───冒険の書217/外道でいこう───
【ケース537:中井出博光/一万年と二千年前から神様を愛してる】 ドドドドドドドドドドドドドドド!!!! 中井出&RX『WHOOOOOOOOO(ウホオオオオオオオオオオオ)!!!』 山を下っていた。 全速力で。 まるで雪原を駆けるスピードワゴンの如く、ひたすらに駆けていた。 やがて止まる。 祭壇らしき場所を見つけたから、献上物を持ってくるヤツが現れるのを待つために。 RX 『着いて早々だけど退屈……』 中井出「いつ来るかなんて解らないしなぁ……俺腹減ったよ……」 RX 『俺も……』 普通だったら今頃、アイルーたちが作ってくれた料理を食べてた筈なのに。 とりあえず晦のヤロウを“コロがすリスト”に載せておこう。 中井出「そこいらのモンステウ(モンスター)でもコロがしてメシにするか」 RX 『ギィネェ〜ッ(いいねぇ〜)』 清水がライダーフェイスで、ギルティギアのアクセル=ロウっぽい声で賛同した。 とはいえ……モンスターが居ない。 中井出「モンスターが居ないな」 RX 『そんな時こそコレ!ダークボトル!』 中井出「ヒィッ!?俺それって嫌な思い出しかないんだけど!つーかもうトラウマ気味!」 RX 『まあまあいいから。まずこれを───かけます』 中井出「《バシャア!》ギャアア!!だからなんで俺にかけるんだよ!!」 RX 『え?他の誰かも提督にかけたのか?』 中井出「……殊戸瀬」 RX 『うわーやりそうだーって言ってる側から来たァアアーーーーーッ!!!!』 中井出「なにぃ!?ギャアーーーーーーッ!!!!」 サブタイ:振り向けばそこに。 様々な動物系モンスターが揃いも揃いって襲い掛かってきた! しかもモンスターたち、俺しか見てねぇし! 効果ありすぎだよこのボトル!! RX 『よっしゃあ任せろ!提督は俺の後ろに居て、敵を一直線に集めてくれ!』 中井出「───!よし任せろ!」 やつらが見ているのは俺だけ! ならばと、バッババッと右に行ったり左に行ったりを繰り返し、 突進してくる中々に大きなモンスターどもを一列に並べてゆく! もちろん完全に一列にってのは無理だから、そこらは割愛ってことで勘弁だ。 中井出「よし行け!清水二等!」 RX 『オッケェイ!!太陽よ……俺に勇気を与えてくれ!     ハイブリッドパワー───フルチャージ!!&インスタントブースター発動!!』 清水が太陽の光を身体に吸収し、体内に眠るキングストーンを活性化させる! そうしてからインスタントブースターを発動!強く地面を蹴り弾き、 弾丸の如き速さでモンスターどもへと向かってゆく! RX 『アァーールエェックス!!キィイイーーーーーック!!!!』 ゴキィン!キュドガガガガガガガァァアアアッ!!! 魔物の群生『クギャアアアーーーーーーッ!!!!』 鉄板を軽々と破壊すると言われるライダーキックは、 インスタントブースターという速度上昇アイテムにより物凄い破壊攻撃と化していた。 てっきり先頭のモンスターを蹴り飛ばして終わりかと思っていた俺は仰天するしかない。 蹴り飛ばすどころか穿ち、滅し、勢いを殺すことなく後ろの敵まで屠り続けているのだ。 正面に鋭く飛んだ跳躍が、やがて着地へと移行するまでの間、ずっと。 RX 『っし!息つく暇無く10分アビリティ発動!《ゴシャアッキィン!!》     変身!RX!───炎の王子!ロボライダー!』 しかし着地すると同時に10分アビリティを発動。 第二変身を行いロボライダーに変異すると、 光線銃ボルティックシューターを取り出して乱射を始める!! ロボ 『ワハハハハハ死ね死ね死ねェエエーーーーーーーッ!!!!』 ……そこには昔僕が憧れた英雄は居ませんでした。 居るとしたら、一人の殺戮兵器です。 光線銃ボルティックシューターから放たれる光の弾丸は、 本来キメ技として使われるハードショットという技。 それをあれだけ乱射すりゃあ、そりゃ強いわ。 中井出「───!清水二等!上だ!」 ロボ 『なに!?』 ボルティックシューターによる爆発の煙に紛れ、 空から襲撃する一体の……あれはハーピーかなんかか!? 奇襲が上手い!あのタイミングじゃあ清水に銃を構えてる時間なんて─── ロボ  『───チャージ《ヴミンッ……!》』 ハーピー『ギキャァアアアッ!!《ゴギィンッ!!》───ギッ!?』 ───いや。 清水は間に合わないと解っていながらも銃をハーピーの攻撃に合わせ、 それを受け止めた……いや、衝突させた。 だが府に堕ちない点がある。 さっきまで確かに銃であった筈のそれが、今では右腕と一体になり、 時計の歯車を半分にしたような機械の腕と化していた。 そして、そんな腕と衝突したハーピーの足の爪は、なんと無惨にも砕け─── ロボ 『───インパクト!!』  バクンッ!バゴシャドッガォンッ!!! ハーピー『キガァアォギィイイィィィィ……ィ……───!!!』 開いた弧月状のアームから放たれた、 大地さえ震動させる衝撃を放つ一撃で、粉微塵と化して消えた。 放たれたのは衝撃だけじゃない、むしろ雷撃が超圧縮されて放たれたような光景だった。 ロボ 『ククク……俺がライダーになりたてで未熟かどうかはともかく。     これだけは手向けとして冥土ででも思い出せ』 パギンッ───バシュウウウウッ!! アームが高熱の蒸気を発し、普通の右腕に戻る頃。 清水はその右腕を天に掲げ、ニヤリと笑うように言った。 ロボ 『───俺の科学力は完璧だ』 ……どっかで聞いた言葉だった。 聞かせる敵なんて既に居ないけど。 メシにする筈だったのに、屠ってちゃしょうがないだろうが……。 中井出「つーかライダーマンのカセットアームまで使えるのかよ!」 ロボ 『状況にもよるけど。これはロボライダーに変身しないと使えないみたいだ。     逆にアマゾン技とかはバイオライダーに変身しないと使えないらしい』 中井出「………」 素直に羨ましいなぁとか思ってしまった。 ロボ 『ちなみにロボ状態ならストロンガーのチャージアップも可能らしい。     ただし使うと滅茶苦茶腹が減る。     雷属性の宝玉があれば常時チャージが可能らしいんだけどさ』 中井出「腹減りか。藤堂で言うところの鉄分みたいなもんか」 ロボ 『だな……でも残念、使えるのはRXまでのライダーのものだけみたいだ』 中井出「なにぃ!?クウガとか電王は!?」 ロボ 『きっぱりと無理』 中井出「あいやー……まあ下手に世代進むとライダーっぽくない気もするし……」 ロボ 『あと太陽か月がないと俺、変身すら出来ないって……』 中井出「キングストーン効果も考えものだな……。変身できなきゃただの清水だもんな」 ロボ 『ただの言うな!俺は俺だい!』 中井出「……でもそれ、なんとかなるかも。     晦が持つ月の欠片。それを完成させた月の石版があれば、     貴様はいつでも月の力を得ることが出来るんだ」 ロボ 『あ……な、なるほどぉっ!!そこまで考えていたとは!     すげぇや!さっすが天下の中井出さんだ!!』 元々、月光竜の誕生に必要になるかな〜と思って晦と話つけてたんだけどさ。 まあアレだ、仲間が強化されるならそれでいいではないか。 俺は俺で、この世界の深い楽しみ方をノートン先生にお願いして手に入れたんだから。 でも一生のお願いがあれでよかったのか、僕はちょっと不安です。 ロボ 『ところで提督、話戻すけど。貴様ほんとに魔王にはならんのか?』 中井出「うむならない!だって隠しジョブになったらジョブ固定されちゃうじゃん。     俺、人をやめるのも自由度が無くなるのも嫌だし」 ロボ 『あ』 どうやらたった今気づいたらしい……だが手遅れよ。 一番最初に田辺の強さを知り、 そのジョブが隠しジョブだと知った時点でいろいろと予想はついていた! 隠しジョブはとても強い代わりにジョブチェンジが出来ん! もしかしたらドロップアウトすれば出来るかもだが、出来んと言っておこう!なんとなく! ククク、甘いぜ管理者の精霊ども……! この博光がむざむざ自分から自由を捨てるとでも思うたか……! ロボ 『……これってドロップアウト出来るかな』 中井出「出来るとは思うけど、     その際そのジョブに必要だったアイテムがどうなるかが謎だよな。     アレか?やっぱロビンみたいに傍らにいろいろ落ちてるのか?」 ロボ 『それはそれで物凄く嫌だ……《ピピンッ♪》お?メールが来た……』 中井出「ぬお?俺には届いてないぞ?見せるのだロボよ」 ロボ 『確かに今ロボライダーだけどストレートに言うのやめてくださいサー!』 でも見る。 清水がナビを操作して開いたメールをシゲシゲと。  ◆追記  隠しジョブでもドロップアウトが可能です。  その際、ジョブチェンジに必要なアイテムや武具は傍らに落ちます。  盗難にご注意ください。どこぞの自由人が奪う可能性があります。 中井出「……いや、好き好んで誰かが素っ裸になる様子を     マジマジと見る盗難者なんて居ねーだろとツッコミたい」 ていうかこの自由人って俺のこと? や、そりゃドロップアウトが可能だっつーんなら欲しいけどさ。 この“すっぴん”は俺の外見を一切変えず、 能力の在り方だけを変えてくれるステキ変身能力。 ……変身っぽくないが、確かに変わってるんです。 そしてこの能力には能力の幅に制限がない。……らしい。 まだ試してないから解らんが、 それぞれ経験を積んでアビリティを使えるようになり、 たとえば剣士状態で魔術師系のアビリティを使うと能力が弱体化……なんてことはない。 何故なら同じ人間が使うものなのだ、職業で幅を決められてはたまらん。 つまり今の俺はモンクの界王拳も使えるし、千歩氣攻拳も使える。 シーフの泥棒根性も使えるし、不意打ちだってし放題。 もちろん魔物だって取り込んでしもべに出来る素晴らしきすっぴんさ。 まあ……忍者アビリティは消滅扱いにされたから使えないんだけど。 一度やってみたかったんだけどなぁ……生分身。 出来たらきっと面白いことになっていただろうに。 ちなみに丘野くんは忍者自体に飽きたんだそうな。 まあこの世界の忍者ジョブ、ろくな忍術なかったし決め手に欠けすぎてたし。 あれだな、FF11で竜騎士が弱すぎた伝説。 修正されるまではとことんザコだった。 それと似たようなもので、忍術にろくなものがなく、 しかも二刀流だから思うように武器が強化出来ないとくる。 さらにてんで修正されなかったんだから、やめたくなる気持ちも解らんでもない。 それでも最近まで忍者であり続けてたのは、まあ意地かなんかなんだろう。 丘野くらいだったもんなぁ……忍者だったの。 で、その意志が八門遁甲消滅を切欠に揺らいだと。 どちらにしろ時代劇で影響を受けて始めた忍者だ、 意地を貫き通せるほどのこだわりなんぞなかったんだろう。 ともなれば、武士のジョブもいったいいつまで続くことやら。 とまあそんなわけで、すっぴん能力に話を戻そうか。 この能力に問題点があるとしたら、 10分アビリティはやっぱり10分置きにしかできないことか。 どの10分アビリティも、そんな感じだ。 たとえば界王拳使ったら、マグニファイ使いたくても10分待たなきゃならん。 まあ……こりゃしょうがないよな、これだけの我が儘変身能力なんだし。 目指せ、ジョブマスター!……はいいんだけど、さすがに創造者とかは無理だ。 あれはいくら自由がウリとはいえ、扱えるような能力じゃないし。 ノートン先生の力を持ってしても、 創造者や黒操者、黒竜王ジョブになるのは無理がある。 つーかなれるんだったら全員が創造者になっちまえば、 ルドラたちなんて敵じゃない気がする。 なにせ頭の中だけは無駄に豊かな僕らだ、 相手の裏ならいくらでも掻いた想像と創造が出来ましょう。 それを思うと少し残念でなりません。 ロボ 『提督なら平然とやりそうだけど』 中井出「エ?……あ、ああ、盗難の話ね?」 瞬間的に様々な思考を展開してたら話の内容を忘れてしまった。 思考にフケるのも大概にせんと。 中井出「うん、やるけど好き好んではどうかなぁと」 ロボ 『否定もしねぇや……さすが提督』 感心された。 しかし本当に欲しいものがある場合、躊躇などせず盗る。 それが旅人というものさ。 ゲームの勇者さま見てみろコノヤロー、 なんの臆面もなくタンスからアイテム盗んでいくじゃねーか。 ドラクエ4のアリーナなんてそれの所為で濡れ衣着せられたってのに。 馬鹿だよねーアリーナも。 壁をもブチ破る拳があるなら、壁ブチ破って逃走すればよかったのに。 牢屋に入れられようが、それすら格子ではなく壁を……ねぇ? 一国の姫が他国でそんなことを、だなんて言葉は知らねー! 抜け出してきたんなら既に貴様は姫ではなく一人の修羅よ! ならば壁など破壊せい!群がる番人を蹴散らせィ!! 所詮やつらに足りなかったのはそういう常識破りよ……! 中井出「というわけで僕お腹空いた」 ロボ 『あ……そういや全員塵にしちまった』 今頃気づいたらしい。 アビリティや技を格好よくキメたい気持ちは解らんでもないというか解るけど、 ハングリーな時くらいスパッとキメて、ロボ男くん。 とか思ってるとコシャーンとロボの変身が解け、元の清水くんがその場に立っていた。 清水 「おわわっ……と?あ、ありゃー……?もしかして変身時間って限られてる?」 中井出「そういや田辺も途中で変身解けてたな。     力が強い分、消費も激しいってやつじゃないか?」 清水 「うわー……そりゃまた自由度がない」 せっかくの隠しジョブなのに、清水はなんだかがっかり感満点だった。 清水 「はぁ……あ、自由度で思い出したけど。     提督、ノートン先生かイセリアさんになにか頼まなかったか?     提督達が過去に転移したあと、俺達イセリアさんに妙なこと話されたんだけど」 中井出「うぎっ……な、なんのことかな?」 清水 「提督がそこまであからさまに動揺するのって珍しい気がする……     てめぇなに頼んだ!」 中井出「………」 まいった。 俺が頼んだのはカルガラに代わる別の変身能力。 だがそれこそが、この世界を真の意味で自由に生きるためのものであり…… 教えてしまうとつまらねー気がしたんだが。 もういいや、この際だから薄情します。じゃなくて白状します。 中井出「カルガラじゃなくてさ……別の新しい変身能力をもらったんだよ……」 清水 「え?狂戦士対策で、ガッツへの変身とか?」 中井出「いや、それも考えたんだけどさ。それよりも俺は自由を選んだ。     さあ!その変身とはいったいなんでしょう!」 清水 「すっぴん」 中井出「正解……」 一発で当てられてしまった……。 せっかく暖めてたのにそりゃないよトニー……。 中井出「一番にログアウトした時にさ……     変身能力の変更と一緒に話し合ったことがあったんだよ……。     ボツにしちまったジョブのアビリティとかがもったいないぜ〜〜〜ってさ。     だからFF5名物の“すっぴん”を頂いて、     その状態ならボツになったジョブのアビリティも使えるように……って。     そう話をつけて、いつの日か驚かせてやろうと思ってたのに……」 清水 「うーん……活躍の場もなしにあっさりバレてしまったわけか……」 中井出「いいよもう……貴様以外のみんなをギャッて驚かせるから。     アッと驚かせないのが僕なりのこだわりです」 だが聞いてください。 今やジョブチェンジが完全に自由になった今、 このすっぴんこそが自由の象徴となったのです。 俺は既に、誰の手にも届いていないメールを手に入れている。 それはすっぴんによるすっぴんのための一通のメール……! ジョブチェンジしたのち、 一定以上経験を積むとそのジョブのアビリティがすっぴんで使えるようになるのです! つまり既に剣士状態である程度の経験を積んだ僕がドロップアウトし、 たとえば魔術師になったとする。 しかしすっぴん状態ならばマグニファイが使用可能な上、 ハイパーアーマーだって使えるし呪いが解ければキャリバーも使用可能! 素晴らしいとは思いませんか! でも誰にも教えるつもりはありません。 みなさまが優勢にコトを進めている時にどんでん返し用にとっておくのです。 その時の皆様の驚愕の顔を思うだけで、グオッフォフォ……!!ついつい笑いが……! あ、ちなみに武器スキルはしっかりと継承されるそうです。 経験積んだのに別のジョブに変えたからって、 剣が使えなくなるなんて非人間的なことがあるわけがねー。 でも剣士だからって拳を使っちゃいけない理由などない。 だから僕はたとえ魔術師になろうが剣を使うし、弓使いになろうが拳を使うし、 武士になろうが噛み付くし、槍使いになろうがハンマーを使います。 武士道?騎士道?知ったことではないわ。 中井出「ところでジョブ爺って何処に居るんだろうな。     一応西の大陸を軽く見て回ったけど、それっぽいヤツ居なかったし」 清水 「あ、それ俺も気になってた……と、モンスター発見」 清水がキッと目つきを変える。 俺も釣られて清水が見ている方角を見ると、そこにはイノシシ型のモンスターが。 コココ……!こりゃ今日の遅めのお昼はボタン鍋かねぇ……! 清水 「イノシシか……どうする?」 中井出「ここは俺が行こう……イノシシ型モンスターには個人的な恨みがあるんだ。     ……モンスターハンターで」 清水 「物凄く説得力があるから任せます、サー」 コキコキと肩を鳴らし、ほぐす中でイノシシ型モンスター(ブルファンゴと命名)は、 前足でザシュッザシュッと地面を掻くようにして、俺を睨みつけていた。 突進の用意だろう、なんと隙だらけな動作よ。 だが……残念だったな。 貴様がイノシシではなかったら、恐らく仕留められ方は決まってなどいなかっただろうに。 ブルファンゴ『グヒーーーーーッ!!』 中井出   「さァ来ィイ!!」 ブルファンゴが走る!およそイノシシらしくはないであろう声とともに! 真っ直ぐに一直線……猪突猛進とはよく言ったものだ。 だが俺はそれを正面から受け止める気満々であります!! 中井出「どぉおおっせぇえええええーーーーーーい!!!!」  ドカカカカカドガァアアッ!!!! ブルファンゴ『グヒーーーッ!!』 中井出   「ぬおおおおっ!!」 突進してきたブルファンゴの、まず足を止めるために角を押さえる! そしてそのまま足を地面に固定するようにして、ズガガガと滑りながら押さえる! ……もちろんレベル差というものもあり、あっさりと突進は止まったわけですが、 完全に止まる直前───なんと我が足が空を掻いてしまったのだ! つまり、空中大陸における崖に足が落ちてしまったというわけで─── 中井出   「ヒ、ヒィーーーーーッ!!」 ブルファンゴ『グヒーーーッ!!』 中井出   「ゲーーッ!もう間に合わん!」 必死に登ろうともがいてみたけどダメでした。 そして転がり落ちる僕とブルファンゴ。 どうやら斜面になっていたらしく、 崖はまだ先のようだが───崖があることに変わりはなかったァーーーッ!!! ヒ、ヒィ!安堵するには早すぎた! ていうか飛行能力がない僕では、あそこから落ちたら確実に死ぬ! い、いやしかし私にはテオブランドがあった〜〜〜っ!! だったらこのイノシシをどうするか?───決まってる! 中井出(キ、キン肉ドライバーしかない!) 最初からやると決めていた技ですが、どうか受け取ってください! 中井出「う わ あ あ ぁ」 清水 「おお!み……みた!今度こそキン肉ドライバーの完璧な姿を!!」 斜面から投げ出されるように飛んだ僕は、 イノシシを逆さにしてキン肉ドライバーの構えを! あとは目が眩むほど下方に広がる大地へとこいつを落とせば、 キン肉ドライバーの完成じゃーーーーーっ!! 中井出「……ヒ、ヒィイ!!エジェクション!!」 でも怖かったので、すぐにテオブランドを解除するとフロートを全開にして自分だけ浮遊。 イノシシ『グヒィイーーーーーーー…………───』 中井出 「あ」 するとキン肉ドライバーから解放されたイノシシだけが、 広大なる緑の大地へと……シュゴーと落下していった……。 僕と清水は、それを静かに見送ったのでした。 中井出「……イノシシ……いいやつだったな……」 清水 「どうせ戻ってくるなら一緒に担いでくればボタン鍋に出来たのに……」 中井出「誰だって自分が一番可愛いのさ……アンタだってそうだろ?」 清水 「や、そうだけどさ」 やがて僕らは茶色いイノシシが真っ白な雲に溶けて消えるのを…… ただぼんやりと、眺めていた。 あ〜あ……メシどうしよ……。
【Side───その頃の猛者ども】 彰利 「ヘイユー!というわけでわざわざ大地を     スピードワゴンさんの如く疾走してきたアタイとともに、     再び獣人界で夢を見ないかい!?《ドゴォン!》ゲファーーリ!!」 蒲田 「ヒィッ!?どこからともなくイノシシが降ってきたァアーーーーッ!!」 島田 「イノシッ……イノシシッ!?なんだこりゃどうなってんだ!?」 永田 「お、おいおい!弦月のヤツ完全に潰れてるぞ!?」 飯田 「弦月!?弦月ーーーーーッ!!」 永田 「……あれ!?つーか俺無事!?シェッ……謝謝!謝謝イノシシさん!!     なんだか解らんけど俺の上に振ってきてくれないでありがとう!!」 灯村 「今日の昼はボタン鍋に決定だなっ!」 下田 「あ、肉の捌きなら俺に任せてくれ。これでも自信ある」 午後、快晴。ところによりイノシシが振るでしょう。 ……状況は実に平穏。平和なもんだった。 【Side───End】
ゴルゴルギュィイイ……!!ゴルギュイイイイ……!! 清水 「すげぇ音……それほんとに腹の音?」 中井出「う、うむ……腹の音である……」 まいったなぁ……いや、弱ったなぁ……。 腹が減って力が出ない……なんてことはないが、腹が減りすぎてしまっている。 このまま食えなければ……う、飢え死にしてしまう! アアーーッ!おなかがすいた!ご飯が食べたい!! ……いや、それよりも久しぶりにラーメンが食いたいなぁ……。 いや、それよりも“やまふじ”の野菜炒めを……。 中井出「うう……《じゅるり》」 想像しただけで唾液がジワジワ出てきやがる……。 くそう、僕はただこの雷鳴響く腹をなんとかしたいだけなのに……じゃない! 目的は献上物持ってくる何者かの捕獲……もとい、何者かとの対面じゃないか! ええい実に面倒くさい!この博光はこういう待たなきゃいけないものが好きではないのに! 釣りとかならいいが、こういう無駄に待たなけりゃ現れないイベントって嫌い! だから探す!結界ってのを自力で探してやる! ていうかここに献上しにくるっていうことは、 このグラウベフェイトー山にあるってことじゃないか!? だったらそれを探せばいいのだ!イベントだからってイベント通りにやる必要などない! ……え?い、いえ?決して腹が減ったからこの場で待つのが嫌になったんじゃないですよ? 中井出「なぁ清水。せっかくだから自力で結界探さない?」 清水 「え……いや、少しとはいえせっかく待ったんだから、来るまで待たないか?     ここで別の行動取ったら負けな気が……」 中井出「姿も正体も解らんヤツに敗北感を抱く必要なし!     我らは自由よ……!そんな我らが、相手が出てくるまで待つなど出来るものか!」 清水 「それってただ辛抱さが足りないだけなんじゃないか?」 中井出「認めよう!認めた上での行動である!」 清水 「ほんと提督って無駄に男らしいよな……     もっと別のところでその潔さとかを使えばカッコイイだろうに」 中井出「やだなぁ、カッコよさなんて求めてたら俺らしく振る舞えないじゃないか」 清水 「や……ならさ、ほら、男なら敵をかっこよく倒したい〜とか思わないか?」 中井出「無様でいいから僕は勝ちたい」 清水 「ああ……なんつーかすげぇ提督らしい答えだ……」 だがかっこよく勝ちたいと思ったことは何度もある。 しかし人間、 格好よく敵に勝つなんてことはそうそう出来るもんじゃないと思い知ったわけで。 技術のない俺が格好つけながら敵を倒すなんて、無茶がすぎたんでしょうなぁ。 結果、今日までの僕はそれこそボッコボコのボロボロになりながら、 ようやく勝てるような戦いばっかりをしてきた。 一度くらいはそれこそ、 誰かに熱い溜め息を吐かれるような勝ち方をしてみたいものさ。 でも今の俺じゃ冷たい溜め息くらいしか吐かれないだろうからなぁ……。 だからいいじゃないか、格好のよさなんて。 どうであれ勝つことこそがこの世界では大事なのだから。 中井出「それで───お?」 清水 「ん?」 清水と格好の良さで語り合っていたところ、ふと祭壇に訪れたる何者か。 そいつは背から翼を生やし、真っ白なローブみたいなのを着た、いかにもな存在だった。 え……?あれ、天使……? いや、天の使いと書いて天使だなんてことはどーでもヨロシ! 注目すべきはヤツが持っている物体! あれはまさしく、さっき俺が食したミニシューもどき! ならばヤツこそが───! 清水 「す、すげっ……生だ!生天使だぜ提と」 中井出「ウォーーーリャーーーーッ!!!」  ドゴォン!!───ガクッ…… 清水 「ホギャオワァアーーーーーーッ!!?」 天使が僕らに気づくより先に、AGIマックスで近づいたのち、 程好い加減のステータスで天使にナックルを進呈。 彼(彼女?)は大地に後頭部から叩きつけられ、ガクリと気絶した。 清水 「なっ……な、なななななにやってんのォオーーーーーッ!!?     おまっ……そんなことしてどうなるか!     なにィイイ!?そいつ連れて結界でも探す気なのォオオ!!?」 中井出「やったぜ清水!メシにありつける!」 清水 「ホゲェエエエ!!?あっさり予想の範疇を越えやがったァアーーーッ!!     待てぇ!!待ってくださいサー!!     そいつ絶対結界の内側に住むっていう謎の生命体で───」 中井出「いやモンスターだって。ほら見ろ、この立派な翼」 清水 「天使なんだって!ここに住んでるのって天使だったんだよ!」 中井出「な、なんだと……!?天使っつーと、天津飯の使いっていうあの……!?」 清水 「天さんの使いと書いて天使じゃねぇよ!!天の使いと書いて天使!!     解ってて訊いてるだろてめぇ!……あーあー、綺麗な顔のねーちゃんだったのに」 中井出「俺は初対面だろうが殴る必要があるなら殴るが」 清水 「や……殴る必要なかったって絶対……」 言いつつ、倒れてるねーちゃん(らしい)の口にハイポーションを流し込む清水。 気絶しているだけのねーちゃんは一応それを呼吸とともに飲み上げ、 時折ゲホゴホと咳き込んだが……なんとか意識を取り戻した。 天使 「う、う……あ、れ……?ここは……?」 中井出「地球よ。よく来たわね」 清水 「そして平然とウソをつくなよ……」 天使 「……!?な、なにをするのです!お離しなさい!!」 清水 「《ばしぃっ!》いてえ!!」 倒れたねーちゃん(もう天使でいいや)を抱きかかえていた清水が、 なんとスパシィとビンタをくらった! 清水はなにが起きたのか解らない風情だったが、 天使はそんな清水の動揺をついて起き上がり、早々に立ち去ろろうとする。 中井出「逃がさん……!!《ズザァッ!!》」 天使 「ひっ!?」 ───しかし俺に回り込まれた!! 天使 「おっ……おどきなさい!わたくしは人間に構っている暇などないのです!」 中井出「何故!?」 天使 「言う必要がありませんわ!」 中井出「だったら人間に構ってる暇などないなんてわざわざ言うなアホかてめぇ!!」 清水 「うわぁ正面きっての超正論!!」 天使 「な、なななな……!なんと無礼な!この無礼者!」 中井出「……なぁ清水くん、こいつ馬鹿だぜ?無礼者に無礼者って言っても意味ないのに」 清水 「俺は無礼者発言をあっさり受け入れる貴方にこそ敬礼を贈りたいが」 生憎この博光、礼儀など持ち合わせちゃいねぇ。 あるのはそう……本能よ!冒険者としての本能! ……て言っても、皆様が思うような冒険者本能とはかなりズレてるだろうけど。 天使 「ばっ……馬鹿と!今わたくしのことを馬鹿と言いましたわね!?」 中井出「大体さぁ、こういうヤツって大抵……え?なに?」 天使 「聞きなさい人の話を!!」 中井出「うむ聞こう!なんぞや!!」 天使 「今!わたくしを馬鹿と言いましたわね!?」 中井出「言いました!」 天使 「わたくしを!天使の中でも高貴な血筋を持つわたくしを!     よよよよーくも馬鹿などとぉおおおおっ!!」 …………。 中井出「……え?なんで怒ってるのこのキャプテン翼」 清水 「や……今さら馬鹿って言葉で怒る俺達じゃないから解らんでもない反応だけどさ」 いかんぜよいかんぜよ、心はもっと広く持たねば。 と口にしようとした矢先に、 天使のねーちゃんが、つけていた手袋を外すや俺に投げつけてきた! 天使 「結構!今からわたくし自らが!     貴方に決闘を申し込みます《バゴドゴォンッ!!》わぶぴぃっ!!?」 清水 「ひでぇえーーーーーっ!!!!」 決闘を申し込んできたねーちゃんの顔面を殴り、再び地面に叩きつけました。 手袋を投げつけたままのポーズでかっこよく言ってた彼女は、今や大地のオブジェです。 中井出「ククク……なに暢気にポーズとってやがる……!     決闘ってのは口にした時点でもう始まってるんだぜ……!?」 清水 「……なんかこの天使のねーちゃん、     馬鹿なんだけど嫌いになれない何かがあるよな……同情?これ」 中井出「じゃないの?」 大地に埋もれて痙攣してる天使のねーちゃんを見下ろして、 頭をコリコリと掻いてる清水くん。 次にバックパックを広げてみたりしている。 ……どうやら回復アイテムを使うか否か、考えているらしい。 声  「……っ!?貴様ら!シェーラ様になにをした!」 と、そんなところへ響く怒りと戸惑いが混ざったような声! 中井出「殴りました」 男  「ホゲェエーーーーッ!!?」 振り向いた先には男! そんな彼に馬鹿正直な事実を教えたら、心底驚いてました。 その背には翼……どうやらこいつも天使らしい。 男  「貴様っ……最低だな!これだから人間は!     男が女に手を挙げるなど、最低な行為だぞ!」 中井出「最低かどうかを決めるのは俺であって貴様ではない。     女を殴るのが最低?その思考自体が甘いのだ男よ。     たとえば戦乱の中、女である敵に命を狙われた際、貴様はどうする」 男  「捕らえ、無力化を狙う!     殴るだの斬るだの、そんな野蛮なことを女性にするものか!」 中井出「相手の方が実力が上だったらどうする。無力化など到底無理だ」 男  「それでもだ!私は絶対に女には手を挙げない!」 中井出「わあ」 物凄い頑固者だ。 でもそれも一つの生き方と考え方か。 俺は、それを口にした上で、その意志を貫けるのなら文句など言いません。 しかし自分が本当にやばくなったからってあっさりと意志を変え、 殴ったりするのであれば盛大に笑ってやります。 軽蔑は別にしない。考え方が変わった証拠だろうし。 まあこちらの在り方を否定したことは謝ってもらうけど。 中井出「ふぅむ……諭されなければ理解できぬことはこの世に腐るほどあるが、     俺は俺の意志のもとに動き、貴様は貴様の意思のもとに動いてる。     その意志の中には当然貴様とは違った意志が存在する。     この乱世、敵かどうかも解らん相手にわざわざ敵ですかと訊いてる余裕があるか?     ……ある時はあるよね、うん。───キミは敵ですか?」 男  「当たり前だ!よくもシェーラ様を……!許さん!」 中井出「実はこの女性は我らが駆けつけた時には既に倒れていたんです。     そしてどうしようかと戸惑っているところに貴方が。     しかも怒り心頭ではないですか。     ならばと場を和ませる意味も込めて、殴ったなどとウソを言いました」 男  「なっ……そ、そうなのか……?」 中井出「そうなんだっ……!だから彼女を助けるためにどこか寝かしつけられる場所へ!     どうやら頭を強く打っているようなんだ!」 男  「本当か!?っ……なんていうことだ!───すぐ近くに私たちの集落がある!     普段は結界で見えなくしているが、     シェーラ様を助けようとしてくれたお前たちだ!     特別に入ることを許可する!ついてきてくれ!」 中井出(《にやぁああああ……!!!》チョロイチョロイグオッフォフォ……!!) 清水 (ほんと悪向きだよな、提督って……) こうして僕らは、謀らずとも結界の先の集落へと辿り着くこととなった……! 卑劣?ククク、騙されるほうも騙すほうも悪いのよ……! でも俺の場合、自分が悪だって自覚があるから別に気にしないけどね? Next Menu back