───冒険の書224/バッキャローマン(再)───
【ケース548:晦悠介/途方にも東方にも暮れてみる。……得るものはなかったよ】 夜明け前より遙か前。 とっぷりと夜の闇に埋もれたここ、トラストルは…… 夜の涼しさに似合う静けさに包まれていた。 寂れた教会に居合わせた神父の前で蘇った俺は、説教など聞くこともなく村へと戻り、 こうして今を生きている。 提督の強さを身に染みて感じた俺にとって、夜の涼しさはいい頭冷ましになっていた。 技術だけでもだめ、力だけでもだめ。 ものの極めかたってやつはいろいろだな、まったく。 剣を極めるんじゃなく、武器を極めようとするって発想は思い浮かばなかった。 ホツマ「僕たちが狩りに言っている間にそんなことが……」 悠介 「ああ、もうどう言っていいやら……」 姿が見えないと思っていたホツマたちは、 どうやら遠くの方まで狩りに出かけていたらしい。 戻ってきてみれば村人たちが眠りもせずにざわついているものだから、 さすがに戸惑ったようだが。 ホツマ「けど、また会えてよかった。     いつか村に来てくださいと言ったけど、全然来てくれないから忘れられたのかと」 悠介 「はは……勘弁してくれ。こっちにもいろいろ事情があったんだ」 散々なものだったが得るものは確かにある旅だった。 かといってここで旅が終わるわけじゃないが。 悠介 「けどどうしてこの村が真っ先に狙われたんだろうな」 ホツマ「ドラゴンに狙われることをした覚えはないんですが……あ」 悠介 「うん?」 考える素振りを見せたホツマだったが、ふとなにかに思い当たったのかハッとする。 次いで俺を見ると、声を潜めて話してきた。 ホツマ「……村の倉庫に、妙な玉があるのを見たことがあるんです。     ずっと子供の頃に見たものだから、それがなんなのかまでは解りませんが……」 悠介 「玉?」 ホツマ「はい。ぼんやりと光っていて、幼心になにか奇妙な恐怖を感じたものです。     好奇心がある子供なら、持ってみるとかしそうなものですが……     僕はそれすら出来ず、ただ恐怖を感じました」 悠介 「玉か……悪い、見せてもらっていいか?」 ホツマ「あ……けどその倉庫は村の大事なものがしまってあるもので、     部外者が立ち入ることは禁じられているんです。     僕が行ってもいいんですが、     宝かもしれないものを勝手に持ち出せば、あとでどうなるか……」 悠介 「……そか」 竜が真っ先にここを狙った理由と、奇妙な恐怖を感じさせる玉、か。 なにかの手掛かりになると思ったんだが……いっそ奪っちまうか……? ルナ 「ゆーすけって時々顔が邪悪になるよね。あのてーとくの影響?」 悠介 「おわっと!?ル、ルナ……」 向こうでこの村の名物を食ってたんじゃなかったのか……? ……って、篠瀬が居ないな。 まあいいか。 子供じゃないんだし、わざわざ監視する必要なんてない。 俺が戻ってきた時には既に居なかったから、生きてるのかも正直解らんのだが。 ……っと、そうだ。ルナ……ルナか。 悠介 「ルナ、ひとつ頼まれてくれるか?」 ルナ 「んや?なになにゆーすけっ」 どこぞに隠し持ってたのか、もごもごと謎の物体(村の名物)を食していたルナは、 俺の声を聞くやごきゅりと謎の物体を飲み込んで俺の目の前で目を輝かせている。 ……途端に、こいつに任せて大丈夫なんだろうかと不安が募ってきた。 や、解るぞ?妻を信じるのは夫の勤めだ。 けどなぁ……こいつのどこか抜けたところは、夫だからこそ知ってるというか。 ええいままよ、悩んでる暇なんてありゃしない。 悠介 「ルナ、悪いんだがこの村の倉庫に入って、     妙な力を吐き出している玉ってのを掠め取ってきてくれないか?」 ルナ 「玉?」 悠介 「ああ。今盗めば、魔王である提督が取ったってことで収集がつくから」 ルナ 「うぅ……悠介が黒い……。でもうん、おーけー。わたしあの男キライだし」 言われてるぞ、提督。 ルナ 「いっつもいっつもいっつもいっつも不意打ちばっかりして、     容赦なくボコボコ殴るし殺しにかかるし……。     実力なら負けてないのに、すぐに隙作らされてやられる……あいつキライ」 悠介 「戦いに卑怯もなにもあるか、馬鹿者。生き抗うためなら、誰だってああする。     そういう戦い方が提督の戦闘スタイルなんだよ」 まったくもって人間らしい戦い方だ。 生き残るためならなんでもしようってのが、ヤツのスタイル。 乱世を生きるってのは簡単じゃないしな。 ……真似したいかって言われたら、正直迷うが。 それが提督クオリティ。 悠介 「というわけだ。ルナ、頼めるか?」 ルナ 「ん、いいよ」 悠介 「渋ってたわりに随分あっさりだなおい……」 言うや、ごしゃーと飛んでいったルナは、俺の言葉なんぞ耳にも残さず見えなくなった。 ホツマ「……元気な方ですね」 悠介 「あんなんでも一応妻だ、言ってくれるな」 ホツマが呆れたように言うもんだから、ついそう口に出ていた。 妻へのフォローも完全完備、今の俺は半端ねぇ。 なんて言ったところで、頭が痛くなるだけなんだが。 ……と、そんなことを思っていると、再びごしゃーと飛んでくる死神の姿が。 悠介 「どうだルナ、見つかったか?」 ルナ 「……えーとね。倉庫、カラになってたよ?」 悠介 「……なにぃっ!?」 カラって……おいおい!まさか誰かに……って……。 ルナ 「それとこれ。倉庫に落ちてたから」 悠介 「………」 コサ、と渡されたのは紙切れ。 グミかなんかの包装紙を繋ぎ合わせたようなソレに、適当な塗料で文字が連ねられていた。  『宣言通り火事場泥棒をしてみました。   皆様が鎮火や救助に出ている間にこんなことをしてしまうのは、   大変心苦しいどころか最高のスリル満喫祭です。   だが真っ先にこの村が襲われたことには意味があるに違いねーと、   僕のゲーム魂が突き動かされたので荒らしていきます。   でもどれがキーアイテムだか解らないので全部もらっていくことにします。                         敬具、中井出師父   PS.風呂上りに耳掃除をすると、湿ってる』 ───って、 悠介 「だからなんだぁああああああっ!!!」 むかつく!なにやらやたらと腹立つ置手紙だぞこの野郎!!(特にこの追伸が物凄く) 悠介 「随分あっさり帰ると思ったらそういうことかあの野郎!!」 あの状況になにか原因があるってすぐに気づくほうがどうかしてると思うが、 そこはそれ、ゲームに関しての知識じゃあ俺なんかより彰利や提督の方が上に決まってる! あ、いや、彰利が真に詳しいのはパイロットウィングスくらいか? とにかく完全にしてやられた! あの悪を自負するゲーム好きの提督が、混乱に乗じてなにかをしないわけがなかった……! あ、でも…… 村人1「ああっ!倉庫がカラに!!」 村人2「なんだって!?───本当だ!」 村人3「なんてことだ……!きっとあの魔王の仕業に違いない!!」 あの状況で真っ先に疑われるのは、結局のところ提督なんだよな。 なにせ魔王だ。 しかも事実だから、かばい立てする気も起こらないし。 これで彼は、今度こそ自らの手で魔王たる誤解……いや、真実を作り出したのだった。 まあ、なんだ。 魔王だなんだって言われようが、平然と村とか城を歩いていそうだが。 悠介 「はあ……」 さて……今やドラゴンも逃げ帰った現在、 結局のところ竜の血がない俺はどうするべきなんだろうな……。 ……って待てよ? 確か提督は猛者どもと一緒に風の守護竜と戦ったって言ってたよな。 じゃあ猛者どもの中に竜の血を持ってるヤツが居るかもしれない……んだよな。 よ、よし!希望が見えてきた! 提督に貰うのはまず無理だから、そっち方面でなんとかしよう! 悠介 「そうと決まれば善は急げだ!いくぞルナ!篠───……篠瀬は?」 ルナ 「わたしが戻って来た時にはもう居なかったけど」 悠介 「……俺も知らん」 ……ハテ───って、まさか提督に連れ攫われたとか? や、いくら提督でもあの篠瀬を攫うなんてことは無理だ。 何処かに逃げたかなにかしたって考えるのがベストか? それとも村の何処かに居るとか───と考えたところで耳に違和感。 tellだと気づくや繋げると、出た相手は彰利だった。 悠介 「どうしたんだよ、いきなり」 声  『tellにいきなりも遅くもないと思うなぁ俺。     まあとにかく聞いてくれ、大変なことになった』 悠介 「大変なこと?」 声  『夜華さんが中井出に攫われた。身代金要求されたんだけど、どうしましょう』 悠介 「………」 ほんと……どうすりゃいいんだろうなぁ……。 悠介 「提督のことだから、手荒な真似はしないと思う。     基本が“楽しめればいい”なヤツだから、適当に人を傷つけたりはしない」 声  『オウヨ、そりゃアタイも解ってるがね』 悠介 「要求金額は?懲りずにまた全財産か?」 声  『や、それがね……50000$なの』 悠介 「五万……?ありそうでない微妙な数字だな……」 声  『そお〜なのよね〜〜イェ。だからアタイも困っとんの。     もの売るにしても、ちと手持ちがなくて。全部武器に注ぎ込んだから』 悠介 「レヴァルグリードか。そういや聞いてなかったな、ちったぁ強くなったか?」 声  『オウヨ。闇に紛れて猫にお願いして、しっかり鍛えてもらったさ。     その所為で金ないんだけどね。あーあ……どうすっかねぇ……』 悠介 「殺して奪え」 声  『……最近キミ、物騒になったよね』 悠介 「いや、俺はもう悟った。提督相手にあーだこーだ考えても仕方ない。     言われた通りだ、本能で戦うしかヤツに勝つ方法はない。     やれることは全てやるって覚悟くらいなきゃ、覚悟を決めてる相手に失礼だろ」 声  『ふむん……ナルホロね。……そっか、そっかそっか、それがお前の出した答えか』 悠介 「……?彰利?」 電波越しの親友の声が、嬉しさを孕んだ声調に変わる。 けどそれも少しの間であり、すぐに掻き消えた。 声  『おっしゃ、じゃあ夜華さんは中井出の不意をついて奪う方向で。     つーか普通に逃げてこれそうだけどね』 悠介 「そうでもないって予想はつくぞ?     “ここで待ってれば彰利が貴様を格好よく助けに来てくれる”とか、     それっぽいことを言って篠瀬自身をその場に居させてるとか」 声  『……夜華さんよぉ……』 彰利も予想がついたんだろう、 項垂れてますって言ってるような声をとともに、たは〜と溜め息を吐いた。 悠介 「あ、けどな。乗り込むにしても気をつけろよ?     提督の野郎また厄介な武器手に入れたみたいだ。     魔法攻撃……だけだといいけど、とにかく倍返しって能力を使ってきた」 声  『倍返し?うへぇ……そりゃ穏やかじゃねぇやね……。魔法跳ね返されたん?』 悠介 「ああ。しっかり“追加技能スキル、倍返し発動”って言ってた。     斬り返す時に妙な技名叫んでたけど」 声  『グーム……OK、注意しておくわい。     それと悠介、キミ確か竜の血が欲しいとか言っとったよね?     猛者どもと交渉の末に手に入れたモンがあるからとりあえず戻ってきんさい。     で、夜華さんのことで話し合いましょ?僕どうせなら格好よく助けたい』 悠介 「………」 お前じゃ無理だって言ってやりたい。 だがやる気になってるなら止めるのも無粋だ。 なもんだから“解った”とだけ伝えると、tellを切断した。 はぁ……さて。 これからアジトに戻って竜の血貰って、竜力を解放してから───どうするかな……。 【ケース549:中井出博光/愛】 ザムゥ〜〜ッ…… 中井出「というわけで帰っていいよ?」 夜華 「なにがしたかったんだ貴様は……」 ナギー『楽しみたかっただけなのじゃ』 とある夜、深夜に来訪する者……こんにちわ、中井出博光です。 既に日付が変わっていよう頃、 気絶させた篠瀬さんを適当な場所まで運んで彰利にtellを飛ばしました。 最初は戸惑っていたようだけど、次のtellでは“殺して奪うことにした”と宣言された。 だから篠瀬さんは既に用済みです。 中井出「血相変えて襲い掛かる彰利!戦う僕ら!     でも勝ったとしても、彼の得るものは特になにもなかったのです。……素敵」 ナギー『なのじゃ』 夜華 「経験は積むだろう。それは貴様にとって不利益なものではないのか?」 中井出「おお、それは確かに困る。     だがしかし、これから俺とナギーはトッスィーを連れて、     闇の遺跡に行かねばならないのだ。篠瀬さん、一緒に行く気ある?」 夜華 「前後が繋がっていないが、ごめんだな。わたしは彰衛門とともに居る」 中井出「うむ!ならばここでお別れだ!アーチャーのジョブレベルも上がったし、     俺は次なるジョブを鍛え上げるとしよう!」 言いながら、ジョブをコキャヒィインと刀士に変える。 これであとはお手頃な敵でも倒せば……─── 夜華 「…………?な、なんだ?」 中井出「…………」 OH。 中井出「死ねぇえええーーーーーーっ!!!!」 夜華 「なにっ!?お、おのれ貴様はまたしてもぉおおおおっ!!!」 ナギーを相変わらず肩に乗せたまま、鞘から取り出したジークを一閃!! だがさすがは風の恩恵を受けし武士! 即座に抜刀すると、我が一撃を受け止めおった!! だがこちらも一撃必殺の心構えで振った一撃! 篠瀬さんは力任せ一閃に吹き飛ばされるように宙に舞った。 中井出「む……?手応え無し」 夜華 「くっ……!貴様!」 中井出「あの間合いで逃げるとは中々の腕前───お見事。     出会った相手が私でなければ今少し長生きも出来たでしょう。     ……後悔なさい。貴方には十数える間だけ後悔の時間を差し上げます。     ひとつ《ゾヴシャアッ!!》ギャアーーーーーーーーッ!!!!」 数えた途端に斬られた。 中井出「あだぁあい!!いだっ!いったぁあーーーーーーっ!!     ななななにすんの篠瀬さん!人がせっかく後悔の時間を唱えてたのに!!」 夜華 「黙れ!不意打ち好きな貴様には十分すぎるくらいの」 中井出「死ねえええーーーーーーっ!!!!」 夜華 「くわっ!?だ、だからわたしがまだ話して《ゴギィンッ!》くぅうっ……!!」 もはや問答は埒も無し!! 手にしたジークフリードを思う様振るい、ガギンゴギンと篠瀬さんに襲い掛かる!! 夜華 「このっ……いつまでも押されてばかりだと思うな!《メギャアァン!!》』 中井出「おおっ!?」 篠瀬さんが刀を解放する! 死神の力を解放した刹那に黒衣に包まれるその姿は、まさに黒衣を纏った武士……! ……そのまんまだね。 夜華 『はぁああああっ!!』 中井出「そいやぁああっ!!《ガキゾブシャアッ!!》ギャアーーーーーッ!!!」 ともにぶつかり合う!───つもりが、 剣の軌道を逸らされた直後に返す刀で肩を斬られた。 なんのこれしきと力任せにジークを振るうが、 横薙ぎのそれは必要な分のバックステップでいとも簡単に躱され、 そこに出来た間隙を貫くように放たれた突きが、俺の腹に突き刺さった。 中井出「おがっ……!」 夜華 『……冷静になって見据えればどうということもない。     やはり貴様は素人だ。身の振り方がまるでなっていない。     日々鍛錬を積む者の力を甘く見た、これが清算だ』 中井出「グ、フフフ……!!素人だの未熟だの、鍛錬してないだの……!     そんなことは自分が一番よく解ってるよ篠瀬さん……!     不意でも突かなきゃ達人には勝てやしない……それが素人ってもんだ……!」 腹に突き刺さった刀を、自ら退いて抜き去る。 ……痛みは相当だが、退くことはしない。 何故なら……目の前に経験値があるからである! レベルアップだけに囚われてはゲームは終わりだが、 それでもレベルアップに喜びの瞬間があるのは事実! 故にコロがそう!貴様を!絶対に! 夜華 『まだやるのか?』 中井出「………」 さて……どうしてくれようか。 痛がってる俺を前に、ただ構えを解かないままに立っているこの人を。 あれほど乱世での在り方を解いたというのに、この人まるで解ってない。 隙があるならトドメを刺すべきだというのに……。 ナギー『ヒロミツ……』 中井出「大丈夫だナギー、ヤバくなったらいつでも逃げるから」 ナギー『……必ず倒してみせる〜くらい言えぬのかの……』 中井出「人生に絶対も必ずもありゃしねー!自分で思っておいてなんだけど!」 だからこの場で負けようが勝とうが、どっちに転んでもそれが乱世! 戦いとはまさに修羅の門の先の世界よ! 夜華 『……仕方の無い。───いくぞ!』 中井出「ぬう!」 篠瀬さんが疾駆する。 速度は既にバケモノ級……地面を蹴った瞬間からもう見失ってしまった。 だが構わん!知るがいい篠瀬さん……俺はこの世界に修行をしに来たのではない! 俺は───ただ純粋にこの世界を楽しみに来たのだ! 素人!?達人!?それがどうしたかかってこいオラァ!! 中井出「エジェクション!」 鞘に納めたジークからヒノカグツチを解除。 火円を発生させるとともに右脇の鞘に納め、さらにテオスラッシャーを解除。 火の粉塵を発生させ続けながら、左脇の鞘に納める。 そしてもういっちょジークから取り出し、構えたそれに力を込め続ける……! 声  『火の壁でも作ったつもりか───?』 中井出「てめーにゃ教えてやんねー!くそして寝ろ!!」 ナギー『まさに外道!なのじゃー!』 声  『くっ───!わざわざ訊ねたわたしが愚かだったか!』 中井出「やーい愚か者愚か者!」 ナギー『愚か者なのじゃー!』 声  『かっ……かごごわぁああーーーーーっ!!!』 中井出「ヒィッ!?キレた!?」 どこからかブチィと何かが切れる音がしました。 イヤァ怖い!適当なモンスターよりよっぽど怖いよ篠瀬さん!! 中井出「だが負けん!この胸に刻んだ覚悟……その身に刻むがよいわーーーーっ!!」 夜華 『覚悟だと!?未熟者がよく謳った!───いくぞ!』 中井出「マグナムゴローヴ解放!釣りはいらねぇ!取っときなぁっ!!」  ドンガォオオンッ!!! 適当な方向に、突き出したファフニールから火炎空拳を放つ! だが───手応え無し! 声  『何処を狙っている!後ろだ!』 中井出「教えてくれてありがとう!!」 夜華 『なにっ!?』 セオリーの心得ひとーーーつ!! 相手が技を外したら、大抵自分の居る場所を吐き出す! ならば俺はそれをエサに攻撃を待てばいいだけのこと! 中井出「おぉおりゃぁあああああーーーーーっ!!!」 夜華 『ちぃっ……!そんな振りの大きい攻撃など、後ろに下がりながら受ければ』  ゴシャガゴォオンッ!!!  ゴンバババババババォオオオンッ!!!! 夜華 『───っ!?くわぁああああーーーーーーっ!!!!』 受け止めようとした刀ごと、力任せに振るった巨大斧が吹き飛ばし、 さらにそのために散った火花が粉塵に着火を齎す! ふはははは……振りが大きかろうが威力が伴えば一撃必殺となる! 篠瀬さんは体に走る衝撃と勢いに身体を持っていかれ、 まるで弾丸のように地面と平行に飛んでゆく。 夜華 『はっ……ぐぅっ!』 だがやはりダメージの大本は殺されたらしく、身を翻すと綺麗に着地してみせた。 夜華 『斧……!?』 中井出「うむ!斧なり!名をギガノタウロスの斧!     会心と超ためるとフルスウィングを有した破壊兵器である!!」 黒塗りの刃身に朱の線がいくつも通った破壊力万点のグラビドウェポン!! 振るえばほぼ会心の、ある意味殺戮兵器の一つである!! 夜華 『っ……そのような重たいだけの武器でわたしと遣り合うつもりか!     鍛錬せし者を馬鹿にするのも大概にしろ!』 中井出「なっっ……なんだとてめぇ〜〜〜〜っ!     き、貴様こそ未熟者を馬鹿にするのもた、大概にしやがれ〜〜〜っ!!」 ナギー『自分で未熟者と認めるのはどうなのじゃ?』 中井出「ほっといてよもう!僕未熟者だもん!それでいいんだよ!!」 未熟者じゃなければ見れない面白さがここにあるんだってば! 何回話せばキミに届くのこの言葉!! 中井出「貴様のようにこの世界を修行の場みたいに考えてるヤツに!     僕は負けない!負けられない!」 夜華 『ならばどうする!?その重いだけの武器でわたしを仕留めてみるか!』 中井出「どうする?どうするか……フフッ……逃げるんだよォオ〜〜ッ!!」 夜華 『なっ───!?』 後ろを向いて大激走! これで負けない!逃げは負けじゃない! 明日を生きるための防衛手段! そう、いわゆる防御さ! 声  『ま、待て貴様!貴様には戦士としての誇りが』 中井出「無いってばそんなの!俺にあるのは平凡市民の心だけ!     死にたくないだの楽しみたいだの、そういう何処にでもあるような心だけ!     武士道とは死ぬことと見つけたりなんて謳うヤツには一生理解出来やしねー!!」 声  『なんだと貴様あああっ!!ろくに鍛錬も積もうとしない貴様が!     武士道を低く語るなど烏滸がましいにも程がある!     もういい!彰衛門の友人だと殺さずにおいたが、貴様はここで死んでしまえ!』 風を斬る音がする! それは後ろから、すぐに横から聞こえ、やがて前へと至り、 夜華 『《ザァッ!》終いだ!叶わぬ夢を抱いて逝け!!』 目の前に現れた篠瀬さんが、俺目掛けて刀を振るう!! 勢いがつきすぎて、横に逃げるとか後ろに下がるとかなんてのは無理だ。 ならばどうするか?当然突っ込む!! 中井出「超必殺!飛鳥文化アタック!!」 夜華 『なに《ドゴゴバァアンッ!!》ぐぁあああっ!!!』 中井出「《ゾブシャア!!》ギャアーーーーーーッ!!!」 自らを火炎車として体当たりする飛鳥文化アタックを炸裂させる! しかし代わりに背中を斬られ、 大激痛とともに地面にドガグシャバキベキゴロゴロズシャーーーと転がり滑った。 ……まあその、ナギーとともに。 ナギー『う、うぐぐ……!な、なんなのじゃー今のは……』 中井出「ゲフッ……う、うむっ……!あれはな……」 ナギー『し、知っておるのか雷電……!』  ◆飛鳥文化アタック───あすかぶんかあたっく  ハーブの香り、聖徳太子(ノーパン)の奥義の一。身体に炎を纏い、  ストリートファイター2などのブランカのようにローリングアタックをする。  失敗すると背中を痛めるという都市伝説があるとかないとか言うけどやっぱり無い。  その他にはフライング摂政ポセイドンという技がある。  これは主にイチャつくカップルを始末するために使用され、しかし失敗すると溺れる。  ポセイドンの名に相応しいのか相応しくないのかは未だ解明されていない。  ちなみに摂政とはせっしょうと読み、聖徳太子(ノーパン)のことを指す。  *神冥書房刊:『聖徳セレナーデ/マンボ』より ……。 ナギー『な、なるほどの……だから背中を痛めたのじゃな……?』 中井出「や……今のは偶然だと思うけど……え?ち、違うよ!なにその目!     いくら僕が面白いこと好きでも自ら自分を痛めつけるようなことしないよ!     やめてよ!僕は痛さを喜ぶMじゃないよ!変態じゃないってば!     あれは粉塵で爆発しながら体当たりするっていう活気的な技であって、     べつに背中を痛めつけたくてやった技じゃ───あ、あれ?篠瀬さん?     なんでそんな血管ミキミキ躍動させて睨んでるのかな……。     え、え?よくも尻なぞで吹き飛ばしてくれたな?───やっ!違うよ!     僕そんなの狙ってない!     ただ純粋に篠瀬さんを引きつけて体当たりを狙ってただけで!     ちょっ───やめようよ!そんな荒々しい風作らないで!     誤解だけは解かせてよ!僕が狙ったのはそんな攻撃じゃないんだってば!     待ってちょっと待って!やめ───ヴァーーーーーーッ!!!!」 ……その夜。 久しぶりに動揺の嵐に巻き込まれてテンパッた僕は、 荒ぶる風を纏う篠瀬さんにボコボコにされた。 ───……。 ……。 神父 「おお旅人よ!死んでしまうとは情けない!!」 中井出「とりあえずあんたにだけは言われたくない」 神父 「なんと!?」 さて……神父の前で目覚めた夜、俺は隣で俺を見上げるナギーとともに、 何処とも知らぬ町の教会に立っていた。 中井出「いやぁ〜強かったなぁ」 ナギー『ヒロミツが遊びすぎたのがいけないのじゃ。     もっと攻め方というものがあったであろ』 中井出「いやいやいや、慢心は敵だ。     たとえ一度勝てた相手だろうが、気を抜けばやられるのがこの乱世よ。     だから逆に目が覚めた気分だ」 やはり俺は、達人から見ればまだまだド素人。 じっくりと戦ってみて、それがよ〜く解ったよ。 でももちろんこのスタンスをやめるつもりは毛頭無し。 ゲームの世界はやはり、武器と防具とレベルで進む。 技術なぞ知らん。技術は武器にあればいい。 今回は負けてしまったが、自分は今試練中の身…… レベルが上がればまた勝てるように…………なれるといいね? とにかく、それまでは我慢だ我慢。 中井出「しかし、なんだ。こう負けてしまうと、     守護竜と戦う意欲ってものが無くなってしまうなぁ」 ナギー『どうするのじゃ?ヒロミツ』 中井出「うーむ…………とりあえず歌って踊って、このやさぐれた心を癒そう。     よし!協力してくれるかナギー新兵!!」 ナギー『もちろんなのじゃー!!』 がしぃとナギーとともに手を掴みあって、夜の教会で歌って踊って燥ぎ回った。 振り回したり跳んだり、跳ねたり走ったり。 気が向けば賛美歌などを無意味に歌ったり、神父を馬鹿にしまくったりして遊ぶ。 その行為はしばらく続き、やがて声も嗄れる頃─── 中井出&ナギー『ちゃーちゃらっちゃっちゃ・ちゃらっちゃっちゃちゃー♪』 ナギーを抱きかかえながらクルクルと回転をし、最後に決めポーズを取ると 中井出&ナギー『OH霊!!』 いつかやったように、右手にナギーの腹を乗せるようにしてビシィとキメた!! おお美しい……!この瞬間のなんと素晴らしいことよ……!   中井出「うむ!気力充実である!でもいい加減眠いから眠ろう?」 ナギー『遺跡に行くのではなかったのかの?』 中井出「うむ、そうだったのだがやはり眠い時は眠るべきである。     僕らは冒険者なのだから、休息は必要さ」 ナギー『そうじゃの。では何処に泊まるかじゃが……     デスゲイズとあの武士にやられた所為で、$が無いのじゃ』 中井出「アレェ!?」 しまったそうだった! コロがされれば金は半分奪われて……! や、そりゃあナギーに預けてた分の金で元素竜素材での武器強化をしたから、 そう余ってたわけじゃないけどさ! でも悔しい!奪われたって事実が悔しい!! ええいこんなことになるのなら、気絶させた時点でコロがしておけばよかった!! 中井出「くっ……この悔しさを忘れぬために、     篠瀬さんをコロがすリストに載せておこう……」 ナギー『コロがすリスト?おお、知っておるのじゃ。     殺す相手を書いておくメモのようなものじゃな?』 中井出「うむ!クロマティ高校実力者、竹之内くんが持っているとされるリストである!」 多分主人公である神山くんくらいしか載ってないだろうけど。                                       中井出「じゃ、とりあえず教会出て…………野宿しよう」 ナギー『おお!冒険者らしいのじゃー!!』 中井出「そう!僕らは冒険者!さあ行こうナギー!ヤブ蚊の待つ外の世界へ!!」 ナギー『ヤブ蚊に会いたくていくわけではないがの』 中井出「うん僕もそう」 だから進んでゆこう。 僕らの旅は───始まったばかりなのだから……!! 村人1「キャーーーーッ!!?魔王よぉおーーーーっ!!」 中井出「あれ?」 始まったばかりなのにいきなり聞こえる悲鳴!! しかもその悲鳴を皮切りに、 どうやら村だったらしいここの人々が、一斉に逃げ出し始める始末。 中井出「………なんかちょっとナーバス」 ナギー『…………熱はないようじゃが?』 中井出「ナギー……貴様というやつはこの博光をなんだと……」 浮いた状態で、額にソッと当てられた手が暖かかった。……ではなく。 でも僕だって人間だい!ナーヴァスになることくらいあるさ! 中井出「行こう!もう行こう!猫の里に戻って準備を整えたらすぐさま闇の遺跡へGO!!     こうなったら属性解放一気に終わらせて、     もう狂ってでもいいからパワーアップしたるーーーっ!!」 速度で翻弄されて負けてしまったが、次はそうはいかん! それをするためには試練と呪いを解除しなくてはならんのだ! あくまで予想だが、試練は属性解放が済んだのちに終わると思われる! そして呪いは現在検討中! 月光竜が孵化するまではどうすることもできーーーん!! 中井出「………」 ナギー『む?どうしたのじゃヒロミツ』 中井出「いや……改めて自分の状況の悪さが悲しくなって……」 なんでこんなことになっちまったのかなぁ……。 普通に行けばもう、 5000か6000くらいのレベルに行ってても不思議じゃないくらい、 守護竜だのなんだのを倒したのに……。 しかも呪いの所為で満足に戦えない状態で。 せめてアトリビュートキャリバーだけでも使えたらよかったのに、この呪いめ。 中井出「まいったなぁほんと……どうすりゃ孵化するんだろうな、この卵」 ナギー『じいやに訊いてみたらどうなのじゃ?』 中井出「………」 ナギー『?』 いや……訊いてみてもダメだったんだが。 まあいいか、いつか孵化するだろう。 焦って割ったりでもしたら、俺もう朝日なんて拝みたくない。 中井出「……しかし待て、月光竜だろ?月光の竜なら、     天使どもに聞いた月の光が満ちる場所でなら孵化しやすいんじゃなかろうか」 試してみる価値はあるかもしれん。 ……でも、その前に。 中井出「よしナギー!篠瀬さんに復讐しにいくぞ!」 ナギー『なんとな!?あれほど大敗したというのにかヒロミツ!』 中井出「うむ!本来やられっぱなしでも気にしないこの博光だが、     今回ばかりは技術がどうとか鍛えし者がどうとか、正直腹が立った!!     だからお望み通り技術で戦ってブチノメしてやる!」 ナギー『おおお……ヒロミツが燃えているのじゃ……!     解ったのじゃ!あの生意気な女をやっつけるのじゃーーーっ!!』 中井出「特攻だーーーーっ!!!」 ナギー『Yah(ヤー)ーーーーーーッ!!!!』 こうして僕らは旅立った……! 新たなる復讐劇へと……! 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