───冒険の書220/後始末・序───
【ケース543:中井出博光/悪】 ツー……ツー…… 中井出「グオッフォフォフォフォ……!!」 愚か……実に愚かよ晦一等兵……! 岡田 「はぁ……ん。ここまで来りゃ大丈夫か。で、上手くいったか?」 中井出「うむ。見事晦に金をもらう約束をさせたわ。     もちろんきっちり録音済みよ、グゥエッフェフェフェフェフェ……!!」 畜音器を止める音を聞かれた時は焦ったが、見事に騙されおったわ。 金額はどうあれ、苦労せずに金が手に入るという瞬間がたまらんのだ。 嗚呼……受け渡しの時が楽しみでしょうがないッ……! 岡田 「それで、宝玉は壊すのでありますか?」 中井出「約束は約束だ。これをしなければ金は貰えないだろうし。     ……さようならギガブレイク。属性が安定を見せるまで、しばしの別れだ」 ゴソリと取り出し、手にした戒めの雷宝玉と元宝玉をゴシャアと破壊する。 これであとは火と光と闇か。 光宝玉は守護竜を倒してあるから、あとは探すだけだ。 問題は火と闇か……特に闇は遠慮したい気分っていうか……。 ほら、光天龍との戦いだってかなりボコボコだったわけで…… それを考えると、出来ればそのー、対となる闇の守護竜は後回しに───否!! そんな弱音をブチ壊すのもまた常識破壊! でもその前に、まずはナギーかマクスウェルと会おうと思ってます。 何故ってほら、魔法を使う筈が使えなかったことに関して、 ちょっと訊いてみたいと思ってるからだ。 岡田 「て〜とく〜!ボ〜っとしてると置いていきますぞ〜!!」 中井出「おや?おお、コレは失敬」 ぼ〜っとしてたつもりはなかったんだが……無意識って怖いね。 そんな自分を引き締めるためにも、すぅっと息を吸って、はぁっと吐いた。 見渡す景色は既に明るい。 雷雲は遠く、今の俺達はただただ蒼い空の下に居た。 近くに森林もあるし…… あそこならエィネにゲート作ってもらうことが出来るかもしれない。 中井出「エィネ、要塞へのゲートって作れるか?」 エィネ『はい、平気ですよ。丁度自然もありますし』 さらりと流れるような会話だった。 そんな会話だったからだろうか、俺達の行動も流れるようなもので、 特に意識したわけでもなく、そうするのが当然のように森林に入った。  ザァアア…… そこは、この暑い夏にはとても心地のいい場所だった。 吹く風が涼風となって、俺達を包んでくれる。 森を通る風は陽に当たらない。 だから森を通れば通るほど、それは涼風となって自然の中を巡る。 そんな風を浴びながら、ふと意識してみれば……吹く風に撫でられながら口ずさむ、 木々や草花の歌声が耳に届いた。 中井出「…………」 岡田 「やぁ〜涼しいなぁ……提督?」 エィネ『そっとしておいてあげてください。     今きっと、木々たちの歌声を聞いているんですよ』 岡田 「そうなのか?えと……俺も聞きたいんだけど。     なに歌ってんの?レッツゴー陰陽師?」 エィネ『あの……なんですかそれ』 中井出「そォだんッしましょー陰・陽・師!!」 岡田 「レッツゴー!!」 中井出「はいOK!んじゃーレッツゴーだ!」 岡田 「OK!さーレッツゴーエィ姉ェさん!」 エィネ『いいですけどね……それじゃあ』 サァッと風が吹く。 すると虚空に緑色の光が集束し、やがてゲートが展開される。 ……いつ見てもいいなぁ、この緑色の光。 俺って色は赤と蒼、黒と緑が好きなんだよな。 緑は……ブロリーのエネルギー色が第一印象で、 次にナギー的な色……然の色としての影響が高いと思う。 契約したからとかそういうんじゃなくて……なんつーのかな。 ……よし、喩える言葉が見つからんからどうでもいい。 さっさとゲートを潜ろう。 ───……。 ……。 というわけでゲートを潜り、妖精の世界へと降り立った我ら。 ……は、その場に集う妖精の一人からうまティーを購入すると、 レオンと意識交換をして飲んでもらった。 その時の感情をどう表現しましょうか。 そう、一言で言うなら─── レオン「生きていてよかった……!」 だ。 死んでるけどね、キミ。 ───……。 レオンの感動を胸に、自分の意思を以って自然要塞へと降り立った俺こと博光。 岡田くんはさっさと骨休み(食事)をするためにキッチンへと駆け、 俺はナギーに会うべく要塞の中を歩き回った。 ちなみにエィネは俺の服の中に潜って、月光竜の卵とともに眠りこけてる。 卵が眠るのかどうかは知らんが。 しかし……ナギーは俺のところに契約の指輪を介しての転移が出来るが、 俺は探さなきゃ見つけられない(普通は当然なんだが)というのは不公平な気がする。 まあ探すんだけどね。 中井出「ナギー。ナギー?」 一応声に出して探してみるが……居ない。 tellを飛ばしてみるが、応答もない。 ……ハテ、寝てるのか? よし寝てるということにしよう。 ナギーが寝てるなら別の精霊……マクスウェルだ。 中井出   「マックスじいさーん」 マクスウェル『全力で爺しているような呼び方はよせぃ……』 中井出   「ふぉうっ!?」 サブタイ:振り向けばそこに。 いつの間に後ろに居たのか、滅茶苦茶驚かされてしまった。 中井出   「オッ……お、おおじーさん……ちょっと訊ねたいことがあったんだ」 マクスウェル『ふむ……この老いぼれが答えられることなら言ってみるといい』 中井出   「うむ。実はこの博光、魔法使いというものになったのだが。        最初の頃は魔法が放ててたんだが、さっきやってみたら魔法が使えなくて」 マクスウェル『魔法使い?お前さんは剣士だっただろう』 中井出   「いろいろあって魔法使いになりました。        岡田くんが誰かをコロがしてくれたお蔭で、        現在魔法使いのジョブレベルはしっかりマックスですが」 マクスウェル『ふむ……?まあいい。魔法を使ってみるがいい』 中井出   「よしOKソイヤァーーーッ!!」 出せるわけがないなどと思わずに魔法を使用! ……するとモシャーンとあっさり成功する魔法。 それどころかその魔法の集束が最初に出来た魔力よりも明らかにデカい!! えぇっ!?なにこれ! マクスウェル『……ふむ、なるほど』 中井出   「なにこれ!?さっきまで全然だったのに!」 マクスウェル『結論から言うと、“お前さんは魔法なぞ使えん”』 中井出   「───エェッ!?じゃあこれなんなの!?」 手の平に集束した魔法をハイコレと見せて叫ぶように言ってみる。 と、マクスウェル老は長い顎ヒゲを一度撫でて、目を細めて言った。 マクスウェル『おぬしには魔法の素質がない。回路の“か”の字も無い。        その状態で魔法が使えるわけがない』 中井出   「そ、そうすか……じゃあこれは……?」 マクスウェル『魔法ではない、“マナ”じゃ。然の力で自然からマナを集めているのだ。        つまり、自然のない場では集められないということだのぅ』 中井出   「えと……じゃ、俺って」 マクスウェル『自然の力を借りねば魔法なぞ使えない、        何処までも中途半端な存在ということじゃの』 中井出   「………」 いやまあ……そりゃね、地界の回路なんてそんなもんでしょーよ。 でも逆に安心した感はある。 どこまでいっても俺は普通〜〜〜の人間だってわけで。 いいんだ……いいのさ、魔法が使えるって燥いだ僕は陽炎さ。 いいじゃないか、自然の力で魔法もどきが出来るってことが解ったんだ。 ジョブチェンジしても魔法が使えない魔法使いでもいいじゃないか……。 ゲームの中なのに、魔法使いなのに魔法が…… 中井出   「うぐっ……ふぐぐ……うぅうう……」 マクスウェル『相談されて本気で泣かれても困るんじゃがな……』 中井出   「泣きたくもなるわい!」 だってファンタジーで魔法に憧れないヤツなんて居ないだろ! 出来ることなら魔法使いたいって思うさ! でも俺は絶対に魔法は使えないっていうじゃない!そりゃ泣きたくもなるさ! 中井出   「うぐぐ……あのさ、マナを集めて放つのは魔法とは呼べないんでしょうか」 マクスウェル『魔法と呼ぶよりは技と呼ぶ方が適当じゃな』 中井出   「えっと……それってアトリビュートキャリバーみたいなものってこと?」 マクスウェル『おお、そうじゃな。それは解りやすい喩えじゃ。        剣に属性を集めて放つアレとお前さんのソレは実に近い』 中井出   「魔法じゃあ……ないんだよね」 マクスウェル『では訊くがのぅ。お前さんはアトリビュートキャリバーをどう思う?』 中井出   「技!スキル!消費無しのステキ奥義!」 マクスウェル『そういうことじゃな』 中井出   「…………」 ……魔法使い、やめよ。 もうジョブレベルマックスだし…… “魔法”じゃなくて“属性エネルギー弾”が撃てるようになったって考えれば…… 救われてください僕のファンタジーライフ。 い、いや、魔法が全てじゃない!惑わされるな俺! 今までだって戦士としてやってきたじゃないか! そうだジョルノ……戻るだけだ……ただ元に……! 中井出「んぐぐぐぐぐぐぐ……!《ミチチチチチ……!》バァアーーーッ!!」 ピキーンと脳内切り替えを完了した!気分。 そう、楽しみは一つじゃない! ファンタジーとはそれを許してくれる世界さ!幻想さ! 幻想が許される世界!超常が日常なのがファンタジー!! だからたった一つが悲しい出来事に終わったことを悔やむな俺! 悔やむ暇があるなら次の楽しみを探すのだ! 中井出「俺……次はモンクになるよ!     ……あ、ボツジョブはコンプリート扱いになってるんだっけ……。     じゃ、じゃあえっと……アーチャー!ジョブチェンジ実行!     ……つーかジョブ項目いじるのも懐かしいなぁ……」 困惑顔で首を傾げるマクスウェルを余所に、ナビをいじってジョブチェンジを実行! すると再び変わる武器の呪われた部分。 ……今回はありがたいことに、ミストルテインの矢、ホズや砲術王が解放されていた。 おお、これを弓代わりに戦えということか。 つーかあの、まさかこうなることを見越してこんな能力つけてたわけじゃないよね? ノートン先生?ねぇ、ノートン先生? ……まあいいや、えーと武器とジョブ状態はどんな感じになってるかなっと。  ◆技術スキル  ブラスト   :★★★★★☆/特種能力のチャージ速度が上昇  全てためる  :★★★★★☆/ためるの強化版 どんなものでもためることが可能  バリアブレイク:★★★★★☆/全属性ダメージが上昇  ホズ     :★★★★★☆/宿り木の矢 徒手空拳時にボウガンや大砲に変異  砲術王    :★★★★★☆/竜撃砲が発射可能 属性を込めた15秒に一発大砲  飛      :★★★★★☆/飛び道具系の技や投擲系攻撃力がUP  フロート   :★★★★★☆/浮遊石の力 強い風を起こせば空を飛ぶことも  人器     :★★★☆  /人に宿る潜在能力 様々なアビリティを引き出す  ◆使用可能ジョブアビリティ  剣士:鬼靭斬り(鬼靭モード) ハイパーアーマー、キャリバー(浮上)  魔法使い:テトラスペル、賢者の英知、エーテルドライヴ  弓使い:狙う、イーグルアイ(経験不足)、屠竜(経験不足)  *複合:マナ集束法(剣士+魔法使い)、集中(剣士、弓使い)、      集気法(剣士+モンク)、敵対心マイナス(剣士+魔物使い)、      ぶんどる(剣士+シーフ)  ◆10分アビリティ  マグニファイ:武器の潜在能力を解放。合成武器ならば、その分の能力も解放する。  漢神の祝福 :HPTP完全回復&STR5%上昇修正。  界王拳   :全ステータス上昇修正。体術による攻撃力が飛躍的に上昇。  泥棒根性  :回避率、速度上昇修正、ローバーアイテム成功率UP  取り込む  :CHR上昇修正。あなたの魅力で敵をしもべに。  *すっぴん状態では項目にある10分アビリティは全て使えます。   が、使う時は選ぶ必要があり、たとえばマグニファイを使った場合でも、   他の10分アビリティでも10分待たなければ使用できません。   ていうかもうすっぴん状態とか言わずあんたがすっぴんだ。   変身がどうとか言わないから好きにジョブライフを満喫して。 ……と。 とりあえず現在はこんな感じか。 て、うおお!キャリバーが浮上してる! ステキ!なんてステキ!何故!?───も、もしや人器のレベルが上がってるお蔭!? ……や、うん。これっていつの間にレベルアップするんだろうね。 ちょっと気になるよ僕。 中井出   「まあいいや、いつまでも引きずらない。        僕、前を向いていくよ。そしてかなりの比率で後ろを振り返るんだ」 マクスウェル『前を向いているのに後ろ向きな思考もどうかのぅ……』 中井出   「大丈夫!前向きなことには変わりないから!        前向きなヤツが後ろ向いちゃいけないなんて誰が決めた!        多分誰も決めてないから俺は向くよ後ろを!」 マクスウェル『そ、そうか。まあ……頑張るんじゃぞ』 中井出   「もちろんだ!……ところでじーさん、ナギーとシードはどうしてる?」 マクスウェル『ふむ。今は寝室で寝ておるが。何か用があるなら起こすぞい?        と言っても集中力をつけるために魔法を施してあるのでな、        起こすことはちと手間になって時間がかかるが』 中井出   「む……そりゃいかん。そのまま寝かせといてくれ。        別に用があったわけでもない」 マクスウェル『そうかそうか……これからなにをするのかは知らんが、        旅をするのなら気をつけるのじゃぞ。あまりよくない空気が流れとる』 よくない空気? …………おお、確かに。 意識しなけりゃ気づけないほどのものだけど、 自然がざわついてるっていうか……怯えてるのがなんとなく解る。 だが何かが起こるなら好き勝手に起こるがいい! それが面白いイベントならば受けて立とう! 中井出「ほいじゃーなーじーさーん!!俺これからちょっと危険な旅に出てくるー!」 穏やかに笑みながら髭を撫でるじーさんに手を振って、俺は歩を速めた。 さて……闇の守護竜は何処っていったっけ? いや待て、闇と戦うのなら光が欲しい。 俺はもう大半の属性を失ってしまっているのだ。 ならば光属性の行使が得意な誰かに……ホギー!? い、いやいやダメだ、ここで魔法に頼ったら負けな気がする。 中井出「べべ別にアンタに負けたわけじゃないんだからねっ!?《ポッ》」 遥一郎「うわっと!?な、なんだよいきなり!」 思考の最中、自然階段の途中で擦れ違った彼にツンデレ怒りをプレゼント。 そのまま擦れ違い、マイペースで階段を下りてゆく。 光属性……光属性か。 清水くんのリボルケインは光属性だ……が、 ライダーに慣れんとする彼はきっと協力しちゃくれねーだろう。 それどころか守護竜バトルと聞いて後退してしまうかもしれん。 恐怖はもちろんだが、どうせ戦うならライダーに慣れてからがいいという理由で。 そういう考えを前提にするならば、猛者ども以外がいいだろう。 最近猛者どもとばかり行動してるし……そうだな。 それ以外となると…… 中井出「…………あ、もしもし?僕博光」 声  『……待て、誰だって?』 考えてる途中でもtellを仕掛けてみた。 相手は相当驚いている……OK掴みはバッチリだ。 中井出「俺だよ俺!今から口座教えるから金振り込んで?」 声  『随分率直な振り込め詐欺だなオイ!!いくらなんでも先を急ぎすぎだろ!!     ……あ、あー……確か、原中の提督の……』 中井出「うん僕博光。貴様を光の精霊と契約せし未来人類と見込んでお願いがあるんだ」 声  『断る《ブツッ》』 ツー……ツー…… 中井出「……あれ?」 未来の凍弥くんにtellしてみたんだけど、あっさり断られてあっさり切られた。 だが懲りることを知らない僕は再びtellを発信。 声  『もしもし?霧波川───』 中井出「やあ僕博光」 声  『……このまま切ってもまたかけてくるよな?』 中井出「ククク……物分りが早いヤツは時として嫌いだけど今は大好きと言っておこう」 声  『どうしていちいち納得の仕方が通常から逸脱してるんだよ……で、なに』 中井出「これから闇の守護竜倒しにいくから力貸して?」 声  『守護竜って……ま、待て待て待て!そんなのと戦えるもんかっ!!』 中井出「大丈夫、お前は立ってるだけでいいんだ。あとは俺が貴様を後ろからザックリと」 声  『するなっ!!俺を仲間にする意味ないじゃないか!』 中井出「仲間!?とんでもない!貴様は敵でいてもらわなければ困るんだ!     敵じゃなきゃ不意打ちでコロがしても経験値もらえないじゃないか!!」 ブツッ!……ツー、ツー…… 中井出「……あれ?」 また切られた。 ハテ……なにがいけなかったんだろう……。 仕方ない、またかけるか。 ナルルルル…………ブツッ。 声  『はぁ……もしもし……』 中井出「やあ」 声  『………』 中井出「はあはあって荒い息遣いを出してほしかったか、そうか……すまん」 声  『嫌な察しかたするなぁああっ!!』 中井出「だが安心しろ!これは悪戯電話じゃない!」 声  『なおさらに性質が悪いんだが……!?』 中井出「じゃあしょうがない、悪戯電話に変更だ。     俺の悪戯電話は凄いぞ、なにせ学生時代、     彰利が泣いて謝ってきたくらいに陰湿で」 声  『解った真面目に話を聞こう!!悪戯電話じゃないもんな!』 中井出「ちなみにウソだ」 声  『ギィーーーーーイイイイイイッ!!!』 tellの向こう側がとても賑やかだった。 しかし俺が気を取り直すと相手もそうしてくれたようで…… というか長い長い溜め息のあとにいい加減観念してくれたようで、 諦めモード気味に話を聞いてくれる雰囲気をtell越しに放ってくれた。 中井出「ではえーと……闇の守護竜を倒したいから力貸して?」 だから率直に訊いてみることにした。 いい加減回りくどいのはなしだ、ストレートで先手先手じゃ! 声  『…………仲間になるって意味合いでなら、いいけど』 中井出「任せとけ!貴様の背中は俺が守る!何故なら貴様の背中は俺が狙うからだ!     貴様の背中に竜撃砲!!その瞬間は誰にも譲れない!!」 声  『切るぞ』 中井出「あぁああ待って待って待ちたまえ!解った解った、貴様を狙うのはやめるから!     狙うとしてもせいぜい飛鳥文化アタックで狙うくらいにしとくから!」 声  『それ以前に狙うのをやめてくれよ!なんだよ飛鳥文化アタックって!』 中井出「不満ならカップル撲滅奥義のフライング摂政ポセイドンにするが……」 声  『切るぞ』 中井出「待ちたまえよ!解った、狙うのは本気で無しだ!     お前を狙うのは闇の守護竜で、俺はその様をじっくり傍観してるから!」 声  『どっちが敵なんだよ!!』 中井出「俺にとってはなんかいろんな人が敵みたいなんですが」 声  『そうしてるのは自分だってことに気づいてないわけじゃないだろが……』 楽しいことしてるだけなのになぁ……何故このロマンが解らんのか。 どんな状況だろうと出来るだけ楽しいほうを選びたくなるのは、 原中じゃなくたってそうだろうに。 中井出「で、仲間になってくれる?」 声  『なるかぁっ!!』 ブツゥッ!!───……ツー、ツー…… 切られてしまった……なにが……なにがいけなかったんだろうか……。 くそう、理由は解ってるけどなんだか悔しいから悪戯メールでも飛ばしてやる。 お前のかーちゃん……デベソは普通だな。 よし、お前のかーちゃんビューティフル、と。送信……。  ピピンッ♪《メールが届きました》 中井出「速ェエ!!」 なんという返信の速さよ……! これが未来人のメール送信速度というヤツなのか……!? ……どれどれ?  『なにがやりたいんだあんたは!!』 …………ほんとなにがやりたいんだろね。 とりあえず楽しみたいんだけど。 ともかくこの様子じゃあもう彼の助力は得られまい。 じゃあ、フリーでどこの勢力にも入ってなさそうな…… それでいて、そう面識がないやつとか。 普通ならここで面識のあるやつを選ぶのだろうが、もはや普通では我慢がきかぬわ。 と、いうわけでtellに頼るのをやめた僕は、旅用アイテム一式を猫との相談の上揃え、 残りの金は眠っているナギーに預けると準備を完了させる。 そうしてからデスゲイズがなんぼのもんじゃーーいと、 魔剣クサナギをエジェクションして適当な仲間を求めてかっとばした! 中井出「おお……速い!!足で走るよりよっぽど速いぞぉお!!」 結論から言うと、魔剣クサナギは……乗り心地は乗りづらいの一言に尽きるけど、 その速度は相当なものでした。 これならばと、 その速さに任せて適当な町や村を目指してひたすら低空をかっとばしました。 ───……。 ……。 で…… 中井出「やあ」 俊也 「………」 佐知子「………」 夏純 「?」 今やトレジャーハンター界では有名人らしき、この三人に掛け合ってみました。 何故にこの方たちになったかといえば、 これから常闇の領域にあるっていう遺跡に向かうため、 ボデーガードを募集していたそうなので参上つかまつった。 やぁ、エトノワール城下に行ってみたらさ、酒場の壁に募集の張り紙があってね? 酒場のマスターに話を訊いてみればここが待ち合わせ場所だと言うじゃないですか。 もちろん僕は請け負った人だから、相手が彼らだってことは知ってたけどね? 相手の方はここに来るまで知らなかったわけで。 驚きまくってるね、うん。 中井出「ちなみに彼が皆様に忘れられて幾数日、ロドリゲスくんです」 ロド 『ゴエ』 城下町のルルカ牧場で発見した彼を、僕は暖かく迎えていました。 そういや最近見ないな〜とか思ってたんだが。 もしかして藍田くんがここで乗り捨てて以来、ずっと忘れられてたとか? ……や、まさかな。 俊也 「え、っと……ボディーガード兼サポート役を募集してて……」 中井出「うむ俺だ!」 佐知子「一緒に遺跡に潜ってくれる人、探してたんだけど……」 中井出「うむ俺だ!」 夏純 「?」 中井出「うむ俺だ!」 俊也 「ま、待ってくれ。アンタ魔王だろ?それに前、ここの城襲って……」 中井出「襲ったからって来てはいけないなどと誰が決めた!     いやむしろ決めてあっても俺は来る!だからよろしく依頼者サン。     ワタシ、ボデーガードのその名も中井出師父(チューせんせい)ネ」 佐知子「アンタ中井出とか言ったでしょ。なによそのヘンテコな偽名」 中井出「なんだと訊かれても偽名だとしか答えようがないのだがグムー。     まあ気にするな!今の俺はボディーガード!     金をくれるなら喜んで守るぞ!貴様らの腹部だけ!」 俊也 「ボディーってそのボディじゃない!守るのは俺達だよ!」 中井出「なにぃ!?だったら最初から用心棒とか書いておけばいいじゃないか!     気取って横文字にするから間違われるんだぞ!?     これからは“用心棒”もしくは“腹部守り隊”募集と」 佐知子「書くわけないでしょ!」 中井出「そ、そうすか」 ガォオと物凄い迫力で怒られてしまった。 これが姐御肌の女から繰り出されると言われる迫力か……! 俊也 「……ところで。周りがざわざわ騒ぎ始めてるんだけど。移動していいか?」 中井出「俺が西の大陸の魔王!中井出博光であるーーーーっ!!」 町人達『ヒ、ヒィイイ!魔王だぁあああーーーーーーっ!!!』 叫ぶと同時に、町の人々がキャーと逃げてゆく! おお、蜘蛛の子を散らすとはまさにこのこと! でも実際の蜘蛛の子散らしってすっげぇ鳥肌モンなので、見たいなんて思わないことだ。 俊也 「自ら正体暴露するんじゃねぇよぉおおおっ!!!」 中井出「ヒソヒソ囁くくらいなら!いっそ魔王と恐怖しろ!     俺魔王になってみて思ったけどさ、     みんな魔王だ魔王だって騒ぎすぎだ。魔王だって人の子なんだよ!」 佐知子「人の子な魔王なのはアンタくらいなもんでしょ」 そうですね。 中井出「それじゃあ呪われて試練中で魔王だけどヒューマンな僕ですが。     ボデーガードの件、合格ということでよろしいか?」 俊也 「ん……ま、あ……そうだな。人手に困ってるのは確かだし。     主に敵の掃除を頼んでいいか?これから向かう闇の遺跡、随分と敵が多いんだよ。     影に紛れて襲い掛かってきたりもする。薄情すると、一度行ってみて、     あまりに進みづらかったからこんなところで募集してたわけなんだ」 中井出「なるほど……承った。じゃ、契約完了の前金を受け取ろうか」 佐知子「だめよ。他の人はどうでもいいけど、あんたは金持って逃げ出しそうだから」 中井出「うわー、全然信用ねぇや。当然といえば当然だけど」 夏純 「?」 俊也 「自分で認めるなよ、そういうこと」 中井出「おお……冷静に人に注意を促すとは。貴様中々の男と見た。     確か、彰利たちの記憶ン中では───うむ、随分な都会ッ子だったな」 俊也 「そういうお前は自由奔放で楽しいことが何より好きな、     常識破壊が大好きな原沢南中学校の提督だったな。趣味はエロビデオ観賞」 中井出「中学高校、少なくとも空界に渡るまではエロビデオが好きだったな……」 あの頃俺は若かった。 自分の思考の悲しさなんて、あの頃の俺は知りもしなかったんだ。 もちろん今の俺はエロスではないか?と訊かれれば……まあ男だし。 だが既に好んでそっちの話はしない。 俊也 「そういえば……あんたらって好き勝手でいろんな話題を出す割りに、     あまり下ネタとか使わないよな」 中井出「む?うむ。あることがきっかけでやめたのだ。     それは今や原中の猛者ども全員が心に決めていること。     不意に出てしまう時以外は、極力そういったことは避けている。     ちなみにそういった理由の関連的な意味もあって、     我らは互いに漢の急所、女性の胸などを故意に狙うことも禁じ手としている。     もちろんそれ以外なら容赦なく殴る。     顔が命とのたまう男性の顔面も女性の顔面も容赦なく殴る。     もっとも、己の危機の時に急所がどうとか胸がどうとかなど考えてられんから、     そういう時は何処だろうと平気で殴るが……ってこの話はもうヨロシ。     闇の遺跡って何処だ?」 俊也 「闇の領域の中心だな。そこに大きな岩があって、     その下敷きになりかけの階段から中に入れる。     中は真っ暗だから、光を灯せる道具がないと何も見えない。注意してくれ」 中井出「そんな時はコレ!“た〜い〜ま〜つ〜”!《オゴ〜ン》」 バックパックから夜間行動用の松明と書いてたいまつを取り出した。 読み方変えると“しょうめい”って読めるんだから不思議だね。 俊也 「随分ボロボロな松明だな……取り出した時の効果音なんて     これから起こることを啓示しようとしてるみたいな絶望感溢れる音だったし。     今からでも遅くないから依頼の件、なかったことにしていいか?」 中井出「契約破棄は別途全財産を頂きますです」 俊也 「ゴヘェ!?別途どころの騒ぎじゃねぇ!!」 佐知子「まーまー落ち着きなさい俊也。     ちょっとあなた、そこまで言うなら……腕は確かなんでしょうね」 中井出「筋肉は普通!牙も普通!燃える瞳は現代のヒューマン!     その名は博光!バイオレンス博光!」 佐知子「……ようするにどこまでいっても凡人ってことね」 中井出「や……なんつーか武器とレベルが無ければ本気でただの人間なんで……」 俊也 「そんなのでよく魔王になんてなれたな。     けど契約したからには頑張ってもらうぞ?金はちゃんと払うから」 中井出「よおっしゃあどんと来い!」 契約成立だ! さあ、これから俺のアーチャーとしての旅が始まるぜ! マナ集束法を魔法使いジョブから手に入れたすっぴんな俺は、今や愉快な博光さんさ! 漢神の祝福も使えるし、属性行使アビリティもついてる! もちろんTPの続く限り初級中級魔法が連発可能なテトラスペルだって、 一分間TP無制限、詠唱破棄化の“賢者の英知”だって可能さ! ……魔法使えるわけじゃないから、あんまり意味ないけどね。 しかし“すっぴん”が永続変身能力でよかった。 まあ変身っていったって姿全然変わらないし、 どっちかっていうと追加能力みたいなもんだし。 ……言うまでもないけど、このすっぴん能力もDX変身腕時計を外せば無くなります。 私はそう、さまざまなアイテムや武具に支えられてこの世界に立っているのです。 実にゲームらしくて、俺は今最高の気分です。  ピピンッ♪《ボディーガードクエストが発生しました。        クエスト終了まで依頼者を守り通してください。        万が一依頼者を死なせてしまった場合、料金は1$も受け取れません。        依頼者がご苦労賃として$を渡そうとしても、謎のバリアで弾かれます。        代わりに成功した場合、成功報酬が上乗せになります。        この上乗せに依頼者は関係ありません。        上乗せ分はゲームマスターから支払われます》 ……おおう。 ゲームマスターから、って……つまり自然に手に入るってことか。 上乗せか……しかもゲームマスターから。 こんなものを見せられては、張り切らないわけにはいくまいよ。 けどそこに行く前に、戒めの光宝玉を壊さなければならんのだ。 そこんところの了承を得るために、俺は口を開いた。 中井出「すまんがちと寄りたい場所があるんだが、いいか?」 俊也 「ああ。準備は必要だからな。     俺もサチ姉ぇも夏純も、最終点検くらいしておきたいし」 佐知子「何か足りないものでもあるの?     バックパック、結構いろいろ詰め込んでありそうだけど」 中井出「や、ちと戒めの光宝玉を手に入れるために光の塔に行こうかと。     そのあとは浮遊大陸に行ってグレイドラゴンに話を通して───」 俊也 「それ既に準備じゃないからな」 そうかも。 だが俺は準備などと言った覚えはない。 しかし契約したってのにあまり待たせるわけにもいかん。 中井出「じゃあすまん、ちょっと行ってくるから。     そだな、速ければ10分で終わると思う」 俊也 「ほんとに速いな……俺も同行していいか?」 中井出「おお、契約者が一緒だとなんだか少し心が救われる。是非頼む」 申し出してきた彼の手をひょいと引くと、 エジェクションしたまま鞘に納めてたクサナギを宙に浮かせる。 そしてこれまたひょいと飛び乗ると、……なんつったっけ。 ああそうそう、朝月だ。 朝月も乗せて、いざ出発! 俊也 「おっ、おぉっ……!?浮くだけでも十分驚きなのに、飛ぶのかこれ!」 中井出「うむ!剣の先からジェット噴射!どこまでだって飛んでゆく!     望めば月まで行けるというのが原作の中での出来事だった」 懐かしいなぁヤイバ。 とまあそんなわけで、俺と朝月はエィネを迎えるべく、 再び自然要塞目指して飛翔するのだった。 Next Menu back