───冒険の書221/後始末・中───
【ケース544:中井出博光(再)/フォーティーフォーソニック】 ごしゃーーーーーー!!! 中井出「ヘイ到着っと!」 俊也 「はっ……速ッ……速いにも程があるだろっ……!     は、はぁ……は───うおおおおっ!?     なんだここなんだここなんだここぉおおおっ!!み、緑だ!     むせ返るくらいの緑の香りがっ……自然が!……っ……う、ぐっ……!     まるでっ……あの村みたいに綺麗で静かなっ……!」 中井出「や、いきなり感動されても。まあいいや、エィネ〜!」 既に猫の里に着いていた自然要塞に高い位置から入り込み、 着地するとそのままエィネを呼びつける。 するとすぐにひょこりと姿を現すエィネ───を、すかさずレンタベイビー!! エィネ『ひやぁあっ!?ひ、博光さん、なにを!?』 中井出「光の塔行って戒めの光宝玉を捜す!手伝って!?」 エィネ『既に飛び立ってるのに今さらお願いですか!?』 そう、俺は彼女を捕らえるや、 すぐさま出しっぱなしだったクサナギに乗ると風を裂いていた。 向かう場所は光の塔!……の、周辺か天辺か。 だって何処にあるか解らないし! 俊也 「出発するならするって言えよぉおっ!!」 そしてそんな僕らにしっかりついてくる彼が居た。 慌てて俺にしがみついたもんだから、今にも振り落とされそうな状態で。 中井出「すまん忘れてた!だが案ずるな!     契約したからには貴様を置いていくことなどせぬ!」 じゃないと金もらえないし! 乗り遅れたなら用事を終えてから回収するつもりだったさ、ロドリゲスと同じように。 ……えと、忘れてたわけじゃないよ?だって剣に乗せて飛べないじゃない。 だからちゃんと姐さんにアイコンタクトで夜呂死苦とお願いしておいたさ。 ───しまった! 姐さん(サチ姉ぇとかゆー人)は原メイツじゃないからアイコンタクトが通用しねぇ! …………やべぇ。 中井出「え、えーと……姐さん……サチねーさんの名前ってなに?」 俊也 「……?あ、ああ……身元引受人が居なかったから、     俺と同じ朝月ってことになってるけど……」 中井出「そうか!では───tell:朝月……サチ?」 俊也 「佐知子な、佐知子」 中井出「そうか!では───tell:朝月佐知子、と」 ナルルルル……ブツッ。 声  『もしもし?俊也?』 中井出「そうよ、わたし俊也《ブツッ》……あれ?」 物凄い速さで切られてしまった。 中井出「……いきなり切られたんだけど。なにがいけなかったんだろ」 俊也 「あんたの態度全てだろ」 エィネ『俊也さん、ですね?どう見ても男の方じゃないですか』 中井出「そんな常識をぶっ壊してみました。結果は散々でしたが。     思ったんだが、サチねーさんは友達居ないのか?     確認する相手が真っ先に貴様だとは」 俊也 「俺達の知り合いなんて、     この世界に来てるやつらの中じゃあ悠介と彰利くらいだ。     その中で最近悠介や彰利との交流も少ない。     だったら消去法で俺になるのは当然なんだよ」 ふむ、なるほど。 そういや彼女らの故郷でもある場所は、過去に既に荒地と化してるんだっけか。 それから彰利らに会うまで眠り続けてりゃ友達も居ないわ。 たとえ今までの時間があるにしても、 ここに来たのは朝月とサチねーさんとえーと……夏純、だっけ? その三人だけなんだから、友達居ないのは当然か。 エィネ『それにしてもこの剣、速いですね……。もう猫の里の山が見えません』 中井出「うむ、この博光もびっくりだ」 俊也 「剣で空を飛ぶって……はぁ、トレジャーハンターとしていろんな洞窟潜ったけど、     こんな剣見るの初めてだよ……」 それだけ地獄見てますから。 中井出「というわけで契約者で今を楽しくをモットーに冒険を続ける───     こんにちわ、中井出博光です」 声  『…………なんの用?』 中井出「いや……なんでそんな警戒した声で応対するの?     僕別にやましいこととか考えてないよ?ただ、ほら。ルルカ居るでしょ。     そいつのこと、俺が戻るまで面倒みてやってくれって言おうとしただけだから」 声  『ロド……って、ああこの子ね。大丈夫よ、夏純がじゃれついて遊んでるから』 中井出「そ、そうすか。じゃあよろしく。出来るだけ早く戻るから」 声  『あ、ちょっと待った。俊也に伝言お願い。知らない町に寄るようだったら、     腕のいい鍛冶屋が居るかどうか探しといて、って』 中井出「……鍛冶屋?……ちょっと待った。     まさかキミタチ、未だに武器レベル百の位までいってない?」 声  『そりゃそうよ。だって腕のいい鍛冶屋が居ないんだもの。     どいつもこいつもこれ以上は俺の腕じゃ、とかなんとか言って。     それでも鍛冶屋か〜っての」 中井出「ふむ……時に嬢、あなたの武器はレアウェポン?」 声  『あのね、わたしたちだって伊達にトレジャーハントしてるわけじゃないのよ?     レアウェポンの一つや二つ、平気で持ってるわよ』 おお……さすが名のあるトレハンさん。 中井出「ちなみに武器のお名前は?」 声  『邪壊銃フルウノングン。わたしの武器、銃なのよ。     で、俊也が槍で夏純がナイフ。俊也の槍の名前がサディングレイヴ、     夏純のナイフの名前がフランドレット。     サディングレイヴは攻撃時に追加で地属性魔法のグレイブがたまに発動。     フランドレットは……ナイフっていうよりはナイフケースね。     いくら投げてもナイフが無くならないのよ。     そのくせナイフ自体がどこかで繋がってるみたいで、     一本を鍛えれば取り出すナイフ全てが強化されてる。     ……あ、一本奪って合成させようとかは無理よ?     試しにやってみたけど、一定距離を離れるとナイフ自体が消滅するのよ。     もちろん合成させたって事実さえ消去させられるから、合成費用が無駄になるの』 中井出「ぬ、ぬう……そうすか」 訊こうと思ってたことを一気にベラベラと話されてしまった。 この人、もしや何度も物事を訊ねられるのが嫌い? しかしフルウノングンか。 あるとは思ってたけど、まさかトレハンさんが持ってたとは。 中井出「あ、待った。フルウノングンの特性聞いてなかった」 声  『闇属性や邪悪生物に特攻性能を持つ銃。     相手が闇側であればあるほど、威力が増すってやつよ。     別に光属性はないけど、そういう特性の銃なの』 中井出「へえええ……」 そりゃすごい。 彰利とか、死神たちにはかなりのダメージが期待できるわけだ。 そういやロディエルが使ってたフルウノングンに、晦も相当苦労させられてたしな。 中井出「む、長々と失礼した。朝月なら我のすぐ後ろに居るから、多分聞いてたと思うぞ。     伝言するまでもなかったからOK」 声  『そ?だったらもういいわね?今食事中なのよ』 中井出「あ……だから言いたいこと聞きたいことさっさと終わらせようとしてたわけね」 声  『そーゆーこと。じゃね』 中井出「うむ」 ブツッ……ツー、ツー…… ふむ、やはり世界は動いておる。 俺がいろいろやってる間、みなさまはずっとのんびりしてるわけじゃない。 そもそも俺、レベル上げられないから…… 追いつかれるのも追い越されるのもあっという間だし。 悔しいねぇ。 だがそんな悲しみも、ジークフリードを鍛えることで少しは癒される。 ……前に比べて、鍛えるために必要な金額が格段に上がってるけどね。 +3000にもなると、本当に鍛えるのが大変なんだそうな。 それこそ皇帝竜の工具を使ってもだ。 3021までいけたのもかなりギリギリらしく……つまるところ、 猫たちやドワーフの腕でもそろそろ限界ってことだ。 なにせここまで武器を鍛えた野郎なんざ、 長いフェルダールの歴史の中でも前代未聞にも程があるらしく。 その前代未聞を打ち破ってみせてくれと頼む俺も前代未聞だそうだ。 中井出「───、よし、見えてきたぞ」 俊也 「町か?」 中井出「光の塔」 俊也 「ほんとに速いなっ!!」 エィネ『話してるうちに簡単に着くって……ああ、もう目と鼻の先に……     とか言ってるうちに着いちゃいましたね。     えと……上です。ずっとずっと上から反応があります』 中井出「OK!しっかり掴まってろよー!?」 俊也 「よしこいっ!」 エィネ『はいっ!』 俺がどういう行動に出るのか予測出来たのか、 二人はどうしてとも訊かずに俺にしがみついてきた。 しがみつかれた当の俺は、乗っている剣を傾けると腕と足でしっかり固定し、 剣先から吹き荒れるジェット噴射を地面へと向け、一気に中空へと飛んでゆく。 俊也 「うわわ落ちる落ちる落ちる!」 中井出「なァアアにやってんのアンタァア!!     しっかり掴まれって言ってるでしょォオオ!!?」 俊也 「掴まってようがなにしようが重力と風にそう簡単に抵抗出来るかよ!!」 エィネ『ううう……っ!』 勢いよく上昇することで降りかかる空気抵抗と、 ぶら下がるようにしがみついてることでかかる重力が、朝月とエィネを苦しめる。 だが勢いを緩めることなく一気に上る! なぜなら、この世界は疲れ知らず。 こうしてしがみつけているなら、今後も振り落とされることなどないのだから。 中井出「これで頂上にカリン様が待ってたら、ズル無しでやり直せって言うんだろうな〜」 俊也 「ほっ……ほんとに居たらどうするんだっ!?」 中井出「一緒に下に降りてもらう!もちろん落下方法はフェニックスドライバー!     何もせず高みの見物だけしてる野郎が偉そうなこと言ってんじゃねー!     お山の上で踏ん反り返るだけなんてつまらねぇ人生送ってる野郎が、     夢見る冒険者を見下してんじゃねぇええーーーーーっ!!!     だから俺は決めた!もしもカリン様的な輩がこの先に居るのなら!     俺はそいつを塔の下へと放り投げようホトトギス!」 俊也 「それやったらそれだけ戻るのが遅れるって解ってるか!?」 中井出「うむ!忘れてた!」 俊也 「少しは後先考えろ馬鹿!!」 中井出「バーーーカモーーーン!!!後先なんてわざわざ考えてたら、     その瞬間だけに存在する楽しさを誰が堪能出来ようか!     そんな甘い考えでこの世界を謳歌できようか!いや!できまい!……反語」 俊也 「反語はいいから前……じゃなくて上見ろ上ぇえっ!!     余所見なんてしてたらバランス崩して塔にぶつかるだろぉおおっ!!?」 中井出「大丈夫!何を隠そう、俺は虚空サーフィンの達人だぁあああっ!!」 Gと風圧に負けず、クサナギを固定して空へと飛翔! その速度はやはり凄まじく、大した間も無く光の塔の頂上へ到達! 中井出「エィネ〜?」 エィネ『ここです!降りてください!』 中井出「えぇっ!?ここなの!?」 さらに上を目指そうとしてた俺に、意外な言葉が投げかけられた。 仕方なく、というわけでもなかったんだが───俺はクサナギの向きを変えると跳躍し、 クサナギを鞘に納めながら着地した。 エィネ『ここの……ここ、ですね。この窪みから強烈な精霊のマナを感じます』 中井出「……って言ったって。ここにソレがあるなら、レムはなんだって放置してたのさ」 見下ろす石床には、確かに窪みらしきものがある。 さらに言えばそこは少しひび割れていて、 そこから覗ける隙間の中には……妙なものに包まれながらも光り輝く玉が。 エィネ『どうやら守護竜の力でこの場に封印されていたみたいですね……。     強力な魔力の残留を感じます。     生半可な力じゃ傷さえつけることが出来ないくらいのものです』 中井出「な〜るほど……」 だからレムのセレスティアルスターとかでも壊れなかったのか。 俊也 「その、下で光ってるのが戒めの宝玉ってやつなのか」 中井出「恐らくそうだろうが───ふんっ!」 ガキョッ!ガキバキゴキキキキ……!! 割れ目にジークを突き刺し、強引に破壊して穴を広げる。 そうしてから光の玉をこの手に取って調べるを発動! ……すると、まさしく戒めの光宝玉であることが判明!最強! 俊也 「へええ……!綺麗なもんだな……!ちょっと見せてもらっていいか?」 中井出「ふん《ゴヴァシャア!!》」 俊也 「うわぁあーーーっ!!?」 手を差し出してきた彼の前で、光の宝玉を破壊してみせた。 おお……この驚愕の顔がたまらねぇ!(外道) 俊也 「な、なにしてんだせっかくの宝を!」 中井出「宝とは心外な!……いや宝玉ってんだから宝か。     だがこれは壊さねばならない宝だということは貴様も知っているだろう!」 俊也 「け、けどなぁっ!それなら少しくらい見せてくれたって……!!」 中井出「僕らには時間がないんだ!     早く用事を済ませて帰らないと姐さんが心配するだろう!     こんなところで迷ってる暇なんてなかったんだよ!」 俊也 「くっ……!!───って、なんで妙に緊迫した状況になってるんだ?     普通に話してた筈だったのに」 中井出「それが原中マジック」 言いつつクサナギを鞘から抜き放ち、再び浮かせ───ようとした、まさにその時!!  ちゅごぉおーーーーん!!! 中井出「オワッ!?」 俊也 「くわっ!?な、なんだぁっ!?」 ついさっきまで宝玉があった場所から、何かが飛び出してきたのだ! いや、なにかどころじゃない!これは───! エィネ『……!?ゴーレム!?それも、これは……!』 ソレは、ゴレームと呼ぶにはあまりにも形が明確だった。 土くれどころじゃない。 そう、例えば……機械が身体を象ったような姿の…… 俊也 「うぃいいっ!!?エレメントアンヘル!?」 中井出「し、知っているのか雷電」 俊也 「誰が雷電だぁっ!」 エィネ『エレメントアンヘルです!     古の時代、古代浮遊都市ノヴァルシオの技術によって造られた     “式紡ぎの天使”と呼ばれるものです!     属性の力を糧に動くアンヘルが、どうしてこんなところに……!』 中井出「ぬ、ぬう……ノヴァルシオって、物凄く聞き覚えがある名前なんだけど。     ところでトッスィー、貴様は何故このゴーレムのことを?」 俊也 「そりゃ……遺跡とか山ン中で、     たまに見かけたし……動いてるのはフレイムマウンテンのやつだけだったけど」 中井出「そ、そか。で、こうして出てきたってことは……」 俊也 「……穏やかに済むわけ、ないよな」 やっぱり。 ふと見上げてみれば、アンへルとかゆーやつはゴヴァアと口のようなものを開け、 言葉として聞き取れない叫びを発してきた。 まるで竜の咆哮だ……耳どころか身体に響く。 EA 『Bestatigung……loscht die Zerstorung der Anweisung.』 俊也 「……ん、んう……?なにか言ってるか?」 中井出「ぬ……光の解放を確認、消去する、だって」 俊也 「解るのか!?」 中井出「ククク、相手が兵器的なものならばこの博光!     器詠の理力さえ使えば声も聞こえるステキヒューマン!     でもごめん、頭痛いからもう勘弁して」 俊也 「一言聞いただけでそれなのか!?」 中井出「こればっかりはゲームの力とかそういうのじゃないんだよ!     解る!?これ俺の唯一の特技が、     鎌のお蔭でなんとかカタチになってるってだけのものなの!     “なにかを繋げる”とか“なにかを通す”とかそういうのが地味に得意!     それが俺の中にあるタレントなの!しかも物凄い中途半端な!     鎌の力───俺のファミリーの無意識的な助力があって初めて、     これは力って呼べるものになってるの!     でも人間である俺が“ものの意識”を読み取るなんてこと     普通は出来るわけがないらしくて、だからこうして痛みに襲われてんだオラァ!」 俊也 「それは解ったけどどうして俺が今ここで怒られなきゃならん!」 中井出「頭痛いんだってば!あんまり喋らせないでつかぁさい!」 ズキズキと痛む頭を庇いながら、アンヘルを再度見上げる。 デカイなこりゃ……!どこのウェポンですかこいつは……。 俊也 「ど、どうする!?俺はさすがに戦ったことなんてないぞ!?」 エィネ『……あの。多分難しく考えなくても大丈夫だと思いますよ?』 俊也 「へ?それってどういう意味?」 エィネ『相手が誰だろうと、きっと博光さんならああするでしょうから───』 中井出「貴様俺がセレスティアルスターから逃げてる間や光天龍にボコられてる間、     ずっとここで高みの見物してやがったのかァアアーーーーーッ!!!     許さんつーか死ね!むしろ殺すオリャアーーーーッ!!」  ドゴごしゃーーーーーっ!!! 真正面から激突まがいのタックルをぶちかまし、 その勢いのままにSTRマックス状態でアンヘルを持ち上げ、 一切の躊躇もなく崖から飛び降りる!! 俊也 「うわぁああーーーーーーーっ!!!?     ななななに考えてんだあんたぁああーーーーーーーっ!!!!」 中井出「大丈夫!なにを隠そう、俺は空中サーフィンの達人───たつ、た、つ……」 落下しながら鞘に手を当ててみた。 ……が、思えばクサナギはこいつに襲われるまえに頂上に浮かせたままだったわけで。 イヤァアア!!浮遊手段が!───い、いや!俺にはテオブランドがあるじゃないか! ───否!俺は宣言を現実のものにせんために飛んだのではないか!! ならば退くな!勝ってみせよ!男じゃわしゃああああっ!! 中井出「不死鳥落とし(フェニックスドライバー)!!!」 自分の数倍、巨人族の倍はあらんとする巨体を強引に押さえつけ、 俺は見果てぬ大地へと……何度目かのダイヴかは忘れたが、落下していった。 ……三回くらいだったっけ? 俺ってここ来る度に落ちてるよなぁ……。 【ケース545:中井出博光(再々)/アンヘル=エンジェル】 ───…………ォ……ォオ……ォオオオオオオオオオッ!!!  どっがぁああああああああんっ!!!! 中井出「どわぁあーーーーーーっ!!!!」 やあみんな!知ってるかい!? 物体が地面に落ちる速度には限界ってのがあって、 その限界以上はどの高さから落ちても変わりはしないんだってさ! でもそんな事実がウソッパチに思えるほどのGとともに落下してきた俺とアンヘルは、 落下時の物凄い衝撃に相当驚いていた。 や……驚いたのは俺だけだけど。 EA 『Zerstoren Sie die Nashorn zerstort,die Bestatigung……     Reparatur der Unmoglichkeit, die Nashorn zerstort,die Schaden in der Schaltung』 中井出「え!?なになにイカ子さん!」 よく聞き取れなかった……というか理力解放が間に合わなかった! でもなんか破壊せよとか言ってた気がする! いやいや諦めるな、理力を解放して、言ってたことを思い出すだけで十分! え、えーと……確か……  回路に損傷を確認……修復不能、破壊せよ破壊せよ破壊せよ……(Zerstoren Sie die Nashorn zerstort,die Bestatigung Reparatur der Unmoglichkeit, die Nashorn zerstort,die Schaden in der Schaltung) 中井出「イヤァアアアアアアッ!!!」 ガシャンッ!ゴファァアッ!!! 俺が言葉を思い出し、頭痛とともに思いっきり距離を取りながら叫ぶのと、 彼(?)が戦闘体勢のようなものを取ったのはほぼ同時だった。 やべっ……つまり暴走状態なんだよなこいつ! そっれは要するに、敵と見たら見境なく襲ってくるってことなわけでっ……! 中井出「い、否!これは逆にジョブレベルを上げるチャンス!俺のホズが光って唸る!」 徒手空拳時のみに出せる、左腕に構えしこのボウガン&大砲! これで貴様を木っ端微塵にしてやるぜ! 中井出「ククク、デクよ。貴様のその図体と機械的なボディでは俊敏な動きなど不可能!     よってこの武器で接近せずに蜂の巣にしてくれるわーーーーっ!!     って言ってると俊敏な動きを見せるのがセオリー!!」 EA 「───!」  ギガァッ!!  ヂガァアガガガチュゥウウンッ!!! 中井出「ウォエアィアェワォオオオオオオオオッ!!!?」 ヤツの次なる行動───意外!それはレーザー! 信じられん速度でギャアと言わせてくるかと思いきや、 開いた口からまるで竜族のレーザーのようなものをゴヴァアと吐いてきたのだ!! しかもそれは光属性!ってなんで俺そんなこと解るんだ!? 何故ってそりゃ───……おおお!? 中井出(───聞こえる!闇の中に蠢く何者かの気配が!     身を潜め!息を殺して!やつらこの錫を狙っている!!) ……錫じゃないけどね。狙ってもいないし。 だが……見切ったぜアロマタクト!じゃなくてカラクリを! 中井出「ってギャアーーーーーッ!!《ヂゴゴゴォオオオンッ!!!》」 紙一重で極光を避けて、なんとかズダーと地面を転がった。 い、いかんいかん!状況整理も結構だが、気をつけねば本当に死ぬ! しかも無様に転がってるうちにまた溜めに入ってるし! だが知れ!俺はもう知を得た……かもしれない! 中井出「この場にある自然よ……     もしも助言をくれるくらいに俺に協力してくれているのなら……     俺に力を貸してくれ!」 意識を集中! 的にではなく、この大地とともに育った自然に向けて! 踏んでしまっている草にも、 俺が身勝手にあいつを落とした所為でぐしゃぐしゃになってしまった自然たちにも、 どうか、と───!  ……そう、願った瞬間だった。 キュバァンッ!! 中井出「えっ───、───!」 我が手に、なんて心強く、そして暖かな光が。 だが驚いている暇などない。 俺は目前に迫った極光を前に、手の中に集ったマナを左腕に掻き集めると─── ホズを大砲型に変換し、躊躇することなくマナの塊を放っていた……!!  ───たとえば雨の日。  小さな自分は、雨に打たれて揺れる草の葉がおもちゃみたいで面白いと笑っていた。  ───たとえば風の日。  揺れる窓に小さな恐怖を感じては、ザワザワと嫌な音を鳴らす草木を嫌っていた。  ───たとえば雪の日。  雪の上を駆け回る自分に、自らに積もった雪を落とす木々に苛立ちをぶつけていた。  ───たとえば……悲しみの日。  どうしてもっとあの家を支えてくれなかったんだと、見知らぬ木々を殴っていた。 自然ってのは気侭だ。 風に揺られるままで、叩かれたら叩かれたままで。 けど切られても切られてもまた伸びて、 命が尽き、枯れ果てるまで、生きることを決して諦めたりなどしない強さを持っている。 草花は強いものだ。 でも時に、同じ自然である“現象”に負けて、命を散らす。 それを儚いだなんて思うやつなんて居やしないんだろう。 草花だって、俺達人間を見ては、 俺達を自分を踏んだり食べたりする者だとしか思ってないのかもしれない。 でも……そう。  ───たとえばこの時。  もし、互いに……勇気を以って、  意志を通じ合わせて、同じ目的のために立ち上がれたなら─── 今まで自然に対してしてきたことを謝るなんてことはしない。 そんな謝罪なんて無意味なものだって知っているから。 ゲームの中だからとか現実じゃないからだとか、 そんなつまらないことを言っているんじゃない。 この世界に生きる人には既に意志がある。 管理者が居なくても、もう自分で考え、自分で動く力を確かに持っている。 だったら俺達と何が違うというのか。 この世界に降り立って、今を生き未来を願う姿の全ては俺達と変わらない。 だから俺はこの世界に生きる人達とは自分のありのままを以って全力でぶつかる。 それは自然に対しても同じであって、 だからこそそうしてしまった過去を謝ったりなどはしない。 その代わり……手を取ろう。 ナギーとの契約のお蔭とはいえ、然の属性を通して俺に力を分けてくれる彼らと。 自然はやさしいばっかりじゃない。声も聞けるし歌も聴ける。 中井出(……そう、生きてるんだ。だから、その命が生きたいっていうなら……!     力を貸してくれるっていうなら!     俺はその力を以って、先に待つ未来へと走っていく!     たとえあの夢がこれから起きる真実であろうが!     運命ってのが本当にあって、俺は死んじまうんだとしても!     俺は……そこに辿り着くまでの俺の人生を、絶対に諦めてやらねぇ!!)  ガンガガガガガガガォオン!!! 目の前で極光が揺れる。 火花ではなく光の粉を散らし続けるソレは、 粉であろうが肌に触れるだけで身体を抉るような痛みを俺に齎した。 けど、それがなんだ。 今まで散々踏みしめられてきた草花だって、踏まれても折られても切られても、 たとえそれが生態としての在り方なんだとしても、生きることを諦めなかった。 その自然を守るためにこうして対峙しているのなら───俺だってそう簡単に諦めない。 中井出(まあ誰かのためであろうがなかろうが、     俺は生きることを諦めたりなどせんがなグオッフォフォ……!! だから……! それをするためにはぁあっ……!! 中井出「お前がっ……邪魔なんだよぉおおおおおおおおっ!!!!」 突き出し、マナを放っていたホズに、さらにさらにとマナが集う。 圧し負けているのは明白だ。 だがそれでも俺はアーチャー!この左手にホズがある限り、貴様の思い通りにはさせん! 中井出「結論から言おう!邪魔なのはなにも貴様だけではない!     つまり貴様はこの博光が通る道の通過点にすぎぬのだ!     故に《ジュウウ》ギャアーーーーーーーッ!!!!     痛い痛い腕が焼ける腕が焼ける!ごめんなさいナマ言ってごめんなさい!     通過点どころか滅茶苦茶強いです勘弁してください!」 そしてどこまでも格好のつかない俺だった。 だが負けぬ! 一度通した覚悟に偽りなどあってはならぬ! いやべつにあってもいいけど今はならぬと言うっておこう! 中井出「とにかくブッ壊して笑顔ウルトラZ!!     意地になった男の強さ!見せたるぜぇえーーーーーーっ!!!」 マナだけではなく、チャージが済み次第に竜撃砲やボウガンも放ってゆく! 撃って撃って撃ちまくり、ついに……光を破壊することに成功した! 中井出「よっしゃあ反撃の狼煙を上げろ!     今!俺のアーチャーとしての器量が試される時!」 すかさず疾駆した。 地面を駆ける狼が如く、姿勢を低くし、いっそ転ばんとするくらいに。 その接近速度を感じ取ってか、 アンヘルは極光の集束もまばらに、小刻みに光弾を放ってきた。 俺はそれをボウガンで破壊すると、さらにさらにと接近し、やがて───!! 中井出「死ねぇええーーーーーーーっ!!!!」  ガゴィイインッ!!! 背面の鞘から抜き取ったジークフリードで、 力任せにアンヘルの頭部(らしきもの)に一撃をくれてやりました。 え?アーチャーとしての器量?知らんよそんなもの。 俺は常に好き勝手に戦闘すると決めているのだ。 時として自分の意見もあっさり覆すのが自由人と書いてフリーメン。 中井出「せあぁあああありゃぁあああああっ!!!!」 続いて第ニ撃!と振り被った瞬間! EA 『───、───』 中井出「ぬおっ!?」 アンヘルがなにやらおっしゃった! しかもそれは俺にとってはとてもステキなことで───! だが振るった腕を止められる筈も───否!止める! 中井出(ぬ、っ!ぐぉおおおおおっ!!!) 景色がまるでスローモーションにでもなったかのように、ゆっくりと動く。 俺の腕はゆっくりと動き、だが確実に第ニ撃をアンヘルに喰らわせようとし、止まらない。 それでも俺は頑張った。さっきまで破壊する気満々だったが、頑張ったんだ。 やがてヴァゴォッシャアアアアッ!!!! ……だめでした。 そもそも一撃必殺の心構えで振るった長大剣を、 フロートの加護無しに即座に止めるなどということが出来ようか! いぃいやッ!出来ッまいッ!──────────────────…………………反語。 でもアンヘルがごしゃー!と吹き飛び、 ガンゴロゴシャゴシャととてもステキな破壊音を立てながら転がっていった。 ああ、こりゃ……たとえ無事でもどっか壊れてるだろうな……。 なんか頭部(らしきもの)についてる小さな丸い玉が赤く点滅してるし……なにあれ。 とか思った途端に、アンヘルが声として認識できないような、 なにかを虚空に向けて放った。 大気を震わせ、地面を揺らし、塔の壁を小さく破壊するくらいの咆哮。 当然、生身の俺にもその衝撃はブチ当たり、 ガードなんて出来やしない振動波に、俺の皮膚が裂傷を起こす。 中井出「づっ!あがぁっ!?」 その時点ですぐに目を閉じるべきだった。 目を離さないようにと注意していた俺は衝撃に目を潰され、視界を完全に失った。 盲目テオハートも使えないこの状況での盲目にいったいなんのプラスがあるだろう。 俺は迷うより先にグミを口に放ると、震動が済むまで硬く目を閉じ、終わるや走っていた。 もう許さん!おまん……許さんぜよ!! 中井出「おぉおおおりゃぁあああああっ!!!」 駆け、射程距離……直接攻撃でもそう呼ぶのかは定かじゃないけど、 攻撃が届く直前で高く跳躍! 再び顔面(らしきもの)を斬りつけてやるために、強く強く力を込めて振り被る! ……と、そんな時。  ピピンッ♪《メールが届きました。警告メールなので開きます》 中井出「なにっ!?ちょっと待て!今無理矢理メールなんて開かれたら視界がっ……!」 言ったところで無駄だった。 眼前に出現したナビと、ズガーと表示されるメールとそのログ。 それに埋め尽くされた僕の視界っ……! だが構わん!あとはこの剣を力いっぱい振り下ろせばいいだけ!死ねぇーーーーっ!!  *エレメントアンヘルは属性ごとの精霊に従う魔法兵器です。   強いのはもちろん、耐久力の面でもとても優れており、   対巨大生物戦ではとても重宝します。   普段は能力解放状態の精霊の力で呼び起こされるものですが、   稀に衝撃などで封印が解ける場合もあります。   その場合、属性ごとの精霊が安定、操作させる必要があり、   それが出来ない場合は特になにもしません。   が、当然自己防衛機能くらい組み込んであるので、攻撃されれば反撃します。 中井出「ってもう遅ぇえええええっ!!!イヤァアアアーーーーーーーッ!!!!」 ドガシャバゴゴギゴッシャアアッ!!! どんがががががしゃぁあーーーーーっ!!! 中井出「キャーーーーッ!!クリティカルな手応えぇええーーーーーっ!!!」 振り切ったジークが会心な手応えを僕にくれました。 ああっ……こんな感触久しぶり! 会心スキル無しでクリティカル出すなんてどれくらいぶりだ!? ていうかなんでよりにもよってこんな時に出るかなぁ! 中井出「あぁあああ……!せっかくの精霊兵器がごろごろごしゃーって!     エィネ!?エィネェエエッ!!もしコレがそういうものだって知ってたなら、     どうして教えてくれなかったのォオオオ!!?」 エィネ『言っても落とすと思ったからですけど』 中井出「ヒィッ!?エ、エィネ……に、トッスィー……いつの間に……」 エィネ『いつでもいいですけど、なんですかヒィって……失礼ですね』 俊也 「塔の外壁にワイヤーフックかけながらざっと降りてきたんだ。     もちろんそんなにまで長いわけもないから、何度もひっかけてだけど」 中井出「そ、そう……」 心中穏やかじゃない俺は、なんだかハラハラしながら言葉を聞いていた。 防衛機能……それが発動するのか否か。 とか考えてると、ごしゃあんと起き上がるアンヘル! 中井出「ヒィッ!?こいつしぶてぇ!」 俊也 「ていうかどうしてあいつの頭(らしきもの)へこんでるんだ?」 中井出「ヘコんでなんかないさっ!僕は元気だよ!」 俊也 「や、お前じゃない上に意味が違う」 とはいえ、とトッスィーが息を飲んだ。 そりゃそうか、 巨人族よりデケェやつがこっちを向いてギルギルと奇妙な音を立ててるんだ。 中井出「知ってたかいトッスィー。あいつって精霊のしもべだったんだってさ」 エィネ『はい。ノヴァルシオで精製されて、     その動力として精霊の力が埋め込まれています。     だから基本的にその主である各精霊の呼びかけにしか応えません』 俊也 「え……じゃあ俺がフレイムマウンテンで見かけた赤いエレメントアンヘルは?」 エィネ『機動していたのなら暴走していたんじゃないでしょうか……。     火の戒めの解放がまだでしたら、普通は機動すること自体がおかしいです』 俊也 「うわー……」 中井出「け、けどさぁ!こいつ確かに出現した時に消去するって!」 エィネ『多分……封印の術式を消去って意味だったのでは……』 中井出「ワー」 なんだか泣きたくなった。 中井出「しかし……こいつほんとに対巨大生物兵器なの?     やけにあっさり吹き飛ばされたけど」 エィネ『精霊に仕える存在ですから、精霊が側に居て属性を汲々する必要があるんです』 ……てことはこいつは今は弱ってる状態だと考えていいわけで…… 中井出「よし壊そう」 エィネ『ええぇっ!?連れ戻せば……というか、     光の精霊レムさえ連れてくれば味方に出来るんですよ!?     落ち着いて考えてください!     アンヘルが居ればサウザンドドラゴンの封印が解けたとしても、     強力な戦力を持ったまま戦えるんですよ!?』 中井出「おお!そういう考え方もあったか!     でもあのー、なんだか今すぐ暴走しそうなんですけどこいつ」 エィネ『博光さんが暴力に訴えるからですっ!』 中井出「力こそパワー!じゃなくて、まあその、力ってのは大事なんだぞぅ?     遙か昔、力に溺れた者がいらっしゃいました。     そいつは力だけを求め、力だけを望み、     真実“力、振りかざす者”として君臨したほどです。     でもそいつは皆様には嫌われていました。     いや、嫌われるというか恐れられていた。     最初は愛する者を守る力が欲しかっただけなのにね。     でもいつしか力のみの者となったそいつは力の象徴として恐れられ、     そいつもまた自分を恐れる者を破壊……したのかな?覚えてねーや」 エィネ『えと、それがなんだと……』 中井出「極めるとはそういうことだ」 エィネ『……話が見えませんけど』 中井出「うむ!俺もよく解んねー!だが知りなさいエィネ、     道を極めるってのはそういうことなんじゃねーのかなって!     極めるにしても、それを制御するための確固たる意志がなきゃ意味がない!     力を求めた者が力におぼれずに済むなんてことはきっとない!     現にうちのモミアゲも未来の最果てで絶望知って、     力で全て変えようとしてやがる!それは力の使い方として合っているのだろうか!     YES合っている!そいつが正しいと思えばそれは正義だ!     だがだからといってやられっぱなしでいいわけがねー!     えーとつまり何が言いたいのかっていうと!力ってのは大事だ!     たとえそれが誰かにとって暴力に見えたとしても、     そいつはそいつの意志を以って行動した!     でもだからって俺が正しいだなんて言わん!でもだめなんだ!     一つの道だけ極めるだけじゃ、そいつはその道に溺れちまう!ね?だから壊すの」 俊也 「どうしてそうなるっ!!!」 中井出「えええいこれだけ言ってもまぁだ解らないのか!     強くなりてーならまず心!ハート!解る!?意志が必要だ!     根気!克己!意志!迷わぬ心が必要だ!でもだからって頑なな心は要りません。     者どもよ……人をやめても人であれ!心を無くすな失うな!     だがもし、それでも一点を極めることだけが素晴らしいというのなら……     たとえ恐怖の象徴であろうが、そいつに拍手の一つでも贈っておやり?     俺はむしろ、悲しみの先に力に呑まれたゼットにそうしてやりたかったが」 体が動くもんならね。 意志を失った力に価値が見い出せるなら、俺も頷けるんかな。 解らん。 俊也 「……それとこの状況と、なにがつながるんだ?」 中井出「力は大事。これ最初に言ったことね?     でも中途半端に高くて、だけど意志がない力ってのは利用されるものさ。     なにより“精霊の力”で動くってのがまずい。     だから、破壊しておくべきだと俺は言いたい」 今現在竜の暴走を悪化させてるのがルドラだとしよう。 だったら、あいつがゲームの中でそんな強行手段に出始めたってことは、 状況はどんどんと悪い方に流れていく。 あいつには晦と同じく精霊たちが味方についている。 それも、ほぼ限界近くまで能力を鍛え上げた精霊たちだ。 もしさらなる強行手段として、 竜だけじゃなくアンヘルまでそんな力で操られたらどうなる? この世界じゃ復活できるとはいえ、何度も殺されるのはゴメンだ。 それに……その気になればその根本さえ覆されて、俺達だって本当に───そう。 それこそ俺が見た夢の中のように、ゲームの中で死んでしまうかもしれないんだ。 中井出「ゲーム好きとして言うぞ。力は、兵器は利用される。     たとえ今味方になっても、味方になるからこそ危ないんだ。     もちろん利用したほうもただでは済まんのがセオリーだが、     ルドラが相手じゃちとそれも望めない。利用され損になるくらいなら今破壊して、     武具のための材料をたんまりとグオッフォフォ……!!」 俊也 「あんた結局それ言いたかっただけなんじゃないか?」 中井出「そうかもしれないがそれだけじゃない!さあどうする!?     俺は壊したいと思うが貴様らはどうする!!」 エィネ『……俊也さん、でしたっけ。     tellっていうやつで光の精霊の契約者を呼んでください』 俊也 「そうしたほうがよさそうだな」 中井出「えぇ!?僕だけ悪者!?」 そうして発動するtell。 僕はそんな様子を横目に、寂しい気分のままにアンヘルを見た。 ……するとアンヘルはガゴゴゴと小刻みに動きながら……いや、震えてるのか? ともかくガタガタと揺れながら、俺をゴピーンと睨んだ……気がした。 した、途端! EA 『ヴァオォオオオオオオッ!!!』 中井出「ぬう!?」 喩えるならばジェット噴射! FFのウェポンめいたソイツは背面にある噴射口から光を放ち、 デケェ図体を宙に浮かせて突っ込んできたのだ! エィネ『わっ、わわっ!』 俊也 「《ブッ───》っと!えーとこちら朝月俊也!     たたた確か霧波川凍弥って言ったよな!今すぐ光の塔に来てくれ!」 声  『いきなりだなおい!』 ドッガァアアアアアアアンッ!!! 中井出「ぐおっしゃああーーーーーーっ!!!!」 俊也 「ふぉおおうわぁあああーーーーーーっ!!!?」 エィネ『きゃーーーっ!!?』 突っ込んできたバカデケェボディをジークフリードで受け止める! ───だがイマイチ馬力が出ないというかハウア!! そういや現在のジークを構築するための武器が一つ欠けている! 中井出「トッスィー!クサナギ!クサナギ持ってきてくれたか!?」 俊也 「あ、ああ!動かしちゃ悪いとは思ったけど、     トレジャーハンターとして宝はほっておけなかった!ほらっ!」 ぶんっ!と投げられるクサナギ。 それを受け止めるべく、剣ではなく脚でデカブツを押さえることで剣を自由にし、 飛んで来たクサナギをガシャンッ!とジークに取り込む!! するとそれでジークフリードという武器が完成し、 刃がいつもの鋭さ見せるかのごとく光を吸収するように煌いた。 中井出「ククク!未来凍弥よ!貴様が早く来なければ、俺はこいつを滅ぼすだけだ!     こう見えてもこの博光、マシンウェポンには興味がある!     そもそも俺に倒せるか!?なんてことは考えぬ!やると決めたらやる!     己が楽しいと真に思うことに何故ためらいが必要かぁああっ!!」  ヒュフォゴギィインッ!! EA 『ゴォオオオオッ……!!』 片足で押さえていたアンヘルを剣で斬り弾き、後ろに跳んで体勢を立て直す─── などという悠長なことはせず、立て直すより先に突撃開始イィイイイッ!!!! 中井出「イエーーーーーッ!!!」  ゴギィンゴギィンガギィンゴギィンガギィン!!!  ゴギィンッ!ベゴォン!バゴォン!  ゾゴッフィゾゴッフィゾゴォオッフィィインッ!!!! EA 『ガアアアア……!!!』 出来るだけ同じところを狙い、装甲をヘコませ、破壊し、やがては斬る!! その全てが力任せであり、技法などほぼない素人戦法だ。 そんなものを、俺はレオンの戦い方を見た所為で改めて知ってしまった。 そんなものが通用するのは、 達人的な人間の戦闘技術を知らないモンスターたちなわけで…… 俺はきっと、レベルでも武器の強さでも追い越されたら、誰にも勝てやしないだろう。  ……だったら特訓でもするか? 武器を……相棒を、自由に動かしてやるために…… そんな言葉が、ジークから流れてきた気がした。 レオンだろうか。 それとも稀黄剣の……いや、 シュヴァルツレイヴ前の持ち主であるサイナートの意識だろうか。 いや、どうでもいいな。 相手が誰だろうが、返す言葉は決まってる。 中井出「断る!ああ断るね全力で!“解除”(レリーズ)!!《ジャガァッキィンッ!!!》」 ジークを双剣化させ、再び力任せに撃を連ねる。 技術だのなんだの、そんなものは必要ではない! いや!よしんば必要だったとしても、 それは鍛えるものではなく実践で身体に染みつけていくものである! 自分から修行して型をつけるなど冗談ではないわぁーーーーーっ!!! 中井出「この博光が唯一身につけたいのは超実戦流!!     鍛錬の先に見える嵌まり切った型など要らぬ!」 これを技術と言えるなら言うがいい!我が博光流は多分誰にも真似出来ぬ! つーか誰も学びたいとか真似たいだなんて思いやしねー! 悪いことは言いません!素直に誰かに習ってください! 俺は誰からの技術も受け取りませんが!  ガギギゴガンゴゴゴガゴガバガァンッ!!! 装甲が硬くて、斬るっていうよりやっぱり叩くって感じだ。 だが同じところを執拗に攻撃していれば破壊できるし、AGIも混ぜて連撃を繰り出せば、 相手に反撃の猶予も与えずに追い詰めていける。 ……たとえこんな滅茶苦茶な行き当たりばったり戦法で、 進めなくなる道がやがては現れようとも…… 俺はその常識さえ打ち破れる修羅となりましょう。 俺の最大の敵は、きっと“達人”ってやつだろうから。 バケモノでもモンスターでもなく、恐らくは技術者が最大の敵となる。 俺だって一点を極めてみたくないわけじゃない。 差別はしないったって俺だって男だ、強さには憧れる。強い自分には憧れる。 けど、どうせ強くなるのなら……誰からも習わず、武具とともに強くなりたい。 特訓ではなく、ファンタジーという名の野生の中でだ。 中井出「セイィッ!!」  ゴギィンッ!! EA 『ゴ、オ……!』 中井出「《ヒュオッ───シャクンッ!》チャージショット!!」 双剣を大きくブン回してアンヘルをよろめかせるように弾き、 その隙を待ってましたとばかりに双剣を鞘に納めるとホズを解放! 既に竜撃砲分の溜めは完了している……あとはこれを放てばぁあああっ!!! 俊也 「サァディングレイブ!!」 中井出「《ゾグシャア!》ギャア!!《ゾグブッ!》覇王ッ!!」 俊也 「あ」 いざ放たん!としたまさにその瞬間だった。 卑劣にも我が脇腹をグサァと突き刺す槍と、さらに我が下方から生える尖った岩! 攻撃を受けたところで怯んだところに、 グレイブがザグシャアと我が括約筋を貫かんとホギャアーーーッ!!! 中井出「ハぶルァアあアぉぁああァアアーーーーーーッ!!!     ぼぼぼ僕の出口が入り口にぃいいいっ!!!!」 俊也 「うわわわわ悪いっ!い、いや事故っ!事故だ!まさかグレイブが!     こんな時に発動して、しかもそんなところにっ……!」 中井出「ゆゆゆ夢の中のダニエルにさえ散々抵抗して守ってきた僕のピュアがぁあっ!!     ききききさぁーーーーー!!貴様貴様貴様ァアアアアアッ!!!!     あんな夢ばっか見るハメになった僕らだから、     頑なにシモシモの話題を避けていたというのにこの仕打ちっ……!!     きさん殺す!今すぐその首掻き毟ってくれる!     買い買い買い買い買い買い買い買い買いってブツブツ言いながら掻き毟ってやる!     掻き毟って《ズキィッ……!》うごぅぶ!むっ……無理っ……!動けない……!」 だめっ……!ケツが……!ケツが痛くて動けない……! お、おのれ……この博光、腕を消されようが瀕死になろうが、 動く箇所があれば無理にでも動きし修羅だというのに……! よもやケツッ……ケツの痛みだけで行動不能になろうとはっ……!  どしゃあ…… 結局顔が塗れた餡子ダンディのように力が出なくなった俺は、 その場にズシャアと倒れてしまった。 俊也 「……伝説の魔王がグレイブ一つでこれか……。     あんた、ほんと強いのか弱いのか……」 中井出「うう……泣きたい……いっそ泣きたい……」 もう泣いてるけどね。 いっそ殺せーとか言ってやりたいけど、命は粗末にするもんじゃあねぇ。 俊也 「ふう……霧波川っていったか?が、今こっちに向かってるそうだから。     着くまでそうしててくれ、頼むから」 中井出「フン断る《モグモグマキィン!》ふっかぁーーーーつ!!!」 俊也 「あっ!こらっ!」 グミを噛んですっきり回復! すぐさま立ち上がった俺は、 ピュアへのダメージへのお返しだと言わんばかりにホズを構え───あ。 中井出「………」 俊也 「……、……?」 本能だろう、咄嗟に防御体勢をとっていたトッスィーを前に、俺は呆然としていた。 そうだ……今はクエスト中。 これで依頼者でもコロがそうものなら、報酬は得られないのだ。 ……まあ、$の半分は取れるだろうけど。 なんかもうそれでいい気がしてきた……しかしこれはクエスト!ゲームの醍醐味! それをいきなり、自らの手で失敗に導くなんて! ───……なんて面白そうなんだろう……! 俊也 「お、おいっ……!?なんか目が怪しい……おいおいおいっ!?」 いやでも待て僕! ここで撃ってしまったら、トレジャーハンターの助力が得られなくなってしまう! そうだ考えてもみろ! これで攻撃して、契約破棄され、クエスト失敗の汚名まで被って、 しかも一人で闇の遺跡に行くようなことになろうものなら! …………宝が独り占めできるじゃないかっ……! 中井出「イエーーーーッ!!《ギカァアアアアアアッ!!!!》」 俊也 「うわっ!?うわぁあーーーーっ!!!」 アンヘルに撃つ筈だった竜撃砲が今こそ輝き光って唸ドゴォンッ!! 中井出「ギャアーーーーーッ!!!」 俊也 「うおわぁっ!」 中井出「《ガゴォッ!》ゲフォーーーリ!!」 何者かが後ろから僕を襲った! そしてトッスィーへと吹き飛んだ僕は、トッスィーにこそ殴られ地面に倒れた。 とても素晴らしいコンビネーションだった……。 中井出「なにをするだァーーーッ!!ゆるさんッ!!」 握り拳を作りながら、ジョナサン風に振り向く! するとそこに居るのは、 凍弥 「そっちこそ人を呼びつけておいて、殺人現場を見せ付けるつもりだったのか!?」 口の端をヒクつかせて怒りを見せるトーヤボーイだった……! 中井出「あれ?未来人類じゃないか。来るのやけに速かったね?」 凍弥 「レムに送ってもらった。六翼で飛ぶから速かったぞ。     力も解放されたみたいだし、それも相まって」 レム 『ふ……ふふふ……!久しいな人間……!     あの時の恨み、力が解放された今こそ晴らして』 中井出「死ねぇーーーーーっ!!?」 レム 『な、なにキュヴォガォオォン!!ふぎゃあああーーーっ!!!』 溜めるに溜めた竜撃砲を、レムにこそ放ちました。 すると、まさかいきなり来るとは思わなかったのか、 直撃を受けたレムは地面と平行に素っ飛んで行き、 やがて重力に引っ張られるとばきべきごろごろずしゃー!と地面を跳ね転がっていった。 中井出「…………えーと。……さあっ!アンヘルに停止命令をっ!」 二人 『よく言えるなこんな状況で!』 中井出「言うだけならタダじゃーーーい!!」 ぷすぷすと珍遊記みたいな煙(?)を頭から出して転がってるレムを指差し、 高らかに叫ぶ彼らにさらに叫んで返してみせました。 凍弥 「状況がよく解ってないんだが、つまりあのデカブツを止めるんだろ!?     それにレムが必要で───どーすんだよ気絶しちゃってるぞあいつ!」 中井出「力解放されてあの程度って方が逆にどーかしてるだろうが!     力を手にしていながらあの油断っ……!     かつては散々と翻弄してやったというのに、     この博光を前に再びあんなに油断するなどっ……!     というわけでトドメ刺してくるねっ?」 凍弥 「待てぇええええっ!!!!」 ダッと走りだす僕の腰に、未来凍弥がしがみついてくる! ぬうう、いいタックルだ!微妙に腰から下にやっているところが実にポイント高し! 凍弥 「なに考えてんだあんたはぁあああっ!!     俺は来てくれって言われたから来たのに、来た途端にこれか!?これなのか!?     大体あいつにトドメ刺してどうする気だよ!」 中井出「やー……実は経験値が欲しくて」 凍弥 「呪いだか試練だか忘れたけど、それの所為でもらえないんじゃなかったのかよ!」 中井出「こっちにもいろいろあるのだ!頼む!行かせてくれ!     あいつがっ……あいつが待ってるんだ!行かせてくれぇえええええっ!!!!」 凍弥 「無理矢理感動モノみたいにするなぁあああああっ!!!」 ぐぐと力を込めて、彼が僕を引き止める! だが俺は無視してSTRマックス状態で歩行! ズシーンズシーンと歩き、ズリズリと彼を引きずる!! 凍弥 「ゴハァ!?なんて力してんだこのっ……!う、うおおぉおおおお……!!!」 中井出「グブブブブ……!!様々な者どもが様々に強くなろうがこの博光……!     まだまだ若いモンには負けぬわグウェッフェッフェッフェッフェ……!!」 凍弥 「〜〜〜〜〜っ……!ぐ、らがぁああっ……!!!《ゾリゾリゾリ……!!》」 中井出「キョホホ……!随分頑張ったようだがどうやらここまで……!     やはり貴様ではこの博光を止めることなどできぬのだ……!     まだ大丈夫……!ま、まだ大丈夫さきっと……!」 凍弥 「くそっ……くそぉおお……!!つーかなんでそこまで後ろ向きなんだよ!」 中井出「うるさいよ!俺だって好きで封印されてるんじゃないやい!     ともかく貴様ではこの博光は止められぬことが証明された!     故に僕は修羅の道を歩み続けましょう!貴様には負けぬーーーーっ!!」 俊也 「…………パーティ編成。それで全部済むからやってみろ」 凍弥 「えっ……あ」 中井出「え?ア、アアーーーーッ!!」  ピピンッ♪───霧波川凍弥が仲間に加わった! 中井出「………」 未来凍弥がナビをいじくってパーティ編成をする……と、そんな文字が。 しかもしっかりとレムも仲間になったようで……これでは倒しても経験値がもらえない! 中井出「死ねぇええええっ!!!」 でもせっかくだからコロがすことにしてみました!最強! ───と。 凍弥ボーイを腰に従えたまま強引に駆け出した僕の横に───!! 俊也 「サァディンッ───」 中井出「ヒィッ!?やめてやめてぇえええええっ!!!!」 ……槍を構えた彼が居ました。トラウマ発動。 こうなると俺は、咄嗟にケツを庇って飛びのくことしか出来なかった! お、恐ろしい……!あのコは悪魔のコよ……!! 悪魔……え?名前?名前は……ヒップ・ウガッティーナ!尻を穿つという意味です。 ……。 よし、これからはウガッティーナと呼んでやろう。 中井出    「よろしくウガッティーナ!」 ウガッティーナ「ウガッティーナ!?」 中井出    「そうだお前はウガッティーナだ!         影でコソコソ言うのは嫌いだから正面堂々ウガッティーナ!         人の尻を穿たんとする男……その名もウガッティーナ!!         それがこの雄、ウガッティーナ!」 凍弥     「……あんた……」 ウガッティーナ「なっ……ちがっ!なんだよその顔!」 中井出    「気をつけろ!そいつはその槍で刺したあと、さらに刺してくるんだ!」 凍弥     「───!!《ズザザザザァッッ!!!》」 ウガッティーナ「待て待て待てっ!         なんか誤解ばかりが凝縮された言い回しだったぞ今の!」 凍弥     「じゃあウソなのか!?彼が言ったことは間違ってるとでも!?」 ウガッティーナ「い、や……う、うそはついてないんだが……はっ!?」 凍弥     「うっ……うぉわああああああーーーーーっ!!!!《ズザーー!!》」 ウガッティーナ「待ってくれぇええええっ!!         違う!違わないけど意味が違う!受け取りかたが違うっ!!」 中井出    「なにい!?俺達の受け取り方では         足りぬくらいのウガッティーナなのか貴様は!」 ウガッティーナ「違う!!いい加減にしろ!!」 中井出    「ぬぉおぁ!?なんだその裂帛の気合はァアッ!!!」 本気でキレかねない裂帛の気合と怒声だった。 とか言ってるうちに、なんか姿みないなーとか思ってたエィネがレムを起こしてるし! 中井出「いやぁやめてぇえええっ!!そいつ起きたらまたややこしいことに───!」 レム 『なにが……ややこしくなるというのだ……!?』 中井出「やあ《ズパァン!》ニーチェ!!」 強烈なビンタだった。 中井出    「テメェエエ!!挨拶した人にいきなりビンタとは何事か!」 レム     『黙れ人間が!』 凍弥     「そもそも今の状況で挨拶出来る方がどうかしてるだろ」 ウガッティーナ「ていうかさ、不意打ちするのは実に好き勝手で、         されたらされたで文句は飛ばすんだな」 中井出    「黙れウガッティーナ!!」 ウガッティーナ「その呼び方やめろぉっ!!」 中井出    「不意打ち自由!文句も自由!         人として不意打ちをされて黙っていることが出来るだろうか!         いいや出来まい!反語ォッ!」 ウガッティーナ「……ようするにより人間らしく、てめぇ勝手であれってことか」 中井出    「その通り!!何故ならば!その方が面白いからだ!!」 我らは個人を尊重します。 尊重するから自分も尊重します。 そうなれば遠慮なんてしたってしょうがないじゃない。 もちろん時には必要だが。 エィネ『というわけで、エレメントアンヘルを停止してもらいました』 中井出「なにぃ!?き、貴様ァ……謀ったな!?今までの会話は全て時間稼ぎか!」 俊也 「こうでもしないと、停止させる前に壊すだろうが!」 中井出「今壊していい?」 俊也 「だっ……ダメに決まってるだろ!     旧時代の遺産を破壊するなんて、なに考えてんだ!」 中井出「世界平和!!《どーーーん!!》」 俊也 「うぉおおうわぁあああ!!     ここまで信用出来ない言葉、今まで聞いたことがねぇええっ!!」 物凄い驚かれ様だった。 ……せっかく認識を改めたのに、またウガッティーナにしたくなってしまったじゃないか。 レム 『ともかくエレメントは待機状態にある。     動けぬ相手を斬りつけるのは戦士としての誇りが許さぬだろう。     こいつは自らの意志では動けず、私の意志で停止している。     そんな相手を貴様は斬れるか?斬れまい』 中井出「え?斬っていいの?よっしゃあ吼え猛ろストレングス!!ジィイイクッ───!」 レム 『待て待てダメだダメだダメだぁあああっ!!!』 中井出「なんだとてめぇ!斬れるか?って訊いてきただろうが!俺は斬れるぜ!?」 レム 『ぐっ……貴様には戦士としての誇りが』 中井出「ない!!」 レム 『なに!?で、では人としての最低限の誇りは』 中井出「ない!!」 レム 『なにぃいいっ!?な、ならば冒険者としての誇りはどうだ!』 中井出「馬鹿野郎!冒険者だから壊すんだ!!」 レム 『貴様頭がどうかしてるのか!?』 中井出「失礼な!俺の頭は正常である!!」 エィネ『……あのですね、レム様。     この人の頭は、普通に異常だからどうしようもないんです』 レム 『…………それは、な。解らぬでもないが……』 中井出「ねぇ、こいつ殴っていい?」 俊也 「どうして俺に訊くんだよ……」 中井出「や、殴った後に“キミに命令された”って泣いたら面白いかなーって」 俊也 「絶対にやめてくれ」 ふむ。 ともあれエレメントアンヘルは停止。 さっきまでの獰猛さは微塵にもなく、 ぼしゅー、と蒸気みたいなのを吐き出して止まってる。 試しに近づいてコンコンと小突いてみたが、いや……やっぱり硬いなこれ。 いーなー、こういう素材を使って武器を強化したいもんだ。 やっぱさ、旧時代の稀少な素材とか使われてると思うんだよ。 それなんかを使ったらバゴォン!! 中井出「ゲフォーーーリ!!」 俊也 「うおおおーーーっ!!?」 ウウムと顎に手を当てて考え事をしてた俺の左頬を、 停止状態にあったアンヘルが殴りつけた! その拍子、ベキキメキメキと頬がステキな音を鳴らしました。 中井出「いたぁい!いたぁあい!」 大地を転がるこの痛さ、まさに国宝級!! 私はあまりの痛さに大変驚きました! レム 『ククッ……無防備なことだ……。     エレメントの前でうろうろするなど、殴るよう命じてくれと言ってるようなもの』 中井出「貴様の仕業かぁあああーーーーーーーーっ!!!!《ギャオッ!!》」 レム 『なにっ!?ま、待て!     殴ったのはエレメントであって《バゴァッ!!》はぶぅぃ!?』 立ち上がりザマに襲いかかる俺を前に、 言い訳を始めた彼女の顔面に渾身のナックルをプレゼント! さらに、我が拳を軸にぐりんっ!と回転をする体を強引に掴むと、 中井出「大人のジャーマン!!」 レム 『《ドゴォン!!くひゃうっ!?』 高角度ジャーマンスープレックスを決め、黙らせました。 レム 『ぐおおお……!あ、たまが……!』 中井出「なにっ!?まだ黙っていないだと!?おのれぇえええええっ!!!     だったらこれだ!亀田バスター!!」 レム 『うわぁああっ!!?《ごしゃあっ!》ぶふえっ!』 中井出「さらに亀田サミング亀田サミング亀田サミング!!」 レム 『《ゾスゾスゾスゾス!!》ぐぎゃーーーーっ!!!』 のろのろと起き上がろうとしたレムの、 左太股を両手で抱えるようにして大地にブン投げ、倒れたところにすかさずサミング! これぞ伝説のボクシング奥義、亀田コンボよ! ボクシングに投げ技は存在しない……そう思っていた時期が、俺にもありました。 そんなわけで外道の限りを尽くしていると、レムはくたりと気絶してしまいました。 エィネ『あわぁあーーーーーっ!!ななななんてことをーーーーっ!!!』 中井出「物凄い戦いだった……!どっちかが死んでもおかしくなかったぜ……!」 凍弥 「うーわー……精霊とはいえ、女相手にここまで容赦ないヤツ初めて見た……」 中井出「正当防衛………………っ!仕方なかった…………っ!     やられなければ………こっち…………!やられるのはっ……こっちだ…………!     そもそも自分で命令しておいて、やったのはアンヘルだと言うのが気に入らん!     もちろん俺もやる時ゃやるけど!だがああいう時はむしろこう、     自分がやったと宣言することこそ非常識だと思わんか!?」 凍弥 「宣言したら止まってたか?」 中井出「力一杯殴ってた」 俊也 「……どうにもならないじゃないか……」 中井出「大丈夫、倒れた彼女の顔面に下段突きやって、ドイルさんにすることも忘れない」 凍弥 「ほんと容赦ないなあんた!!」 中井出「ええいお黙りなさい!ともかくアンヘル停止させたんならもう用無いでしょ!     急ぐぞトッスィー!無駄な時間を過ごした!     恐らくエトノワール城下では、サチネーサンが怒り狂って     ロドリゲスの羽毛をブチブチと引きちぎってるに違いない!」 俊也 「断言なのになんて地味で嫌な喩えだ……」 中井出「じゃあなにを引きちぎってるっていうんだ!老い先短い老人の頭の毛か!?     それとも今日も今日とて薄い頭を気にする疲れた中年男性の頭の毛か!?」 俊也 「引きちぎるところから離れてくれっ!サチ姉ぇはそんなことする人じゃないよ!」 なるほど、怒り狂ってはいるわけか。 帰るのが怖くなってきたよ。 ……と、そうも言ってられん、さっさとグラウベフェイトー山に行かねば。 中井出「ではそのウェポンの後始末は任せた!我は空を目指す!」 凍弥 「空って───あ、ちょっと待った。結局闇の守護竜のことってどうなったんだ?」 中井出「参加しねー貴様に言う筋合いはねー!」 凍弥 「なっ……教えるくらいいいじゃないか!」 中井出「俺は嫌だぜ!!」 凍弥 「子供かあんたは!」 中井出「見た目は青年!頭脳は子供!     筋肉は普通!牙も普通!燃える瞳は現代のヒューマン!     その名は博光!バイオレンス博光!!童心忘れぬ修羅こそ我!ここに在り!!     少年よ……夢に年齢制限なんてものはねーのだ……。     子供も大人も老人も、夢見る心を失ったときこそ悲しみの始まりよ……。     夢見る力こそが童心だと僕は思ォオオオーーーーー…………」 声  『なにーーーっ!?なに言ってんのか聞こえね───…………』 クサナギをかっ飛ばしつつ、わざと声をフェイドアウトさせながら逃げた。 ええい、本当にいらん時間を過ごしてしまった。 待っていろ空の者よ……! 今、他の亜人族たちとの邂逅を果たさせてくれようぞ……! 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