───冒険の書223/炎の夜に───
【ケース546:中井出博光/猫汁大作戦とは違うのだよ】 ワヤワヤワヤワヤ…… 中井出「あー、では!アイルーにジークと元素竜素材を渡したところで!     これより晩餐の準備にかかりたいと思う!」 総員 『イェッサァッ!!』 中井出「といっても料理自体はコックアイルーが作ってくれるそうなので、     金さえ払えば食い放題!!さあ!ここで貴様らに質問だ!     アイルーキッチンとは食材の組み合わせが全て!     たとえ野菜と野菜を組み合わせようが、     何故か出てくるのは肉だったりするのがアイルークエスチョン!     故に、訊こう!食材は何と何を使う!?     こればっかりはセオリーに乗っ取って二つまでだ!」 藍田 「サー!やはりウォーミル麦は外せないかと思います!」 丘野 「なんの!ここはウマイ米でござろう!」 岡田 「いやいや!ヘブンブレッドだ!これは譲れないな!」 清水 「なに言ってんだ!ソウルビーンズに決まってるだろ!」 藤堂 「解ってねぇなぁ……男は黙ってジャリライス!!」 田辺 「いいや!頑固パンだね!!」 遥一郎「譲る譲らない以前にどうして全員穀物なんだよ!!」 総員 『食いてぇからに決まってるだろうが!』 遥一郎「組み合わせは二つまでって言ってるんだから、     一つは穀物にするにしてももう一つは別の食材にしてくれ!」 総員 『ごぇえええええ〜〜〜〜……?』 遥一郎「心底嫌そうな声で返事するなよ……」 デカい材料を捌くのに派遣されたホギーが、フハーと溜め息を吐く。 だがまあアレだ、食に関してはやはり贅沢したいのが人のサガ。 だから皆様で意見を出し合って、これぞという食事を取りたい。 中井出「むう。では食材1は穀物から捻出するとして!食材2はなにがいいか!」 佐知子「乳製品はどう?穀物に合うと思うけど」 中井出「やあ、トッスィーを人質に金を巻き上げようとしたら、     卑劣にもロドリゲスを人質に取って難を逃れたサチねーさん」 佐知子「なんの前置きもなく俊也を人質に取ったアンタに言われたくないわよ!」 中井出「まあまあ。えー、乳製品!乳製品が出たぞー!組み合わせとしては上々!     スタミナと防御力が若干上がる組み合わせである!     他に!他に提案は無いか!?無いのなら猫が鳴くぞ!」 藍田 「サー!ここはやはり砲丸レタスがよろしいかと!」 丘野 「サー!それよりもホピ酒を!」 岡田 「サー!やはり棍棒ネギは外せません!」 田辺 「サー!ブリカブトなどいかかでしょう!」 藤堂 「サー!銀シャリ草がよいと思われます!」 清水 「サー!ポポノタン!ポポノタンを全力で推すであります!!」 遥一郎「……その、なんだ。ゲームの中の食材しかないのか?このキッチンには」 言われてみれば、置いてある食材は大体モンスターハンターの食材である。 ウォーミル麦の名前が実にステキだ。 ナギー『なにを言うのじゃ!わしが猫たちと丹精込めて育てた野菜じゃぞ!     わしと猫と妖精たちとで、竜宝玉や精霊の力を結集させて作った───     その名もネコット農場なのじゃーーーーっ!!《バァアアーーーン!!》』 中井出「なにぃ!?ナギー貴様、いつの間にそんなものを!?」 ナギー『ふふふ……!わしとてずっと修行だけをしているわけではないのじゃ……!     休憩している時に猫や妖精たちと話し合い、せっせと作ったのじゃ。     上のバリスタ広場の下に、陽が当たりやすい場所があるであろ?     そこに食材に出来る植物の種子を植え込んだのじゃ』 中井出「ぬう……!やりおるわナギー……!     この博光の知らぬところで、まさかそのようなことを……!」 シード『管理はもっぱら僕の仕事ですがね』 中井出「そうか。その調子で良い食物を収穫してくれ」 シード『は、はい!父上!』 ……なんだかんだで、最近のナギーとシードって仲いいよな、うん。 最初の頃は喧嘩ばっかだったが……───や、ソレは今でもそうか? ジニー『ゴニャッ、そうニャ、言い忘れてたニャ。     旦那さん、この猫の里にはいろいろな素材があるニャ。     絶壁にはミスリル鉱脈、地面には珍しい草や虫がたくさんニャ。     小さな湖もあって、そこにはいろんな種類の魚介類が集うニャ。     なにか必要になったら、採っていくといいニャ』 中井出「おおそうか、それは助かる」 ジニー『鉱脈で採れるのはミスリルだけとは限らないニャ。     他のところももちろんそうだニャ。発掘や釣りは利用料金をもらうニャ。     でも草や虫取りなんかにはお金は要らないニャ。     ほぼドリアードのお蔭で増殖してるようなものニャ』 ナギー『ナギーと呼べというのに……』 むー、と不満そうな顔でナギーが言う。 その横で、ふむ、と頷いて、我がもとへ飛んできたのはレアズ将軍だった。 レアズ『私からも話がある。……ああ、まずこれを受け取れ』 中井出「ぬ?」  デンテンテケンテテンッ!ワシャーーン!《鱗粉の銀水晶を手に入れた!!》 中井出「…………鱗粉?」 ソッと手渡されたのは、首飾りに出来そうな銀色の水晶だった。 なんつーかこう……ねぇ?FFのクリスタルのミニチュア版みたいな。 レアズ『妖精の中でも特に力の強い者たちの鱗粉から作った水晶だ。     何年に一度出来るか出来ないかという、相当に稀少な宝石の一つだな』 佐知子「あぁああーーーーっ!!?」 俊也 「そ、そっ……それっ!!」 夏純 「!」 佐知子「フェルダール七大輝石の一つって云われてる銀水晶!!」 俊也 「しかも七色の銀水晶!稀少中の稀少石じゃないか!」 中井出「む?」 受け取った水晶を、ゲートの光の前に掲げてみる。 と、確かに光を吸収した銀水晶は七色に輝きだした! うおおこりゃ綺麗だ美しい!! 俊也 「譲ってくれ!」 中井出「死ね!!」 俊也 「死ねとな!?」 佐知子「じゃ、じゃあ触らせて!?」 中井出「昔々あるところに、佐原背手(さわらせて)というそれはめんこい修羅がおったそうな……」 佐知子「真面目に聞きなさいよ!!」 中井出「じゃあうん断る」 佐知子「真面目に聞いてそれ!?」 中井出「それでレアズ将軍よ、これをこの博光にくれる理由はいったい……?」 レアズ『うむ。知っての通り、     それには我々妖精たちの力が宿った鱗粉が凝縮されている。     いわば自然の力と妖精の力が混ざった特種な水晶だ』 中井出「うむ」 それは持ってるだけでも解る。 感じる……!この水晶から放たれる、尋常ならざる力の波動を……! 我が人器に訴えかけるがごとく、ひしひしと……───暖かい波動を感じます。 おお……自然!妖精界の自然の波動が、この中にはたくさん込められている!! レアズ『いちいちエィネに頼み、ゲートを開いてもらうのは面倒だろう。     お前は自然の声を聞くことが出来るのだろう?     ならばその水晶に意識を通してみるといい。     そうしてからゲートを開きたいと頭に思い描けば、     何処でだろうとゲートを開けるだろう』 中井出「なっ……なんだってーーーーっ!!?」 レアズ『もちろんゲートをくぐれば妖精界に辿り着く。     そこから再びゲートを開けば、辿り着く場所はこの自然要塞だ』 中井出「出口はここって決まってるわけか」 レアズ『今となっては、ここよりも澄んだ自然が密集する場所がないのでな』 なるほど。 意識して自然が多い場所に繋ぐことは出来ても、 俺じゃあここに繋ぐので精一杯ってことか。 けどこりゃありがたい、こういうの欲しいかなーとか思ってたところさ。 レアズ『ただし気をつけてほしい。この銀水晶で開いたゲートは、通れて精々一人だ。     一人が通った時点で自動的に閉ざされる。     もしお前がくぐる前にモンスターが入りでもすれば、     たちまち妖精界は混乱するだろう』 中井出「あ……そか、そういうことも気をつけなきゃいけないんだよな。     ……けどさ、妖精界に入ったら自動的に妖精の姿になるだろ?     モンスターもそうなるんだったら大丈夫じゃないか?」 レアズ『その姿になったとしても凶暴性が変わるわけではない。     我々は争いなど望んでいないからな』 中井出「───……、うむ。覚悟を以って受け取ろう。     たとえ先を越されてモンスターに入り込まれようが、     すぐに追って排除することを約束する」 レアズ『ああ、頼む』 この乱世、なにが起こるか解らん。 だから無責任に“絶対誰も通さねぇぜ〜〜〜っ”とは言えぬ。 こんな大変なものをこの博光にくれるというのだ、 信頼してもらえてることを喜ぶとともに、覚悟を以って受け取らねば。 遥一郎「おーい、食材2はまだか〜?」 藍田 「ウォーミル麦!」 遥一郎「却下!食材1が穀物だって言ってるだろ!」 中井出「ふむ。ナギーやシードはどうだ?なにか食べたいものはあるか?」 ナギー『煮込みうどんとやらが食べたいのじゃ!』 シード『ぼ、僕は焼きうどんとかいうものを……!』 藍田 「へ?───あ、うわっ!ばかっ!」 岡田 「提督の前でうどんは───!!」 中井出「うどんとな!?OKだ我がベイビーたちよ!!     うどんのことならこの博光に任せよ!!」 総員 『うあー……始まったよ……』 素晴らしき6人がモシャーーと溜め息を吐いた───だが気にしない! 俺は……俺はラーメンも焼きそばも好きだが、作るのならばうどんが好き! そしてこう見えてもうどんを一から作れる技量の持ち主よ!! ……ちなみに空界に住んでいる我らの主食は、主にうどんだったくらいだ。 さすがにうどんの粉は晦に創造してもらってあったんだが。 幸いここには穀物系の材料は揃っている。 ならば作るしかあるまいよ!最高のうどんを!! 藍田 「恨むぞお前ら……。提督はな……うどん作りだけは半端ねぇんだよ……」 岡田 「メシ食えるのいつになるかなぁ……」 ナギー『な、なんじゃ?うどんというのはそんなに時間がかかる食べ物なのかの?』 シード『袋から取り出したうどんをショーユかソースで焼くだけと聞いたが……』 田辺 「提督の場合、こだわりがあるから最初から作らなきゃ気が済まねぇんだよ……」 ナギー『……つ、つまりどうなるのじゃ?』 藍田 「うどんは多分、明日にならなきゃ食えねぇな」 ナギー『なんじゃとーーーっ!!?』 シード『そ、それは……困る!そんなにまで待っていられない!』 ナギー『こ、これヒロミツ!うどんはなしじゃ!うどんは───』 シード『ち、父上!僕は───』 中井出「待っていろナギー、シード……!     貴様らのために、この博光が今出来る最高のうどんを食わせてやるからな……!」 ナギー『ヒロミツ……』 シード『父上……』 藍田 「……俺らは普通に食うべ」 丘野 「で、ござるな」 岡田 「提督うどんは滅茶苦茶美味いんだけど、時間がかかりすぎるのがなぁ……」 清水 「あ、でも今はいろいろ身体能力も変わってるわけだし、     効率よく出来るかもしれないぞ?」 藤堂 「効率よく出来る能力を得たからこそ、さらにこだわるかもしれないだろ……」 総員 『あ〜あ……あるよそれ絶対……』 なにやら囁かれていたが、俺は構わずキッチンに入って準備を始めた。 さあまずは小麦粉!塩!水!おまけに……酢! それらを適量とって合わせて、練る!練る!練る!! ククク、待っているがいい皆の者……! いろいろレベルアップした博光うどんを久しぶりに振る舞ってくれるわーーーっ!! ───……。 ……。 ごりごり……ぐりぐり、ネリネリ…… バサバサバサバサ……ぐっ、ぐっ……ネリネリ…… トン、トン、トン、トン…… ことことことこと……ジュワァ〜〜…… ジュゥ〜〜〜……ジュッジュッジュッジュゥウ……!! 中井出「出でよ鳳凰!!」 ……なんてことをしてる場合ではなく。 中井出「よっしゃあ出来たぁあーーーーーーっ!!!」 多めに作ったうどん料理をゴハーと木のテーブルへと運ぶ! ……と、皆様はテーブルに突っ伏したまま眠っておられた。 ……気づけば世界はとっぷりと闇に包まれていた。 あれぇ……?いつの間に……。 うどん作ると時間を忘れるなぁ……。 まあしかしせっかく作ったんだから、食べてもらわねば。 中井出「……でさ、キミいつからそこに居たの?」 浩介 「いつでもいいではないか!さあ!その掻き揚げうどんを我に!」 中井出「………」 いつの間にか志摩浩介がそこに居た。 まあ、いいけどね。 中井出「食料とは食べるためにあり!さあ遠慮なく喰らうがいい!」 浩介 「うむ!貴様のうどんへの熱意……この志摩浩介が試してくれる!」 マイ割り箸でも持っていたのか、パキリと折って箸を動かし始めた。 俺はそんな志摩(兄)を横目に、眠っている者どもを起こしにかかる。 中井出「すぅ……すわっ!起床!!」 ザザァッ!! 総員 『イェッサァッ!!』 我が声に、猛者どもやナギーやシードが一気に起き上がる!! …………だがそれ以外は寝たままだ。 まったく、なんとだらしのない。 藍田 「くぁああ〜〜〜ひゅひゅ……ありゃ?     このにおい……おおっ!提督うどん完成したのか!?」 岡田 「ううお懐かしい匂いっ!どれくらいぶりだ!?」 清水 「腕は落ちてねぇでありますか提督!!」 中井出「もちろんだ!さあ喰らうがいい!」 総員 『サーイェッサー!!』 浩介 「《ゴシャアーーーー!!》うぅううまぁああいぃいいぞぉおーーーーーっ!!!」 総員 『ほぎゃぁああああっ!!?』 いざ、と箸を持った猛者どもの横で、口から虹色の輝きを放つ男が一人!! 藍田 「なっ……てめぇいつの間に!?」 浩介 「掻き揚げうどんあるところ、志摩浩介アリ!だがこれは素晴らしい!     同志の力を以ってしてもここまでのうどんを作れるかどうか!     いや、恐らく無理であろうな……!     ぬうう貴様、これだけのうどんをこの世界で作るとはいったい……!」 中井出「フフフ……訊かれたならば応えよう、それがある種の原ソウル……!     この博光こそがラーメンでも焼きそばでも蕎麦でも素麺でもなく、     うどんにこそ料理魂を注ぐ原中が提督、中井出博光である!!     料理の腕もそこそこに、鍛えてみせますうどん道!!」 浩介 「その情熱……掻き揚げうどんのみに絞ってはみぬか!?」 中井出「だめね!断るね!知るのだ志摩よ!俺はひとつを極めたいのではない!     うどんという食べ物の、様々を知りたいのだ!     極めたいのではなく、知りたいのだ!     そしてこの博光のうどん好きは情熱ではなくただの趣味!     情熱を唱えることが出来るほどのめり込んでいるわけではないわ!」 藍田 「《ずずー、ずぞぞっ……》おほっ、美味ぇ……!」 ナギー『おおお……これが煮込みうどんなのじゃな……!     やわらかすぎず硬すぎもせず、噛むと程好い弾力が顎を刺激し、     そうしているうちに味覚に汁の味が染み込み……!』 シード『これが焼きうどん……!香ばしいのに焼きすぎているわけじゃなく、     振りかけられた削り節が、立ち上る熱気に踊る様が心を躍らせる……!     《ずずっ、ずずず》……ああ、焼いてあるのに     けっしてベタベタしているわけでもなく、だけどしっかりと熱が通って……』 清水 「や、もうなに言ってるか解らんから普通に食えって」 藤堂 「相変わらず美味ぇなぁ……無駄に時間かかるけど」 中井出「なにを言う!うどんは練ったあとに十分に寝かさなきゃ美味く出来ねぇんだぞ!」 岡田 「聞き飽きたから叫ぶなよ鬱陶しい」 中井出「ひどい!なんてひどい!!」 皆様に……というより猛者どもに言わせれば、 うどんに熱中して周りが見えなくなった俺はかなり性質が悪いらしい。 うどんについて熱く語ることもしばしば、 話が逸れてポニーテールについて語ることもしばしば。 中学の時なんか、逸れに逸れてエロトークに走ることもあったんだとか。 ……どれも覚えてないんだけどね。 しかも中学ン時はうどんなんて作れたもんじゃなかったし。 浩介 「《ずずーーー……ごとん》馳走になった。では我はゆく」 中井出「ああお客さん、お勘定」 浩介 「おっとこれは失礼した。いくらだ?」 中井出「部外者ですので有り金全部置いていけ」 総員 『まさに外道!!』 浩介 「5$だが、構わんか?」 中井出「……キミさ、どんなファンタジーライフ送ってきたの?」 浩介 「食べ歩きツアーである。     より掻き揚げうどんに近しいものを求め、延々とバトルと素材売りの毎日だ」 総員 『欲望に素直なのか馬鹿なのか……』 我らに馬鹿って言われちゃキミ、人として相当危ないぞ? ナギー『おかわりなのじゃー!』 シード『お、おかわりを!』 中井出「はいはい今よそりますからね。量は?大盛り?中盛り?」 ナギー『もちろん大盛りじゃ!』 シード『麺類を頼むなら大盛りとの父上からの教え、忘れる筈がありません!!』 中井出「よしそれでこその僕の仲間!」 浩介 「我は中盛りで頼む」 中井出「なぁああに言ってんのそんな痩せた体でェエエ!!     男の子はねェエ!少しくらい太ってたほうがいいのォ!!」 浩介 「だったら最初から盛り具合など訊くでないわ!」 中井出「口答えするんじゃないのォオ!     アンタはもうホント人の揚げ足ばっかりとってェエ!!」 ナギー『む、う、むう……!鍋焼きうどんとやらもこれで案外いけるのじゃ……!』 シード『このざるうどんというのも、つゆの味が絶妙で……!』 藍田 「毎度思うんだけどさ、提督。汁ってどうやって作ってるんだ?」 中井出「特選ブレンド醤油を砂糖とともに沸騰させ、アクを取り取りくたくたと。     そこにみりんと焼酎を混ぜ、じっくり寝かせる。     寝かせたら何倍かに薄めて、     カツオ出汁で割るかさらにアルコールを飛ばしたみりんを加えて寝かせて完成。     これ以上は秘密さ」 あとは個人で工夫しましょう。 え?手順?知らんよそんなもの。 誰だって最初は我流から始めるのさ。 ……いや、誰だってでもないか。 だが俺は我流でいきますアイラブ我流!! 料理も戦いも超実戦流で突き進むが吉! ナギー『ヒロミツ!掻き揚げうどんを───むっ!?』 中井出「ぬう!?どうしたナギー!」 ちっこい体でよく食すナギーが、木のどんぶりを差し出した状態で固まる! しかしその硬直も少しすると解け、彼女は切羽詰った表情で俺を見た! 中井出「TOTO先生か!?バカモン!美味いからってそんなに勢いよく食うから!!」 ナギー『違うのじゃ!───南の方で森が大変なことになっているのじゃ!』 中井出「なにぃ!?僕の親しむべき自然が大変なことに!?」 今や自然は僕のお友達!よき理解者! そんな自然たちが大変な目に遭っているという! ならばどうする!? 中井出「あ、とりあえずおかわりね」 ナギー『うむなのじゃ』 中井出「俺も今のうち食えるだけ食っとかなければな」 平和だった。───じゃなくて。 中井出「《ゾボボボボボボ!!もにゅもにゅ……ゴクリ》……南か。どこあたりだ?」 ナギー『《ずぞぞー……》んぐんぐ……ん、んーんん』 マップを開いてみせると、朽ちた神殿という場所の下にある村を指差すナギー。 ……って、ここは─── 中井出「《ずぞぞー……》ここか……《もっちゃもっちゃ……》。     晦一等兵に《ぞぞぞぞ……》……ノートリアスモンスターの……《ずるずる》     剥ぎ取り邪魔されて以来だな……《ごくごくごく……》ふはー……」 あの時に手に入れた蒸気時計は今も僕の村人の服の胸ポケットに。 なんか捨てられないんだよね、これ。 ちなみに売値は500$。 そんな中途半端も手伝ってか、売れない状況が今にも至る。 ……と、おかわりおかわりと。 ずぞぞぞるぞるもちゃもちゃもちゃ……ごくり。 じゅるじゅるじゅじゅるもぐもぐ……ごとん。 中井出「よし!ではこれより自然の救済へと向かう!志願する者はおるか!」 藍田 「あー美味い提督うどん美味い……」 丘野 「一度食うとクセになるでござるな……」 清水 「結構食ったのになぁ……まだ入るよ」 岡田 「まあ正直、アイルーたちの作った量じゃあ満足は出来なかったし」 藤堂 「おかわりおかわりっと……」 田辺 「あ、俺のも頼む」 中井出「……聞いちゃいねぇ。ならばシード!……ぐあ」 シード『う、うう……お腹が……お腹が……』 視線を向けてみれば、食いすぎで腹を壊した魔王の子がそこに居た。 うーむ……これはこれで珍しい。 中井出「ならば───」 ナギー『《んぐんぐ……ごくん》……うむ、そうじゃの』 この場で意識があり、メシの誘惑に負けていないのは俺とナギーのみ……! 志摩浩介は結局掻き揚げうどん食ってるし。 ならば……俺達が行くしかねぇだろ? 中井出「我、ここに唱えん!」 ナギー『我らが進む道の先々に!』 中井出「夢と希望と栄えあり!」 エイオー!と叫んで、ナギーと拳を軽く殴り合わせる! 既に鍛え終えてあったらしいジークを手にして準備完了!! さあ行こう!我らの自然を守るために! え?これから自然を守り続けるつもりなのかって? グオッフォフォ、そんな、俺が保護団体みたいな真似する筈がなかろうモン。 助ける理由の100%中、“受けた恩は返す!”が10%として、 残りの90%を喩えるならばゲームのイベントへの心!! もちろん緊張感はあるから全力で救うが。 え?然の精霊と契約しているヤツの言動とは思えない? だからいいんじゃないかっ……! ……と、まあ素直な心でもあるけど冗談はこれくらいにしといて。 ゲームの中だからって……いや、ゲームの中だからこそ、気を引き締めなければならん。 俺はこの世界が大好きです。 もちろん、行く手を阻む敵も、協力してくれる味方も、力を与えてくれる武具たちも。 なのに一方的に力を借りるだけ借りて、たまの危機に助けもしないじゃ、 そりゃアンタ……RPGキャラクターの名折れじゃきん。 だから救おう自然の危機! 世界救済なぞガラじゃねーが、それがイベントならば心も踊る胸踊る! 中井出「いくぜナギー!」 ナギー『いくのじゃー!』 クサナギをエジェクション! 浮かせたそれに、抱きかかえたナギーとともに飛び乗って一気に飛翔!! まるで空飛ぶ飛行雲に乗った下等生物のように遙かなる大空へと踊り出し───! デスゲイズ  『キゲォガァアォアァアアアッ!!!!』 中井出&ナギー『キャーーーーーッ!!!?』 ……開幕メテオで塵と化しました。 【ケース547:晦悠介/水の哀物語】 ズダダダダダダダダ……!! 悠介 「───!見えてきた!あれだ!」 ルナ 「わー、明るくて解りやすい」 夜華 「っ……なにを暢気なっ!あそこにはまだ人が居るのだろう!?」 深い闇を駆け、俺達はようやく朽ちた神殿近くまで辿り着けた。 だがそこから見える景色は闇を赤く染める景色……つまり、火に囲まれていた。 さびれた教会から見ても木々が生い茂っていたそこが、今では炎に包まれて……! 悠介 「ルナ!カルミネルサイスで湖の水を吹き飛ばしてくれ!     篠瀬は吹き飛ばした水を風で火にブチ当ててくれ!」 ルナ 「任せてー!」 夜華 「承知!」 悠介 「俺は生存者を確認してくる!     竜が居たらそのまま戦闘になる───あまり無茶はするなよ!」 ルナ 「それ悠介に言われたくないかも」 夜華 「悠介殿こそ気をつけて!敵の数が解りません!」 悠介 「ああ!」 言うや、駆ける。 密度の高い霧を創造しながら、燃え盛る森を潜り抜けるようにして。 ところどころでベキベキと鳴る木々の音が痛々しい。 だがそんなことを考えてる暇なんてないんだ。 あの村には、ホツマやミセナが居るんだ……! こんなところで立ち止まってなんかいられない! けど……耳に届くんだ。 神の力の所為かは知らないが、自然の声が……痛い、痛いって。 それでも人命には───! 声  「超必殺!飛鳥文化アタック!!」 ギャルルルルルどっがぁあああああああんっ!!!! 悠介 「オワァアーーーーーーッ!!?」 で、その痛い痛いって言ってた木々が、突然振ってきた火炎車によって破壊されたわけで。 ちなみにその火炎車ときたら、 着地に失敗してバキベキゴロゴロズシャーと地面を転がり滑り、 着地に失敗したもんがーのように血反吐を吐きながら痙攣していた。 超必殺って、自分を必殺してどうすんだ。 悠介 「お、おーい……中井出〜?」 中井出「ぐっ……!さすが飛鳥文化アタック……!背中が物凄く痛い……!     だが諦めない!それが俺達人間に出来る唯一の戦い方なんだよ!!」 悠介 「奇遇だな〜とか言うべきなのか解らん状況だが……     とりあえずなにしに降って出た」 中井出「フハハハハハ……!?ハハハハハハハハ……!!     訊かれたならば応えよう!それがトキメく原ソウル!!     自然の平和を守るため、ここに降りしは僕博光!!     自然の平和は───僕がたまに守る!」 悠介 「たまになのか……     ていうか現れて早々に自然破壊したヤツのセリフじゃないだろそれ!」 中井出「救済するヤツが破壊を齎してみました。最強」 燃え盛る自然を背景に、ズビシィと決めポーズを取る自然の救済者が居た。 ……もう、ほんとどう反応していいのか……。 悠介 「けど、丁度よかった!この先の村が───ホツマたちが危険なんだ!     話によればこれはドラゴンに襲われてるかららしい!頼む、力を貸してくれ!」 中井出「なにぃ!?これはドラゴンの仕業だというのか!!それは一大事だ!」 悠介 「ああ!だから───」 中井出「だが断る。この博光の最も好むことの一つは。     切羽詰った状況下にある者の願いをNOと断ってやることだ」 悠介 「お前なにしに来たんだよ!!」 中井出「自然の救済である!!《どーーーん!!》」 悠介 「破壊しちまったくせに今さら威張るなぁっ!!     いいから手伝ってくれって!たまには一等兵の頼みくらい聞けこらっ!!」 中井出「《がしぃっ!》むう!?なにをするか!離したまえ!」 悠介 「《びしぃっ!》地味に痛ぇ!!」 中井出の肩を掴んだ俺の右手が、すかさずと言っていいほどの速度で叩かれた。 そして振り向きざまの笑顔で彼が一言。 中井出「手伝うよ」 悠介 「叩く意味なかったよな!?なぁ!!それなら叩く意味なかったよなぁ!?」 中井出「バカモン!言ってる場合か!まず森の鎮火を───」 悠介 「それはルナと篠瀬がやってくれる!」 中井出「そうか!ならば晦一等兵よ!貴様は村へ走り、ドラゴンと対峙せよ!」 悠介 「イェッサー!」 中井出「僕応援してるから」 悠介 「戦えよ!!」 そうこうしてるうちに湖から巨大な波が発生し、次いで風とともにソレが降りかかる!! 轟音さえ聞こえてくる水の塊は瞬く間に火を消し、 中井出「恵の雨だちょーーーっ!!《ドゴォス!!》オギャーーーリ!!」 それを見て喜ぶ提督の顔面に、いつかのカニ型モンスターを降らせた。 それが相当痛かったのか、提督はブシャアアと鼻血が噴き出る鼻を押さえながら蹲った。 まあ……痛かったのかもなにも、ありゃ普通に痛いよな。 それでもこんなところでボーっとしているわけにもいかない。 俺は蹲る提督の肩を軽く叩いて、立つように促した。 悠介 「ほら、馬鹿やってないで行くぞ」 中井出「いいよもう……どうせ俺馬鹿だし……」 悠介 「ここで素直に受け取るなぁっ!!ああもう面倒なやつだなっ!こいっ!」 中井出「《グイィッ!!》痛いよ姉さん!!」 悠介 「だぁああうるせぇえーーーーーっ!!!」 逸り、耳を引っ張っただけでこの始末……! どうしてこいつはこう状況に応じてポンポンとヘンテコな言葉出せるんだよ! こんなのは彰利だけで十分だってのに! ああもう中学時代の俺ってほんと偉大だ!あの頃の俺こそが賢者だよまったく! よくこんな集団に囲まれながら、あの頃が一番だったなんて思えたもんだ! けど───ああそうさ今でもそう思えるさ悪かったなちくしょう!! 学生生活の中で、あれほど楽しめた時代なんてなかったさ! 中井出「じゃあ僕帰るね?」 悠介 「いっ……いきなりなにを言いやがるかこのたわけ!」 中井出「や……だってさ、僕の目的って自然の救済だけだったし」 悠介 「手伝うって言ったのは!」 中井出「ウソだ!《バゴォ!》ゲファーーリ!!」 なんの臆面もなく虚言だと言い切った提督の顔面に、有無も言わずにストレート。 悠介 「おぉおおおのぉおおおれぇええはぁあああ……!!」 中井出「きぃいいいみぃいいいがぁああぁああよぉおおぉおはぁあああ〜〜〜♪     ちぃいよ《バゴォン!》ゴフォーーーリ!!」 悠介 「ドラゴンに襲われてる村を前に君が代を斉唱する馬鹿が何処に居るーーーっ!!」 中井出「馬鹿ではないが今ここに!」 悠介 「斉唱したから馬鹿だって言ってるんだこの馬鹿!!」 中井出「うるせー!大体貴様が君が代みたいな口調でおのれは〜なんて言うから!」 悠介 「そこで君が代を連想するお前の頭がどうかしてるんだよ!!     お前ちょっとそこに座れ!会話のなんたるかを今からきっちりと教えてやる!」 中井出「ククク……いいのか?こうしてる内にも村はどんどん燃えていくんだぜ……?」 悠介 「おぉおーーーーーーーおおおおおおほんといちいち腹の立つ魔王だなぁもう!!」 中井出「あ、ところで座り方は結跏趺坐(けっかふざ)でいい?」 悠介 「頼むから……!頼むから人の見解常識破壊しまくるのはやめてくれ……!」 中井出「説明しよう!結跏趺坐とは十二正坐の一つであり!」 悠介 「黙れぇえええーーーーーっ!!!!」 中井出「なんだよ!キミが座れって言ったんじゃないか!!」 悠介 「じゃあもうそこでずっと座っててくれ!俺一人でも村を助けにいく!」 中井出「おおそうか!───ルナ子さ〜ん!篠瀬さ〜ん!晦がもう帰ってもいいって〜!」 悠介 「中井出ぇえええっ!!てめぇええええーーーーっ!!!」 なんかもう泣きたくなった。 俺……ここになにしに来たんだっけ……。 ───……。 ……。 ……で。 中井出「ワガガガガ……!!」 ルナと篠瀬が合流した少しあと。 その場には、顔面をボコボコに晴らした提督の姿があった。 ルナ 『エロっち、自業自得』 夜華 『まったく、つくづく貴様は考えることが浅ましい』 中井出「あの……だからって三人がかりでボコらなくても……」 ルナ 『殺されなかっただけありがたく思いなさいよぅ。     こっちには斬られた恨みとかあるんだから。     それを、悠介がよせって言うからやめてあげたのよ?』 中井出「ありがとう」 ルナ 『ふえっ!?や……な、ななななんで素直に謝るの!?     ゆ、ゆーすけー!やっぱりこの男なに考えてるのか解んないよー!!』 中井出「フッ……一丁前に照れてやがる」 夜華 『……貴様は。誰であろうがどういう状況であろうが、楽しめればいいんだな』 中井出「うむ。ありがたく思いなさいとか言われて素直に礼を言う……     一度やってみたかったんだ」 顔面ボコボコの男は、遣り遂げた顔で遠くを見ていた。 ……とことん格好のつかないヤツだった。 これはこれで哀愁漂ってるが、格好はつかない。 中井出「しかしだ!この博光をボコっている暇があったなら、     何故人々を助けるために走り出さなかったのだ!《バゴォ!》ぼべっ!」 夜華 『散々人の神経を逆撫でした貴様が言うな!!』 中井出「この状況で俺以外の誰に言えと!?」 鞘で殴られようが元気に喋るお前もどうかと思う。 ともあれ、現在鬱葱とした森を抜けたところだ。 はたしてそこに村はあり、民家は燃やされ、 人々は混乱している───そんな光景を見渡せる場所に、俺達は訪れてしまった。 悠介 「───提督!やることは解ってるよな!」 中井出「ああ!火事場泥棒なら任せておきたまえよ!《ゾグシャア!》ギャアーーーッ!!     き、斬ったァアーーーーッ!!問答無用で斬ったァーーーーッ!!」 悠介 「ある意味で実にRPGらしい考えだけど、今だけはその判断基準を捨ててくれ!     救命優先だ!一人でも多く助けてくれ!」 中井出「お金がない僕を助けてください」 悠介 「すまん、救いようが無い上に救命じゃねぇ」 中井出「ゲェ!一秒立たずに見捨てられた!!」 とかなんとかやってるうちに、暴れまわるドラゴンのうち一体がこちらへ向かってくる! 目に見えるだけでも十数頭はいる……面倒なことになりそうだ───!! 悠介 「提督!」 中井出「……、……うむ、そうか。よし晦一等兵!貴様は村人の救出をしませい!     モンスターどもはこの博光に任せておくがいい!」 悠介 「え───て、提督!?」 中井出「こんなこともあろうかと、既に手は打っておいた!     実行するためには時間が必要だったため、いろいろと遊ばせてもらったが───     もう大丈夫だ安心するがいい村人たち!さあ始めるのだ───ナギー!!」 悠介 「───!?」 提督がそう言った途端だった。 ゴコンッ……と、身体の芯に響くような深い地鳴り…… そして、強烈な地震が起きたと思うや、地面を破壊して現れる巨大な木の根!! それは物凄い速度で伸び、空を舞うドラゴンたちを捕らえてゆく!! 悠介 「……こ、これは……!?」 中井出「自然の仇は自然に撃たせるべく、俺とナギーとで考えた裁き!!     あのー、ようはナギーには別の場所で意識を集中してもらい、     蓄積が出来たら一気に解放してもらうって作戦だったのだ」 根は伸び、まるで植物のツルのようにドラゴンへと巻きつき、強い力で締め付けてゆく! ドラゴンも抗うが、所詮は守護竜でもなければこの瘴気にも打ち勝てない三流ドラゴン。 既に提督のレベルさえ越えているナギーの敵ではなかった。 次々にメキメキと絞るように締め上げられ、身動きとれないでいた。 ───が、俺達の眼前まで飛んで来たこのドラゴンは別だ。 こいつには根が届かず……いや、俺達を巻き込むまいとナギーが遠慮しているんだろう。 ともかく他のドラゴンより一際デカいドラゴンここに居た。 ……と、そんなドラゴンを前にズチャア……と前に踏み出す男が───!! 悠介 「提督!?」 中井出「晦一等兵……村人を救え。モンスターはこの博光に任せろと言ったろう」 悠介 「け、けどな、いくらなんでも」 中井出「覚悟なぞ既に決まっている。行ってこい。そして大した野郎になってくるがいい」 ニヤリと笑っていた。 恐怖なぞ露にみ見せない堂々とした笑みで。 ……まあ、顔は笑ってるんだが……脚が震えていた。 いや、あれもある意味で笑ってるって言っていいのか?脚が笑ってるって。 村人 「ひ、ひぃいっ……なんでこんなことにっ───ひっ!?     あ、ああああ……あ、あ───!ま、ま……魔王だぁあーーーーっ!!」 と、そこに走ってきた一人の村人が提督を見て、青かった顔を更に青くして叫んだ。 村人2「なっ……なんだって!?魔王!?」 村人3「それじゃあこのドラゴンはまさか───!!」 しかもその叫び声を聞いて、逃げ惑っていた村人たちが立ち止まり、 口々に魔王魔王と震え出す。 ……やばい、提督は村人を俺に守らせるために前に出てくれたってのに───! 中井出「………………OH」 しかし提督はポムと手の平に拳を落とし、 中井出「そうだ魔王だぁーーーーっ!!     ワハハハハ!!さあ逃げ惑え逃げ惑えぇえーーーーーっ!!!」 と叫びつつ、村人達を更に恐怖させた!! ───野郎!この状況を楽しみ始めやがった!! ドラゴン『グオォオオオオオオッ!!!』 中井出 「キャーーーッ!?」 しかしそんな提督にゴヴァーと襲い掛かるドラゴン!! そして怪虫に襲われそうになった仲田くんが如き悲鳴を上げる提督!! ───じゃない!そんなこと考えてる暇があったら救助に向かわねぇと!! すまん提督!ひとまず見捨て───ゴシャーーーン!!! 悠介 「うおぉっ!!?」 いざ走ろうとした途端、火災の明るみさえ掻き消えるほどの閃光がこの場を支配する!! ルナ 「ひやぁなになになにーーーっ!!?」 夜華 「これは───うぅっ!?」 異常であると確信できるほどの閃光に、俺もルナも篠瀬も振り返った。 すると、その閃光の中心に───光り輝く提督の姿が!! 悠介 「なっ……ななななぁあーーーーーっ!!?」 夜華 「な、なんだ……これは……!意識が……!?」 ルナ 「う、うぃいい……!?」 しかしその姿を補足するや、俺達の中でなにかが躍動した。 この感情はなんだ……!?この、喩えることの出来ない謎の感情の正体は……!! 意識が……意識が提督に釘付けになる……! 体が……勝手に跪く……! 中井出「ストック解除鬼人化&CHRマックス……“取り込む”!!」」 シュゴォオオ……パパァアーーーーーッ!!! 悠介 「っ……!」 CHRって……カリスマ!? これは異常すぎるカリスマの為せる業だとでもいうのか!? くっそ……走り出したいのに、提督から目が離せねぇ!! 悠介 「ル、ナ……!篠瀬……!」 夜華 「面目……ありません……!体が動かないのです……!」 ルナ 「ななな……なんなのよぅー……」 とんでもないカリスマがそこにあった。 意識しているわけでもない……いや。 跪きたいと思うどころか反発したいと全力で思っているにも関わらず、 身体はそれを許してくれない。 中井出「者どもよ……我が前に平伏せ。我が名は中井出。中井出博光でございます。     中井出!中井出をよろしくお願いします!」 中井出の目の前のドラゴンなんて、暴走の戒めさえ忘れるほどに震え、平伏していた。 発してる言葉なんて、やかましいだけの選挙運動みたいなものなのに。 俺達は……そんな存在を前に、立ち上がれないでいた。 ……村人は、と視線を向けてみるが、村人たちでさえ立ち上がれず─── それどころかまるで王国の絶対王を見るような目で、 感動すら覚えてるように震えていた。 その一方で提督は─── 中井出 「馬鹿じゃなかと!?人と仲が悪いのは解るけど森まで燃やしてどげんにすんの!      アタ自分がなんしょっとかわかっとーと!?はらくしゃあ!!」 ドラゴン『お、お許しを……!我々にもなにがなんだか……!』 中井出 「ッアーーッ!!まーた言い訳しようとしておるよこのお子はーーーーっ!!      なにが信じられないってアンタらの誇りが信じられないよもう!!」 ドラゴン『な、なんだと───!?』 中井出 「お座り!!」 ドラゴン『《ビクゥッ!!》ご、ご無礼をっ!!お許しください!!』 ……圧倒的カリスマ、とでも喩えればいいんだろうか。 仮にも竜族である相手が、もはや家臣扱い……いや、 それより低い身分にさえ思えるくらいに容易くあしらわれている。 中井出 「……さあ、アイスブレスを使えるヤツは火を消しなさい」 ドラゴン『う、ぐっ……な、何故我ら竜族が、人間なぞに、顎で使われなければ……!』 中井出 「……ふぅむ、困ったちゃんですねぇ……」 悠介  「───!」 精一杯の誇りを胸に、ドラゴンが最後の抵抗を示す! だがそれを見た提督はコホリと喉を鳴らし───やばい!アレが来る!! 気をしっかり持て!じゃないと───! 中井出「この場に居る各員に告ぐ!!今すぐ全力を以って鎮火活動をせよ!!     傷ついた者には癒しを!焼けた森には慈しみを!!時は急を要する!!     いいか者ども!これはミッションである!!     座して待つ貴様らに告ぐ最初の力試しである!!     貴様らの力がどれほどまでに世に繁栄を齎すものなのか、     今此処で救済という意味を以って存分に発揮するがいい!!     イェア・ゲッドラァック!!ラァアアイクッファイクミィイイイッ!!!!」 ズガシャシャシャアアッ!!! 総員 『Sir(サー)!!YesSir(イェッサー)!!』 ……しっかり持つどころじゃない。 放たれた言葉全てが俺の意志など簡単にすり抜け、心に嫌になるくらい染み渡った。 ───抗うどころじゃない。 むしろ逆で、率先して“やらなければ”という気が、 あとからあとから沸きあがってくるのだ……!! ナギー『消火じゃーーーっ!!消火をするのじゃーーーーっ!!』 悠介 「ルナ!篠瀬!鎮火と救助を急ぐぞ!提督たっての希望だ!!     俺達の活躍を!あの人に見てもらうんだ!!」 ルナ 「ん!全力で!」 夜華 「悠介殿!わたしは鎮火に走ります!あの方の望みとあらば!」 種族の壁などなかった。 その場に居た全員が全員、提督の言葉になんの疑問も抵抗も持たずに従っていた。 ───……。 ……間も無く、鎮火も救助も終わりを告げた。 焼けた木々もナギーの力で緑を戻し、傷ついた人たちも、傷もないままに座していた。 中井出 「うむ!大儀であった!」 総員  『もったいなきお言葉……!!』 ドラゴン『さあ……なんなりと罰を。      貴方様の命であれば、我々はどんな苦難をも受け入れましょう……』 村人1 「い、いえ!その前にお聞かせください!      この騒ぎは本当に魔王さまが起こしたことなのですか!?」 村人5 「な、なにを言い出す!この魔王さまがそんなことをする筈がなかろうが!」 村人3 「そうだそうだ!大体そうだとしても、鎮火をすることになんの得がある!」 中井出 「うるせー!今僕が喋ろうとしてるんだから静かにしてよもう!!」 村人たち『し、失礼を!!』 だとしてもその言い方はどうかと思うぞ。 ……と言ってやりたいんだが、 提督に突っ込みを入れるという行為自体が出来ないくらいのカリスマを感じ、 俺の体は動いてくれない。 中井出 「では裁きを申し渡す!!ドラゴンどもよ!なんの罪もない村を襲い、      森や建物、食料や売り物を売った罪は大変重いものである!!」 ドラゴン『……覚悟は出来ております。さあ、自害しろと言うのなら───』 中井出 「だが幸いにして死者無し!燃えた木々も復活し、      焼けた食料も木の実や果実や野菜だったため、ナギー新兵の手により復活!      おこなった行為は咎められるべきであるが、反省の色があるのならそれで良し!      よって命じる!!二度とこんなことをしないと誓い、巣へと戻れ!!」 ドラゴン『なっ……』 村人1 「い、意義あり!それでは我々はっ……!我々は散々と襲われ、      恐怖だけを植えつけられただけの被害者でしか……!」 中井出 「では問おう!      貴様は復讐と称してドラゴンを恐怖させたいためだけに今を生きるか!      せっかく拾った命!そんなくだらん思想のために散らすか!!」 村人2 「い、いえっ!わ、わわ私がやるのではなく、      魔王さまがそう裁きを下してくれれば……!」 中井出 「バァアーーーッカモォーーーーン!!!      恨みごとを晴らすべく人を利用するとはなんたる村人!!      ある意味天晴れだがやはりバカモン!!      恐怖は残るだろうが、生きてる今をありがたく思うことが何故出来ぬ!!」 村人3 「し、しかし!子供たちは今日起きたことをきっと忘れないでしょう!      大人になっても、ずっとそれを思い出し続けるのです!      そんなことになったらと思うと───!!」 中井出 「大丈夫だよお宅の息子さんならきっと強い子に育つよ。      あれだよホラ、おたくも若い頃は苦労したけど、いい顔で笑ってたじゃないの」 村人3 「オメェは俺の何知ってんだァアア!!」 中井出 「いえあの……実は名前も知りません。誰?」 村人3 「俺は───」 中井出 「あ、やっぱいいです。ともかくドラゴンたちには反省してもらうってことで」 村人4 「ぐっ……しかしそれでは!」 中井出 「いーじゃないのもう!ドラゴンだって瘴気の所為で暴走してただけなんだから!      見なさい!今となってはもう正気で───」 ドラゴン『グ、グググ……!!』 中井出 「あれ?」 振り向いた先にはガタガタと震えるドラゴン。 ……やばい、提督のカリスマ効果が消えてきたんだ! ドラゴン『グガァアォオ!!』 それに伴い、暴走もぶり返し───正気を失った瞳のまま、ドラゴンが提督に襲い掛かる! 中井出 「ぬおお!?《ヂッ!》痛い!───なにしやがる!!」 ドラゴン『《バゴォン!!グゴォゥエ!?』 襲われる提督!───そして殴り返されるドラゴン!! 爪が掠っただけであんな痛烈なナックルを返されたんじゃたまらないな、うん。 なにせ、どうやら顎が砕けたらしく、ゴロゴロと転がりまわってる始末だ。 中井出「解ったよ村人たち。ドラゴンからはキミたちに恐怖を。     だったらドラゴンには僕から素敵な恐怖と絶望を与えてあげるよ」 村人2「えぇっ!?」 村人3「で、でまかせだ!竜族相手にそんなこと出来る筈がない!!」 中井出「おばかさん!出来るわけがないなどと決め付けて、     最初から可能性を捨てるとは何事!出来ないまでも、     やってみようって気さえ捨ててる貴様に明日を夢見る資格はねーーーっ!!」 言いながら、ジャゴォンッ!と重苦しい音を立てて稀紅蒼剣を構える提督! ……あとは、まあ。説明の必要など要らなかった。 試練や呪いくらってても守護竜の大半を屠ってきた提督相手に、 ザコドラゴン如きが敵う筈があろうか、いや無い……反語。  ザンザクドシュザギャゴバパガギャアアアアア……!!! ───……。 ……。 死ュウウウウ…………!! 中井出「成敗!!《メギャアァアーーーン!!!》」 ……提督はやたらめったら強かった。 特に竜に対しては半端じゃない強さを発揮し、敵が可哀相に思えるくらいに暴れてみせた。 結果…… ドラゴンども『グビグビ……』 ドラゴンどもは恐怖という名の敗北を知り、泡を噴きながら倒れている。 中井出「うむ。貴殿らも力に飲まれぬよう気を張り続けめされい。     守護竜にだって出来るのだ、貴様らにもきっと出来よう。     それを最初から出来ぬものと決め付けてしまうのは実にもったいない。     村人でも勇者になれる……それを知るために、     俺はこの世界に降り立った………………っ!」 悠介 「どうしてそこで無頼伝になる」 中井出「じゃあ僕もう帰るね?」 悠介 「せめて話の前後はくっつけようぜ提督!!」 中井出「だって自然の救済のためにここに来ただけだもの。     あ、ちなみに自然が危機になれば必ず訪れるわけじゃないからね?     僕はナギーと契約し、然の加護を得て、自然とお会話出来るようになった!     だがしかしだ!それは自然を守るためになったわけではあらず!     あくまで言おう!俺はこの世界を楽しみ尽くすために乱世を駆けている!     力を分けてくれることは純粋にありがとう。     だけど僕、なにかを守るために強くなってるんじゃないからソーリー」 悠介 「お前……力借りるだけ借りといてそれかよ……」 中井出「フフフ、晦一等兵よ……それを言い出したらキリがないだろう。     目の届かない場所のものを守るなんて無理だ。     決め付けはよくないが、出来んことは出来ん。     ここで絶対に守ってみせる!なんて言ってみろ、それこそウソだぞ?」 悠介 「や……それは……」 ……それは、俺が入った袋小路と同じだ。 守りたいものを守るとか、全てを守るとか…… そんなことをやり続けて、いつしか原初を忘れた俺が居た。 そう、俺は家族と親友と一緒に居られればよかった。 日常がそこにあるならと願っていた。 そんなことを幾度も繰り返した俺がこのことについて口出しするのは、 お門違いもいいところだ。 中井出「あ、今お前お門違いもいいとこだーとか考えただろ」 悠介 「へっ!?な、ななななんで……」 中井出「そう思ったんなら、それこそお門違いだぞ〜。     人がなにをどう思おうが人の勝手だろ。貴様は自由に生きろ。     守りたいなら守るがいい。この博光はそれを咎めたりなどせぬわ。     だが、その代わり我の生き方にも言葉を飛ばす必要はない。     貴様は自由に生きろ。他人の言うことなど気にすんねぃ。     貴様の意思は貴様の物だ。     いろんな覚悟があるなら、もうそれが“自分”でいーじゃねぇか」 悠介 「いや、けどな……」 中井出「考えるな!本能で戦え!ただ増えて減るだけの世界!     その中で唯一の真実を唱えるとするならば、それは己が本能だ!     つまらん世界を自分の思い通りに生きたいと願うことの何が悪か!     守りたいなら守れ!誰かに言われたからってポイとやめるほど、     貴様の“守りたい”って気持ちは軽いものだったのか!」 悠介 「ま、待て待て待てっ……!話が飛躍しすぎだっ……!     俺はようやく、守りたいだなんて思わなくなってきたんだぞ……!?」 中井出「うむ!本能としてそれを思わなくなっているのなら何も言うまい!     俺が言いたいのは自由に生きろってことだけだから。     言われた通りに生きるだけってつまらんだろ?つまらないね!俺はつまらん!     それと同じだ!貴様が俺に言い出したことは、     ようするに力を借りてるなら全ての自然を守りやがれってこと!     お馬鹿唱えも大概にしろクズが!俺は俺の生きたいように生きるのだ!     守りたいと思えば守る!遊びたいと思えば遊ぶ!     誰かに強制されて守るだの遊ぶだのして何が楽しい!!     ……いや、強制されようが楽しむに違いねーけど」 どっちだよ。 夜華 「随分勝手な物言いだな。貴様は自分のことしか見ていないではないか。     視野を広く持ち、それらに気をかけんとする悠介殿の思想と一緒にするな」 中井出「むう……篠瀬さんって頭硬いよね」 夜華 「なっ……なんだと貴様!」 中井出「あのね、俺は自分のことだけで手一杯なの。     他人を気にかけることはそりゃ大事である。     だが、自分のことさえ満足に捌けねぇヤツが周囲ばっかに気を使えるもんかい。     俺がそんなことしたらキミ、大変なことになるよ?いろんな意味で」 夜華 「う……」 ムハーと溜め息を吐きつつ、 てこてこと歩いてきたナギーをひょいと肩車にして俺達を見る提督。 その顔は……なんていうか呆れが入っていた。 中井出「この博光からしてみれば、随分な物言いなのは篠瀬さんの方である。     理由としては───……暗くなるから教えてやんねー!くそして寝ろ!!」 ナギー『まさに外道!!』 悠介 「なっ……普通ここでそう来るか!?」 中井出「ワハハハハ!!普通じゃないから今の僕が居る!!     よっしゃあ行くぞナギー!!闇の守護竜討伐じゃーーーーっ!!」 ナギー『なんじゃと!?夜にダークドラゴンと戦うなど、無謀の極みじゃぞ!?』 中井出「そんな常識知りません!!無謀も有謀に変えましょう!!     というわけでさよなら晦一等兵!     俺はこれより地獄の一丁目に自ら飛び込むものとする!     貴様の明日がどっちか知らんが、自由な世界がここにあるのだ!     自由に考え自由に生きるがいい!硬い考えなぞぶっ潰せぇえええぃ!!     あ、なんなら一緒にくる?」 ルナ 「散々ブツブツ言ってきたくせに勧誘なんかするんじゃないわよぅ!」 中井出「なんだとこのクズが!!勧誘するしないは各自の自由だろうが!」 ナギー『そーじゃそーじゃこのクズが!!』 ルナ 「うぎぎぎぎぃいい……!!!本当にいちいちむかつくなぁあ……!!」 中井出「黙れクズが!」 ナギー『死ね!!』 ルナ 「《メギャアァンッ!!》もういいやっぱり死なすーーーっ!!』 悠介 「ちょっ……ちょっと待てお前らっ!!」 止める間もなく鎌解するルナと、それを見て左腕に妙な枝を出現させる提督! それに触発されて刀を抜く篠瀬と、中井出の肩の上で楽しそうに笑うナギー!! ああもうどうしてこいつらは人の心情なんて気にしないで、 いっつもいっつも好き勝手に突っ走りまくるんだぁああっ!! 夜華 『やはり小難しい話などする意味もなかったな!     貴様は敵だ!それだけで十分だろう!!』 中井出「その考えが大好きです!     敵であるのならいちいち話す必要など死ねぇえーーーーっ!!!」 夜華 『うわわわわぁあーーーーーっ!!?』 ルナ 『だからどうしていっつも話の途中で襲ってくるのよぅーーーーっ!!!』 ───ていとくが、あらわれた! コマンド? 1:たたかう 2:まほう 3:ぼうぎょ 4:にげる ───2! ええいこうなったら破れかぶれだ!! 悠介 「これでもこっちだって少しずつは能力解放が出来てるんだ!     イメージ解放!スプラッシュバレット!!」 HPを消費し、イメージを解放! 水魔法を創造し、必死に距離を取っている篠瀬を追う提督へと放つ!! 中井出「魔法か!ククク、ならば見るがいい我が武器の力!     元素竜の力を身に宿したこの剣に、返せぬ魔法など無い!!」 悠介 「なにっ!?」 篠瀬を追うのをやめ、勢いのままに地面を滑りながら、 放たれた魔法へとジークフリードを振るう提督! 両断する気か!?と思いきや─── 中井出「追加技能スキル“倍返し”発動!“巌流裂旋衝”(ガンリュウレッセンショウ)!!」  ゾガァッキヴォバシュゥウウンッ!!!! 悠介 「なうおぉおおおおっ!!?」 素早く切り付けらた魔法は、両断されるでもなく霧散するでもなく、 なんと巨大な水塊となって俺へと跳ね返されてきた!! どうなってんだこりゃ!───くそ! 悠介 「だったら纏めて返してやる!イメージ解放!     ライトニングブラスタァーーーッ!!」 水の弱点属性である雷を放ち、跳ね返ってきた水魔法ごと射抜いて提督を狙う! が─── 中井出「無駄無駄ァアアッ!!“紫電双龍斬”(シデンソウリュウザン)!!」  ゾガァッキヂガガチュゥウウンッ!!!! 悠介 「でぇええええーーーーーーっ!!!?」 結構なHPを消費して放った魔法までもが、倍返しで返される!! たまらず避けるが、予想だにしてなかった自体にバランスを崩す。 やばい───一手遅れる……! そう思った矢先キュヴォガドォオンッ!!! 悠介 「ういぃっ!?」 中井出「Yah(ヤー)ーーーーーッ!!!」 離れた場所で巻き起こる大爆発。 そちらへ目を向ければ、左手の枝から夥しいほどの白煙を舞い上がらせている提督と、 煙を纏いながら吹き飛ぶルナの姿が───! あの煙……竜撃砲ってやつか!? 悠介 「ちょっと待てぇえっ!!お前今まで俺狙ってただろ!!」 中井出「なにを失礼な!どんな時に誰を狙おうが僕の勝手だーーーっ!!     リヤッ!イヤッ!ィイヤァアッ!!!」 しかも提督は、吹き飛んだルナへとさらに緑色の光玉を幾度も幾度も投げつけてゆく! って……こりゃ魔法か!?なんで戦士の提督が魔法を───まさかジョブチェンジ!? い、いや……調べるによれば提督はアーチャー……の筈なのに!どうなってんだ一体!! ───タラララッスッタンタ〜ン♪ 悠介 「───はっ!?ルナ!!」 中井出「死ねぇえーーーーーーっ!!!」 悠介 「うぉわぁああーーーーーっ!!?」 ドラクエっぽいレベルアップ音が耳に届き、俺は意識を思考から現実へと戻した。 途端、そんな俺の虚を突くが如く疾駆してくる提督の姿が! くそっ!ホウケてるうちにルナがコロがされちまった! しかもそれが原因で、提督の中でなにかしらの能力が上昇したらしい……! 悠介 「ちぃっ───!!」 すかさずAGIにステータスを注ぎ、一気に距離を取る!! だがその時だ!提督の目が急に変異したように見えたのは! 中井出「エジェクション!稀紫槍カルドグラスを解放!     さらに……貴様を捉える鷹の目の解放!“イーグルアイ”!!」 悠介 「っ!?」 やべっ───回避っ……! 中井出「貫けクライストォオオーーーーッ!!!」  コフィンッ───キュヴァァアンッ!!! 悠介 「あ《ゾガボブシャォオゥンッ!!》がぁああああああっ!!!」 放たれた!そう思った時には、一言を喋る余裕しかなかった。 本当に、一言。 あ、という言葉が口から出た時には、螺旋の槍は俺の心臓を捻り穿っていた───!! ……それで、終わった。 回復なんて出来るわけもなく……塵になりながら、ただ静かに─── 謎の奇声を上げながら篠瀬を追い掛け回す提督を眺め、力尽きた。 技術や力だけが全てじゃない……スキルを極めようとすることも、立派な力になる。 それを今、身を以って知った気分だった。 それにしてもしくった……AGI重視状態じゃあ、 防御に徹したところで耐えられる筈がなかった。 Next Menu back