───冒険の書218/職業といふもの───
【ケース538:豆村みずき/ブリーチャーのオムレツ教室(意味無し)】 豆村 「えーーーっと……」 無人島めいた島を歩く。 今日浮上したばかりらしいそこは、どうにも地面が湿ってて嫌な感じだ。 空からは水に塗れた木々から滴る水が降ってくるし、 草むらを歩けば足周りがびしゃびしゃ。 すぐ乾くのがせめてもの救いだけど、こう続いちゃやってられない。 豆村 「だめだー……やっぱりだ〜れも居ねぇや」 ジョブ爺を探す目的で、魔王城まで来て探索をする俺だが、人っ子一人見つからない。 手分けして探してるから今は俺一人だ……溜め息ついても愚痴をこぼしても、 返事をくれる相手なんざ居やしない。 は〜ぁ……今頃深冬はどうしてっかな。 豆村 「こういう場合、牢獄とかに捕まってるとかありそうだったんだけどな」 俺が調べてるのは牢獄だ。 しっかし見事に誰も居やしない。 そりゃ、長いこと沈んでたんだから人が居たら逆に大変だけど。 やっぱあれかな、みんなシヌラウマに逃げたんかな。 ……と思っていると、ふと耳に届く違和感。 それがtellだと気づくと、すぐに回線を繋いだ。 豆村 「ほいこちら豆村、オーバー」 声  『こちら刹那。ジョブ爺を見つけたぜ、オーバー』 豆村 「居たのかよ!ど、何処に!?オーバー!?」 声  『魔王の玉座の後ろに隠し階段があったのを見つけた。     そこに一人のじいさんが居るのを発見した。魚人みてぇだ。     ……ああ、ちなみに数多くあった宝箱は見事にカラだったぞ、オーバー』 豆村 「……提督さんたちか、オーバー」 声  『間違いなくそうだろうなぁ、オーバー』 あの人たちが隠し階段とかを見逃すとは思えないからなぁ。 恐らく一番最初……魔王フォルネリアを打倒した時、既に漁ってあったんだろう。 で、のちにそこがイベント場として使われたと。 でも……そっか、じゃあ今日の提督さんたちは、魔王城は見ていかなかったってことか。 ちなみにわざわざ言葉の終わりにオーバーをつけるのは一種の遊びみたいなもんである。 豆村 「あ、じゃあとりあえずはジョブチェンジできるわけだよな?オーバー?」 声  『や、無理だろ。だってロビンズイコンが無い。オーバー』 あ。 そういやそうだった……どーしよ。 と、そうだ、こういう時には各地を飛び回ってる提督さんに─── 豆村 「悪ぃ刹那、ちと提督さんに回線繋ぐわ。     あの人ならなにか知ってるかもしれねぇ」 声  『妥当だな。あの人、俺達に比べると数倍冒険しまくってるし。     案外ロビンズイコンも持ってるかもしれねぇや』 豆村 「ああ。つーわけで悪いな」 声  『気にすんな。それよりロビンズイコン持ってるようだったら俺にも教えてくれな』 豆村 「あいよ」 オーバーを言うのも忘れてtellを切る。 そしてすぐさまナビをいじくり、tellを飛ばす。 いやしかし便利だよなぁこれ。 わざわざ指で押さなくても、押すって感覚だけで項目が押せるんだから。 ……ナルルルル……ブツッ! 声  『俺だ!瀬戸内だ!』 豆村 「相変わらずそんな応対してるんすか……あ、     とりあえずペットのエサをスポンサー権限で貰っといたんでその報告をと」 声  『おおそうか。じゃあ切るぞ?』 豆村 「早ッ!ちょ、ちょっと待ってくださいよ他にも用あるンすから!」 声  『なに!?こっちは今忙しいんだぞ!?だから聞こう』 豆村 「……普通忙しかったら急かさねッすか?」 声  『俺は忙しさにかまけて人の言葉を聞かない者は嫌いだ。だから聞こう』 豆村 「………」 やっぱこの人の感性ってよく解んねぇ……。 や、俺も忙しいってだけで話を聞こうとしないヤツは嫌いだけどさ。 豆村 「えっと……提督さんっていろんな場所飛び回ってるっすよね?     そこでひとつ訊きたいんすけど……ロビンズイコンって持ってます?」 声  『うむ!持っている!』 うわ!本当に持ってたよこの人! 豆村 「それ貸してください!ジョブ爺見つけたんスよ!     俺ちょっと別のジョブやってみたくて!」 声  『なにぃジョブ爺を!?でもすまん、今ちとイベント中だから行けない』 豆村 「だったら俺がそこまで取りに行きますから!今何処っすか!?」 声  『浮遊大陸グラウベフェイトー山のとある結界の中の集落』 豆村 「ホギャーーーッ!!?なんでそんなとこ居ンスか!?     あれ……えぇ!?浮遊要塞に乗って猫の里に向かってるんじゃ───」 声  『モミアゲに騙されて飛ばされた。     僕はこの恨みを忘れぬため、しばらくは晦に会わずに過ごし、     彼の金が随分と溜まってから出会おうと思ってる。     そうすればヤツの全財産は俺のものよグオッフォフォ……!!     ククク、愚かよな晦め……!実に愚かよ……!     この博光が、現在の貴様の全財産ごときで満足すると思うてか……!     恐らくあの時点での晦の全財産は微々たるもの……!     大方猫に武器の強化でも頼んで、すっからかんだったのだろうよ……!     でなければああまで簡単に全財産をやるなどと言えるものかグフェフェフェフェ。     ならばそれを逆手に取り、ヤツに金が溜まったであろう頃合を見て……!』 声  『あ、そういう考え方もあるか。全財産には変わりねぇんだから、     しばらく待ったほうが今よりも高い金額取れるんだよな。     ……すげぇや!さっすが天下の中井出さんだぜ!!』 豆村 「………」 悠介さん……よく解らないけどとんでもない約束ごとしちまったみたいですね……。 この人ら相手に不用意に約束ごとはすまい……俺はそう心に誓った。 こりゃ流石にシャレにならなそうだし、後で悠介さんに連絡を─── 声  『ちなみにこのことを喋った時点で貴様は常にハントされる側に立つと知れ』 豆村 「口が裂けても喋りません!!喋りませんとも!!」 危ねぇええ……!!こっちの行動見透かしてるよこの人……!! あ、でも悠介さんに言わなくていいなら───って待て、 今この人“悠介さんに喋った時点”じゃなくて、 “このことを喋った時点”って言ったよな。 それってつまり……誰にだろうが喋ったら狙われるってこと……だよな。 うおお抜け目ねぇえ……!さすが常日頃から悪巧みを考えてるような人だ……! 俺なんかじゃ裏を掻くことすら出来ねぇ……! 声  『で、貴様はこれからロビンズイコンを取りにここまで来るんだよな』 豆村 「無茶言わないでくださいよ!空は竜だらけっすよ!?     死神化すればいけるけど、行けるわけねぇじゃないっすか!」 声  『なんだとてめぇ!取りに行くと言って来たのは貴様だろうがこのクズが!』 豆村 「やっ……そ、そうっすけどっ……」 tell越しに提督さんじゃない人の声……清水さん、だっけか、この声は。 いや、心にザクリと来る言葉だ。 うう……俺ってガキだな……自分の言葉にてんで責任持ててねぇ。 すぐに相手の所為にして責任逃れしようとして……情けねぇ。 声  『はっはっは、まあまあ清水二等。若いのだから過ちくらいは認めよう』 豆村 「あ……て、提督さん……」 でも、次いで聞こえてきた声にいくらか心が救われた。 声  『せっかくこっちに来るんだからジョブ爺も持ってきてくれ』 豆村 「行けないって言ったンスよ俺は!!」 うわぁ救われもしねー!! さすが天下の提督さんだ!見事に人の期待の逆を突きやがった! 声  『あれ?自分ひとりじゃ竜の側を飛ぶのが怖いから、     爺を連れていきたいって言い改めたかったんじゃないの?過ちを認めた上で』 豆村 「断じて違います!心の底から違います!いくらなんでも違いすぎる!」 声  『じゃあなんなのォオ!違うなら最初っからはっきり言いなさいって     かーちゃんいっつも言ってるでしょォオオ!!?』 豆村 「誰がかーちゃんっすか!とにかくそっちに行くのは無理っす!     提督さんの方がイベントが終わり次第こっちに来てくださいよ!」 声  『ああそれなら少々待たれよ。そろそろ決着つくから』 豆村 「え?」 ……耳を澄ましてみると、 tellの向こうから喧嘩でも始めようかと言うくらいの怒号が聞こえる。 どうやら清水さん以外の人と対峙してるみたいだが…… 声  『ククク、さあ翼人よ……月の光が最もよく集まる場所とやらを教えろ……!』 声  『卑怯だぞ貴様ら……!!よくも私を騙したな!!』 声  『ここに来て女が目を覚ましたのはとんだ誤算でしたが……ククク、     しかし入ってしまえばこちらのものです。もう位置はナビが記憶しましたからね。     さ、次は月の光の情報ですよ?さっさと白状するのです』 声  『だ、誰がっ……!』 声  『おおっと、言わなければ我が手にある炭が、     囚われの身のお姫サマのスベスベほっぺにヒゲを描くだけだがなぁああ……!!』 声  『や、やめなさい無礼者!わたしを誰だと───!!』 声  『名前ならもう聞き飽きたわ!誰だか解ってようが、     相手の正体が実はお姫さまであっても実行する……それが原ソウル!』 声  『こ、後悔することになりますわよ!今すぐわたしを解放なさい!』 声  『後悔!?具体的にどんな!?』 声  『具体───えぇ!?具体的!?ですの!?え、えぇと……?     具、体的……と訊き返されましても……その……』 声  『さあ言え言ってみろさあさあさあ!』 声  『〜〜〜……どやかましいですわっ!!     大体そんなことを改まって訊くお方が何処に居ますか!!』 声  『ここに居る!キミの目の前に!唯一無二な僕でもいい!だから、さあ!!』 声  『っ……知りませんわそのようなこと!     ただひどい目に合わせて差し上げるだけですわよ!』 声  『……ねぇ清水くん?     こいつ見てるとやたらと丘野くんの娘のこと思い出すんだけど』 声  『そうなのか?よく解らねーけど』 声  『じゃあもういいや、左にヒゲ書こうヒゲ』 声  『《ごしごし……》いやぁあああーーーーーーーーーっ!!!!』 声  『姫ェエーーーーーーーッ!!!ぐっ……なんと卑劣な……!     女性にヒゲを書くなど男の風上にも置けんっ……!』 声  『風下でいいのだよ俺は!だから教えろ!     さもなくば鼻の穴の下から頬にかけて、ヒゲを書く刑に処する!!』 声  『ひっ……!?い、いやっ……それだけはやめてっ……!』 声  『やめてやってもいいが、それは集落の者の心がけ次第だなぁグオッフォフォ』 声  『こっ……この下衆め!』 声  『黙れクズが!』 声  『死ね!!』 声  『なんでわたくしに言いますの!?』 声  『や、意表をついたら面白いかなーって』 …………。 耳、傾けなきゃよかった。 それでも一度耳を傾けるのに集中してしまったが最後、 聞こえてしまうのが聴覚ってもんで。 声  『ほぉおうれヒゲヒゲヒゲヒエェエエエイ!!     顎ケツも書いて青筋も書いて、トドメには泥棒ヒゲも書いてグオッフォフォフォ』 声  『いやぁああーーーー!!いやぁあーーーーーーーーー!!!』 声  『待て!やめろぉおっ!!解った!教えるからやめてくれぇええっ!!!』 声  『そうそう、それでいンだよボケが』 声  『さあ、教えるのだ翼の者よ』 声  『ぐっ……祭壇から南側にまっすぐ進んだ先にある一番目の大陸……     その中心部に段差の高い小さな山めいた場所がある……!     そ、そこが……月の光が最も集う場所だ……』 声  『その話!まことであろうな!』 声  『本当だ!だからもう解放してやってくれ!』 声  『おおっとまだだぜ?月の光が最も集まる時間帯はいつだ』 声  『っ……そこまで教えることは……!』 声  『物解りの悪いヤツだ……では姫さんにはホモ毛を書いてやるとしよう』 声  『やぁああーーーーーーっ!!!』 声  『ひぃい!やめてくれぇ!ホモ毛だけは!ホモ毛だけはぁああーーーーっ!!!』 提督さんが囚われの女性の鼻から顎にかけてのラインに、 チョンチョンと点描を書いていく光景がありありと浮かんできた。 声  『0時だ!日の境目と言われるその時にこそ、月の光が集束するんだ!!』 声  『その話!まことであろうな!』 声  『嘘などついてどうする!私は嘘が嫌いだ!つくものか!』 声  『そうか!ならばこの娘も返───す前に』 声  『な、なんだ……!?この上まだなにか……!?』 声  『なにかここに伝わる武具とか秘宝とかってない?あったらちょうだい?』 声  『どこまで外道なんだ貴様は!』 声  『果てなく外道!!貴様の物差しでは俺を計ることは出来ぬわ!!』 声  『計りたくもない!』 声  『す、すげぇぜ提督……!ここまで情報を吐かせておきながら、     まだ次を求めるだなんてこの清水にはまだまだ出来ることじゃあねぇ……!』 声  『清水二等、心から阿修羅になるのです。     今までを原中の猛者として生きてきた貴様ならきっと出来ます』 声  『中井出師父(チュー先生)……ッ!!』 ……俺はもう、耳を傾けるのをやめることにした。 ていうか切っていいかな、tell。 ───……。 ……。 それからしばらくした後だった。 空から何かが降ってくるのを確認したのは。 休むことなく空を飛びまわる飛竜たちを無視して、こちらへと真っ直ぐ落ちてくる姿─── それはまさに……って提督さんじゃねぇか!! まさか浮遊島から飛び降りてきたのか!? なに考えてんだあの人! 豆村 「ななななにかクッションみたいなものは───!!」 魔王城の屋上でそんな姿を発見してしまった俺にしては、 なんとか助けなければいけない状況なわけで─── 近くには刹那も柾樹も郭鷺も居るけど、誰もが好き勝手に寝てやがる! って言ってもクッションなんてものがこんな場所でそうそう見つかる訳がない! ぬおおどうすりゃいいんだよこんちくしょう!! 声  『てててて提督提督ぅううっ!!ブレーキ!ブレーキィイイッ!!!』 声  『既にやっておるわ!フロートフロートフロートォオオオッ!!』 かと思えば少しずつ落下速度を落としてゆく人影。 その瞬間に飛竜に襲われたりしてるけど、それでも一応こっちに向かってきてる。 ……って、そのまま来られたら飛竜まで来ちまうじゃねぇかよ!! 豆村 「ストップストップ!!提督さんちょっとそれシャレにならねぇ!!」 中井出「バッカモーーン!!この博光がいつシャレなど言った!」 豆村 「そういう意味じゃなくて!     そのまま降りてこられたら飛竜と戦わなきゃいけなくなるでしょうが!」 中井出「大丈夫!試練中で弱体化状態であろうが、     こんな数ばかりの飛竜など《ガブリ》ギャアーーーーーーッ!!!」 清水 「ああっ!提督が食われたァアーーーーーッ!!     提督!?提督ーーーーーーッ!!!」 豆村 「………」 お空が大変だった。 つーかあの人本当に強いのか……? 時々どころか常に疑問に思っちまうよ……。 そりゃ、じゃあ戦ってみろって言われたら全力でお断りしたい相手だけどさ。 ───、ともあれ、目潰しだのなんだの、 卑劣技の数々を駆使して飛竜を撃退した彼らは魔王城の屋上へと降り立った。 そして見渡すかぎりの大自然をぐるぅりとねめまわすと、両手を挙げて叫ぶ。 中井出「イエス!キモスト!」 ……キモストってあれか? ああいや、気にしないでおこう。 中井出「大自然よ……あの時はありがとう!礼を言えなかったから今ここで言います!     貴様らの思いのお蔭で、我らは海の圧力に潰されることなく生きている!」 清水 「……?やっぱあの時ってなんかあったのか?     提督の技で、海を割る技なんかあったかな〜ってずっと思ってたんだけど」 中井出「ぬ?おお、あるにはあるが、普通じゃ役にも立たん技だから。     それが出来たのも自然が僕に力を貸してくれたからさ」 清水 「自然が力をねぇ……まああの状況なら解るけどな。     凄かったよなぁ歌ってる最中。なんつーの?     自然と一体になったって感じが俺でさえしたくらいだ」 中井出「うむ。自然の思いだけであの威力だ……私は大変驚きました」 清水 「狙って撃ったんじゃないのでありますか、サー」 中井出「うむ。あれはさ、灼紅蒼藍剣っていうジークフリードの最終奥義なんだ。     思いの力を剣に宿して、一気に放つ技。     あの時……ナギーを通して自然の思いに触れた時、     自然の皆様が俺に助けを求めてきた。怖い怖い、潰されたくない、助けてって。     そしたら……なんだろな。ジークに引っ張られるみたいに体が動いてた。     で、気づけば海は真っ二つ。あんだけの量の海水を切り裂いて蒸発させて、     それでも飽き足らず空にある雲まで裂いてった。素直に驚いたよ、あの威力には」 清水 「ああ、俺を含む素晴らしき7人も相当驚いてたから」 …………来てそうそうに訳の解らん話をされても。 どう反応しろと? 中井出「というわけで豆ボーヤ。爺はいずこ?」 豆村 「へっ?あ、ああ……そこに連れてきてあるけど……」 中井出「ぬう」 提督さんがチラリと俺の後方を見る。 そこには隠し部屋から引きずってきたジョブ爺ことジージョさんが。 中井出「爺よ、貴様がジョブ爺で相違ないですか?」 爺  「おお……わしがぁあ〜〜……ジョブ爺〜じゃぁあ……」 中井出「お、おお!そうか!そうか!では爺よ!貴様に願いがある!     この博光を……アコライトにしてくれ!!」 清水 「うわぁ似合わねぇえーーーーーーーっ!!!」 中井出「だからこそやるんじゃないか……」 清水 「イェッサー!お見事です!」 爺  「……ドロップアウト済みじゃな。ええじゃろ。     では………………バァアーーーーーーーッ!!!」  マカァーーーーーーン!!! 爺が提督さんの前でうねうねと手を動かし、やがて掲げると、提督さんの体が光り輝く!! 清水 「ぐ、おお……!なんという威圧感だ……!」 豆村 「や、遊ばないでくださいよ」 清水 「馬鹿!こんな時こそ遊ばないでなにが原中か!」 豆村 「その基準がよく解らねーっす!!」 そうこうしているうちに光は消え、 やがて……その場には、先ほどとなんら変わらない提督さんの姿が。 中井出「やあ」 そして普通に手を挙げて挨拶する提督さん。 ていうかもうドロップアウトしてたんですか……。 中井出「おお……本当にアコライトになれてる……!素晴らしい……!」 ピピンッ♪《ジョブ爺によってのジョブチェンジを確認!       全裸になるという勇気を示し、ここへ至ったあなたの勇気を賞し、       ナビシステムの“ジョブ”の項目が復活させます。       これからはこちらで好きにジョブチェンジをおこなってください》 中井出「オッ……おお!次からはナビネックレスでジョブチェンジが可能らしい!」 清水 「なにぃ!?つ、次俺な!?爺!     俺を───って、俺まだドロップアウトしてなかったわ。     つーか混成になりたてなんだからまずこれで遊ぶべきだよな、うん。     いかんいかん、つい目の前で起こった状況の珍しさに体が動いてしまった……!」 中井出「解る、解るぞ清水くん……!というわけでホレ豆ボーヤ。     これがロビンダイナスティに伝わる伝説の宝具、ロビンズイコンだ」 なにが“というわけで”なのかは解らないけど、 提督さんが俺にジャラリとロビンズイコンを渡してくれた。 これがそうなのか……って。 豆村 「あの、なんで俺のことじぃっと見てるんすか?」 中井出「いや……貴様の痴態をこの目で見届けてやろうかと」 豆村 「激烈勘弁願いたいんですが!?」 清水 「なにを情けないことを!提督はなぁ!     大勢の天使たちの前でドロップアウトしてみせたんだぞ!?     注目する天使たちの前でニヤリと笑ったのちにキャストオフ!     俺はあんな男らしい姿を見たことがなくて大笑いしたわ!」 豆村 「提督さん……あんたこの世界でどれだけ常識破壊すりゃ気が済むんですか……」 中井出「いや……驚くかなーってやってみただけなんだけど……。     ダメ……僕もうあの集落には近づけない……」 清水 「どうだ、うちの提督はすげぇだろ」 ……両手で顔を覆って泣いてますが。 いや、この人も解ってて言ってるんだろうなぁ。 さすが原中ってところなんだろうか。 さすがって言えるところは確かにあるんだけど、ほんと格好のつかない人だよな、この人。 中井出「というわけでさあ」 豆村 「ここじゃやらねーっす!下のほうでやってくるから!」 清水 「なんだと!?貴様それでも男か!」 豆村 「生物学上どうとっても男っす!でも恥ずかしいもんは恥ずかしいから下で!」 中井出「ぬう……まあいいや、それは貴様に預ける。好きに使いなさい。     俺は経験を溜めて、アークメイジまでの能力を手に入れるからその間だけ」 豆村 「……手に入れてもそれまでっすよね。     剣士のままのほうがよかったんじゃねっすか?」 中井出「いろいろあるのだ。というわけで、さらばだ。───長寿と繁栄を!」 清水 「長寿と繁栄を!」 シュゴー!! ……最後にタイムマシンの真似をして、二人はとっとと去っていった。 とことん嵐のような人達だ……つーかあの人達守護竜と戦ってるんだよな。 魔法使い状態で勝てる相手なのか? 豆村 「ま、いーか。俺には関係無いし」 それよりもドロップアウトだ。 幸いみんな寝てるし、この見渡す限りの大自然の中で自らを解放するのも悪くない。 豆村 「コホン。では───アイテム使用!ロビンズイコン!」 声高らかに、ポーズまで決めてロビンズイコンを使用した! すると輝き始める我が体! 柾樹 「ん……」 悠季美「んん……?」 刹那 「んあ……ビーン……?」 豆村 「はうあ!?」 そして、高らかな声に目を覚ます俺の友達たち! 止まらない光!治まらない恐怖!! 時は戻らない───その意味を、俺は初めて知った気がした。 豆村 「うわわ馬鹿寝てろ見るな見るなぁあーーーーーっ!!《ヒュバァン!!》」 柾樹 「へ?……あ、うわああーーーーーーっ!!!」 刹那 「ぬおおお!?ビーンてめぇ!いつからストリップ趣味なんぞを!!」 悠季美「ッ……《かぁあっ……!》きっ……きゃあああああああああっ!!!!」 ズッパァアーーーーン…………  ───西の大陸にクリティカルビンタの轟音が鳴り響いたその日……  俺は中井出博光という男の涙のわけを、実体験とともに知ることとなった。  あの人すげぇよ……こんな悲しみを自ら、驚くかもって理由だけで実行するなんて……。 【ケース539:中井出博光/トミタケプリンセス】 中井出「うぅううまあぁあああいぃいいいぞぉおおおおおっ!!!!!」 海面を駆ける! すっぴん変身状態で、マグニファイを使ったのちに駆ける駆ける駆ける!! ステータスは全てAGIに!足が沈むより先に足を前に出し、その足が沈む前に次の足を! でも効果時間は一分なので、いけるところまで行かなければならない!だからこそ走るッ! 清水 「うおお速ぇえ速ぇえ!この速さって既に魔術師らしくねぇよ!」 中井出「大丈夫!しっかりとアコライトさ!     魔法なんてまだど根性ファイヤーしか持ってねーけど!     それより見てくれ清水二等!ジョブが変わったお蔭か、     呪いによって封印されているジークの技術スキルが変わってるんだ!     剣士スキル主体だったのが、属性系スキル主体になってる!」 清水 「そうなのか!?で、そうなるとなにかあるのか!?」 中井出「ボマー系が復活してるし、鍛えてもらった際に使った守護竜の属性素材分、     使用した魔法の威力が向上すると思われる!     例えば風属性の魔法を覚えたとして、それを使えば風刃スキルが発動!     鎌鼬の追加効果が得られるというわけだよワトソンくん!」 清水 「お……おお!なるほど!つまりたとえ弱いファイアでも、敵に当てれば───」 中井出「そう!ギガボマーがしっかりと発動してくれるわけだ!     ……でも剣で攻撃した際には発動しないらしい。     なるほど、ジョブとは職業、得意とする武器は確かに設定されるだろう。     だからアコライトな俺では剣は使いこなせないって“設定”なのか。     おのれ精霊管理者どもめ、俺の狙いをよく解ってやがる……!」 清水 「ここは使えるだけマシって考えるべきだろ。呪われてる真っ最中なんだから。     けどその呪いが解ければ完全に自由ってことなんだろ?」 中井出「その通りである!だから今は我慢の時!     なんかナビのログに、空界の回路を埋め込めば魔力があがりますがどうしますか?     とか出てきてたけど、速攻で断ってやったわ!俺には地界の回路があればいい!     俺は地界人として、この世界を楽しみ尽くすのだ!」 設定がどうだろうが俺は喜んで剣を使います。 同じ人間が職業を変えただけで、 それまで使えてた武器が使えなくなるなどあってはならん! ククク、見ているがいい精霊管理者どもよ……! この博光は貴様らの常識なんぞで満足するほど小さなゲーム好きではないわ……! 必ず設定の穴を見つけ、武器でもギガボマーを使えるようにしてくれるわ……! 中井出「───あ」 そしていきなり穴を発見。 と同時に走る方向の海面からザパァンと跳ね上がるマーマンダインが! 中井出「エジェクション!     テオスラッシャーを解除して初期魔法ど根性ファイヤーを封入!!     そんでもってぇええ───ブッ飛べカラミティイイーーーーーーッ!!!」 飛び跳ねたままの格好で、海面を疾駆する清水を背負った僕を見て驚愕する彼に、 属性の炎が篭った剣を一閃させる! するとキュボォッガァォオオオオオンッ!!! マーマンダイン『ギョアアーーーーーーッ!!!《シャアアサラサラ……》』 鋭い爆発とともに、粉微塵になるマーマンダイン……! オッ……オーケー!やはり思った通りだ! 剣自体に……つまりジークムントに元から宿る火属性で斬っても爆発はしないが、 封入した“魔法”っていう属性にはしっかりとボマー発生能力が備わっている! 中井出「ワハハハハ!!早速システムの穴を発見してやったわワハハハハ!!     さあ行こう清水くん!僕の新たなる魔術師の旅が今始まる!」 清水 「接近戦主体の魔術師が今、ここに誕生した!その名も───……エロマニア?」 中井出「違うよ!!なんでそこでエロマニアが出てくるの!」 清水 「いや、なんとなく」 なんとなくって……いやもういいけどね? ともかく今は魔術師のアビリティを全て覚えることを優先事項として実行! ナビによれば、ようするにそのジョブならば クラスチェンジが出来るくらいの経験値を手に入れれば、クラスチェンジが出来るらしい。 つまり150レベル分までの経験値を手に入れればOKなのだ。 1から150までの経験値など、今の状態ならばそう難しいことではない! マーマンダインを倒してみて解ったけど、 レベルとは違ってジョブ経験はきちんと積まれている! ナビの隅に“すっぴん”って文字があって、その横に421という数字があるのだ。 つまりマーマンダインの経験値は421だったということだろう。 それだけが解れば十分……!だから僕は走ったのだ……! あの懐かしき、バトルアント族が住む場所へと……!
【Side───その頃の地界】 …………。 イセリア『ぎぃいいい……!!』 ノート 『気を落とすなイセリア。      この男の考え方が汝の考え方を越えていただけのことだ』 イセリア「そんなこと言われたって……こんなあっさり穴を見つけられるなんて……」 ヒロミチくんの行動は予測してた……つもりだった。 アコライトになっても絶対に剣で戦うだろうって思ってたから、 剣での攻撃でボマーは発動しないって設定にしといたのに……。 それがこれである。 今から変えてしまうって方法もあるけど、 それをやるとヒロミチくんに負けたのを完全に認めてしまったことになる気がして、 どうしても嫌だった。 スピちゃんもそう思ってるのか、そうしようとしないし。 イセリア「ていうかどうなの?わたしこれでも、      空界では伝説として唱えられたくらいに頭がいいつもりだったんだけど」 ノート 『ならば私は空界の精霊王として唱えられていたが?』 イセリア「………」 ノート 『………』 それなのに思考戦であっさり負けてしまうわたしたちは、 きっとゲームの真髄を知らないんだろう。 柔軟に柔軟にって思えば思うほど、ヒロミチくんの行動には振り回されている。 はぁ……わたしたちって頭でっかちなのかなぁ。 イセリア「いいや……この際だからヒロミチくんには存分に好き勝手にやってもらお……」 ノート 『そうするといい。いつか自分が死ぬことを教えるにせよ教えぬにせよ、      中井出博光とはそういう男だ。死ぬと解っていようが今を好き勝手に生きる。      悔いが無いようにという意味合いではない、寿命でもない限り……いや。      よほどに恵まれた人生でない限り、悔いというものは残るものだ。      人生の中で、やりたいことを全てやるというのは無茶なことだろう。      それをヤツは知っている。だからこそ悔いのないように過ごすのではなく、      どうせ悔いが残るのなら、死ぬ瞬間までを楽しもうとする筈だ。      全力で生きるとは、そういうことだろう』 イセリア「うーん……人ってそんなに綺麗に終われるもんかな」 ノート 『最後までを全力で楽しもうとするんだ、綺麗なわけがないだろう。      そういった醜さもなにもかもを知った上で楽しむ。      今際の際に己がどうなるのかなど、解るわけがないのだ。      だがそんなことばかりを考えていては楽しめるものも楽しめまい。      故に足掻く。無様だろうが楽しむ努力をする。      確証などないが、恐らく中井出博光はそういった行動の先に死ぬのだろうな』 イセリア「……ノーちゃん、未来が見えてるからって死ぬなんて言っちゃダメ。      こんなに穏やかな歴史なのに、誰かが死ぬなんて悲しすぎるよ」 ノート 『救える方法が解らんのだ、愚痴をこぼしたくもなるというものだ』 不可能などないと云われた自分が、まるで幻想だと呟いて、スピっちは溜め息を吐いた。 気持ちは解るけど……本当に、どうしたらいいんだろう。 せめて未来が完全に見えるのなら、まだ対処の方法も考えれるっていうのに。 イセリア「じゃあ、やっぱりヒロミチくんをヒロラインに参加させなくするのは───」 ノート 『だめだ』 イセリア「じゃあヒロラインじゃなくて、別の空間で修行させるとか!」 ノート 『だめだ。ゲームはするが“修行”はしない』 イセリア「うあーすごい納得しやすい答え。じゃあ、えっと……」 ノート 『無駄だ。今はこの現状の先が平穏であることを願うことしか出来ん。      もちろん他の手も打ってはいるが、さて。それが役に立つかどうかは別だが』 イセリア「他の手って……オリジンとかイドとかが居ないことと関係ある?」 ノート 『ある。空界側や天界側の面識のある者にも、      同じような空間で鍛錬を積んでもらっている。      繋ごうと思えばフェルダールと繋ぐことも出来るだろう。      今は空界の方が時間の経過が早い。そのうちに目一杯の鍛錬を積んでもらおう』 イセリア「積んでもらうのはいいとして。いつ頃フェルダールと繋ぐの?      いくら強くなってもらっても、      現実世界での戦が始まったらどうしようもないよ?      ヒロミチくん、フェルダールで死んじゃうんでしょ?」 ノート 『それについては考えがある。今は目一杯楽しませておけ。      空界と天界側の方はフェルダールと違い、修行のみの空間だ。      娯楽がない分、修行だけに打ち込める。      フェルダールの者よりも強化速度は間違い無く速い。      それらをいつ巡り合わせるか……それは、考えがあると言った通りだな。      わざわざ言うほどのものでもないだろう』 イセリア「気になるから教えて?」 ノート 『断る』 即答でした。 ……まあ……いっか。 ヒロミチくんの観察でも続けよう。 ずっと見てれば、何処に注意するべきかくらい解るかもしれないし。 と……目を移した先では、既にヒロミチくんと清水くんが巨大な蟻王国で暴れていた。 さっきまで海を走ってたのに……どこまで元気なんだろうか、原中という集団は。 【Side───End】
───ややあって、辿り着いたるはバトルアントたちが住まう超巨大蟻塚。 そこで、準備をする間も無く襲い掛かるはバトルアントども! そしてもちろんこちらも準備などする必要もなしと、血気盛んに襲い掛かる! キュバァアンッ!! 中井出「イィイイイヤァッ!!!」  ヴミンバァッガァアアアアンッ!!!! バトルアント『ギギャアーーーーーーッ!!!』 手の平に込めた火属性の初級魔法を、バトルアントの腹に押し当てて吹き飛ばす! 擦れ違い様に引っ掛けるように当てると、ブロリーチックで素晴らしいです。 RX 『我が右足に雷よ集え……超電子キィイーーーック!!』  ヂガガガガガォオオオンッ!!! バトルアント『ギャーーーーーッ!!!』 向こうの方では清水がライダー状態に慣れるため、様々な技を使用して遊んでいる。 俺は……レベルアップで自然に覚えられる魔法以外はなにも知らない状態だが、 少しでも上の魔法を覚えたらそれを主体にバクレツさせまくっている。 いやぁ!火属性魔法でも爆破できるっていいなぁ! 中井出「確か魔法ってのは詠唱さえちゃんとしてれば完成するんだったよな……よし!     大地の咆哮!其は怒れる地竜の双牙!グランドダッシャー!!」 ジークムントの鞘に納めておいたテオスラッシャーを手に、 魔法を封入したのちに地面に突き立てる! するとそこを中心に大地が波立ち、やがて───まあその、衝撃だけが地面に通ると、 地面に隠れていた蟻のバケモノどもが大地へと吹き飛ばされる! その数は───うあ……数えたくもねぇほど居る……! でもその大半は魔法のダメージで地面に落ちるなり塵になり、 辛うじて生きてたヤツも清水によって屠られていった。 いや……魔法ってスゲーワ。 特にテオスラッシャーに封入してからやると、属性強化スキルも付加されるから強ぇ強ぇ。 相手地属性モンスターなのにやっつけちゃったよ。 まあ無駄にTPはある俺だから、連発だってお手の物……であってほしかったんだけどね。 生憎と俺ってば“ディザスター”の所為でTP消費が5倍なんだよね。 だからあんまり連発できやしねー。 でもこりゃ面白いぞ、式しか使ったことがなかった俺にとって、魔法とはまさに神秘だ。 けどやっぱ─── バトルアント『ケギャーーーッ!!』 中井出   「おおっ!?」 すぐ背後から飛び出した蟻が、俺目掛けて爪を振り下ろしてくる! ソレを、背腰に備えた鞘をジークフリードの柄を殴ることで回転させ、ガギンと弾く! バトルアント『ギッ!?』 中井出   「きゅっ……急死に一生!まさかほんとに弾けるとは!」 そんな偶然に心からの感謝を! そして貴様には等しき地獄をヘイルトゥーユー!! 中井出   「ボディッ!!」 バトルアント『《ドバァン!!》グギィッ!』 まず腹に痛烈な一撃……これで相手は動けない。 これぞ黒船バラード流喧嘩殺法……あとは顔面殴り放題。 でも俺は喧嘩しに来たわけではないので、蟻の首根っこを腕で引っ掴んで丸め込むと、 それを肩に担いで跳躍! 中井出   「ビッグアップルドライバー!!すぅうりゃぁああああっ!!」 バトルアント『ギョギェェーーーーーーーッ!!?』 ドゴォオオオオンッ!! そのままラグビーのタッチダウンのように地面に叩きつけ、 目を回したそいつをタコ殴りにして昇天させました。 その際ゴリリと拳を噛まれたりしましたが。 ううむ……どうして俺ってこう、スマートに勝てないかね。 バイオ『大切断!!』  ザゴォオッフィィインッ!!! そしてそんな僕をよそに、向こうの方ではバイオライダーに二段階変身した清水が、 幾多の敵を大切断一発で滅ぼしてるのが見えた。 仮面ライダーアマゾンの技だったな、あれは。 や、強ぇえ強ぇえ。 俺も負けてられんな、よし! 中井出「見せてくれる!俺のとっておき!───アイテムマグニファイ!!」 まずソーサラーリングにアイテムマグニファイを! そして火属性として引き出したそれをテオスラッシャーに封入! さらにそれをジークフリードに結合させて、準備完了! ヤケクソになって一気に攻めてきた蟻どもを前に、剣を───振るう!! 中井出「だぁああああありゃぁあああああああああーーーーーーーっ!!!!」  ゾギンッ─── 一番最初に刃が当たった蟻。 感触から言えば舞い降りた紙を引っ掛けたような違和感を一瞬感じた程度で─── あとは速かった。 胴体をなんなく切り裂き、その横に居た蟻も後ろに居た蟻も、 武器の長さと能力を思う様利用して破壊し尽くした。  ゴバガガガガガガォオンッ!!!! 斬った先から爆破し、その爆破で他の蟻も破壊。 連鎖的に次々と砕いては、自ら回転を続けて剣を振り回し続けた。 やがて俺の体が二回点を終える頃、俺は剣を逆手に持って振り上げ、 一切の躊躇もなく地面へと突き刺す!!  ドズゥンッ!───…… 中井出「あれ?フレイムウォールがでねー」 本来なら突き刺した瞬間、俺を中心に地面から炎の壁が吹き荒れる筈だったんだけど。 やべー、調子に乗って斬りすぎて属性効果が切れちまった。 そりゃあそこまで敵巻き込んで爆発すりゃ、十分すぎるくらいの効果はあったわい。 現に周りの敵の大半が消えてるし。 ソーサラーリングでの属性付加攻撃は消費が無いくせに滅茶苦茶強い。 けど2分に一回っていうアイテムマグニファイの誓約と、 エジェクションだのなんだのをしなけりゃならない面倒くささがある。 素のまま放てればどれだけ楽か……くそ、早く呪い解除したいなあ。 でもそれまではこの状態で出来る最高の楽しさを追い求める! 魔術師ってことで、多少の属性行使は可能らしいのだ。 ほんと多少だけど。 現にジョブ経験値が蓄積されたお蔭で覚えた魔法には、 地から然までの系統の魔法が揃っている。 地から然ってのは地、水、火、風、雷、氷、光、闇、元、然のこと。 元素までは元素の宝玉のお蔭でOK,然はナギーとの契約において取得。 時、死、無はこれに含まれません。バナナがおやつに含まれないように。 懐かしいなぁ、そういやガキの頃の遠足とかには大抵、 美味威棒を全額分買っていってたなぁ───じゃなくて。 中井出「イィイイヤァッ!!!」  コフォォッフィイボッガァアォオオンッ!! バトルアント『ギャーーーーッ!!』 ともかく、属性行使はとても楽しいということが今こそ理解出来る! 剣士で言う武器を振るうだけみたいな能力、 いわばTP消費を必要としないものがあるんだが、 これは手の平に属性を込めて放つってだけのもの……なんだが、これがまた面白くて。 然の属性を込めて投げるとブロリーのエネルギー弾みたいで面白いんだよね。 属性色に変色するのがステキです。おお、魔術師は捨てたもんじゃない。 ……まあ回路の都合上で魔法のほうは、使えてもせいぜい下級中級魔法程度だけど。 上級魔法とかをやろうとしても、ランクが下がってしまうのだ。 実際さっきのグランドダッシャーも、 地面は波立たずに衝撃だけが走るショックウェーブにランクダウンしたし。 それ以上の魔法を使うには、どうしても空界の回路が必要になるってことだ。 式を使う場合も同様に空界の回路、法術は天界の回路、鎌操は冥界、神術は神界と。 地界の回路でそれらをするには無茶がすぎるんだそうな。ていうか不可能。 ゲームだからという理由をあてがっても、せいぜいで中級。 通常じゃあ下級でも使えるだけマシなんだとか。 つくづく地界の回路って悲しい。 しかしそんな地界の回路にも利点がひとつだけあります。 それこそが、すっぴん状態を保つにはどうしても必要な要素なのだ。  地界の回路の利点!それは───順応性!! 人とは“慣れ”という特種スキルを産まれながらに持ち、 それを生かすことで日々を生きてくるのです! 故に制限は存在するが、どの世界の能力も広く浅く程度なら行使可能! 故にすっぴん!……っていっても使えるのはほんのちょっとの魔法と式程度。 ゲームの力を借りなきゃそれすら出来ないのが地界の回路さ。 でもすっぴんを使いこなすには、地界の回路一本の状態じゃないと不可能なんだとさ。 それはきっちりノートン先生に注意された。 だから人間をやめるような事態やジョブに巻き込まれた場合、すっぴんは消滅する。 故に……っつーか元々しないけど、俺は人間をやめるような行動だけは絶対にせんのだ! 俺にあればいいのは地界の回路のみ!俺は地界人としてこの世界の高みへと辿り着く! 高み!それ即ちこの世界での楽しみの全て! やれることはまだまだ残っている!俺の冒険は───始まったばかりなのだ! ……というわけでTPが尽きました。 調子に乗って魔法使いすぎた……いくら下級魔法だからって、 消費5倍状態で撃ちまくってりゃあそりゃ無くなるわ。 中井出「だが負けん!我が右手に微量の雷属性よ宿れ!     サンダードラゴン素材で雷系強化も万全!───雷神魔破拳!!」 飽きることなく迫るバトルアントを、手に込めたちょっぴりの雷属性の光球でナックル! それは技術スキルの補助もあってかまあまあの一撃となり、 バトルアントを軽く吹き飛ばした。 ……雷じゃあこんなもんか……やっぱり火属性に勝るもの無しだな。 ボマーがあるだけで、威力の幅があんまりにも違う。 他の属性にも追加効果が欲しいもんだが……ぐおおだめだ! 属性攻撃が主体となってしまった今、滅茶苦茶属性系の武具が欲しくなってきてしまった! 火で言うボマー、風で言う鎌鼬みたいなものはないのですかトニー! 中井出「ええい構わん!俺にはステキな相棒が居る!」 構うものかと構えたのは当然ジークフリード! それを手に、魔術師でありながら敵の軍勢へと突っ込んでゆく! 中井出「ぬぉおおりゃぁああああっ!!!」  ザンゾガザフィゾフィバギャゾギャバッガァアアンッ!!! アントども『ゲキャアーーーーーッ!!!』 スキルが属性系主体となった今、両手剣やフルスイングスキルは封印行きだが、 それでもジークフリード自体の攻撃力が下がったわけではない! +3000オーバーのこの威力……とくと知るがいい!! バイオ『提督〜!少しは魔法使いらしい接近戦とかしたらどうだ〜!?』 中井出「魔法使いらしい接近戦とな!?…………───マジカルソード!!」  ズゴォシャアアッ!! バトルアント『ギョァアアアーーーーーーッ!!!!』 振るう剣の軌跡が蟻の甲殻を砕き、 胴体の肉を裂き、内臓を抉って真っ二つにし、その場にブチマケたのちに滅する! 素晴らしい……なんと素晴らしいマジカルソード! 中井出「説明しよう!マジカルソードとは……まあその、     名前を叫んで敵を全力で斬りコロがすマジカルアタックである!」 バイオ『名前だけじゃねぇか!!』 中井出「おだまりなさい!マジカル付ければなんだって魔法なんだよ!     見たまえこの威力を!硬い甲殻も一刀両断!」 バイオ『や……それは提督の武器が強すぎなだけだってばさ』 中井出「だって精一杯育ててきたもの!強くなければウソさ!     そう!僕は武器を!ジークを信じてる!」 命を預ける相棒だ、信じなくて如何にする! おお僕の相棒!素敵な相棒!呪いにかかっていようが、僕らは相棒さ! ……や、俺がジークにしてやれることなんてほとんどないんだけどさ。 俺ばっかり命救われてて……ほんとごめんなさい。 中井出「はぁ……ふぅ」 いやいや落ち着け。 してやれることはほとんどないが、 そのほとんどないことを自分はしてやれているつもりだ。 だから信じるのだ博光よ。 僕らは───一心同体だ! 中井出「接続(アクセス)、我が(シン)───」 と、そんな時に思い出したのがかつての晦。 ラグナロクと意識交換をして、彰利を打ち負かしてたあの場面を、 俺は静かに思い出し……自分も出来ないもんかと実行していた。 と言っても、ジークの中にあるまともな意識といえば…………レオンくらいなわけで。 まさかギガノタウロスと意識交換をするわけにもいかず、 俺は器詠の理力を解放して意識を沈めてみた。 途端に痛む頭……これは回路の問題だ、いくら身体を鍛えたところでどーにもならん。 ノートン先生に言わせれば、 地界人が無機物の意志を受け取れる能力を持つこと自体が稀だという。 いや、よしんば持っていたとしても扱えるものじゃねーとのことだ。 俺が扱えるのはほんの偶然のお蔭だ。 彰利が冥界から持ってきた鎌……あれをジークに合成したお蔭にすぎない。 結局のところ、俺は武器がなければなにも出来ないわけで─── 全世界中最も弱い回路を持つ地界人だ、それも仕方ない。 だが、なんの基本能力もない地界の回路だからこそ、広く経験が積めると僕は思ってます。 中井出「ん、ぬっ……《ビキィッ!》あだぁっ!?」 深まる頭痛!だが構わぬ! 試すことはなんでも試す!さあこの先にいったらどうなるの!? 見せてくれそのパンドラの箱の先を! 頭痛の先にはなにがある!?死!?死ですか!? 否!そう考えて決め付けるのはあまりに安直! ならば試そう原ソウル!! 中井出「ハイここでいいセリフ!《ズキィ!》痛い!     じゃなくて───紫の槍に宿りしレオンの意志よ……!     我が呼びかけに応えろ……!《ズキィッ!》いたぁい!!」 結論、痛いもんは痛い。 だがもう少しで届きそうだ───これはいける! コツさえ掴めば頭痛を感じるより先に届くかもしれん!今めっちゃ痛いけど! 中井出「来いっ……レオン!来いっ……こっ……来てぇええええっ!!     痛い痛い痛い!痛いのほんと!だから来て!早く来てぇええええっ!!」 清水 「ぜはー!ぜはー!て、提督っ……俺もうだめっ……!     能力限界ってやつが来て変身が解けっ……てなにやってんの提督……」 中井出「レオンを呼んでるの!イタコのように!」 清水 「イタコ……?イタい子の間違いでは?」 中井出「誰がイタい子だコノヤロー!!こっちはこれでも必死なの!     頭痛いの我慢して意識の手ェ伸ばしてるの!     なのにこの子ってば手を取ろうともしないのよ!     死した私が今さら何故立ち上がれようかとか言ってさ!     守護竜戦の時、呼びかけに答えてくれたじゃない!     だから今度だって───うおお無視ですよこの人!」 清水 「提督……蟻の大群を目の前にしてとうとう頭が」 中井出「イカレてないよ!!なんでそんなこと言うの!     レオンを呼んでるって言ってるでしょォオオ!!?     ジークの中に意識伸ばしてレオンと話してるの!     ジーク自体とはまだ話は出来ないけど、強い思念が残った武器とは出来るの!     だからこうして───無視すんなぁああああっ!!!     どうしてキミはそうなの!ほんと死んでもガンコなんだからァアア!!     え?そいつらくらい俺でも倒せるだろう?     そうだけど試したいからやってるんだよ!いいからチェンジ!     出来るか解らんけどチェンジ!ね!?     ……そうそう、最初からそう言ってくれればよかったんだよ……え?     な、なにぃっ!?うまティー一杯で手を打つ!?……同志よっ……!」 清水 「………」 ハタから見たらアブナイ人な俺。 しかし俺は、意識の中で意志を同じくする同志を見つけたのだ。 知るがいい万物の皆様方……うまティー好きに境界などないのだ! 中井出「《ヂッ……ヂヂヂヂィイイッ……!》づっ……う……!?』 意識が希薄になる。 だが気絶するのとは違い、俺はここに居て同じ景色を見ているのに、 その意識自体がどこか気迫だった。 つまり……気迫でない“俺”の現在は“俺”以外が使っている、というわけで─── 俺じゃない俺ってのは、この場合……レオンってことになるのか。 レオン「……これがお前の体か。なるほど、無茶な戦いをするだけあって、     身体は鍛えられているほうだな。……無駄な部分が多すぎるが」 中井出『失礼な!戦闘しながらついていった筋肉なら、戦闘向きの筋肉に違いねー!』 レオン「効率というものを考えろと言っているのだ……     これでは俊敏な動きなど期待出来ないぞ」 中井出『俊敏性はステータス移動でどうにかしてください』 レオン「勝手な男だ……だが、実体の感触も持って久しい。     思う様、暴れさせてもらうとしよう。───解除(レリーズ)」 レオンが俺の体を使い、ジークフリードを双剣化させる。 そして、清水が今までを抑えてくれていた蟻の軍勢へと軽く疾駆し、 低い大勢のまま一閃を走らせる───!! レオン「高く飛べ!清水!」 清水 「へっ!?お、おぉっ!イェッサー!!」 その一閃が清水へと当たるより先に清水が跳躍し、 そのすぐ下を、間隙を縫うようなタイミングでジークムントが走り、蟻の足を斬り滅ぼす。 すげ……タイミングがほんの僅かでも遅れてたり速かったりしたら、 清水の足が飛んでたぞ……? 清水 「ちょ、おわっ……!?」 レオン「さらにだ!鞘を使え!飛んで敵の後ろを叩け!」 清水 「飛んでる最中にンなこと言われたって!ええいどうとでもなれどちくしょー!」 グッ───ダンッ! さらに清水が俺の腰にある巨大な鞘を踏み台に、 高く遠く跳躍し、蟻どもの背後へと飛んでゆく。 それを確認するや、足を斬り滅ぼされたことで倒れ伏せようとする蟻どもに、 次いでのジークリンデの一撃───!!  ギパパパパァンッ!! 左手でジークリンデを振るい、 その遠心力を以って右手のジークムントで後方より来る敵を薙ぎ払う。 しかし回転するのはそこまでだった。 グッと込めた力で振るった剣を返し、 剣の軌道の外から襲い掛かる敵目掛けて双剣を振るう!  キフィィイインッ!! 鳴った音はまるで、鋭い鈴の音色のようだ。 硬い甲殻を切り裂いた筈なのに、こんなにも透き通った音が鳴り、 気づけば迫っていた蟻は両断され、塵と化していた。 レオン「───馬鹿げた機動性と武器の軽さだ……     斬れ味など、まるで水に落とす匙ではないか」 それはよく出来た喩えだった。 水に匙を通すこと自体に、そうそう抵抗力などあるわけがない。 それと同様にジークムントとジークリンデは、 既にバトルアントくらいならば剣を押し当てるだけでも斬れる斬れ味を持っている。 それを振るうのだ、斬れない道理はないだろう。 レオン「ふっ───!」 レオンの戦い方は、実に無駄のないものだった。 俺の力任せで大雑把なものに比べて、なんと美しいことか。 が───面白味には欠けた。 ううむ、なまじ剣の達人ともなると、 こんなことは出来て当然と思えてしまうのだから悲しい。 これ、本当に俺の体で動いてるの?動きが別人チックなのですが。 でも参考にするつもりなんててんでありゃしねー! だって自分のやり方で戦わなきゃ楽しくないもの! 中井出『ククク……レオン、レオン……!罪深き汝の名はレオン……!』 レオン「突然なにを言い出す!」 中井出『いや、耳元で囁く悪魔にでもなってみようかと。や、案外退屈で』 レオン「どこまでろくでもない男なんだ貴様は……」 中井出『望めばどこまでも。そしてレオンよ……貴様の太刀筋は素晴らしいがつまらぬ!     どうせだからもっと力任せに行ってみない?』 レオン「なんだと……?」 中井出『貴様の剣技は偽りの恩人から叩き込まれた王国剣技……!ならばそれから脱し、     好きなだけ暴れるのもいいんじゃないかグオッフォフォ……!』 レオン「む……」 レオンが僕の甘い囁きに傾き始める。 だがそうならないように意志をしっかり持とうとしている───! 中井出『クカカカカ……!無駄だ無駄だ……!その身体は俺の体なんだぜ……!?     お前がどれだけ抗おうが、俺の体に染み付いた原ソウルがそれを許さねぇ……!』 レオン「お、お前はっ!     敵を倒したいのか私を悪魔の囁きでどうにかしたいのかどっちだ!」 中井出『ククク、この博光は常にその状況で出来る限りの楽しみを探す修羅よ……!     そののちの結果がどうであれ、全力で楽しめればそれでいいのだ……!』 しかし悪魔の囁きか。 言いえて妙というか、まったくその通りというか。 レオン「王がどのような男であろうが、育てていただいた恩は確かにあるのだ。     私はそれを忘れない。私が勇者の血を引いていようが、     その能力を引き出すためには相応な場所での鍛錬が必要だった。     そして私はそれに恵まれた。なにを不満に思うことがある。     お前にとってのこれが偽りであろうとも、私にとってのこの剣技は真実だ!」 中井出『───!』 いっ……粋ッ……!! なんという雄々しさ……なんと見上げた忠誠心……! 俺は彼の真っ直ぐな心に、強く胸を打たれた……!!  ……でもそれとこれとは関係ないので蝕むことにした。 レオン「《メリメリメリメリ》ぐあああああああ!!」 中井出『ククク……!さあ、本能を解放しろ……!     今の俺は貴様よりも内側……つまり我が深淵のイドに住まう阿修羅よ!     故に貴様を内側から操れる!     手ェ伸ばしても貴様が掴まなければ交代できなかったのとほぼ同じ!     さあ!思う存分、貴様の中の本能を暴れさせるのだ!     及ばずながら、我が心の巴里が貴様の裡にシャンドラの火を灯そう……!』 レオン「くっ……な、めるな……!私は、騎士としての誇りと、     竜に育てられた者としての竜族の誇りを同時に担う者……!     こんな毒意識に、意志を奪われたりなど……!!」 中井出『ぐおっ!?なんという意志力だ!この博光の洗脳を弾くだと!?     おのれちょこざいなぁあああああっ!!!!』 レオン「《メキキキキ!!》ぐわぁあああああっ!!!     ぐっ……!いい加減、に……あき、らめろ……!     私は、易々と意識を奪われたりなど……せん……!!」 清水 「おぉい!───ったく、人にバトル任せてなにやってんだよ!     もう敵蹴散らしたぞ!?……いや、つーかほんとなにやってんの提督」 聞こえた声にハッとすると、敵を背後から撃ち下したらしい清水がそこに居た。 見れば敵などもう居ない。 おお……さすがにこのレベルともなれば、武器がなくても十分強いか。 岡田にマスカレイド渡しちまったから今はテブラデスキーさんなんだよな、清水のやつ。 レオン「し、清水か……!お前のことはこいつの記憶で知っているぞ……!     し、しかしどういう男なのだこいつは……!     私に戦いの場を任せたと思えば、急に私の意識をのっとろうと……!」 清水 「へ?や、だからさ、えーと……なに?一人物真似?」 俺の姿で苦しむレオンを見て、清水くんが首を傾げる。 そんな彼に、俺はレオンの……ああいや、俺の口か。を使って、現状を伝えた。 清水 「提督よぉ……」 そしたら物凄く素晴らしいものを見る目で見られてしまった。 いや、呆れてるのか? 清水 「俺、意識交換バトルものとか見たことあるけど、     元の宿主が交換先の人格を蝕むなんて状況見たの、これが初めてだぞ……?」 だからこそやったんだが。 いやあでもこれ面白いね、人格の裏に潜む悪ってのはこんな気分なのかもしれん。 貴重体験だ。 清水 「はぁ。で、提督?どうするんだ?」 レオン「……なにがだ、と言っているが」 清水 「天使だよ。なんとかするって約束しちまっただろ」 レオン「ああ、あのことか。中井出博光、約束を破ることは私が許さんぞ。     必ず果たせ。でなければ物だけを頂戴した貴様は真実魔王だ」 中井出『魔王ですから構いません』 レオン「貴様なっ……!なんならここで自害してやってもいいのだぞ!?」 中井出『好きにするがいい……!貴様が痛いだけで、我は何度でも蘇る……!』 レオン「……清水、どうか私を救ってくれ……。この男は真実魔王だ……。     私は今までここまでの奔放者を見たことがない……」 清水 「ああ、なんか今のお前見てるだけで、     状況がどれほど捻じ曲がってるのかがよ〜く解るよ。     姿は提督なのに物凄く真面目に悔しがってる。ここはどんなカオス空間ですか」 さて、レオンをからかいつつも思い出してみる。 グラウベフェイトー山の結界内で巻き起こった、聞くも赤面語るも赤面の物語を。 【ケース540:中井出博光(再)/ラブラブ愛してねぇ】 ───さて、現在結界内集落、サクルパールック。 サークル……輪っかとパルックを混ぜたような名前の集落だ。 パルックは言わずと知れた蛍光灯のことだな。 天使の輪ってあれに似てるとつくづく思う。 男天使「ここが結界内集落、サクルパールックだ。     と、説明をしている場合じゃあなかったな。さあシェーラ様をあちらへ───」 清水 「おぉっと動くな!動くとこの姫さまの顔が大変なことになるぜ!?」 男天使「なにっ!?」 馬鹿正直に集落まで案内をしてくれた男……名前知らないから男天使は、 俺と清水が不穏な動きを……つーか言動を発したことに大層驚き振り向いた! そこには、よく書ける炭を片手にシェーラ様を捕らえている我らの姿が! 男天使「き、貴様らまさか!」 中井出「そのまさかよッッ!案内ご苦労だったな男天使よ!」 清水 「ワハハハハ!この場は我ら素晴らしき2人が制圧する!」 天使達『ざわ……』 我らの言葉に、集落に居た天使たちがざわざわとどよめき、 こちらへと集まって来た。 ついでに言えば気絶していたシェーラ様も目を覚まし、状況を確認するや暴れ出した。 はっはっは、やんちゃなお嬢さんだ。 天使 「貴様ら、なにが目的で───!」 中井出「はい、実はこの世界で月の光が最も集束する場所と時刻を知りたいのです。     それを教えてくれるなら僕らは歓喜します」 天使 「月の光の……!?それを知ってどうする気だ!」 清水 「おっと、あなた方がそれから先を知る必要はありません。     あなた方は私がした質問に答えてくれればいいのです。     そうしてくれればなにも危害を加えたりなどしませんよ。フリーザ様に誓って」 嬉々として皆殺しにしそうな誓いだった。 ……と、ここで耳に違和感。 tellか?誰だよもうこんな時に。 中井出「俺だ!瀬戸内だ!」 ……と、出てみれば、相手は彰利ンところの豆ボーヤ。 ロビンズイコンが欲しいとかジョブ爺を発見したとかでいろいろあり、 ともあれ僕らは姫さんというかシェーラ様のフェイスに散々と悪戯書きをしつつ、 月の光の集束する場所と時刻の情報を入手したのでした。 で─── 清水 「いいかぁ愚民(クズ)どもぉぉぉぉ!!!!     このお方がこの大陸の新たなる魔王、中井出博光様だぁあああっ!!!     貴様らが生きていられるのも魔王様のお蔭!!     つまり同じ猛者たる我ら原中のお蔭なのだぁああああ!!!!」 天使 「お、横暴だ!もう知りたいことは知ったのだからいいだろう!     出て行ってくれ!それともまだなにか目的があるのか!?     なにが目的だったらそんなことをのたまうとっ……!」 中井出「世界平和!」 天使達『嘘をつけ!!』 いきなり否定されてしまった。 中井出 「えっとさ、貴様ら亜人族……なんだよね?」 シェーラ「そうですわ……ですがそれを知ったからといってどうするおつもりですか?」 今は既に天使たちに守られるようにして立っているシェーラさんが応えてくれる。 ちなみに顔の炭は既に取られている。 あれはあれで、ゲバル風般若ペイント(ホモ風味)チックで素晴らしかったんだが。 どうする?さて…… 中井出 「仲間になろう!」 シェーラ「貴方頭大丈夫ですの!?      これだけのことをしでかしておいてよくもまあそんなことが言えますわね!」 中井出 「なにぃ!?これだけのこととはなんだ!」 シェーラ「わーたくしを殴ったことですわ!忘れたとは言わせませんわよ!」 中井出 「忘れた!……言ってみただけだから覚えてるけどね?」 シェーラ「ッキィイイイイイ!!!いちいち勘に障るお方でーーすわーーーーっ!!!」 中井出 「だが勘違いしてもらわんでもらおうか!      あの瞬間、既に貴様はこの博光に手袋を投げつけていた!      それはつまり決闘の開始を意味する!それで殴った俺が何故咎められる!」 シェーラ「うぐっ……そ、それは……」 中井出 「貴様も高貴な一族の末裔ならば決闘の気高さを知っている筈!      だというのに負けたからといって難癖をつけるとは焼死!……焼死?      笑止!笑止だ笑止!貴様の誇りとやらは所詮そんなもんか!」 シェーラ「な、ななななぁあんですってぇえーーーーーっ!!?      あああああーなた!わたくしをわたくしをわぁあーーーたくしを!      一度ならず二度にも収まらず幾度までも馬鹿にしてぇーーーーっ!!」 中井出 「………」 なんつーかこの天使の喋り方聞いてると、丘野くんの娘を思い出して嫌なんだが。 俺、あの娘苦手だし……。 シェーラ「大体!貴方は魔王なのでしょう!その魔王がなーぜわたくしたちを      仲間にしたいなどとおっしゃられるられらぁーーーーっ!!?」 男天使 「シェ、シェーラ様!どうか落ち着いて……」 シェーラ「わーたくしは落ち着いていますわ!───結構!      ではそこの魔王!もう一度決闘を!      負けた方は勝った方の言い分を聞く!それでどうです!?」 中井出 「ぃやだぁ」 清水  (健に似てる……!) シェーラ「なっ……何故ですか!理由を───理由をおっしゃってください!」 中井出 「え?断ってみたかったから!      ……決闘ね!?OKやろう死ねぇえーーーーーっ!!!」 シェーラ「ひぇっ!?おおお待ちなさい!合図がまだです!」 中井出 「《ギョキキィッ!!》なにぃ!?なんだよもう!早くしてよ!」 シェーラ(っ……あ、危ないところでしたわ……!なんて危険な人なのでしょう……!) もう一歩踏み出せば拳が届いていた……が、決闘とは神聖なるもの。 いくら悪に身を置くこの博光でも、開始もせずに決闘相手を殴るわけにはいかん。 ……純粋に敵だと思うなら殴るけど。 シェーラ(なにか、なにかわたくしが優勢に出来る決闘方法で……!      そ、そうですわ!レイピア!レイピアならばわたくし、      誰にも負けない自信がありますわ!) ザザァッ! シェーラ「魔王!わたくしと───レイピアで勝負ですわ!」 中井出 「え?やだ」 シェーラ「勝負は先に相手をなんでですの!?」 中井出 「こっちこそがなんでである!何故貴様の望む勝負方法を飲まねばならぬ!      勘違いするな貴様!この博光は決闘の合図を待っているのであって、      勝負方法が決定されることを待っているのではないわ!」 シェーラ「うくっ……」 中井出 「さあ合図を!俺は相手が女子供だろうが容赦しねー!      でも出来ればそのー、平和的に会話しません?」 シェーラ「っ……か、会話……ですの?魔王が?」 中井出 「いや、あの……俺魔王とか言われてるけど、ただの人間ですから。      だからそう怖がる必要はないよ?」 シェーラ「に……人間……!?魔王じゃ……魔族ではないのですか!?」 中井出 「うむ!生粋の人間である!ヒューマンである!」 まいったかコノヤロー!とついでに叫んでみた。 無意味に握りこぶしにした両手を挙げて。 それを見るや、天使たちはざわざわと小声で話し合いを始め─── シェーラ「ほっ……ほほ……おーーーっほっほっほっほっほ!!      結構結構!ではレイピアで勝負だなどと言いませんわ!      なにかおかしいと思えば!ただのまぐれ!偶然!ほほほほほ!?      よろしいですわ!どこからでもかかって《バゴドゴォン!》きなさぶわ!?」 成敗した。 もう容赦の一切もせず、よろしいですわと聞いた瞬間に体を捻っておりました。 振るった拳は的確に彼女の顔面を捉え、 スローモーションではとてもお見せできないようなクリティカルヒットを 我が右手に齎したもうた。 天使 「き、貴様……!」 中井出「おおっとストップ!これは決闘であり、ヤツはよろしいと言っていた!     そして俺が殴ってこいつが気絶!なんの文句がある!     おおっと言っておくが女を殴るとはとか言うならいくら温厚な僕でも怒るぞ!     決闘の場に!戦場に男女……否!老若男女の差別などあってはならぬわ!     戦場に立ち、攻撃する意思を見せたからにはそいつは敵だ!     故に俺は相手が戦う意思を見せたなら、誰であろうが容赦しねー!」 清水 「これが魔王と呼ばれる所以です」 男天使「ぐっ……」 中井出「というわけで勝った俺から貴様らに命令を下す!心して聞くのです!」 天使 「負けは負けだ……ここで負けていないと言えば、     我らの種族が下に見られるだけ……なんだ、言ってみるといい」 中井出「うむ!───仲間になって?」 天使 「なに……?」 清水 「提督てめぇ!そりゃ命令じゃなくてお願いだろうが!」 中井出「あれ?……な、ななな仲間になりやがれ!」 清水 「提督……頼むからここぞって時くらいビシッてキメてくれよ……」 中井出「うるさいよもう!」 どこまでもキマらない俺だった。 そんな俺を見て、天使たちは再びざわざわとどよめき始める。 天使 「仲間……?なってどうしろというのだ。     下に降ろして見世物にでもするつもりか」 中井出「馬鹿をおっしゃるでない!俺は仲間を見世物になぞしたりせぬわ!     ……あ、ごめん、やる時もあるかもしれない別の意味で。     だが今はしないと言っておこう!     えーとですね?実は私、然の精霊ドリアードと契約をしたヒューマン、     原沢南中学校が提督、中井出博光という者。     私は今、守護竜と戦いつつ属性の解放を目指し、日夜楽しいことを求めています。     元々不死王ジュノーンの不死を破壊するための属性の解放だったのですが、     まあいろいろあって他の目的もいろいろ現れまして」 天使 「ふむ……?」 中井出「その過程で亜人族……つまりアイルーやドワーフ、     妖精といった方々と仲良くなりまして。だからあなた方もどうでしょうと。     あ、私現在、ナギー……ああ、ドリアードのことですが、     彼女とともに自然要塞という、     ここでいう天空城めいたものに乗って旅をしています。     そこにアイルーもドワーフも妖精も居るのです」 男天使「なんだと……それは真実か?」 中井出「ウソ言ってどーするの!こんな場面でウソなんて……いや、言うかも」 清水 「提督よぉ……」 中井出「ごめんなさい……締まらない俺でごめんなさい……」 天使 「ふむ……」 情けない表情を浮かべているであろう俺を見て、天使たちは顔を渋めた。 あんまりに情けないから信用してやるべきじゃないか、とか聞こえる。 あの……その受け入れ方だけは勘弁していただきたいのですが。 男天使「私は断る!何故我々天使族が、     貴様らのような野蛮な人間どもの仲間にならねばならん!」 中井出「負けたから」 男天使「そうだった!……ぐっ……!そういうことなら仕方が無い……!     約束は約束だ……!」 中井出「……僕、こいつとは仲良く出来る気がする」 清水 「俺も」 馬鹿素直っていうんだろうか。 俺、こういうヤツ嫌いじゃないよ? 中井出「ちなみに名前は?」 男天使「ガリエルだ」 中井出「……うわぁ」 清水 「うわわぁ……」 ブが無いだけで、なんて天使っぽくないんだ……。 痩せた姿と照らし合わせると、ああ、ガリエルだって納得できる名前だ……。 ブがあればガブリエルだったのに、ブがないだけでなんて貧相な名前になるんだろうか。 と、ともあれこで仲間だ。 中井出 「よろしくガリレオ」 ガリエル「ガリエルだ」 一応の握手をした。 どういう経緯があったにせよ亜人族の仲間が増えたのだ、いいことだ。 ガリエル「だが油断はしていない。      私たちにはお前らを信用する要素が何一つとしてないのだからな」 中井出 「信用か……そりゃ困った」 誰かに信用されるってのは、これでかなり難しいものだ。 信頼ってのは日々の積み重ねがものを言う。 それを、我らは原中で知ったのだ。 大丈夫大丈夫なんて軽い気持ちは浮かばせない。 一時の出来事で得た信頼なんて、それこそ一時の出来事で崩壊してしまう。 俺達はそれを、互いが互いに無遠慮になることで、他人同士っていう溝を希薄にしてきた。 信頼してるし信用もする。 からかう時には全力でからかい、心配する時は全力で心配する。 俺達は互いに日々を全力で楽しむことを誓い合った同志なのだ。 だから信頼、信用に関しては深いものでなければならぬ。 その分、関係上の接し方は酷く軽いわけですが。 じゃなきゃカタッ苦しくて疲れるしね。 信用信頼は深く、関係は軽く。それが僕らが学んだ信頼関係さ。 天使 「私たちもお前たちに敵意がないのなら、賛同しても構わんが……     私たちはここから降りるわけにはいかない。     ここに居る理由が私たちには存在し、     それをやめるわけにはいかないからこそ結界まで張ってここに居るのだ」 中井出「おじーさん、名前は?」 天使 「ソモンという。ここの長にして、シェーラの祖父だ。     さっきはよくもまあ、可愛い孫の顔に悪戯書きなぞをしてくれたな」 中井出「はっはっは、褒めても拳くらいしか出せないぞ?」 清水 「殴る気満々だな、おい……」 それ以前に褒められてないけどね。 さて、そんなことよりも……ここから降りるわけにはいかない理由とやらを訊かねば。 中井出「それで、降りられない理由って?」 ソモン「うむ。私たちは何日かに一度、     守護竜と呼ばれるグレイドラゴンに貢物を差し出す。     何故かといえば、私たちはそのグレイドラゴンに生かされているからだ」 中井出「……なんとな?」 そんなことはグレイなDからは聞かなかったぞ? ああ、DってのはドラゴンのDね? やつは貢がれる覚えなぞないって風情だった筈だが……ハテ? ソモン「言ってしまえば一方的なものだ。     グレイドラゴンの方に、貢がれる覚えなぞきっとないのだろう。     だが我々はそのグレイドラゴンに命を救われた。     いや、救われていると言うべきだ。     我々は元々、月の守護竜とともに別の浮遊大陸に住まうものだった。     だが月の守護竜がデスゲイズに殺され、我々までもが危機に陥った時。     それを救い、結界を作ってくれたのが元素の守護竜、グレイドラゴンだ」 中井出「あ……なるほど」 月の守護竜とともにってところでピンと来た。 アノヤロウ、月の守護竜のポイント稼ぎのために天使たちを守ろうと……。 でもアテが外れて、月の守護竜は呪いとともに死亡。 残されたのは、天使からの的外れの感謝の念だけだった……と? いや、感謝の心に的も外れもあるもんか、感謝は感謝さ。 ソモン「我々は古き頃、人間の勇者とともにバハムートと戦った。     その戦いは凄まじく、我々は力の大半を使い果たし、弱体化した。     産まれてくる者は力を大して持たず、成長してもそれはあまり変わらぬ。     そうなれば、どうなるか解るだろう。     付近のモンスターにも敵わず、逃げ惑うしかなかったのだ。     それを救ってくれたのが月の守護竜であり、     のちに救ってくれたのが元素の守護竜。我々はその感謝の心を忘れない。     先祖の頃より続いてきたことなのだ、今さら何故、我々の代で終わらせられる」 中井出「何故って、そうしたいから」 ソモン「そんな軽いことではないのだ。我々は───」 中井出「だからさ。大丈夫だって。     グレイドラゴンも何故貢がれるのか解らんとか言ってたし。     それに、その月の守護竜の忘れ形見も、ここにちゃんと残ってる」 天使達『なにぃ!?』 スッと引いた村人の服の中から、ピョーイと飛び出す小さな卵。 それはピョイピョイと俺の肩を、耳を跳ねて頭の上に留まった。 ソモン「つ、つつつ月の守護竜さまの忘れ形見……!?本当か!?本当に───はうあ!     感じる……!神々しいまでの月の力を……!我ら天使族の力の源たる月の力を!     お、お前!これを何処で!」 中井出「光の塔の遙か上空に安置されているのを発見しました!最強!     というわけで!僕の仲間になって自然要塞に来てくれる!?     それともここで、必要ないとさえ言っているグレイドラゴンに貢物をし続ける!?     あ、なんだったらグレイドラゴンに許可得てくるけど……」 ソモン「ぬ……疑問に思っていたが、お前は竜族の言葉が解るのか?」 中井出「一応。集中すれば草花の声だって聞ける変人っぷりさ!」 清水 「そんな彼が僕らの提督です」 天使 「不憫な……」 中井出「なんでそこで哀れむの!?違うよ!確かに変人って言っちゃったけど、     それは普通の人からはちょっと外れてるって意味で!     違うってば!僕は変態じゃないよ!     仮に変態だとしても、変態という名の紳士だよ!」 天使 「そうか。ならば変態という名の紳士と呼ぶことにしよう」 天使 「いや、変態という名なのなら、変態と呼ぶべきだ」 清水 「つーかもう変態紳士でいいんじゃないか?」 中井出「清水テメェエエ!!     なに一緒になって人のこと変態に仕立て上げてんだァアア!!」 清水 「きっと面白いに違いないと思った故です!サー!」 中井出「ならよし!」 天使達『いいのか……』 天使たちから哀れみの目で見られてしまった。 ……なんかもう俺ってこの世界じゃそういう位置づけなんでしょうか。 中井出「それで、どうするのだ。この博光は貴様らの意見次第では如何様にも動くが」 清水 「そこで白骨化してみてくれ」 中井出「死ぬよ!」 ていうか白骨化ならもう死んでる。 まるでいつかの仕返しをされているようだ。 いつかって言っても、そう時間は経ってないわけだが……ああ、思い出したら腹減った。 そういやあのワサビ以外、俺まともなメシ食ってないじゃないか。 ソモン「ふむ……解った。     先ほどから妙に力が沸いてくると思っていたが、その卵のお蔭だったのか。     よし、お前がグレイドラゴンからの許可を得てくれたならば、     我々はお前の仲間となろう。いや、正式に言うのならば然の精霊の仲間にだ」 中井出「それでも良し。ナギーの仲間は俺の仲間だ。俺は貴様らが裏切らない限り、     俺も裏切らないことをここに誓おう」 ソモン「それは面白い。我々の信頼度が試されるところだな」 ニヤリと笑むソモンさんは、これで結構状況を楽しんでいるようだった。 天使の寿命がどれくらいなのかは知らないが、長年続いた結界暮らしが終わるんだ、 少しくらい気分を高揚させてもバチは当たらないと思う。 改めて見てみても、この結界内は随分と狭い。 こんなところで何年何十年と暮らすなんてのは、とてもじゃないが俺には無理だ。 やってやれないことはないだろうが、息が詰まるという事実だけは否定できん。 中井出「と、その前にちょっとやっておきたいことがあるからまた後で。     行くぞ清水ニ等!夢にまで……いや、別に見なかったけど、     ともかくジョブチェンジだ!」 清水 「サーイェッサー!!つーか面倒だからここでドロップアウトしてけば?」 中井出「なにぃ!?い、いや、それはさすがにそのー……」 天使 「ドロップアウト?なんだそれは」 ソモン「ここで出来ることならばしていくといい。我々が拒む理由はない」 中井出「なにぃ!?い、いや、それはさすがにそのー……」 いや、だってドロップアウトだぞ? ドロップアウトっていったら……その、やばいだろ、いろいろと。 ───だがここで引き下がるは提督の恥!なんかもう引き下がった方が恥はないだろうに! 俺は!俺はその一時の過ちにさえ面白さを求め、それに手を伸ばしてしまったのだ! 中井出「見さらせこの俺の生き様!!」 清水 「うぇえっ!?て、ててて提督!?本気でやるのか!?」 中井出「誰もが出来ぬというのなら!やってみせよう原ソウル!!     知るのだ清水二等……!これが、常識を破壊するということだ───!」 取り出すロビンズイコン! 構える!俺! それを見る天使たち! ク、ククク……!あ、足が震えてやがる……!武者震いってやつか……!? この博光ともあろう者がなんたる無様……いや、俺だからか。 だって裸!裸だよ!?こんな大勢の前で裸って! しかも中には姫さんとかも居るわけで──────マテ。 今僕はなにを思いやがりました?姫さんも居るからやらない? 中井出「上等じゃねぇかコノヤロウ……!」 清水 「ええっ!?やっ……なんでいきなり殺気出してんの!?」 俺は敵であれば老若男女問わずに殴りかかる修羅よ! ならば!男女差別をせぬのなら!何故今ここで恥ずかしがる必要があろう! ───恥ずかしいからに決まってるだろうが! やっぱ恥ずかしいよこれ!だが知れ!これが───これが常識を破壊するってことだ! 中井出「ロビンズイコン!使用!」 ゴシャーーーーーン!! 天使達『ぬおっ……!?』 清水 「うおっ!まぶしっ……!」 体から光が放たれる───もうあとには退けない。 だが俺は満足だった。 恐らく何処に誰もが出来ぬであろう偉業を、俺は自らの手で発動させた……。 そうだ……ジョルノ、それでいい……。 くだらん常識を破壊し、この乱世を目一杯楽しむ……それこそが勝利なんだ……。  ガンゴシャバサバサドシャガシャンッ……! やがて、光の中でその場に落ちる装備……! そして、それを慌てて取ろうとするよりも先に消えゆく光───! 俺はこの時、管理者のあまりの無慈悲さをなによりも呪うこととなった。 シェーラ「キャッ……キャーーーーーッ!!?」 中井出 「キャーーーーーーッ!!!」 シェーラ「キャーーーッ!!キャアアーーッ!!」 中井出 「キャーーーッ!?キャーーーーッ!!!」 シェーラ「キャアアアアアーーーーーッ!!!!」 ドロップアウトから実に数秒。 俺は、産まれて何度目かは忘れたが、本気で泣いた。 Next Menu back