は、はぁー!くくっ……!でもま、そうするしかねぇんじゃねぇの?ビーン。     勝てなくて悔しいんなら強くなるしかねーだろ。     メールで届いた隠しジョブ狙ってみるのもいいし、武者修行するのもいい」 豆村 「えぇ〜……?俺、あんまり努力とか好きじゃねぇんだけど……」 悠季美「じゃああなたは一生雑魚として過ごしてください」 豆村 「うっわひでぇ!じょ、冗談だよ!やるよ!……やるさ。     このままじゃ確かにかっこつかないもんな、うん。とりあえずやる」 刹那 「とりあえずで強くなれるほど甘くねぇぞ〜」 豆村 「解っとるわ!」 ……話は纏まったようだけど、目の前で困ってる男の人はどうしようか。 勝手な話をギャーギャー言ってる所為で、話に割り込めもしない。 こっちから話し掛けておいて、あんまりすぎるだろう。 男  「え、えーと……ペットのエサでしたね。     あの、申し訳ないんですが、それはまだ試作段階でして。     売ることはもちろん、渡すことも出来ないんですよ」 豆村 「それはつまり俺に死ねと?」 男  「言ってません」 豆村 「じゃあ売ってぇええっ!!くれるならくれるだけでもいいからぁああっ!!     おぉおおお俺は知ってるんだ!あの人は容赦を知らない!相手が女だろうが子供だ     ろうが、知人の息子だろうが絶対にフルボコる!!かつてないほどフルボコる!も     うパーフェクトにシバキ倒しにくる!あの人に比べりゃ親父なんて甘いほうだ絶対     だそうだ絶対にだ!親父はどっちかっていうと能力が凶悪なだけで素手同士だとし     たらそんな怖い印象ねぇけどでもあの人絶対殺しに来る!倒れても殴り続ける!死     ぬまで殴る!それ即ちパーフェクトにフルボコる!!つまり俺は倒れても気絶して     も殴られ続け塵になるまでボッコボコのグチャグチャにマ゙ァアアーーーッ!!」 刹那 「落ち着け」 豆村 「はっ!……ぼ、僕としたことが取り乱してしまったぎゃ……?     すまなかったなも……」 まだ少し言葉がヘンだが。 と、状況に困惑している俺と悠季美を余所に、 いつまで経っても苦笑を解けない白衣姿の男は言う。 男  「エサはあげられませんが……よかったら見学していきますか?     これが成功すれば、モンスターをペットにできるかもしれない研究なんです」 刹那 「モンスターをペットに!」 豆村 「俺ゴブリン欲しい!」 柾樹 「俺はコケティッシュスベスベマンジュウガニが」 刹那 「ペットどころか食われて死ぬわ!!」 *注:コケティッシュスベスベマンジュウガニとは、    その愛らしい外見とは裏腹に猛毒を持ち、    それを噴き出して攻撃してくる恐ろしいカニである。    その毒のダメージは尋常ではなく、くらえばほぼ死ぬ。    その上変食であり、毒で死んだものを平気で喰らう。 男  「はは、まあ……今はまだ動物系のモンスターしか居ませんが、     そのうち幅を広げたいとは思っています。     それが認められ、研究員が増えて収入も入るようになったら、もっと───」 刹那 「ふむ……もしかして状況芳しくない?」 うわ、直球……。 そんなあなたにオブラートとそっと囁くが、彼はニヒルに笑うだけだった。 男  「ええまあ。こんな孤島ですからね。     長年溜め込んだ貯蓄ももう底を突こうとしています。     ですがね、あと少しなんです。あと少しでモンスターをペットにする夢が……!」 豆村 「その研究が完成すればゴブリンをペットに出来るか?」 男  「お、おそらく───いえ!必ず出来ます!出来ますとも!」 豆村 「よっしゃあよく言った!確かに受け取ったぜ男の啖呵!     俺達があんたのスポンサーになってやる!     だから金のことは気にせず研究に励んでくれ!」 男  「え?……はは、キミたちみたいな子供に言われても」 豆村 「即金で50000$」 男  「いらっしゃいませスポンサー様」 刹那 (なっ……おい!そりゃ俺達の集団募金じゃ───) 豆村 (使う場面を間違えなけりゃ使っていいって約束だったろ!いいじゃねぇか!) ……人の金の汚さに触れた気がした。 男  「はは、じゃあ中へどうぞ。私たちは魔導器というものを使い、     モンスターの培養と成長の研究、そして生態というものを調べています。     ああ、はは、培養って言うと嫌なイメージが出るでしょうが、     ここでしていることは人工交配。モンスターの精子と卵子を抜き取って、     モンスターの子供を誕生させているんです」 豆村 「ゴブリンは?」 男  「えっと、今はまだ動物型のモンスターの研究中だとさっきも……」 悠季美「少しは落ち着いてください」 豆村 「俺ははっきりいってゴブリン飼いたい」 柾樹 「あっさり逃げ出されそうな気がする……」 刹那 「あ、俺もイメージしてみたけど同意見だわ」 悠季美「ええ、それについては同意見です」 豆村 「うわー、友達甲斐のない……」 ……と、まあ……そんな感じで。 俺達は広くもなく狭くもない、微妙な大きさの研究所を見学して回ったとさ……。 その際、説明がとんでもなく長かったために随分と時間を食ったことを追想しておく。  ───回想終了 ……。 それで海を渡る手段もなく、海岸の前で立ち往生である。 いや、死んでないから。 悠季美「それで、どうするんですか?」 豆村 「ポセイドンを呼んで運んでもらうんだ」 刹那 「呼び出せるかンなもん」 柾樹 「じゃあまた筏か?」 刹那 「ビーン、お前の転移は?」 豆村 「………」 刹那 「……おい待て、なんだよその“あ、そういえば”って顔」 豆村 「あ、い、いや……正直忘れてたなーって……」 刹那 「な、なにぃ!?じゃあなにか!?泉の妖精に追われてる時も漂流した時も、     なにか考えがあってのことかと思ったら忘れてただけだってのか!!」 豆村 「や、悪い悪い……すぐ使うからそう怒るなって……ど、どこ行きたい?」 刹那 「お前が地獄に堕ちる未来」 豆村 「却下しますマジで!」 ともあれ、能力は発動。 俺達は、豆村が知っているであろう、 俺達では行き先がわからない場所を目指して飛び立った。 何処に行くのかは豆村次第。 豆村が知っているってことは、長く一緒に居た刹那もきっと知っている場所なんだろう。 けど……知っている場所でも、辿り着くまでは知らない場所だ。 不思議な感覚が頭に浮かぶ。 そんな感覚を前に、俺が囁いたのは…… その箱の中の猫は生きてますか?死んでますか?という、 箱を開ける勇気もないちっぽけな考えだった。 ───……。 ……。 ───さて。そうして辿り着いたのは……ボトゥムセアっていう港町だった。 刹那 「……ここって沈没したんじゃなかったっけ」 豆村 「ああ、沈没したなら、そこに転移できるかな〜ってやってみたんだけど。     あれ〜……どうなってんだこれ」 刹那 「沈没したところに転移するつもりだったのか。殺す気か」 豆村 「水ン中だったらさっさと再転移するつもりだったって」 柾樹 「はは……よっぽどの浅瀬じゃないかぎり、水圧で潰れてると思うけど」 豆村 「……気にするなって」 ともかく、解らないことだらけらしい。 長いことジュノーンに意識を奪われていた俺にしてみれば、 いろいろと解らないことも多いのだけれど。 まあ……おいおい解ることだし、今は気にしないことにした。 悠季美「見事なゴーストタウンですね」 柾樹 「人っ子一人居ない……」 豆村 「あ、かーさん?ああうん俺。今俺ボトゥムセアってところに居るんだけど。     ここって沈んだんじゃなかったっけ?……うん、うん。     えぇ!?浮上させた!?ど、どうやって!     …………あ、またあの提督さんの仕業なんだ。     あの人もよくやる……っと、なに?それより聞いてくれって。     ……うん、うん……え?“ぽにて”とかいうものにしたら親父が喜んでくれた?     ぽにてって……ポニーテール?や、俺、かーさんがなに言ってるのかよく解らん」 刹那 「謎なことをすぐ親に訊くのはやめなさい」 豆村 「解らんことを訊くのは恥ずかしいことじゃないんだぞ?     むしろ知ろうともしないほうが愚かなんだなもー!     ……つーかおふくろ、夫婦仲がいいのは結構なんだけどさ。     息子にのろけるの、やめてくれない?俺恥ずかしい……。     ……そうじゃなくて。や、違うって。仲がいいのはいいんだってばさ。     ただそのさ、息子にそんな恋焦がれたままの声で言われてもどう反応しろっての。     ああとかうんとかしか言えないよ俺。や、だからそうじゃないってばさかーさん!     ……え?おふくろでいい?じゃ、じゃあおふくろ。そうじゃないってば。     仲がいいのは決して悪いことじゃない!むしろ素晴らしいけどさ。     それを我が子に説くのはどうかなーって。     ───だから違うって!斬るとか物騒なこと言わないでよ!     母の話が聞きたくないのかとかそういう意味じゃなくてぇええっ!!!」 柾樹 「いろいろ大変そうだからほっとこう」 刹那 「だな」 悠季美「はい」 満場一致だった。 そんなわけだから俺達はビーンをその場に残して、移動を開始することにした。 刹那 「しっかし金策ねぇ……金なんてそんなポンポン集まるか〜っての」 柾樹 「まあまあ。なんとかしてやりたいって豆村の気持ちは解るだろ」 悠季美「彼の場合はゴブリンに欲が回っただけです」 違いない。 柾樹 「はぁ……確かに、金を集めるにしても方法が……あ」 刹那 「んあ?どした?」 柾樹 「提督さんがやってる守護竜退治。あれ、やってみるのってどうだろ。     手に入れた素材を売れば、かなりの額になるんじゃないか?」 刹那 「ば、ばかいえっ!俺達なんかが勝てるわけないだろうが!」 柾樹 「勝てたら一攫千金……!」 刹那 「無責任なことを言うなぁっ!!」 うん、責任持つ気ないし。 と、冗談はこれくらいにして。 柾樹 「けど実際、このままの俺達じゃ本当にザコで終わる気がするよ。     でも強くなることを目的に戦ってれば、金も溜まっていくんじゃないかな。     敵を倒しまくって素材を手に入れまくって売りまくればさ」 刹那 「……理想的なことって大抵実現できないよな」 柾樹 「うんまったくだ」 あー……空が真っ青だーーーーぁ……。 いや……これからどうすればいいんだろうなぁ……。 豆村の所為でいつの間にか他人のために金を稼ぐマッスィーンになってしまった……。 刹那 「誰かに借りるのはどうだろう。     例えば……そこらでブイブイ言わせてる提督さんに」 柾樹 「いや、ここは……叔父さんとかどうだ?」 刹那 「それだけはやめとけ」 悠季美「死ぬ気ですか柾樹さん」 ひどい言われようだ。 でも金策がないのは確かだった。 現に今、振り向いて眺めてみた海岸に立つ豆村も、 篠瀬さんに金を貸してくれ〜とか言っているようだ。 ……すぐに物凄い怒号をくらって、身を竦めているけど。 刹那 「……とりあえず、この島で修行でもしてみるか?」 悠季美「沈んでた場所にモンスターなんて居るんですか?」 柾樹 「探せば居るんじゃないかな」 ざっと森の先を眺めてみる。 が、ところどころに塗れている森林はただ広く、モンスターが居るような様子は─── 柾樹 「……?」 ふと気づく。 雫を浴びた森林が陽光にて輝くのではなく、 まるで木々自体が僅かに輝いているように見えた。 ……でもそれは瞬きをすると同時に消えた。 気の所為だったのか、ファンタジーの神秘だったのか。 解らないが、たとえ気の所為だったとしても、それはとても綺麗な景色だった。 刹那 「どーかしたかー?柾樹〜」 柾樹 「え?あ……」 いつの間にか立ち止まっていた。 それに気づかないほど景色に心を奪われていたのかと呆れるけど、まあ。 そんなことがあってもべつにいい。 現実世界じゃあ、自分が願うほど綺麗な景色など見れはしないのだから。 景色でも、人の在り方でも。 刹那 「とりあえずさ、これから魔王城に行ってみようってことに決まったんだけど」 柾樹 「魔王城?」 てこてことわざわざ戻ってきた刹那が、俺の肩に腕を回して言う。 その腕が歩を促すから、俺もやがて歩き出す。 魔王城っていうのは……なんだ?と疑問に思ったところで、刹那が説明してくれた。 提督さんがここへやってくる前までは魔王だったとされる人、 柿センセの現恋人にして妻であるフォルネリアさんの城……らしい。 俺はまだジュノーンに乗っ取られてたからここでの出来事なんて知らないが、 とにかくそんなことがあったらしいのだ。 魔王城か……どんな場所なんだろ、なんてことを考えながら、 俺達は急ぐでもなくマイペースに歩いていった。 【ケース535:弦月彰利/スウェーデン】 彰利 「グブブブブ……!」 ゴゾリと蠢いてみた。 意味はない。 清水 「なあ提督提督、ここ案内してくれよ。     そういや俺達、前は筏作りを優先させた所為で長い時間滞在出来なかったし」 岡田 「ああそうそう、メシも食いたいからキッチン行こうぜキッチン」 皆様は好き勝手にワイワイ燥いでおります。 そんな僕が企んでいることといえば─── 素晴らしき6人を獣人勢力に引き入れることだったりします。 彰利 (というわけで田辺くんどぎゃんね?《ボソォ……!》) 田辺 (面白そうだけど、提督にゃあ恩があってね。命一回分の恩くらいは返さないとな) 彰利 (ならば藤堂くんは?) 藤堂 (フフフ断る。何故なら俺たちは素晴らしき7人だからだ。     一人でも欠けたらつまらんからな。     恐らく清水と岡田、藍田と丘野に言っても同じだと思うぞ) 彰利 (グ、グウウ〜〜〜〜ッ!) 藤堂 (まあ提督にバラしたりしないから安心しろって。ここで話ちゃつまらねぇし) 仲間甲斐があるのかないのか。 だがそれはそれでありがてぇ。 ならばこちらも相応の力を以ってかかろうじゃあねぇか。 ……まずは猛者どもの勧誘だな、うん。 素晴らしき7人が魔王軍となったと考えるとして、 猛者どもをなんとか獣人勢力に引き込めればウヒェヒェヒェヒェ、簡単にゃ負けねぇぜ? いくら貴様らが全員隠しジョブ勢力に至ろうが、 猛者どもを味方に出来れば……クォックォックォッ、負けやしねぇのだ……! 岡田 「んあ?なんの話だー?」 彰利 「中井出の生態についての話を少々」 中井出「なんで!?」 なんでもなにもないけどね、デマだし。 しかしそうか、素晴らしき7人は多少なりとも結束があると。 だが猛者どもはどうでしょうかね。 彼ら彼女らは面白いことが大好きじゃきん、誘えばまたノッてくれるに違いない。 ……裏切る時もあっさり裏切るけどね。 彰利 「………」 要塞が空をゆく。 最初は海を進んでいたそれはいつしか浮き上がり、猫の里を目指して進んでいた。 しかし、考えてみりゃあアタイがここに残り続ける理由はねーのよね。 夜華さんももう復活してるわけだし、あとは……そう、 それこそ猛者どものところへ行って勧誘するのもいいんでないかい? 彰利 (……夜華さん夜華さん) 夜華 (……な、なんだ) 逃げないようにとさっきから捕まえっぱなしの夜華さんに囁きかけた。 伝えることは短く、だが的確にだ。スナフキン、僕に力を与えておくれ? 彰利 (これから獣人勢力復興を目指し、人材登用を開始したいと思う。     差し当たって、原中の猛者を勧誘したいと思う。     それから久しぶりに獣人王のところに戻って、近況報告をしてから作戦開始。     まずは闇の守護竜をブッコロがして、アタイ専用の武器を精霊から手に入れます。     黒死霧葬剣ダークマターっつったっけ?それを手に入れてあとは修行!     力をつけて、この世界を獣人の力で支配してやるのだ!) 囁きかけるように、だが熱く耳元で語った! でも全然短くなかった。正確さすら怪しい。 夜華 (またやるのか……一つ訊くが、何故獣人でなくてはいけないんだ?) 彰利 (やつらと堂々と戦えるからさ。     俺の予想じゃあ悠介はモンスターユニオンを復活させようとすると思う。     だが復活したところで、俺達が人間勢力側として戦うのはあまりにつまらん。     ならどうするか?……再び獣人としてこの世界を闊歩するしかあるまいよ。     だから夜華さん、その第一歩のために───俺に力を貸してくれ!) 夜華 (うぐっ……───はぁ……どうして貴様はそうなのだ……。     なんだろうが思いつきで行動し、少しでも状況に困れば人を巻き込み……。     巻き込まれる側のことも少しは考えてみろ) 彰利 (夜華さんは巻き込まれる側?) 夜華 (どっちだと思っていたんだ貴様はっ!) 彰利 (OH、それならダイジョブ。     アタイいつも夜華さんのこと考えてるよ?少しどころじゃねぇ) 夜華 (《かぁあ……っ!》そそそそそ、そそそういう意味で言ったのではないぃっ!!) 彰利 (?) じゃあどういう意味? 巻き込まれる側のことも考えてみろって言ったから、素直な気持ちを口にしたのに。 まあいいコテ、俺は俺のやり方で、この世界を楽しみながら強くなるのみ。 そして麻衣香ネーサンをもし仲間に出来たのなら、獣人族は多対戦に究極に強くなる。 ホギーが仲間になってくれるのがかなりベストなんだが、 あいつはそういうの好まなそうだし。 そんなわけでアタイはそっと皆様から離れると、夜華さんの了承も得ずに転移した。 目的地はセントール跡。 あそこでまず、麻衣香ネーサンを勧誘するとしよう。  ビジュンッ─── 転移時に鳴る、現実離れした音が聴覚を掠めると、 俺が見ていた景色は数瞬の間だけ異次元空間のような景色を映す。 あとは……あっという間だ。 気づけばというほどの大袈裟なこともなく、景色が変わったそこに降り立っている。 場所はセントール跡。 中井出とともに自転車で訪れた、あまりに寂しいレオンの墓だ。 その一角、といっていいのか。 山のように積まれた瓦礫から少し離れた場所に、本を広げる二人の影。 そこから離れた場所では、骨とランサーっぽい人が戦っていて、 傍らではキムナツが笑っていた。 ああ、キムナツってのは木村夏子さんのオムタク風な呼び方だ。 彰利 「YEAR(イェア)ァーーーーーーーッ!!!」 殊戸瀬「東京へ帰れ」 彰利 「東京!?」 ヒップホッパー風に奇妙に曲げた両手を上に挙げつつ叫んだら帰れって言われた。 東京限定で。 彰利 「えーとそのー、お久しぶりですドドリアさん。     実は今日は折り入ってお願いがありまして」 麻衣香「お願い?改まってなんて珍しいね」 彰利 「押忍。そのお願いってのも他でもない、俺の仲間にならないか?」 麻衣香「それってヒロちゃんのって意味じゃなくて?」 彰利 「押忍。兼ねてより組織している勢力があるんです。     そこで、猛者どもとともに新たなる帝国を作りませんか?と。     中井出も今や猛者連中よりも素晴らしき7人とつるんでる感があるし、     だったら我らも結託してこの世を変えてやりませんか?と」 麻衣香「うーん……面白そうでいいんだけど……」 殊戸瀬「メリットは?そこらへんをハッキリしてもらえると決断しやすいんだけど」 彰利 「メリット?……弱酸性の?」 殊戸瀬「違う!……わたしたちにとっての得はないのって訊いてるの」 彰利 「得?得ねェ〜ィェ……」 ……得、といったらなにかあるでしょうか。 ふぅ〜んむ……オオ。 彰利 「我らの敵となる者全員とバトれますよ?中井出とか悠介とか」 夜華 「わたしとしてはそれは望むところだ。     あの中井出という男はともかく、悠介殿と戦うのは望ましい」 彰利 「中井出との戦いは足しにならんかね?」 夜華 「奴は本来、戦人が持つべき思想を持っている。     そこから習うことは……いや、思い出すことは山ほどあった。     戦いとは非情であるべきだ。     倒れている相手に攻撃を加えるのは武士道に反するかもしれない。     だがそんなものは戦人には関係がない。     命が狙われる戦場でそんなことをのたまっていては殺されるだけだろう。     その点では奴はひどく戦向きだ」 彰利 「おやまあ」 結構評価されてんのね、中井出ってば。 よもや夜華さんにここまで言わせるとは。 夜華 「しかし実力が伴っていないな。隙だらけで体捌きも滅茶苦茶。     力が入りすぎで攻撃も大雑把。どれもこれも駄目なことばかりだ」 彰利 「おやまあ」 かと思えば駄目なことばかりである。 確かにね、あいつ剣士というか戦士なのに、剣の振るいは雑だし体術もボロクソ。 全て力任せで、動きが速い相手にゃ滅法弱い。 ……まあその速い相手も、 “肉を切らせてブッ殺す”作戦で悉く潰してきてるみたいだけど。 骨を断ってる暇があるなら心臓ブチ抜きブッ殺せがあいつの持論だし。 そうだよね、骨を断つほどの破壊力持ってるなら、殺した方がそりゃ早い。 彰利 「でもその中井出に夜華さんたらボッコボコだったのよ」 夜華 「む……」 麻衣香「ほんとなの?篠瀬さんほどの人が」 夜華 「……真実だ。油断がどうとかいう話ではない。     戦人とは常に襲われることを想定していなくてはいけない。     ましてや戦いの中であそこまでやられたんだ、今さらなにを言える」 彰利 「おお、認めるとは武士らしい」 麻衣香「へぇ〜……わたし、篠瀬さんってもっと頑固者かと思ってた」 殊戸瀬「意外」 彰利 「クォックォックォッ、かく言うアタイも驚きさ」 きっぱり負けを認めるとは、なんと潔い。 以前の夜華さんだったら、中井出に負けたなんて認めようともしなかったに違いないのに。 ……俺でも中井出に負けたらそう思うやもなのにねぇ。 彰利 「そいで、どうかね?」 殊戸瀬「……もう一声。わたしは眞人とは戦いたくない。     その信念を曲げろって言うのなら、それ以外のメリットを寄越すべき」 彰利 「ぬぐっ……麻衣香ネーサンやキムナツは?」 麻衣香「わたしは別にいいよ?夏子ー!聞いてたでしょー!?どうするー!?」 麻衣香ねーさんが、離れた場所で聞き耳立ててたキムナツに声をかける。 と、こちらに歩いてきてニヤリと笑って言うキムナツ。 夏子 「うんOK、亮ももうわたしの執事じゃなくなったわけだし、     そんな人と敵対するのも面白そうだし」 素敵!あっという間に二人が仲間に! さあこの流れで殊戸瀬も我が仲間に! 殊戸瀬「わたしは嫌」 ……なりませんでした。 彰利 「グウ……!じゃ、じゃあ今キミが困っていることの救済をするのはどうかね!?     なに!?なにか困ってることはねーべか!?あるでしょホラァアアア!!」 殊戸瀬「───……、……提督が持ってる月光竜の卵。それが必要」 麻衣香「え……ちょっと睦月!?」 彰利 「オッケェイ!!あの卵じゃね!?OKOK!俺達と来るヨロシ!     我が勢力ならば、我らが我らと気づかれずに戦うことが可能だ!     それはつまり、隙あらば盗むことだって可能なのさ!」 夏子 「……?それってどういうこと?」 彰利 「それはね?───こういうことさ!」 装備変更───獣人装備! ナビをいじくって装備を獣人装備へと変更すると、 瞬く間に我が身が獣人の姿へと変貌する! ゴルベーザ『我が名は獣人ゴルベーザ……以後、よろしく』 三人   『あ…………あぁあああーーーーーっ!!?』 キャア素敵! 予想以上の反応を見せてくれましたよ!特に殊戸瀬! 麻衣香  「ゴ、ゴゴゴゴルベーザって弦月くんだったの!?」 ゴルベーザ『イエス!ちなみにゴルダークが悠介』 殊戸瀬  「………」 ……殊戸瀬の空いた口が塞がらない顔、初めて見たかも。 ゴルベーザ『ちなみに貴様ら提督軍と呼ばれていた者以外はほぼ全員、       獣人族に入ったことがあるよ?あ、全員ってのは猛者のことね?       覚えとるっしょ?ウォズトロヤ攻防戦。       あの時の獣人兵の大半が猛者どもや小僧の集団で結成されとった』 夏子   「うわー……全然気づかなかったよ」 麻衣香  「でもどうなの?獣人勢力になるのは面白そうだけど、獣人王とかは……」 ゴルベーザ『おーおダイジョブダイジョブ。       猛者どもがかつて盗掘団時代に使ってた洞窟に居る筈だから』 夏子   「あ、そうなんだ」 殊戸瀬  「…………盗掘……」 麻衣香  「団……?」 ゴルベーザ『オウ?』 ハテ?アタイなにかおかしいこと言ったっけ? 殊戸瀬と麻衣香ネーサンが、 なにやらとんでもないことをあっさり聞いてしまったって顔で固まってんだけど。 あ、もしかして俺間違えた? OHそうそう!そうYO!盗掘団じゃなくて盗賊団だったよねィェ!うん! ならばと、間違ったという比例を詫びるつもりで獣人フェイスをガポリと取った。 紳士とはこうあるべきさ!多分! 顔も見せずに謝るなかれ!サンキュージョナサン=ジョースター! 彰利 「いや失礼した。盗掘団ではなく盗賊団だった。     盗賊団のアジトがエコナ平原の近くの山にあるんだ。     そこに獣人王イーヴィルバーグがいらっしゃる。     まずはそこへ集まりませう…………って、あれ?     どったの?なにその物凄い“期待持たせるなよクズが”って顔……」 麻衣香「その言葉通りの意味……」 彰利 「素直にひどい!」 殊戸瀬「期待持たせるなよクズが……」 彰利 「素直でひどい!」 夜華 「ま、まあそう責めないでやってくれ。なにが原因でそう言うのかは解りかねるが、     こいつはこういう男なのだ。多少の間違いは許してやってほしい」 彰利 「夜華さんっ……!……それって俺が“こういう男=クズ”ってこと?」 夜華 「そうだ」 彰利 「素直がひどい!」 ……神様、みんながひどいです。 ああ、神様って悠介だったわ。 じゃあtellでもしてみようか。 tell:晦悠介……と。ナルルルル……ブツッ。 声  『もしもし。晦だ』 彰利 「チッ……ホントは朧月のくせに」 声  『いきなり喧嘩売ってるのかお前は!!』 彰利 「や、でもこのtellで普通に苗字名乗るのってどうかと思うよ?     まあそれはそれとして聞いてください神様、女たちがひどいんです」 声  『神は基本的に懺悔しか聞かん。     だからお前がひどい目に合わされようが神は知らん』 彰利 「うーわー、すげぇ荒神。でも確かに神父って懺悔しか聞かねぇし。     でもだからこそこんな憐れな僕のハートを救ってください」 声  『どうやって』 彰利 「ククク、俺に今すぐ有り金全部寄越せ」 声  『猫に武器仕立ててもらってて、金なんて3$しかないが。それでいいなら』 彰利 「アンタ滅茶苦茶金遣い荒いっすね!!」 声  『だがこんな俺でもお前のハートを救ってやれる……!     だからくれてやるぜ、俺のなけなしの有り金全部……!』 彰利 「ゴギギギィイーーーーィイイイイ!!!!     なんか滅茶苦茶腹が立つわぁあーーーーーーーーっ!!!!」 声  『親友だろ?これくらいで助かるならこの3$も本望だ』 めちゃくちゃ安い友情っすね。 彰利 「エィイもういい!用はすんだから!」 ブツッ!───一方的に切って一息。 神は駄目だ。やっぱ駄目だ。死神サイコー、蝶サイコー。 彰利 「というわけで早うせんね、本なら向こうで見りゃいいっしょ」 麻衣香「でもこれだけの量があるし……」 彰利 「そんくらいワシが一緒に飛ばしたるわい。そぅれパパレポ〜!!」 俺は転移用の鎌を取り出し、発動させた! が───発動しない。 彰利 「……ホワイ?」 ……俺は転移用の鎌を以下略! が……発動しない。 彰利 「アレ?アレレェイ!?」 夜華 「彰衛門?どうした」 彰利 「いや……アレェ?おかしいな……転移出来ない」 麻衣香「え?……ここには転移してきたんじゃないの?」 彰利 「そうなんじゃけどね?……もしや神の呪い!?tell:晦悠介!     ───あー神!?貴様神ね!?神この野郎どういうこっちゃあコラァアア!!!」 声  『お前は本当になにもかもがいきなりだな……なんだ?』 彰利 「なんだじゃねぇ神てめぇこの野郎!!     貴様この死神大魔王にいったいどんな呪いをかけおった!」 声  『呪い?……なんのことだか解らんが、     お前が呪われてるのは今に始まったことじゃないだろ』 彰利 「着ぐるみのことじゃねぇよ!     転移よ転移!どうなってるの!?貴方のせいなのだわ!」 声  『転移?…………TPでも無くした……わけじゃないな?     どれ、ブラックホールが出ます───弾けろ。     ……、……普通に出るな。お、提督悪い、ちとここ潜ってみてくれないか?』 声  『え?僕これからランチタイムなんだけど……     猫が腕によりをかけてウォーミル麦使ってご馳走振る舞ってくれるって……』 声  『ちょっとくぐるだけだから。な?』 声  『そんなこと言って俺を罠にハメる気だな?何処に繋がってるんだよこれ』 声  『一応セントール跡だけど。もし辿り着けなかったら有り金全部やるぞ?』 声  『ウッヒャッホォーーーーゥイ!!』 声  『ぬおおさせるかぁあっ!!混ざれば山分け!この清水も行くぜ〜〜〜っ!!』 ……ゾリュリュリュ、という奇妙な音が、tell越しに聞こえた。 ………………そして、待てども待てども彼らは来なかったという。 彰利 「3$のために命を捨てたか……」 声  『提督に清水……女房思いのいいヤツだった……』 けしかけたのはキミだけどね。 声  『けど、なるほど。転移能力関連のものがおかしくなってるのは確かみたいだ』 彰利 「だからそう言ってるべやこのスカタン!どーすんのさ中井出と清水!     あれ絶対にヘンなとこ飛んだぞ!?」 声  『自称素晴らしき7人の中の二人だから大丈夫だ』 彰利 「……お前、時々ほんと鬼な」 不完全な転移で、いったい彼らは何処へ飛ばされたのやら……。 考えてみたけど、ろくな場所じゃないことくらい軽く想像がついた。 Next Menu back