───冒険の書225/その一日にさよならを───
【ケース550:中井出博光(再)/無駄無駄死んだ真似】 ───……といっても、クサナギで飛んだらあっと言う間だった。 どこぞかへ向かっている最中の篠瀬さんを補足するや、 俺は早速正々堂々と真正面から向き合った。 ちなみにナギーには離れたところに待機してもらっている。 夜華 「んっ───貴様か。性懲りも無く」 中井出「イエスアマゾネス!例の如くアマゾネスは関係ないので気にしないように!     というわけで勝負だポニーテール!俺は貴様を技術でコロがして、     ギャッと言わせてやるんだ!」 夜華 「《メギャアンッ!》いいだろう……いつでも来い。     もはや結果が覆ることなどないだろうがな』 篠瀬さんが早くも死神の力を解放する。 俺はといえば……そんな篠瀬さんを前に脱力し、意識をレオンに繋げた。 レオン「…………やれやれ。素直に器詠みをすればいいだろうに」 中井出『あれ頭痛がするからキライです』 器詠(うつわよ)みってのはアレだ、脱力をして、ジークに全てを委ねる技法。 どう動けばいいかを剣が教えてくれる、あれだ。 レオン「まあいい、見たところかなりの腕前のようだ。腕がなるというものだ」 中井出『おお、他人任せで仕返しするのはキライだが、言われっぱなしも嫌なので頼む』 レオン「任せておけ。全てが終わったのち、説明してやろう。     お前は卑劣者と呼ばれるかもしれないが、構わないか?」 中井出『一向に構わん!!』 レオン「……そうだな、お前の目指しているのは悪なのだからな」 フィギィン!とジークフリードを双剣に変えたレオンが、姿勢を低くして構える。 夜華 『───!』 それを見た篠瀬さんは、踏み込もうとしていた足を突然停止させる。 ……うわーすげぇや、達人ってのはこっちの気迫が変わった〜とか、 そんな雰囲気も読み取れるのか。 夜華 『……いい目だ。先ほどとは雰囲気が違うな』 レオン「実力は呪いや試練とやらで半減しているが……なに。     それを唱えるのは今さらだろう。正々堂々と手合わせを願おう」 夜華 『手合わせだと?言いながらも不意を突くことを狙っているんじゃないだろうな』 レオン「それこそ愚かな考えだ。戦場の中で不意を突くことの何が間違いだ。     ───いや、こうして話していること自体がそもそもの間違いだな。……いくぞ」 夜華 『───!』 レオンが動く。 双剣を手に、やはり低い姿勢で、地を這うように疾駆する! 夜華 『───速い!……だが!』 だがそれが足元まで辿り着くより速く、篠瀬さんも同じく姿勢を低くして疾駆。 ぶつかるように刀と剣を弾き合わせ、そのまま圧し合いを始める。 夜華 『ふふっ……やはり力任せの作戦か。     そんなものはもはや通じぬと何度言えば───』 レオン「御託は要らぬと何度言えば通じる?」 夜華 『なにっ!?《ギキィンッ!》つはっ!?』 だがレオンは、片手で……つまりジークムントで篠瀬さんの刀を受け止めていた。 つまり左手のジークリンデは自由であり、 だからこそ即座に撃に転じ、篠瀬さんを斬り弾いた。 レオン「続けていくぞ!」 夜華 『っ……甞めるな!』  ゴフォンガギィンガガゴギガギィンッ!!  ルフォンドガォンズガァン!ガギィン!ゴギィン!! 夜華 『がっ……ぐっ……!?力、だけじゃない……!?巧い……!』 レオン「どうした戦人よ!貴様の腕は、口は!剣術が匠でない者にしか働かないのか!」 夜華 『ぬかせっ!』 巨大双剣を次々と弾く篠瀬さんだが、その顔には確かな驚きと焦りがあった。 そりゃそうだ、ついさっき技術で勝った相手に、その技術で押されているのだ。 篠瀬さんは確かに強い。 武器と能力の相性に加え、受け入れた精霊までもが力に合っている。 普通なら俺が勝てるような相手じゃないだろう。 だが───そこに大きな差があるとするならば、武器だ。 いくら俺が弱体化しようが呪われようが、武器本来の+は十二分に存在する。 どれほど俺より力を込めようが、どれほど俺より速度を増そうが。 俺とこれまでをともに生き、成長していったジークは折れぬ!曲らぬ! 夜華 『くっ!馬鹿な!何故急に剣技に長けることが出来る!     貴様はついさっきまでを力任せの戦法で来ていたというのに!』 レオン「剣技に長けるか……生憎だな」 夜華 『……?どういう意味だ!───《ガギィンッ!》くぅっ!?』 レオンの言葉に戸惑う篠瀬さんを、レオンが斬り飛ばす。 そうして間合いを取ってから双剣を巨大長剣に変えたレオンは、 それを鞘に納めると、そこからとある武器を解除する。 ……それは、レオンという男の象徴とも言える紫色の槍。 名を、稀紫槍カルドグラスという。 レオン「私の得意武器は槍だ。……剣にのみ長けていなくてすまなかったな」 夜華 『なんだと!?では貴様……今まで手加減をしていたというのか!!』 レオン「口を開くより覚悟を開け!いくぞ───!!」  ヒュオゾガガガガガガギンギンギンッ! 夜華 『がっ……!?がっ!ぐっ!がぁあっ!!』 速度を唱えるのなら、それを閃光と喩えよう。 まるで全盛期の晦が撃を連ねるが如く、反撃を許さぬ槍の弾幕が篠瀬さんを襲う。 ───だが篠瀬さんも負けてない。 刀から風を噴射させると、それを以って物凄い速度でレオンの連突を弾いてゆく! 夜華 『負けられるものか!散々大きい口を叩いて、これで負けたら愚か者だ!     だが認めよう……わたしは貴様という男が見えていなかったようだ……!     今こそ貴様を完全なる障害と認める!!故にいくぞ!これがわたしの全力だ!』  ヒュゴォッ───ゴバァォオオオンッ!!! レオン「……!」 呆れる密度の風が、今この場に集束する。 その場に居るだけで吹き飛ばされそうになるほどの風……! 夜華 『妖術のようなものに頼るのは好ましくなかったが、     出せる力を出し切らずに負けでもすれば、それはただの恥でしかない!     そうだ……戦場において、生きることと勝利することに固執して何が悪か!     いつか後悔することになろうとも、生きていなければその後悔すら味わえない!     死んだところで復活するこの世界で油断だらけの日々を過ごし、     何故現実で生きることに固執出来るか!』 レオン「───」 中井出『おおっ……!篠瀬さんが解ってくれた!』 お目覚めなさい!それこそが戦場での心得! それが当然の筈なのに、貴方がたはその当然にこそ気づけなかった! 無意味な死も無意味な生もありゃしねぇ! それを探すため!もしくは知ろうとするため! そしてこの世界を存分に楽しむために、我らはここに降りたったのだ! レオン「フッ……くくっ……!言葉を返そうか。いい目をしているぞ、今のお前は」 夜華 『なっ……!だだだ黙れ!     そんな言葉、彰衛門以外に言われたところで嬉しくもない!』 中井出『篠瀬さんも随分色ボケになったなぁ』 レオン「誰かを大事に思えるということはいいことだろう。     私は誰も愛せなかったが、代わりに飛竜・ロアとともに居られた。     人ではなかっただろうが、私にとっては掛け替えの無い友であり家族だった」 中井出『そうだな。俺もこの世界じゃあ、亜人族を家族みたいに思ってる』 レオン「あれだけ殴っておいてか!?どうかしているぞお前の家族像は!」 中井出『ち、違うよ!そういう意味で言ってるんじゃなくて!     偉そうな雰囲気とか高飛車な雰囲気を一掃させたかったんだよ!     だってこれから同じ場所に住むのに、     いつまでも高飛車で姫だとか呼ばれてるなんて居心地が悪いじゃないか!』 レオン「…………ようするにあの天使の意志は無視するわけか」 中井出『うん、だって彼女から歩み寄ってくれれば済むことだし』 僕らは既に手を伸ばしている! だがあと一歩が届かない! あとは天使よ!貴様から手を伸ばさなければ掴めないんだ! ……などという、どっかで聞いた状況がここにあります。 俺はせめて天使たちと自然要塞ファミリーとを繋ぐ鍵になる。 なりたいじゃだめだ、なるんだ。…………中井出博光です。 レオン「さて……奇妙な状況整理が落ち着いたところでだが。     どうする、あの女……篠瀬といったか。     ヤツの刀に荒々しい風が蓄積されていっている。     構えからして斬りかかりに来るものではないが」 中井出『言ってた通り、魔術っぽいものってことか』 レオン「そうなるな。感じるか、属性の胎動を。     アレは恐らく、剣閃のように魔術を放つ能力だ。     魔術に必要な詠唱をシルフが唱え、それを圧縮させる技法と見るが……」 中井出『よく解らんがうむ!ようするに魔法なわけか!     ならばレオンよ、アスラーナを使うといい!     元素の力に加え、天使どもからせしめた月属性素材から完成……いや、     未完成した魔法剣を存分に!』 レオン「……あれか。モミアゲの長い男の魔法を弾いていたものだな?」 中井出『うむ!』 レオンが槍をジークに戻し、そのまま鞘から抜き出す。 そして確認のためにとナビを開き、合成詳細の中から調べるを発動する。  ◆アスラーナ  人間でも魔法を使えるようにと作られた、光と闇と英雄の魔法剣。  古の頃、人が魔女を支配せんと目論んだことから誕生したために、  魔法を吸収、反射する力を持つ。  本来光と闇の素材が無ければ完成しないものだが、  ジークフリードに光と月の素材を埋め込むことでスキルが発動。  “闇”の部分をデスゲイズの災いの部分から受け取り、武器自身が能力に目覚めた。  当然武器としては取り出せないが、闇の素材を以って鍛えれば剣の中で完成するだろう。  どんな魔法でも跳ね返せるが、剣身を当てなければ返せないため、  連続系の魔法には速度が無ければ対応できない。  さらには強力な魔法を返すためには力も必要なため、  速度だけでどうにかなるわけでもない。  *固有能力:ブレードスペル、倍返し、秘奥義(未完成のため使用不可)  ◆ブレードスペル  魔法を斬り返す際に必要な言。これにより倍返しの倍率が変わる。  別に唱えなくても返せるが、言葉にしたほうが倍返しの威力が増す。  何故ならばその方がヒーローっぽくて格好いいからである。  放たれた魔法のランクにより、返した魔法の形が変わる。  対応していない属性は威力だけを少々向上、そのままの形で返す。  対応している属性は火、水、雷、闇だけである。  火小:劫火爆裂砕───ゴウカバクレツサイ  水小:巌流裂旋衝───ガンリュウレッセンショウ  雷小:蒼穹雷刃剣───ソウキュウライジンケン  闇小:四魂千烈破───シコンセンレツハ  火大:飛翔鳳凰陣───ヒショウホウオウジン  水大:氷晶裂蹴撃───ヒョウショウレッシュウゲキ  雷大:紫電双龍斬───シデンソウリュウザン  闇大:冥王破閃光───メイオウハセンコウ  言は以上のようにだが、  相手の魔法がどんなものかを見極めなければ威力向上は望めない。  魔力が強い者のファイヤーアローなどを上位の魔法と勘違いし、  飛翔鳳凰陣と叫んで斬り返しても威力は上がらない。  未完成のために全ての力を引き出せてはいないが、  それでもデルフリンガー(魔法吸収能力)と合わせれば相当に頼もしい。 ……。 レオン「……さ、叫べというのか、私に……」 中井出『叫べ!』 レオン「いや、だがしかしな……」 中井出『叫べ!格好よく!』 レオン「う、ぐ……だが風は対応していないようだが……」 中井出『しまったそうだった!     せっかくレオンにカッコよくキメてもらおうと思ってたのに!』 レオン「お前はっ……!技の名など叫んだところで何が変わる!」 中井出『名前があったほうが気が引き締まるって!     考えてもみろ!ただアァアーーーッ!!て叫ぶよりも、     フタエノキワミ!アァアーーーーッ!!って叫ぶ方がカッコ……よくはないね。     でもこれからそれをやるぞって気になれる!覚悟が引き締まるのだ!     だから僕は名前を愛します。技ならば名前があってもいいさ。幻影無光拳とか』 レオン「その、なんだ。その名前だけは勘弁してやれと頭のなかが訴えているんだが」 技じゃないからなぁあれ……。 レオン「……さて、詠唱が終わったようだが……どうしてくれよう」 中井出『どうするも貴方の自由なのだわ。僕らは自由の世界で生きています。     そりゃ自由にならないところも当然あるが、     ならば出来る範囲内の自由を満喫するのが素晴らしい生き方』 レオン「自由に出来ることがあるのに自由に振る舞わないのはつまらないか。     お前らしい考え方だ」 苦笑しながら言うレオン。 その手は既に剣を構え、なにをすべきかを心に決めているようだった。 達人風に言うなら、腰を落としてどっしりと構えている。 迎え撃つ気満々といったところだろう。 ……推測が当たってればの話だけど。 夜華 『彰衛門などならここで、無理矢理名前をつけて放つのだろうがな。     生憎わたしには名など思いつかない』 中井出『嵐華の型は?って訊いてくれ!早く!』 レオン「───!ら、嵐華の型というものについてはどうなんだ!」 夜華 『ながっ!?き、貴様!それを今ここで持ち出すか!』 レオン「……おい。不穏な空気が流れ出したが」 それどころか集束する風の密度が上がってるよーな……。 あれ?もしかして地雷踏んだ? 中井出『……ファイッ!』 レオン「貴様なっ!無責任も大概にしろ!」 中井出『ククク……!責任だの使命だの夢だの、     そんな荷物を背負い込みすぎちゃあ生きていくのは億劫すぎるぜ……!     ならば適度にリラックスしながら、されど楽しみを求めて生きていく……!     それが我ら原沢南中学校迷惑部魂よ……!』 レオン「傍迷惑な魂だな……!     どうせなばら騎士道に魂を燃やして見せろというのだ……!」 中井出『いやです』 レオン「即答か……っ───来るぞ!」 中井出『え?なにが?』 レオン「真面目にやる気があるのか貴様は!!」 夜華 『なんだと貴様!わたしが不真面目で戦っていると言いたいのか!!』 レオン「なにっ!?いや違う!そうではない!」 中井出『ククク……!引っかかった引っかかったァアア……!!』 レオン(……誰か助けてくれ……。     宿主に悪魔の囁きをされることなど、明らかに間違いだろう……) などと悪魔劇場を展開していると、 顔が赤くなるほど激怒満点な篠瀬さんが、風を纏わせ鞘に納めた刀をいよいよ振るう! 夜華 『くらえっ!』 キヒィンッ!と、まるで鋭く軽い金属がぶつかり合ったような音を立て、 それは振るわれた。 放たれる剣閃は風───属性を纏っただけではなく、 魔法として放たれたそれは剣閃などよりよっぽど煌きと鋭さが高く見えた。 レオン「ひとつ訊く!これは反射は出来るが吸収は出来ないんだな!?」 中井出『うむ!未完成のために無理である!     呪われてさえなければデルフリンガーと合わせて吸収出来るんだが、     生憎と見事に呪われているために実行不可能である!』 レオン「では跳ね返す!」 飛翔する魔法剣閃は、俺達目掛けて一直線に飛んでくる。 かといって避けようにも範囲が広すぎ、 どの道もうガードするか跳ね返すかしか方法はない。 中井出『さあ高らかに叫べ!貴様が思い描く、風属性の反射技名を!』 レオン「っ……くそ!いいだろうやってやる!あ、あー……しょ、“翔駆烈風撃”(ショウクレップウゲキ)!」 迫る風を前になんとか名前を考え出し、それに合わせてジークフリードを振るうレオン! その顔はなんというか、恥ずかしさの所為か真っ赤だった。  ゴファァッキズガガガガォオンッ!!! レオン「ぐっ……!《ゴガァアアアッ!!》風に体が持っていかれる……!」 中井出『がんばれーーーっ!!まっなっ《ぶっ》』 レオン「気の抜ける応援をするなぁあーーーーーーーっ!!勝ちたくないのか貴様は!!」 中井出『ヒィイ!!勝ちたいけど     緊迫した雰囲気をぶち壊してみたいって気持ちが勝ちましたごめんなさい!』 意識の中で放屁をしてみせたら激怒された。 意識にまで鋭く届くその怒りに、 つい悲鳴とごめんなさいが口に出ていたほどだ……なんと恐ろしい気迫よ。 レオン「っ……本当に、馬鹿げた力だな……!」 中井出『なにぃ!?そんなにヤバイのか!?じゃあ逃げよう』 レオン「ふふっ……その選択は間違いだぞ中井出博光。     私が言っているのは───この剣のことだ!」  ゴッ───フィガァアガガガガォオンッ!!! 夜華 『なにっ!?跳ね返した!?』 レオンが、魔法剣閃に当てていた剣を渾身のもとに大きく振り切る! すると荒ぶっていた風の流れはさらに密度を増し、篠瀬さん目掛けて襲い掛かる!! 夜華 『こんな、馬鹿な───!く、う、うわぁああーーーーーーっ!!!』 そんな事態が信じられなかったんだろう。 篠瀬さんは数瞬の間、呆然としてしまい─── 気づいた時にはもう回避など出来る状態ではなく、 荒ぶる風に飲まれて吹き飛ばされた。 中井出『ぬおお……さすが倍返し……。威力が半端じゃない』 レオン「普通の武器であのような密度の高い風を受け止めれば、     たちまち折れるか、私が無事では済まなかっただろう。     武器に己の道を託せるのなら、この強さも頷ける」 中井出『ゲームの世界は武器防具とレベルが全てだと思っています。     というわけでトドメ刺しにいこ?』 レオン「はぁ……それはいいが、やるならお前がやれ。     戦場の心得は知っているが、私はトドメを刺さない方だ」 中井出『そうなのか。人それぞれだからそれが悪いとは言わんが』 言う時は言うけどね。 ともあれレオンは意識の奥に引っ込み、俺に意識を返した。 ……そうしてから“しまった”と呟いた。 結局今のはレオンっていう意識の一つですよ〜って説明してもらうの忘れてた。 ……………………まあいいや!言わないほうが面白そうだし! レオン『待て。まさか言わないつもりじゃあ───』 中井出「大丈夫!何を隠そう、俺は秘密厳守の達人だぁああっ!!」 レオン『そうじゃない!約束を違える気か!ちゃんと話すと言っただろう!』 中井出「ククク……約束なぞ破るためにあるのよ……!」 レオン『だったら意識を私に戻せ!私が言う!』 中井出「なにぃ!?ぬおおさせるかぁあっ!《ミチミチミチ》ギャアーーーーーッ!!!」 レオンの意識が俺の意識を奪おうとする! おお!これが洗脳されんとする者の恐怖か! 実に頭が痛い!!───痛いのは俺が逆らってるからだけど! 中井出「やめてやめてぇええっ!言うから!ちゃんと言うからやめてぇえええっ!!」 レオン『その言葉に偽りはないだろうな……!』 中井出「ある《ミキキィ!!》ギャアーーーーーーーーッ!!!」 馬鹿正直な自分が悩ましい! だがもうこの頭痛にはギブアップだ! 俺は自分の腕をパンパンとタップして、ギブアップの意を示した! 中井出「《メェエエリキキキキキ》ギャアーーーーーーッ!!!」 だがレオンにその意味が解るわけがなかった。 だから僕は一刻も早く篠瀬さんに事実を伝えるべく、大地を駆けたのだった───!! 中井出「篠瀬さーーーーん!!助けてぇええーーーーーっ!!!」 さっきの敵は今の友! 俺は頭痛から解放してもらうべく、これでもかというほどに脚を動かしまくった。  ───ややあって……草原でぐったりと倒れている篠瀬さんを発見。 風属性を身につけているとはいえ、魔法防御が出来るわけじゃないだ。 アレをくらえばそりゃこうなる。 中井出「篠瀬さん聞いてくれ!     実はさっきまで貴様が戦っていたのは俺だけど俺じゃないんだ!だから死ね」 レオン『なにっ!?ちょっと待て!』 中井出「ダメです待ちません!話したからこれでOK死ねぇえええっ!!」 レオン『っ……まったく世話のかかる!!』 中井出「《ズキィーーン!!》ギャアーーーーーーーッ!!!」 剣を振り上げた俺だったが、内部から発せられた激痛に思わず屈みこんでしまった! なんてことだ!あと少しでトドメが刺せたのに! 中井出「な、なにをなさるの?」 レオン『馬鹿者!倒れ、意識を失っている者に剣を立てるなど、男のすることではない!』 中井出「なにぃ!?……じゃあ起こそうか」 レオン『……素直に最初からそうしろ……』 頭に響く声は、とてもとても疲れてそうだった。 ともあれ俺は倒れ伏した篠瀬さんの肩を揺すり、起こしにかかる。 身体や服はボロボロだ、相当なダメージだったんだろう。 夜華 「か、はっ……ぐ……!」 中井出「オッ───!?おお起きた!篠瀬さん!しっかりするんだ篠瀬さん!」 夜華 「は、あ……づ……!わ、たしは……、負けた……のか……?」 中井出「なにを馬鹿なことを!トドメを刺すまで勝負はつかん!     ただ気絶してる相手を殺すなと言われたからそうしているだけである!     つまり死ねぇえーーーーっ!!《メキィッ!》ギャアーーーッ!!」 レオン『いい加減にしろ貴様!!殺すのはやめろと言っている!』 中井出「い、言われてないってば!なにすんだよぅもう!     大体貴様こそ気絶している相手にはって言ったじゃないか!     もう起きてるならOK!だから僕頑張るよ!」 レオン『頑張るな!!いいから事実を話すんだ!さあ!』 中井出「うう……ちくしょう……」 なんだかお目付け役が出来てしまったような気分だ……。 だが甘い、練乳蜂蜜ワッフル並に甘いぜレオン。 中井出「あのね篠瀬さ死ねぇえーーーーーーっ!!」 レオン『なっ!貴様性懲りもなく《ヴミンッ───》───なにっ!?」 中井出『ククク……!愚かなりレオン=アルバレート……!     頭痛は俺が貴様の意識に反発することで起こる現象……!     ならば反発さえしなければ頭痛など起こらず、     さらに言えば今度は俺が内部から貴様を洗脳することが出来るのだァア……!!』 レオン「《メキメキメキメキ》ぐあぉああああーーーーーーーっ!!!!」 中井出『もっと痛がれもっと痛がれぇええ……!!     この博光が味わった苦しみを思い知るがいいわぁああ……!!』 レオン「き、貴様という男はっ……!どこまで人の裏を掻けば気が済む……!」 中井出『何処までいっても掻き足りぬ!!     だから、さあ!貴様が僕を止めるなら、貴様が僕の代わりに斬るがいい!』 レオン「《ギチチチ……!》が、ぐっ……!甞めるなよ中井出博光……!     私とてセントール騎士団長を務めていた者……!     王の道は正しいものではなかったが、     私はそれでもそれが正しいと信じ続けていた……!     貴様が己を悪と信ずるなら、私は己を正義と信じよう……!」 中井出『《ジュワァッ……》ヒィッ!?な、なにごとぉおおっ!!』 意識が!この博光の意識が溶かされてゆく!? いや、これは……我が悪の心が浄化されていっている!? 中井出『ば、馬鹿なァアア!!こ、こんなぁああああっ!!!ま、まさかァアアアッ!!     悪が!悪の心が正義に負けると言うのかぁああっ!!』 レオン「貴様は悪に染まりすぎたのだ……!     だから意識と化した今、聖なる意識に浄化されてゆく……!     もはや終わりだ、中井出博光。     これからは正義の名の下、正しい道を《ビキィッ!》───ぐおっ!?」 中井出『ひぃ〜〜〜ひぃ〜〜〜っ、このシュムナ〜〜ッ……!!     こんな浄化ごときで消えてなるものかぁ〜〜〜〜っ……!!』 消されそうになる悪の心で、レオンの首に巻きつく! ……ちなみにべつに消えそうになどなっておりません。 演出をしてみたら、レオンがそうに違いないと勝手に思っただけです。 レオン「往生際の悪い……!おい女!私を貫け!」 夜華 「な、に……!?」 レオン「今私は恐ろしい意識に身体を支配されている!     その意識の悪を払うには、それしかない!」 中井出『なっ!なに言ってんのダメに決まってるでしょ!?     ただでさえお金少ないのにそんなことされたら大変なことになるよ!     大体キミ解ってるの!?僕コロがしたら篠瀬さんまたレベルアップするんだよ!?     キミ結局解ってない!この乱世で敵にコロがしてくれなど、     僕を使ってレベルアップしてくださいって言ってるようなもんだよ!?』 レオン「ならば貴様も少しは心構えを変えてみせろ!」 中井出『だめね!断るね!なにを隠そう、俺はゲームの達人!     貴様のように甘っちょろいことをのたまって、この乱世を生き残れるものか!』 レオン「くっ……!女!早くしろ!」 夜華 「なにを、したいのか知らんが……!くっ……!無茶を言ってくれる……!」 遊んでるうちに篠瀬さんが立ち上がった! ぬういかん!このままでは! 中井出『《メギャン!》篠瀬サァン、実はさっきまでの僕は僕じゃなかったのデェス」 レオン『なにっ!?』 夜華 「……?貴様が、貴様じゃ……ない……?なにを、言っている……」 すかさずレオンと交代した俺は、即座にレオンが意外に思うことを口にして動揺させた。 そう、意識がどうだろうとこれは我が体。 優先度は俺に譲歩され、意識をどうするかは我の自由! 中井出「ここで貴様に問います。……まだ、やるかい?」 ジャコンッ!とジークフリードを突き出して言う。 これでまいったって言えば、俺も素直に引き下がりましょう。 経験値は惜しいが、それが全てじゃない。 夜華 「……一つ、教えてくれ。貴様が貴様ではなかった、という……ことは。     今までの、貴様は……っ……はぁ……」 中井出「我が意識……というよりは、武器の中に眠る勇者の魂だ。     俺の武器は思いを力にする稀紅蒼剣。最終奥義と人器と器詠の理力が揃ってから、     俺は武器に宿る意識と意識交換を出来るようになったのだ。     つまりさっきの俺は手練の戦士の意識と交代した俺だったの。     だから篠瀬さんは俺に負けたんじゃなく、俺の中のレオンに───」 夜華 「はぁ……もういい、言うな……。負けは負けだ……。     それに……散々説法しながら、わたしこそ見えてなかったものがあった……。     たとえ貴様が達人と意識交換をしようが、貴様の体でなかったら。     その武器でなかったら、わたしはきっと勝てていた……。     この戦いは貴様の勝利……     その武器を鍛え、この世界で今までを生きてきた……貴様の勝利だ……」 中井出「………」 夜華 「……待て。貴様、なにを……」 中井出「熱測って《ゾブシャア!!》ギャアーーーーーーッ!!!」 状況をしっかり分析した上で負けを認めた篠瀬さん。 そんな彼女の額に手を当てた僕は、容赦無用に叩ッ斬られた。 そしてふと気づけば、レオンの声も頭痛もきこえなくなったり、しなくなったりしていた。 夜華 「く、ぐ……!お、おい……!いつまで敵対しているつもりだ……!     負けを認めただろう、敵対心を解いてくれ……!」 中井出「断る!《どーーーん!》」 夜華 「な……ななななんだとぉっ!?」 中井出「なんでもありません!言ってみたかっただけだから大丈夫さ」 言いながら敵対心を解く。と、見る間に篠瀬さんの傷が消えてゆくではないか……! 夜華 「は……───はぁあ……。危うく死んでしまうところだ……。───さて」 中井出「《チャキ……》あれ?」 僕の鼻先に翔風斬魔刀が突きつけられる。 ……ハテ?勝負はついた筈じゃあ…… 夜華 「仕切りなおしだ。今の戦いはわたしの負けだ。それは認める。     だがやはり互い同士の実力でなければどちらが強いかなど解らんだろう?」 中井出「あなたのほうが強いので僕帰る」 夜華 「だめだ。剣を構えろ」 中井出「ワァォ……」 なんということだろう……この人がこんなにもアグレッシヴだったとは。 これは……どうしたらいいんだろうか。 俺もういい加減、眠りたいんだけど。 その前に闇の守護竜のところいくから、いろいろ準備もしたいし…… 中井出「悩まずいつでも超特急!よしやろう!     ではまず間合いを取ってから死ねぇえーーーーっ!!」 夜華 「来ると思っていた!やはり貴様に器用な立ち回りは似合わん!!」 中井出「うわぁすげぇ認められ方!!」 真正面からぶつかり合う! だがぶつかり合いなら負けぬ! たとえSTRとAGIとVITにステータスを振り分けようとも、 ジークフリードの力だけで十分よ!! 中井出「くらいなっ───おぉおおりゃぁあああああーーーーーっ!!!!」  フォガァッキィンッ!! 夜華 「くはっ───!」 中井出「オォオーーーーシャァアーーーーイ!!!」 ジークフリードの一撃で、翔風斬魔刀ごと篠瀬さんを後ろに飛ばす! その隙にツヴァイハンドソードをエジェクションし、 背面の鞘に刺し込んだのちにジークフリードを双剣化! ジークムントとジークリンデを地面に突き刺し、 そこから疾風剣ランスロットと神速剣エレインをエジェクション! それらを両脇の鞘に納めたのちに、 ジークムントとジークリンデを地面から抜き取り準備完了! その間僅か4秒!! 当然それだけ経ってりゃ篠瀬さんも体勢を立て直しすぎててもいいくらいであり、 ───つーか既に目の前ぇええええええっ!!!! 夜華 「貴様が力ならばわたしは手数だ!受けてみよ!飛燕龍-散葉-!!」 篠瀬さんが刀を振るう! それは速度を重視にした連撃であり、対する俺は─── 中井出「鞘より我が身に!《ズバシャシャシャアッ!》いてぇえーーーーーーっ!!     ぐっ……スキルよ流れよ!《ザクザクザクザク!!》ギャーいたぁーーい!!     お、おのれぇえーーーーーっ!!猛ろ疾風ゥッ!!超速剣疾風斬!!」  フォガガガガガガガガガガガガガガキィンッ!!! 夜華 「なっ……なんだと!?」 構えるのが遅すぎたために散々と斬られたが、それ以降の攻撃を全て弾く。 これぞ元素竜と月の素材とで開花した鞘の能力、ブレイブスロット。 以前から似たようなことは出来てたが、ここまで鮮明なる再現は出来なかった。 どちらかというと、手に触れてなきゃ出来ないってのが多かったくらいだ。 猫に頼んで、鞘の強化は出来ないだろうかと頼んだ結果がこれだ。 相変わらずいい仕事をしてくれる。 おまけに鞘とブリュンヒルデの合成で鎧化(アムド)出来ないかーって言ってみたけど、 ブリュンヒルデだけで形を変えられるんだから意味ないニャと言われてしまった。 でももちろん合成してもらいました。最強。 使う機会があるかが問題だけど。 利点としては、ようするに鞘にも意志が通ったってことで、 槍のスキルが欲しい時とかに槍を鞘に納めると、きちんと縮んで納めてくれたりする。 そう……知るがいい武士の者よ。 我が装備は、この世界の様々な思いの果てに、生きているのだ。 中井出「五体にもチャクラにも技術にも精神面にもダメだしをくらった俺だ!     他に何を求めると訊かれたら、武具だとしか答えられない!     篠瀬さん、あんたは間違ってる!俺は鍛えないんじゃない!     鍛えたところで、それを成長させる基本がないんだ!     五体もチャクラも技術も精神もダメと言われた俺が、     どうして鍛錬で上を目指せよう!」 声  「……なんだと?それは、誰かに言われたのか」 中井出「遙か東にある、五体を極めんとする者たちの集落!そこの長老に言われた!     だから俺は武器を取った!他の世界の回路があるわけでもない!     月の家系みたいに身体能力がズバ抜けているわけでもない!     全ての才能に恵まれてない上に素質がないにも程があるって言われた僕だから!     つーかなんではるばる辿り着いた集落で     そんなこと言われなきゃならんかったの俺ェエエエ!!!     く、くそう!見えない!疾風使いすぎて目が見えないよう!!     ほんとは涙で視界が滲んで何も見えないって言おうとしたのにマジで見えない!     ど、どこだぁセバスチャアーーーーーーン!!!」 声  「…………それは、すまないことをした」 中井出「え?なに?」 なんかいきなり謝られた!……罠!?いやまさか篠瀬さんがセバスチャン!? よ、よーし落ち着くんだぜ博光!きっとヤツは俺を油断させてザックリ刺す気だ! もしくは悟史くん謹製エクスカリバットで僕をフルボコルボバルボなのかもしれん! おお意味が解らん上に余計に混乱してきた助けてぇえええっ!!! 声  「そうだな。貴様には貴様の考えがあって、武具を手にしたんだろう。     わたしはそれを、修行をしないからだ鍛錬しないからだと……。     そこに理由があるなどと、考えもしなかった」 中井出「や、そりゃしょうがないでしょ。篠瀬さん武士だし。     日々修行してる人から見れば、     俺みたいな奔放者はだらけてるって思われても仕方なし。     だが俺はそんな常識さえも壊したい。     白鳥が水面下で優雅に水かいてたら面白いと思わない?」 声  「いや……喩えがよく解らないが」 中井出「うん……そうだよね」 篠瀬さんにこの喩えは通じないか。 だが今の会話で大体の居場所は掴めた。 ……掴めたのに、キチンという音が聞こえた。 間違えじゃなければ、刀を鞘に納める音。 中井出「あれ?ちょ……篠瀬さん?」 声  「やめだ。わたしの負けでいい。……自分が情けない。     結局わたしは、自分の在り方を貴様に押し付けようとしていただけだったのだな」 中井出「……あの、それじゃあ俺って相当押し付けまくってる気がするんですけど」 声  「それが貴様の生き方なんだろう?人それぞれを謳うなら、それでいいだろう」 中井出「うむ、これぞ紛うことなき我が生き方。起死回生を望めると思った矢先に、     あれよと云う間にピンチな僕。こんにちは、中井出博光です」 声  「挨拶されても困る。……まあいい、何処へなりとも行くといい。     わたしはもう戻るとしよう。わたしの方こそ精神面が弱い。     しばらく彰衛門の袂には戻らず、一人で行動してみようと思う」 おお、それは新たな試み。 その行動は、きっとあなたを苦悩の道へと運びましゃう。じゃなくて、しょう。 中井出「………」 足音が離れてゆく。 いっそ後ろから襲い掛かってくれようかと思ったけど、残念ながら目が見えん。 これで一気に追うために烈風脚でもやってみろ、高い確率で壁か木にブチ当たるぞ。 声  『ヒロミツ、終わったのかの?』 中井出「む?その声はナギー!き、貴様足音すら鳴らさずにどうやって……!?」 声  『飛んできたのじゃ』 中井出「…………うん……そうだよね……」 それを知っていたからこそ、もっと別の返事を求めていた僕はおかしいですか? おかしくてもいいから求めますが。 中井出「うむ全てが終わった!故にナギーよ!     これより自然要塞へと帰還する!異存はないかぁ!」 声  『サーイェッサー!!』 中井出「眠気は溜まっているかぁ!」 声  『サーイェッサー!!』 中井出「お腹は膨れているかぁ!」 声  『サーイェッサー!!』 中井出「うむよし俺もである!ならばこれより早速ゲートを開き、     妖精の世界を経由して要塞に戻るものとする!     イェア・ゲッドラァック!ライク・ファイクミー!!」 ザザァッ!! 声  『Sir(サー)!!YesSir(イェッサー)!!』 高らかな声が耳に届く! うむ実に心地よい! では早速銀水晶でゲートを………………目が見えん。 中井出「……す、少し休んでいこうか、ナギー。ほ、星がほら、綺麗かもしれないよ?」 声  『む?おかしなことを言うの、ヒロミツは。星なら自然要塞からでも見えるじゃろ』 中井出「や、ちょっとここで見たいかなーって……《ピキンッ》お?」 ……直った。 見える……全てが。 声  『むむぅ……まあいいがの。では少し休んでから───』 中井出「やっぱ行こう!今すぐ行こう!!」 ナギー『なんなのじゃー!!行くと行ったり行かぬと言ったり!はっきりせよぉっ!!』 中井出「行こう!僕らの自然へ!」 ナギー『わかったのじゃー!』 さすがと言うべきか、基本的には既にノリのいいナギー! 即座に雰囲気を入れ替え、僕の言葉に素直に反応OHYES!! なもんだから俺も逸る気持ちで銀水晶を手に取り、ゴクリと喉を鳴らした。 中井出「つ、つ……使うぞ、精霊ナナナナナナナァナナナナァナギー!!」 ナギー『おおお落ち着くのじゃヒロミツ!べつに爆弾を扱うわけではないのじゃ!』 中井出「自爆したりしないよね!?(俺が)」 ナギー『するわけがなかろ!』 中井出「そ、そうか!よし!ではナギーよ!タッグフォーメーションTだ〜〜〜っ!」 ナギー『ま、待っていたのじゃそいつを〜〜〜っ!!』 説明しよう! タッグフォーメーションTとは、 ナギーが浮遊して俺の肩の上に座る、いわゆる肩車状態のことである! 何故Tなのかというと─── 中井出&ナギ『トー!テム!ポール!!《ビッシィイイッ!!》』 ───だからだぁあっ!!つまりトーテムポールのT。 ところでトーテムポールとは組体操の一つであり(略) 何故肩車なんかをしたのかと言えば、 この水晶で開けるゲートは、一人ずつしか入れないらしいからである! ならば肩車して一気に行ってしまおう作戦がそう!これなのだ! 中井出「アブラカタブラ!開け───アラビアンゲートォオオオッ!!!」 ナビネックレスに括りつけた銀水晶を空に掲げ、声高らかに! するとどうだろう……! 掲げた先の中空に、緑色の粒子が集い、ゲートが完成するではないかッツ!! 中井出「アレェ!?なんで空に!?も、もしや空に掲げたのがいけなかった!?     だがこれはこれで斬新な出現!     まさか掲げた方向に出現するとはこの博光もびっくりよ!     では行こうナギー!ジュノーンを打倒するためにッ……!」 ナギー『おお……ヒロミツが戦いに燃えておるのじゃ……!     でもその前に、やっぱり今日は眠るのであろ?』 中井出「うむ!疲れたし」 ナギー『ゆるりと眠って明日に備えるのじゃ。急いてはことを仕損じるとも言うしの』 急かなきゃなにも出来ない状況もあるけどね。 さて、そんなこんなでいろいろありすぎた今日は、 ゲートを潜り潜りして辿り着いた自然要塞で幕降ろしとなった。 ちなみにゲートまでの距離は、せっかくだからと使った烈風脚で飛びました。 で……辿り着いてみれば、潰れるように倒れ伏して眠る皆々様と、 キッチンに乱雑に転がった大量のホピ酒の器が目に入った。 どうやらノリに乗って、みんなを巻き込んで酒を飲みまくったらしい。 垂れ幕のようなものもあって、天使どもいらっしゃいと書かれたそれが、 この惨状の理由を語っていた。 ナギー『……すぐに戻ればよかったのじゃ……』 中井出「大丈夫!こう見えても俺は!宴会の達人!     宴会などいつでも出来る!何故ならまだ俺達は歓迎をしていないからだぁあっ!」 ナギー『お、おお!なるほどの!歓迎をしていない者が居るのなら、     それを理由にまた歓迎会が出来るということじゃな!?』 中井出「うむ!その通り!」 暢気に寝ている猛者どもや亜人族、そしてお客様どもを前に、 俺とナギーは自然の象徴とその加護を受けし者とはとても思えぬ暗黒の笑みを浮かべた。 今はゆっくりと眠るがいい全ての者どもよ……! 闇の守護竜を滅ぼせし時が、貴様らとの動乱の幕開けよ……! あ、でもその時に火の守護竜倒されてたら、俺暴走してるかもしれないんだっけ? しかもサウザンドドラゴン復活絵巻まで……うおう、どうしよう。 ───否!どうするもこうするもない! 我らはこの世界を、どこまでも楽しみ尽くすのみ! 中井出「よーーーっしゃあ眠るぞナギー!明日に備えてレッツ睡眠愚!!」 ナギー『サーイェッサー!!』 さよなら本日また来て明日! 僕らの夢と希望が明日の朝にもありますように。 なんてわけの解らんことを頭に浮かべながら、俺は自然寝室へと足を運んだ。 草花や木々に囲まれたそこは不思議な空間さ。 寝転がると自然が僕を暖めてくれる。 そんな暖かさに包まれながら、僕はやがて目を閉じ…… 何故か俺の体に寄り添って目を閉じるナギーと、 ならばと抱えて連れてきたシードとともに、暖かな夜の闇に溶け込んでいったのでした。 Next Menu back