───ラーメン戦争/前編───
【ケース58:霧波川柾樹/サウザンドノーズサクリファイス……って怖ぇえよ!!】 凍弥 「えー、みんなをこの朝食に招いたのは他でもない。     本日を以って友の里は……ガキどもに譲ることとなった!!」 ざわ…… 柾樹 「なっ───い、いきなりなんてこと言うんですか叔父さん!!本気ですか!?」 凍弥 「おう!本気も本気、アルティメット・マジモードだ!!」 柾樹 「そんな……紗弥香さんひとりで鈴訊庵をやっていけるわけないじゃないですか!!」 凍弥 「そこはホレ、お前が紗弥香とくっつけば」 柾樹 「お断りします!!そんなエサで釣るみたいな方法、紗弥香さんが可哀想だ!!」 凍弥 「カッタイ頭してるなぁ……誰に似たんだ?」 来流美「ウチのダンナでしょ。あの人、コレと決めたら頑固だから」 凍弥 「なるほど。それに、アレもあるしな」 来流美「───凍弥」 凍弥 「……っと、悪い。軽く言っていいようなことじゃなかったな」 柾樹 「?」 まただ。 叔父さんと母さんは時々こうやって、俺から目を逸らして話し合う時がある。 最近は無かったことだけど、それも叔父さんか母さんか誰かが『アレ』と呟いた時だ。 凍弥 「けどさ。せっかくこうして集まってるんだ。もういい加減───」 来流美「そうした方がいいって思った時、わたしがツンツン髪かモミアゲさんに頼むわよ。     ……あの時、力になってやれなかったけど、一応親なんだから」 凍弥 「……そか」 柾樹 「……叔父さん?母さん?」 凍弥 「さて!……そんなわけで意見のある者は挙手!!」 悠季美「はい」 凍弥 「おお悠季美か。なんだ?」 柾樹 「………」 叔父さんは、叔父さんらしくない曖昧な態度のままに話を無理矢理逸らした。 俺はいっつも『アレ』のことが気になっていたけど─── 隠しているってことは俺が知っていいようなことじゃないってことだ。 だからずっと、深入りしないようにしていた。 悠季美「わたしも柾樹さんと同意見です。わたしだけでお母さんの喫茶店と     お父さんの旅館を受け持つなんて無理な話でしょう」 鷹志 「そこんとこはホレ、お前が柾樹と結婚すれば」 柾樹 「鷹志さんっ!!」 鷹志 「あー、解ってる解ってる。怒鳴るな」 真由美「でもホント、柾樹くんになら悠季美を任せられるって思ってるんだよ?だって」 悠季美「お母さんっ!!」 真由美「あはは、口止めされてるんだった。ごめんね柾樹くん」 柾樹 「……とにかく。誰かと結婚とか、そんなの俺には解りません。     解らないのに誰かと一緒になったり結婚したりするのって、相手に失礼だ。     だってそれってまるで遊びだ。そんなの俺は頷けない」 豆村 「うーわー、ホントに言ってるし……」 柾樹 「?豆村?」 豆村 「いやいやなんでもない」 くっくっと笑う、隣の席の豆村。 俺はそんな豆村と、前の席で笑う刹那を余所に言葉を紡いだ。 柾樹 「大体、続行の方法はなにも結婚とかだけじゃないでしょう。     紗弥香さんを店長にしたり悠季美を店長にして、従業員を雇うなりすればいい。     もちろんそういうのだったら俺も喜んで手伝う」 刹那 「及ばずながら俺も」 豆村 「柾樹がやるってんならもちろん俺もだ」 凍弥 「ほう。で?お前らの将来の目標ってのはなんだ?」 柾樹 「保父さんです」 刹那 「俺はお袋の家出て親父ン所の服屋で働くつもりだ」 豆村 「K−1は稼ぎにならんっぽいから大工」 凍弥 「そっか。で、そんな仕事の中でどうやってこっちの仕事を手伝う気だ?」 柾樹 「努力と根性と腹筋でなんとかします!!」 凍弥 「………」 来流美「……どうしてそういうとこばっか凍弥に似るのよ……」 そんなこと言われたって知らない。 凍弥 「……あのな、柾樹。世の中理想論だけじゃ───」 悠季美「わたしは応援しますよ、柾樹さんのこと」 鷹志 「悠季美?」 深冬 「わ、わたしもっ、応援、します」 真由美「深冬ちゃん……?」 悠季美「将来に理想論が通じないことくらい、誰だって知ってます。     でも理想を持つ頃は罪じゃないでしょう。大体理想を描くなって言うなら、     凍弥さんは人間自体になにを描いて生きろって言うんですか」 凍弥 「人の話は最後まで聞け。今俺、何気にいいこと言う筈だったんだぞ?」 悠季美「嘘つかないでください」 即答だった。 凍弥 「鷹志、お前自分の娘にどういう躾をしてるんだ」 鷹志 「お前の日頃の素行の悪さの所為だろ。人の所為にするな」 凍弥 「なにぃ、俺は近所でも五本の指に入るほどの人格者だと有名なんだぞ」 来流美「そうそう、人格者って文字の頭に『変』って文字が付くのよね」 凍弥 「自分で言ってりゃ世話ないな……」 来流美「あんたのことでしょ!?」 凍弥 「と……まあ、そんなわけだ」 子供達『訳解りませんよ!!』 子供達って認識もどうかと思うけど、とにかく俺達は一斉に叫んだ。 鷹志 「お前らまだ凍弥って人間のこと解ってないなぁ。     こいつとまともに付き合ってたら散々っぱら振り回されるだけだぞ?」 凍弥 「騙されるな鉄郎!そいつは機械の体をエサにお前を!!」 鷹志 「訳解んねぇよ!!」 凍弥 「まったくだ!!」 それはこっちもまったく同じ意見だったわけだけど。 結局叔父さんはなにが言いたいんだろうか。 由未絵「えっと、つまりね?どうせわたしたちもこんな格好してるんだから、     手伝える時は手伝うから安心しろって言いたかったんだよ」 柾樹 「え……?」 由未絵「言葉の続きはこう。『あのな、柾樹。世の中理想論だけじゃない。     けど、理想を抱かなけりゃなにも目指せない。     だからお前はなんでもかんでも手伝おうとするんじゃなく、     自分がやりたいって思ったことだけをやってみろ。     譲るっつったってどうせ俺達も空界に慣れるまではこっちに戻ってくるだろうし。     だからあんまり気に病まないで存分に青春を楽しめ』って」 鷹志 「……さすが支左見谷。凍弥のことよく解ってる……つーか解りすぎ」 凍弥 「うむ。一字一句間違いなし」 総員 『何者ですかあなた!!』 その場に居た全員が由未絵さんを見て叫んだ。 ……当たり前と言えば当たり前だ。 凍弥 「ま、そんなわけだ。理想論がどうとかは言われるまでもなく言うつもりだった。     まったく……俺がキッパリと言えてたらビシっとキマったってのに」 来流美「チョークスリーパーが?」 凍弥 「違う!!つーかなんでチョークなんだ!!」 来流美「なんとなくよ。それより今日はどうするの?     もうこうして雑談して随分経つけど」 そう。 既に昼食は終わっていて、そろそろ昼になろうかという時。 散々談笑したりしてから叔父さんが本題を切り出したもんだから、 昼間で残り僅かしかない。 凍弥 「ああ。それなら俺に提案がある」 来流美「提案?」 凍弥 「ラーメン食い行こう!!俺のおごりだ!!」 その言葉に全ての民が喝采した。 そしてさらに─── 声  「まったれや」 凍弥 「な、なにーーーーっ!!?」 鷹志 「お、お前はーーーっ!!!」 中井出「ここは先輩の顔立ててもらうぜ」 柿崎 「ど、独眼鉄ーーーっ!!!」 清水 「フッ、閏璃……今の言葉、確かに録音させてもらったぜ?」 藍田 「奢りとあっちゃあ我ら原中、黙ってはいられん」 凍弥 「や、金なら腐るほどあるからべつに構わんが」 中井出「聞いたかヒヨッ子ども!今驕り主からの許可が出た!!     本来ならば原中大原則『奢りの時には遠慮はするな』を行使するところだが、     今回は真実遠慮は無用!!吐くまで食い続けることを目的とする!!」 総員 『サー・イェッサー!!』 中井出「総員、腹の虫は鳴かせているか!?」 総員 『サー・イェッサー!!』 中井出「間食などしていないだろうな!」 総員 『サー・イェッサー!!』 中井出「うむよし!ならばその状態を維持しつつラーメン屋へ行くのだ!!     その間の食事は一切許可せぬものとする!歯ァ食いしばれ!!」 総員 『サー・イェッサー!!』 中井出「女子軍とて遠慮は無用!太ることを気にするのであれば、     のちに晦一等兵に悩みを打ち砕くものを創造してもらうように!     故に恐れず大食に励め!!男どもも遠慮は無用である!!」 総員 『サー・イェッサー!!』 中井出「では兼ねてより行こう行こうと思っていた神降市のデパート内にあるという、     『ラーメン食堂』へと進軍を開始する!!     イェア・ゲッドラァック!ライク・ファイクミー!!」 ザザッ!! 総員 『Sir(サー)!!YesSir(イェッサー)!!!!』 ───悠介さんと彰利さんの知り合いの原中という名の猛者たちが、 この場に現れるや否や叫び続けた。 中井出「ところで彰利一等兵に晦一等兵、貴様らいつの間に」 彰利 「フッ……奢りと聞いたら黙ってられないのが我ら原中。     こんなこともあろうかと、提督に発信機と盗聴器を仕掛けておいたのだ」 中井出「お前もうちょっと提督敬えよ!!     兵に盗聴仕掛けられる提督なんて初めて聞いたぞ!?」 彰利 「俺も初耳だ」 悠介 「あー、すまん。急に彰利が引っ張り出しやがってな……」 ゼット「何故俺まで……」 彰利 「ゼットキミラーメン食ったことねぇっしょ?     ありゃ知っておかねば後悔する味だぜ?」 麻衣香「ねぇ晦くん。いくら食べても太らないように出来るってホント?」 悠介 「ん───ああ、できるぞ?     食べたものを代謝能力に変換する飲み物かなんかを創造して飲めばいい。     だから提督の言った通り、嫌ってくらい食ってもいい」 来流美「それを聞いたら黙ってるわけにはいかないわね……。     今日は珍しくも凍弥の奢り。     だったら凍弥の幼馴染としては喜んで食べまくんなきゃ失礼というものよ」 凍弥 「お前っていちいち口上が男らしいのな」 来流美「うっさいわねっ!!」 彰利 「そういや一度行ったきりで、衣川ラーメンにゃあ行ってないなぁ」 と───そんなわけで、結局みんなでラーメン屋に行くことになったのだった。 向かう先は神降市。 かつて、悠介さんと彰利さんが『後悔の旅』のために向かった場所である。 そして衣川ラーメンっていえば、彰利さんが猫の状態でラーメンを食べに行った場所の筈。 ともなれば─── 彰利 「よっしゃあそれでは皆さん“時操反転(プリーヴィアス)
”!!     やっぱラーメンといえば猫でしょう!!」 ───面白好きのみんなにしてみれば、こうなるわけである。 理屈は解らないけど、彰利さんにとってはラーメン屋といえば猫らしい。 猫舌を攻略できたことが思いのほか嬉しいのかもしれないと思った。 【ケース59:悟り猫/出陣!!神降市神降デパート神城ラーメン食堂へッッ!!】 トテトテトテトテ……カチチッ、ピー、ガシャッ、じゃりんっ…… ゾロゾロゾロゾロ……こ、こりゃまた……カシャッ、ピー……ドゴシャ! おごぇっ!! ザムザムザムザム……ガタンゴトンガタン…… プシュッ、シュ〜〜……ザムザムザムザム…… ───さて! 悟り猫「やってぇんきました神降市!!」 世界猫「……なぁ。わざわざ猫の姿のままで電車に乗って来る必要、あったのか?」 悟り猫「ない」 そげなわけで、友の里から皆様猫の姿でここまでやってきました!! 何故ってその方が周りの反応が面白いから! そして改札のところで提督が改札券を改札機の中に入れようとよじ登る際、 入れたはいいけど落下して脇腹を打ち、『おごぇっ!』と叫びました。 猫が脇腹から落ちる様はとても新鮮で、全ての猫から拍手喝采を送られてました。 柾樹猫「けど……彰利さん?」 悟り猫「ノゥッ!アイム悟り猫!」 柾樹猫「……悟り猫さん。二足歩行で歩いてる猫ってだけで、     物凄く周りに珍しがられてるんですが……」 悟り猫「堂々とせい。世界にゃきちんと、     ビックリ動物記でも紹介された二足歩行の犬だって居るんだ。     猫が歩いてなにが悪い。こちとらきちんとこの社会を生きる生き物だ」 柾樹猫「妙なところに説得力があるから困るんですよ」 だからでしょうか。 柾樹猫はそれ以上は訊かず、むしろ納得したように『うん』と頷いていた。 あれできちんと猫の立場ってものも考えとるのでしょう。 ほんに小僧に似て素直なんだかヒネくれてんだから解らん上にお節介とくる。 俺、ちょっとしたデジャヴというか……柾樹っちゃんの未来が心配ですよ? 悟り猫「さぁそげなわけで!これから神降デパートに行きますよ!     もちろんバスに乗車して」 イセ猫「ねぇツンツン頭……さっきから周りの地界人たちがさ、     『あれ、十数年前くらいに噂されたメイドを語る猫じゃねぇか』、とか……     なんかいろいろヒソヒソと話してるんだけど。なんなの?」 悟り猫「耳を貸してはなりません」 イセリア猫……略称イセ猫の疑問を無視して歩く。 何故って、僕らは腹が減っているからだ!! ───……。 ……。 ブロロロロロ…………………………ロロロロロ…… みさお猫「……行っちゃいましたね」 悟り猫 「ノォオオオオーーーーーーーッ!!!!!」 バスは来た。 確かに来たのだ。 だが人がおらず、猫だけが待っていたバス亭を無視するとそのまま走っていってしまった。 悟り猫「ちくしょう野郎ども追いかけるぞ!猫の速度───思い知らせてやれ!」 世界猫「まったく……!よしみんな!意地でもあのバスに乗るぞ!」 世界猫は珍しくやる気だ!! 総員猫『おうさー!!』 そしてみんなもやる気だった!! 世界猫はそんなみんなの意気を受け取ると、 世界猫「速度アップ+動悸息切れを無しにする霧がこの場の猫を包みます!弾けろ!」 と、理力を創造してダッシュを促しました! 提督猫『それでは総員!なんとしてもあのバスに乗ることを前提とし、     寝ても醒めても疾駆せよ!!イェア・ゲッドラァック!ライク・ファイクミー!』 ザザッ!! 総員 『Sir(サー)!!YesSir(イェッサー)!!!!』 そうなってからは速かった。 元々ノリの良い原中や、閏璃凍弥に振り回される中でそういうことになれた友の里連中、 さらに観咲雪音とホギッちゃんに振り回されることでノリに強くなった皆様、 そしてみずきに刹那に振り回される中で強くなった人々と、グレゴリ男陣が走る走る! そうして最後に残ったのは、 頭を痛めつつもみさお猫に促されたことで走った黒竜猫だった。 Next Menu back