───冒険の書230/闇の遺跡にて───
【ケース559:中井出博光/うだうだ考えてもつまらない世界】 暗い夜道はピカピカのてめぇの鼻がクソの役にも立たねぇ。 こんにちは、中井出博光です。 暗い遺跡の中を歩き、はや何十分なのか。 もはや時間の感覚すら薄れるくらいに歩いてる筈なんだが、一向になにも見つからん。 ヘンだよここ、遺跡のくせに宝箱の一つもない。 そのくせトラップだけは一丁前にゴロゴロと……。 いや、遺跡だから宝箱があるって考えがそもそも間違えだ。 よ〜く考えろよ〜く考えろ……。 ナギー『ヒロミツ、ここはさっき回ったところであろ』 中井出「なにっ!?マジかテメー!」 ナギー『テメーとはなんじゃー!……むううー……!     少し離れてみただけでも再確認出来るが、ほんにヒロミツは無礼じゃの……』 中井出「否定は出来ぬ」 好きに生きるってそういうことさ。 だが無礼なことは気安いってことだ。 受け取り方さえ間違わなければ、そう悪い意味にはならない。 シード『父上は魔王なんだ、礼儀の正しさなど持ち合わせてるわけないだろう』 中井出「そうだけど……なんかヤなんだけど、その言い方」 でもこうストレートに礼儀正しさなんて持ち合わせてないとか言われると、 さすがにショックだった。 ナギー『じゃがの、わしはそんなヒロミツが好きなのじゃ。     堅苦しいだけで、つまらないことが当然であった関所から連れ出してくれたのは、     他ならぬ無礼者であったヒロミツなのじゃからの。     ほんに、ヒロミツが無礼者で奔放な者であってくれてよかったのじゃ』 中井出「そうだけど……なんかヤなんだけど……その言い方」 あの世というか僕の鎌の中で混沌と化している僕のファミリー、お元気ですか? 僕は変わらず元気です。 ところで皆さん、無礼者であることを褒められるのって滅茶苦茶微妙ですね。 なんだか“クリスマスの夜に子供になにかするオッサン”と言われたサンタの気持ちが、 ほんの少しだけ解った気分です。 受け取り方を間違えるとただの変質者になります。 しかも比喩としては間違っていないのが物悲しいです。 遥一郎「人外に気に入られやすいって聞いたけど、その通りなんだな」 中井出「気に入られるかどうかなんてその時の語りまわしだろ」 ナギー『気に入るか気に入らないかはわしらの勝手なのじゃ』 遥一郎「………」 中井出「?」 納得はしてくれたようだけど、なにかを感じ取ってか、ホギーが俺をじっと見た。 ……何事? 遥一郎「……精神は回復したって言ったよな?」 中井出「お?おお。元気リンリンパワー全開だが……ど、どうかした?」 もしや俺の知らぬ間に、俺の中で何かが!? ……何かってなんだろ。 遥一郎「あぁ、その。悪い、ドリ……ナギー、それとシード。先に進んでてくれないか?     あと通ってないのはこの道だけだ。こっちに行けば先には進める」 ナギー『む?なんじゃ?』 中井出「……───ふむ。よく解らんがこの博光に話があるらしい。     ナギー、シード、先に進んでてくれ。この松明をあげるから」 デゲデデーン♪《ナギーは松明を受け取った!》 ナギー『……おお、なにやら松明を持った途端に旅人という気分になってきたぞよ』 シード『ババくさい喋り方をするな。父上が行けと言っているんだ、行くぞ』 ナギー『やかましいのじゃ』 …………てほてほと二人が暗闇の中を歩いてゆく。 それを、やがて深い闇に包まれるように自分さえ見えなくなってゆく俺達が見送り、 炎が完全に見えなくなった頃。 ホギーが魔法で明かりを灯し、俺を見た。 その顔は……酷く真面目だ。いい予感というか、面白い話じゃないらしいな……。 遥一郎   「単刀直入に訊くけどな。お前、大丈夫か?」 中井出   「僕なら平気さ!巷では美しくて丈夫と書いて美丈夫として有名なくらいさ」 遥一郎   「単刀直入に適当な言葉を並べるな馬鹿者。───マクスウェル」 マクスウェル『やれやれ、年寄りをこき使うでないわい……』 ……あれ? いやあの……なんでここでマックス爺さんを召喚? もしや俺の中に潜む何かとは、爺さんじゃなければ退散できないと!? ……何かってなにさ。 とか悩んでいると、爺さんが俺の顔や体をジロジロと見てゆく。 うう……いい感じしないなぁ……なんだってんだろうか一体。 マクスウェル『……後悔、かのぅ』 遥一郎   「後悔?」 そしていきなり結論から言い出した。 ハテ後悔?後悔……ねぇ。 思い当たるフシがありすぎてもうどうしたらいいことやら……僕もう泣きたい。 マクスウェル『若いの、人を殺した時、どんな気分だった』 中井出   「最悪」 でも訊かれそうなことは予測出来たから、ありのままの自分で答えた。 あんなの、気分のいいもんじゃない。 決まってるじゃねぇか。 マクスウェル『ではモンスターを殺す時はどうかの』 中井出   「実際に“勢力”ってもんを見ちまうと、どうにもね……。        最初は勇者気取りだったけどさ。        ファンタジーライフが長くなると、そういうところで慣れが生じてさ。        どうにも微妙な感じ」 マクスウェル『では、今まで他者を殺してきた自分を後悔しておるか?』 中井出   「それはやっちゃいけないことだろ。        いや、するしないは自由だろうけどさ。        俺から襲ったりもしたし、襲われたから殺したりもした。        生きるためには仕方が無いなんて言葉の盾を振りかざしたところで、        な〜んの解決もしねぇことだよ」 マクスウェル『じゃが、重荷にはなっておるようじゃな』 中井出   「ん〜……あ〜……その、戦いは面白いとは思う。        俺だって結局は男だ、強くなりたいって願望は持ってる。        けど、俺は殺人狂なんかじゃない。        武具の成長を戦いの中で実感出来るのは嬉しいけどさ。        でも人を殺して喜ぶのとは違う」 マクスウェル『……ふむ。おぬし、以前ほど冒険を楽しめなくなっておるな?』 中井出   「───」 旅をしてれば嫌でも解ることってある。 それが俺にとってのそういうことだった。 楽しめることばかりじゃないのは当然だ。 でも……いつからなんだろう。 この世界で起こる辛いことから逃げるように、自分は楽しさを求めていた。 そんなの、俺が今まで求めていた楽しさへの探求とは明らかに違う。 俺は純粋に楽しみたかっただけなのに……。 中井出「辛いことから逃げ出したくなる自分は……べつに嫌いじゃない。     そんな自分を客観的に見て、逃げ出す自分を止めない自分が嫌いだ。     ……なぁ、どう思う?この世界はファンタジーで、全ての生き物に社会がある。     もちろんモンスターにだってある。     それを悪だ正義だって言って好き勝手に殺して、素材を剥いで武器にして。     最近さ、解らなくなってきたんだ。     この世界の“声”を聞いているうちに、いろいろなことが」 自分は自分の意思によって動く。 だったら自分を中心に自分が動くのは当然だ。 けど、周りの言葉さえ聞こえないヤツには、周囲のことで楽しむことなんて出来やしない。 そんなことを小さい頃から知っていた俺だから、周りの声にはいつだって耳を傾けていた。 ……それを受け取ってたかは別として。 中井出「最初は俺もそれがこの世界で生きるってことなんだ〜って納得してた。     人と獣人とモンスターと竜族が戦争してる世界なんだって思えば、     まだ俺は平気で武器を振るえたよ。でも……戦争が起こってようが、     人の中には家の中に閉じこもって震えている子供がいるように……     モンスターや獣人の中にも、戦なんて望んでないやつがきっと居る。     だったらその本拠地に乗り込んで、     モンスターと見るや殺しちまう俺達ってなんだ?     人が人を殺さなければそれでいいなんてくだらない美談が聞きたいんじゃない。     人がバケモノになったから殺していいなんて、そんな勝手なこともどうでもいい。     命を狙われたから攻撃をする……そんなの当たり前だ、俺だってそうする。     でも、だったら、その戦を望んでなかったヤツだって、     俺達が武器を振るおうとすれば抗うに決まってるんだよな……。     だとしたら、俺は……そういうやつらまで、     知らない間に殺してきたんじゃないかって……」 遥一郎「……お前」 当然にしてきたことが当然じゃなかったとしたら、俺はどうするんだろう。 常識破壊なんてことを散々としてきたが、 その根本が違ってた時、果たしてそれは笑い事で済まされることなのか。 なまじっか現実に近しくなりすぎた所為で、俺の頭はもう限界だった。 自然の声や武具の声が聞こえるようになったことを悔いることは当然ない。 でも、聞こえるからこそ一度、真剣に考えてやりたかった。 自分が今までなにをしてきて、そしてこれから…… 自分があの光景の中で死に絶えてしまうまで、なにをしてゆくのかを。 死ぬことを認めているわけじゃない。 やっぱり運命なんて信じたくないし、 近い未来に自分が死んでしまうっていうのに運命を信じる人になんかなりたくない。 遥一郎「……本当はお前、寝れてなかったんじゃないか?」 中井出「………」 遥一郎「いつからだよ……思い返してみれば、     最近のお前って妙に無理矢理な元気があった気がする。     精神は確かに休まってるようだけど、深くなんて眠れてないんだろ……」 中井出「……デスゲイズのディザスターを受けてからずっと。     眠れはするんだ、こうして精神も回復してる。     でも……目を閉じると、俺が殺してきたやつらが出てきて、ずっと俺を見るんだ。     何も言わないで、ただ“死にたくなかった”って訴えかけるような目で……」 遥一郎「デスゲイズって……あれからずっとか!?どうしてもっと早く───!」 中井出「殺したのは事実だからだよ……。だから、目を閉じるたびに謝ってる。     ……ジークフリードやジークムントとジークリンデに笑われたよ。     ゲームの中だっていうのにそんなに真面目になるなんてって。     でもさ、ゲームでもなければ俺はこんな無茶をすることはなかっただろうし、     この世界で生きてきたからこんな風に思えるようになったんだよな……」 命は重い。 無くなっちまえばそれまでで、取り返しなんてつくこともない。 この世界でだって一度滅びた命は戻ってこないし、やり直せるのは俺達だけ。 そんなリピート機能を持った俺達が、たった一度きりの人生を断つ。 頭の中に描いてみると、それは酷く残酷な光景だった。 きっと不死者が惨殺を繰り返す光景ってのは、そんな風情なんだろう。 マクスウェル『……それでも後悔はしないというのか』 中井出   「俺は俺が進んだ道を後悔しない。そりゃあの時ああすればって思うさ。        でもそんなことをどうでもいいように思えるまで生きていけば、        また前を向いて生きていける。        後ろめたさがあったとしても……なにも死ぬことはないって思える。        だから……もし瞼の裏の亡者たちが俺に死ねって言ってきても、        俺は死んでやるわけにはいかない。そんなの、頷けないんだ」 どれだけ卑怯と言われても、やっぱり自分の命は大事だって思える。 簡単に差し出せるほど、自分の命は安くない。 それを差し出すってことは、ばーさんの痛みもじーさんの暖かかった手の平の感触も、 俺が今までを生きてきて、体験してきたことの全てを捨てるってことだ。 そんなの……出来るわけがないじゃないか。 罪の意識に押し潰されそうになって、死んでしまいたいって思う時が来るかもしれない。 死ぬことで許されるならって思ってしまうこともあるかもしれない。 でも……それでも、俺は自分の命を安く見ることなんて出来やしないのだ。 遥一郎「ゲームから学ぶことがあるっていうけど、お前のは異常だ……。     どうしてそんなものを学んじまうんだよ……」 中井出「えーとそれは僕が異常だからだと暗に突っ込んでいるんでしょうか」 遥一郎「いや、そうじゃなくてさ」 中井出「……ん、心配ありがとうゴザルます。そしてごめんなさい。     異常だとしても、学んじまったものは簡単には忘れられないし、     多分俺は……このことを忘れない。我が儘だって言われようと我慢する」 遥一郎「謝ってほしいんじゃないんだよ……我が儘でもいい。     今さらお前が我が儘がどうとか言ったって、なんていうか説得力に欠けるし」 中井出「あの……ジワジワ甚振(いたぶ)って精神的に抹殺するつもりですか?」 遥一郎「そうじゃないっ!殺めたことの責を知るななんて言わない!     けどな、それを気にしたところでどうにかなる世界じゃないだろうがここは!」 中井出「え……いやあの、そんなこと解ってるから苦悩してるんですが……」 遥一郎「………」 中井出「あの……僕先に言ったよね?後悔はしてないって……。     責任だとかそんなもんはそもそも知らん振りしてますよ僕……」 遥一郎「じゃあ結局なにが言いたいんだお前は」 中井出「つーか逆に貴様は俺に何を言わせたいの!?     人を呼び止めておいて逆ギレなんて紳士的ではなくってよホギーサン!!」 そう!元々これは貴様が仕掛けてきた話題! 勝手に探りを入れて勝手に怒られてはたまらんぞキミ!! その旨を目の前のホギーにホギャーと訴えかけると、 ホギーはバツの悪い顔をしながら頬を掻き、呟くように言った。 遥一郎「言わせたいことなんて最初っからなかった。     ただ顔色が優れないなって……いや違うか。     なんていうのか……楽しそうじゃなかったから」 中井出「ウヌウ……」 それはマックス爺さんに言ったとおりのことの所為であり…… ホギーにバレてたってことは、ナギーたちにもバレてる……よなぁ。 なんと情けないことか……。 マクスウェル『強がっていようが人間ということじゃ。        武具を強くしようが体を鍛えようが、精神が弱い典型じゃのう』 中井出   「いやほんと……好き勝手に図星突きまくってくれちゃってもう……」 マクスウェル『そういうことを言っておるのではないのじゃがな。        解っておるのじゃろう?“ソレ”は確かにおぬしが殺した者たちが、        デスゲイズの災いにすがっておぬしを睨んでいる、いわば怨念じゃ。        しかもデスゲイズの災いになどにすがったために相当にドス黒い。        いくらおぬしが謝ろうが、決して許されはしないじゃろう』 中井出   「あーいいのいいの、どうせ自己満足だし。        謝った程度で無くなった命は戻りゃしない。そんなことは解ってるんだ。        奇麗事並べたって結果は結果だ、どうにもならない。        俺ゃ運命はキライだが、起きたことはちゃんと見る。        見て、受け入れる。瞼の裏にびっしり並んだ死に顔たちも、        俺が殺したっていう事実も、全部。        だがもちろん祓えるなら今すぐにでもグオッフォッフォ」 マクスウェル『反省するか悪企みするかどっちかにせい』 中井出   「や、反省はしてない。悪巧みも……うん、特には」 遥一郎   「反省してないのか!?」 中井出   「え……いや、反省ってなにを反省しろと……」 …………ハッ!! もしや───……だめだいっぱいありすぎて例に挙げるのも烏滸がましい……。 中井出「と、とにかく。     俺は冒険の中で、剣を振るってはモンスターや人や獣人や竜族をコロがした。     なまじモンスターや竜族の声も聞き取れるから、     かなり生々しく悲鳴とか聞けるわけだけどさ。     その中で戦う意思も暴れる意思も持ってなかったモンスターたちが居たとしても、     反省するのはお門違いだと思うんだ」 遥一郎「……参考までに、どうしてだ?」 中井出「背負うとも違うし抱くとも違うけど、     俺は誰に操られるでもなく自分の意思でコロがしてきた。     なのに、勝手に殺して“反省するからソーリー”って。俺だったら逆に許せない」 遥一郎「あ、ああ……なるほど、確かに」 中井出「だからな、こりゃ名前通りの災いなんだよ。     楽しくやってきた冒険を悔やむことはしない。     でもせめて、亡者どもが睨んでいる限りは謝りたいかなって」 謝ったって許してもらえるもんじゃない。 災いを受けた最初の日、睨み続ける亡者どもが怖くて、俺は臆病にも心の底から懺悔した。 夢の中のことだから誰も知らないだろうが、 だからこそ最初は、自分が死ぬなんて夢を見たのは応報だと思った。 理由や理屈はどうあれ、楽しむためにコロがしたのは変わりない。 マクスウェル『なるほどのぅ……ふむ。なんならばわしが浄化してくれようか?』 中井出   「出来るの!?」 マクスウェル『月光デッキブラシがあれば可能ではあるがのぅ』 遥一郎   「デッキブラシ!?」 中井出   「なっ……なんだってぇえーーーーーーーっ!!?」 月光デッキブラシって……あの光の聖堂で手に入れたアレ!? な、なんと素晴らしい……! 中井出「い、一応持ってるけど……これでどうやって?」 ジークフリードからデッキブラシをエジェクト……異様な光景である。 でもそれをサム、と爺さんに渡すと、俺はゴクリと喉を鳴らした。 マクスウェル『……これをわしに渡したということは、        おぬしは今すぐ災いを解きたいということじゃな?』 中井出   「正直に申し上げますとそうなります。        謝っても許されず、瞼の中に焼きついたものを        いつまでも残しておきたい酔狂な人間はそう居ないだろ。        でも、謝り続けて許されたとしたら、俺はもう武器を振るえない。        だから……ほんとに勝手で、ひでぇ話になるけどさ。        俺は許されたくないって思ってる。        これからもコロがすために、許されたくないって思ってる」 マクスウェル『ふぅむ……重症じゃな』 中井出   「おおまったくだ。        冒険したいって言葉をコロがすに置き換える気分って最悪な。        けど、マジでそうなんだ。        許されてから剣を振るったら、俺は自分を軽蔑しちまうよ。        どれだけ文句を言われようが、楽しそうじゃないって言われようが、        結局のところ俺は冒険が楽しくて……        ぐおおおおだめだ暗い気持ち大ッキライィイイイ!!!」 マクスウェル『だめじゃ。逃げ出さずに全てを吐き出すのじゃ』 中井出   「───これって懺悔!?悔やみたくなんかねーのに結局悔やんでる!?」 遥一郎   「人間が悔やむことを放棄するなんて無理だろ」 中井出   「うぐぅ」 タイヤキ食べたい。……じゃなくて。 中井出「後悔ねぇ……逃げ出さずに吐き出せって、随分とまた面倒なことを」 遥一郎「酷とは思わないのか?」 中井出「大丈夫!何を隠そう、俺は嘔吐の達人だぁああああっ!!」 遥一郎「吐き出すの意味がまるで違うだろ!」 中井出「それでいいのだいけるナリ〜!つ〜わけで曝そう!     これが懺悔というのなら、俺はもう後悔をしていると叫ぶべき!     その全てが間違ってようが、今この時に抱いている気持ちにウソはねー!     だから聞いてください……これが僕の懺悔です」 ……口だけなんらなんとでも言える典型。 確かに重症だよこれは。 でも、どれだけ後悔を重ねようが捨てたりしない。 生きてりゃどうにもならねー物事に直面する時ってあるよな。 そんな時は……周りの意見もきちんと聞いて、 結局は……自力で立ち直るしか……ねぇんだよな。 周りは助言やヒントをくれるだけで……答えを出すのは自分なんだから。 ───……。 ……吐き出した先になにがあったわけでもない。 俺は俺として、俺が放てる懺悔の全てを吐いた。 一度吐き出すとそれは俺の中からぼろぼろとこぼれ落ちて、 知らずのうちに涙さえ流し、鼻水まで流し、ガキみたいに丸まって泣いていた。  世界には楽しいことだけあればいいのに…… ガキの時分の口癖が最後に漏れた時、俺はきっと、現在を生きる俺じゃあなかった。 過ぎた過去はやり直せない。 戻れたところで過去の俺が居て、そいつはもう現在の俺じゃない。 だから俺は起きた過去を受け入れるために現在を思いっきり楽しんだ。 辛い過去を受け入れるんだから、その辛さを緩和する楽しい現在が欲しかったんだ。 でも、それなのに。 その楽しんでいたはずの現在が辛さに変わってしまった時、 自分はいったいなにを糧にして辛さを殺していけばいいんだろう。 そんなことをずっと昔から知っていた俺は、 いったいどんな現実の中で歩けば救われるのか。  救いなんてない。自分で決めるしかないんだよ。 じゃなきゃ、それは答えじゃないと。しわくちゃの男は、俺にそう言った。 その人はどんな気分だったのか。 俺を庇って死んでしまったばーさんと、そのばーさんが死んでしまった原因の俺。 そんな俺と一緒に余生を過ごすことは、きっと辛いことだっただろう。 じーさんは最初の頃こそ放心してて、俺がなにを言っても返事などくれなかった。 だけどいつか、暖かい手が俺の頭を撫でた時。 彼はきっと、答えを出せたんだと思う。 そう、救いなんてない。自分で決めるしかないんだ。 高校の時分、学校でハデな喧嘩をした。 些細な考えの違いから起きたソレは波紋を撒き散らして、 俺はそのことを何度も苛立ちながら思い返し、 じーさんにさえ当たるように苛立ちをぶちまけた。 だけどじーさんは悲しそうな顔をするだけで、特になにも喋りはしなかった。 なにも喋ってくれなかった。 でも、今なら解る。 あれは“くれなかった”なんて後ろ向きなことじゃなく、側に居て“くれた”んだって。 考え方を変えるだけでよかった。 苛立ちを抑えて、頑張って抑えて、そうしていれば、俺はきっと自分で答えを出せたのに。 結局そいつとは犬猿の中のままに卒業した。 楽しい思い出になる筈の高校生活は、 それは原中ほどの思い出が残るなんて思っちゃいなかったけど、 それでも高校でしか出来ない思い出が残る筈だったのに。 思い返してみれば確かに楽しい思い出もあるのに、 まるで魚の骨が喉に引っかかったみたいに、 その思い出たちのすべてには小さな棘があった。 それは、その思い出の中にあいつが居るからか?  違う。喧嘩したことを後悔し続けているからだ。 なのに起きてしまった過去は戻らない。 高校を卒業して、新しい生活に身を置きながら、流れる時節の中で思い出す景色。 いつか家に帰って、変わり映えのしない生活にため息を吐いた俺に届いた電話。  どうしてたった一言、謝って仲直りするって答えを出せなかったんだろう。 電話は、楽しかった高校生活って部分を後悔の歴史に変えてしまった。 楽しかった分だけ、擦れ違ってしまった分だけ、後悔に変えてしまった。 そいつとは、もう永遠に仲直りできない関係になってしまったのだ。 先に立つ後悔なんてない。 だけどあの時、いや、今まででもいい。 もし勇気を持って答えを出せていたなら、俺達は互いを許し合えたんじゃないだろうか。 ───……それから俺は、何かに直面したら、 せめて自分の中でだけでも答えを出すようにしている。 それがたとえ間違いだったとしても、出した答えに胸を張ろうと。 周りは助言しかくれない。 答えは自分で出すべきで、出した答えは後悔として背負うべきじゃない。 そんなことを、俺は世界の在り方もてんで解らない頃に…… じーさんの死とともに、受け入れた。 家を差し押さえられて、追い出されて、世界の冷たさを知ったあの日。 悲しむ暇さえ与えてくれない世界に、俺は怒りさえ抱いた。 これが人間なんだと。 自分の利益のためなら他人の今後などどうでもいいと笑えるやつらが人間なんだと。 だったらいっそ、友人がそうであるように人をやめてやるとさえ思った。  だけど。 そんな時だ。 じーさんのあの暖かさが、俺の頭を撫でてくれた気がした。 見上げてみても、縁側で微笑んでいたあのしわくちゃな顔はそこにはない。 ただ蒼い空があって、もうじーさんを見上げることは出来ない、 体ばっかりデカくなった自分が居た。 息を吐くことが出来たとしたら、きっとそこだけだった。 だから俺は息を吐いて、考え方を改めた。 人をやめるんじゃない。 あんな人間になっちまうかもしれない自分を捨てようと。 俺は人として生きて、そんな自分に自信が持てるような人間を目指そうと。 立派じゃなくていい。 格好悪くてもいい。 ただ自分が満足出来る───そう、例えば。 なにかに直面しても、たった一つの焦った考え方じゃなく…… もっといろんな考え方が出来る自分になろうと。 いつか、それが間違いだったことに気づく時が来てしまっても─── せめてあっちでじーさんに会えたのなら、 笑って再会出来るくらいの自分で居ようと─── ───……。 ……。 遥一郎「………」 中井出「惚れた?」 遥一郎「とりあえず投げかける言葉が見つからないからって適当に喋るのはやめろ」 続けて喋ったところで特になにもなかった……こんにちは、中井出博光です。 マクスウェル『なるほどのう。おぬしは随分と物事を砕いた考え方をすると思ったが。        そんな過去があったのか』 中井出   「いややわお恥ずかしい……        ていうか遺跡で丸まって泣いた事実が今さら僕を赤く染める……!」 マクスウェル『それで、災いの浄化はどうするんじゃ?        浄化といってもわしに祓えるのは殺してきた者たちのみで、        災いまでは祓うことは出来んがのぅ』 中井出   「結構です!罪の意識がどーとか言うつもりはねー!        どんなに願い望もうがこの世界には変えられぬもんがたくさんあるだろう!        ただ結論から申し上げますと、実際責任だとかを感じたりはしてない。        感じてたら反省だのなんだのもしてるだろうし。        言い訳並べて正当化するより、もう受け入れようと思う!        マイファミリー!俺は魔物殺しも人殺しもしちまいました!        言い訳なんてしてもしょうがないからただ一言謝らせてください!」 一気に声を出して、一旦止める。 体の奥底に溜まっているどうしようもないものを吐き出すために、 その準備をするかのように。 中井出「───ごめんなさい!」 やがて叫ぶ。 なんの解決にもなりはしない、瞼を閉じなきゃ謝る相手すら見つからない謝罪の言葉を。 中井出   「俺、自分が楽しむためにいろんなもの破壊して、        だけどそれでも懲りずに壊していく!        ゲームだからとか作り物だからとか言ったってしょうがない!        この世界で生きてるやつらはこの世界できちんと生きてきた歴史があった!        でも俺はそれを自分の都合で破壊してます!        謝って許されることじゃないのは解ってる!        だから謝るのはこれが最後にします!ごめんなさい!!」 マクスウェル『おぬし……』 遥一郎   「………」 俺が出した答えはそれだった。 もう、これと決めたら曲げてやらない答え。 ふざけて意思を変えることなんていくらでもあったけど、 俺は“答え”だけは絶対に曲げたことはない。 どっかで曲げてるかもしれないけど、無意識じゃない限りは曲げようだなんて思わない。 遥一郎「……ひとつ訊いていいか?お前、この世界に降りたことで得るものがあったか?     この世界に降りて……自分は成長できたって、そう思えるか?」 中井出「なにそれ。……成長?知らねー」 遥一郎「真面目に答えろって。こういう時に濁されるの、好きじゃない」 中井出「いや……べつに濁してないんだが。成長?成長ねぇ……してないんじゃない?     この世界に降りたのが俺だとして、ここで暴れてりゃあこの俺に辿り着いてた。     それって成長かね。成長か。でもあんまり変わった感じしないけどなぁ。     暗い空気は嫌いだし、落ち込む時だってあるし……なにが変わった?」 遥一郎「…………言われてみれば、なにが変わったんだろうな」 中井出「でしょ?」 結論、変わったとしても根本はそう変わってない。 マクスウェル『……うむ。答えを出せたのならばそれでよいわい。ではこれは返すぞ』 中井出   「手間かけて悪いね、じっちゃん」 月光デッキブラシを返してもらって、ジークフリードに溶け込ませる。 や、しかし答えを出せてよかった。 サウザンドドラゴンをなんとか出来たら、 自分を見つめなおす旅にでも出るかな〜って思ってたんだ。 でもそれも保留だ。 どさくさ紛れに行方を眩ませて、 ブリュンヒルデを虚無僧テッカーに変えて旅をする密かな企みにサヨナラを。 不思議だ……何故こんな時に重なってしまったのか。(?) 遥一郎「晦や弦月もだけど、     子供の頃にキツイ過去があると生き方……じゃないな、考え方が変わるもんか?」 中井出「そういう貴様は子供の頃に妹を亡くしてるそうじゃないか」 遥一郎「……待て。誰に……」 中井出「青空よりも晴れやかな笑顔の似合う男に」 遥一郎「蒼木よぉ……」 中井出「そして俺の過去をキツイと決めるのはよくないぞ。     そりゃあガキにしてみりゃキッツイことだったかもしれんが、     今こうしている間にも俺よりもキッツイ過去を背負ったヤツが、     虚無僧テッカー装備して旅をしているかもしれんのだ」 遥一郎「こ、虚無僧?……何故?」 中井出「なんだろ。なにやらさっき僕にピピピ電波が舞い降りてきて……。     いやね?答えを出すまで俺、虚無僧の姿で旅をしようと思ってたんだよ。     思ってただけで決めてなかったからそれはそれでいいんだけどさ。     で、まあ答えを出した途端、僕の脳にピピピ電波がスワ〜っと。     虚無僧はダメ。あなたは村人として旅をしなさいと」 遥一郎「………」 中井出「………」 謎は深まるばかりだった。 中井出「……間を取って破壊僧になるのはどうだろうか」 遥一郎「どの異常空間の間を取ればそんな答えが出るんだ」 中井出「答えじゃなくて提案だが。……ところで貴様は“はかいそう”をどう呼ぶ派?     全てを破り壊す“破壊”?それとも戒律を破る方の“破戒”?」 遥一郎「え?や……どっち、って……戒律の方、かな……」 中井出「そうか。俺は破壊の方だ」 遥一郎「予想通りすぎて意外でもなんでもないな……」 俺もそう思う。 そしてさっきまで確かにあった筈の悲しみと嗚咽のシリアス空間は、 既に微塵も残っちゃいなかった。 やっぱこっちの空気の方が好きだね俺。 暗い空気など壊してしまえ。なるなら俺は、そんな破壊を齎す僧になりたい。 遥一郎「でも、戒律を破るって意味では、お前は案外的を射てる気がするけどな」 中井出「戒律……つまりみんなで守ってること……いわゆるルールというか常識か。     なるほど、それを破ること即ち常識破壊。     でもどうせならいろんなもの壊したいので破壊でいきますハイ。     そして二重の極みを会得してフタエノキワミアァーーーーッ!!って叫ぶンだ」 遥一郎「……好きにしてくれ」 いや……なにもそんな心底疲れた風情で言わんでも……。 だがもう答えは決まった。 俺は今まで通りこの世界で生きてゆく。 大体、もし本当に俺もこの世界で死んじまうんだったら、 それまでを楽しまないと本当につまらない。 中井出「フフフ、フェルダールに住まう全生命よ。     俺はこの世界のなにものをも巻き込む覚悟で散々と楽しむぞ。     俺は殺しの事実から逃げたりせぬ。     だから貴様らも俺が憎いのならいつでもこいっ!!     俺が魔王だから怖いというのなら、勇者となってからかかってこい!     俺は逃げも隠れもするぜ!?殺しの事実から逃げねーだけだからな!!」 遥一郎「普通に外道だな」 中井出「外道でいいのさ。     それを自負できるくらいの悪が心に住んでないと、剣なんてもう振るえない」 思えば随分と遠い世界にまで来てしまった……今ではそう思う。 この博光が殺しのことで頭を悩ませる時が来ようとは。 でも常識破壊や、戦いの理を抱いた時点でいつかはこんな日が来ることは解ってた。 戦いの理ってのはあれだ。 “殺していいのは殺される覚悟を持った者だけ”。 自分は攻撃されないつもりで誰かを攻撃するなんて馬鹿げた話だ。 偉ぶったヤツらには大体そのことが“常識”として頭の中にあるようで、 自分は好き勝手に攻撃するくせに、 いざ反撃されると見るや圧倒的な力で防御したり退ける。 攻撃されれば防御するのは当然だが、 偉ぶったヤツがそれをするなら実に殴ってやりたい気持ちが溢れてくる。 結局、弱いヤツは力あるヤツに翻弄されるしかないのだ。 ……自分が自分で力をつけたいって思って、それに足る力を得るまで。 中井出「あのさ、ホギー。俺、強くなれたかな」 遥一郎「随分といきなりな質問だな……強いだろ、実際に」 中井出「………」 強いって言われた。 でも自分の中じゃあ納得なんて出来てない。 俺が持っている理は、今の俺が強くなっているんだとしても、 弱い頃のままの……人間的な理だ。 考えの根本は弱い者が出す理屈ばっかだし、 なのに無理してそうなればいいなって方向で無茶をしているだけ。 実力が伴わなかったら叶わないし、強くなったって割には戦えばいっつもボロボロだ。 そんなだから、子供の屁理屈みたいなことを並べては、それがそうなるように無茶をする。 ……昔っからこんなことばっかだよな、俺。 でもそれが俺の楽しみ方なんだからしょうがない。 どれだけ大きくなろうが歳を積もうが、童心だけは忘れぬ修羅であれ。 中井出「じゃあ人間的な意味では?」 遥一郎「考え方の根本が人間っぽくないから解らない」 中井出「ひでぇ!人間であるこの僕が導き出したんだぞ!     人の考え方じゃなかったらなんだというのだ!」 遥一郎「突然変異のナマケモノ辺りじゃないか?」 中井出「ナマッ……!」 ナ、ナマケモノと来たよホギーったら……! ……でも馬鹿だから気にしないことにした。 中井出「へっちゃらさーーーっ!!ということで先に進もう!……え?俺?     大丈夫!何を隠そう、俺は立ち直りの達人だぁあああああっ!!!     どれだけ思い悩んでも起きた過去が変わるわけでもねぇ。     だったら俺に出来ることをしながら先に進みます。     それが、俺がガキの頃に出した答えだ。     よく言うだろ?悩んでてもつまらねぇって」 遥一郎「……なんていうか、驚いた。ただ単純なだけじゃなかったんだな」 中井出「誰だって考えることくらいするだろ〜コノヤロー。     俺の場合、ガキの頃にそれを必要とする場面が多かっただけのことだよ。     暗い雰囲気引き摺ったままじーさんと居る日々は辛いだけだった。     でも、じーさんに“お前の所為じゃないよ”って撫でられてからの日々は、     俺にとって眩しいくらいの日々だったんだ。     だから解ることが出来た。悲しいのはつまらない。     だったら、無理矢理でもいいから暗い雰囲気なんて壊すべきだって。     原中時代は俺にとって宝だよ。感謝してもしきれないくらいに眩しい時間だった」 俺はそこで、楽しむことの素晴らしさを学びました。 まなびストレートもびっくりなくらいにストレートに学びました。 比喩の意味が解らないけど学んだんです。 中井出「人はどれだけ成長しようと学び続ける修羅よ。     学ばずに生き、物事をこなすことなぞ人間に出来るものかい。     そんなのは神や死神や魔術師や竜族や天界の人々に任せておきゃあいい。     この博光とて未だ学びしこと多き修羅よ。     クックック、だから人間はやめらんねーんだけどね」 遥一郎「学ぶことがキライそうな風情だが」 中井出「楽しいことなら学びましょう!     これは原ソウルとは関係ないが、俺の心のキーワード!     悲しいことは忘れられないことが多いから、     今さら学びたいことなんてそうそう無いけどね。     だから暗い雰囲気なんてこの暗闇に置いていこう?     僕はもう十分に吐き出せた。俺は俺の我が儘を貫き通すって答えを出しました。     これは俺の人間としての決定だ!文句を言うのは勝手だが曲げたりはせん!」 遥一郎「誰にも文句は言わせんとか、言わないんだな」 中井出「発言は個人の自由である!でもそれを人が受け取るかどうかも自由。     どっちも自由ならそれでいいじゃない。     誰にも迷惑かけずに我が儘貫き通すことなんて、     出来っこないって思い知ってるし解りきってるぜ〜〜〜っ!     だったらもうそれでいいじゃないのさ。今さら振り返るべき悔いはありません。     過去があるから今の俺がある。うん、それは当然。     でも過去にこだわり続けては楽しいことも楽しめないかもしれない。     つまらないよりも楽しいほうがいい。     楽しくないなら楽しくなるようにすればよろし。ほら、単純でいいんだって」 楽しむことの出来る状況があるのに楽しまないのはもったいない。 楽しくないなら楽しめるように状況を変えていけばいい。 たとえ最初が強引なものだったとしても、いつかはそれに慣れることが出来るのだ。 地界の回路はそういうことに突飛しているとノートン先生も仰ってたし。 順応性っていうのか?それが他の世界の回路よりも高いのだそうで。 それが出来ないやつらは、回路の問題じゃなく心の問題だ。 ファンタジックな事態に突然巻き込まれて、 ただ混乱するだけのヤツは“楽しむ心”の大部分を無くしているか、 心の奥底に閉じ込めているタイプ。 閉じ込めているタイプってのはアレだな、篠瀬さんとかああいう生真面目な人たち。 ああいう人たちは一度タガが外れると、もう楽しむことに酔いしれてしまうくらいだ。 ……彰利を好きになった篠瀬さんが、恋にとろけてしまったのと同じように。 中井出「ホギー、貴様はこの世界を楽しんでる?」 遥一郎「……ま、まあその……俺も一応男だし……な。     ファンタジーってくれば、胸も踊るよ」 中井出「OK、貴様の童心は生きている」 子供が好奇心の塊だと言うのなら、なるほど、童心ってのは確かに人の原動力だろう。 それを無くしてしまったヤツらはもう同じようにしか行動できない。 好奇心を無くして、同じなにかに没頭するしかなくなってしまうのだ。 別の何かに興味を示せるなら、童心は死んでない。ああ死んでないとも生きてるさ! ただ眠ってるだけだよ!燻るハートの腕枕でまったり寝てるだけさ! 火をつけてやればホギャアアと叫んで目を覚ますさ! 中井出「さあ行こう!なんか元気出てきた!ナギー!?シード!     俺も行く!行くんだ!行くんだよォオオオッ!!     俺に来るなと命令しないでくれっ!行くんだ!トリッシュは俺だ!俺なんだ!!     あ、とりあえずキミフーゴね?頭いいから」 遥一郎「……もうホギーで十分だから、思いつきで名前つけるのやめてくれ……」 中井出「じゃあいいよもうチョメチョメスキーで!!」 遥一郎「待てぇっ!それジョジョじゃないだろ!」 中井出「おお!よくぞジョジョネタだということを知っていた!     さすがにそれくらい知っていなくては張り合いがない!     ちなみにチョメチョメスキーはザ・モモタロウに存在する、     シュテンドルフのかつての友です」 とある計略によって命を落としてるけどね。 遥一郎「お前って本当にどこまでも奔放だよな……」 中井出「奔放であればあるほど自分を実感できる……こんにちは、中井出博光です。     一握りの自由を求めて幾十里、今日の俺はいつだって最高さ」 遥一郎「今日の、ってつまり毎日だろ?」 中井出「その通りだ!俺は俺の命、俺の心臓に賭けて誓おう!     たとえ人から外れた生き方をしようとも、人として生き続けよう!     えーとなんつったっけ?」 遥一郎「I pledge my heart to be back to you as a human.     “我は我が心臓に賭けて誓約す。人として汝の元へ還らんことを”、だろ?」 中井出「ソレダ」 ついオリバ風にホギーを指差してしまった。 だがそれ。俺が言いたかったのはまさにそれだ。 中井出「まさか貴様が知っていようとは」 遥一郎「触覚フールに無理矢理見させられた」 一発で理解できました。 なるほど、あの触覚もやりおる。 中井出「おおよし、いろいろ解決したところでさあ行こう。     先に行ってもらってなんだが、     ちぃともナギーたちからの反応がないのが気になる」 遥一郎「話に夢中になってたと思ってたけど、ちゃんと気にしてたんだな」 中井出「当たり前じゃないか!言っとくが俺は子供には甘いぜ!?     ……もちろん自分のと言う意味で!他人の子供ならば体当たりしてきた時点で、     “あ、兄ちゃんかんにん”と言っても蹴れるぞ俺は。     それでもビッグブラザーは僕らを見ている聞いている。誰だビッグブラザーって」 遥一郎「とりあえず一旦落ち着いたらどうだ?」 中井出「任せとけっ!こう見えても俺は、沈着の達人!     だから進もう俺はもうクールガァーーーイ!!」 言うやとっとと大激走! この先にあるであろう素晴らしきを求めてぇえっ!! 声  「ちょっと待ったぁあああっ!!」 ───その時だった! この博光の行動を遮らんとする意思が言葉として放たれたのは! 中井出「断る!!」 声  「ホゲェエーーーーッ!!?」 でも断った。 何故ならば!その方が面白いからだ! 中井出「やあ」 俊也 「やあじゃないだろっ!」 暗闇の先からゴゾォオオ……と出てきたのはトッスィー。 と、サチねーさんとカスミン。 俊也 「依頼者置いて遺跡来るなんて前代未聞だっ!     あんた先に来て宝全部取るつもりだっただろ!」 中井出「その通りだ」 俊也 「うわぁ隠しもしないよこいつ!」 大層驚かれてしまった。 中井出「やあ、そもそも依頼者が無事であって宝を持ち帰れればOK?」 俊也 「ば、ばか、トレジャハンターってのは宝はもちろんのこと、     その遺跡でのスリルを味わうことも大切に思ってるんだ。     なのに置いていかれちゃつまらないだろ」 中井出「───その意気や良し!ならばゆこうトッスィー!     他の道はループしているだけだったが、この道だけはまだ通ってない!     ならばこここそが正解の道!!既にナギーとシードが」 俊也 「そ、そっか!」 佐知子「だったら行くわよ俊也!夏純!トレジャーハンターは遺跡探索がお仕事ぉっ!」 夏純 「!”」 俊也 「よしっ!ここに来るまでに     どうしてか敵らしき敵も居なかったし、レッツゴーだ!」 ズダラタタタタタ……!! トッスィーたちが走ってゆく───……ループ通路へ。 中井出   「行こうか」 遥一郎   「鬼だな」 中井出   「黙ってた貴様もね」 マクスウェル『ほっほ、ではワシもじゃのう』 みんなクズだった。 ───……。 ……。 カツーンコツーンカツーン…… 中井出「い、遺跡歩くと鳴る独特の靴音って素晴らしいよね?」 声  「素晴らしい素晴らしい。だからしがみつくのやめてくれ」 中井出「だって怖いじゃないか!」 声  「今さら幽霊が怖いなんて何歳だよお前!!」 中井出「馬鹿野郎!なにかを恐れるのに年齢も経験も関係ねぇ!!     じゅ、熟練の剣士だってなぁ!     自分より圧倒的に強いやつが現れたら恐れるもんなんだよきっと!」 声  「あ、モンスター“ゴースト”だ」 中井出「よっしゃあかかってこいやぁ!」 声  「あ、幽霊」 中井出「ギャーーーーーーーッ!!!!」 声  「うるさい黙れ馬鹿!!」 中井出「ななななんだよー!て、提督だぞー!?ばかにすんなー!     提督だって人の子なんだぞー!?」 暗い夜道はピカピカの貴様の鼻がやっぱりクソの役にも立たない。 ……こんにちは、中井出博光です。 正解の通路を歩くこと数分、 ある一定の箇所を通過した途端に消えてしまった明かり魔法は、 ある一定の箇所を通過して以降使えなくなってしまっていた。 おお、闇というのはかくも恐ろしいものであったか、なんと恐ろしい。 こりゃ先に言ったナギーとシードも難儀していることだろう。 声  「どうする?このままじゃ前に進めないぞ?」 中井出「大丈夫!何を隠そう、俺は心眼の達人だぁああああっ!!     こんなこともあろうかと、     みさき先輩を思って暗闇の中を歩行する訓練をしたのさ!」 声  「……?誰だ?その……みさき、って人」 中井出「みさきじゃなくてみさき先輩な?これ大事。ちなみに結果は散々だった」 声  「………」 中井出「あ、今溜め息吐いたでしょ。吐いたよね?吐いたでしょ!ねぇ!!」 声  「吐いたから、なにか作戦があるならやってくれ」 中井出「うむ!まず───遺跡をブッ壊します」 声  「………………そ、そうか!そもそもこんな暗い空間があるから見えないんだ!     天井ブチ破って太陽光さえ差し込ませればってアホかぁあーーーーーっ!!     遺跡!ここ遺跡!!貴重な文化遺産!!     お前さっきいろんなこと懺悔したばっかだろうがぁっ!!」 中井出「うむ!我が心の臓に誓い、この乱世を楽しみ尽くすと誓った!     そのために遺跡が壊れるのならそれを僕は結果論として受け入れましょう!」 声  「そんなことしてまたなにかに巻き込まれたらどうするんだ!」 中井出「アイ!ラブ!トラブル!!」 声  「やかましい!!」 心眼関係ないじゃないかというツッコミはいくら待っても訪れなかった。 いやまあいいんだけどさ。 中井出「そうだ闇だから恐れるからいかんのだ!どうせ闇の中ならなにも見えやしない!     発想の転換!───なまじ見えるから怖いのであって、     見えないのならそれを受け入れてみてはどうだろうか!おおなんと素晴らしい!     これなら走れる走ってゆける!さあ行こうホギー!僕らの旅は……     始まったばかりだ!《ダッ!ズルドシャズザザーーッ!》ギャアアアアア!!!」 声  「え?あ、おい!?何処行った!?お《ズルゥッ!》うぉわっ!?     いやちょほわぁああーーーーーーーーーーーっ!!《ゾザザァーーーッ!!!》」 踏み出した一歩先に段差というか斜面があった! しかもそれは結構急であり、俺は自分の重力こそに誘われるかのように、 何も見えない深淵へと滑り落ちてゆく…………っ! えーと……遺跡で斜面って、大体最後には剣山が迎えてくれるんだよね。 だがご安心!俺にはそう、テオブランドがあるのさ! 俺一人を浮かせることくらい造作もないどぐしゃずざざざぁっ!! 中井出「ちぇるしぃいいーーーーーーーーっ!!!!」 ……結論から申し上げますと、剣山などありませんでした。 あったのは床でありズドンッ!! 中井出「おぶぅ!!」 声  「いがっ!」 顔面から滑ったためにすぐに止まった俺の滑走は、 次いで落ちてきたホギーに追撃される形で幕を閉じた。 ボディに……これは頭か……?ぐおお、いいヘッド持ってやがる……! 声  「い、いつつ……!うあ……まだ暗闇か」 中井出「ねぇホギー、どうしよう。僕ポンポン痛い……」 声  「……漏らさないでくれよ?」 中井出「そっち方面じゃないよ!     キミが僕のボディに痛烈な頭突きを見舞いやがったんじゃないか!」 声  「え?あ……す、すまん、滑ってたし何処に何があるのかも解らなかった」 中井出「じゃあ行こう」 声  「……いいけどさ。本当に、楽しければいいんだな」 ズキズキと痛むボディを庇いながら歩く。 といっても痛みはすぐに回復した。フェルダールの恵に感謝を。 中井出「しかし暗いなぁ……ねぇホギー、今すぐ鼻をシャイニング」 声  「できるか!」 中井出「ええっ!?出来ないの!?」 声  「あっ……当たり前だ。そもそもどうして普通に驚かれてるんだ」 中井出「魔法使いというのは超常を繰る者だと耳にした。     ならば俺が“いやそりゃ出来ねーだろ”と思ったことでもきっとやりのける……!     僕はそう、自分の都合で勝手に思い込んでました」 声  「あ、あのな、出来ないからな?本当に、冗談抜きで、出来やしないからな?」 中井出「……チッ、トナカイ以下め……!いいかお前はトナカイ以下だ!     トナカイ以上に至れないトナカイ以下だこのトナカイ未満めぇっ!!     所詮貴様は食物連鎖上でしかトナカイの上に立てない愚か者だ!     食うがいいさ噛み締めるがいいさトナカイの血肉を!     貴様はそうすることでしかトナカイに勝ったつもりになれないのだからな!」 声  「トナカイの鼻が光るわけないだろうが!それ以前にどういう中傷なんだよそれ!」 中井出「ちなみに一説によるとトナカイの味はとても平凡にして平坦。浮き沈みというか凹     凸のない、ひどく普通〜の味らしい。レストラン・サンタクロ〜スという場所があ     るんだが、そこで食べられるとの噂だ……そう、サンタクロースがクリスマスの夜     に散々こき使われて疲れ果てているトナカイを捌き料理にしあまつさえ金にせんが     ために客に食わせて金を取っている恐ろしいサンタ料理よ……!」 声  (……帰りてぇ) さて……トナカイについて熱く語るのはいいとして、どうしたものか。 先ほどのように元気に進んで斜面へゴーなのはちょっと勘弁させていただきたい。 ならば───そうか! 中井出「エジェクション!月光デッキブラシよ……その高貴なる力で、     この闇に埋もれた穢れを払っておくれ!」 ジークフリードに手を当て、 そこから掴み取るように月光デッキブラシ……だと思うものを手に取る! なにせ見えないから、そう思うしかないのだが。 中井出「よいしょ」 じゃざぁっ!───デッキブラシ独特の擦る音が耳に届き、 無数の……毛(?)が遺跡の石床を擦る感触が我が肉体に流れゆく……! するとどうだろう! 擦った部分が金色……まるで月明かりの如く輝き、そこだけを鮮明に見せるではないか! 声  「なっ……なにぃいーーーーーっ!!!?」 中井出「おおおデッキブラシさまの……デッキさまの奇跡じゃあーーーーっ!!」 光も差さぬこの場所で!まさか擦っただけで光を放たさせるとは! 猛者どもよ……!この博光は今感動している……! 見守っていてくれているか、この博光の感動を……! ……見えっこないけど。
【Side───岡田くん】 スクッ……モニュ……モニュ……。 スズ……モグ……モニュ…… 岡田 「ミスターは傷を負ったようだな……」 丘野 「怪我をされた時はいつもそうだ……」 清水 「メニューはいつもステーキに統一される……」 藤堂 「肉とワイン……それだけ食し傷をふさぎ、快復される……トカゲだなまるで」 田辺 「シィッ……聞こえるぞ」 トクトクトク……ズ…… 岡田 「ミスター…………適量かと…………」 清水 (いったい何キロ食べたんだ……) 最後にワインを飲み終えたあたりで言っておいた。 もう説明するまでもないと思うが、 レストランのテーブルの一部分に綺麗に積まれている皿は、全てステーキ用のものである。 さらに言えばステーキとワインとくれば、食べるヤツは一人なわけで。 俺達の視線の先に居るのは、タンクトップも着ないでパンツ一丁のままの怪力無双である。 丘野 「ていうかもうほんとやめとくでござるよ!     こんなに食ったんじゃあいくら金があっても足りないでござる!」 田辺 「そもそもオリバ自身傷なんて負ってねぇだろうが!」 オリバ「わたしの筋肉の厚さは世界一だ。     あんなガラクタの攻撃ではとてもとても内臓までは……」 総員 『つまり傷負ってねーんじゃねぇか!!』 フレイムマウンテンの最寄の街、マレッドラント。 そこで必要なものを揃えようと立ち寄ったところ、 いつの間にかオリバになっていた藍田が、 レストラムでステーキとワインを馬鹿みたいに頼みまくった。 それらがまるで消えるように次々と咀嚼され嚥下される様を見ていた俺達は、 それはもう見ているだけで胸焼けをしそうな心境だった。 藤堂も鉄分を快復させるためにそれっぽいものを食いまくっていたが、 途中でその手は止まった。 近くでこれだけステーキを食われたんじゃあ、そりゃあ食う手も止まるってもんだ。 オリバ「オゲェッホゲッホゴホ!!」 丘野 「アアッ!またミスターが葉巻で咽ているでござる!     煙草嫌いなんだから無理するんじゃねーでござる!」 岡田 「またって、以前もやったのか?」 丘野 「やったでござる。その時も咽て、食費だけで相当に金が飛んだでござるな」 藤堂 「うわぁ……」 田辺 「つーか俺もうここから出たい……。民の視線が痛い……痛すぎる……」 田辺の言葉に促されるように周りを見てみれば、 他の客が皆、パンツ一丁でステーキとワインを食い漁るミスターを見ていた。 ……当然、その近くに居る俺達も。 神よ……これはどういった拷問なんでしょうか……。 岡田 「てっ……店員さーーん!勘定、絶対にミスターとは別にしてくださぁああい!!」 丘野 「あっ!卑怯だぞてめぇ!店員殿!拙者こその勘定も別にしてほしいでござる!」 田辺 「俺も頼む!」 清水 「お、俺も!」 藤堂 「俺もだ!俺も勘定を別に!」 オリバ「フフ……意外トミミッチイトイウカ……」 総員 『ワリカンさせようとするほうがよっぽどみみっちいだろうが!!』 ……余談だが。 のちにミスターは手持ち金では支払い切れずに、 手に入れたばかりの赤竜素材を売り払って金を作ることとなった。 それらがあればよりよい武具強化が出来ただろうに、 一度の食事のために相当数の金を支払うこととなり…… もちろんオリバ状態から元に戻ったあとの藍田が、 頭を抱えて後悔したことは言うまでもない。 そりゃ、素材の全部を売るハメになったわけじゃないし、まだまだ素材は残ってるんだが。 売った分の素材があれば、なにかが出来た筈なのは確認するまでもなかった。 【Size───End】
シュゴォオオーーーーーーッ!!パパァアーーーーーッ!!! 中井出「見える……全部見えるぞぉお!!」 輝く白さに心奪われ、乱心めいて闇を掃除すること幾時分。 闇の中なのに闇から隔離された空間で、 俺とホギーはデッキブラシの性能に唖然としていた。 黒い物体「すごいもんだな……」 中井出 「おお……部屋は見えるのに俺達は見えないってのが、なおすごい」 そう、部屋は完全に見渡せるくらい、闇を払拭することが出来た。 しかしどういう仕掛けなのか俺とホギーは闇の覆われたように黒いままで、 なんともはや、アヴェンジャーが対話してるようなヘンテコリン状況を満喫中だ。 中井出 「しかしこうなると、ナギーとシードの行方が気になるな」 黒い物体「契約転移は?」 中井出 「転移自体が出来なくなってるからダメらしい。      ならば困った時のtell頼み!《……ナルブツッ!》速ッ!!」 tellを飛ばせば秒も経たずにアクセスオーケー! これも然の精霊の……ナギーのなせる業なのか……! いやまあそんなことはどうでもいいんだけど。 声  『ヒロミツじゃな!?ヒロミツであろ!』 中井出「うむ!我こそが原沢南中学校迷惑部が提督、中井出博光である!     闇の遺跡の見知らぬ広間にて緊急事態発生!     総員、ただちに現在地をナビにて報告されたし!ウェルカァアム!!」 声  『現在地であるな?うむ、わしに任せよ』 ……ハテ。 なにやらナギーの口調が…………ウヌウ? 中井出「……ナギ〜?べつに高貴っぽい喋り方でシェーラに対抗しなくていいぞ〜?」 声  『なっ……なにを言い出すのじゃ!?     わわわわしは元からこのような喋り方であったぞ!』 図星か。 妙なところでプライドが湧き上がってきてしまったようだ……まったく、楽しそうでいい。 声  『先ほどからおかしいのですドリアードは。     なにやらぶつぶつと言ったかと思えば、     子供くさい言葉なぞヒロ……父上の前では口に出せぬなどと』 声  『ばかっ!それは申すでないぃっ!!』 さらに言えば賑やかそうでいいですね。 声  『う、うー……その、な。わしもこれで、何百と生きておるであろ?     だというのに背が低く、容姿の所為で子供扱いじゃ。     確かに精霊としての年齢で言えば小娘もいいところかもしれぬが、     だとしてもあの天使の女に子供扱いされるのは我慢ならぬのでの』 声  『べつにされてないだろう、そんなこと』 声  『ええいいちいちうるさいのじゃお前は!!』 声  『こう暗くてはなにも見えないと謳って、自然干渉で道を訊く度に行き止まり。     何かが起こるたびにぎゃーぎゃー喚いて驚いてばっかりじゃないか。     それが子供扱いされる原因じゃなくてなんだ、まったく。     闇の領域で然の力が強く及ぶわけがないのに』 声  『たまに正解の道を教えてくれる自然もおるのだ!     三つ前の自然干渉では二回当たったぞ!』 声  『ほ〜ぉ?それは大したものだ。     “どうせまたウソなのじゃ”と言ってこっちに来たから当たった偶然を、     お前は当たりと言うのか。それは立派なことだな』 声  『……おぬし、馬鹿にしておるな?』 中井出「うむ、まあなんだ。元気そうでなによりだ。     話はもう終わったから、出来れば合流しよう」 声  『それなのですが父上。現在地を飛ばそうにも……』 中井出「うむ解ってる。ナビが見えん」 黒い僕らに出来ることなどなかった。 こっちはデッキブラシでなんとか出来るが、向こうが出来ないんじゃ意味が無い。 しかしナビをデキブラシで磨くって異様すぎて…… 見る分には笑えるけどやる分には笑えません。 中井出「ぬう……ならば浮遊して移動し続けるのだ!走るとトラップにかかりやすい!     そしてこの闇は黒の霧が充満していると考えるのだ!     光発しても霧が密集しすぎていては輝けない……そんな風に思えば良し!」 声  『う、うむ解った!わしにどーんと任せるがよい!』 声  『いえ!僕に任せてください父上!』 声  『おぬしはほんにいちいちわしに突っ掛かるの……!     よい!わしが任されれば済むことであろ!』 声  『お前なんかに任せられるもんか!僕だ!僕が父上の信頼に応えてみせる!』 …………。 黒い物体「止めないのか?」 中井出 「心温かきは万能なり。心涼しきは無敵なり。そして、仲良きことは美しきかな」 黒い物体「…………仲、いいのか?」 中井出 「僕知らない」 きっと麻雀でもやらせれば心がぽっかぽかになるさ。 俺はやらないけど。 中井出 「《ブツッ……》よし行こう」 黒い物体「言葉もかけずに切ってよかったのか?」 中井出 「アヴェンジャーにそんなこと心配されてもなぁ……」 黒い物体「?……なんだいそれ」 呆れたもの言いされたけど、もうほんとさっさと攻略しましょう。 こう暗いんじゃあ宝も満足に探せぬわ。 きっとここをこうしているのは戒めの闇宝玉に違いない! それをゴシャアと壊せばグオッフォッフォ、宝も探し放題に違いないぃい……!! え?闇竜?……出来ればそのー、戦いたくないといいますか……。 だって怖いもの!竜との戦いなんてそうそう慣れるもんかぁ! 蘇れるっていったって、コロがされれば死ぬんだい!当然だけど! 痛いのも変わらんのなら怖いに決まってるじゃないか! つーかこの世界、最初は痛覚も穏やかじゃなかったっけ!? それが気づけばより現実に近づいてきて、 痛いわ怖いわ楽しいわで!もう幸せ……!(最後が) やはりゲームも現実も楽しくなくてはいけません。 中井出 「アヴェンジャーがなんなのかは気にしない方向で。      それよりゴーだ!戒めの闇宝玉を探し出して破壊し!この闇を───……あれ?      なんかせっかく払拭した闇がゾルゾルと集ってきてない?」 黒い物体「ん?あ……」 ハタと気づけば忍び寄るセル……じゃなくて闇。 馬鹿な……月光デッキブラシは一度掃除したところを汚させないという、 ステキスキルがあるというのに……! ……あれ?じゃあこれって汚れじゃない? 闇という名の汚れじゃなくて、磨いたところを覆おうとしているわけでもなく、 ただこの場に密集してきてるってこと? 中井出 「《ピキュリリィイイ〜〜〜ン!!》は、はうああーーーっ!!」 黒い物体「な、なんだ!?どうした!?」 ───聞こえる!闇の中に蠢く、何者かの気配が! 身を潜め、息を殺して!ヤツらこの錫を狙っている!! や、だから錫はもういいんだってば。 だが感じる! これは……このとても嫌な気配はっ……! 中井出 「りょ、りょっ……呂布だぁ〜〜〜っ!!じゃなくて守護竜だぁーーーーっ!!」 黒い物体「へぇっ!?ど、何処だ!?何処に───…………居ないじゃないか」 中井出 「否!断じて否ァ!!おおおお俺には解る!この博光には解る!      苦節……何年だっけ?まあいいやともかくこの世界で過ごした日々が!時間が!      俺に“ヤバイですよ?”とやさしく、だが時には厳しく語りかけている!!      その包容力は冬場の毛布の手触りにも似て、      その厳しさは大河を斬り割る裂帛の如し!!      布裂いてる筈なのに大河が割れるかボケェ!!だけど感じるんです!      結局7体もの守護竜と戦った僕のやばいよコレレーダーが!今躍動している!      そう……犯人は───この中に居る!!」 叫ぶような大きな声を出し、ズヴァーと右手を振るって広げる。 ……マンガの探偵とかってどうしてこのポーズ取るんだろ。 黒い物体「犯人って……守護竜か?」 中井出 「うわー人が大層慌ててるってのに落ち着き払ってやがるよこのビッグヘッド」 黒い物体「普通に頭でっかちって言え。否定するから」 中井出 「……ヘッドビッグ!!《ごしゃーーん!!》」 黒い物体「全然ナイスネーミングじゃないぞ!?なんだその立てた親指は!!」 中井出 「で、差し当たってですけど。僕の予感が叫びます。      この遺跡にある、この霧こそが───守護竜です」 黒い物体「…………」 アヴェンジャーがドキリと肩を跳ねらせた。 その途端、ゆっくりと忍び寄っていた闇が一気に集束し、この広間を覆い尽くす! 中井出「ぐ、ぐうおおおーーーーっ!!なんだこりゃーーーっ!!」 声  「っ……!どうするんだ!?こう何も見えないと……!……、……?」 そう、闇が集束する。 俺達を覆うのではなく、広間の一点に集うように。 やがてそれは少しずつ形を成し、10秒も経つ頃には─── デッキブラシの輝きが点る広間に、一体の真っ黒な竜を存在させていた……!! 中井出「こ、これは……!」 遥一郎「闇の竜……!?───あ、お前、見えてるぞ」 中井出「キャア!?やだもうエッチな風!!なにさせんだてめぇ!!」 遥一郎「そ、そういう意味で言ったんじゃないって解りそうなもんだろ!?     どこの年頃の女だお前は!!」 中井出「ククク……この博光ほど無意味に脳が柔らかいと、     いつ如何なる時でもこういう切り替えしが可能なのだ……!     でも無意識な時もあるからその瞬間が滅茶苦茶恥ずかしいこともあってさ……」 遥一郎「……いろいろ苦労してるんだなぁ……」 中井出「同情するなら全財産くれ!あと武器も!」 遥一郎「誰がやるかぁっ!!」 腹を割って話してみれば、案外元気なヤツって居ますよね。 きっとこいつもその中の一人なのよ。 聞けばかつては精霊をやっていたというじゃないか。 長い長い年月を、桜の木として、そして精霊として過ごした……なるほど、 それならば心が妙に落ち着いてしまうのは仕方なきこと。 だがこうしてハートを揺さぶってあげればこの通り! 声を荒げて叫ぶ男に大変身よ!! 中井出「というわけで逃げていい?」 遥一郎「話の前後を繋げような!?この状況でどうしてそんな言葉が出せるんだ!」 中井出「怖いからに決まってんだろうがアホかてめぇ!!」 遥一郎「お前にアホだとか言われたくない!!大体」 闇竜 『ルシャァアアアォオオンッ!!!!』 二人 『キャーーーーーッ!!?』 竜を無視して騒ぎまくってたら咆哮された。 耳を劈く風の息吹はそれはもう痛いもので、 バキワールドでは絶対に鼓膜が破れる状況だった。 だが、だがその前に言いたいことがある……! 中井出「ちびっこのくせになんてパワーだ……!」 ……そう、闇竜はちっこかった。 その大きさはストームドラゴンに近い。 だがそこから感じる嫌な予感は、まさしく光天龍と対峙した時のものに似ているわけで。 中井出「だが構わん!アーチャースキル発動!狙い撃ち!」 相容れぬ者が対峙した時点でバトルは開始されているのだ! 戦者と戦者が対峙…………バトルでしょう。  ズバババババババシュッ!!! 左腕に出現させたホズからボウガンを発射! それは動きもせずに俺達を見ていた闇竜にヒットし───…………た、筈なんだが…… 中井出「……あ、あれ?えぇっ!!?」 効いていない……どころか、当たってない。 馬鹿な!きちんと直撃した筈なのに! 遥一郎「……!これは……!」 中井出「し、知っているのか雷電……」 遥一郎「う、うむこれは……“鬼履濡卦埜夜魅”……!」 中井出「き、きりぬけのやみ……!?」  ◆鬼履濡卦埜夜魅───きりぬけのやみ  霧抜けの闇、と書く。  闇とは本来形を持たぬものであり、光でなくては裂くことさえ出来ないもの。  ならばもしその特性を以って産まれた存在が居るのだとすれば、  こちらの攻撃なぞ当然通じる筈もなし。  *神冥書房刊:『弦月彰利著/黒の理』より ……。 中井出「な、なんとまあ……マジすか」 遥一郎「いや、あくまで予想だが」 中井出「予想なの!?ぬ、ぬうだが彰利という実例もあるわけだし、     これでは物理攻撃は効かんか……!     だったら───そ、そうか!これが!こいつがっ!!」 遥一郎「ど、どうした?」 中井出「いつかナギーが言ってたろう!魔法じゃなければ倒せん守護竜が居ると!     そう……まさにこいつ!こいつこそが魔法じゃなければ倒せぬヤツと見た!」 遥一郎「…………え、と。つまり、なんだ」 中井出「ホギー!キミに決めた!」 遥一郎「決められてどうしろと!」 中井出「……殺っちまえ《ビッ……グイッ》」 喉を掻っ切るポーズとゴートゥヘルポーズをして見せ、最後にゴーサイン。 遥一郎「……お前は?」 中井出「お茶でも」 遥一郎「飲むなっ!!」 中井出「さ、最後まで言わせてくれたっていいじゃないか!     いきなり否定されるとびっくりするんだぞー!?     て、提督だぞー!?ばかにすんなー!!」 遥一郎「お前が馬鹿じゃなかったらなんだっていうんだ……」 中井出「うわー、すげぇ言い方」 けど、それだけ俺に遠慮しても仕方ないってことを学んでくれたってことだろう。 堅苦しくない関係ってサイコーです。 中井出「恐らく、守護竜だから体質変化スキルを持っていると思われる!     光天龍は体質変化とともに魔法を使ってきた!     つまりその対となる闇の属性を持つこいつも、魔法を使うに違いない!     ほぼ物理攻撃しか出来ない俺だから、活躍できるのはそれからだ!     魔法を放ってきたら俺が跳ね返してくれよう!だから思う様魔法を使うがいい!」 遥一郎「魔法跳ね返せるのか!?」 中井出「任せてくれたまえよ!だからGO!!」 遥一郎「っ……問答してる余裕は確かにないな……対峙したからにはどうにかしないと。     よしっ!信じたからな、その言葉!」 中井出「一方的に信じられても俺はあっさり裏切るがな」 遥一郎「ちょっと待てこらぁっ!!」 ともあれバトル開始! 鞘からジークフリードを抜き取り、出番はないだろうが構えると、同時に覚悟も決める。 守護竜と戦うんだ……早めにたくさんの覚悟を決めておかないと、 意外性の高い状況に心の対応が追いつかない。 故に!───覚悟、完了……! 中井出「いくぞ闇竜よ……臆さぬならば、かかってこい!!」 ジークフリードを闇竜に向けて突き出し、高らかに謳った。 ───途端、その闇竜からなにかが放たれたってホギャアアーーーーーッ!!! 中井出「ヒィイイイッ!!《ずぼしゃあーーーっ!!》」 放たれたなにかを紙一重で避けて、その行く末を見送った。 ……まあ、遺跡の壁に衝突して霧散しただけだけど。 中井出「あ、危ねぇ危ねぇ……今のは俺じゃなきゃ紙一重では避けられなかったぜ?」 遥一郎「だったらその荒い息と真っ青な顔をなんとかしてくれ」 中井出「しょうがないでしょ怖かったんだもの!!」 遥一郎「……それより、構えてくれ。気づいただろ?」 中井出「え?なにが?」 遥一郎「気づけっ!今の攻撃だ!魔法だっただろうが!」 中井出「……おいおい頭大丈夫か?体質変化もしないで竜が魔法撃ってくるわけねーだろ」 遥一郎「どうして毎度毎度常識破壊してるくせにこういう時だけ常識を謳うんだ!」 中井出「馬鹿野郎!そんなの貴様をからかいたいからに決まってるだろうが!!」 遥一郎「気づいててこの状況で人をからかうための努力してんじゃねぇええええっ!!」 あ、キレた。 中井出「大丈夫!なにを隠そう、俺は守護竜バトルの達人!     光天龍と戦った時点で魔法を使う竜が居るならばと、     体質変化無しで使ってくるやつも居るに違いないってことくらい予測済みよ!」 魔法でしか倒せないってヤツの攻撃は大抵魔法! そんなゲーム的セオリーに今さら驚くこの博光か! ……いきなり僕が狙われた時は本気で驚きましたけど。 中井出「さあ行くぜホギー!俺達の力を見せてやれ!」 遥一郎「俺達の、って。お前、跳ね返すだけなんだろ?敵の力じゃないかそれ」 中井出「うるさいよもう!いいもん!マナ集束法で攻撃するもん!すればいいんだろ!?」 ともあれ改めてバトル開始! なんかもう、状況に流されつつある自分が悲しい……。 Next Menu back